ワーカーズ466号  2012/6/15     案内へ戻る
大飯原発3・4号機の再稼働を許さない! 野田政権は退陣せよ!
一般大衆に犠牲を強いる消費税増税反対! 累進課税強化・法人税増税を!


  野田首相は、6月8日、関西電力の大飯原発3・4号機を再稼働すると表明した。野田首相は、「再稼働すべきというのが私の判断だ」、「夏場限定の再稼働では国民の生活は守れない」、「原発を止めたままでは日本の社会は立ちゆかない。国政を預かる者として、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできない」と言った。
  皆の生活を守るというなら、原発を止めるというのが筋ではないか。昨年の3・11東北大震災での原発事故で、放射能汚染を初め様々な被害が出ているのに本当にひどいものである。そもそも全く信頼できない原子力安全・保安院が作成した、30項目の「安全基準」もクリアしていない。ベントフィルターや免震重要棟の設置、防潮堤のかさ上げは工事の計画さえ提出すればいいというもの。
 この野田首相の原発再稼働を側面から支援したのは、橋下徹大阪市長ら関西の首長らである。橋下市長は、今までの原発再稼働反対の旗を下ろし、5月31日「うわべばかり言ってもしょうがない。事実上の容認です」と「夏場限定」だが、大飯原発再稼働を容認した。この限定稼働中に、原発事故が起きたらどうするつもりなのだろう。橋下の化けの皮が簡単にはがれてしまった。多くの力を結集し、大飯原発の再稼働を何としても食い止めよう。
 野田政権は、消費税増税に政治生命をかけているという。こんなものに、政治生命をかけられてはたまったものでない。今、民主・自民・公明3党で消費税増税について実務者協議が行われている。自民党は政府案の、2014年4月に消費税8%、15年10月に10%について賛成するとのこと。
 消費税は、所得の低い人ほど負担が高くなるものであり認められない。ましてや多くの人が失業や低賃金で苦しんでいるのに、一般大衆の生活はさらにひどくなっていく。増税は、所得の高い人から取るように累進課税の強化や、相続税の増税、法人税の増税、等をすればいい。
  3年前に、民主党に政権が交代したが前政権の自民党とまったく変わらない財界・官僚べったりである。結局、今の状況を少しでもよくしようとすれば、私たち自身が具体的行動を強化するしかない。  (河野)


沖縄通信・・・「欠陥機・オスプレイを沖縄に配備」

1.7月に普天間飛行場に配備
 宜野湾市の真ん中にある世界一危険な普天間飛行場に、米軍は現在使用中のCH46ヘリコプターに変えて、新型ヘリコプター(垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ)を今年12機・来年12機、合計24機配備することを公言してきた。ところが、防衛省はこれまで「米軍から聞いていない」とのウソをついて、沖縄側にオスプレイの配備を隠してきた。
 米軍は当初、10月に普天間飛行場に配備すると言っていたが、7月中に米国から12機分のオスプレイの機材を船舶で那覇軍港に搬入し、那覇軍港でオスプレイを組み立てて、那覇軍港から普天間飛行場に直接飛行させて配備する方針を固めたと言われていた。

2.オスプレイ配備に対する沖縄県民の怒り
(1)配備計画の朝令暮改
 日本政府は3月には、沖縄に配備する前に岩国基地(山口県岩国市)かキャンプ富士(静岡県御殿場市)に一時駐機させ、飛行訓練をさせる案を検討したが無理と否定する。政府がオスプレイを直接沖縄に配備すると発表してから、国民新党の下地幹夫氏(沖縄選出の国会議員で新基地建設推進派)が、こんな危険なオスプレイを直接沖縄に配備するのは沖縄の反発が強い、キャンプ富士に一時注機させるべきだとの政府要請をしたが、これまた地元の反発が強くて調整できる状況ではないと言うことでダメになった。
 ところが、日米両政府はまた方針を変更して、7月20日ごろオスプレイを岩国基地に搬入し、組み立て作業を実施し、2週間程度の日程で試験飛行などを行い、安全性を確認し、8月初旬にも普天間基地に正式配備すると言い出した。沖縄側の強い反発に驚き、なだめすかせる姑息な手段だ!
(2)欠陥機・オスプレイ
 この垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは米国でも「欠陥機」として有名。1991年以来、開発段階で4件、実戦運用開始後も3件の墜落事故などの重大事故を起こし、これまで死者は36人に上がる。一時は「未亡人製造機」というあだ名がつけられた。
 実戦配備されてからも、昨年4月にアフガニスタンで墜落事故。今年4月11日には、アフリカ・モロッコでの合同演習中に墜落し、海兵隊員2名が死亡、2名が重傷を負う事故を起こしている。
(3)森本新防衛大臣も沖縄差別
 新防衛大臣に赴任した森本氏は、オスプレイが4月にモロッコで起こした墜落事故について、米政府から「機体に不具合はなかったと断定した。人為的ミスだった」との調査結果概要が伝えられただけで、問題はないとして、沖縄配備を進めると言っている。
 全くひどい話である。モロッコでの墜落事故の最終報告書はまだ出ていないのである。日本の大臣であれば国民の命を最優先に考え、「危険だと言われていたオスプレイがまた墜落した。その原因究明が終わり最終報告が出るまで、配備を延期してほしい」と、最低限この位のことを米国側に要求し交渉するのが当たり前ではないのか?
 このオスプレイは構造的に安全面で問題があると多くの専門家が指摘している。普通のヘリコプターは「オートローテーション機能」(空中でエンジンが停止しても機体降下時に気流を受けて回転翼を回し、浮力を発生させて安全に着陸するための機能)があるので、民間市街地に墜落することなく、基地に帰還できる。
 しかし、このオスプレイの構造的特徴は、回転翼の角度を変えることで、ヘリコプターモード(回転翼が上向きでヘリコプターのように飛ぶ)と固定翼機モード(回転翼が前向きになり普通の飛行機のように飛ぶ)に切り替えて飛ぶことにある。
 問題は、ヘリコプターのようにオートローテーションが機能するのか?という事である。「エンジン停止時の緊急着陸では、オートローテーションに頼らない。固定翼機モードで滑走する」と、ボーイング社のガイドブックは説明し、事実上の機能欠如を示唆している。
 市民団体「リムピース」が発行したパンフには「簡単に言えば体重が重いから小さな傘では落下スピードを緩和できない。だから、エンジンが停止すると地面にたたき付けられる。それがオートローテーションが利かないと言うことだ」と解説している。

