ワーカーズ580号  (2018/3/1)    案内へ戻る

 労働法制改悪も生活保護削減もデータ偽装でごり押し狙う
  デマと嘘で塗り固めた安倍政治を大衆行動で打ち破ろう


 安倍首相は、今国会の最大課題は「働き方改革」だと言う。実際には、働く者を守る労働法制を破壊し、残業代ただ働き制度(高度プロフェッショナル制)、長時間労働野放し(裁量労働制)の拡大が狙いだ。

 それにしても、裁量労働制をめぐる安倍首相の答弁はひどい。こんなデータを根拠にして法案を提出してきたのだから、データの取り消しと謝罪で済む問題ではなく、法案自体を撤回すべきだ。

 データのねつ造と言えば、安倍政権が狙っている生活保護基準の切り下げも同様だ。この間の生活保護削減の根拠のひとつとされたのが、物価に関する国ぐるみのデータ偽装だった。国は、消費者物価が下がっているのだから生活保護基準も切り下げて当然だと主張してきたが、その物価指数が生活保護世帯に不利になるように操作されていたのだ。

 どういうことか。国は、景気動向などの指標とする総理府統計局が作ったCPI(総合消費者物価指数)に代えて、「生活扶助相当CPI」なるものをわざわざ創作。これは、第1に、生活保護世帯にとっての物価の基準年を普通のCPIとは違って、物価が相対的に高かった2008年に設定することで、それ以降の物価下落幅を実際より大きく見せたものだ。

 第2に、この間特に価格低下が著しかった家電製品に対する消費のウエイトを、一般家庭より生活保護世帯に大きく見積った(一般世帯2・68%、生活保護世帯4・19%)。そういう操作をして、一般家庭にとっての物価下落率は2・35%、なのに生活保護世帯にとっての物価下落率は4・29%と、倍近くも物価下落の「恩恵」を受けているように見せかけたのだ。このデータ偽装は、今、全国の生活保護裁判で大きな争点となり、国の悪辣極まりないやり方に批判が高まっている。

 労働法制や生活保護に限らず、国が示すデータをそのまま真に受ける訳にはいかないことが誰の目にも明らかになった。先ずは暮らしと労働の中での実感を大切にし、そして国のデータの嘘を見抜き、その意図もろともに、破廉恥極まりない安倍政治を打ち破っていこう。(阿部治正)


 ストライキと連帯を!――春闘と〝働き方改革〟に思う――

 春闘が真っ最中だ。が、その春闘、働くすべての労働者の期待を背負った“闘い”の形骸化が止まらない。

 いまや労働陣営は、大企業と中小企業、正規労働者と非正規、親会社と子・孫会社、男と女それぞれが分断されそのいずれにも深刻なしわ寄せが及ぶ事態になっている。

 一方、国会では安倍首相が進める〝働き方改革〟が孕む問題が審議され、政府のずさんで意図的な調査や説明で法案の行方そのものが不透明になっている。

 春闘や働き方改革。そのいずれでも当事者は私たち労働者自身だ、ということを想起し、闘いを拡げていきたい。

◆続く春闘の形骸化

 今年の春闘では5年目という〝官製春闘〟が大詰めだという。

 その春闘、安倍首相の後押しがあっても、連合の要求額は、定昇2%、ベア1~2%という3~4%程度という低額な引き上げ要求にとどまっている。組合側は、何がなんでも闘いとるという気迫はどこにもない。会社側の実際の回答を想定して、それに多少上積みした額、要はなにもしなくても実現可能な額を基準にした要求にとどまっているからだ。

 組合員側にも熱気はない。1~2%のベアといっても、実際の大手組合の要求額はベアで3000円程度にとどまる。低迷を続ける賃金や生活改善にどれほど役立つか、たかがしれている。中小は大企業との格差是正も含めて10500円程度を目安に要求しているが、実際は大企業との間の格差は固定化されている。実態としても、大企業正社員、一次下請から二次下請け、あるいは非正社員という賃金ピラミッドは劇的に変わるわけでもない。

