ワーカーズ549号  2015/12/1  号案内へ戻る

 深刻化する子どもの貧困
 雇用の劣化を生み出す資本の支配に反撃を


 子どもの貧困の問題が、メディアでも頻繁に取り上げられるようになった。日本の子どもの貧困率は 16・3%で6人に1人。OECD・経済協力開発機構加盟国の35カ国中で悪い方から9番目。中でも1人親世帯の貧困率は54・6%に達し、OECD中で最悪。日本の貧困ラインは年収が122万円。これらの数字は、多くの人々の意識にものぼるほどになった。

 こうした数字の背後には、学用品など学校生活に必要なものを買えない子ども、病気になっても病院にかかれない子ども、それどころか日々の食事にも事欠く生身の子どもたちが存在する。そうした子どもたちは、学校から疎外され、地域の中でも孤立し、さらに崩壊する家庭の中でどこにも行き場のない状況に追い込まれ、中には虐待などで本当に命を失う子どもたちも多数発生するようになっている。

 貧困に捕らわれた子どもたちは昔からいたが、その貧困率の上昇が見られるようになったのは日本で新自由主義と呼ばれる潮流が力を持ち始めた1980年代からだ。そして今では、先進資本主義諸国の中でも最悪の国のひとつになってしまった。つまり、中曽根政権、小泉政権、二次にわたる安倍政権という露骨な資本家的政権の下で、日本の子どもたちは、衣食住という人として最低限の欲求さえ満たせないような劣悪な状況の下に追いやられようとしているのだ。

 新自由主義とは、言うまでもなく、経済のあり方を市場の論理、むき出しの資本の論理の下に晒せという要求だ。社会保障や福祉などの社会政策は、資本の最大限利潤の追求の犠牲に供せよ。労働者の生活は労働力再生産のために必要な最低限ぎりぎりのまで引き下げよ。さらには、商品を売り込む市場や生産活動に必要な労働力が、海外で確保することが可能なのであれば、自国の労働者に商品を買ってもらう必要は無い、労働力の再生産の面倒も見る必要は無い、労働者にまともな家庭は必要ない、路上の片隅があれば良い、ということになってしまう。

 無権利で低賃金の派遣労働の一層の拡大、労基法の改悪や解雇規制の緩和などの現在の雇用政策は、まさにそうした資本の要求の顕現だ。そしてこうした雇用政策、その背後にある労働者に対する資本の歯止め無い搾取欲こそ、格差と貧困の拡大を深刻化させ、最も弱い立場に置かれる子どもたちに、衣食住にさえ事欠く状況を強いている元凶だ。

 私たちは、子どもたちの健康と命を守るためにも、そしてその未来を保障するためにも、資本の貪欲な搾取を跳ね返し、資本との真剣な闘いに挑まなければならない。(阿部治正)
 

 シリア空爆とテロの応酬を止めよ
 フランスによる「イスラム国」空爆とテロリズムの不毛な連鎖 


 先月、パリに同時多発テロが襲い掛かった。

 一般市民129人が犠牲となった。イスラム国が報復であるという声明を出している。
明らかにフランスによる空爆への報復攻撃だ。 

 周到な計画で引き起こされた多国籍テロであり、大都市では、テロの防止・抑制がいかに不可能であるかを如実に示したことになる。

「 フランスの首都パリで13日発生した同時多発攻撃について同国の検察当局は14日、3つのグループを形成し連携して行った犯行との見解を示した。
国境をまたいだ捜査が進むなか、検察当局は今回の事件について、フランス国内のほか、中東、ベルギー、ドイツなど多国籍が絡んだ組織が関与したとみている。」(ロイター)
「オランド大統領は過激派組織《イスラム国》による《戦争行為》だと非難。イスラム国は犯行声明を出し、攻撃はフランスの軍事行動に対する報復だと表明。パリ中心部の各地に爆弾ベルトを身に着けたり、マシンガンを携帯したりした戦闘員を送り込んだとしている。」(同)

■テロは防げなかった

  フランスは米国とともにシリアやイラクで、イスラム国への空爆に参加している。報復には当然備えてきたはずだ。しかもコップ21が直前の時期だ。この日は世界中の首脳がパリに顔を見せる。厳戒態勢の下で、この大胆なテロ行為が実行されたのだ。今年初めのシャルリー襲撃以来今年2回目でもある。

 テロリズムは、不毛であり何の問題解決にもならない。全く無関係の市民への無差別テロであるだけにさらに許しえない。

 さらにISの掲げる「カリフ制国家」は、個人的自由を大幅に制限するものであり、女性差別や人権を無視するものであり、その実態の酷さを別としても、理念としても受け入れられない。

 しかし、同時に、オランド大統領主導のイラク・シリア空爆の残虐性を忘れるべきではない。フランスもまた、無関係のシリア・イラク国民や国土の破壊と殺戮を繰り返してきたのである。そもそも「国連」や「国際社会」とかいわれる諸国が少しでも中立の立場をとり、知性を働かしてこのような外国勢軍隊の介入を阻止すべきなのだ。

 ところが米・仏という軍産複合体の勢力の強い国は、率先して他国に軍事介入し、結果としてテロ行為を正当化し世界中にテロ攻撃を拡散させているといわなければならない。犠牲者はいつも無関係の市民である。

 オランド仏大統領が、対イスラム国空爆に踏み切った昨年九月には、内政の大失態で支持率が二十%前後に低迷していたという国内政治危機もあった。彼の目論見通り空爆により支持率は倍増した(国民の政治姿勢にも反省を求めたい)。

 日本の安倍首相も今回「いかなるテロも許されない」などとコメントしているが、安倍首相はすでに中東に日本の軍隊を送り込むと宣言しているのである。これほど国民にとって危険で愚かなことはない。国民を戦争勢力の無責任な行動の犠牲にしてはならない。自衛隊の海外派遣阻止こそ喫緊の日本人の使命ですらある。

 欧米諸国と日本がほんとうに戦争の拡大を望まないのならば、戦闘を中止し難民保護してこそ達成されうる。 

■私はシャルリーではない、私はフランスを支持しえない

 かつての米国同時多発テロや今年初めの風刺雑誌シャルリー事件でもそうだが、今回もまた、戦争を起こしたい勢力が、それらを利用して「愛国運動」を強めている。こんなものを拒否しよう。フランスによる新たな報復を正当化する愚行に反対する!