3.宜野湾市民大会の開催
 宜野湾市の真ん中にある普天間飛行場に、こんな危険なオスプレイが飛ぶことに9割以上の沖縄県民は不安を感じて、オスプレイの配備に反対している。もし、普天間飛行場に配備されれば、ヘリパットのある伊江島や高江にも飛ぶことになり、たえず沖縄本島上空を飛行することになる。
 その最初の抗議行動として、6月17日(日)午後2時より、宜野湾市の海浜公園野外劇場に約42団体が参加して、「オスプレイ配備の阻止!普天間基地閉鎖!」をめざした宜野湾市民大会を取り組む。
 その前の、13日から16日までも普天間飛行場前での「集会」や「座り込み」活動も取り組む。
 日米両政府の高圧的な態度に怒る沖縄県民は、このオスプレイ配備を体を張ってでも阻止する覚悟である。オスプレイ配備阻止の闘争は「島ぐるみ闘争」に発展することも十分考えられる。(富田英司)

★追記・・・「沖縄県議選報告」
 6月10日、第11回県議会議員選挙(定数48)が行われた。
 今回の県議選は、仲井真県政与党が過半数を奪取出来るかどうか?注目が集まった。日本政府も仲井真県政与党の過半数に期待して、「知事が辺野古移設を再び容認する政策に転換したとき、知事を支える環境が整う」との見方をしていた。
 今回の仲井真県政下で2度目となる県議選の結果は、野党・中道が1増の27議席を獲得し、前回県議選で12年ぶりに奪取した過半数を堅守した。
 仲井真県政与党は、1972年の県議選以来、知事任期中に2期連続で少数与党に甘んじる歴史的敗北をした。与党に歩み寄る民主も議席を減らし、自公に民主を加えて議案採決を乗り切ることも不可能となった。
 党派別当選者の内訳は、県政与党の自民が1減の13人、公明3人、無所属5人の計21人。野党は社民が1増の6人、共産は5人を維持、社会大衆党は1増の3人、無所属・諸会派は7人の計21人。中道は民主が1減の1人、そうぞうが1人、国民新党が1人、無所属が3人の計6人。
 最後に、今回の投票率は52・49%と過去最低を更新した。沖縄選挙の大きな問題として、どの選挙でも投票率が下がっており、選挙離れは深刻になっている。案内へ戻る


原発再稼働へ踏み込んだ野田首相会見 地獄の釜の蓋を開けさせてはならない!

 6月8日、野田首相は「大飯発電所3、4号機の再稼働につきまして、国民の皆様に私自身の考えを直接お話しさせていただきたい」とした、記者会見を行いました。言うところは、次の通りです。

「4月から私を含む4大臣で議論を続け、関係自治体のご理解を得るべく取り組んでまいりました。夏場の電力需要のピークが近づき、結論を出さなければならない時期が迫りつつあります。国民生活を守る。それがこの国論を二分している問題に対して、私がよって立つ、唯一絶対の判断の基軸であります。それは国として果たさなければならない最大の責務であると信じています」
「国民生活を守ることの第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認されている」
「国民生活を守ることの第2の意味、それは計画停電や電気料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません」

 これほどの恥知らずなウソが他にあるでしょうか。電力需要のピークが近づいたので原発を再稼働しなければならない、大飯原発3、4号機は福島のようにはならない、このまま原発を止めたら豊かな暮らしを支えている安価で安定した電気を失うことになる。原発の維持こそが国民を守るのであり、国の最大の責務なのだそうです。
 東電福島原発事故の全容は不明なのにどうして再発が防止できるのか、次代を担う子どもたちのために必要なのは再稼働ではなく廃炉です。安全だから大飯は再稼働だと言いながら、「実質的に安全は確保されているものの、政府の安全判断の基準は暫定的なもの」だと言う。暫定的な安全ってなんでしょう。結局、このまま原発を止め続けたくないだけではないでしょうか。
 被災地の人々を切り捨て、原発利権の延命に汲々としながら、野田首相はこんなことまで言います。

「福島で避難を余儀なくされている皆さん、福島に生きる子どもたち。そして、不安を感じる母親の皆さん。東電福島原発の事故の記憶が残る中で、多くの皆さんが原発の再起動に複雑な気持ちを持たれていることは、よく、よく理解できます。しかし、私は国政を預かるものとして、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできません」
「再起動させないことによって、生活の安心が脅かされることがあってはならないと思います。国民の生活を守るための今回の判断に、なにとぞ御理解をいただきますようにお願いを申し上げます」

 福島は今も事故の真っただ中にあるのに、まるで過ぎ去ったことのように言う。こんなものに〝国政を預かるもの〟の責務を振りかざされてはたまりません。フクシマと電力消費地を対立させるこうした手法は、オキナワを米軍に差し出すことが〝安全〟の担保だとするこの国の在り方の再現にすぎません。
 まぼろしのような〝安全〟を人質に、野田政権は企業に安い電力を供給し続けるために原発の延命を謀ろうとしているのです。再稼働によって私たちの生活の安心を投げ捨てさせてはなりません。 (折口晴夫)


