ワーカーズ575号(2017/10/1)  号案内へ戻る

 「消費税増税で子育て支援」はウソ
   強権と国民生活破壊の安倍政治にストップを


 安倍首相は、9月28日国会冒頭解散、10月総選挙の意向を明らかにしました。野党が求めてきた臨時国会開催を延ばしに延ばし、「仕事人内閣」を作って批判をかわそうとした挙げ句、何一つ仕事をしないまま、一切の議論を封じて冒頭解散。狙いはひとつ、安倍政権の支持率を押し下げた森友・加計学園疑惑や自衛隊日報隠しの追及逃れ以外の何ものでもありません。

 安倍首相は、2019年10月予定の消費税の10%への引き上げ分は子育て支援に回す、これを国民に問う選挙だと言います。しかし、子育て支援充実も、返さなくても良い奨学金も、本当にやる気があるのならとっくに実現しているはず。むしろ、子育て支援、給付型奨学金をケチり続けてきた人こそ、安倍首相。安倍首相の下で消費増税を許すなら、結局はこれまで同様に財界大企業や資産家達への大減税、無駄と浪費の公共事業に化けてしまうことは確実です。

 安倍首相は、「北朝鮮への対応を問う国難突破選挙だ」「対話ではなくあらゆる方法での圧力を」と言います。しかし北朝鮮の狙いが、米国との平和協定の締結、北朝鮮への攻撃は許さず、にあることは多くの専門家が指摘しているとおりです。

 やり方が、米国などを模倣した核・ミサイル開発というのは、極めて愚かで危険なことであり、厳しく糾弾されるべきです。民衆の暮らしを犠牲にした独裁政治の下での核強勢国づくりでなく、アメリカの軍事挑発や軍事行動を国際社会の力で縛る、5大国に核廃絶を迫ることこそめざすべきです。 日本こそその役割を果たさなければなりませんが、安倍首相は、朝鮮半島危機を日本の軍拡と憲法の改悪に利用しようとするばかりです。

 安倍首相が、庶民増税で暮らしをいっそう破壊、アメリカ追随で日本を戦争の危機に引きづり込んでいくというなら、私たちはそれを内外の民衆と力を合わせ断固阻止。子どもと若者への支援、働く人々が人間らしい仕事と労働に就け、高齢者や障がい者が手厚いサポートをうけながら暮らせる、平和で安心な日本をつくるために、その障害となっている資本の支配する体制と断固として闘います。(阿部治正)


 〈解散総選挙〉〝巻き返し〟は許さない!――〝政権の座ありき〟の冒頭解散を裏目に!――

 安倍首相が、臨時国会での冒頭解散を強行する。野党が要求する臨時国会の召集を拒んだ末の、〝権力保持〟を最優先させた臨時国会の召集と冒頭解散だ。

 安倍首相は、私利私欲の解散を正当化するために消費税の使い道変更を掲げた。が、これも改憲などを実現したいがための疑似餌、三匹目のドジョウを安倍首相に釣らせてはならない。

 安倍首相の思惑を突き崩すために、総選挙では安倍与党勢力をなんとしても少数派に追い込んでいきたい。(9月26日)

◆私利私欲解散

 安倍首相は9月25日に記者会見し、9月28日に臨時国会を召集してその冒頭での解散を断行すると明言した。
 臨時国会と言えば、当初は、安倍政権が進める働き方改革に関連する労働基準法改悪法案や、IRリゾート=カジノ実施法などを成立させるためだった。安倍首相念願の憲法改定は、もり・かけ疑惑と都議選惨敗、内閣支持率の急落で、ほぼ諦めざるを得ない情況だった。

 ところが、野党第一党の民進党はといえば、党代表選挙のさなかで離党者が続出するという体たらくの状況、それに内閣改造後の内閣支持率の持ち直しの兆しをみて、いまだったら総選挙で勝てる、と踏んでのことだった。要するに党利党略の解散であり、自己の権力保持を最優先させた私利私欲の解散戦術だという以外にない。

 現有議席で3分の2を占める改憲勢力による18年中の改憲強行を諦めかけていた安倍首相にとって、改憲に向けた態勢の再構築とスケジュールの練り直しのチャンスと見たわけだ。仮に改憲勢力で3分の2の議席を確保できれば、来年12月の衆院任期を越えて19年7月の参院選まで改憲可能な期間を延長させることができる。安倍首相にとって最優先の政権維持と改憲シナリオをたぐり寄せるという、両方を手にすることができるわけだ。

 とはいえ、総選挙の結果は安倍首相の思惑通りに進むとは限らない。安倍首相に3匹目のドジョウを釣らせるわけにはいかないのだ。

◆アベノミクスの破産

 12年に返り咲いてからの安倍政権とはどういうものなのだろうか。
 改憲にのめり込む安倍首相の戦前回帰の政治姿勢は、〝戦後体制からの脱却〟という旗印に鮮明に記されているが、その本質は、国家中心主義と力による外交にある。そうした政権を支える経済・産業政策としては、景気テコ入れ策を中心とした規制緩和や財政・金融政策で多国籍企業優遇の政治を推し進めたこと、その結果として大企業だけが潤い、不安定・低処遇の非正規労働者が拡大を続けるなど、格差社会の拡大を深めるものだった。

 こうした安倍政権のカンバン政策はアベノミクスといわれ、庶民を含めた有権者の淡い期待をかすめ取ってきたが、その結果はすでに周知の通りだ。

 大胆な金融緩和、機動的な財政支出、岩盤規制を打ち破る構造改革という三本の矢は、どれも的外れで、現に経済成長や物価水準などで目標を達成できていない。唯一効果があったとされる金融緩和も、目的だとしてきた物価上昇2%を達成せず、出口戦略も描かないままだらだらと緩和を続けるしか打つ手が無くなっているのが実情だ。黒田日銀総裁は、4年半も目標を実現できると強弁し続け、毎年の様に6回も目標実現時期の先送りを繰り返すしかなかった。黒田総裁は来年3月の退任時にはなんと釈明するのだろうか。「こんなはずではなかった」とでもいうのだろうか。

 日本経済の長期低迷は、輸出主導の経済と多国籍企業優先、それを支える賃金をはじめとした国内コスト削減が原因なのだ。現に、過去最高益を重ねる大企業は利益を企業内に溜め込むだけ、国内需要を支える賃金はこの20年間少しも増えず、逆に傾向的に引き下げられてきた。団塊世代の大量リタイアと非正規労働者の増加がそれを加速した。
 日本経済が低成長から抜け出せないにもかかわらず、企業利益だけが増え続けてきたのは、賃金などのコストを減らしてきたからなのだ
。そうした構造をそのままに「富は上層から下層にしたたり落ちる」という〝トリクルダウン論〟を持ち出しながら、法人税引き下げなど企業利益にテコ入れしてきたのがアベノミクスだった。労働者・庶民の生活が改善しないのは、アベノミクスが不充分でも道半ばでもない。そもそもアベノミクス自体がペテンだったのだ。

 安倍政権は、ありもしないトリクルダウン論というペテンを振りまくことで、なんとか有権者をつなぎ止めてきた。が、実際に力を入れたのは経済・生活改善ではない。選挙では正面から掲げたことがない集団的自衛権=安保法、共謀罪、そして憲法改定だった。要は、口先では経済・生活改善、実際には国家主義、軍事至上主義を推し進めたのが、安倍首相だ。

◆3匹目のドジョウ

 解散総選挙を決断した安倍首相。目玉公約は消費増税分の使い道の変更だという。いうまでもなく三匹目のドジョウを狙ったものだ。
 安倍首相は12年12月の政権返り咲きを決めた総選挙で、経済・生活重視の姿勢を演出するアベノミクスを打ち上げ自民大勝をもたらした。14年12月の総選挙では、自公の与党で衆院3分の2の議席を手にした。〝税と社会保障の一体改革〟で決めていた16年10月の消費税の8%から10%への再引き上げを延期するとして多くの納税者に一時の安堵感を振りまいたからだ。また16年7月の参院選に際しても、再延期を表明し、これで衆参の改憲勢力3分の2を確保した。

 そして今回の解散総選挙だ。19年秋に引き上げることになっている2%分、5兆円の税収増のうち、借金の返済に充てるとしていた4兆円分の半分、2兆円を育児支援や教育無償化それに介護の充実のために使うと宣言して衆院の解散を表明したのだ。3匹目のドジョウを狙ったのは明らかだろう。有権者に現ナマというあめ玉を投げ与えることで票をかすめ取ろうというのだ。

