ワーカーズ335号 2006.12.15.         案内へ戻る

解雇の金銭解決、労働時間規制の緩和を謳う「労働ビッグバン」
首切り自由、長時間労働の野放しをもくろむ労働法制改悪を許すな!


 安倍政権は、「労働ビッグバン」などと称して、労働法制のいっそうの改悪を推し進めようとしている。焦点は、労働契約法、労働時間法制などだ。
 労働契約法の改悪の要点の第一は、会社が定める「就業規則」に法的な拘束力を持たせ、これを雇用契約と認めるという点にある。就業規則は、現行法においても会社側が一方的に作成し、労働者の同意が無くても変更可能だ。こんなものを雇用契約と認めてしまったら、企業の都合による労働条件の引き下げに歯止めがきかなくなってしまう。
 第二は、解雇の金銭解決を容認しようとしている点だ。もしこれがまかり通ってしまったら、裁判で労働者が勝ち、解雇無効が認められても、わずかの金銭支払いで職場復帰の道が閉ざされてしまうことになる。企業側は、整理解雇の四要件(@人員削減の必要性A解雇回避のための必要措置B対象者選定の合理性C解雇に至る手続きに妥当性)をはずそうとしており、彼らの狙いが、首切り自由、労働者の闘いの無効化、にあることは明らかだ。
 労働時間法制の改悪の要点は、一定以上の年収や権限などを持つ労働者を、現行の1日8時間、週40時間の労働時間の規制対象から外し、残業代を支払わずに「成果」に応じて賃金を支払うとする、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入にある。
 企業の側は、「多様なワークスタイルを認める必要がある」「労働の量ではなくその質を基準に評価すべき仕事が経済構造の変動とともに増えてきている」などと言って、この制度を合理化しようとしている。
 しかし、彼らの本当の狙いは、野放し状態となっているサービス残業を合法化すること、そしてそれをいっそうおおっぴらに、かつ広範囲に拡大することを可能にしようとする点にある。
 長時間残業などを押しつけられて過労死した労働者の遺族などがつくる「全国過労死を考える家族の会」は、次のように言っている。
 「同制度が認められれば、長時間労働がいっそう野放しとなり、過労死が増加することは間違いない」「たとえ管理職でも自分の裁量で仕事の量を決められるわけではない。同制度の導入はホワイトカラーに過重な労働と健康被害をもたらさずにはおかない」
 安倍政権が唱える「労働ビッグバン」を許してしまったなら、労働者は今以上にサービス残業などの不払い労働、長時間労働に晒されるようになり、そしてそれに異を唱える時には解雇を覚悟せざるを得ず、そして法律は解雇された労働者を決して守ってくれはしないという事態になってしまうだろう。
 解雇の金銭解決、不払い残業・長時間労働の拡大に道を開く労働法制の改悪に反対しよう!(阿部治正)


自業自得の安倍内閣支持率の急降下

郵政民営化反対議員の自民党復党

 郵政民営化反対の造反組の復党決定で、安倍内閣の支持率が急落してきた。十一月三十一日と十二月一日に行ったFNN(フジTV系)と産経新聞が世論調査によると、内閣支持率は、九月の政権発足時の六十三・九%から四十七・七%と十六ポイントも下がった。
 有権者の六十七%が復党に「反対」と答え、全く無原則極まりない安倍首相に厳しい反応を突きつけた。与党内からは「中川幹事長のやり方が悪かった」「首相のリーダーシップが見えなかった」とする声が上がっている。高い支持率だけが頼みの安倍内閣、支持率が四十%になったら混乱と弱体化は必至だ。
 十二月四日、自民党は党紀委員会を開き、全員一致で造反組十一人の復党を正式に認めた。この間三カ月に及ぶ騒動の真相はなんだったのか。全く呆れ果てた対応ではないか。
 こうして、民営化賛成の踏み絵を拒む平沼赳夫氏を除く郵政民営化反対の造反組十一人は、自民党に復党した。自民党執行部と彼ら反対派が復党問題の年内決着にこだわったのはなぜか。その理由は、端的に言えばカネである。
 政界事情通は、「毎年、各政党に支給される政党交付金のうち、半分は一月一日時点の各党所属の議員数で決まる。無所属議員の配分はゼロで、その分は受け取り拒否の共産党以外の各党で山分けされてしまう。十二人の年内復党なら、自民党単独で約二億七千八百万円が転がり込む計算です」と語る。
 当然の事ながら民営化反対の造反組の大半の台所事情は苦しい。離党により一人年間二千万円位の政党交付金を受け取れないだけでなく、企業・団体献金が集められる「政党支部」の看板を奪われた事が大きな損失となっている。
 例えば、野田聖子議員の場合は、0五年の政治資金収入の総額九千七百七十七万円のうち、政党支部の収入は三千八百三十七万円であった。総収入の約四割を占めた大口収入を失い、交付金ゼロとのダブルパンチで「年間六千万円かかる」活動費が賄えないのだ。
 かつては派閥のドンだった堀内光雄氏もその惨状は同じ。昨年の総収入五千百二十一万円のうち、半分以上の二千六百二十七万円は、長男が代表を務める自民党職域支部から政党支部への寄付だった。その他の民営化反対の造反組の議員も、個人献金を呼びかけたり、秘書をリストラしたりと、未だかって味わった事のない塗炭の苦しみを味わっている。
 しかし、「例外は平沼氏で、昨年の政治資金の総額四億二千四百二十一万円は全国会議員でもトップクラス。しかも、パーティー収入が三億円近くもあり、政党支部の収入は二千七百八十五万円に過ぎません。執行部の水向けに強気でいられるのは、資金力がモノを言っています」とは自民党関係者の解説である。

復党へのハードル

 十一月十七日、平沼赳夫ら造反議員十二人は、永田町の平沼事務所に集まり、復党願への対応を協議した。平沼議員は昨日も地元の岡山で支持者と会合を重ね、「筋を通してこそ政治家」と励まされた。平沼自身も「一方的に幹事長に突きつけられた条件をのんで、私の未来が開けるのか」と語り、復党は見送る考えを示唆していた。
 ところが、会合では十一人が必死で平沼を説得したようだ。そのため、平沼は復党願は出すものの、中川幹事長が要求していた誓約書は書かないことで決着した。
 そして、中川幹事長が出していた復党条件は、(一)郵政民営化を含む政権公約の順守(二)安倍首相の所信表明演説への支持(三)反党行為への反省と今後の党則順守――で、誓約書の提出も求めていた。
 誓約書には「遺憾」「反省」などの言葉が盛り込まれる見通しだが、平沼は「屈辱的な誓約書は書けない。私の復党願は受理されないだろう」と語った。党執行部は党紀委員会を開き、復党願の扱いについて協議を始めるが、十一人の先行復党は認められるものの、平沼の復党は認められないとみられている。
 自民党事情通は「小選挙区制の下で無所属議員を貫くことは、厳しい。政党助成金は入らないし、政治活動もできない。中川はそうした窮状を見越して、ハードルを上げた。世論調査が復党反対だったことも中川の強気を後押しした。しかし、平沼が拒否したことで、党内は大モメになりそうです。中川のゴーマンな手法に青木幹雄参院議員会長や森元首相は激怒。中川政調会長も『天安門事件のようだ』と批判した。平沼が戻らないことで、さらに中川幹事長への風当たりは強くなるのは間違いありません」と予測する。
 結局、予測通り、平沼議員の復党はならなかったのである。

「刺客議員たち」の悲鳴

 十一月二十八日、復党反対の「抗議集会」が開かれたが、小泉前首相にも「議員は使い捨て」と突き放された「刺客議員たち」の末路は哀れそのものだ。
 自民党事情通は、「復党することが決まった造反議員十一人が次に要求するのは、支部長の奪回です。今のところ、自民党公認で戦った刺客候補たちが、小選挙区では負けたものの支部長になっていますが、当然、復党した議員は“小選挙区で勝った者が支部長だ”と言い出す。でないと、政党助成金は支部長へ行き、復党議員たちは比例議員と同じ扱いになる。それが次の総選挙で固定化すると困るからです」と解説する。
 復党組のひとり、山梨二区の堀内光雄元総務会長は、七十六過ぎの高齢ゆえ、次の総選挙で息子に地盤を譲る予定だというが、地盤を譲るには支部長の座がどうしても必要なのだ。財務官僚出身の刺客・長崎幸太郎議員が小選挙区を死守するのは苦しいとされている。
 また「ベテラン議員たちが自民党に戻ったことで、地元でも刺客追放が始まる。たとえば注目の岐阜一区は自民党組織の大半が、復党の野田聖子派。佐藤ゆかり議員を推している県議たちも、これをきっかけに野田陣営に走り、佐藤ゆかりは孤立化ということが十分ある。他の十選挙区も状況は同じです」と公然と語られている。
 またこうも言われている。「刺客議員たちは、悪くても比例区の上位にはしてもらえると思っている。でも幹事長が代わり、選挙区でも力をなくせば、形勢は一転です。次の総選挙が近づくにつれて、党内でだれも相手にしなくなり、他の議員からは“刺客だけ優遇するな”という声が出て、比例区上位も危なくなる。引退に追い込まれる刺客も現れますよ」、一時期小泉チルドレンともてはやされたのが夢のような冷淡な対応ではある。

