ワーカーズ475号   2012/11/1        案内へ戻る
石原新党で馬脚を露した〝第三極〟
 右翼や新自由主義も今や単なる選挙互助会に


 石原東京都知事が辞任を表明した。新党を結成し、来る衆院選に立候補すると気勢を上げている。橋下徹の日本維新の会や渡辺喜美のみんな党と〝第三極〟として連携を追求するとも言う。
 さっそく、かねてから石原に新党結成を訴えていた平沼赳夫らのたちあがれ日本は、解党と石原新党への合流を表明した。〝第三極〟のカナメと目される日本維新の会は、政策を重視して協議をしていくと語っている。維新の会とヨリを戻しかけたところだったみんなの党は、戸惑いと迷惑顔を隠さない。
 日本維新の会とみんなの党は、市場競争を至上視する新自由主義という点で共通項を持っている。だからこそ主導権争いも起きるが、双方が人気に陰りが出始めると再び連携を模索し始めた。
 これに対し石原新党は、新自由主義と言うよりも伝統的保守政治、右翼政治の志向が強い。しかし日本維新の会とは、反共・反社会主義という点で親しいものがある。特に教育分野での反動政策や自治体労働組合敵視では、ほとんど違いは無い。
 では、石原新党とみんなの党との関係はどうか。イデオロギー右翼、政治右翼の石原新党と、経済主義的新自由主義とも言えるみんなの党とは、距離が近いとは言えない。
 石原新党は、〝第三極〟として両党と連携していくと言うが、ことはそれほど簡単ではないのだ。
 石原新党の登場は、むしろ昨今の〝第三極〟ブームの本質的ないかがわしさを自己暴露していく契機となるだろう。日本維新の会やみんなの党の新自由主義は、小泉構造改革の二番煎じであり、石原新党の反動政治は安倍晋三の右翼政治の二番煎じだ。小泉構造改革は、格差と貧困を極度に拡大し、社会的な危機さえ生んで、退場せざるを得なかった。自民党安倍政権は、格差と貧困の拡大に倦みはじめた国民を、「美しい日本」の標語で再統合しようとしたが、国民から鼻で笑われて失脚せざるを得なかった。要するに、維新の会も、みんなの党も、そして石原新党も、日本の政治の中では二度も三度も実地に試されて、破産を余儀なくされたすねに傷を持つ政治勢力なのだ。彼ら〝第三極〟が、一過性のブームとそれに乗っかった選挙互助会以上にはなり得ず、日を追うにつれて色あせていくのは避けられない。
 元はと言えば、維新もみんなも石原新党も、落ち目の自民党から分かれ出たその片割れに過ぎない。自民主導の政権が誕生すれば、彼らは易々と、あるいは渋々と、手をつないで反民衆、反労働者の政治に突き進んで行くに違いない。
 来る総選挙では、自民党を勝利させてはいけない。同時に、維新やみんなや石原新党への幻想を、打ち砕いていく必要がある。そして、本当の第三極、労働者、民衆の立場に立った新しい政治勢力を登場させる契機としていかなければならない。 (阿部治正)


相手は〝ムラ社会複合体〟!
〝ムラ〟は〝原子力ムラ〟だけではない


 テレビで復興予算が流用される実態が報道されてから、新聞その他のメディアで後追い報道や再検証する記事が相次いでいる。復興予算を食い物にする事例が拡がりを見せているからだ。
 財政を食い物にするこの手の構造は、なにも復興財源に限ったことではない。こうした利権システムは、大震災からの復興場面でも性懲りもなく生きながらえているのだ。
 消費増税など大増税時代を呼び込もうとしている反面、血税を食い物にしている〝利権ムラ〟は解体する以外にない。

◆ここでも〝ムラ〟が

 復興予算を流用している実態を掘り起こすNHKスペシャルが放映されてから、新聞などでも復興財源の流用問題が相次いで報道されている。
 NHKの報道番組では沖縄の国道工事、北海道の刑務所での職業訓練、あるいは反捕鯨団体への助成等々が報道された。被災地復興とはあまりにかけ離れた使われ方を目の当たりにして、他のメディアも無視できないと判断した結果だろう。
 それにしても11年度補正予算の執行時期は、11年から12年にかけてて、まさに消費増税が政局の焦点となっていた時期だ。その場面での大手新聞などのメディアは、野田内閣の消費増税の応援団としてその必要性をしきりに煽っていた時期と重なる。その構図を客観的に見れば、メディアはまんまと大義名分と本音を使い分けている〝ムラ〟の手のひらで踊らされていたことが暴露されたことになる。その醜態を気づいてか気づかぬふりをしてか、今になって流用問題という〝村社会〟の実態を後追い報道せざるを得ないメディアの格好の悪さには、改めて日本のメディアの情けなさを見る想いだ。
 復興財源のつまみ食いは、その後も相次いで明らかになっている。追跡調査を実施した新聞社の調査によると、国交省と国税庁の施設改修などに120億円使われ、来年度予算でも60億円要求されていることも分かった。国交省では耐震基準を満たす改修工事など、関西や九州を含めた庁舎改修などで157億円、国税庁が23億円にも上るという。その有り様は、まさに血税に群がる〝公共事業ムラ〟だ。
 無駄遣いを追求された省庁の説明も、言い訳がましいうえに狡猾だ。北海道の刑務所の研修資材として購入したショベルカーの件についてもそうだ。法務省は、アンケートで被災地の建設業者で受刑者を雇用する用意があると応えた企業が103社の内49社あったこと、あわせて受刑者のうち4割が被災地での雇用を希望している、とするアンケート結果を示して購入の正当性を強弁した。ところがその後、このアンケートはこの件が報道された後に急遽実施されたことが明らかになった。質問項目などで選択を誘導するような、いはば〝やらせ〟アンケートである。官僚とは、かくも責任逃れと自己正当化の開き直りが染みついているのだ。
 この問題は、官僚、業者、政治家(ブローカー)がグルになって予算を食い物にしている、いはば財政にたかる〝公共事業ムラ〟の実態を浮き彫りにする事件でもある。