 このことだけ考えれば、負担に圧迫される多くの当事者にとって朗報であり、歓迎されるのは当然だろう。ただし、その分だけ国の借金は膨らみ、財政再建は遠のく。現に安倍首相も、20年でのプライマリーバランス(基礎的財政収支の均衡)の実現という目標――もともと無理だったが――は先送りすると言わざるを得なかった。

 安倍首相は、財政再建――緊縮財政という痛みを伴う改革にはとことん後ろ向きだ。それで改憲など自身の政治信条の実現が頓挫することがイヤなのだ。逆にそれを実現するためならば、借金頼みやバラマキ政策もいとわない。後は〝野となれ山となれ〟で、目先の政権維持と自身の政治信条の実現だけが大事なのだ。

 消費増税について庶民の立場からすれば、そもそも税と社会保障の一体改革の枠組み自体が間違っている。少子高齢化や格差社会が進むなか、税による再配分機能を合わせ考えれば、社会保障費と消費税をリンクさせること自体がミスマッチなのだ。消費税は低所得者ほど負担が大きい大衆酷税そのものであり、それだけ消費抑制と国内需要の縮小という悪循環をもたらすだけだからだ。

 本来であれば税金は消費行為ではなく、新しい富、新しい価値を生産・創造する場面に課すべきものであって、資本主義経済では企業の営利活動や金融取引行為などに課すべきなのだ。安倍首相がやってきたことは全く逆だ。仮に税源を個人に求めるのであれば、消費税ではなく所得税、それも累進課税を強化した所得税に求めるべきなのだ。能力があるところに負担を求める、これが基本であり課税の原則なのだ。少子高齢化で膨らみ続ける社会保障費を大衆酷税である消費税で賄うという枠組みは、究極の自己責任システム、社会的弱者は弱者どうしで面倒を見るべきだ、自分を面倒見るのは自分でヤリなさい、というものでしかない。消費税云々は二次的なものとし、共助の象徴的なものに止めるべきなのだ。

 そんな消費税引き上げ問題、安倍首相は本来の課税原則など無頓着。自分の都合がいい様に延期したり使い道を変えたりすることしか考えない。借金を減らしたりどこかの支出を減らしたりするのは自分の仕事ではない、それは後の内閣がやればいい、とでも考えているのだろう。

◆改憲巻き返しを跳ね返そう

 今回の解散総選挙では民進党の体たらくもあって、自民党の目算では改憲勢力で3分の2の議席を再度確保できる、と踏んでいるのだろう。しかしそうなるとは限らない。

 安倍内閣支持率の回復と言ってもまだ不支持率も高い。また冒頭解散という憲法軽視、もり・かけ疑惑隠し選挙に対する批判もある。それに憲法9条に自衛隊を明記するという安倍改憲が総選挙の争点になれば、批判や警戒感が拡がる可能性もある。野党共闘が進めば、いったん支持率が落ち込んだ安倍自民党などが、3分の2を獲得するのは簡単ではない。

 安倍首相による解散総選挙の記者会見が開かれた少し前、小池百合子都知事が新党を立ち上げ、国政に進出すると語った。「希望の党」というなんとも情緒的・牧歌的な党名をつけたものだが、自民党の別働隊となる他はないだろう。いずれは自民党との間で権力のイス争いや権力の分け合いが始まるのだろうが、それでも右派・保守派のどん欲さとしたたかさには侮れないものがある。いずれ安倍自民党からの有権者ばなれが拡がるのは避けられない。その場面でそれが左派や中道に流れるのを防ぎ、逆に右派・保守派に取り込もうというものだからだ。

 当の安倍首相。今回の総選挙では、北朝鮮危機を最大限利用したアジテーションに余念がない。このところの北朝鮮危機を最大限煽ることで、ナショナリズム、排外主義、権力への求心力を高めるためのアジテーションを繰り返している。9月の国連演説では、売り言葉に買い言葉のトランプ大統領をけしかけるかの様に、対話は無駄、圧力以外にないと叫んでせっせと危機を煽っている。

 とはいえ、その言い分が「民主主義の原点である選挙が北朝鮮の脅かしによって左右されてはならない」との主旨。普通なら、安倍内閣と一体で国難に対処、と言うべきところだ。私利私欲の冒頭解散、何でもありの根拠付けではある。

 何はともあれ今回の解散総選挙は、いったん挫折しかけた安倍改憲機運を再度たぐり寄せる起死回生を狙った賭でもある。〝巻き返し〟を狙う安倍首相にとっても正念場なのだ。

 総選挙は私たち有権者の声を直接中央政治に反映させる場だ。10月22日の投票日に向け、私たちの陣地を再構築し、安倍自民党を政権の座から追い落とす闘いを拡げていきたい!(廣)号案内へ戻る


 「働き方改革」も総選挙の争点だ!

 九月下旬からの臨時国会に提出されるはこびだった「働き方改革基本法案」。ところが安倍首相の「衆議院冒頭解散・総選挙」で、日程は吹っ飛んでしまいました。しかし、選挙結果により多少の原案修正はあっても、すでに労働政策審議会を経ているのですから、結局一月遅れで、法案の審議は再開されるでしょう。そこで、これまでの経過と法案の各論点を簡単に整理してみました。そこから、その政治的・経済的背景や、選挙戦も含めた労働者側の闘いのヒントも見えてきそうです。

1、「基本法案」に至る経過

昨年九月、安倍首相の呼びかけで「働き方改革実現会議」が発足し、関係閣僚や経団連、連合、学者等で、十回の会議を開き「九つの論点」を議論しました。そして三月二八日に「働き方改革実行計画」をまとめ、政府は法案作成作業に入りました。
これとは別に政府は、財界の強い要望であった「脱時間給制度」(高度プロフェッショナル制度)を出しました。七月十三日、「連合」事務局長と首相との間で「修正合意」がいったん交わされましたが、現場の強い反発により、七月二七日「合意撤回」となりました。
それでも政府はあくまで「脱時間給制度」を通す方針で、連合が撤回した「修正案」を盛り込み、セットで国会提出するはこびとなりました。

2、「九の論点」プラス「脱時間給」

 そこで、今回提出される「基本法案」に盛り込まれている「九つの論点」と「脱時間給」を合わせた「十の争点」について、「労働時間」「賃金」「女性・高齢者・外国人」「構造的問題」に分けて、整理してみたいと考えます。(以下「九の論点」の番号は整理の都合で順序が入替わっている事をお断りします。)

【労働時間をめぐる攻防】

 まず最大の争点である「労働時間」について、過労死問題を背景に「残業規制」が論点とされている一方、財界の要求を受けて「脱時間給制度」が提案されています。

② 長時間労働の是正(時間外規制)

  現在の労働基準法では「三六協定」で「特別条項」を結べば、事実上再現のない時間外労働が野放しになり、過労死多発の制度的原因になっています。今回の基本法案では残業を「原則月四五時間未満」に制限するものの、「繁忙期は月百時間未満」まで認めており、遺族達からは「過労死ラインの容認は納得いかない」との声が上がっています。また勤務と勤務の間に充分な休息時間を確保する「インターバル規制」は努力義務として骨抜きにされています。さらに、過酷な長時間労働の運輸労働者、建設労働者、病院の勤務医師は、「五年間の猶予期間」で先送りされ、「長距離トラック運転手を見捨てるのか?」と抗議の声が上がっています。

⑩ 高度プロフェッショナル制度(脱時間給)

 「年収一〇七五万円以上」の高収入の「金融ディーラー」や「研究開発職」を対象に、労働を「時間」でなく「成果」で測り、時間外規制から外すというものです。過去に廃案になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」を衣替えした再登場です。いったん導入されれば、その後の法改正で「年収要件」は下げられ「対象職種」も広がることは、「労働者派遣法」の歴史を見ても明らかです。これまでも「裁量労働制」のたび重なる拡大や、トヨタの研究開発部門における新制度などで、すでに先取り的に実施されています。

【賃金格差をめぐる攻防】

 次に大きな争点は、「賃金」です。非正規労働者が増え「格差拡大」が進み、「子どもの貧困問題」等を背景に、「最低賃金」や「同一労働・同一賃金」が論点です。

③ 非正規労働者の処遇改善

 「同一労働同一賃金」について、同一企業内における「正規雇用労働者」と「非正規雇用労働者」(有期雇用、パートタイム、派遣の各労働者)との「不合理な待遇差を解消する」とし、「基本給、昇給、ボーナス、各種手当、教育訓練、福利厚生」を対象としています。しかし、あくまで「同一企業内」で、その基準は各企業の裁量にまかされます。また「是正を求める労働者が裁判外紛争解決手段で争える」としていますが、結局、個々の紛争労働者に大きな負担を強いるものです。