 フェイスブックではフランス国旗をプロフィール写真に張り付ける「運動」が開始された。「バリの犠牲者に哀悼をささげるため」だつて、とんでもない!
このような国民操作を警戒しよう。戦争という破滅の道はうるわしい「善意によって敷き詰められている」! 警戒しよう。パレスチナ問題やISのテロリズムを利用し不安をあおり、軍備を拡張しビジネスチャンスとしている最悪の人間たちがいる。(文)号案内へ戻る


 大阪ダブル選維新勝利!でも闘いはこれからも続く!

 大阪府知事・大阪市長のダブル選が11月22日、投開票され、市長選は、大阪維新の会公認で前衆院議員の吉村洋文(ひろふみ)氏(40)が、自民党推薦で民主、共産両党が自主支援した前大阪市議の柳本顕(あきら)氏(41)ら3人を破り、当選しました。知事選は、大阪維新の会公認で現職の松井一郎氏(51)が、自民推薦で民主、共産が自主支援した前府議の栗原貴子氏(53)ら2人を破り当選しました。松井、吉村両氏は公約に掲げた「大阪都構想」への再挑戦に向け、新しい設計図作りに着手します。大阪都構想をめぐる5月の住民投票に敗北し、政界を引退するとしてきた橋下氏について知事の松井氏は、「いったん身を引く」を言っています。これは、橋下氏は、間違いなく近い将来政界に復帰するでしょう。橋下氏は、8年前大阪府知事選に「2万%出ない」といって前言をひるがえして立候補しました。ウソつきです。

 今回の大阪ダブル選の結果は、大阪府知事選は、当選した松井一郎氏202万5387、自民推薦の栗原貴子氏105万1174票、美馬幸則氏8万4762票。大阪市長選は、当選した吉村洋文氏59万6045票、自民推薦の柳本顕氏、40万6595票、中川暢三氏(無・新)3万5019票、高尾英尚氏(無・新)1万8807票。投票率は、大阪府知事選挙が45.47%で、4年前の前回を7.41%下回りました。大阪市長選挙が50.51%で、知事選挙と同時に行われた4年前を10.41%下回ったほか、今年5月の住民投票を16.32%下回りました。どちらも、前回と比べて投票率が低かった、つまり市民の関心が低かったと言えます。

 普通に考えれば、橋下氏ら大阪維新の会が進めてきた大阪府政や市政が無茶苦茶だったことはわかると思います。大阪市営地下鉄・市バスの敬老優待パスは、無料だったのを年3000円で1回乗車するごとに50円いるようになったり、大阪府庁庁舎を2つも持ったままで咲洲庁舎は防災の面からも危険です。30年間で1201億円も無駄な費用がかかります。大阪市職員への思想調査。問題発言や不祥事だらけの公募公聴制度、大阪市の住吉市民病院の廃止、新婚世帯家賃補助廃止。

 一方自分らには甘いです。大阪府知事の退職金ゼロ、実は収入総額は348万円の増加、大阪維新の会の市議の政務活動費、小林堺市議は、架空のビラ代1000万円を不正に取得、伊藤大阪市議は、高級車レクサスを購入、何が身を切る改革なのでしょうか。

 維新の政治は終わらせたい、しかし自民の候補を応援することには躊躇する、というのが正直な感想です。今回、民主、共産が自主支援という形で栗原・柳本両候補の応援に入りました。駅での宣伝は、ほぼ共産の方々でした。自民は、本当に維新の候補に勝とうとすれば、民主、共産に共闘を申し入れるべきだったでしょう。私は、栗原・柳本両候補の街頭演説会に行きましたが、応援演説は自民党の国会議員だけで他党の応援演説はいっさいありませんでした。これでは、ダメでしょう。

 反対意見を排除する維新政治を終わらせるために、今回私は栗原・柳本両候補に入れました。政策的にも敬老優待パスの1回乗車50円負担を止める、万博やカジノからの転換などを主張した栗原・柳本両候補の方が政策的にはいいと思います。しかし、選挙は維新政治が続くことになります。今後も、大阪府政・市政の監視が続きます。再大阪都構想にも反対していかなくてはなりません。(河野)
                                    
 二期連続マイナス  日本経済の深刻な不振露呈

■メルトダウン・アベノミクス

「 内閣府が16日発表した2015年7─9月期国内総生産(GDP)1次速報は、実質が前期比マイナス0.2%(年率換算マイナス0.8%)となり、2四半期連続のマイナス成長となった。
 需要項目では、内需の柱の民間最終消費支出が衣服や飲食などの好調を背景に2四半期ぶりの増加に転じた。住宅投資は3四半期連続のプラス。民間設備投資は、産業機械・建設・自動車の減少などで2四半期連続で減少した。
輸出は、船舶や訪日外国人旅行者のインバウンド消費が増加に寄与し、2四半期ぶりに増加した。輸入も2四半期ぶりに増加。
外需寄与度は3四半期ぶりのプラスとなる一方、内需寄与度は3四半期ぶりのマイナスとなった。」[東京 11/16 ロイター]

「アベノミクス第二ステージ」マスコミにプレゼン中の安倍首相 

 そもそも14年度は日本においては成長率マイナス0・9%。今年度の初め(四~六月)の成長率はマイナス〇・3%(年率換算マイナス1・2%)。それにつぐ7~9月の成長率が再び三度マイナスの0・2%(年率換算でマイナス0・8%)となった。もはや誰も去年四月の消費税増税を原因に挙げることはできないだろう。

 落ち込み幅が前期よりもわずかに小幅だが、内容も悪く今後につながるものとは考えにくい。民間最終消費が拡大しているというが、他方では国民の消費支出は委縮しており、中国人など外国人の「爆買い効果」に依存しているという情けない話なのだ。

■資本主義の矛盾そのものの「不況」

 国内消費の委縮は、円安=輸入インフレで生活物資が高くなっていることもあるが、そもそもとしては、賃金の長期低迷傾向がつづいており、それに消費税なども加わったことによるといえよう。この大衆消費の狭隘性は資本主義の宿痾(しゅくあ)なのであるが、その病が一層こうじてきたということを意味する。

 ところが報道されているように海外の景気も、中国など新興市場が低迷から下降に転じており外需に依存している日本経済は来年に向けてさらに低下する可能性すらある。

 政府の定型コメント「穏やかな回復基調」とは裏はらに日本経済は、深刻なデフレが継続中であることがまたもや明るみに出た。
あとで触れるが政府やエコノミストの予想の甘さは何なんだろう? 