◆見えてしまった〝ムラ社会〟

 あの東日本大震災による原発事故から一年半。原子炉のメルトダウンに至り、膨大な放射能をまき散らしたその原発事故では、日本の原発は絶対安全だとする〝安全神話〟が崩れ落ちた。そこで明らかになったのは原発の脆弱性だけではなかった。この原発事故で明らかになったのは、普段は見えない〝ムラ〟の実態が、多くの人々の目に見えてしまったことだろう。原発事業を担う電力会社を始め、原発推進と規制部門を併せ持つ経産省の官僚、そこに組み込まれた研究者・専門家と称する原子力を専門とする学者、それに政府や政治の場でそれらの人々を代弁する族議員による、いわるゆ〝原子力ムラ〟のことだ。その実態が白日の下に晒されたのだ。そこでは温暖化防止に貢献するクリーンエネルギーであるとか、低コストで安定した電源だとか、ありとあらゆる虚言を振りまきながら、実際には巨額の電力料金や税金を自分たちの権益としてたらい回しにしてきた。そうした〝ムラ〟住人の生態が、被災者や庶民の目にしっかり焼き付けられたのだ。
 消費者・利用者の感覚とはかけ離れたそうした〝原子力ムラ〟の実像が浮き彫りになったからこそ、首相官邸前を始めとする脱原発デモに、これまで参加したことの無かった多くの人々を行動に駆り立てる事態を生み出したといえるだろう。住民無視の事故隠しや被害隠し、果ては原発事故を受けて拡がった脱原発の大きなうねりを再度逆流させようとする〝ムラ〟の秘密と野望を知ってしまった普通の人々にとって、ムラの住民がなんと言おうと信用できなくなっているのだ。
 とはいえ、今回の復興予算の流用問題は、ムラ社会が〝原子力ムラ〟に限ったことではないことを改めて浮き彫りにした。

◆〝公共事業ムラ〟

 被災地・東北復興という大義を掲げて成立した復興基本法、そのもとで組まれた東日本大震災復興特別会計。25年間の所得増税などを財源とし、5年間で19兆円が計上されたこの復興予算を、被災地から遠く離れた全国で2兆円以上も使われる実態が次々と明らかにされている。
 被災地の復旧・復興予算は、管轄する自治体職員が手薄で忙しすぎるため、巨額の復興財源を事業化する書類づくりや発注作業が滞って6割程度の進捗率だとされる。ところが復興予算を全国に振り向ける「全国防災対策費」では、公共施設の修繕や耐震工事など今年の秋までに5年分の1兆円がすでに使われた。来年度予算でもさらに9000億円を要求している。まさに便乗的な公共事業が被災地置き去りで拡がっているのだ。
 たしかに公共事業支出は、当初予算ではこの10数年間減らされ続けてきた。が、景気対策などを口実としてその都度の補正予算で補填されてもきた。今回は大震災からの復旧・復興を大義名分として、復興基本法に抜け道を細工するなどして公共事業の大盤振る舞いを始めたのだ。しかも最初の復興基本法案では「被災地域の復興」だったのを「東日本大震災からの復興」に書き換え、新たに「活力ある日本の再生を図る」という文言を挿入することで、全国の機械メーカーやゼネコンなどに予算をばらまくという悪のりぶりだ。
 そもそも自民党が被災地復興で民主党政権に協力したのは、被災地支援という大義によるものではない。民主党政権も自民党の要求を受け入れることで、利権構造の復活・温存に二人三脚で荷担したのだ。だからこの復興予算の流用は、民主・自民の二大政党による合作であり、民自同罪だ。野党の自民党は、あの大震災当初から、「復興に協力する」と言い続けてきた。その「復興に協力」とは、復旧・復興を建前とする財政支出に係わることで、利権構造の一端に食い込むためだったのは広く知られた事実だった。永年の政官業体制を担ってきた経歴から、巨額の復興予算から閉め出されることなど考えられない、といったところだろう。その連中が中心となって民自協力体制を後押ししてきたのも周知の通りだ。
 国の財政に群がる今回の復興予算流用問題。これもれっきとした〝公共事業ムラ〟ともいうべき〝ムラ社会〟なのだ。その住人はといえば、機械や設備メーカー、ゼネコンなどの大手建設会社、予算を手にして箇所付けなどで裁量権をふるう財務省や建設省、国交省などの官僚、それに予算を選挙区に持ち込もうと暗躍する族議員やそれに連なる利権ブローカー達だ。

◆〝村社会複合体〟

 こうしたムラ構造は今に始まったことではないが、政官業利権構造の一翼をどっぷりと占拠しているのだ。
 〝ムラ社会〟はまだまだある。たとえば〝安保ムラ〟だ。
 安保ムラは、一方で大国化する中国への危機感などを煽る事で防衛省・自衛隊や日本の軍需産業の代弁者となり、他方では、米海兵隊最新輸送機オスプレイの普天間配備などを後押しするなど、米軍や米国軍需産業の利害の代弁者の役割を果たしている。その住民はといえば、自衛隊幹部、三菱重工などの軍需産業、それらと結託する政治家や右翼評論家、そして防衛省や外務省の官僚達だ。連中は外敵の脅威を誇大表示することで、軍事大国化への野望の実現を夢み、併せて格差社会などの拡がりで国内で拡がる体制批判などを封じ込めることを任としている。
 その〝安保ムラ〟の弟分にあたるのが〝領土ムラ〟だ。脱原発のうねりの拡がりで守勢に立たされた原子力ムラなどの既成勢力の逆襲への思惑を代弁するかのように、領土問題を過剰に演出することで既成勢力の反転攻勢に手を貸している。〝領土ムラ〟の住人はといえば、尖閣諸島の購入をぶち上げた石原都知事などがその代表だ。中国脅威論を繰り返し、前回の尖閣事件で強硬策を代表した民主党の前原、尖閣沖で戦没者慰霊祭を装った領土パフォーマンスで「中国憎し」を煽った自民党の山谷えり子などもそうだ。
 この〝領土ムラ〟の住人は、企業・財界や官僚の荷担は少なく、〝安保ムラ〟より狭い村だ。が、その分だけカルト的性格を色濃くして軍事至上主義の偏狭なナショナリズムで排外主義を煽っている。
 その他〝文教ムラ〟や〝医療ムラ〟など、日本には多くの〝ムラ社会〟が存在する。いってみれば〝ムラ社会〟の複合体が日本社会の実態なのだ。その中心には省益優先の特権的な中央官僚が陣取っている。官僚連中はあらゆる〝ムラ〟の事務局として企業や研究者や族議員を結びつけ、首相や閣僚などを操縦しながら利権集団の中核を占めている。その〝官僚ムラ〟は上意下達の統制社会であり、民主主義とは対極の存在なのだ。
 こう見てくると、建前では日本は民主主義国家だと言われている。が、実態は〝ムラ〟が寄り集まって、日本全体を牛耳っていることになる。それを何年かに一回の選挙で、建前や大義を振りまきながら有権者をごまかして受け入れさせる、それが実態なのだ。消費増税がいい例だ。社会保障の充実という大義名分を掲げながら、その実、バラマキ財源を庶民から収奪する事こそ狙いだったことがはっきりしたからだ。
 脱原発で私たちが対峙する〝原子力ムラ〟は、そうした〝ムラ社会複合体〟にがっちり組み込まれた部分社会だ。その部分社会を解体するためにも、〝ムラ社会複合体〟全体と対峙することが私たちの課題なのだ。(廣)案内へ戻る