 安倍首相に促されたとはいえ、経団連も3%の賃上げや内部留保を賃金に回すよう促さざるを得なかった。が、個別企業は当然のごとくそれを聞き流す姿勢で、賃上げも月例賃金(ベース・アップ)ではなく、〝年収ベース〟でとお茶を濁す姿勢に終始している。

 春闘の賃上げ要求は、概ね正社員にとどまる。4割にも膨れ上がった非正規社員の賃金には直接波及しない。非正社員は、最低賃金の引き上げや10円、20円単位の時給引き上げにとどまっているのが実情だ。こんな春闘にどれだけのエネルギーを投入できるのだろうか。

 最近拡がっている非正規労働者の賃金引き上げは、労働組合の闘いの成果というよりも、大震災の復興事業や20年オリンピック開催に関連する建設やインフラ整備の事情、それに団塊世代のリタイアなどによる若年層を中心とする人手不足の影響が大きい。

 現に、このところ実質賃金は下がり続けている。戦後二番目の「いざなぎ景気」を超えたと言われる12年12月から始まった今回の景気拡大局面でも、企業利益は年平均で12・5%増えているのに、実質賃金は0・8%減少、17年でも0・2%減少している。

 また戦後最長と言われた02年2月から08年2月まで続いた景気拡大局面でも、企業収益は9・1%増えているのに、実質賃金は0・5%減少している。労働分配率も、12年の69・2%から16年の64・7%に下がっている。他方で企業の内部留保は16年度で406兆円にも膨れあがり、5年間で102兆円も増えている。

 こうした統計を見ても明らかなように、景気回復局面でもそれが賃上げにつながらないどころか、逆に低下しているのが現実なのだ。利益は内部留保として企業が貯め込んだり、配当として株主に回わしているからだ。まさに労働者は会社側にコケにされているのであり、それを許しているのは労働者陣営の分断情況だ。

 こんな春闘を続けていては、労働者の未来は開けない。

◆ストライキの復権

 いま国会で審議されている〝働き方改革法案〟、中身は、残業時間の罰則付き上限規制や裁量制労働時間の適用範囲拡大、それに高プロ法案(=残業代ゼロ法案)などが抱き合わせにされたもの。その労働基準法改正案に関連し、政府答弁が撤回されたり、法案の必要性自体に疑義が出されている。

 〝働き方改革法案〟はそもそも労働者の要求ではなく、財界の要求で政府が提出するものだ。際限のない長時間労働をもたらす労働時間規制の緩和策は、国会の場で徹底的に追及するだけに終わらせず、国会の外と内側から「改革法案」の撤回の声を拡げて、法案提出や成立をなんとしても阻止していきたい。

 しかし、現実の働き方自体を変えるような法案には、国会審議以前の問題として、まず労働者自身の闘いが問われる。が、これほどずさんで意図的な資料ねつ造などがあれば、かつての総評時代であれば、少なくとも組合員による抗議やデモも取り組まれていたはずだ。現在の連合労組には、そうした取り組みは見られない。

 裁量制労働の適用拡大も、また残業代ゼロ法案も、元を正せば労使間の攻防の問題であり、何よりも労働組合の課題であるはずだ。その攻防の最終段階で法改正が日程に上ってくるという性格のものだろう。ところが、現実には連合系の主要組合では、そうした官邸主導の「働かせ改革」でも真剣な抵抗や反対の闘い自体がないというのが実情なのだ。

 現実には、「高プロ」も罰則付きの時間外労働の規制とバーターで、連合労組も一旦は認めてしまったものだ。それ以前の問題として、長時間の残業協定を何の疑問もなく締結し続けてきたのも同じ連合系労組だ。非正規5年で無期契約に転換できるいわゆる「5年ルール」適用の最初の年として今年浮上する可能性が高い〝雇い止め〟の大量発生問題も連合系労組は、真面目に取り組もうとしない。これが実情なのだ。

 労働者の要求実現の手段としてのストライキについても同じだ。

 労働者の基本的な権利として認められているストライキは、1974年をピークにこの40年ほど減少の一途をたどっている。半日以上のストライキを含む争議件数では74年には5000件以上、参加人数で350万人以上だったものが、2014年には件数が27件で参加人数は1000人台ほどにまで減っている。80年代までは、春闘時を中心に、ストライキは春の年中行事のようになっていたのに、だ。