 しかし、アジアの経済減速は想定されていなければならない。

 2四半期連続のマイナス成長は、経済界ではデフレから不況(リセッション)に突入したとみなすのである。14年度も2期連続のマイナス成長を記録し、実質的な不況に突入しているのだ。それが1年以上にわたって継続されている、きわめて異例で深刻な状態なのだ。(戦後では「リーマンショック」など。)

 ところが、かつては口やかましかったエコノミストたちも、とくに大手新聞では政府の大本営発表=「緩やかな回復基調」に遠慮して真実をもはや語らない!

 由々しき事態と言わなければならない。日本の平和や安全のためにと戦争立法をごり押しした安倍政権の手法は同じである。「政府が正しい」「国民は政府の発表を信じていればよい」という危険な発想なのである。大マスコミが沈黙するのであれば、われわれが真実を伝えなければならない。

■大本営発表と実際

甘利経済財政・再生相は十六日、先に発表のあった経済指標《7─9月期国内総生産(GDP)1次速報は、実質が前期比マイナス0.2%(年率換算マイナス0.8%)となり、2四半期連続のマイナス成長となった。》ことについてコメントを発表した。

「景気の先行きについては、海外経済の下振れなどリスク要因はあるものの、各種政策の効果もあって、緩やかな回復に向かうことが期待される」との見通しを語った。(日経)

 確信犯的サギ師でないならあまりに無責任だというほかはない。「各種政策の効果」て何のこと?内需がさっぱりで資金はあっても企業は「設備投資」を敬遠していることは政府でもよく知っているはずではないか。安倍首相を先頭に、企業家を集めては「設備投資の勧め」をくどくどやってきたのではないのか。

 こんな内需がだめで外需頼みの日本経済にあって、頼みの綱は中国など新興諸国への輸出だったはずだ。

実際、中国経済に対する読みが甘かったのだ。

「政府も民間エコノミストも4~6月期の落ち込みは一時的で、7~9月期はプラス成長に戻り、景気は緩やかに回復するとみていた。シナリオが狂ったのは中国やアジア経済の減速の度合いが想像以上で、企業が設備投資を先送りする動きが広がったことが大きい。」(日経十一月十六日)

 そこでこの「海外経済の下振れなどリスク」についても触れてみよう。中国はいまでは自国の過剰生産と巨大バブルの発生の処理のために「経済軟着陸」に必死である。クラッシュではなくソフトランディングに仮に成功したとしても、経済成長率のかなりの低下は当然として経済規模の縮小も視野に入れておかなければならない。中国の七%前後の経済成長を前提とした「日本経済の回復見込み」は砂上の楼閣にしかすぎない。

 というのも中国の「七%成長」はもともと恣意的につくられた数字と考えられるからだ。じっさい中国にかかわるエコノミストたちは六~七%成長を信じていない。じゅうらいより「三~五%がせいぜいだ」とみていた。それでも少々甘い数字である可能性がここに来てでてきたのだ。

「10月の輸出は前年同月比6.9%減少した。輸入は同18.8%減。貿易収支は616億4000万ドルで過去最高だった。輸出の減少は4カ月連続。」かくして「輸出と輸入を合わせた貿易総額は1─10月に前年同期比8.5%減少し、政府が通年の目標としている6%増を大幅に下回った。」(ロイター十一月九日)自国内数値は共産党の官僚たちがいじくることができたとしても、外国相手の貿易の数字はごまかせないということだ。

 しかし、対外貿易が縮小しても内需が持ちこたえて中速の成長を維持しているのかもしれない。ところがそうではないのだ。内陸輸送の中核である鉄道貨物輸送量が前年比でマイナス18・7%の大幅下落だ。融資総額も前年比で30%もマイナスだ。

 少し考えてみてほしい。輸出が前年に比べて20%弱減少し、国内物流も20%弱という激しい落ち込みの中で「経済成長」などそもそも在りうるのだろうか?

 中国指導部の掲げる7%や6%成長は、政治目標でありスローガンでしかないのである。

 安倍内閣の主要閣僚である甘利大臣が、中国共産党の政治スローガンを真に受けていたとすれば不思議なことではないのか。もし信じていないのなら「緩やかな回復を期待」なんて言えないはずだからだ。

 いずれにせよ国民に現実を知らせたくないのは日中政府とも同じようだ。(六) 号案内へ戻る


 茶番劇はいい加減にしろ!──猫だましの軽減税率騒動──

 軽減税率の導入を巡る議論が続けられている。選挙公約で導入を掲げた公明党ががんばっているような構図をつくりたいのだろうが、議論そのものは肝心な部分を覆い隠す、本末転倒な茶番劇でしかない。

 私たちは、大企業や富裕層に甘く、労働者や社会的弱者に厳しい消費税や税財制全般を標的にした議論と闘いを拡げていく以外にない。

◆茶番劇

 消費税再引き上げ時での軽減税率導入は、来年の参院選も視野に入れた安倍首相の思惑もあって、再引き上げ時の17年4月導入がほぼ固まっている。いま何を対象に軽減税率を導入するのか、自公の与党内での調整が続いている。16年度税制に関する自民党税調による取りまとめ作業が12月10日頃には固まるので、それにあわせた軽減税率の規模や線引きの議論も大詰めを迎えている。

 とはいえ、軽減税率をめぐる議論の中身は、11月1日号でも触れたようにお粗末極まるものだ。現在の焦点は、軽減税率の対象を生鮮食品の他、加工食品にどれだけ拡大するのか、が焦点になっている。仮に生鮮食品に一部の加工食品を対象に加えると軽減額は約4000億円、すべての加工食品も対象とすると1兆円,外食も対象とすると1・3兆円、その間のどこに線を引くか、というのが議論の中心だという。