「外交交渉で領土問題を解決せよ」の方針は危険

全く形だけの竹島交流

 10月19日、「しんぶん赤旗」は、韓国を訪問中の共産党の笠井衆議院議員が「朝鮮王室儀軌」返還問題で各界の関係者と交流した序でに、竹島問題についての第五回中央委員会の幹部会報告を手渡し、日韓関係の懸案、両国の情勢、文化財問題などについて意見交換したと報じた。
 尖閣だけでなく竹島問題にも取り組んでいるとのパフォーマンスを共産党は忘れない。
 政界での交流として、笠井議員は与党セヌリ党のキン・ジェウオン議員と懇談して、竹島問題については日本が植民地支配の根本的反省と清算を行う事が冷静な話し合いのテーブルを作る上で必要不可欠だとの共産党の立場を説明した。
 特に日本政府が▽1910年の「韓国併合」について不法・不当なものであったことを認めること、▽植民地支配下で行われた犯罪に対する謝罪と賠償――という二つの措置をとることが重要だと笠井議員は述べたのであった。
 これに対して、キン議員は「領土問題は存在しない」とする韓国の立場を述べつつ、「日本との間には、慰安婦、独島、靖国参拝などの問題があるが親密な友人になって欲しいと思っている」「互いに知恵を出し合うことは大切です」と応じた。
 このように共産党は、韓国では竹島問題でまさに形だけの交流をしただけなのである。
 尖閣問題で駐日中国大使館にまで日本政府になりかわって押しかけた共産党は、韓国の軍隊に実効支配されている竹島問題では、この報道のように全く及び腰で形だけの全く内容のない対応しかしていないである。なぜ竹島は歴史的にも国際法上も日本領土だとの共産党の立場から、韓国に対して強硬な抗議をしてこなかったのであろうか。不思議だ。

外交交渉で解決の空論

 ところで現在、志位委員長は尖閣問題で外国人記者クラブで講演するなど注目を浴びており、10月24日早朝のラジオ日本へ生出演して、なかなかのご機嫌である。
 志位氏は、「尖閣はどこの国の所属」なのかのリスナーの質問に「安心してください。日本の領土です。歴史的にも国際法上も日本の領有は政党だという見解」だと請け合う。そして「領土に関する問題の存在を正面から認めて、冷静な外交交渉を行い、日本の領有の正当性を理を尽くして説くことが唯一の解決の道だ」と断言して憚らない。
 ラジオ日本の岩瀬氏が「正攻法」ですねと述べると志位氏は、「『外交不在』から『外交攻勢』に転じようという提案」だと説明する。政治ジャーナリストの角谷氏が「竹島の問題は、韓国に『(領土問題は)存在しない』といわれて、全くテーブルに着かせてもらっていない。だったらテーブルに着いた方がいいだろうということなんですね」と発言すると、志位氏は「日本は、尖閣問題は『交渉しない』、竹島問題は『交渉してくれ』というダブルスタンダートなのです。どちらも外交交渉で解決するという立場に立つと竹島問題にもプラス」になると応じたのである。
 それにしても尖閣と竹島が歴史的にも国際法上も日本領だとの共産党の見解には呆れてしまう。この主張には、カイロ宣言やポツダム宣言さらにはサンフランシスコ平和条約の批准という国際政治上の諸問題が捨象されている。日本の領土は敗戦によって「本州、北海道、九州、四国と連合国側の指定する小島」に限定された事実を忘れたかの様である。
 端的には、中国も韓国も日本の敗戦を根拠として尖閣も竹島も日本領ではなくなったと言っているのだ。共産党は、これらの事実を何故論評もせず明らかにしていないのか。
 日本の立場が歴史的にも国際法上でも正しいというのなら、中国や韓国の主張は当然にも正しくないと言う事になるのだが、この道理が共産党には理解できているのか。
 まさに共産党の見解は、外交交渉を軍事衝突に高める危険性を持つ独りよがりの空論である。中国や韓国も日本と全く同様に、歴史的にも国際法上も自国領だとの主張は、先に紹介したカイロ宣言やポツダム宣言さらにはサンフランシスコ平和条約を根拠にして、充分に主張できるし、現実に主張しているのである。

領土問題で保守受けの共産党

 国境紛争を外交交渉でのみ解決する事は危険だとの見解は、すでに孫崎氏の『日本の国境問題』に示されている。重要な事実なのでその事を紹介してみよう。
 孫崎氏は、『国際紛争の平和的解決』から引用し「交渉は当事者に対し事故の紛争について最大限の支配権の保持をすることを許すプロセスである。これに対し、裁判は、少なくとも判決に関する限り、当事者の手から紛争を完全に取り上げてしまう」と書いた。
 実際の国際紛争の場では、外交交渉が圧倒的な比重を占め、極めて重要な役割を担う。しかし外交交渉を行う事は、常に平和に向かう事を意味しない。関係国の双方に、和解を求める勢力と紛争突入が望ましいと判断している勢力が実際にはあるからだ。ここで大切なのはどちらの勢力が主導権を握っているかである、とその核心を孫崎氏は語る。
 確かに共産党は外交交渉一本槍であり、歴史的にも国際法上も日本領だとし、その事で「最大限の支配権の保持」を計ろうとする点でまさに日本政府と一致した対応だ。カイロ宣言やポツダム宣言さらにはサンフランシスコ平和条約を全く無視して憚らない。
 日本の主張のみ正しいとの立場は、両国を当然最大限刺激する。そしてこの立場が軍事衝突を惹起する危険性を持つ危ういものであるとの認識は、全く鈍感にも共産党は持っていないのである。
 彼らは、尖閣や竹島についての相手国の主張を一顧だにしない傲慢な態度に何の反省もない。両者共に日本領が歴史的にも正論だと言い募るだけなら、彼らは日本政府の別働隊である。まさにその事で共産党を見直したとの保守からの支持を受け喜んでいるのだ。
 日本の労働者・市民の現在の任務は、日中の軍事衝突を回避する事にある。まさにこの点にこそ、現在の政治情勢の中で共産党の果たす役割の反動性があると言える。(直木)