急進左派連合と新民主主義党は再選挙をいかに闘っているか

予断を許さない選挙情勢

 6月2日までにギリシャ再選挙(17日投開票)の中盤情勢世論調査が出そろい、争点の財政緊縮策をめぐっての2強政党対決は、推進派の中道右派である新民主主義党(ND)が、反対派の急進左派連合(SYRIZA)をわずかの差で上回り、首位を保っている。
 主要紙、テレビ、インターネットニュースサイトが実施した10種類の世論調査の内、リベラル系タネヤ紙などの8調査は、新民主の支持率が23〜26%、急進左派は22〜24%という結果でほぼ一致した。残りの2つでは急進左派連合の方が支持率が高い。前回選挙で目立った態度未定者が減少して、選挙戦は2強政党対決の構図となってきた。
 先月の総選挙では、旧連立与党が総額1300億ユーロ(1620億3000万ドル)の国際支援プログラムの条件とされる厳しい財政緊縮策を進めた事に反発し、ギリシャ国民の多くが小規模政党を支持した事から、急進左派連合が大躍進した。しかし同党は国民に対し、欧州連合(EU)がギリシャが痛みを伴う改革を履行しなければ支援を停止する意向を示した事について、脅しに過ぎないと主張している。さらにツィプラス党首は銀行国有化や歳出削減合意の破棄も掲げており、金融市場と国際社会には同氏をギリシャのチャベスだとの声もある。そのため、ギリシャ国民は次第に党首の反市場的な発言に不安になっており、そのため同党は5月選挙で勝利した勢いは示せない可能性がある。
 このため再選挙では、緊縮財政路線を進める新民主主義党が、同国をユーロ圏離脱に追い込みかねない政策を訴える急進左派連合を打ち負かす現実性が高い。しかし新民主主義党への支持とは、結局の所、再選挙により急進左派連合が勝利した後に予想されるユーロ圏離脱を避けるための消去法による支持と見られており、今後の展開は予想が困難である。
 ギリシャでは選挙法の規定では、日本のように投票日前日まで「世論調査」という名の露骨な情報操作と投票行動の誘導ができないように投票15日前からマスコミは世論調査を公表できなくなる。そのため、公式にはこれが最後の調査結果の報道になる。
 ギリシャの観光産業は国内総生産(GDP)の15%、全雇用の20%を占め、失業率が20%を超える同国経済の生命線の一つである。しかし政府債務危機に見舞われて以降、ユーロ圏離脱論も浮上する中で社会的混乱を懸念して海外からの観光客の足も遠のき始めている。今年の予約件数は前年比25%減に落ち込み、特にドイツ人観光客の客足は半減している。ギリシャ中央銀行によると、第1四半期の観光収入は3億9630万ユーロと、すでに前年比15.1%減となっている。
 ギリシャで増大する社会不安は、先月の総選挙で緊縮財政か否かをめぐって決着がつかず連立も不調に終わったため、再選挙にもつれ込んだ事でさらに増している。再選挙が行われる6月17日は、観光業にもとってのかき入れ時でまたまた困難な局面とはなる。
 この間のドイツとギリシャの関係の悪化を受けて、昨年ギリシャを訪れたドイツ人観光客は約220万人だったが、今年はギリシャの代わりにスペインやトルコを目的地に選ぶドイツ人が多いという。すでに10軒以上のホテルが廃業した首都アテネをはじめ、大きな都市や高級ホテルほど深刻な打撃を受けていると伝えられる。
 またギリシャの観光収入の最大25%を占める国内旅行も先行きは暗い。ギリシャ国民は、給与や年金の削減、リストラ、増税で生活自体が苦しくなっているのが実情だからだ。