 ふざけるな、と言いたい。なにも軽減税率は8%据え置きでなくとも5%や非課税でも良いはずだ。それに非課税を食料品以外にどれだけ拡げるか、といった議論も隠されたままだ。消費税を導入している各国も、20%前後の基本税率でも軽減税率は10%や5%や2%、それに非課税品目もあり、幾重にも軽減されている事例もある。それを10%だ8%だと勝手に前提条件を付けて、その中でだけ線引きする様な姑息な議論に私たちが付き合わされる筋合いはない。

 安倍首相は,軽減税率の決着を,〈税と社会保障の一体改革〉の枠内で調整する、と自民党に指示したという。要は、他の支出、たとえば公共事業や軍事費などを減らさずに、あくまで社会保障支出を減らすことで軽減税率を導入する、ということだ。

 民主党政権時の〈税と社会保障の一体改革〉でも、5%から段階的に10%への引き上げで増える税収は14兆円。その内、自動的に増える給付に7・3兆円、国民年金の国庫負担分などに廻されるのが3・2兆円ほどで、これはあくまで後付け、計算上の操作に過ぎない。肝心の社会保障の充実に廻されるのは2・8兆円ほどでしかない。安倍首相の指示でいえば、今回の軽減税率導入で減る税収は、社会保障に廻す分を減らすことでつじつまを合わせる、というわけだ。これまでの議論の成り行きを考えれば、軽減税率の対象を広げればその分だけ社会保障の拡充分が削られ、軽減税率を狭めれば充実策はそのまま維持される。結局、どちらを取るのか、という噴飯ものの議論を繰り広げているわけだ。

 むろん、消費税再引き上げを前提に考えれば、私たち低所得者や年金暮らしの人にとって軽減税率は導入されるに越したことはない。が、そのなかみは右の様な代物なのだ。そんな議論は、問題の本質を覆い隠す目くらましであり、ペテンでしかない。

◆聖域確保

 そもそも消費税再引き上げを決めた〈税と社会保障の一体改革〉そのものが、私たちをペテンにかけるものでしかないのだ。

 こうとつに消費増税をぶち上げた菅首相、その後の野田内閣で合意した民自公による三党合意でも、消費増税の根拠とされたのは、財政再建と社会保障財源の確保のためだった。そこでは、増え続ける社会保障費を賄うために、公平に幅広く負担してもらうとし、同時に、消費税収は全額社会保障に廻す、というものだった。

 その時点から、私としては、〈税と社会保障の一体改革〉の狙いは、社会保障を人質にした消費増税で、公共事業や軍事費など他の支出を聖域化するものだ、と批判してきた。現に安倍政権発足時から、アベノミクスなどというキャッチフレーズのもとで〈機動的な財政支出〉という景気対策が繰り返されてきた。国土強靱化を掲げた大盤振る舞いも進められてきた。増えた消費税収のおかげで他の予算はこれまで通り以上に確保されたわけだ。円安などで企業利益が増えた結果としての税収増もあわせ、国の借金を減らすのかと思いきや、税収増はばらまかれ続けてきたのが現実だ。財政再建など、はなから頭にないのだ。

 消費税は全額社会保障に使うという約束も噴飯ものだ。社会保障給付は国家財政で30兆円以上、消費税10%でもまだ足りない。今後も増え続ける社会保障給付を考えれば、今後もその都度、消費税引き上げを続けるとでもいうのだろうか。逆進性がある大衆課税で,労働者や社会的弱者を支えるという枠組み自体が、税の再配分機能を無視した本末転倒なのだ。

 少し前、基本税率22%のスウェーデンと5%の日本で、税収全体に占める割合はほぼ同じだという推計もある。それは、スウェーデンでは、医療や教育などで幅広い非課税品目があり、また食料品や医薬品などの生活必需品が軽減税率の対象になっているからだという。消費税率は、見かけの税率だけでは判断できないのだ。日本は、すでに消費税に依存する度合いが最も高い国になった、という指摘もある。

 私たちは、いま改めて主張する必要がある。逆進性がはっきりしている消費税と社会保障をリンクさせることは大企業や官僚や富裕層を利するだけであり、いまこそ消費増税反対の声を上げる場面だろう。

◆企業責任

 消費税問題でもっとも基本的で重要な問題は、社会保障にしても再配分問題にしても、誰の責任でそれを行うのか、ということだ。民主党政権時の議論では、所得税は働く世代の負担が大きくなりすぎるとの議論で、各世代がまんべんなく負担するべきだという、いわゆる世代間格差の問題にすり替えられた。しかし、対置すべきは、働いているかリタイアしているかは問わず、労働者・勤労者か、それとも企業や富裕者か、という対立軸だ。格差社会が進行するなか、私たちとしては、労働者を働かせていることで利益を手にする企業こそ負担すべきだと考える。

 ところが、消費再増税を巡る議論のなかでまったく埒外に置かれたのがその〈企業の社会的責任〉だった。企業が焦点になってきたのは、アベノミクスでもそうだったが、企業が活躍できる社会、企業が富む社会の実現だった。その文脈で、企業活動がしやすくなる規制緩和や、あるいは企業を国内にとどめ、外国からの企業誘致にもつながる法人減税が叫ばれ、それを段階的に実現するというのが、アベノミクスだった。現に、企業の法人実効税率は、段階的に引き下げられ、17年度には20%台に引き下げることを前提し、15年度は32・11%に引き下げ、16年度には30・88%に引き下げることが既定事実化しているのが現実だ。まったく、安倍政権に限らず、企業に優しく、庶民に厳しく、というのが歴代政権がやってきたことなのだ。

 本来は社会保障給付が増えれば、税の再分配機能を活用するためにも、企業や富裕層から増税すべきなのだ。現に円安などを背景に企業は史上空前の利益を出している。企業の内部留保は、14年度で400兆円にも膨らんでいるという。個人所得税も1974年の75%から段階的に引き下げられ、いまでは最高税率は40%程度だ。アベノミクスでは、富裕層の支出を期待するとして、相続税の引き下げも行われている。