何でも紹介
 DVD 落語 「笑福亭松喬ひとり舞台ファイナル」
2012年9月19日発売 15000円

 今回紹介する上方落語の笑福亭松喬さんは、私が上方落語の中で一番好きな落語家です。
 簡単にプロフィールを紹介します。1969年、6代目笑福亭松鶴に入門、鶴三と名乗る、1987年6代目笑福亭松喬を襲名、現在61歳です。
 彼は今肝臓がんで入退院を繰り返しながら、勢力的に落語を続けています。がんは5年生存率が10%を切るステージⅣです。
 私は、今年松喬さんの落語を2回観にいきました。やせてはいましたが、声の張りは以前と変わらず元気でした。マクラ(前フリ)で自身のがんのことをネタに笑いをとっていました。例えば、「学生時代、通知表はほとんど2か3で4なんかほとんどなかった。だから、ステージⅣと聞いたとき何かいいもんもらったのかなと思った」。「私は笑わせる側ですけど、お客さんの笑顔を見てうれしくなることも体にええんやそうですね。面白くなくても笑ってください」。
 こんな元気で楽しい落語を観ると、松喬さんの体調もいいようです。それは、毎日ブログを更新されているのをみても明らかです。松喬さん、これからも楽しい落語を観せてください。
 さてDVDですが、演目はDISC-1から6まで2席ずつ入っています。「はてなの茶碗」「質屋蔵」「天王寺詣り」「三十石船」「花筏」「百年目」「首提灯」「帯久」「二人癖」「らくだ」「へっつい幽霊」「ねずみ穴」特典映像:「笑福亭松喬 ひとり舞台 インタビュー」、とどれも大変面白いし松喬さんの表情を見ていると6代目松鶴の表情に似ているなと思うシーンもあります。
 松喬さんの落語を観ていると、江戸時代の庶民の暮らしが思い浮かびます。貧しいながらも助け合いながら楽しく生活しているシーンが。(河野)案内へ戻る


コラムの窓 秋の逆転層

 秋も深まったある晩のこと。
 夜も更けて、近所も寝静まり、シーンとしたころ。ふと眼を覚ますと、何やら遠くから響いてくる音が聞こえる。
 ゴーッと何かが吹き出てくる音がしたと思えば、ガガーンという金属のぶつかり合う音がする。何やらアナウンスも聞こえ、やがてファン、ファンと警笛音がする。
 どうやら、数キロも離れた製鉄工場の音のようだ。溶鉱炉から出てきたばかりのドロドロの鉄が、貨車に積み込まれ、危険を知らせるアナウンスや警笛と共に、加工工場へと運ばれていくらしい。
 ふだんは、工場の音がこんなところまで届くことはない。秋の澄んだ空気の夜、暖かい空気の層と冷たい空気の層が逆転し、層と層の境の面に反射して、遠くの音がまるで近くに聞こえる。これを「逆転層」と呼ぶそうだ。
 僕が住んでいるところは工業都市なので、逆転層の時には工場地帯の夜間の音が聞こえてくるのだ。しばらくすると、ふと、音が聞こえなくなる。風向きが変わったのだろうか?耳を澄ますうち、また、にわかに聞こえてきたりする。いつしか、まどろみの夢の中に、起業祭の工場見学で見た風景が広がってゆく。夜に工場の音が聞こえてくると「秋になったなあ」と不思議な季節感を感じるのだ。
 松尾芭蕉が詠んだ句に「秋深し、隣は何をする人ぞ」というのがある。「秋深し」はいいとして「隣は何を・・」が秋と何の関係があるのだろうと、長い間なぞだった。あるラジオ番組で、気象学者が「あの句は、逆転層のことを謡ったんですよ」と説明するのを聞いて、合点がいった。秋の夜になると、自分の寝泊りしている家から離れたところにある、よその家の夜なべ仕事の物音が聞こえてくる。そのことを芭蕉が詠んだのだという。
 「そういえば、子供の頃ふとんの中で耳を澄ますと、遠くの駅から、列車の音が聞こえてきたのを覚えていますよ。今思えば、かなり遠い場所なのに、いやに近く聞こえましたね。あれも秋でしたね。」と知り合いも言っていた。やや年配の人なら、子供の頃、夜中に遠くの蒸気機関車の音が聞こえてきて、不思議な気持ちになった経験があるのではないだろうか?
 秋深し。逆転層で聞こえてくる物音は、それぞれの土地によって違うのだろう。港湾都市なら貨物船の音が、聞こえてくるのかもしれない。いずれも夜間に働く労働者の発する音だ。(誠)


読書室
 孫崎享氏『日本の国境問題――尖閣・竹島・北方領土』
 ちくま新書 価格783円

 元外務省官僚が書いた日本の国境問題と平和国家・日本に適った平和戦略の主張

 この本は、『戦後史の正体』が二十万部を超えるベストセラーになった事で注目された孫崎氏の昨年五月に出版された領土問題に関する著作で、既に十一万部を超える売れ行きを示しているとの事である。
 この著作について、孫崎氏は「はじめに」の中で次のように記述している。

 本書は北方領土、尖閣諸島、竹島について、日本の帰属を考えるに際して、どうしても知って欲しい事実を伝えることを主眼とした。少なくともこの本を読まれ、「そんな事実があったのか」と思われることは間違いない。その意味でこの本は、領土問題を扱った本としては大変新鮮な本である。日本人の一人でも多くの方がこの本を読まれ、「領土問題に対する我が国のこれまでの対応が本当によかったのだろうか」と問い直されることを祈念する。