急進左派連合と新民主主義党の選挙戦術

 急進左派連合のツィプラス党首は、ギリシャを過去最悪の景気後退に陥らせたとして、救済策の合意内容を拒否している。一方、新民主主義党のサマラス党首は、合意を破棄すればギリシャは確実にユーロ離脱に追い込まれると主張する。
 急進左派連合の経済公約は、同党が政権に就き次第、ユーロ圏などと合意した緊縮策を即時撤回した上で、欧州連合(EU)に対し、債務内容の見直しや支払い猶予などを求めて再交渉するというものだ。同時に、民間銀行の国有化や最低賃金の引き上げ、失業給付の期間延長、富裕層への増税などの弱者向けの救済策を盛り込んでいる。
 ところが、緊縮策の即時撤回などを打ち出した内容が「非現実的だ」との批判が左派陣営から噴出した。緊縮策支持派も「国が破産する」(新民主主義党)と猛反発し、緊縮策に反対する左派も、「一方的に緊縮策を拒否しながらEUに交渉を求めるのは無理だ」(民主左派)、「人気取りに過ぎない」(ギリシャ共産党)などの批判が相次いでいる。
 一連の世論調査によると、ギリシャの有権者の大半が金融支援の条件には反対であるものの、ギリシャがユーロ圏に留まる事を希望している。そしてツィプラス党首は、わが急進左派連合ならそれが可能だと強気一方の主張をしているが、その言動が逆効果となって有権者の不安を増大させ、有権者に彼らを全面的に支持するのを躊躇させている。
 一方でEU・IMFは、ギリシャが次回融資を受けるためには、同国が合意した改革を履行しなくてはならないと明言している。他方でギリシャ政府は、早ければ今月中にも手元資金が底をつく恐れがあると表明しており、まさに時は限られているのである。
 つまり急進左派連合は自らの主張を貫きつつ、左派の支持層を幅広く取り込む戦術であり、片や新民氏主義党はユーロかドラクマかという二者択一を迫る戦術を取っており、こうして結局はギリシャのユーロ圏残留か否かが選挙の争点として浮上しているのである。
 こうした中、6月1日からツィプラス党首は「話し合う時だ」というメッセージを掲げ局面打開のため、ギリシャがユーロ圏にとどまる交渉を求める考えを繰り返し表明しつつ欧州の左派勢力による支持を求めて独仏等の訪問を開始し、緊縮策を和らげ成長をめざす新たな政策を求めるオランド仏大統領らとの連携に期待する考えを示している。
 欧州訪問ではツィプラス党首が各国の政府当局者と会談する予定はないものの、フランスの大統領選に立候補したジャンリュック・メランション氏やドイツのグレゴール・ギジ氏ら、左派の有力政治家と会談する予定だ。独仏両国の国民にメッセージを伝えるため、パリとベルリンで記者会見も予定するという。党首は「われわれは全く反欧州勢力ではなく、欧州の社会的結束を守るために戦っている。主要勢力が緊縮策を主張すれば欧州が不安定化し、ユーロ圏が崩壊する恐れがあるため、おそらくわれわれは欧州で最も親欧州的な勢力だ」と語った。
 また党首は、ギリシャが3月に国際社会から支援を受けるために合意した緊縮策については「紙くず」になったとする一方、自分が政権を取ればギリシャをユーロ圏内にとどめる新たなポリシーミックスを模索するとも指摘。「確かに、われわれは欧州の支援と資金が欲しい。しかし、欧州の納税者のカネを無駄にしたくはない。これまでの2度の支援は底なしのごみ箱に投じられた。それが続けば、6カ月以内に3度目の救済が必要になる。欧州の人々や指導者はその事実を認識すべきだ」と述べた。
 さらに緊縮策に固守しているメルケル首相に対して成長策を求める声が内外で高まっている事について、「メルケル首相は初めて極めて孤立している」とコメント。「ギリシャだけでなく、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドなど、緊縮策に基づく財政再建プランが実施されている国では、そうした政策が明らかに失敗に終わっている」と述べ、「ギリシャに大惨事をもたらしてきた支援策を無効にする必要がある」として、「代わりに、経済再建に向けた国家計画を打ち出す」と語った。また新たな支援策について再交渉する考えを示し、ギリシャがかつての通貨ドラクマに戻る事はないと言明した。
 他方の新民主主義党の選挙戦術は、先に核心を既に述べたようにユーロかドラクマかであるとの選択を強いるものだが、これがすこぶる評判が悪い。なぜならギリシャの経済危機を招いた汚職と失政の責任はそもそも中道右派の新民主主義党にあるからだ。
 1974年にギリシャで軍事政権が崩壊して以来、政権を担ってきた2大政党の一つだったのだから、財政状況を偽ってEUへの加入を促進した等、その間の責任を一切忘れたかのような新民主主義党の破廉恥な立ち居振る舞いは許されないのである。
 こうした状況から「我々が今抱えている災厄を招いた張本人の一人に賛成票を投じなければならないという悲惨な状況に追い込まれている」やもっと簡潔に「救いようのない馬鹿に賛成票を投じなければならない」と言い切る意見が渦巻いている。
 確かに 再選挙は新民氏主義党のサマラス党首に大変な難題を突き付けた。過去の罪を精算した新しい党へと党内改造を実行するには、あまりにも時間が少ないし、彼にはこの難事業をやり通せる自信もない。だからこそこの事情を誤魔化すためにサマラス党首は、急進左派連合主導の政権が発足すれば、ギリシャはドラクマの復活と欧州連合からの離脱に追い込まれるとの有権者の恐怖心に訴えるのだ。まさに恥を知らない連中ではないか。こんな脅し文句で有権者の心を動かす事は出来ない。まさに「恐怖心を利用するやり方は、最小の成果しかもたらせない」のである。
 結局、サマラス党首はEU首脳の圧力に耐え切れず署名したものの、経済を窒息させる事になるとしてギリシャの第1次救済策の厳格な条件に反対している。それゆえサマラス党首の一貫しない態度により、5月6日の総選挙で急進左派連合党首のツィプラス氏が救済合意を破棄するとの大胆な約束を掲げ、第2党に躍進する道を開いたのだ。したがって今回の再選挙でも根本的な解決策は出てこないと冷静な観察者は断言する。
 以上、急進左派連合と新民主主義党の戦術を検討した。結局の所、急進左派連合の真の要求は、ギリシャに課せられた財政緊縮プログラムを3年間、凍結して欲しいという事に尽きる。彼らの主張は「通貨ユーロは17の加盟国から構成されている。これは鎖のようにつながっている。その一番弱いリンク、すなわちギリシャが壊れたら、チェーン全体が連鎖的に壊れる。ドイツはギリシャ一国くらい犠牲にしても構わないと思っているかもしれない。でも若しギリシャが脱落したら、金融市場は次に血祭りにあげるターゲットとしてスペインやイタリアに焦点を移すだけだ」というものなのである。
 こうしてツィプラス党首はほんの3週間前まで37歳の若くて全く無名の経験の浅い政治家でしかなかったが、ギリシャ政府債の危機の中で一躍時の人となったのであった。