復党派の坊主懺悔と「刺客」の混乱

 十一月二十八日、自民党に復党が認められた郵政造反組のうち堀内光雄元総務会長ら六名が記者会見を行った。
 彼らは、口々に「必ずしも民営化に反対ではなかった。復党に感謝の気持ちでいっぱい」(堀内)、「本当にありがたい」(山口俊一)、「安倍晋三首相のために全身全霊で頑張りたい」(今村雅弘)、「安倍政権を全力で支える」(古屋圭司)、「いい形で自民党の力になりたい」(森山裕)。このように、彼らは、口々に安倍首相への忠誠を誓っていたのだ。
 一年前、堀内は郵政民営化法案が衆院を通過した直後は「小泉政権はあと一年だから、堀内派が中心になって総理総裁を選ぶ」と意気軒昂で、小泉総理によって、『自民党は死んだ』なんて本も出版していた。古屋は古賀で「小泉政権は外交、内政もすべて中途半端」と猛批判し、山口は「政治家の資質が問われる」と勇ましい発言を繰り返していたのだ。
 彼らの豹変ぶりは隠しようがない。復党組は安倍や自民党にはひたすら詫びているが、郵政民営化反対で投票してもらった有権者には、何の挨拶も許しを乞う発言もないのである。彼らの自民党復党に至る茶番劇が、全くの「有権者不在」の破廉恥な行動である決定的な証拠である。
 自民党は何らかの「理性」があると盲信していた片山さつきと佐藤ゆかりは、所属していた委員会の採決にそろって無断欠席した。両人は「うっかりミス」と言うが、幹部たちは「だからあいつらはダメなんだ」とカンカンである。
 そもそも与党議員にとって採決欠席は重大な反党行為である。万が一、野党議員数が上回って法案が否決されれば、長時間審議した法案が全く無駄になるばかりでなく欠席は法案反対の意思表示と見なされる利敵行為なのである。二人の反対派に対する自民党の対応についての気の動転ぶりが理解できるというものだ。
 十一月二十九日、「衆院の経済産業委員会で『官製談合防止法改正案』の採決が行われましたが、片山、佐藤がいない。通常、欠席する際は同僚に委員差しかえの代理出席を頼みますが、その届け出もない。委員長は採決を十分間引き伸ばしたものの、二人が現れなかったため、急きょ、国対副委員長二人が採決に加わって可決しましたが、委員長も理事もカンカンでした」とは新聞報道である。
 十二月一日、二人は委員会に出席し弁明したが、総スカン状態だ。自民党は二人を委員から外し、さらに十二月四日には役員停止処分を決める。自民党事情通に寄れば、「生意気な小泉チルドレンに対して、たまりにたまった不満が爆発している」とのことだ。この措置は、反対派の復党問題でガタガタ騒ぐなという“みせしめ”意味もあるが、こうした内輪モメが発覚する自体、安倍自民党の求心力のなさを象徴しているのである。
 二人はそれまで造反組の復党反対で駆けずり回っていたから、「法案より自分の議席が大事なのか」と見られたのである。片山は「委員会には出ていたが、マスコミから電話がかかってきて、外に出ていたら採決が終わっていた」と言い、一方の佐藤はこの時、「復党反対」の署名を持って中川幹事長に会いに行っていたという。
 復党問題では政党助成金の取得を優先させた党内と「自己保身」に狂奔する小泉チルドレンとの対比は決定的であった。
 安倍内閣の支持率が急降下した理由は当然であった。郵政民営化法案に対する有権者の投票行動を全く無視しかつ愚弄しているからである。
 自民党政権を打倒する闘いを今すぐ開始していこうではないか。    (直記彬)案内へ戻る


読書室
 『子どもと読む教育基本法』 教育基本法を読む会/編 解説/斎藤次郎 雲母書房


 十二月五日のあんころの国会前集会に参加していたら、藤沢の住人が寄ってきて、「名取弘文さん、知っていますか。この本、新刊なので買ってください」と私に話しかけてきたのです。その人は私が藤沢に勤めていた時の学区の小学校の「名物教師」で、その当時は伝習館闘争の支援者としても有名な人だった。もちろん話をしたこともある。しかし、今や全国でも珍しい家庭科専科の教員として知られている教育実践主義者となった。彼は子どもに自分をナトセンと呼ばせ「おもしろ学校理事長」を自称して公開授業をよくやっている。つい最近も日本赤軍の重信房子の娘を、自分が勤務する学校に呼び、子どもたちの前でパレスチナ問題を語らせている。当然にも藤沢市教育委員会との軋轢はあったのだが、何とか実現させた。まさに大胆不敵なナトセンなのである。
 先に雲母書房から「子どもの権利条約」のナンセン訳を出版した名取弘文先生は、教育基本法「改正」についても、子どもの意見を聞いていないとの問題意識を持ったのである。かくして、0六年六月から八回ほど集まり仲間と議論して作った本だとのこと。編集上にも読みやすくさせる工夫がある。
 目次を紹介する。

この本をつくったわけ
【1】とにかく読んでみましょう 教育基本法
《前 文》
日本国憲法の理想を実現するのは教育の力だ 真理と平和をもとめる人よ 育て!
《第一条》 平和な国と社会をつくる人が育つ それが、教育の目的だ
《第二条》 勉強はいつでもできる どこでもできる 学ぶことは自由だ
《第三条》 だれでも勉強するけんりがある 学ぶとき、差別してはだめ 生活が苦しい人には奨学金を出す
《第四条》 子どもは9年間勉強するけんりがある 授業料はタダ
《第五条》 男の子も女の子も協力しあおう いっしょの教室で学ぼう
《第六条》 学校はみんなのもの 先生はみんなに同じように サービスする大切な仕事だから、しっかりね
《第七条》 うちでも、仕事場でも勉強できるよう国は手助けをする そのために、図書館や博物館などをつくらなくちゃいけない
《第八条》 政治って大切なんだ どういう政治がいいかは自分でえらぶ
《第九条》 仏さま 神さま キリスト アッラー いろいろな宗教がある どの宗教を選ぶかは個人の自由。公立学校では、どの宗教がいいわるいと教えてはダメ
《第十条》 教育を支配したがっている連中がいる 教育は国民みんなのものだ
《第十一条》 必要があったらその法律をつくれる
【2】「教育勅語」って知ってるかい
【3】教育基本法改悪反対!
【4】3組の目標
【5】国会ではこんなやりとりがあった
―― 特別委員会議事録より
「あたりまえのこと」を大切にしよう 斎藤次郎

 この本をつくったわけ 以下、全ての項目に、名取のコメントがついている。若干の疑問もあるが、小学校の高学年なら充分読みこなせる内容となっている。
 是非書店で手に取ってみることをお勧めしたい。          (霞ヶ丘)


タウンミーティングの真実

発覚した無駄使い

 教育基本法「改正」について国民の声を聞くと開催された政府主催のタウンミーティングが、実際には広告代理店に丸投げの上、使った税金は総額二十億円、そして教育委員会職員や関係者の「やらせ質問」には高額の謝礼まで払っていた事実が暴露されてしまった。
 十一月二十二日、内部資料を入手した民主党の蓮舫参院議員が、同日の特別委で、これらの点を徹底追及しているのである。
 具体的に指摘すると、0三年十二月に岐阜市で開かれた教育改革タウンミーティングは、大手広告代理店が会場の借り上げから設営、場内整理まですべてを仕切って、かかった経費はなんと計九百六十一万円だ。その内訳は「開催当日の動員関係」に百六十五万円を使っている。これをさらに詳細に見ると、「空港(又は駅)での閣僚送迎等」に一万五千円×五人で七万五千円、「会場における送迎等」に四万円×八人で三十二万円だという。どうしてこうした法外な計算になるかについて関係者は説明責任を果たすべきではないか。
 さらに「エレベーター手動」に一万五千円×二人で三万円、「エレベーターから控室までの誘導」に五千円×二人で一万円を計上していた。何とエレベーター係や控え室までの案内役まで配置されていたのだ。
 十一月二十二日の週刊ゲンダイは、関係者の「それもそのはず、すべて内閣府の要望に沿ったものだからです。加えて『内閣府との事前調整』に四十二万八千円なんて怪しげな項目まである。飲み食いに使ったんじゃないかと勘繰りたくもなるでしょう。一事が万事で、岐阜に限らず、山形、愛媛、和歌山など全国各地で開かれた教育改革タウンミーティングで一千万円前後の経費をかけ、似たような税金のムダ遣いをしています」との発言を報道している。
 「教育改革」と言いながらのこの法外な無駄使い、私たちは政府を許す事はできない。