 何とも意味深長で深刻な文面であろうか。これらの言葉の重みは、本書を一読すれば確かに読者には伝わっていくであろう。
 ところで安保条約・日米同盟について考えを巡らせば、日本にとって如何にアメリカが重要な関係国であるかは誰でも知っているであろう。しかし同時にアメリカが日本の領土問題についてどういう態度を取っているかについて、しっかりした認識を持っている日本人はほとんどいないのである。ここにまさに日本の領土に関する問題点がある。
 孫崎氏は、これに関して、次のように書いている。

 日本国民にとり、領土の扱いは極めて重要である。我々は北方領土であれ、竹島であれ、尖閣諸島であれ、日本固有の領土だと主張する。それには根拠がある。
 しかし、ロシア、韓国、中国が異なる見解を持っている。私たちは竹島について韓国が、尖閣諸島について中国がどう主張しているかは、驚くほど知らない。また日本の領土問題は第二次大戦の敗戦と深く関係している。米国が北方領土、竹島、尖閣諸島でどういう態度をとっているかは、これらの諸島の帰属に重大な影響を与える。これについても日本の国民一般は驚くほど知らない。

 日本の領土問題の第一は、日本国民のほとんどが二次大戦の敗戦と米国の態度とに深く関わっているとの認識がない事である。そしてこの弱点は、外務省と日本政府によって克服させられていないばかりか拡大すらされている事が実に重大な問題なのである。
 日本の領土問題の第二以下の問題は、実にここから派生してくる問題である。北方領土についてはロシア領、竹島については韓国領、尖閣については中立がアメリカの立場だ。ほとんどの日本人、は知ってか知らずかの問題はあるものの、アメリカに対して日本の味方だと決めつける独りよがりの多大な幻想を持っている事を自覚していない。
 この本の功績は、真実を告げる事により、これらの幻想を打ち砕く点にあるといえる。
 本書の構成は、以下のようなものである。

 第一章 血で血を洗う領土問題――私がみた現代世界の国境紛争
 第二章 尖閣諸島をめぐる日中の駆け引き――戦後の尖閣諸島史
 第三章 北方領土と米ロの思惑――大国の意図に踊る日本
 第四章 日米同盟は役に立つのか――米国にとっての日本領土
 第五章 領土問題の平和的解決――武力を使わせない知恵
 第六章 感情論を超えた国家戦略とは――よりよい選択のために

 先程、ほとんどの日本人がアメリカに幻想を持っていると指摘したが、本書にはその実例が充ち満ちている。したがってそのほとんどについては紹介が出来ない。ここではその具体的な二・三例だけを書いておこう。それは第一章に記述されている事である。
「日本人の多くは、尖閣諸島をめぐり、まさか日中が軍事衝突するとは思っていない。しかし、一触即発に近い状況が、一九七八年にすでに起きている」として、「魚釣島付近で中国漁船一0八隻が操業、うち一六隻が領海内に侵入」、三日後「一四0隻を確認した。銃を向けるものもあった」。
「なぜ、一九七八年以降、上記の事態が起こっていないか。多くの日本人の認識と逆であるが、実態は中国政府、台湾政府が漁民の動きに規制をかけているからである。この押さえがなければ、明日にでも大量の中国漁船が尖閣諸島周辺で漁業をする」。
 国境紛争があった時、関係国のすべての人が、紛争を円滑に収めようとする訳ではない。
紛争を発生させ、それによって利益を得ようとする人々が常にいる。
 北方領土・竹島でも日本漁船に対して発砲や拿捕があったがアメリカは出てこなかった。尖閣諸島でもアメリカは出てこない。
 これらは、竹島や尖閣で急速に高まる右翼的言動に対する真実からの“冷や水”である。
 最後に領土問題の平和的解決に関する孫崎氏の見解を聞いてみよう。私としては、現在外交交渉で歴史的にも国際法上も日本領だとの立場から、領土問題を解決しようと舞い上がっている志位委員長以下の共産党の諸君に是非読んで欲しいものだと考えている。
 紛争を平和的に解決する手段として、孫崎氏は(外交)交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判所だが、「領土問題の解決に実際的なのは、交渉と国際司法裁判所である」とする。その理由には、「日本の領土問題の多くはサンフランシスコ平和条約と関係しているため、通常のケースより、国際司法裁判所で解決することが想定」されていることを挙げている。
 孫崎氏は、この理由の他にも三つの積極的な理由を述べているので紹介しておこう。
 第一に、日本の周辺にはロシア、中国と軍事的に強力な国家である。法的な根拠以外で解決される場合には、ロシア、中国の武力が強い影響を与える。
 第二に、従来の国際司法裁判所の判例を調べる限り、客観性に疑問のあるケースはほとんどない。ナショナリズムに大きく左右される当事国の判断より合理性と客観性がある。
 第三に、何よりも、国際司法裁判所に判断を委ねる事により、武力紛争を回避できる。
 さて、では一体全体、外交交渉と国際司法裁判所へ判断を委ねる事との決定的違いは何か。現下の舞い上がっている共産党員のためにだめ押ししておこうと私は考えた。
 孫崎氏は、『国際紛争の平和的解決』から「交渉は当事者に対し事故の紛争について最大限の支配権の保持をすることを許すプロセスである。これに対し、裁判は、少なくとも判決に関する限り、当事者の手から紛争を完全に取り上げてしまう」を引用した。
 実際の国際紛争の場では、「(外交)交渉」が圧倒的な比重を占め、極めて重要な役割を担う。しかし交渉を行う事は、常に平和に向かう事を意味しない。関係国の双方に、和解を求める勢力と紛争突入が望ましいと判断している勢力があるからだ。ここで大切なのはどちらの勢力が主導権を握っているかであると孫崎氏はするのである。
 確かに共産党は外交交渉一本槍であり、その事で「最大限の支配権の保持」を計ろうとする点でまさに日本政府と一致した対応をとっている。そしてこの立場が軍事衝突を惹起する危険性を持つ危ういものであるとの認識は、全く鈍感にも持っていないのである。
 彼らは、尖閣や竹島についての相手国の主張を一顧だにしない傲慢な態度に何の反省もない。両者共に日本領が歴史的にも正論だと言い募るだけなら、彼らはまさに日本政府の別働隊である。まさにその事で共産党を見直したとの保守からの支持を受け喜んでいる。
 この問題を考える上で、本書は必読の書である。つまり韓国が拒否したが竹島で提訴した様に、今後尖閣諸島は、中国と共同して国際司法裁判所に提訴すべきなのではないか。あるいは現在までの様に領土問題は「棚上げ」とする方針を再確認すべきである。(猪)案内へ戻る