 これらに限らず、税制全体で企業や富裕者優遇策が繰り返され、税の再分配機能は低下し続けている。現に日本の相対的貧困率も増えており、OECDでも最下位クラスだ。こんな実質的な不公平、アンバランスな税制を続けながら〈税と社会保障の一体改革〉などというペテンを続けさせるわけにはいかない。

◆本丸を攻めよう

 社会保障に関する税と財政の枠を取り払って、より広い土俵で考えれば、年金と医療の保険制度がある。社会保険負担でいえば、現行では基本は50%ずつという労使折半だ。この是非と改善策が議論の土俵からはじめから排除されているのがこれまでの一体改革だ。

 私も何回も問題提起してきたように、社会保険の負担が欧米では企業により多く負担させている。たとえば、日本はほぼ労使折半だが、フランスでは事業主と勤労者の負担割合は3対1程度、スウェーデンでは4対1程度だ(別表参照)。要は、社会保険料の労使負担率を、企業に重く負担させることが急務であり、また効果も大きい。労働者の健康や障害、それに老後の生活に対して企業責任を重くするのである。

 税制にしても社会保険にしても、企業に重い責任を課すという、このテーマが〈一体改革〉では完全に無視され、土俵外に追いやられてしまったのだ。現在の企業中心社会から利益を得ている企業は労働力に依存しており、その世代を超えた確保によってはじめて利益を得ることが出来る。その社会的責任を負わせることが重要で不可欠なのだ。

 社会保障給付を税金で、しかも大衆課税である消費税とリンクさせたことが、諸悪の根源であり、それを企業責任を回避するマジックのごとく振り回されたのが、あの〈一体改革〉:だったのだ。現に企業や財界は、公的年金の義務化=年金財源の税金化をしきりに叫んでいた。労使折半の社会保険から税による負担にすれば、企業負担はなくなる。一体改革は企業の意向に沿って行われているのだ。その方便に利用されたのが、いわゆる世代間格差の問題だったのだ。社会保障改革の本丸は、そのための企業責任を明確にすることでもある。

 こうした課題を解決するためにも、労働者による闘いを前進させることが焦眉の課題になる。消費増税や軽減税率をめぐる闘いは、国の政策だけのものではなく、したがって国政選挙だけの問題だけではない。企業責任に対する、労働者の闘いの課題と地続きのものなのだ。労働者やその先代や子孫まで含めて、自分たちの生活を守るのは、自分たちの闘い如何にかかっているのだ。(廣)号案内へ戻る


 コラムの窓・・・書をたずさえ旅に出よう

「書を捨て町へ出よう」というフレーズを思い出した。今の僕には「書をたずさえ旅に出よう」がいいかなと思う。

仕事と自宅の往復、また自分の社会運動に忙殺される日々を一歩抜け出して、日帰りでもいいから(できれば一泊ぐらいして)旅に出よう!ということで、歴史に学ぶ旅、それも単なる「歴史マニア」ではなく、社会運動に役立つ「人類の過去・現在・未来」を見すえる旅の工夫をご紹介しましょう。

まず事前に、旅先の簡単な歴史を勉強しておきたい。手軽に読めるのが洋泉社の「歴史新書」で『あなたの知らない○○県の歴史』。各都道府県別の通史を、わかりやすく解説してくれる。旧石器時代から縄文・弥生・古墳時代、奈良・平安時代の古代史、鎌倉・室町・戦国時代の中世史、江戸時代の近世史。そして近現代史として、幕末・明治維新、自由民権運動、産業革命、日清・日露戦争、大正デモクラシー、軍国主義と太平洋戦争。地域のエピソードが説明してあって興味深い。あと、例えば長崎に行くなら、オランダの歴史とか。「ふくろうの本」というブックレットで、外国の簡単な通史を読める。

歴史をだいたい把握したら、今度はガイドブックで史跡や博物館などの場所を調べて、プランを立てておく。「るるぶ」や「まっぷる」でも、結構詳しい情報が載っている。コースは、できるだけ電車やバスを利用して歩くようにしている。マイカーやレンタカーを使うと運転に神経を使い、本を読んだり、考えたりできなくなるので。

いよいよ出発。持って行く本は、新書本だけにして、荷物を軽くしておきたい。日本史や世界史の分厚い参考書をもっていくわけにはいかない。そこで便利なのが学研の「出るナビ中学歴史」。ポケットサイズながら、要点は網羅されている。

そして、現地に着いたら、まずは博物館に行き、その地域の自然環境、遺物(石器、土器、道具)、中世や近世の古文書、近代の歴史資料、郷土の伝統文化をじっくり見学する。それから、実際に史跡に行ってみる。できるだけ、ガイドさんの説明を聞くようにする。

さて、ここまでは「過去」の話だ。僕達は何のために歴史を学ぶのだろうか?言うまでもなく、よりよい未来をめざすためであるはずだ。人々が生活を改善するためにどんな工夫をしたか、搾取や支配に抗して民衆がどのように闘ったか、戦争や植民地支配、環境破壊といった過ちをいかに反省すべきか、考えるためだ。

そこで、今度はその地域の「現在」を見つめたい。僕は、旅のついでに市役所や市民センタに立ち寄り、「市政概要」のリーフレットや「市政だより」をもらい、現在どんな課題を抱えているのか、知るようにしている。地域の産業政策、農業政策、高齢者福祉、子育て支援、各種の市民活動がどうなっているかなど。

その中で「未来」をめざして、市民運動でがんばっている人たちがたくさんいる。原発に反対し再生可能エネルギーを実践している人々。子どもの貧困問題に取り組み一緒に学ぶ場を運営している人々。化学肥料をできるだけ使わず自然農法に挑戦している人々。それぞれ苦労しながら、市町村の議員とも連携し、自治体改革に取り組んでいる人々。そうした人々の話を聞いたり、実践を見学したりする旅こそ必要だ。

そのためには、まずいろいろなテーマの市民運動の交流集会に出かけて、分科会に参加したり、資料をもらったり、懇親会で話を聞いたりしながら、「現地におじゃましていいですか?」とアポイントを取って行くのがいいと思う。できれば、いっしょに活動させてもらい、その経験を持ち帰って、職場の同僚や友人に話して聞かせたい。

社会の変革は地域から!過去の歴史を学び、現在の課題をみつめ、地域の未来に向けて頑張っている人々の知恵と情熱を分けてもらう、そんな旅を続けたいと思います。(松本誠也)


 「エイジの沖縄通信」(NO・20)・・・国家権力が牙をむく辺野古

 今辺野古では、ゲート前や大浦湾の海域で怪我人が続出している。
 11月4日に、警視庁機動隊の精鋭部隊が投入されて以来、ゲート前では機動隊の暴力行為・不当逮捕が目立ち、海保の海上での警備も命の危険にさらす乱暴行為が増している。

 まさに、「国家権力が牙をむく」という異常事態だ!