① 賃金の引き上げ

 最低賃金を年率三%程度上げ続け、時給の全国平均を二〇一六年の八二三円から千円にすることをめざすとしていますが、この程度では、例えばパートの掛け持ち(ダブルワーク)をしているシングルマザーが、高い保育料や介護費用を払いながら働くのに、到底足りません。

【女性・高齢者・外国人労働者】

 一方「労働力人口減少社会」に入り「労働力の構成変化」、すなわち「男子正社員中心」から「女性・高齢者・外国人」の活用にシフトしようとする、経営側の意識も反映していますが、内容は中途半端です。

⑥ 女性・若者の活躍

 女性が出産・子育て期にいったん離職した後に、有利に働けるよう、雇用保険の教育訓練給付を拡充するとしています。また「扶養の壁」を意識して就労を制限しないですむよう、「配偶者控除」の収入制限を「一〇三万円から一五〇万円に引き上げる」としていますが「専業主婦の家計補助」の延長でしかありません。就職氷河期世代で、正規社員になれないままの若者に、教育支援策を講じるとしていますが、抜本的対策とは程遠いです。

⑦ 高齢者の就業

 六五歳以降の継続雇用や、定年延長する企業への助成をし、シニア層が豊富な経験を他企業で生かす道も広げ、ハローワークや地域の経済団体と連携して高齢者の短時間勤務の求人を拡充するとしていますが、小さな改良の寄せ集めでしかありません。

⑨ 外国人材受け入れ

 高度外国人材の永住許可を、最短一年で申請できるよう「日本型グリーンカード」を導入するとしています。その一方で、「就労留学生」(週二八時間の就労制限以内)や、「技能実習生」(三年間の期限付雇用)の実態は、零細事業所の過酷な労働条件や、長時間残業や残業代未払い、本国ブローカーの斡旋料の借金、労使間トラブルを理由とした強制帰国など、社会問題になっているにもかかわらず、抜本策には一切触れられていません。

【構造的問題への対応】

 最後に、労働にかかるマクロ構造的問題への対応策を見てみましょう。主に「バブル崩壊」や「リーマンショック」といった経済危機により、「リストラ」離職を強いられた中堅世代や、「就職氷河期」や「派遣切り」による「ワーキングプア」世代、「シングルマザー」などの「貧困女子」世代など、特定の世代・層に矛盾がしわ寄せされています。

④ 転職・再就職支援

 新卒者でなくとも転職者を受け入れ、能力開発や賃金増に取り組む企業に助成を拡大するとしています。背景には、バブル崩壊で、働き盛りの中堅サラリーマンが離職を強いられ、能力に相応しい再就職につけない問題や、リーマンショックで正社員として就職できなかった新卒者の問題が、経済危機の後遺症のように尾を引いています。「新卒優先の終身雇用」システムを見直し、中途採用に道を開かせる社会政策的意図もありますが、その裏で「雇用の流動化」の名の下に、「解雇しやすいしくみ」への狙いも透けて見えます。

⑧ 子育て・介護と仕事の両立

 経済危機による低賃金世代に追い討ちをかけているのが、保育や介護の重い費用負担です。これに対し、全ての保育士に二%の処遇改善を予算化することや、介護職員に月平均一万円を上乗せするとしていますが、この程度で、保育・介護分野の離職防止をはかれるか疑問です。
また「病気の治療をしながら働いている人は労働力人口の三分の一」とし、主治医・会社・産業医の連携による「治療と仕事の両立」が注目されますが、パワハラやストレスによる「うつ病」など、労務管理のあり方も問われます。

⑤ 柔軟な働き方

 テレワークを利用した在宅勤務や、兼業・副業を推進し職種転換に生かすとしています。子育て中の在宅勤務に生かせる半面、休日の持ち帰り残業にもつながる危険があります。メンテナンスに従事する技術労働者が、夜間も休日も顧客とのスマホメール対応に追われている実態が、放置されていることを忘れてはなりません。

 以上、働き方改革の各論点を整理してみましたが、では安倍政権の意図や財界の狙いはどこにあり、私達労働者には何が課題となっているのでしょうか?

3、労働者側のラディカルな要求を!

もともと安倍政権は、「アベノミクスによる景気回復」を後押しするため「春闘で労働者の賃上げ」を掲げ、その延長に「働き方改革」もあったはずです。しかし、いざ国会提出の段となった今、結局本命は、財界の要求である「脱時間給」を通すことだったのかと疑わざるを得ません。いや本命はやはり「憲法改正」で、「働き方改革」は労働者の人気取りにすぎなかったのでしょうか?

 しかし、私達労働者はそれですますわけにはいきません。これまでの日本型企業主義労務管理は、激しい国際競争のもとで、システム開発プロジェクトに従事する技術労働者に、過酷な長時間労働を強いて、過労死が多発しています。「過労死せずに人間的に働ける社会」、「格差や貧困をなくし人間的に生活できる社会」は、私達労働者の根源的な要求です。

他方、資本家・経営者の側も「労働力の減少社会」へ危機感をいだき、「男子正社員」中心から、「女性・高齢者・外国人」を本格活用する雇用システムへと、「働かせ方改革」をもくろんでいるのです。

私達労働者の側は、こんな安倍政権や財界の意図にまどわされず、総選挙では「脱時間給」に「NO!」を突きつけましょう!そして「過労死を根絶し労働時間の大幅短縮を」、「格差や貧困を無くす同一労働・同一賃金を」、「男女・高齢者・障がい者・外国人が共に働けるワークシェアリングを」、「利益優先の企業主義ではなく社会連帯型協働組合と自主管理を」など、ラディカルな対抗要求を総選挙の争点にも掲げ、「真の働き方改革」をめざそうではありませんか!(松本誠也)号案内へ戻る


  神社本庁で更に内紛の深刻化―内部告発の部長を懲戒解雇

 2017年9月6日のワーカーズの直のブログで、神社本庁の内紛とその背景について書いておいたが、ここに来て神社本庁の内紛の根深さ・深刻さが公然と暴露された。それは今まで隠蔽されてきた不動産売却・処分の金銭上の不祥事が週刊誌の報道により明らかになったことだ。これまた山尾議員の不倫追及で名を上げた週刊文春の報道であった。

 9月4日、全国約11万余社の神社を包括する宗教法人・神社本庁で、不動産売却をめぐる不正を指摘していた部長が懲戒解雇された。最近、神社本庁では青山・中野・百合ヶ丘の職員宿舎が同一の不動産会社に売却されたが、何れも売却当日に転売されていたことが発覚し問題となっていた、と週刊文春(2017年9月21日号)は報道している。

 その記事によると「2015年11月の百合ヶ丘の職員宿舎売却では、神社本庁の内規では競争入札と定められているが、『市場価格が変動するので緊急性がある』との理由で随意契約となり、新宿区の不動産会社に決まった」(神社本庁関係者)とのこと。

 この宿舎は1億8400万円で売却されたが、同じ日に東京都内の別の不動産会社に2億1240万円で転売された。その後、さらに埼玉県内の不動産会社に約3億1千万円で転売された。かくて転売により短期間で約1億3千万円、7割も価格が上がったのである。

 神社本庁内で職員宿舎が格安で売却された経緯について、部長らが問題を指摘。神社本庁ナンバー2の熱田神宮宮司の下に調査委員会を発足させたが、真相解明には至らず、その宮司は一身上の都合を理由に8月末に辞任した。まったく不可解なことである。しかしこの問題を指摘した部長は、9月4日付で懲戒解雇され、別の部長も降格処分を受けた。そしてこれを不服とする部長ら2人は、現在訴訟の準備を進めているという。
 この懲戒解雇について神社本庁は、週刊文春編集部に次のように回答した。

「職員宿舎の売却は、第三者による調査委員会で適法かつ不当ではなかったと報告されています。それ以外の点については内部のことでお答えすることはできません」とつれない返事をするのみで、真相を明らかにしようとする姿勢は微塵も感じられない。

 先のブログで問題にした神社本庁に直接管理されることになる宇佐神社と神社本庁を離脱することになる富岡八幡宮(東京都江東区)の場合は、現権宮司を宮司に昇格させないとの神社本庁決定に対する反発に原因があったが、内紛は金銭問題になったのである。

 従来から神社本庁は、神道政治連盟(神政連)を実動部隊として「日本会議」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などの安倍政権を支持する保守系の団体の活動を支えており、2年前から憲法改正の署名運動を始めたことは記憶に新しい。そしてこの神社本庁の内紛の激化を神社界が壊れたと形容する人が現れるなど、現実の日本政治への影響も徐々に深刻化しつつあり、おおいに注目されているのである。