情報の国家的収奪

 2001年4月に施行された情報公開法は例外なき情報公開ではなかった。公開しない情報として、第5条第1号(不開示情報1‐個人情報)、第2号(不開示情報2‐企業等情報)、第3号(不開示情報3‐防衛・外交情報「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」)がある。
 この規定を盾に、恣意的な情報隠しが行われてきた。まさに〝例外ある〟情報公開だが、それでも知る権利の前進に資するものであったと言っていいだろう。第3号で〝不開示情報〟とされているのは、大方が政治家や官僚が国民に知られたくない、隠しておきたい情報である。こうして不開示になった情報や真っ黒に墨塗りされた情報を、どのようにして公開させるか10年余にわたって攻防が行われてきた。
 この局面を一気に覆そうという望みが、秘密保全法案に託されている。ここではもう、情報公開が原則で例外的に不開示情報があるということではなく、秘密にする情報を知ろうとすることすら罪になるという代物である。しかもそれは防衛・外交情報だけではなく、「公共の安全と秩序の維持」に関する情報も秘密となる。このような、いか様にも解釈できる規定はこれまでの国家秘密法制にもなかったものである。
 例えば3・11以降、パニックが起こるからと多くの重要な情報が隠され、多くの人々が避けられたはずの放射能に曝された。その責任を問う告訴・告発が行われているが、秘密保全法が成立したらそれらは隠すべき情報となってしまうだろう。国が(官僚が)握っている情報を、いつどのようなかたちで国民に知らせ、また知らせないようにしようということである。
 その一方で国民の情報をすべて把握するための手段、共通番号制度を国は持とうとしている。いわゆるマイナンバー法案である。これは世情に流布されている社会保障と税の一体改革のためのものではない。この法案の正式名称は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」であり、狙いは付番と個人情報の利用、集積である。ここにおいて、個人情報は国家のものとなり、いかようにも活用されてしまうことになる。
 さて、こうして明らかになるのは、秘密保全法案とマイナンバー法案は表裏の関係にあるということ、すべての情報を国家(官僚)が掌握・独占しようとする野望である。我々がめざすべきは、我々がすべての情報を掌握することである。そうしないでは、健康や生活、いのちを守ることは出来ないだろう。  (折口晴夫)


「沖縄通信・NO28」・・・「2米兵の女性暴行事件」

 10月1日に岩国からオスプレイが飛来して、4日からさっそく沖縄での飛行訓練を開始し、米軍基地は勿論のこと、那覇市や浦添市などの人口密集地上空を飛ぶ訓練を繰り返している。また、23日には初めて夜間飛行訓練を実施した。
 沖縄県民はいつ墜落するかわからない恐怖におびえると同時に、オスプレイがまき散らす騒音に驚いている。
 そこに、またしても米兵による集団女性暴行事件が起こった。当然沖縄県民は怒り心頭である。さらに、沖縄県民を怒らせているのが、日本政府の無責任(ひとごと)な対応である。

1.悪質かつ卑劣な暴行事件
 集団女性暴行致傷容疑で逮捕された米兵は、米テキサス州フォートワース海軍航空基地所属の米海軍上等水兵クリストファー・ダニエル・ブローニング容疑者(23)と同三等兵曹のスカイラー・アンドリュー・ドージャーウォーカー容疑者(23)の2人。
 両容疑者は補給業務を支援するため、14日から米軍嘉手納基地で従事し、16日にグァムに移動する予定だった。
 たまたま嘉手納基地内の宿泊部屋を確保することが出来ず、基地外のホテルに外泊していた。
 2人は16日午前0時頃ホテルを出て、犯行現場近くの飲食店数件で飲酒し、コンビニエンスストアで帰宅途中の二十代の女性を見つけ、酒に酔った米兵らは面識のない女性におよそ知りえる日本語で声をかけたが、女性が無視をして立ち去ると、その女性のあとをつけ後ろから女性を襲い、人目がない道路脇に引きずり犯行に及んだ。被害女性は米兵に首を絞められ全治3日程度のけがを負った。
 2人は16日午前9時には沖縄をたち、グァムに行く予定だった。事件後、女性の知人が素早く警察に通報し、捜査員が現場周辺の宿泊施設を徹底的に捜査し、事件発覚から3時間後に1人目の容疑者をホテルで発見し緊急逮捕した。
 もしスピード捜査が出来なく、彼ら2人が午前9時に嘉手納基地から出発してしまったらグァムの米軍基地に逃亡してしまっただろう。また、ホテルではなく、嘉手納基地に宿泊していた場合、沖縄県警は米軍基地に入ることが出来ず捜査する事も逮捕する事も出来なかったであろう。
 まさに米軍基地は、「日米安保条約」と「地位協定」によって『治外法権』として存在し続けており、それをカサに着て犯罪に走る米兵があとを絶たない。
 だからこそ、沖縄から早急な「地位協定の改定」の要求が何回も出ているのである。