タウンミーティングの実態

 十一月二十七日、参議院教育基本法特別委員会において、文科省・内閣府から提出された資料で、教育改革タウンミーティングで次々と明らかになってきた「公務員大量動員」「業者過剰配置」の実態が明らかにされ、これまでの新聞報道などが裏付けられた。
 それによるとこれまで開催された八回のタウンミーティング(以下TMと記述する)で、文科省・内閣府から県・市教育委員会などに動員を取りまとめをして、名簿を作成するに至ったTMは、実に六回に及んでいる。また、二年前の十一月二十七日行われた教育改革TM大分では、大量動員のために下見・前日・当日で述べ三十六人が二百三十五万二千五百三十円が交通費・日当・宿泊費として支出されている。当日人件費に百七十九万円が支出されているから四百万円を超える御一行様が「やらせ興業」を支えていた事になる。
 近藤正道社民党議員が参議院教育基本法特別委員会で、タウンミーティングの公務員の大量動員と委託業者スタッフの過剰配置を追及した。
 近藤議員は、「TM岐阜(0三年十二月)業者八十人、県教委名簿百三十三人。TM山形(0四年四月三日)業者七十一人、県・市名簿百八十人。TM松山(0四年五月十五日)業者七十九人、県教委名簿百三十五人。TM和歌山(0四年十月三十日)業者百十人、市教委名簿六十五人。TM大分(0四年十一月二十七日)業者百七人、(名簿確認出来ず)。TM島根(0五年三月五日)業者九十五人、(名簿確認出来ず)。TM静岡(0五年六月十一日)業者百八人、県まとめ名簿七十四人。TM八戸(0六年九月二日)、業者数不明、県教育長名簿二百七十九人」との数字を明らかにした上で、発言した。「おぞましい数字が明らかになっている。いったいこれは、『国民との対話』どころか座席を占有し、総会屋ムードで政府・閣僚をヨイショし、教育基本法改正を既成事実化する税金流用以外の何ものでもないではないか」と。
 この調査結果は平成十八年十一月二十六日時点における、内閣府及び文部科学省の内部資料及び担当者へのヒアリングによる暫定的な調査結果であり、今後更なる資料精査及び関係者への聞き取り等により、その内容が変更・修正される可能性があると保身のための但し書きがあるもののまさにタウンミーティングが、各県教育委員会の破廉恥極まりない「やらせ興業」だった事が徹底的に暴露されてしまったのである。
 何とも呆れ果てた実態ではないか。こうした連中に「国家百年の大計である教育」を語る資格があるだろうか。即刻、辞表を提出すべき恥ずべき面々である。しかし、これは彼らが常に私たちを恫喝する為に持ち出す「公務員の信用失墜行為」であり、そもそも懲戒免職の対象ではないだろうか。私たちは彼らを徹底して糾弾していかなければならない。

恥の上塗りの「やらせ質問」の増加

 十二月十二日、政府主催のタウンミーティング(TM)で、開催された百七十四回のうち十五回で質問内容を事前に示して発言を依頼する「やらせ質問」が行われていたことが、内閣府「タウンミーティング調査委員会」の調査でわかった。先に近藤議員の追及があったのにも拘わらず、「やらせ発言」の事実はまたまた明らかになったのである。
 十二月十三日、同委はこうした内容を盛り込んだ調査結果の最終報告書を発表する予定だ。塩崎恭久官房長官は報告書提出を受けて、関係者の処分を検討する方針と伝えられている。何という間が抜けた対応ではないだろうか。
 これまで「やらせ質問」は、教育改革に関する八回のTMのうち五回で行われたことがすでに判明しているが、調査の結果、これ以外にも十回のTMであったことが明らかになったのである。こうした経過を考えれば、当然にもまだまだあると考える方が自然だ。
 報告書にはやらせなどの実態のほか、今後のTM開催に向けた教訓、民間委員の補足意見などを盛り込む予定だという。調査委は、各都道府県や関係省庁の担当者への聞き取り調査のほか、TM参加者らに情報提供を呼びかけ、計七十二件の情報が寄せられた。委員長の林芳正副内閣相は「情報提供で新しいことが出れば必要に応じて委員会を開催していきたい」と語るが、今行われている調査は「内閣府及び文部科学省の内部資料及び担当者へのヒアリングによる暫定的な調査」なのである。
 内閣府や文科省に自分にとって都合が悪い客観的な調査が、そもそも出来るものなのであろうか。常日頃、彼らが強調するようにオンブズマンなどの第三者機関が調査するのが適切な措置というものではないか。まさに政府は言動不一致が甚だしいのである。
こうした政府の破廉恥行動により教育基本法「改正」案の提出根拠は、まさに足下から崩れ去ったのである。政府の教育基本法「改正」案採決を粉砕しよう。   (猪瀬一馬)



闘いの現場から 一

 十二月五日、日教組が、東京三宅坂の社会文化会館において、全国から七百名の組合員を結集して行われた「教育予算拡充第2次中央行動」に私も参加した。
 午前中は集会を行い、主催者あいさつ、来賓あいさつ、情勢報告、北海道・千葉からのとりくみ報告を受けた。午後からは、三省交渉、関係団体・政党・議員要請を展開した。また、「子ども応援便りDVD版」の上映と、首都大学東京の大田直子教授を講師とした英国の教育政策の現状についての学習会を行った。その後十五時半から十六時まで三省交渉の報告を受けて、この日の中央行動を終えた。
 三省交渉の結果については特段特記すべきものはない。政府の総人件費改革の追求の中で、公労協側が押さえ込まれている現状が浮き彫りになる報告が続いたのである。
 その後十六時から十七時半まで、私は「共謀罪新設に反対する会」と「都教委包囲ネット」の共催による国会前集会に参加した。参加人員は五百名ほどだったが、元気なシュプレヒコールを何回もすることで集会は大いに盛り上がった。
 十八時からは恒例となった十回目の「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」(略称:あんころ)の国会前集会は、状況の切迫感から二千名が結集した。大内裕和・小森陽一・三宅晶子の各氏呼びかけ人も駆けつけた。
 最初に発言した大内氏は、「マスコミ情報は単に政府・与党の願望を言っているだけで、実際には政府・与党は追い込まれている」事を明らかにして、「座りこみを行って、教育の自由を取り戻すことこそ、いじめ問題に真剣に取り組むことで、教育基本法の精神に則った正当な行為だ」と午前中から座りこみを続けている人々を激励して、自分も今日から三日参加するとの決意を語った。
 二番手の日本共産党の小林みえこ参議院議員は、マスコミで報道されている今週中の採決日程は、実は理事会で提案すらされていない事を明らかにした。このように今、まことしやかに報道されている採決日程とは、与党の幹部が、自分の希望を勝手に言っているだけなのだ。また、神戸等の地方公聴会の様子も紹介され、与党推薦の学者すら「慎重に審議すべき」という意見で、今変えなければいけない理由は出なかったと状況を報告した。
 続いて小森氏は、これから周りの人に伝え、主催者が異なるすべての集会に可能な限り参加し成功させて、断固闘い抜こうとアピールした。四番手の三宅氏は、フィンランドでナチス支配を打ち負かした教員たちの闘いに引きつけて、今日本でも「日の丸・君が代」の強制に抵抗する闘いが、東京地裁判決等勝ち続けている事の大きな意義を訴え、そして八日には自分も座りこみに参加するとの決意表明をした。
 社民党の保阪展人議員は、やらせタウンミーティングは、公務員に無理矢理、国に都合のいい意見を言わせるという「不当な支配」そのものであると同時に高額の費用をかけた金まみれの政治ショーであったと解説し、野党四党の正式な機関として、タウンミーティング調査チームを設置し、今後とも断固追及を続けていくとアピールしたのである。
 このように、政府・与党の欠点がどんどん見つかっていく中で、伊吹文部科学大臣は、「教育基本法の改正は、この問題(いじめ)の解決につながるものではない」と答弁し、教育基本法「改正」の提案根拠すら維持できない状態になっている事が明らかにされた。
 東京都教職員組合書記長は、教育基本法改悪が教育にどういう悪影響を及ぼすかを知らせるために、その先取りで制度改悪が進んでいる東京都の実態をまとめたレポートを全参議院議員に渡す取り込みをしたと発言し、横浜市立大学学生は、今度は仲間を連れて十人で参加したと発言した。続いて、福岡・北海道・京都から闘いの報告があった。
 最後に、あんころから12・3ピース&フェアー・パレードの報告があり、渋谷や原宿でも注目を集め、教育基本法を守る運動が、さらに若者が新しい社会をつくっていく動きがあると報告されたのである。
 そして、首相官邸前に移動し、シュプレヒコールをして国会前集会を終了した。(猪瀬)