 そもそも神社界のいう伝統とは一体何なのであろうか。今ここに伝統のために闘った宮司を紹介したい。現在、日本で建設中や計画中の原発は、大間原発(電源開発)青森県下北郡大間町と上関原発(中国電力)山口県熊毛郡上関町で二つであり、上関原発は特に全国的にも有名である。それは上関原発が1982年に建設計画が表面化して以来、約35年もの間、激しい反対運動が展開されてきたからであり、福島第一原発事故を受けて日本政府は方針を変更せざるをえず、今現在も建設計画が中断されているからである。

 上関町ではこれまでに他の原発誘致と同じく札束攻撃が威力を発揮し、中国電力が地元への工作費、建設準備費等に使った金は既に450億円に達したと噂されている。そして原発建設予定地の四代地区には四代正八幡宮という神社があり、その杜は建設予定地の2割を占めていることが問題となっていた。この四代正八幡宮は縄文時代からの鎮守の森を有する由緒ある神社で、八幡宮の眼下の入り江一帯は世界的に珍しい貝類が生息する自然の宝庫でもあった。つまり中国電力は寒村に原発を押し付け、さらに国は国策として縄文から人々の祈りの地であることを充分承知の上で原発を建設しようとしていたのである。

 1998年から神社の土地の買収計画は進められたが、四代正八幡宮の宮司・林晴彦氏は地域の名士であり、神社の土地の売却に反対姿勢を頑として譲らなかった。林宮司に対しては中国電力、広島県知事、自民党政治家(山谷えり子等)、マスコミ、弁護士、警察、公安、原子力村のあらゆる権力を繰り出し、林宮司に対してデマ、中傷、尾行、陰謀術数の限りを尽くし、また脅迫を繰り返しており、広島県神社庁に至っては神社本庁の意を汲んで四代正八幡宮の祭祀の妨害にまで乗り出してきたのである。

 これに対して林宮司は、一歩も引くことなく毅然として「法律上の最高権限を持つ神社本庁の代表役員が神社地の売却を承認することにでもなれば、それは自らが制定した法規を自分の手で破壊することであり、それは神社本庁自体の瓦解を意味するだろう。それは瀬戸内海地域に暮らす多くの人々を途端の苦しみに陥れることであり、人間の生死に関わる問題を一体誰が責任をとるというのだろうか。これが犯罪でないならば、世の中に犯罪というものはない」と神社本庁に反論した。これこそ真に伝統に生きるということだ。

 そもそも神社本庁憲章第十条には「境内地、社有地、施設、宝物、由緒に関はる物等は、確実に管理し、妄りに処分しないこと」という規定があり、神社の土地は売却できないことになっている。それは一木一草に神が宿っているとする古代からの神道の考え方から来るもので、神社の森は鎮守の森、神の棲む森とされ、各神社はそれを守ることが固く義務づけられてきた。ところが神社本庁は原子力村の一員に身を落とし国の原発政策の支持を表明したばかりか、何と中国電力に神社地を売却するよう四代正八幡宮に命じたのである。

 そればかりでなく追い詰められた神社本庁は、林宮司の「退職届」を受理したとして林宮司は一方的に解任されその代わりに原発容認派の宮司を据えて、新しい宮司が財産処分承認申請書を提出すると2004年8月20日、神社本庁は即座にこれを承認し、ついに神社本庁によって四代正八幡宮の土地は、中電に売却が決定した。2年後、林元宮司は山口県神社庁を相手どり、偽の「退職願」(文書の偽造)、違法手続があったとして裁判を起こしたが、裁判の最中の2007年3月、林元宮司は不審死したのである。その後、裁判は林元宮司の弟に引き継がれ、2009年の一審、翌年の二審で退職願が偽造であることは認められたが、山口県神社庁の偽造の関与、違法手続は否定され、誰が「退職 願」 の偽造文書を作ったのかは明らかにされることはなかった。まさに真相隠しではないか。

 ここで現役の宮司である社家56代目の三輪隆裕氏の貴重な証言を引用したい。

 三輪宮司は“日本会議は「皇室と国民の強い絆」が「伝統」だと主張しているが”との「週刊金曜日」の質問に対して、こう答えている
(『日本会議と神社本庁』からの引用)。
「いや、それは『伝統』ではありません。江戸時代にはごく一部の知識階級を除き、『京都に天皇様がおられる』ということを庶民が知っていたか、はなはだ疑問です。本来神社とは地域の平和と繁栄を祈るためのもので、この日吉神社でいえば、江戸時代は氏神の地域と尾張国の繁栄を神様に祈願していました。明治になって、日本という統一国家ができたので、その象徴として『天皇』を据えたのです」(『同書』163頁)

 確かに江戸幕府を打ち倒して成立した明治政府は、それまで民間の信仰であった神社神道を天照大神を内宮に祀る伊勢神宮を頂点とする「国家神道」へと組み替えた。この神話によるヒエラルキーの下に国民を「天皇の赤子」として支配しようと考え、その結果は「世界無比の神国日本」による「八紘一宇」の侵略戦争の肯定・積極的な推進であった。

 三輪宮司の批判はさらに神社本庁にも及ぶ。三輪宮司は、国家神道が神道の歴史では極めて特殊であることを「今の神社本庁には理解できない」と断言する。

「戦後、占領軍の『神道指令』で国家神道は解体されました。その後、神社は生き残るために宗教法人・神社本庁として再出発しますが、当時の神道界のリーダーは、ほとんど明治時代に神主になった人だったため、それ以前の本来の神道ではなく、明治政府が作った神道が『伝統』だと思ってしまった。その感覚が、戦後70年経ってもまだ残っているのです」(『同書』166頁)

 ここで三輪宮司も封印していることなのだが、現在の神社界には、とりわけ伊勢神宮には在日朝鮮人の比率が社会的平均値より高いという事実がある。これは文明史家の新井信介氏の指摘で、彼らには「明治からの伝統」しか自分の生きる拠り所がないからだ。

 三輪宮司は、改憲について「日本の独自性とか、妙な伝統とかいったものを振りかざして、現代の人類社会が到達した価値を捨ててしまう可能性があるような憲法なら、変えない方がよい。日本会議の改憲案は世界の共通価値と離れ、時代錯誤の原理主義と権威主義に満ちている」と語る。神社本庁は目下、日本会議と連携して改憲運動を活発化させており、今年の年始にも傘下の神社の一部で改憲賛成の署名運動を展開したが、三輪宮司によれば「ほとんどの神社の宮司は、本庁から書類が来ているのでそのようにしているだけ」だとした。事実、週刊金曜日の記者が年始に都内神社を取材し、職員に聞き込みをした際には、「神社庁の方で決まったことで……」との答えが複数の神社で帰ってきたの であ る。

 最近の神社本庁は個別神社の人事に対して強権的な介入を繰り返すなど「傘下神社への締め付け」の事実と今回の金銭トラブルの発生はまさに神社本庁の身から出た錆である。これらの不祥事の他にも神社本庁の腐敗・堕落は宮司・権宮司・権禰宜・禰宜に対しての美人局等、神社敷地内外でのホテル経営、駐車場経営、結婚式場等の営業活動、実に目を覆うばかりの惨状であり、個々の具体例は事情通の高山清州ブログにはしっかりと書かれている。もはや神社本庁や別表神社が神聖なものだと形容するに憚られる状態である。

 今後、安倍首相が着手するとみられる憲法改悪にはこうした所業がきっかけとなり、多くの神社関係者が日本会議、神社本庁に反旗を翻す現実性は高いであろう。 (直木明)号案内へ戻る


  高麗神社への天皇訪問

 新聞記事で小さな扱いではあったが、九月中旬、天皇と皇后が私的旅行として、埼玉県の高麗神社を訪問し、歴史的な資料を見学したと報じられています。高麗神社は、古代に朝鮮半島から高句麗の王族が渡来したのが由来だといいます。

ところで、高句麗と言えば、今の北朝鮮のあたりです。北朝鮮のミサイル発射や核実験に対し、安倍政権は「対話でなく圧力を!」と、さかんに敵愾心を煽っていますが、同じタイミングで、天皇が高句麗の渡来民ゆかり神社を訪問していることの意味を、少しは考えてみたらどうでしょうか?