★11月4日・・・辺野古に警視庁機動隊を投入!

 4日から辺野古ゲート前警備に東京警視庁機動隊が投入された。沖縄県警機動隊と合わせて機動隊200人による「ごぼう抜き」(強制排除)と柵で作られた檻の中に無理やり入れる違法拘束がなされた。

 この日は、突然のゲート前テント村の中心人物を狙った不当逮捕騒ぎ。さらに、小型カメラでこの不当逮捕騒ぎを撮影していた人が、機動隊員に倒され道路で頭を打ち、意識不明で救急車で搬送される騒ぎが起きる。

★11日・・・ゲート前に最大規模500人が結集し、機動隊を押し返す

 毎週水曜日は議員の早朝行動日に合わせて、集中動員をめざしていた。

 当日早朝、ゲート前座り込み行動で過去最大規模となる約500人が結集し、抗議行動を展開。いつものようにゲート前で機動隊の「ごぼう抜き」(強制排除)が始まり、ゲート前の車両通路が開きかけたが、座り込み市民が機動隊による排除を押し返して、基地内に入ろうとする工事車両を立ち往生させた。

 山城博治さんは「座り込みを始めて機動隊を押し返した。県民が結集すればゲートは開かずの間になる。暴力ではなく座り込みの闘いを徹底しよう」と呼びかけた。

★12日・・・沖縄防衛局ボーリング調査を再開する

 沖縄防衛局は6月末に台風などの影響で中断していたボーリング調査(予定の24か所のうち19か所が終了)を4カ月ぶりに再開した。さっそく海では工事阻止の「抗議船」と「カヌー隊」が海上抗議行動を展開。

★17日・・・安倍政権が翁長知事を提訴、ついに法廷闘争に!
 政府は翁長知事による埋め立て承認取り消しは違法だとして、代執行訴訟を起こした。

 米軍基地問題をめぐり県と国が法廷で争うのは、1995年大田知事時代の代理署名訴訟以来20年ぶりで2度目となる。また、国と地方自治体の代執行訴訟は1999年の地方自治法改正後初めてとなる。

 国が代執行を進める理由は、「違法な承認取り消し処分は著しく公益を害する」との事である。公益を害する理由は二つ。「普天間基地の危険な状況を放置する」「米国との約束を守れない」と言うが。

 宜野湾市民は沖縄戦で米軍によって土地を追い出され、その間に勝手に普天間飛行場を建設された。そんな不法占拠が戦後70年間も続いている。米軍普天間飛行場の危険な状況を70年間放置し続けていた責任は日本政府にもある。まず普天間の閉鎖・返還を実現することが日本政府のやるべき事である。

 政府は「米国が辺野古新基地建設を望んでいる」と言うが、米軍の新軍事戦略「エアシーバトル構想」のもと、防衛省はキャンプ・シュワブに自衛隊配備を決めており、辺野古新基地が建設されれば日米両軍の出撃基地となる。

★18日・・・辺野古ゲート前抵抗500日目、ゲート前に1200人が抗議!

 代執行提訴から一夜明け、昨年7月の開始から500日目を迎えたこの日、午前6時から始まったゲート前の抗議集会には、県内外から多くの人が訪れた。午前9時ごろには約1200人が集まった。午後4時までに基地内に進入する工事車両や作業員らの車の進入を完全に阻止した。機動隊による排除もなかった。

山城博治さんは「1千人が集まった成果。集まれば工事を止められることが分かった。政府から不当な攻撃を受けている県に、ここから勇気を送りたい」と話した。

★同日・・・海上行動のメンバーらもこのゲート前行動に参加した後、いつもより遅れて海上行動を開始した。「勝丸」「不屈」「平和丸1号」「ブルーの船」「美ら海」の計5隻とカヌー隊13艇が海に出た。

 ところが、抗議船「勝丸」の船長さんが海保4名の暴行を受けて意識不明となり嘔吐を繰り返したため、救急車で病院に搬送されるという大事件が発生した。また、カヌー隊でも2人の怪我人が出る。Aさんは、頚椎捻挫で「10日間の安静加療」。Bさんは、海水が気管支に入っていると後々大変だいうことで「経過観察」となった。

★19日・・・名護市辺野古の新基地建設に反対する市民ら約200人が、米軍キャンプ・シュワブゲート前で抗議行動。午前7時すぎ、工事車両の基地内進入を阻止するため、ゲート前で座り込みの抗議をしていた男性(52)が、機動隊員3~4人に羽交い締めにされた後、背中に痛みを訴え名護市内の病院に運ばれた。肋骨(ろっこつ)骨折の疑いと診断されており、精密検査を受けた。

 沖縄県民はこうした暴力警備にひるまず、18日(水)は辺野古ゲート前1200人が座り込み。19日(木)には在沖米総領事館前に500人以上が結集し抗議行動。20日(金)には在沖米軍司令部(キャンプ・ズケラン)前に500人以上が結集し抗議行動と、他の米軍基地にも抗議行動を拡大させている。

 また、辺野古の闘いを強化するために、新たな新組織「オール沖縄県民会議(仮称)」(市民団体・労働団体・政治団体・経済界・その他の団体が総結集し、22団体で幹事会を構成)の結成をめざしている。その結成総会が、12月14日(月)6:00~開催される。(富田 英司)号案内へ戻る