闘いの現場から 二

 十二月八日、日教組は、東京・日比谷野外音楽堂で「教育基本法改悪阻止!12・8日教組緊急中央集会」を開催し、国会請願デモを行った。集会は、午後二時開会の第一次と午後六時開会の第二次とに分かれ、全国から一万二千人の組合員と平和フォーラムの仲間が結集し開催された。私は勤めを終えてから六時開会の集会に途中から参加した。
 森越委員長は、主催者挨拶として、日政連議員団の頑張りで与党の目論んでいた今週の採決は阻止することができたと報告し、現行教育基本法を無視してきた政府は改悪されれば法律をたてに管理を強化してくるのは明らかである、正念場は来週であると最後まで闘うことを訴えた。しかし、森越委員長の十一月二十五日の「朝まで生テレビ」での(国会前座り込み行動に対する)「すいません」発言と「あれはうちの人たちではない」発言に現場組合員の怒りは高まる一方であり、そのためこの集会には、演壇前に登壇阻止の防衛隊を配置するなど、日教組の異様なまでの組織対策が私たちを驚かせたのである。
 平和フォーラムの福山事務局長は、子どもたちに希望を教え、それを実現するために闘っている日教組を平和フォーラムは全力で支援すると連帯の挨拶をした。そして、中村書記長は、情勢報告の中で、民主党議員等に対するヤジなど「組合員の品のない行動」を批判した後、与党は週明けに採決を強行しようとする中、教基法改悪反対のチラシ全戸配布をやりきり世論を盛り上げることが重要として、充分な審議を求める国民の声を国会に届け、共闘している野党議員を激励しようと今回の中央行動の意義を訴えた。
 最後に森越委員長の団結ガンバローで最後まで闘い抜く決意を確認したが、この間の森越委員長の対応と日教組のとりくみの遅れの問題はどうにも隠しようがないとは、現場組合員の偽らざる感想である。     (直記)案内へ戻る


プルトニウム大国日本の危ない核開発

 核武装ドミノの「次は日本と韓国か」という声が聞こえる。米ブルッキングス研究所主任研究員のステーブン・コーエン氏は「日本には望めばいつでも核を持つ能力がある。だからこそ、核武装で再び覇権国家をめざすのではないかと心配する声が出てくる」(11月4日付「朝日新聞」)と指摘している。しかし、原子炉物理が専門の技術評論家の桜井淳氏は「そんなに簡単ではない」と次のように述べる。
「原料であるプルトニウムがすでに約40トンあるというのは事実ですが、そこから兵器級の濃縮プルトニウムをつくるには技術が必要。いざ核爆弾の設計に入っても、爆発を制御する『爆縮』の技術は高い精度が求められ、すぐにできるものではありません。同時に、長距離弾道ミサイルの開発も進めなくてはいけない。最終段階の地下核実験場所もない。そもそも実際に核兵器を持つとなると、専門施設も必要になる ‐ すべて同時進行で進めても、早くて数年はかかります」(12月1日付「週刊朝日」)
 専門家の桜井氏の発言によっても、その意思さえ持てば日本は数年で核兵器開発が可能だということになる。安倍晋三首相は「政府としては非核3原則は堅持していく」と強調しているが、米軍によって核兵器が日本に持ちこまれているのは公知の事実であり、非核3原則の堅持≠サのものがウソである。以下、この国の核の平和利用≠フ実態について検討したい。 (折口晴夫)

止まらない核燃料サイクル

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による核兵器開発が進んでいる。安倍政権はこれを奇貨とし、国民意識動員に急である。多くの国民は冷静さを失い、安倍首相らのデマゴギーに踊らされている。今にも北から核ミサイルが飛んでくかに危機を煽り、我が国も核武装を推進すべしというアドバルーンが上がった。
 近年、拉致問題に代表されるように、この国は被害者意識ばかりを肥大化させてきた。その結果、他者の意識など考えようともしない、つまり、北朝鮮と日本の関係を冷静に見極めることなく、敵視するばかりである。問題の核心は、この日本が潜在的な核兵器保有国≠セと見なされており、近隣諸国にとってこの国は軍事的な脅威だということである。
 2004年6月14日、国際原子力機関(IAEA)は日本にある総ての核物質・原子力活動が平和利用のためのものであり、核物質が核兵器などに転用されていないことを確認した。他に、エクアドル、ラトビア、リトアニア、ポーランドの5カ国についても同様の結論が公表され、そうした国は計19ヶ国となったが、大規模な原子力活動を行っているのは日本だけであった。なお、IAEAは核兵器開発の監視を主任務としているような印象を与えているが、「原子力の平和利用を促進する」ための国際機関である。
 世界は核兵器保有国とそうでない国とに分かれているが、新たにそれを保有しようとする国は平和利用の名の下に核開発を進め、プルトニウムを抽出し、核実験へと至る道をたどっている。そうしたなかで、「日本原燃は2日、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場の試運転(アクティブ試験)で、国内の商業用施設では初めて、使用済み核燃料に含まれるプルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)の形で抽出したと発表した」(11月3日付「神戸新聞」)
 再処理工場にはIAEAや国の査察官が24時間体制で常駐、監視しているということだが、これによって日本はいつでもプルトニウムを手に入れることができるようになった。最も日本は、海外での使用済み核燃料の再処理によって多量のプルトニウムを溜め込んできた。それに、ナトリウム漏れ火災で壊れた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の再稼動によって、超核兵器級のプルトニウム(Pu239の純度が98%以上)も入手できる、世界に冠たるプルトニウム大国なのである。
 今回取り出されたプルトニウムは単体ではなく、MOXという形で既存の原発で使用するもの(プルサーマル)とさている。これによって、日本の再処理は平和利用のためのものであるということが担保されているというのだが、実態は次の通りである。
「しかしプルサーマルは電力業界が2010年度までに16‐18基での実施を計画しているが、ようやく四国、九州の両県で1基ずつ地元同意を取り付けたばかりだ。また高レベル放射性廃棄物の最終処分地も決まらないなど、依然として多くの問題を抱えている」(同「神戸新聞」)
 海外での再処理についても触れると、常に総発電量の75%を原発で賄っている原発大国フランスではこうなっている。
「1997年1月、ブザンソン大学の研究チームが『ラ・アーグ核再処理工場から半径35キロメートル以内でわずかながら乳児白血病の増加が認められる』と調査結果を公表、『他の地域と同程度』との反論も出て、論争になっている。『核のゴミ箱半島にするきか』と激しい反対の声が、いまなお、かげりを見せない。懸念は増幅するばかりなのだ」
「ラ・アーグは、現在、日本などと契約を結び、再処理の委託を受けている。核燃料の再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物は、専用輸送船に積み込まれ、シュルブール港から青森県六ヶ所村の再処理工場に送られる。その都度、輸送船が通過する沿岸各国のブーイングを浴びている。プロゴフの原発のほうはミッテラン政権によって中止されたが、ラ・アーグはその後も営業運転を続けている」(「世界」11月号・296ページ)
 なお、ラ・アーグでの深刻な核汚染の現状については、グリンピース・ジャパンが編集した「核の再処理が子どもたちをおそう」で詳しく報告されている。「2001年7月、国際的な医学誌に、フランスのラ・アーグにある再処理工場から10キロメートル以内において小児白血病発症率の上昇が認められた‐という論文が掲載」されたことを紹介し、その実態を明らかにしている。それは間違いなく六ヶ所村の明日の姿となるだろう。
 六ヶ所村に再処理工場では、すでにプルトニウムなどの放射性物質を含む水漏れ事故や、作業員の体内被曝事故が起きているが、水漏れは建屋内だから外部には影響はないとされている。胎内被曝については、「日本原子力技術協会」理事長の石川迪夫士が次のように言っている。この協会は原子力施設の安全管理などを監視する第三者機関だそうだが、なんともたいした第三者≠ェあったものだ。
「農業をやっていて泥が付かないことがないのと同じ。放射線管理区域は放射性物質が存在していい場所なので(体内被ばくを)皆無にすることは不可能。この点はご了解いただきたい」(7月5日付「神戸新聞」)
 さて、それではそうまでして推進されようとしている、新たな高速増殖炉サイクル≠ニはどのようなものか。それは、一方で「もんじゅ」の再稼動をめざしながら、もう一方で新たな高速増殖炉を開発するというもので、その費用は5年間で2500億円、実用化は2045年とされている。「もんじゅ」に注ぎ込んだ税金は無駄になるのだが、これを推進した連中は誰も責任を問われないし、今後も税金にたかり続ける構図がここにある。
 このサイクル≠ヘもちろん自己完結するものではないので、最終処分地(高レベル放射性廃棄物処分施設)が必要であることは言うまでもない。NUMO(ニューモ・原子力発電環境整備機構)が候補地を募集しているが、これに滋賀県余呉町が手を上げようとした。これは、10億円の調査費に目が眩んだ畑野佐久郎町長の調査費を食い逃げしようという愚かな浅知恵によるものだ。町民から反対の声が高まるなか、12月町議会で議論が行われたが、6日の記者会見で町長が誘致断念を表明した。
 かくして、恐るべき無責任と飽くなき公費へのタカリが危ない核政策の推進力となり、核による破滅へと向かおうとしている。未来を失いたくなければ、核燃料サイクルは止めなければならない。