2.あきれる日本政府の対応
 沖縄に来る米軍兵士の意識について、元海兵隊員であったダグラス・スミス氏は次のように述べている。
 「海兵隊は第二次世界大戦で日本と激しく戦い、沖縄は戦利品という意識を持っている。その意識が現在も完全に消えたわけではない。最近の沖縄基地では、司令部は一生懸命、兵士らに基地外で問題を起こさないように教育していると思う。だが、今度来た海軍兵の容疑者はそのような教育を受けていない。『戦利品』である沖縄でルールを守る必要がないという米軍文化のイメージが働いたのだろう。」
 今回の事件を受け、米政府は素早く動き「在日全米軍兵士の深夜外出禁止」を打ち出した。在日全米軍人への外出禁止は初めて。夜間外出禁止は10月19日から発効し、午後11時から午前5時まで。対象者は約4万人。さらに、23日在日米海軍司令官のダン・クロイド少将が沖縄県や嘉手納飛行場周辺3市町の首長などに謝罪した。
 このように素早く米政府が再発防止策を打ち出したのは、沖縄ではオスプレイ配備をめぐり抗議行動が激しくなっており、米国にとって最悪のタイミングであったからだ。
 しかし沖縄県民からは「いつも事件が起こったときだけ、集中して再発防止に取り組むが、『喉元過ぎれば』で今回も期待出来ない」「沖縄は日本じゃないような感じだ。知事は日本政府ではなく、オバマ大統領に直接訴えた方がいいのではないか」等々、実効性に疑問を持つ声が噴出している。やはり「日米地位協定の改定」を強く求める意見が多い。
 ところが、情けないのが日本政府。こんな大事件が起こったのに、森本防衛大臣は「現時点で日米地位協定を改定する考え方は政府内にはない」と、また官房長官も相変わらず「むしろ運用の問題だ」と言っている。
 これまで沖縄で起こった米兵の事件・事故を考えれば、もはや「日米地位協定の改定」に乗り出して米軍の暴走を少しでもおさえる方向を追求すべきである。ところが、政府及び大臣はまったく「思考停止」で、あるのは「対米従属」だけ。
 さらに驚いたのは、「米兵の女性暴行事件」と報道されているのに、森本防衛大臣は「非常に深刻で重大な『事故』だ」と発言。他の会見でも4度も「事件」を「事故」と発言。玄葉外務大臣に代わり、事件の対応に当たった吉良外務副大臣も「今回の『事故』はあってはならない」と発言している。
 人を傷つけた「事件」と交通事故の「事故」とでは、全く違う。こんな事は世間では『常識』である。
 大臣たちにそのような『常識』がないのか、それとも「重大事件」を少しでも軽く扱いたいのか。もしそうだとすれば、極めて悪質な発言である。
 もう一つ驚いたのが、自民党の対応。「民主党はもはや政権党をやめるべきだ」と、民主党批判を得意になって喋る自民党の石破幹事長は、沖縄県内で高まる「日米地位協定の改定」について、「運用改善でできることを見極めないといけない」と、地位協定の改定を否定した。
 自民党こそが、沖縄の思いを踏みにじり、長年「日米地位協定の改定」を阻止してきた張本人である。反省のない自民党に政権に戻る資格はない。

3.沖縄の怒りの展望は
 繰り返される米兵暴行事件にたいして、大田昌秀元沖縄県知事は沖縄の現状と展望を次のように述べている。
 「本土復帰後から2011年まで、米兵らの犯罪検挙数が5747件、うち女性暴行や殺人などの凶悪犯は568件も起きている。事件のたびに日米両政府は綱紀粛正や兵士教育などを言ってきたが、一度でも効果があったか。事件の背景の一つは米軍の植民地意識、占領軍意識の表れだ。二つにはいまだに地位協定ですら改定できない日本政府の姿勢だ。全基地撤去を求める時期がいま来ている。安保を認めてオスプレイ配備に反対するというのは矛盾だ。安保を根拠に在日米軍は置かれているのだから。県も『綱紀粛正』などの生ぬるい要求ではなく基地撤去を要求すべきだ。日米安保条約を破棄して友好条約にし、その上に成り立つ在沖米軍基地を撤去すべきだ。沖縄の犠牲で成り立つ安保を見直す以外に事件を防ぐ方法はない。」
 中部市町村会の儀間会長(浦添市長)は、在沖米海軍艦隊活動司令部への抗議後の記事会見で、「許しがたい蛮行そのもの。基地撤去まで訴えていかなければ根底から解決できない」と基地撤去要求まで発言している。
 また、県議会も22日臨時会を開き、米海軍兵による集団女性暴行致傷事件について、「激しい憤りを禁じ得ない」と強く批判する抗議決議と意見書を全会一致で可決した。
 意見書では、被害者への謝罪と完全補償のほか、「日米地位協定の抜本改定」と初めて在沖の全米軍基地を対象とした「返還の促進」を要求した。
 このように沖縄の怒りは、オスプレイの強行配備、米兵の暴行事件を受け、在沖米軍基地の撤去まで高まっており、ゲート前の抗議行動・集会は続いている。(富田 英司)案内へ戻る


色鉛筆-誰にでも見える共通番号「マイナンバー」

 「マイナンバー」法案と聞いて、現行の住基ネットとどう違うのか? 答えられる人は一体、どれだけ居るでしょうか。もしかしたら、次の臨時国会で審議され成立してしまうかもしれないのに・・・。マスコミも取り上げず、どれだけ有権者を無視した国であるのかを肌で実感せざるをえません。そんな中、「反住基ネット連絡会」の白石孝さんを招いて、10月21日(日)に講演会を持ちました。
 白石さんは、最初に西宮市とはご縁がありますと、かつてコンピューター導入や国勢調査に疑問を持つ自治体職員との出会いを語られました。そして、顔ぶれが随分変わったと述べられ、その頃のメンバーが継続して活動出来てないことを口にされました。そう言えば、そのメンバーだった西宮市の職員で、出世している人の顔が頭に浮かびました。
 まず、共通番号制度が当初の消費税導入に伴う低所得者への給付金を目的にした背景が、今や白紙になっていることが告げられました。民主党・自民党の勢力争いに巻き込まれ、本来の国会の役割もこなせていない政府への批判は当然のことです。中曽根政権以来、政策を国会で審議はするものの閣議決定で運用しようとする政令至上主義への転換は、政治のあり方そのものが問われていると、指摘されました。「国民」抜きの政策決定は、もうそんな前から実践されているのか、と考えさせられました。
 これまで、日本国籍にこだわって外国籍の人を制度から除外してきた日本政府が、在留
外国人に対しても身分証(ICチップ付きのカード)を交付し管理するようになるとして、新在留管理制度が今年7月から施行されています。白石さんは、この新しい制度で排除される在留外国人の存在を懸念し、私たちにその問題点を分かり易く説明していただきました。在留資格の無い「非正規滞在者」には、在留カードも外国人住民票も与えられず、そのために国や自治体からのサービスも受けられない。その上、就労するにも就労資格を表示する在留カードを必要とするため、働く場も失うことになる。不法就労をさせた雇用主には罰則も科せられるという厳しいもの。在留カードの実施の背景には、このような社会的弱者を排除することを狙いにあるとは・・・。ますます反対の声を上げねばと思いました。
 どうやらIT産業が、このカードを製作する過程で大きな利益をうむだろうと、白石さんの指摘は、原発で群がる電力会社を想起せざるを得ませんでした。しかし、たとえ法案が成立したとしても、番号付与が2014年、利用が15年、拡大が18年と本格的実施までには数年を要しますが、現段階でシステム設計も全くできていない状態でどうやって実行できるのか? 白石さんは、課題満載の「マイナンバー」を実施しようとする政府に半ばあきれ返る様子でした。
 住居である東京の荒川で、戦後、福島県に移住した人が多く、そのつながりで福島産の有機野菜を週1回取り寄せ、市役所前で販売しているという白石さん。NPOを立ち上げ、リサイクル商品のバザーを開いたり、貧困の問題に長く取り組んでいるその姿勢が、地域や人のつながりを大切にされているのが伝わり好感を持った参加者が多かったと思います。参加者からは、もっと講演を聞きたいので、シリーズにしてやって欲しいと、要望もあり、好評でした。これまでの住基ネットとの大きな違いは国が一括管理し、就職時には会社に自分の番号を表示することが義務付けられる。この危険性を広めていかねばと、心を引き締めた講演会でした。(恵) 