ギリシャ政府債危機の本質

 ギリシャ政府債危機の本質とは何か。その本質は各国が実体経済と大きく離れた金融マネーゲームに耽った事にその本質がある。ギリシャの政府債権危機をユーロ全体の危機に深刻化していったのは、実にギリシャ政府債の破産する事すら保険商品としたCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる金融商品の存在である。
 この商品は具体的にはギリシャ政府債の債権が債務不履行に陥った場合、つまり政府債が破産した時その損失を補填するとの契約を持った実に驚くべき契約内容を持つ証券であった。ギリシャ政府債が実際に破産した時に必要とされる保険金の巨大な総額と実際には支払う事ができない事実にこそ、ギリシャでの危機の本質があったのである。
 今回、危機の爆発は表面上はギリシャ政府債の75%の債権放棄で事を済ませた格好である。この措置で確認できるように今回ギリシャ政府債は紙くず同然となった。しかしこのCDS保険の持つ潜在的な危機は何にも解決されてはいない。つまりこれらの危機全体の大きな背景に、経済のグローバル化に対する金融市場からの批判、金融資本の論理の内部矛盾、労働者民衆の生活の軽視等々が存在する。換言すれば、各国の労働社会を実質的に構成する労働者民衆の生活軽視に対する一大警鐘が鳴らされなければならない。
 メルケル等は今何よりもユーロの崩壊を恐れている。しかしギリシャの労働者等は、必ずしもユーロの加盟を強く求めていなかった。ギリシャの労働者民衆はこの事を思い出し反撃する必要がある。ユーロへの参加は、欧州の中でギリシャが取り残される事を恐れたギリシャ産業界、金融界が求めたものであり、多くの労働者等は、緊縮策を迫られる窮屈なギリシャよりも、まさに自分たちの生活の安定を望んでいる。したがってマネーゲームに対応した対策でなく、ギリシャの社会構造に根ざした対策が求められているのである。
 今回の再選挙で求められているものは、グローバリズムを是認する金融資本等の利害に沿う経済政策運営が強行されてきた事に対する労働者等の断固たる反撃を組織する政党である。急進左派連合の政策ではまだとてもとても充分とはいいがたい。
 各国の労働社会の主人公である労働者等の意思を無視した各国の経済運営は、必ず挫折する。欧州政治情勢の大激動はこの側面から評価しなければならないのである。(直木)案内へ戻る


色鉛筆---脱原発は生活の見直しと共に

 6月に入った日曜日の午後、高知県の土佐清水市に住む木村敏雄さんを迎え、講演会を持つことが出来ました。木村さんは、元「福島原発」技術者で東電の社員だった経歴から、今やインターネット上では名が知れ、「脱原発」に向け生活を実践している人です。原発に頼らず、自然エネルギーを使い手作業で効率よく得る工夫をし、食も自分で収穫したもので賄う自給自足の生活。一体、どんな話が聞かせてもらえるのか、集まった参加者は2時間にも及ぶ話に聞き入っていました。
 まずは、元東電社員の立場から、エネルギー問題のからくりを教えてくれました。なぜ、原発が54基も建設されるほど推進されていったのか? 海外から輸入している液化天然ガス(LNG)は、なぜ液化なのか? その販路を半ば独占するために液化する必要があったこと。つまり、参入業者が増えると競争になり、価格が低下する、そうなると企業は儲けが少なくなるということです。本来はガスだから気体のはずなのに、原発推進を助けるためにそんなことまでしていたとは・・・。そして、LNGが新たなエネルギー政策に上がってくるのを防ぐために工作があったとは・・・。
 このLNGで一番、利益を得ているのは三井物産で、3・11の震災後は政府は2倍の価格でLNGを購入し、そのおかげもあって、昨年度の三井物産の企業利益はこれまでの最高額を記録した、ということです。このようにして、原発に群がる電力会社や関連企業も必死になってこれまでの甘味を維持しようとしているのです。たとえ、福島で被曝し続けている子どもたちがいても、そして周辺住民が住居を失くし職を奪われても、利益優先なのでしょうか。
 節電に関しては、西宮ならではの、こんな提案がなされました。夏の高校野球が甲子園球場で行なわれる午後2時~3時、暑さを凌ぐためのクーラーをかけテレビを見る人たちで、電気の消費量はピークに達するだろう。この時間帯を避けて、試合時間の工夫をすれば、ピークの消費は乗り越えられるかもしれない。関電や政府が本当に節電を考えるなら、これぐらいの知恵を出せるはず、真剣に考えていない証拠がここにある、と鋭い指摘がありました。
 これからは、食の問題(食の危機?)が起こってくると予測する木村さん。都市では、自給自足は無理だけれど、プランターでもいいから、自分で野菜を作ったり、保存食を作る方法を得ることで、生活を見直そうと呼びかけがありました。原発反対と言いながら、オール電化住宅に住んでいた市会議員の話では、会場から笑いが起こり、人がどう生きていくのか、自分の言動も含めて改めて考えさせられる場となりました。
 今回、「現代を問う会」が企画した木村さんの講演は、ネットで生中継されました。ちなみに、ネット視聴者は午後4時過ぎで250人と報告がありました。便利な情報社会に感心してしまいました。今後予定されている抗議集会は6月17日(日)、大飯原発再稼動に反対する現地集会です。私たちも参加する予定です。現地に行かれる方はそちらで会いましょう。(恵)