石破茂氏の奇妙な論理

 元防衛庁長官の石破茂氏が、「週刊朝日」(12月1日号)で「『核論議』を封殺するな!」と主張している。その意図は「ちゃんと公の場で議論せよ。そうすれば、非核になる」というもので、なかなか興味深い内容である。核武装するとなると、@NPT(核不拡散条約)から脱退しなければならない、A日米関係が極度に悪化する、B軍事費が跳ね上がる、と石破氏は指摘する。
 @では、「日本がアメリカ、カナダ、オーストラリア、フランス、イギリスなどと結んでいる原子力協定は破棄ということになります。燃料の輸入や再処理、技術の供給が止まり、やがて原発は停止するということです」と言う。さらに次のように述べているが、その根拠は示していない。「風力発電で代替しようとすれば、日本中を風車だらけにしてもなお足りない。太陽光や熱を利用すると、原発1基分の発電量をまかなうのに膨大な面積を必要とするし、コストは25倍もかかってしまう」
 Aでは、「アメリカ核の傘は信用できない」ということになるし、合衆国政府が日本の核武装を望んでいないので、「日本の核武装は日米同盟体制への不信を自ら表明する」ことになると指摘する。Bでは、「核兵器を持てば、防衛費の大幅な増額は避けられない。核を維持するには膨大なコストがかかるし、日本が日米同盟から離れて自己完結的な防衛力を持つとなれば、なおさらのことです」と主張している。
 こんなに大きなリスクを犯さなくても、日米同盟の下でミサイル防衛を進めればいい、そうすれば将来的には1000発中999発は打ち落とせるようになる(不可能ではない)とおっしゃる。自らがミサイル防衛導入を決めたからとはいえ、さすがにそれは不可能≠ナはないか。それに、その研究のためにどれほどの費用が必要になるのか、については石破氏は語らない。
 核武装論に対して、石破氏は「戦略的というより衝動的な議論で、外国は危うさを感じるのではないか。われわれ、『安全保障家』は、純然たるリアリストなんです。防衛の議論は、すべからく理念ではなく、実務なのだ、というのが私の信念です」と確信に満ちている。なるほど、利害得失を冷静に判断し、一見良識的な結論を引き出しているようにみえる。しかし、本当にリアルな防衛の実務となると、ミサイル防衛なんていうまどろっこしいことはやめて、ミサイル発射基地を叩けという結論になるのではないか。
 石破氏の良識≠ノだまされてはいけない。米国の核の傘を承認する彼の非核≠ヘ、ウソと悪意に満ちた目くらましに過ぎないのだから。


「高速増殖炉からの撤退 ‐米・英・独・仏の政治判断‐」(制作 ストップ・ザ・もんじゅ)

 学者・官僚・独立行政法人(旧特殊法人)・電力会社・メーカーなどで構成されている「原子力村」には撤退とか中止という言葉がない。日本原子力研究開発機構(「もんじゅ」を手がけている)などは、「高速増殖炉開発は世界中で進められている」というデマまで飛ばしている。その実態は次のようなものである。
「高速増殖炉開発のパイオニアであるアメリカはもとより、イギリス、ドイツでも高速増殖炉開発からすでに撤退してしまっています。さらに現在のフランスの炉は増殖炉ではなく、しかも2008年で撤退することが決まっています。ロシアの炉も増殖炉ではありません。インドの高速増殖炉は、今年3月の『米印原子力協定合意』で軍事用であることが明らかになりました。今年、ブッシュ政権が提唱した『もんじゅ』を用いた日米間共同研究なる話も、アメリカの思惑は『核拡散に結びつきにくい核廃棄物の消滅・焼却処理研究』であって、軍事用高速増殖炉の開発は言うに及ばず、日本が進めているエネルギー開発を目的とした高速増殖炉の開発とも全く次元が異なります。孤立する者藁をもつかむ≠ニいうことなのか、原子力機構は少しでも自分たちに有利と判断したニュースを都合よく加工して、時には事実をねじ曲げ宣伝しているに過ぎません」(発刊に当たって)
 本書では欧米各国の開発の経緯、深刻な事故の発生、撤退の判断が詳しく紹介されている。そのなかで、経済的理由として例外なき経費増殖を指摘している。核燃料が増殖するから増殖炉と命名されているのに、増殖するのは経費では笑い話にもならない。米・英・独・仏ではいずれも開発段階で重大な事故を経験しており、万が一にも苛酷事故を起こしてはならないなかで、その修理費用や新たな安全対策で建設費が高騰した。
 ここにおいて、利害に捕われない冷静な判断が可能であれば、撤退という結論が当然でるはずである。だからこそ、日本を除く各国では高速増殖炉からの撤退が決断された。例えば、イギリス下院議会エネルギー委員会・第5報告書「高速増殖炉」(1990年)は次のように述べている。
「当委員会は、高速増殖炉はウラン不足に備えるための『保険』政策という観点からでのみ評価されるべきだと信じている。保険政策はリスクの大きさに対して掛け金が高すぎない場合には支払う価値がある。当委員会は、2050‐2060年までウラン資源が不足するためには、原子力の巨大な拡大が求められると結論した。そのような大規模な拡大の兆候はほとんど見られない」「高速増殖炉の設計が時代遅れになる危険性がある。数十年以内に商業利用にならない限り多額の開発費用は正当化できない。航空や医療の世界では30‐40年前に実験的に確立された技術は今日では完全に時代遅れなものになっているのは明白である」(27ページ)
 米国はどうか、次のようにまとめられている。
「第二次大戦直後、米国は高速増殖炉を原子力発電の主力と位置づけ、世界に先駆け開発を始めた。初期の世界の開発をリードしたが、開発途上で数々の重大事故を経験しその技術的困難性を知り、実用化をめざす前に開発の重点を基本的安全性の向上に移した。その間に軽水炉に追い越され、開発意義が薄れていくなかでインド核実験による核拡散問題に直面した。核兵器材料であるプルトニウムを大量に使用・流通させ、また、自身でも超核兵器級プルトニウムを生産する高速増殖炉の建設が核拡散問題を深刻にするという懸念から、開発はさらにブレーキがかかった。その上、原型炉段階で建設費の増大が判明し、経済性と必要性に根本的な疑問が投げかけられた」「こうして米国では安全性、核拡散問題、経済性、必要性とあらゆる面で問題が表面化し、それらを背景に、最後は政治の場が高速増殖炉開発に中止の引導を渡した」(7ページ)
 日本が直面している困難も、これら各国とかわるものではない。にもかかわらず、高速増殖炉と核燃料サイクルを捨てようとはしない。この先、「原子力村」の住民のなかから決断できる者が現れるのを期待できるのか、それとも苛酷事故が起きてしまうのか、悪いシナリオばかりが想像される。破局が起きる前に、高速増殖炉からの撤退をどうしても実現しなければならない。案内へ戻る