読者からの手紙
橋下大阪市長への朝日新聞の謝罪は共同謀議か

 「週刊朝日」での「ハシシタ」出自に関する連載は、橋下市長の同和差別だとする抗議で連載中止になりました。そこで暴かれた事実そのものの多くは、既知のものでしたが。
 確かに同和地区の特定になる地名表記は問題ですが、それは元々「週刊朝日」編集部の問題であり、朝日新聞が謝罪する問題ではないのではないでしょうか。私は、「週刊朝日」が朝日新聞の百%株式の子会社だからとする橋下市長の論理にはついて行けません。
 この事件は、人権を擁護してきた朝日新聞が直ちに謝罪する結果となり、その意味でなんだか怪しい感じがします。現に10月20日・22日の「神州の泉」ブログには、人権委員会設置法案提出の下準備としての同和差別問題と橋下市長の反論を取り上げる事で、大きくは仕組まれたものだとの指摘は、目からウロコが落ちる実に鋭い指摘です。
 さらに10月25日のブログでは、10月29日に「人権委員会設置法案提出」がなされるとの緊急ニュースが公開されています。引用します。

 神州の泉は、週刊朝日と橋下徹氏の騒動は、人権委員会設置法案(人権救済機関設置法案)が成立しやすい環境造りを狙って、政府筋が仕組んだ猿芝居だと考えているが、はたして現実はその通りの動きになっているではないか。29日に予定される臨時国会の召集は、間違いなく人権救済機関『人権委員会設置法案』の成立が最大のメインになっている。
 最近の事例を見ても分かるが、「違法ダウンロード刑罰化法案」、ACTAなどが、人の目をはばかり、どさくさに紛れて決められていることを見れば、今回の人権委員会設置法案も、民主的な手続きを経ないで、無理やり可決される公算が強い。何度も指摘しているが、野田政権の表の政策課題は、消費税増税、原発再稼働、TPP参加、オスプレイ容認などであるが、神州の泉が強く警告する「裏の課題」は複数の言論弾圧法案の実現である。
 政府は9月19日に人権侵害救済機関「人権委員会」を法務省の外局に設置する閣議決定をしているが、そのまま今秋の臨時国会へ提出する算段になっていた。ここで注意を喚起したいことは、この9月19日の閣議決定は、この法案に反対する松原仁国家公安委員長の外遊中をわざわざ狙っていることと、その9日前の10日には、やはり反対派である松下忠洋・郵政民営化・金融担当大臣が不審な死を遂げている事実がある。
 つまり二名の反対閣僚をパージした格好で閣議決定がなされているのだ。野田民主党が、いかにこの法案の成立に異常な固執を示しているかがよく見える。松下忠洋元大臣はこの法案成立のために謀殺された可能性が高い。野田佳彦氏は今月29日に臨時国会を召集し、この言論弾圧法案を出す魂胆だ。この超危険な法案の成立を推し進める勢力は、小泉政権時代から何度も出されている「人権擁護法案」を、姑息にも故意に名称を変えて国民の注意を逸らしている。
 反対派の二人の閣僚が居ない間に、どさくさに紛れてこっそりとやっていることと、名称を姑息に変えて、いかにも新しい法案であるかのごとく、国民を煙に巻くという装いをみても、これがいかに危険な法案であるか良く分かる。

 今回の田中法務大臣の更迭も関連しているかも。是非これらのブログにご注目下さい。
 さらに10月19日の「新ベンチャー革命」ブログでは、復調基調の安倍自民党に対して邪魔者になったから橋下攻撃が仕組まれたのだとの解説がなされています。しかし安倍自民党が大きく復活し政権を奪取するなど、全くの机上の空論だと考えます。
 その意味で私としては、「神州の泉」に軍配を上げたいと考えています。 (笹倉)案内へ戻る


編集あれこれ
 第一面には、「好戦派の跳梁を許すな!」と題して、尖閣諸島や竹島を巡る政治状況を痛打した。
この記事は、現下の政治情勢に対応したタイムリーでよいものだったと考えている。
 第二~三面には、オスプレイ沖縄配備に対する現地からの通信記事を掲載した。その緊急性故にすでにトピックスとして公開していたが、今後とも沖縄での闘いに注目していただきたい。
 第四~五面には、竹島問題・天皇謝罪要求発言への共産党見解を批判した記事を掲載している。
特に天皇謝罪発言に関連しての共産党の見解は、決して許す事が出来ない注目すべき発言だ。
 第六~七面には、千葉県の流山市議会での保守派の領土問題に関する意見書に対する反撃の闘いを紹介した記事である。このような闘いが全国でなされなければならないと我々は確信している。
 第八面には、読書室で孫崎氏の本が取り上げられ、第九面には、コラムの窓で「万国の労働者、団結せよ!」を取上げ、第十面には、色鉛筆で「総合こども園」の設置案の取り下げを批判した。
 第十一面には、戦後初の大規模な反基地闘争だった〈内灘闘争〉を取り上げた。その他としては、読者からの手紙と「労働者の新世界」のワーカーズは尖閣を中国領とする戯言に反論した記事を掲
載した。この記事は、ワーカーズの尖閣領土問題に関するよい補足記事となったと考えている。
 全十二面の多彩な記事を掲載することが出来たと自負している。(猪瀬)

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