よく考えてみれば、天皇家のルーツは、その多くが様々な渡来系の人々です。古代の朝鮮からは、百済、新羅、高句麗から、それぞれの王族の系統が渡来したと言われます。その多くは朝鮮三国が覇権を争った戦乱を逃れて来たのでしょう。
もちろん、渡来民に対して、在来の氏族もいたわけですが、それも元をただせば、その多くは、弥生時代に中国南部の長江文化圏から、水稲耕作民として九州に渡来した人々の流れを引いています。稲作の伝播は、中国南部から直接のルートと、いったん韓半島の伽耶諸国に伝わり北部九州へのルートもあったと言われます。

いや弥生人の前に縄文人が日本列島にいたではないか、と言うかもしれませんが、その縄文人も旧石器時代に遡ると、北アジアのシベリア沿海州からサハリン・北海道を通って、あるいは中国・朝鮮半島から対馬・壱岐を経て九州・西日本へ、また東南アジアから台湾・琉球・奄美の南西諸島ルートを経て、これら三つのルートで渡来してきて、日本列島で入り混じって融合したと言われます。

渡来民はアジア系だけではありません。唐や宋の時代になると、中国から仏教僧や商人が渡来しましたが、その中にはインドやペルシャから中国に来ていた交易民もいたそうですから、渡来民の中にはヨーロッパ系の人々もいたのです。ユダヤ系の文化的特徴が天皇の祭式に含まれているのを不思議がる人もいますが、別に不思議ではないのです。

「民族主義」の狭い自意識を超えて、多文化共生の意識を持って、平和な世界をめざしましょう!安倍政権や取り巻きの右翼が、天皇制や国家神道の復活をしきりに叫んでいますが、その天皇自身は古い親戚を訪ねるような感覚で、高句麗から渡来した人々の神社を訪ねているではないですか!(松本誠也)


  読書室 矢部宏治氏著『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』講談社現代新書 907円

 この本は、矢部氏が今まで書いてきた米軍基地と基地関連の本結論を新書版一冊に纏めたものである。何よりも簡潔で安いところが最大の魅力である。

 実はこの本の発刊日は8月17日だったが、私が本を入手したのは9月になってからである。それほど売れ続け、地方の小書店への入荷は著しく遅れたのである。9月22日の広告によれば六万部を既に売り上げているとのことであった。

 このように日本の真実がザワザワと知れ渡っていくことは大変良い事だと考える。

 矢部氏はまず『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』を書いた。

まさにこの本がプロローグである。続いて『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』を書く。この本が日米安保体制の法律面からの解明書である。引き続いて『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を書いた。この本は本を書き続けた過程で次々に沸き上がる疑問を解明したものである。さらに『戦争をしない国 明仁天皇メッセージ』を書く。この本は天皇が平和のシンボルとしての行動と発言を紹介したものである。そして『日本はなぜ、「戦争が出来る国」になったのか』が書かれた。この本は日本の自衛隊の指揮権が米軍にあることを暴露した決定的な本である。これらの本の累計は17万部だ。

 この五冊の本のまとめとして今回出版されたのが、『知ってはいけない』なのである。

 本書の目次は以下の通りである。

 はじめに
 第1章 日本の空は、すべて米軍に支配されている
 第2章 日本の国土は、すべて米軍の治外法権下にある
 第3章 日本に国境はない
 第4章 国のトップは「米軍+官僚」である
 第5章 国家は密約と裏マニュアルで運営する
 第6章 政府は憲法にしばられない
 第7章 重要な文書は、最初すべて英語で作成する
 第8章 自衛隊は米軍の指揮のもとで戦う
 第9章 アメリカは「国」ではなく、「国連」である
 あとがき
 追記 なぜ「9条3項・加憲案」はダメなのか

『知ってはいけない』は、第1章から第9章までの9本の縦糸を日本の最高法規は米国との密約と日本の最高議決機関は日米合同委員会との2本の横糸で緊密に織りなした決定版と表すべき著作である。まさに矢部氏渾身の著作である。

 このような稠密な著作を結論のみ解説する愚を避けるため、著者が「はじめに」で提案している読み方を紹介して読者の読書する喜びを保証したいと考える。今回の本には図版が多いことも読者の理解をおおいに助けるものになっている。

 矢部氏は一人でも多くの人に知っていただくため、今回極めて斬新な工夫をしている。それは各章のまとめを扉ページの裏に四コマ漫画があることだ。全部読んでもたった三分。まずは漫画を9章分通して読むことを読者に薦めている。さらに矢部氏は商業目的以外でのこの漫画の使用・拡散は次のサイトから自由に行うことを許可しているので、本を入手する前に確認することを薦めたい。アドレスは、https//goo.gl/EZij2e である。 (猪瀬)


 何でも紹介欄 書評『外国人労働者をどう受け入れるか』NHK取材班

 「働き方改革」における「外国人労働者」は?

 臨時国会に「働き方改革基本法案」が上程されています。その中で「外国人材受け入れ」についても、今年三月にまとめられた「実行計画」で、「高度外国人材の永住許可申請に要する在留期間を、現行の五年から世界最速級の一年とする「日本版高度外国人材グリーンカード」を創設。専門的・技術的分野とは評価されない分野の外国人材の受け入れは、国民的コンセンサスを踏まえつつ検討すべき問題だ。」と記述されています。そもそも外国人労働者は、今どのような状況に置かれ、何が問題になっているのでしょうか?それらを取材によって、わかりやすくまとめたのがこの本です。

外国人労働者の「四つの類型」

 外国人労働者は年々増え続け、二〇一七年には百万人を超えています。一口に「外国人労働者」といっても、ビザ(在留資格)によって、大きく四つの類型に分けられます。

 第一は、「日系人や、日本人の配偶者がいる」などの理由で「定住」の許可を得ている外国人で、全体の三八・一%、四一万人にのぼります。基本的に労働に制限は無いとされています。

 第二は、「留学生」で、二二・一%、その多くは就労目的で来日する「出稼ぎ留学生」と言われます。一週間に就労できるのが二八時間以内に制限されています。しかし、実際にはそれを超えて就労するケースが、多いと言われます。

 第三は、「技能実習生」で、一九・五%、二一万人にのぼり、フルタイムで働くことができますが、あくまで「技能実習が目的」という建て前で、滞在期間三年という期限付きです。その現場は、農業、水産加工業、建設業、製造業と幅広く、事実上「人手不足の穴埋め」とされている状況です。

 第四は、「専門的・技術的分野」で在留許可を持って働く人々で、一八・五%を占め、「医療」では医師や看護師、「教授」では大学教授など「高度人材」と呼ばれます。

 働き方改革では、第四の「高度人材」をより優遇するものの、第二の「出稼ぎ留学生」や、第三の「技能実習生」の実態については先送りし、事実上放置していることが問題と言わざるをえません。

「技能実習」制度の矛盾

 日本では、「単純労働」の分野での外国人受け入れは認めないのが、基本的な建て前です。とはいえ、戦前の韓国併合時代(朝鮮の植民地支配)からの歴史的経過から、戦後日本に在留する韓国人・朝鮮人やその二世・三世が、様々な現場で働いてきました。

 バブル期に、中小の製造業で労働力不足が顕著になり、「日系ペルー人・ブラジル人」に限り、労働力を受け入れましたが、「日系人」を証明書する本国の書類がズサンだったり、「在留資格」が切れたまま就労する「オーバーステイ」や、事業主が社会保険をかけない等、様々な社会問題が起きました。

 さらに「労働力不足」は深刻さを増し、中国人や東南アジア人を対象に「技能実習生」という制度ができました。もともとは「日本の高度な技術を学んでもらい、帰国後の本国の技術発展に貢献する」というのが目的とされていました。

 しかし近年は、こうした「建て前」は無視され、事業主も単なる「労働力不足」の穴埋めとして、外国人労働者も単なる「出稼ぎ」として働くケースが多くなっています。

 このため、「送り出し国」と「受け入れ国」の橋渡しをするブローカーが暗躍し、高額な手数料を前払いさせ、日本での安い賃金から借金を払わせる、一種の「債務奴隷」となる労働者が後を絶ちません。

 また、事業主の側も、零細な縫製工場主や、劣悪な環境の農業事業主が多く、賃金も安く、残業代も支払われず、長時間労働が強いられるなど、無権利状態で酷使され、あまりのひどさに職場を逃げ出し「シェルター」に避難する例も後を絶たない状況です。

 本書では、劣悪な条件のもとで苦悩する技能実習生を、生々しく取材しています。

外国人と「共に暮す社会」とは?