 八木誠氏の原発延命計画

 関西電力が11月20日、「使用済燃料対策推進計画」を発表しました。これは関電社長にして電気事業連合会会長の八木誠氏が、原発をどのように延命させるのかという計画を示すものです。九電川内原発の再稼働を実現した電事連は、他の原発も続々と再稼働させようと目論んでいます。

 ところが、本紙前号でお知らせしたように「もんじゅを廃炉に」という動きが表面化し、使用済み核燃料の行き場がなくなるのではないかという不安が、突如として電事連を襲ったのです。八木氏の言い分(基本的考え方)はこうです。

○エネルギー基本計画に記載のとおり、我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する原子燃料サイクルの推進を基本方針としている。当社ではこのような国の政策に基づき、使用済燃料は再処理工場に順次搬出することとし、六ヶ所再処理工場の早期竣工及び竣工後の安全・安定操業に向け、日本原燃株式会社への支援等を実施しているところである。

○また、我が国は、使用済み燃料を安全に管理することは原子燃料サイクルの重要なプロセスであり、対応の柔軟性を高め、中長期的なエネルギー安全保障に資すべく、発電所の敷地内外を問わず、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進することにより、使用済燃料の貯蔵能力の拡大を進めることとしている。

○今般策定された国の「使用済燃料対策に関するアクションプラン」において、国がこれまで以上に積極的に関与しつつ、安全の確保を大前提として、貯蔵能力の拡大に向けた取組みの強化を官民が協力して推進し、国は各地域や国民各層の理解を深める活動を継続して行うとされている。また、各事業者の積極的な取組みはもとより、共同・連携による事業推進の検討等を進めるとされている。

○当社は、このような国の方針のもとあらゆる可能性を検討することにより、福井県外における中間貯蔵を実現し、2030年頃に2千トンU程度の使用済燃料対策を講じる。

 わかりにくいところもありますが、まず「もんじゅ」についての言及がないことに奇異な感を受けます。そこには、「もんじゅ」が廃炉になるかもしれないが、核燃サイクルは死守しなければならないという危機感があるのでしょう。また、高濃度放射性廃棄物である使用済み核燃料を一貫して〝使用済燃料〟と表記し、しかもそれが核燃サイクルの重要な〝原料〟だと言い張っているのも奇妙なものです。

 結局のところ、八木氏が最も強調したいことは「使用済燃料は再処理工場に順次搬出する」ために、「六ヶ所再処理工場の早期竣工」がどうしても必要であるということです。ところが、その再処理工場について、日本原燃は11月16日に完成目標時期を2年延期し、2018年度上期に変更すると発表しています。完成時期の遅れ(延期)はこれで23回目。工藤健二社長は「今後、行程に大きく影響する工事が新たに出るリスクは少ない」(27日「神戸新聞」)と言っていますが、その場しのぎの無責任発言に過ぎません。

 八木氏は、福井県外で2030年頃に操業開始する中間貯蔵施設はできる限り前倒しするとしています。これは高浜や大飯の原発が再稼働できても、使用済み核燃料の移送先がなくなり、取り出しができなくなるからです。安倍自公政権の計画では、2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)として、老朽原発の稼働延長を前提に原子力の比率を20~22%としています。実に野心的な目標値ですが、老朽原発の延命や新増設なしにこの数字を実現するのは困難です。

 以上のように、電事連、関電八木社長は国家の庇護の下、原発再稼働で儲けるために使用済み核燃料の中間貯蔵施設をどうしてもつくらなければならないのです。しかも、それを原発のある福井県は受け入れないのですから、ほとんど実現不可能な計画といえます。なおこの点に関しては、10月6日の最終処分関係閣僚会議資料「使用済燃料対策に関するアクションプラン」(案)があります。

 その内容について述べるのは次の機会としますが、八木氏はいずれ国が何とかしてくれるという思いがあるのでしょう。原発の再稼働に限らず、六ヶ所再処理工場も「もんじゅ」もゾンビのごとく何度死んでも復活させられるのです。原子力マフィア恐るべし!といったところですが、核なき社会の実現をあきらめることなくめざしましょう。 (折口晴夫)

                                            
 なんでも紹介・・・「沖縄『戦後』ゼロ年」 目取真俊著

 辺野古米軍ゲート前「座り込み500日、1000人結集」と、翌日の11月19日の琉球新報が一面に報じた。参加した仲宗根悟県議は、政府の作業強行に「わじわじーして、わったーうちなー、うしぇてぇーならん(怒りが沸いてきた。沖縄の人を見くびってはならない)。(移設反対の)うねりをつくっていこう」と呼びかけた、とある。

昨年7月の座り込み開始から500日!雨風や酷暑、寒さにも耐えての非暴力・不服従を貫く新基地反対の沖縄の民意は揺るぎない。それまでの、沖縄県警機動隊100人に加え、11月4日からは東京警視庁からさらに百数十人を増員、合計200人以上で対応して半月あまり。抗議の声は高まり強まりこそすれ、もはや弱まることはない。

 ゲート前だけではなく、辺野古海岸近くのテントでの座り込みは11年7ヶ月、4232日にも及んでいる。こんなにはっきりと示されている「新基地はいらない」の民意に一切耳を貸さず、むき出しの暴力で抑えつける政権は、かつて無かった。

 単純計算で、沖縄県民140万人の8割、112万人が反対し、翁長知事が、前知事の埋め立て承認に「瑕疵がある」としてその取り消しを表明してもなお、政府は新基地建設を強行。さらには県を提訴した。政府側の勝訴を言う人もいるが、それは分からない。知事と名護市長が、工事阻止のため「あらゆる手段」で対抗。沖縄の訴えに、国内世論も、国際社会からも少しづつ理解や味方が増えてきている。

 何よりも基地NOの民意は強固だ。

今、沖縄を考える時に、本土に住む私たちにとってとても良い本をみつけた。

沖縄に「戦後」=「戦争が終わった後」はあったのか?という問いかけで始まる「沖縄「戦後」ゼロ年」(生活人新書2005年7月・NHK出版)。10年前の発行で、「第1部、 沖縄戦と基地問題を考える」で語られていることは、今もそのまま。むしろ問題がより鮮明になってきている。