映画紹介 「人生、ここにあり」 精神病院を廃止したイタリアの物語

 原題は「SI PUO FARE」。イタリア語で、直訳は「やればできるさ」。僕個人は直訳のまま邦題にしてほしかった。実際、映画では、患者たちが困難な事態に直面するたびに「スィポファーレ」と叫んで、力強く状況を切り開いていく場面が印象的だ。そしてこれは、実話をもとにした物語なのだ。
 一九八〇年代、「バザリア法」の制定により、イタリアの精神病院は順次閉鎖されていった。そして患者たちは、協同組合に所属し、仕事をするようになった。だが、精神病院廃止の理想とは裏腹に、「共同組合」の現実は患者たちを無気力にするような「施しの仕事」でしかなかった。朝から晩まで、封筒の宛名書きと切って貼り。精神病者を「解放」するはずの「労働」のあり方の議論が、全くおざなりにされていたのだ。
 そこにネッロという名の労働組合活動家が、協同組合の新たな責任者として赴任してきたところからストーリーは展開していく。実はネッロは、組合組織の中でも急進的な考え方のため、主流派から煙たがれ「飛ばされて」来たのだ。
 ネッロは患者たちを集め、会議を開く。施しの仕事をやめ、自分たちで稼ぐ、やりがいのある仕事をしようじゃないか、と提案する。「個性豊か」(?)患者たちは、会議というものに慣れていないため、議論はスッタモンダしたが、ようやく「床貼り」の仕事を採択した。
 失敗を繰り返しながらも、患者たちは仕事に意欲を見出すようになっていく。それぞれの隠れた才能が開花していく。ある時、床の材料が足りなくなり、期限までに間に合わない危機に直面した。なんとかしなければ。ある患者の発案で、廃材の木屑を調達し「寄木細工」の手法で床を作ってしまう。ネッロは「失敗した」と慌てるが、完成した床を一目見たブティックのオーナーは「いいじゃないか!他の店もやってもらえるか?」と感嘆する。このあたり、さすがイタリアだなと思う。「美的センス」においては、患者も商売人もそれなりの「眼」を持っているイタリアの文化がよく表れている。
 こうして協同組合は、その仕事が認められ、注文が殺到するようになる。そこでネッロは、人員が増えるまでのつなぎとして「時間外労働」を提案する。ところが、成長した患者たちは、「指導者」であったはずのネッロの提案を否決してしまう。落胆するネッロに同僚の医師が「これこそ君が望んでいた事態じゃないか?」と語りかける場面が印象的だ。患者たちは、文字通り「職場の主人公」になったのだ。
 だが、精神障害者の抱える困難は、楽天家のネッロが考えるほど生易しいものではなかった。「健常者中心」の規範に貫かれて出来上がっている現代社会のしくみが、元患者の行き方と様々なところで衝突する。ささいなことから暴力沙汰のトラブルが起き、失恋のショックから元患者の青年が自殺してしまう。葬儀の席で、青年の母親がネッロに非難の鋭い視線をおくる。無言ではあるが「あんたの青臭い理想主義が息子を殺した」そう言いたいのだろう。
 挫折と失望感を背負って、ネッロは協同組合を去っていく。元患者たちは、再びあの無気力な薬漬けの現実に引き戻されてしまうのか?だが、一人の元患者が「会議を開こう」と提案する。ネッロを呼び戻し、事業を再開しようと提案する。元患者たちにも葛藤はある。確かに一度味わった開放感は忘れられない。しかし元の薬漬けの生活は、喜びもないが、それなりに楽でもあるのだ。議論の末、提案は採択された!元患者たちは、再び立ち上がって、ネッロを呼び戻しに行く。力強いラストシーンは、我々に「自信を持って前へ進め」と呼びかけてくる。
 精神病院の非人間的な現実を告発する映画は多いし、精神病院における虐待を告発する社会運動もある。多くの国では「告発」に終わっている。イタリアは、すでにその一線を越えてしまった。その先の問題を提起しているのだ。精神病院を廃止した後の、協同組合のあり方が問われているところが、この映画のすごいところだ。
いろいろ議論したい問題はあるが、まずはこの映画を観ることをお勧めする。議論はその後にしたい。
(松本誠也)案内へ戻る


〝AKB選抜総選挙〟を見習う?──劇場政治からの脱却のヒント──

 〝決められない政治〟への不満で、民主党政権離れが拡がっている。かといって過去の政権党である自民党が復活しているともいえない。向かっているのは各地の地域政党、なかでも橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会だ。いまや世評では次期首相の候補として橋下徹が高い人気を得ている。
 いはば低迷する政治からの脱却や、高まる政治への不満のエネルギーが、新たなスーパーマンを求めて徘徊しているかの様相だ。いまだ劇場政治は続いているわけだ。
 その劇場政治、テレビや週刊誌などメディアの責任が語られることも多い。が、少し目先を変えて、私たちの側に劇場政治を支える素地が無いのか、再考してみる必要がある。

◆一心同体?

 6月6日、世論の耳目は野田内閣による原発再稼働問題や消費増税の動向に向けられていた時期だった。そうした現実世界と別世界であるかのように、日本武道館ではアイドルグループの「AKB48」の〝選抜総選挙〟で盛り上がっていたという。その〝選抜総選挙〟にまつわるレポート記事が6月7日に各紙で掲載された。
 それを読むと、今回で4回目となる〝総選挙〟では、前田とか大島といったAKB48のアイドル達が有権者──といっても新曲CDなどを買うことで投票権を得たファン達──の投票数でランク付けされ、上位者が新曲を歌う権利を得たり、センターで歌い踊るトップアイドルを選出するのだという。
 私などの〝オジン〟には、誰が前田だか大島だか判別不能だが、熱心なファンは投票権を得るため新曲CDを何枚も買っただとか、ネットオークションで53万円を投入して2700票を手にしたなど、お目当てのアイドルを上位に押し上げるために大枚をはたいているという。
 記事ではそうしたファンの声を紹介している。いわく、「僕が支えなきゃ、と親心みたいな気持ちも芽生える」とか、「あえて注目度が低いメンバーを応援することで『自分だけが魅力を知っている』という優越感も得られる…………。」(朝日新聞)のだそうだ。自分が見定めた「秘蔵っ子」に集中的に投票することで少しでも上位に押し上げたい、そんなアイドルとの一体感などで満足を得ているらしい。
 芸能プロダクションやメディアの思惑に乗せられてるな、とか、なんとも〝オタク〟っぽい生態に、こちらとしては年齢にふさわしく無言で引かざるを得ない。が、これも次の記事と会わせ読むと、何かしらのピントが隠されているように感じるというワケなのだ。

◆その都度支持?