なにが派遣労働者の処遇改善だ!――あきれる派遣期間規制撤廃のまやかし――

 安倍内閣による露骨な財界・企業寄りの政治姿勢が止まらない。企業減税の大盤振る舞いの次はいわゆる「労働ビックバン」、労働分野での規制緩和だ。焦点は派遣労働のさらなる規制緩和、というより露骨な派遣労働ルールの改悪がもくろまれている。
 このところ支持率が続落している安倍首相だが、一皮むけば、企業・行政による使い捨て労働者の大量生産という財界指向は止まるところを知らない。

■はい上がれない“ワーキングプア”

 12月10日にNHKが「ワーキングプアU 女性たちの悲鳴――努力すれば抜け出せますか」というドキュメントを放映していた。前回に引き続いて2回目の放映だった。多分、多くの人が見ていたのではないかと思う。私も一回目は見ていなかったが今回はたまたま見ることが出来た。
 そこでは二人の小学生の子供を抱えて朝から深夜まで掛け持ちで懸命に働いている母子家庭の女性の働きぶりとその生活、あるいは子供の成長だけ心の支えとして働きづめの毎日を送っている姿などが描かれていた。
 今“ワーキングプア”といわれる、生活保護費以下で生活している派遣やパートなどの非正規労働者激増している実態がある。統計では400万人もいるという。そのなかの多くの人たちがそうした働き方から抜け出したいと思っている。しかし毎日の生活に追われ、また正社員の採用を渋る企業の姿勢もあって、一端そうした非正規の働きを余儀なくされた人には正社員としての就職口はきわめて狭き門になっている。それだけ労働市場が買い手市場になっているのだ。
 いつから日本は努力しても這い上がれないようになってしまったのか。NHKの番組はそうした問題意識を背景にしたドキュメントだった。
 実際、私自身の身の回りにもそうした非正規の労働を余儀なくされている人がいっぱいいる。ワーキングプアというのは、何もテレビの中の出来事ではないのはすでに多くの人が実感していることなのだ。今では働く人の3人に一人、女性では半分以上が何らかの形の非正規労働に携わっている。その数1600万人以上になる。
 なぜこうした非正規労働者が増えてしまったのだろうか。
 その直接的なターニングポイントは1995年、の当時の日経連が出した「新時代の日本的雇用」だ。そこでは終身雇用・年功序列の日本的雇用システムを転換することを提言していた。そこでは雇用の類型を基幹労働者、専門的労働者、パートなど非正規労働者に分け、基幹労働者の比率を減らしていくことを提言していた。それ以降、財界や企業は安くて解雇しやすい労働者を雇用することのメリットを身をもって知ってしまった。それまでは企業が営利活動をする場合、世間並みの人件費を負担することが企業活動の前提となっていたからだ。それがもっと安い人件費で企業活動ができるのだ、ということが当たり前の企業常識になってしまったわけだ。
 この提言はそれ以前のアメリカなどでの規制緩和が源流になっていた。80年代のレーガノミックス時代には、低賃金の非正規労働者が大量に生み出されていた。“ワーキングプアー”という言葉自体も、そのアメリカで使われた言葉なのだ。
 ワーキングプアの大量生産は財界・企業にとって意図的なものであって、財界などは“確信犯”以外の何者でもない。

■太鼓持ち

 こうした非正規労働者の“ワーキングプア”の実態を知って知らずか、安倍政権で経済財政諮問会議の民間委員に就任した八木尚宏委員(国際基督教大学教授)などは「独自な」派遣労働の改善策をのたまっている。その主張の中心は派遣労働の規制緩和と正規労働者の解雇規制の緩和だ。
 派遣労働の規制緩和については、いまの労働者派遣法で認められている派遣期間の3年という制限の撤廃が必要だという。その根拠は、派遣労働の期限が3年に制限されていると企業は3年に達する前に派遣労働者の雇用を打ち切るので、派遣労働者の安定した雇用を妨げている、というものだ。すなわち八代は派遣労働者の雇用安定の観点から派遣労働の3年という期限を撤廃すべきだ、と主張しているのである。
 しかしこうした八代(NHKの番組にも出ていた)の論法は派遣労働者の権利を容疑する見せかけの上で、安上がりの派遣労働の固定化や拡大をもくろむ財界や企業の思惑を代弁する噴飯ものの屁理屈以外のなにものでもない。3年という規制が撤廃されれば、派遣労働者は永遠に派遣の地位の止まらざるを得なくなるだろう。臆面もなく財界・企業の代弁役を引き受けている八代には怒りを禁じ得ない。
 そもそも企業が派遣やパートなどを多用するようになったのは、正社員よりも低コストで労働力を確保できるからだ。しかも非正規労働者は雇い止めなど、いつでも解雇できる無権利状態におかれていることをいいことに、解雇、雇い止めを脅しに使ってむちゃくちゃな働きを強制しているのが現実だ。
 現に派遣労働者の時給も引き下げられてきた。派遣労働ネットワークの調べによると、全国平均で94年に1時間1704円だった時給が01年に1465円になり、06年には1327円にまで引き下げられている。企業が正社員採用の門を狭め、派遣やパート予備軍を大量生産してきたことそものもが実質的な無法状態におかれている派遣労働などの単価を引き下げている原因になっているのが現実なのだ。
 安倍政権は何はともあれ経済成長を掲げ、取り巻きの御用学者などがその太鼓持ちになっているが、善意に解釈しても「いまの経済成長は明日の労働者の賃上げをもたらす」という仮説を前提にしたものだ。現実はその前提そのものをひっくり返したからこその空前の企業業績なのだ。いま企業業績が過去最高を更新しているが、これもリストラや賃下げによって実現したものであり、好調な企業業績そのものがリストラや賃下げの結果であり、企業業績が労働者の賃上げに結びつくどころか、結び付けを断ち切ってきたからこその企業の繁栄なのだ。
 こうしたことを百も承知で、派遣労働者の雇用確保を大義名分として派遣労働を固定化する派遣期間の撤廃などを主張する太鼓持ちには、厳しい反撃で答える以外にない。

■当事者の闘いを拡げよう

 このNHKの番組にも出ていた内橋克人氏は言う。勤労への報いが低ければ勤労意識が失われる、正当な勤労に報いる国のシステムがなければワーキングプアは多数派になる、そうした国がどうして豊かな国だといえるのか、とコメントしていた。そのとおりだろう。
 が、低賃金、生活賃金は労働権の問題でもある。労働権の確保は労働者自身の闘いの課題として位置づけるのが本来のあり方だ。現に個人として訴訟に訴えて正当な地位を獲得したり、個人加盟の労組の加入することで団体交渉などで正当な権利を獲得する事例も相次いである。こうした闘いを拡大し、あるいは既存の組合でも真剣に取り組んでいく必要がある。何しろワーキングプアの問題は、長時間、成果給に苦しめられている正規労働者の課題とワンセットの課題だからだ。
 現在の過酷な状況は大きなスパーンで考えれば、旧来の日本的労使関係がどのように再編されるかという攻防戦が始まっている、という事実を私たちに突きつけているということなのだ。解決の本線は、あくまで私たちがどういう闘いを起こしていくかにかかっている。(H)


コラムの窓・1万人の勧奨退職

 自民党の郵政造反議員があっという間に復党しました。議席の確保を最大の関心事としている連中にとって、郵政事業がどうなろうとお構いなしだったのです。ハイエナが去ったあとに残されたのは無残な骸、ではなく、追い詰められていく労働者の群れです。私もその群れのなかにいますが、もちろん、労働者としての誇りは持ち続けています。
 11月下旬、来年3月の勧奨退職に1万人が応募したことが明らかになりました。民営化目前の最後の勧奨退職、今なら公務員のまま辞められる、ということのようです。6月実施分と合わせると14000人、年間700億円の人件費削減だそうです。それにしても、50歳以上の対象者(約67000人)の約15%が職を失うとは、なんということでしょう。
 それほどまでに郵便局は荒廃してしまったのですが、「『郵政民営化』を徹底検証」している「週刊文春」は次のような数字を示しています。2005年の懲戒処分の状況ですが、総数2273人で国家公務員の懲戒処分の57・6%を占めています。
「公社が発表した資料によれば、処分の内訳は欠勤、保険不適正募集、郵便物の隠匿や紛失など多岐にわたるが、なかでも目立つのが、セクシャル・ハラスメントによる処分である」(12月7日号)
 上司がゆうメイトにという典型的な事例が紹介されていますが、その内容はおぞましい限りです。さらに、昨年の横領での懲戒免職は95人で、「こうした状況に対応するため、郵政公社も局内に防犯カメラを設置するなど、〇七年までに千五百五十億円を投入する」(同号)そうです。愚かな発想と無駄な支出、命令と服従の職場に犯罪がはびこるのは当り前なのに。
 もっと深刻な問題は郵政版トヨタシステム「JPS(ジャパン・ポスト・システム)」の破綻であり、すでに多くの雑誌で暴露されています。10月29日付の朝日新聞では、なんと1面に「郵政公社トヨタ式に混乱」という大見出しで載りました。問題になっているのは、JPSをやっているようで本当はやっていないという実態で、トヨタから乗り込んできた連中が「上辺だけの改善ごっこが氾濫」に怒っているというのです。
 しかし、ムリやムラをなくし、秒刻みでムダを排除するはずが、やればやるほどムリ・ムラ・ムダ≠ェ増えるのだから、やっているフリだけしておこうということになるのは自然の成り行きです。改善ごっこ≠ニいうなら、それはまさにトヨタの連中がやっていることであり、彼らのお遊びに付き合わされた日には長時間労働で病気になってしまいます。
 その職場の実態ですが、冬至前のこの時期が最も日の入りがはやく、午後4時48分です。だから、午後の配達は日暮れとの競争で、暗くなってしまうとバイクのヘッドライトで宛名を確認する状態です。利用者からは、「このごろ配達が遅くなった」とたびたび言われるし、「遅くまで大変ですね」と同情もされています。そこで一句。  (晴)
月明かり その下でなお 宛名読む 我が労働の いとしくもある            案内へ戻る
   