1960年に、本島北部の今帰仁村に生まれ育った著者は、今も辺野古で基地反対に取り組み続ける。父母から、祖父母から、沖縄戦や沖縄差別などを聞いて育ち、自身も基地問題と向き合い問いかけを続けている。

沖縄戦当時、わずか14歳(1930年生まれ)で銃を持たされ酷い体験を強いられた父親は、最晩年になって初めて自身の「加害体験」を口にしたという。半世紀以上も胸に押し込まざるを得なかったその想いは、どれほどに深い心の傷だったことか。今なお、沖縄戦の苦しみから解放されない体験者がいることは、そのまま「戦後ゼロ年」であることの証だ。時がたてば薄れる傷ではなく、今なお続く基地による被害によってその苦しみはなお増幅しつづけている。基地反対のうねりをつくっていこう!(澄)号案内へ戻る


 色鉛筆・・・「高浜原発から関電本店までリレーデモ」

 11月20日の金曜日、昼間は上着も不要の好天のなか、久しぶりに歩いて足の裏に水ぶくれができました。私が歩いたのはリレーデモの最終日で、大阪のJR吹田駅から関電本店の約15kmの距離ですが、運動不足の私にはやっとの思いのゴールでした。

 このリレーデモは11月8日(日)雨の中、高浜原発先展望所で100名による出発集会を行い、高浜町役場まで8キロ3時間のデモ。その後雨の日が続く13日間デモを通じて現地の人々と交流し、高浜原発再稼働反対の声を伝え運動の輪を広げていきました。総行程約200キロのデモは、琵琶湖の西海岸を経て京都、大阪と続き、近畿1450万人の水源となっている琵琶湖では、放射能汚染を回避したい様々なグループが加わりました。

 老朽でしかもMOX燃料で動く危険な高浜原発は、今年度中にも再稼働されようとしています。もし福島原発と同じくらいの事故が起これば、海岸沿いの先の岬に住む人たちが避難するのは極めて困難と言われています。放射性物質被害は、水源の琵琶湖から大阪・京都・兵庫へと広がるのは既に明らかになっており、日本海への海洋汚染も深刻な事態が予想されます。

 各地を回って来られた方の話では、デモの行き先で沿道から手を振る人、「頑張って!」と声をかける人、お寿司を差し入れしてくれる人など、うれしい反響があったことが報告されました。私も、デモの傍でビラ配布をしていたのですが、わざわざ店先まで出てくれる人、自転車を止めてビラを受け取ってくれる人、関心をもってデモのアピールを聞いてくれる人、出会ったことを大切に自分の気持ちを伝えようと原点に返った気分でした。

 福井地裁が今年4月に出した、高浜原発再稼働差止め仮処分の決定があるのにも係わらず、政府や関電、規制委員会はなぜ再稼働を企てているのか? 人が人間らしく生きる権利が経済的利益に優先することを明言し、原発の危険性を明瞭に指摘した福井地裁の決定は、未来を変えていくための足掛かりとして、尊重されるべきです。

 西宮市の市長が災害復興住宅に住む高齢の女性たちを、20年の契約を根拠に追い出しを強制し、裁判に持ち込もうとしています。憲法13条、平和的生存権は一人ひとりが大事にされ安心して暮らせる、命を大切にされることを権利として保障されていることを根拠に、市長に反撃を準備しています。私たちには、安全で安心した社会で生きる権利があるのです。(恵)


 読者からの手紙

 安倍総理の情実人事によって、この度目出度く環境大臣と原子力防災担当大臣の座を見事射止めた有名な「自民党女ヤジ将軍」の丸川珠代氏は、実に見事な言行不一致の人でもあります。

 この人、夫婦別姓制度の導入に反対しているのですが、自分の戸籍名は大塚珠代なのです。つまり自分は通名を使っているのです。このように事実上、夫婦別姓を名乗っているにもかかわらず、「良心の呵責」もまた言行に何の矛盾も全く感じないほどの「鈍感」な人なのです。こんな人物が一体なぜ夫婦別姓に反対しているのでしょうか。

 さてこの大臣が就任後初めて福島第一原発を訪れての第一声は、何と「風評被害の払拭は福島復興に欠かせない」と述べたのです。まさに世界的に有名なコメディー・グループのモンティ・ハイソンも真っ青のブラックユーモアではあります。
 この報道写真で赤いヘルメットを被っているのが、丸川大臣です。実に用意周到な服装ではありませんか。そもそも放射能汚染が軽微だというのなら、こんな防護服は着用する必要などないのです。

 東京大学経済学部を出たという丸川大臣は、「論より証拠」とか「百聞は一見にしかず」とか、または「百の説法、○一つ」とかの諺に示された庶民の認識論を理解できているでしょうか。

 この写真を一目見た庶民は、丸川大臣の多言を弄びながらの「重装備」に思わず、今に引き続く放射能汚染の深刻さを痛感した事でしょう。実際、丸川大臣の言葉は全くの無駄口だったのです。

 本当に、丸川大臣が放射能汚染を軽微で心配する必要が無く、単なる「風評被害」だというのなら、お付きの者は兎も角として自分は過剰なまでの防護服の着用を拒否して、国会議事堂に登院する時のような服装で福島第一原発の事故現場を「自民党女ヤジ将軍」よろしく、そこら一帯を堂々と自由に闊歩し、一番深刻だとされている第三炉の現状を把握してくれば好いだけのことなのです。

 歌舞伎であればここで大見得を切るところではありましょう。ここは丸川大臣の大失敗でした。

 丸川臣が「尊敬してやまない」安倍総理が放射能はアンダーコントロールされていると既に国際的に請け合っているのですから、放射能汚染ごときを今更何で恐れる必要があるのでしょうか。

 まさにここではその言行一致が強く求められていたのです。しかし実行が全く伴わなかったことで丸川大臣は、またまた面目を潰してしまったと言わざるを得ません。

それにしても事実は実に雄弁で、福島第一原発では放射能汚染が今も深刻な事を問わず語りの内に語ったのです。(猪瀬)

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