 その翌日の同じ朝日新聞に、最近の中高齢者の投票行動を分析する評論記事が掲載された。中高齢者による〝その都度支持の投票行動〟が政治の不安定を招いている、との記事だ。
 論者の埼玉大学教授の松本正生氏はいう。目の前で進む政治に対してテレビや新聞を見るだけの団塊の世代を中心とする中高齢者は目先のメニューにその都度反応し、選挙のたびに投票する政党を変える傾向が高い、として「メディアを通じた風向きに楽々と影響されるようになった……。」「投票行動は一時の選択として完結し、選挙が短期的イベントとして消費された。」とする。
 それを示すために松本氏は、05年の郵政選挙と09年の政権交代選挙を比較する。民主党に投票した比率の変化を年代別に見ると、20代が14%→20%、30代が17%→30%に対し、50代は22%→42%、60代は21%→45%と伸び幅が大きい、また鳩山内閣から菅内閣に代わった際の内閣支持率は、20代、30代の上昇が20~30ポイント台なのに、50代では53ポイント、60代、70才以上代では49ポイントにも上っているという。
 その松本氏のとりあえずの結論は、「衆参のねじれを生じせしめ、政治の停滞を招いた最大の要因は,まさに中高年層の揺らぎ、よろめきにある。……中高年層よ。……選挙での選択に責任をもとう。」というものだった。
 松本氏の論法を援用すれば、政治家はそうした有権者の〝その都度支持〟の投票行動を念頭に、新聞・テレビやネットなどメディアを活用して、いかに有権者の耳目を集めるかに腐心する。そうした能力や感性を持った政治家が注目されるが、なかでも大阪の橋下徹はダントツだ。こうした劇場政治からの脱却には有権者の〝その都度支持〟の姿勢の転換が必要だという事の示唆にも通じるのだろう。

◆大方針と参加型政治

 そこで上記の〝AKB選抜総選挙〟である。
 私としても観客民主主義、劇場政治からの脱却を何回も訴えてきた。その一つのヒントとしてAKB選抜総選挙でのフアンの態度、姿勢から見習うことができるかもしれない。
 そこでは1位や2位を争うトップアイドルではなく、下位でも自分の感性や思い入れを重視する。結果ではなく意中の候補を一つでも上位に押し上げていくという,候補と自身の一体感に重きを置く。
 政治の舞台でも同じような課題がある。政権の座に近い二大政党のあれかこれかではなく、自分が望む政治の方向に最も近い政党、政治勢力を押し上げるという感覚を重視することだ。1回の選挙で政権党を決めるというのではなく、その先に自分の納得がゆく政党・政治勢力を少しでも押し上げる、というスタンスだ。
 もう一つ付け加えれば、政治を投票行動とその結果生まれる国会構成という委任行為に対する参加型民主主義という観点だ。自分が関心を持つ、重視する政策課題や政治姿勢を基準として、自分もそうした運動や活動に係わる、そのことで単に劇場政治の観客に止まらない一つの主体として自分を押し出す、という視点だ。
 この二つを別の言葉で言えば、大きな政治目標への目的意識、それに選択権や白紙委任ではなく参加型政治行動ともいえるだろう。
 こうした政治的感性・スタンスは、最近目立つ「あれか、これか」「誰か、誰でないか」という、テレビ時代に特有な「世論政治」や「二者択一政治」からの脱却にもつながる。一つの運動や取り組みに主体的に参加することで、課題間の相互関連性やその解決策にも近づけるからだ。
 とはいっても、投票行動で政権交代を実現すること自体は、なにも不定すべきことではない。それまでの企業や労組、宗教団体の縛りに左右された組織選挙から、各自の自律した判断に基づく選択権の行使だからだ。それは自分たちが係わる社会集団の長期的な展望に即した自律した政治の実現に向けた通過点としての意味合いを持っている。
 ここは松本氏の主張を、劇場政治や二者択一政治からの脱却に結びつけていきたいところだ。(廣)


コラムの窓・・・ 深夜勤務の労働医学

 ゴールデンウィークに起きた深夜バスの事故で、多くの乗客の命が奪われたのは記憶に新しい。国は今頃になって「運転手一名乗車」体制の危険性に気づき、「二名乗車体制」を勧めだした。
 だが、こんなことは当たり前だ。以前、福岡から四国まで、深夜バスに乗ったことがある。出発に当たって運転手がマイクで「私たち二名で、交代交代、安全運転で終着地までお世話いたします」と挨拶していた。交代で仮眠を取りながら運転しなければ、居眠り運転や過労による運転ミスを誘発する危険性があるからだ。
日経新聞の論説は「今回の自動車事故は、規制緩和そのものの弊害と短絡してはいけない。規制緩和のおかげで、高い料金でゆったりしたシートで乗車する選択肢も増えたことを忘れてはならない」などと主張している。よくもそんなことが言えたもの、と激しい怒りがわいてくる。「金持ちには安心を、貧乏人には危険を」、これが規制緩和の本質ではないか?深夜労働の規制に、金持ちも貧乏もないはずだ。
一名だけで深夜勤務に従事することがいかに危険なことか、僕は身にしみて感じている。今働いている救急検査室でも、二名の技師が交代で仮眠を取りながら仕事をしている。それでも深夜に一人だけで仕事をする時間帯があり、ミスをしないよう慎重に仕事をするのは大変な苦労がいる。
最近、NHKの番組で、二交代制の看護師に「二時間の仮眠」を取らせることで、どのような効果があるか実験のようすを紹介していた。深夜労働中に、全く仮眠を取らない場合と、二時間程度の仮眠を取る場合とでは、脳内のメラトニンの分泌に違いが出てくるという。メラトニンの分泌が阻害されると、時間遺伝子が働かなくなり、胎内リズムが狂ってしまうのだそうだ。
胎内リズムが狂うと、免疫機能が低下するなどして、うつ病や糖尿病やガンの発症リスクが高まるという。そういえば、僕も交代勤務の職場に転勤して一年になるが、最近、カゼをひいても回復が遅くなった感じがする。また、以前なら多少無理しても残業していたのに、その無理がきかなくなってきた感じがする。
以前は、組合の交渉があるとき、現場の看護師さんに連絡したとき「その日は夜勤入りだから参加できない」と言われても、「交渉に参加してから夜勤に入ることもできるのでは?」と説得したりしたが、今思えば「なんて酷なことを言っていたんだろう」と反省している。やってみないとわからないものだ。
遺伝子科学が進歩し、昔は現象面でしかわからなかった「サーカディアン・リズム」も遺伝子レベルのメカニズムまで解明される時代になった。それはいいことだ。だが、労働医学の進歩を、労働行政にきちんと活かす姿勢があるかが問題だ。またそれをさせるよう、労働組合がもっと力を入れるかどうかも問われているのだ。(松本誠也)案内へ戻る