 本書の取材は、劣悪な環境のもとで外国人労働者を酷使する「奴隷労働」を告発することには留まらず、最後の章では「模範的な例」として、バングラデシュ人が社長を勤める建設請負会社が紹介されています。

 もともと外国人労働者として離日したバングラデシュ人のモバーグさんは、日本人の宣子さんと結婚し、「日本で働く外国人を助けたい」と、会社を立ち上げました。社員の国籍は、日本、バングラデシュ、インド、パキスタン、ギニア、タンザニア、マリ、ナイジェリア、トルコと、実に国際色豊かです。すべて「正社員」として雇用し、社会保険にも加入射せ、健康診断も受けさせています。

 会社の掲示物は日本語とローマ字を併記し、言葉の壁を取り除き、また日本の慣習に馴染むよう、宣子さんが「お母さん」役として生活の相談にのります。社内にモスクを設置し、礼拝後の食事会で、生活上の相談や助け合いの雰囲気を作ります。お祭の時はみんなで神輿を担ぎ、地域社会に溶け込む努力もします。「未来のサンプルになりたい」というのが、モバーグさんと宣子さんの信念です。

 「外国人労働者と共に暮らす」という視点での「働き方改革」は、安倍政権の「基本法案」には到底期待することはできません。むしろ、私達労働者の側が、オルタナティブとして、作っていくしかないのではないでしょうか?(松本誠也)号案内へ戻る


 清水LNG火力発電所建設反対運動 建設計画 「手続き延期」へ 早く白紙撤回せよ!

 前号(574号)で、東燃のLNG火力発電所建設反対運動の活動報告をした後の9月15日に、JXTGエネルギーが計画しているLNG火力発電所の事業準備会社である「清水天然ガス発電合同会社」(旧東燃+静岡ガス+清水建設)が、建設に必要な環境影響評価(アセスメント)の手続きを延期することを正式発表した。延期の理由については『行政をはじめ、住民から理解を得られていないと判断した』と述べた。

私たちは近々、JXTGが記者会見をするという情報が入り、計画を白紙撤回するのではないかと、期待していたが手続き延期の表明だったのでとても残念だった。だが、私たち住民が「LNG火力発電所は危険すぎる!余りにも人口密集地に近い」と、反対の声をあげて反対運動してきたからこそ、県知事、市長、地元の議員、経済界の人たちが反対の方向に動き、事業者は危機感を感じて延期したのだ。これは2年間反対運動を地道にやってきた私たち住民の力だと思っている。

 しかし事業者は、『あくまでも火力発電所の規模、場所を変更することは考えていない、行政や住民に受け入れられる計画を検討し、その方向で1、2年検討するが結論が出なければ断念することもある。現時点では白紙の状態だ』と、説明した。

地元住民に受け入れられる火力発電所を作る計画なんてあるわけがないのだから、すぐに計画を中止するべきなのに事業者は火力発電所をあきらめていない。当初は2018年着工、22年稼働予定だったが、計画が大幅に遅れる事になり、手続きの延期は、反対運動に冷却期間を作ろうとしているのが狙いではないか、ある市で火力発電所反対運動が起きていた時、途中で事業者と行政が沈黙し、6ヶ月位経過して運動を再開した時は、反対する住民は激減していて運動は失敗したという。また、反対運動の疲弊を狙った時間稼ぎではないのか、行政当局を懐柔させる手段を模索しているのではないか等々、いろいろな憶測をされている。

 しかし、私たちの反対運動は6団体がまとまって「清水LNG火力発電所問題・連絡会」として活動しているので、こうした憶測には屈することなく、これまで通り、建設計画が白紙撤回するまで反対運動を続けて行くことを仲間達と確認し合った。
 さらに私たちは引き続き11月の市議会に向けての署名活動、街頭署名、学習会、デモ、チラシ配布などの反対運動をしながらもっと多くの住民に訴えて、多くの住民達が反対の声をあげて建設中止になるように反対の輪を拡げていきたい。(美)

(追記)東燃ゼネラル石油は、4月にJXエネルギーと合併してJXTGエネルギーとなったので今月号から「清水LNG火力発電所建設反対運動」とします。


 「エイジの沖縄通信」(NO-43)  これで「法治国家」と言えるのか?

 辺野古のゲート前では、相変わらず機動隊の暴力排除による怪我人の続出、座り込み行動指導者を狙った「不当逮捕」が続出している。
 また、ゲート横の歩道に座っていた年配女性が車にぶつけられ大怪我する事故などもあり、現場では厳しい闘いが毎日続いている。
 そんな中、沖縄防衛局は沖縄県民の座り込み抗議行動を押し切って、連日100台以上の石材を積んダンプトラックをゲートの中に入れている。
 ところが、石材を積んだダンプの多くが「違法ダンプ」だと言う。ところが、現場の警察官はまったく注意をせず黙認しているとの事。
 その実態を「チョイさんの沖縄日記」は次のように報告している。

 『我々はこうした石材の搬入について、2つの問題点を指摘してきた。①まず、アセスの評価書や埋立承認願書の記載に反して、石材が採石場から出される時に洗浄されていないのではないかということ。②そして、使用されているダンプトラックの多くが道路運送車両法やダンプ規制法に違反した違法ダンプではないかということである。この2点については今後もとことん追求していかなければならない。

 今回、公文書公開請求で入手した設計図書で、これらの護岸工事でどれだけの石材が必要になるかを調べてみた。計算してみて驚いた。
基礎捨石、割栗石、根固用袋材、目潰し砕石、基礎砕石、腹づけ材、砕石舗装等で、実に750,000トン(28万?)もの石材が必要になるのだ。大型ダンプトラックにしてなんと75,000台。1日に100台のダンプトラックを入れたとしても、750日、すなわち丸2年以上もかかるのだ。実際には日曜日、荒天等の作業休止日や、ゲート前の座り込み等のため週に3~4日の搬入がやっとだろう。そうすると、石材の搬入だけで4年もかかってしまうことになる。また石材だけではなく、他の資材の搬入も必要だからさらに時間がかかるのは必至だ。』

 「基地の県内移設に反対する県民会議」は、あまりにも辺野古の工事で使われているダンプトラックの多くが違法車両だということで、所管の沖縄総合事務局運輸部への申入れ行動を行ったと言う。

その交渉内容を「チョイさんの沖縄日記」は次のように報告している。

 『当日は、赤嶺政賢衆議院議員をはじめ、統一連や沖縄平和市民連絡会などから15名が参加し、沖縄総合事務局は運輸部長らが対応した。

 我々は事前に、ゲート前で撮影した違法ダンプだと思われる60台ほどの車両の写真を送付していた。わずか3日間ほどで、これだけの違法ダンプが確認されたのだ。まず、沖縄総合事務局の担当者がそれぞれの事例について説明した。

 1.積載オーバー車両について・・・積載オーバーと思われるダンプトラックの写真7点については、いずれも石材が荷台からてんこ盛りになっており、道路交通法違反であることは明らかだが、沖縄総合事務局は、「写真だけでは分からない。過積載であれば指導するが、重量を計らないと違法とは断定できない」と違法性を認めなかった。また、警察は簡易重量測定器を持っていると言うので、警察にも協力要請をせよと追求したが、拒否し続けた。

 2.番号表示のないダンプ規制法違反車両について・・・ダンプ規制法では事故対応などのために、荷台両面と後面への番号表示を義務づけている。我々は、番号表示がなかったり、記載方法に問題がある車両の写真を7点、事前に沖縄総合事務局に送付していた。

 3.不正改造(道路運送車両法違反)について・・・さらに我々は、50点近い不正改造と思われるダンプの写真を事前に総合事務局に送付していた。これらについて、排気管の開口方向違反は、本年6月22日から削除されたようだが、総合事務局は他の事例のいくつかについて問題を認めた。

 たとえば過積載につながるとして禁止されている荷台のさし枠の写真について、所有者に照会のハガキを送ると認めた。また、窓のスモーク貼りについても整備不良の疑いがあるのでハガキを送る。さらに、追突防止装置、スピードリミッターや反射板、最大積載量の表示がない事例等についても「写真では問題があると思われるものもあるが、数も多いので再度、写真を精査し、問題が確認されればハガキで照会する」と回答した。

 しかし、ハガキの送付は、違法車両を対象として行うものではなくて一般的な照会にすぎず、拘束力や返信がなくても罰則規定もない。道路運送車両法にもとづく整備命令を出すべきだと追求したが、「これが当事務所のやり方です」と頑なに逃げ続けた。

 この問題は昨年高江のヘリパッド工事でも大きな問題となったが、今回も辺野古で違法行為が繰り返されている。』

 これが菅官房長官の言う「法治国家」の実態だ!