住基ネットはプライバシーを侵害し違憲と 大阪高裁判決!
地方自治体は住基ネットから離脱せよ
 国は住基ネットを廃止せよ!


住基ネットからの離脱を認めた大阪高裁判決


 去る11月30日、住基ネットはプライバシーの侵害として違憲の判決があった。控訴審に進んだ原告は、大阪府5市の住民計16人である。
 大阪高裁の竹中省吾裁判長は「住基ネット制度は個人情報保護対策の点で無視できない欠陥がある。拒否する人への適用はプライバシー権を著しく侵害する」と違憲判断を示し、守口、吹田、箕面の3市に原告住民4人の住民票コードを削除するよう命じた。しかし、慰謝料請求については、原告の訴えを認めなかった。
 竹中裁判長は、氏名などの本人確認情報や住民票コードについて「取り扱いによっては、個人の期待に反して私生活上の自由を脅かす危険を生じることがあり、プライバシー情報として自己情報コントロール権の対象となる」と判断した。
 住基ネットの制度に関しては、(1)自治体が独自に他の機関に情報提供することができ、本人がその目的を知ることが困難(2)第三者の利用や行政機関の目的外利用を禁じる制度的担保が十分ではない(3)少数の行政機関が個別に保有する個人情報の範囲が広がり、情報が結合・集積されて利用される可能性があるなどと問題点を指摘した。
 その上で「行政機関で集積された情報が(住民票コードを使って)データマッチングや名寄せされ、住民の多くのプライバシー情報が本人の予期しない時に、予期しない範囲で行政機関に保有され、利用される具体的な危険がある」と判断した。そして「同意しない原告に対する住基ネットの運用はプライバシー権を著しく侵害し、憲法13条に違反する」とした。
 しかし、情報漏えいについては、「相当厳重な安全対策が講じられるなどし、現時点において、
漏えいする具体的危険性があるとまでは認められない」とした。
 住基ネットをプライバシーを著しく侵害するとした判決はすばらしい。よくここまで踏み込んだ判決を竹中裁判長は出したものである。それならば、情報漏えいについても認めてほしかった。住基ネットのセキュリティがずさんなのは、裁判でも明らかなのだから。
 
竹中裁判長が自殺
 11月30日に、住基ネット違憲判決を出したばかりの大阪高裁竹中裁判長が、自殺との報道があった。以下その記事(2006年12月3日 asahi komより)を引用する。
 「3日午前9時5分ごろ、兵庫県宝塚市内の大阪高等裁判所第7民事部総括判事、竹中省吾(しょうご)さん(64)方2階の書斎で、竹中さんが棚にショルダーバッグのベルトを結びつけて首をつっているのを、妻(59)が見つけ、110番通報した。竹中さんはすでに窒息死していた。目立った外傷がないことなどから、宝塚署は自殺とみている。遺書は見つかっていないという」。
 「竹中さんは先月30日、大阪府内の住民が自治体を相手に住民基本台帳ネットワークからの個人情報削除を求めた訴訟で、『拒否している住民への運用は違憲』として、住民勝訴の判決を裁判長として言い渡していた」。
 「同署の調べによると、竹中さんは妻と2人暮らし。2日は夕食をとり終わった午後7時ごろ、1人で書斎に上がっていったという。深夜から3日未明にかけて死亡したとみられる。同高裁によると、1日は通常通り出勤し、4日にも裁判の期日が入っていたという」。
 「竹中さんは兵庫県出身で70年に判事補となり、大阪、神戸両地裁判事や広島家裁所長などを経て04年9月から現職。神戸地裁判事だった00年1月には、兵庫県尼崎市の公害病認定患者らが道路を設置・管理する国などを相手取った『尼崎公害訴訟』で、排ガスと患者の健康被害の因果関係を認め、汚染物質の排出差し止めを認める判決を言い渡した」。
 「大阪高裁には3日午前、兵庫県警から連絡が入った。小野憲一・同高裁事務局長は「最近の執務状況、健康状態などに変わった様子はなかったと聞いており、大変驚いている」とのコメントを出した。同高裁によると、遺族の意向で葬儀の日時・場所や自宅は公表していない」。
住基ネットの判決を出してわずか3日で自殺とは。非常に残念であるし、政府筋から何らかの圧力があったのかどうか、事実の解明が急務であろう。今では数少ないであろう、権力に屈しない立派な裁判官竹中省吾さんのご冥福をお祈りしたい。

箕面市の藤沢純一市長は住基ネット違憲判決受け入れ表明 
箕面市は、住基ネットの離脱を認めた大阪高裁判決を受け入れ上告しないことを決めた。
 以下12月7日 共同通信より引用する。
 「箕面市の藤沢純一市長は7日の市議会で、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)からの個人の離脱を認めた大阪高裁判決について、上告を断念する方針を表明した。住基ネット訴訟で個人の離脱を認める判決が全国で初めて確定する見通しとなった」。
 「2004年の市長選で、住基ネット参加の選択権を個人に与えると公約したことを受けたとみられる。市議会で、藤沢市長は「住基ネットには情報漏えいなどの危険があり、判決を支持する」と述べた」。
 ただ藤沢市長は、原告以外の者の住基ネットからの離脱については認めない方針である。藤沢市長は、市長選の公約どおり市民全てに住基ネットからの離脱の自由を認めるべきである。

関西住基ネット原告団も頑張るぞ 
さて私は、関西住基ネット訴訟原告の1人である。こちらの裁判は、一審で明らかになった住基ネットのセキュリティのずさんさ等、おもしろくなっている。
 次回控訴審は、12月21日11時、大阪高裁202号大法廷で行われる。多くの傍聴をよろしくおねがいしたい。 「k」


連載 グラフで見る高校生の意識調査 その5

 問5 問4で2(専門学校まで)と答えた方にお聞きします。どんな分野に進みたいですか。
 専門学校の希望分野は男女とも看護・医療系がトップ。男子は、コンピュータ、調理・栄養部門が続き、女子は、美容・理容、保育が続きます。
 前回(14年前)と比べると、その他を選んだ人の数が増えており、選択肢が多様化していることがわかります。
 前回ゼロだった男子の保育部門に希望者が現れたのは、保育士が男性の職業として門戸が開かれたことが理由と考えられます。同様に、医療部門の希望者が増えたのは男性看護師が認められたことが影響しているのかもしれません。

 前回調査との比較をもう少し見てみると、男子の機械が15・5%から6・4%に、コンピュータが17・9%から12・7%に、情報処理では11・9%から1・3%にも減少しています。これは、産業構造が変化し物づくりから後退したことが影響していると思います。コンピュータ、情報処理も、技師の養成がある程度整い人材を募る割合が減ったからでしょう。ところで、娘の友達は、昼間は病院に見習いで勤め、夜に鍼灸の専門学校に通って東洋医学を学んでいます。自分の興味あることに専念し成長していく姿を見ていると、男女を問わず頼もしさを感じうれしく思います。若者が目的を持ち、健全に社会に参加できる社会を築くことが、これからの課題でもあるでしょう。 (恵)