アイルランドの国民投票で新財政協定は批准

 5月31日、注目されていたアイルランドで実施された欧州連合(EU)の新財政協定批准の是非を問う国民投票は、賛成が60%に達して承認された。
 アイルランド全体で43の選挙区のうち、反対が賛成を上回ったのは5区のみとなった。注目された投票率は50%と、同国の国民投票のほぼ平均となった。
 この国民投票では政府債危機の際に欧州支援基金を利用できるのは協定を批准した国だけである点が、今回の国民投票での論議の中心となっていた。2013年にアイルランドが債券市場復帰をめざすにあたり、欧州を取り巻く経済情勢の悪化の中で、欧州支援基金は不可欠と政府は主張していた。ドイツ等はこの結果に若干の安堵を感じたであろう。
 新財政協定は、債務危機の再発を防ぐため、毎年の財政赤字を国内総生産(GDP)比0・5%以内に抑える事を各国の憲法に盛り込むよう求めている。二〇一〇年にアイルランドは財政危機に陥り、EUなどから総額八百五十億ユーロ(約八兆三千億円)の融資を受け、国民は厳しい緊縮生活を強いられてきた。この支援と引き換えに付加価値税の税率引き上げや公務員の削減など国民の痛みを伴う厳格な緊縮策を断行。政権与党への支持率は低下し、最新の世論調査で政府の緊縮策に不満を持つ国民は65%に達していた。こうした背景の中での国民投票だったため、投票率が50%と低かったのである。
 また今回の国民投票で政府が強く賛成を求めてきた背景には、再来年以降さらに融資が必要となっても、協定を批准していないと支援制度「欧州安定メカニズム(ESM)」を利用できなくなるという事情があったからである。
 その意味において国民投票前日の30日、ケニー首相は新財政協定への「イエス」を求めて「私たちが勝てば、アイルランドは欧州の中で確かなポジションを確保できる」と呼びかけていたが、この訴えが有権者の間で最終的に支持されたといえる。これに対して、反対派のIRAの政治部門であるシン・フェイン党のアダムズ党首は「協定を批准しても欧州債務危機の解決には結び付かない。アイルランドを、さらなる緊縮策に直面させるだけだ」と訴えていたが、決定的な打開策を打ち出せなかったため、EUとの結びつきが揺らぐ事に対する国民の不安を解消する事はできなかったのである。
 新財政協定は、今回アイルランドが国民投票で批准を否決したとしても、ユーロ圏17カ国のうち12カ国が批准すれば、来年一月に発効する流れは変えられない。EU圏を防衛するのがヨーロッパでの大勢なのである。 (猪瀬)案内へ戻る


読者からの手紙

生活保護費攻撃には天下り批判で対抗せよ!

 官房機密費の泥に塗れた全国紙やテレビ等では、連日のように生活保護費の不正受給についての報道に明け暮れています。言い出しっぺの片山議員等が吉本芸人の母親の不正受給を追及すれば、小宮山厚労大臣が生活保護費の支給額の減額を答弁する等、自民党と民主党とが生活保護費の減額で共闘しおり、まるで消費増税の前哨戦の様相なのです。
 こうした大騒ぎの中で、シロアリである破廉恥な高級官僚の天下りや公益法人等で実態のない勤務やそれらに対する法外な報酬の不正追及は脇に追いやられています。弱いものいじめで、全く許せない事だと私は憤りを押さえることができません。
 かって野田総理が一議員であった頃、「シロアリ退治なくして消費増税はありえない」と街頭演説していた動画に対して、30万回のアクセスがあると聞きました。許せない二枚舌です。また岡田議員にもそのような動画があるとも聞いており、植草一秀氏のサイトで二つとも私は実際に見て確認しております。
 まさに彼らには裏切り者の烙印を押すと共にきたるべき選挙には、当然の事として落選の痛みを与えなければなせないと考えています。   (笹倉)


編集あれこれ

 はじめに前々号の紙面の訂正です。6面の初め「日銀が5月27日」を4月27日に、8面の色鉛1996年静岡県で」を1966年にそれぞれ訂正します。
 さて前号は10面でまずまずの紙面だったと思います。1面は、「財政赤字の国民・労働者への責任転嫁を許すな!野田政権の大衆増税路線に反撃しよう 大資本と富裕層にたいする大増税を!」と題する記事でした。野田政権は、消費税増税に政治生命をかけると言っています。一般大衆に多大な負担を強いる、消費税増税を許すことはできません。累進課税の強化や、法人税の増税をこそやるべきと考えます。2・3面は、「観客から役者へ 選挙だけでは変わらない」と題する記事でした。3年前の選挙で民主党が政権につきました。当初は少しは自民党政権よりよくなると思っていましたが、自民党政権と同じくひどいものです。財界べったり官僚言いなりの政権です。選挙だけでは政治は変わらない、観客民主主義からの脱却をしなければなりません。そのためには、私たち一人ひとりが運動を広げていくしかないと思います。
 4面の「エネルギーの生産・流通・消費を労働者・市民の手で 国や大企業などの巨大システムに代わる自治・自給のシステムを」に記事も興味深かったです。原発に代わるエネルギーを労働者・市民の管理へと目指さないといけません。5面の映画紹介は、「誰も知らない基地のこと」です。今年は沖縄が「本土復帰」して40年になります。多くの米軍基地があり、様々な問題で苦悩をかかえる、沖縄の現状を知る上で参考になる映画です。
 その他、多くの記事が紙面をかざり全体的にいい内容の新聞だったと思います。読者のみなさん、今後もワーカーズをよろしくお願いします。  (河野)案内へ戻る