 警察官の前を「積載オーバーと思われるダンプ」や「番号表示のないダンプ」や「不正改造したダンプ」がどんどん通っているのに、まったく注意をしない。

 ところが、ゲート前の座り込み行動の人たちには、「テント設置は違法だ」とか「道路脇の立て看を撤去せよ」等の注意をしつこくやっている。

 まったくご都合主義の二重基準である。(富田 英司)号案内へ戻る


 弾道ミサイル避難訓練の顛末

 台風が接近した9月17日、朝10時から西宮市鳴尾東地区での弾道ミサイル避難訓練が実施され、その後、鳴尾東公民館においてアンケートの実施と「振り返り」(説明会)が行われた。市民がこの計画を知ったのは8月24日の「神戸新聞」報道と翌25日の市政ニュースで、弾道ミサイル落下時を想定した住民避難訓練を行うというものだった。

 これに先立つ6月市議会において、複数の保守会派市議が一般質問で「危機管理の準備体制について」、「武力攻撃から市民を守るために」との質問をしており、彼らと今村岳司市長の折り合いは悪いのだが、共有した指向性からいずれ何かやらかすとは思っていた。それが国や県の思惑に乗ったミサイル避難訓練とは、愚かにもほどがある。

 その訓練たるや、「屋外にいる人は、その場で腕やカバンを使って頭部を守ってください」という噴飯ものの対処。まともな判断力があれば、これが危機を煽り恐怖をおこさせ、朝鮮民主主義人民共和国への敵意を抱かせるためだけのもに過ぎないことは直ちにわかる。必要なのは脅しや制裁ではなく、ミサイルなど必要がない関係の構築であり、そのために必要なのは歴史を直視し総括することだろう。

 そうは言っても黙ってやらせるわけにはいかないので、「無意味な弾道ミサイル避難訓練に反対します・武力は無力、対話の追求を」というビラを作成し、駅頭での街頭宣伝を行い、4000枚の対象地域への戸別ビラ配布も行われた。当日、雨は降っていなかったので、朝から地域にある駅前で街頭宣伝も行った。

 訓練の模様は次のようだった。10時過ぎて、駅前の廃校の屋上に設置されたスピーカーからサイレンが鳴り、訓練告知の後「ミサイル発射、直ちに建物のなかに避難」とか「ミサイルが落下する可能性があります」とかを繰り返した。しばらくして、続報として「先程のミサイルは破壊されました」という告知があり、訓練はあっけなく終了したが、〝破壊〟とは何と勇ましい設定だ。しかし、駅前の様子を見る限り何の変化もなく、特に関心はなさそうだった。

 その後、説明会場に移動し、「ミサイル避難訓練は無駄で有害」とのパネルを掲げてスタンディングを行なったが、こちらは賑やかに市民が家族連れで訪れるなど、次々と「非常用持ち出し袋など」(カンパンとペットボトルの水)をもらって帰る市民が多くいた。市長や議長も前を通り、市長はずいぶんこちらを気にしていたようだが、ひとりふたりでは圧力にもならなかったのが残念だった。また、内閣官房とか消防庁とかの表示を背負った連中も顔を見せ、彼らに〝無駄で有害〟という文字を読ませて少しは気が晴れた。考えるに、国や県もかかわったイベントだったので、西宮市単独で「台風接近で中止」とはならなかったのだろう。

 1999年、弱冠26歳で6157票を得て市議選トップ当選し、華々しく登場した今村岳司氏が保守系会派を割って蒼志会を結成。今は袂を分かっているが、これに加わった田中正剛氏が議長となっている。いわば、西宮市は市長も議長も蒼志会的思考によって占められているというわけだ。これを説明するのに、今村市長の初当選の所信表明(2014年6月17日)の冒頭を引用しよう。

「改めて、この西宮市議会本会議場に帰って来られたこと、そして、新市長として市政運営に関する所信表明をする機会を得ましたことを、光栄に思います。

 それと同時に、3600人の職員を擁する西宮市役所の経営者として48万7000人の住民福祉の増進を司り、西宮の未来に責任を持つようになったことに、身の引き締まる思いであります」

 要するに、今村氏は自治体行政は都市経営、そのトップに立って腕を振るいたかったということ。市長となった彼は、特異な行動でしばしば全国区で報じられている。野々村竜太郎元兵庫県議に続く全国に通じる名前というところか。とまあ、こうしたなかで中核市で初めて、関西でも都市部でも初めて、政府絡みで14番目の「X国から弾道ミサイルが発射され、わが国に飛来する可能性があると判明」したとの想定で訓練が実施された。ちなみに、このX国とは「特定の国を示すものではない」(9月市議会での防災危機管理局長の答弁)らしい。

 私たちの訓練反対の行動に対する市民の反応は弱く、大都市に隣接した住宅地に住まう市民の政治的無関心を示すものだった。ビラまきでの〝貴重〟な反応2件、私の制裁ではなく話し合いでという説明に対して、「まだそんなことを言っているのか」と言い去った男性、ビラを積極的に受け取って破り捨てた若い男性があった。一方で、ビラの費用にでもと1000円のカンパをくれた市民もいた。

 さて、説明会の会場前にはマスコミがたくさん来て、市民にインタビューを試みていたが、私たちの存在はないものの如く(これは毎週金曜日の関電本店前での抗議行動でも同じだが)、スルーして近づきもしなかった。そのかわり若い女性が話しかけてきて、訓練は無駄で有害との説明をすると共感は得られたが、やはり怖いとか自治会でのまとまりができるとか訓練を否定してしまうことはできないとの意見だった。

 また、原爆被爆者の男性からは経験したことの恐ろしさから、訓練はあまり役立つとは思えないが北への対処は必要だと言い、そういう意見もあることを覚えてほしいとのことだった。最後にすこしビールを飲んだ男性につかまり、訓練は無駄で有害という意見に共感すると言われ、パネルが欲しいというのでそれを渡してやっと解放された。

 ところで、私は説明会場に入らなかったが、中に入ったA氏の説明によると、「会場ほぼ満杯の約100名の市民が参加」し、いざという時どこに避難するのか知っておきたいとか、これからもどんどんやって頂きたいといった意見が寄せられたようだ。極めつけは、このような訓練だけではなく核シェルターを市は造るべきではないかというのだから驚きだ。これには、某市議が核シェルターについては政府にあげている(設置の要望か?)と応えたようだ。

 市当局はこれからも市民の安全を守るために弾道ミサイル避難訓練を実施していきたいとし、今村市長は安全は国だけでは護れない、市だけでも護れない、自治会だけでも護れない、一人ひとりの市民の力が重要なんて気の利いたセリフを吐いたようだ。西宮市では地域防犯が重要として、防犯協会支部が自治会に会費納入を強制するなど、行政とつるんだ地域ボスが自治会を思うがままに操っている。避難訓練もそうした意識を醸成するために役立つのだろう。

 とまあ長々と羅列したが、これが西宮市弾道ミサイル避難訓練の顛末である。その後のテレビでは子どもたちが訓練に参加している映像が流れたらしく、翌朝の神戸新聞にも子どもたちが頭を抱えてしゃがんでいる写真が掲載されていた。地域内の小学校が避難所に指定されていたので、そこの子どもたちが動員されたのだろう。子どもたちにそんなことをさせる大人がいるのだ。

 蛇足になるが、この〝頭を抱える〟という姿勢は自ら見極めることを放棄させる、現実を見たくないというあなた任せを示すものだろう。大人が自らそうすることで誰かに騙される運命を選ぶのは勝手だが、子どもにそうさせるのは許せない。 (折口晴夫)


 コラムの窓・・・オンブズの全国大会で和歌山訪問

 9月2日、第24回全国市民オンブズマン和歌山大会に参加するために和歌山市に出かけました。午後からの開会なので、午前中に和歌山城に足を運び、思いがけなく立派な濠と城があるのに気づきました。

 外国人観光客が多く、忍者装束の係りの青年と写真を撮っています。なるほど、大阪からだと関空行と和歌山行きが途中で切り離されるくらいだから、外国からの観光客が来ていてもおかしくないのでしょう。

 2日は全国各地からの報告で、群馬からは関電工(東電グループ)による放射能汚染木質バイオマス発電計画をめぐる官業癒着が取り上げられました。「群馬県北部の放射能で汚染された木質チップを年間8万トン、20年間燃やし続ける計画」に対して、県は環境アセスメントを飛ばし、チップ工場建設に国と県で4億8000万円もの補助金を出したのです。こうしたデタラメな行政に対して、地元では補助金返還請求の裁判を行っています。

 環境アセス条例不適用には、その情報公開を求めたら〝不存在〟の通知が市民オンブズマン群馬に来たといいます。これを地元市民団体が情報公開請求したら、間伐材の水分量が通常よりはるかに高いので20%の下駄をはかせたることで条例不適用にしたとの書面が出てきたというのだから、モリトモの土地代値切り、大量のゴミ出現と同じです。ある情報をないと言い張るところも同じで、役人というのは情報は操作するものと思い込んでいるのです。

 かながわ市民オンブズマンからは、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を止めようと、横浜市長に対して「カジノ施設の設置運営を目的とする事業者に対し、山下ふ頭地区所在の横浜市有地を払い下げ又は貸与してはならない」旨の勧告を求める住民監査請求を準備していることが報告されました。