注目すべき逗子市長選挙と横須賀市での署名運動の成功

 期日前投票総数が前回と前々回に比較して五万票も増え十万票を超えるという空前の記録を作った沖縄件知事選を除けば、安倍自民・公明党連立政権は、十月二十九日の北海道第二の都市旭川市長選、十一月二日の熊本市長選、十一月十二日の福島県知事選、十一月十九日の福岡市長選、また特記すべき事に冬柴氏の地元同日の兵庫県の有権者約三十七万六千人の尼崎市の市長選でも四十%の低投票率ながら約六万票の大差で敗北しました。このように政府与党自らの推薦候補が続けて五連敗もしているのです。
 十二月十日投開票の逗子市市長選挙でも、自公両党と民主党との対決図式で行われたのですが、民主党・三浦半島連合・神奈川ネットワーク運動逗子の推薦を受けた平井候補が前回より二ポイント少ない四十八・五五%の低い投票率であったにも拘わらず、一万四千六十五票を獲得して、対立候補に約四千四百票の大差をつけ当選しました。こうして自公両党は県知事選や市長選での連敗記録をさらに伸ばしたのです。
 沖縄県知事選での思わぬ苦戦でも明らかになりましたが、安倍「タカ派」政権では、小泉前首相が味方に巻き込んできた無党派層の票をさっぱり取れなくなったとのワーカーズの評価は正しかったのではないでしょうか。
 公聴会での教育基本法「改正」のやらせ発言が大々的に発覚する中でも、衆議院での教育基本法強行採決をしさらに参議院でも強行採決を画策しつつ今国会成立を追求する安倍「戦争準備」政権を、来年の統一地方選挙や参議院選挙において、労働者民衆の力で徹底して追いつめ、安倍政権を打倒する闘いを着実に推し進めていきましょう。
 また十二月十日が最終日となった横須賀市での「住民投票条例策定を求める署名運動」は、最低法定数七千百十二筆を、既に十一月下旬には集めきり、月末には一万筆を突破しています。最終日までには二万筆を集めるとの気迫で十二月九日・十日に最大の動員で署名を集めました。まだ最終集約は発表されていませんが、二万筆を大きく超える勢いであることは間違いがないようです。
 なぜならば、この署名運動の中心を担うのは、「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会(共同代表・呉東正彦弁護士)」で、神奈川新聞の世論調査では、0六年一月時点で六割が配備に反対し、六月の市長の容認発言後も依然として六割が反対を意思表示しており、署名の受任者は一万八千人もいるのですから。
 五人の請求代表者の一人である呉東正彦代表は「市長は多くの反対意見を聞かずに容認に転換したが、われわれはもうなすべきことがないのでしょうか。行政が市民の声に背を向けるようなら地方自治制度にのっとって、重要なことは住民投票で決めるべきです。住民投票は世界的な流れです」と訴える。同じく請求代表者の新倉裕史さんは「戦争・原子力の隣で生活するのか、平和な町で楽しく過ごすのか、子どもたち孫たちのことを思い署名をお願いします。これまで長年、国家の政策に従ってきたが、この町の将来を決めるのは市民でしょう」と力強くこの運動を開始したのです。着実に運動は広がっています。
 住民投票条例の審議は、0七年二月臨時議会になる予定です。全国的にも大きな意義を持つ闘いなので、しっかりとその闘いを見届けていきたいものです。    (笹倉)
 

京都に通う一大阪人の記

 京都へしばしば行くようになった。年よりの冷水でお勉強≠ノ。ついでにとことん京都をみてやろうという慾が出たが、目的地へ行って帰ってくるだけでやっとこさ。その範囲で出会ったことを書いてみたい。
 ながく通えば遠まわりの道でなく、経済的に最短距離を知るもので、高山彦九郎がペタンと座っている京阪三条へ出て、バスを利用する経路が気に入っている。京阪三条駅を下車、標識に従って路上に出ると、人通りの余りない彦九郎の背後の方面に首を出すことになる。
 いつの日だったか路上へ出る出口で、うらなり≠ンたいな長身の細くてムサくて若い男の人が、無料の分厚い本を配っていて、私にもくれた。「ビガー」という小冊子、‐未経験者でも3回で10万稼げる‐とサブタイトルの文句。これがどういう世界≠ゥは想像をまたない。風俗なんとかであろうし、殺人事件にもことかかないのでは? この小冊子をめくる気にもならなかったが、あるいは若者の悲鳴を文字にしたようなものとも思う。
 なんでオバアの私に? そんなことはどうでもいいが、こういう人たちは機動性あるのか、(本を配る人々)次の京都行きの日にはいなかった。ジャン・ジュネならば、こうした世界に聖≠ネるものを見出そうとしたであろうが。
 アジア、アフリカの都市には、こうした世界がいっぱいあるのでは? 私は外から眺めている他はなかった。とても入っていく勇気はない。しかしカタパンの十手もちにさらされるのも、やりきれない思いがする。まだ若い人々なのに、魂を抜き取られて慣れっこになっていく世界、手足をもがれて。
 三条大橋を渡ればおシロイの下に己を塗りこめた芸子さん(私の思いちがいかも?)の修業する先斗町=B三条大橋を渡る手前には、Big Issueを売るオッチャンに並んで、余りキレイでもないがバアサマが子ネコを箱にのせて里親探しの手製の看板と、寄謝してくれた人々に、これも手製のお礼のしるしのカードを用意して座っている。
 山之口バク氏の詩の坐像≠ノ類する人は見当たらない。ひょっとすれば接客嬢が内にその魂を秘めているかも? これも私の思い過しか・・・。川のこっちと向こう、華やかさの中と足もとに残酷さの中を生き抜く人々・・・。私の感傷かな?
 これ以上はふみこみえない岩盤のようなものを感じた。京都魂とでもいえるものかもしれない。ふぶ漬け≠フ中身はこれだった。各地ではムダ使いの追求。必要にして不正≠フ戦争‐イラク戦争‐に積極的に参加したと明言する新しい首相。日本中騒然としてきました。  2006・12・8 宮森常子

色鉛筆  ガソリン税は、廃止するか、減税するべきだ。

 日曜日の朝、あるテレビ番組を見ていると道路特定財源改革を取り上げてコメンテーター達が意見を交わしていた。ふんふんと頷いていたが、何かおかしい?と思い、新聞やインターネットから探し出して「道路特定財源」というものを調べてみた。
ガソリンにかけられる税金の中に揮発油税というものがあり、これは、政府の財源対策として1949年につくられ、使い道を特定しない一般財源だった。ところが1953年「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」が制定され、翌年から揮発油税を道路整備のための特定財源に充てられることになった。この後も、石油ガス税、自動車重量税、地方道路譲与税、軽油引取税、自動車取得税が次々とつくられ、これらの税金はすべて道路特定財源になっている。この道路特定財源の税収は国、地方含めて1970年度には、0.8兆円であったのが、2004年度には7倍以上の5.6兆円というのだから驚いてしまう。なんと私達は、たくさんの税金を払っていることが改めて分かった。
そして、今回問題になったのは、安倍首相が構造改革のひとつとして、国の道路特定財源(約3.5兆円)の大半を占める揮発油税(約2兆9600億円)を国の借金、返済などに使える一般財源にしようとした。ところが、これに対して、自民党の道路族は猛反対して「必要な道路整備は続けて、余剰分は一般財源化する」ということになった。TV番組のコメンテーター達は、自民党の議員達は、自分の地元にお金を持っていく為には、どうしてもこの財源が必要だから必死に反対したが、日本の財政は破綻しているのだから、一般財源化するべきではないかということだった。
しかし、私がおかしいと思ったのは、揮発油税を道路特定財源にしたのは道路整備が目的であって、経済大国となった現在、道路整備は充分すぎるほど充実している。その目的が達成したならばこの税金は廃止するか減税するべきではないかと思ったからだ。調べていくとガソリン税には、揮発油税と地方に譲与される地方道路税があり、現在1リットルに対して、揮発油税48.6円、地方道路譲与税5.2円、合わせて53.8円の税金を払っている。ガソリン価格の約半分が税金ということなのだ。さらに揮発油税は、本来税率では1リットル24.3円なのだが、道路整備を急ぐ名目で引き上げられた暫定税率で2倍の48.6円に増税されている事も分かった。今回の見直しでこの暫定税率は現行のまま維持するというのだから腹が立つ!!不必要な道路を作って税金の無駄遣いをしておき、それらすべてを私達に税負担を押しつけている。これこそがやりたい放題の自民党政治だ。この道路特定財源ができてから52年間、自民党の道路族や国土交通省の官僚、ゼネコンなどが利益をむさぼっている。(美)       案内へ戻る