 3日午前中には分科会があり、私は「カジノ・ギャンブル分科会」に参加し、各地のカジノ誘致の動きを聞きました。昨年12月、IRカジノ法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)が成立しましたが、これはプログラム法に過ぎず、これから実施法を整備し、自治体の申請を受けて国が認定するという筋書きになっています。

 和歌山リゾートマリナシティ、千葉では幕張りや成田、泉佐野市もりんくうタウンカジノ構想があったようですが、大阪はカジノ万博があるので、今はりんくうタウン駅に場外馬券場を開設する計画が進んでいるということでした。
さらに、IRカジノ賛成派のなかではすでに利権争いが始まっているとか。また、依存症対策が必要だということについて賛成派も認めていますが、〝依存症ビジネス〟でも儲けようということのようです。除染ビジネスに廃炉ビジネス、全てを儲けの手段にしてしまうのが資本の本質だということを暴露しています。

 神奈川の取り組みの続報ですが、9月6日に同オンブズマンと自由法曹団神奈川支部、市民443人の連名で監査請求書を提出。カジノで地域経済が活性化するというのは幻想だとし、「カジノは精神疾患の一つであるギャンブル依存症を誘発する。地方自治体には、精神疾患の発生を予防する義務がある」と主張。若い人たちにはギャンブルにはまらないよう、くれぐれも注意してほしいものです。 (晴)号案内へ戻る


 第24回全国市民オンブズマン和歌山大会  IRカジノ設置に反対する決議

1.2016年末国会で「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下、IRカジノ法)が強行採決された。
 IRカジノ法は、政府に民営IRカジノの実施法をつくらせ、2020年の東京五輪にも間に合わせるというもので、カジノに伴う①ギャンブル依存症等の発生・拡大、②治安悪化、犯罪の発生、③マネーローンダリング、脱税、④教育・文化環境の悪化を招き、そして本来許されない賭博を営利業者に認めるという利権まで発生させ、法秩序の否定をもたらすものである。よって、私たちは法案に反対し、廃案を求めてきた。

2.政府は、2017年4月に「IRカジノ実施法」の立法化のため推進会議をつくった。そして、安倍首相は口先では世界最高水準の規制のIRカジノを設けるというも、推進会議のIRカジノ案の実態は最低レベルのカジノ規制を取りまとめようとしている。
 IRカジノは、人の射倖心を利用して、人の富を効率的に収奪するものであり、人の弱みを利用する大規模な組織的私企業活動である。
 国内外のカジノ企業、IR議連(カジノ議連)、カジノを推進する経済団体、そして誘致活動を行う一部地方自治体の首長は観光振興などというが、その効果は疑わしく、市民から娯楽の名の下に財産を収奪する事業を進めるものである。

3.政府や地方自治体は、現在でも刑法185~187条の例外となる特別法で公営競技を主催したり、富くじ(宝くじとサッカーくじ)
を販売しており、10兆円弱の公営ギャンブルがある。また、日本にはパチンコ・スロットの売上18兆円、11000店と世界最多の公認「ミニカジノ」が存在する。

 これによる日本のギャンブル依存症は厚生労働省の委託調査で286~536万人と推計されている。そして、既存ギャンブルの周辺で既に賭客の借金や生活破綻、自殺、さらに家族の財産喪失から子どもの熱中死までが発生している。そして、ギャンブルに投ずる金のために発生する窃盗、強盗、横領の犯罪も絶えない。

 しかるに、この弊害を生み出したギャンブル主催者・企業はその防止の責任を全く果たしていないし、政府や自治体も被害救済に動いていない。

4.これは憲法の定める日本国民の幸福追求権、生存権、生活基礎となる財産権を侵害するものである。そして、「IRカジノ実施法」を国会が認めることは、これまで日本にない「賭博特区」での民間企業の賭博開帳を認めるもので、憲法上、最大の尊重を必要とする人権と公共の福祉に反するものであり、絶対に許されない。      以上、決議する。

    2017年9月3日  第24回全国市民オンブズマン和歌山大会参加者一同


  「色鉛筆」・・・「琉球新報」の記事紹介

 「琉球新報」に、「辺野古問題取材班」による「辺野古 強行の現場から」と題した記事が、ほぼ毎日載る。灼熱の太陽に焼かれ、台風にあおられつつ粘り強く抗議を続ける市民たちの様子、工事の状況などが紹介されている。巨大な国家権力を相手に、一歩も引かない闘いにただ頭が下がる。

 9月1日からのものを大まかにここにご紹介する。

・8月31日(木)市民約80人。午前9時、米軍キャンプシュワブ内に工事車両102台が入る際、機動隊が強制排除し通り道を確保。シュワブ内沿岸部で、仮設道路の工事続く。カヌー5艇のうち3艇と、抗議船2隻のうち1隻が工事現場に近づき海上保安官に一時拘束された。

・9月1日(金)道路交通法違反容疑で、抗議の男性逮捕。171台の工事用車両の搬入。シュワブ沿岸部では、仮設道路の工事。市民はカヌー8艇、抗議船2隻で「海上保安庁は海を破壊する行為に手を貸すな」「美ら海を壊すな」と訴える。

・9月4日(月)旧盆中であるが、防衛局は仮設道路の工事続行。抗議行動は、ゲート前、海上ともに休み。ゲート前からの資材搬入は無し。

・9月7日(木)約120人が座り込みやデモ行進で抗議。工事車両による資材搬入無し。

・9月8日(金)約40人が座り込み抗議、機動隊が強制排除。砕石などを積んだ工事車両172台が、3回にわたり基地内へ入る。「K9護岸」付近の汚濁防止膜のつなぎ目部分が開いているのを市民が確認。防止膜の設置がずさんすぎると指摘。

・9月9日(土)抗議市民 約80人。資材搬入無し。海上N5護岸建設予定地付近で網袋入り石などを積んだ仮設道路工事を進める。海上の抗議市民、カヌー13艇、抗議船2隻。

・9月11日(月)防衛局は台風18号対策のため、浮具の撤去、スパット台船解体などの作業。市民、最大約60人が抗議行動。機動隊による強制排除により、3回に分けて、計1680台の工事車両基地内へ。

・9月12日(火)防衛局、浮具の大半を撤去。クレーン船3基も移動。

・9月13日(水)大雨の中、最大約100人が座り込み。機動隊の3度にわたる強制排除により、172台が資材搬入。

・9月14日(木)台風18号の影響で、午前10時までに海上作業、資材搬入無し。風雨の中約110人が抗議の声を上げる。

・9月15日(金)台風の強風の中、強制排除の際68歳の女性(沖縄市)が後頭部を打ち、出血し救急搬送。資材搬入は、計3回、185台の工事車両入る。

・9月16日(土)海上作業確認無し。台風通過の悪天候の中、市民や議員ら約150人が集会。参加した京都からの大学生より「実際に来てみると米軍基地のフェンスが道路のすぐ近くにあり、威圧感や怖さを感じた。報道では分からない現実を知ることができた」「戦争を体験している人が多いから、基地に反対しているというのは来て、話を聞いて、信念が分かった」「ニュースでは(面積)が小さいから別に問題ないと思っていた。しかし、実際に見ると、思ったより制限区域が広く、全然小さくない。自然が破壊されてしまう」などの発言があった。

・9月17日(日)防衛局、辺野古崎海上の浮具を再設置。

・9月18日(月)台船4隻大浦湾に戻る。うち2隻にクレーンがついている。

文芸評論家の斉藤美奈子氏は、小学生の時に三里塚闘争の報道をテレビで見て、詳しい事情は分からなかつたものの、体を鎖で縛り付け抵抗する女性達の姿が、今も強く印象に残っていると言う。
政府が一切沖縄の抗議行動を報道させないのは、辺野古新基地建設の不当性が露わになることを怖れているからだろう。工事を強行する
ため、県外から大勢の機動隊員を導入してから、もうすでに2年近くがたつ。その排除行動、すなわちごぼう抜きや舐めるような撮影、逮捕などは日増しにひどさを増している。

 9月6日の琉球新報社説によると、抗議活動で罪を問われている山城博治氏の弁護側の証拠請求を、那覇地裁が一部却下した。却下されたのは、国連人権理事会が市民の抗議活動で許容される基準を定めたガイドライン(指針)などで、その主な内容は①長期的な座り込みや場所の占拠も「集会」に位置づける。②座り込みなどによる交通の阻害は、救急車の通行といった基本的サービスや経済が深刻に阻害される場合以外は許容されなければならない。③集会参加者に対する撮影・録画行為は萎縮効果をもたらす。④力の行使は例外的でなければならない等。これらに照らせば市民の抗議活動は、国際的に見て正当性があり、逆に政府の側はこれに反していることは明白だ。人権理事国が泣く。(澄)

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