 その労働者の基本的権利であるはずのストライキ、大手組合で見れば、連合が発足した89年以降、ほとんどなくなっているのが実情だ。

 そしてこの間の経済はといえば、73年のオイルショック以降の高度成長から安定成長への転換、91~93年のバブル崩壊以降の「失われた20年」という経済低迷状態が続いた。当然ながら労働者はリストラなどで処遇悪化を強いられ、実質賃金は長期間の暫減傾向が続いている。そうした事態になってさえ、ストライキ件数や参加人数はともに減り続け、今ではまったくといっていいほど目にしない状況になってしまったのだ。

 労働組合は、いつでもストを打てる状態で、初めて労組対等な交渉が可能になる。再度、ストライキの復権をめざしたい。

◆欠かせない組合改革

 ストライキはやればいいというものではないが、労働者の団結した力を背景に経営者側に要求を突きつけ勝ち取る、というのが賃金をはじめとした労組の闘いの土台であり基本姿勢であったはずだ。そうした基本的な構造そのものが形骸化してきたのが、この40年だったわけだ。

 そうした形骸化を当事者として担ってきたのがいまの連合であり、連合的労使関係なのだ。実際、連合の旧同盟系の労組など全くの御用組合では、会社が認める範囲の要求しかしない。何よりも、会社から自立したまっとうな労働組合にしたいという動きが内部から生じるのを何より恐れ、それを阻止することを最優先の任務としている。いわば、会社の第二労務部としての役割しか果たしていないのが実情なのだ。春闘時期の非正規労働者の処遇改善という要求にしても、連合の構成組合の多くで本気度はまるでない。対外的な目を気にしてお題目として掲げるだけだ。

 こうした企業の言いなりでしかない企業内組合中心の御用組合を、本来の企業から自立した労働者の組織として復権するのは、1年や2年で出来る話ではないし、目先の春闘や賃金闘争だけでどうなる話でもない。多くの有意の労働者自身による、根気強い中長期の努力の結果としてしかなしえない目標だが、それを避けては労働運動・労働組合の再興はない。

 賃金引き上げを中心課題にする春闘も、正社員のわずかな賃上げを掲げているだけでは決定的に不充分だ。何はともあれ、非正規労働者の不安定な雇用を改善し、実質賃金の大幅な引き上げにつながる時給の引き上げが不可欠だ。そして長期的には、時間給を軸にした正規・非正規を問わない均等待遇の実現が目標となる。この目標を実現するためには、正社員と非正社員の分断構造を是正すること、企業内組合を企業の壁を越えた横断的組合に転換することが不可欠だ。

◆共通目標は均等待遇

 表面上、正社員が優遇されているように見える現行の日本的労使関係といえども、その裏側では、正社員の働き過ぎや過労死および過労自殺に否定面が突出して表れている。非正規の低処遇と正社員の企業戦士化という両極端は、両方とも現れ方は違っても、ともに労働者が置かれている過酷な境遇を反映しているものという他はない。

 こうした事態を打開するには、正社員の働き過ぎと非正規労働者の低処遇が資本・企業に従属する労働者の二つの現れ方である、との認識に立つことが肝心だ。それができれば労働者の分断状況は大きく変わり、団結した力で企業、経営側にぶつかっていける。

 とは言っても、最初は個々の勇気ある労働者の闘いから始める以外にないし、現にそうした闘いはあちこちで取り組まれている。

 最近では、大阪などで働く日本郵便の契約社員が、正社員と同額の手当ての支給を求めて提訴していた裁判で、年末年始勤務、住居、扶養の各手当の支給を認めた大阪地裁の判決が出ている。昨年の9月には、東京地裁で手当の支給を認める判決も出ていたが、それぞれ正社員の8割、6割しか認めていなかったものだ。正社員と同じ地位は認めなかったが、一歩ずつ均等待遇に向かって前進を勝ち取ってきたのも事実だ。

 他にもある。ブラック企業として名高い「アリさんマークの引越社」の争議で、残業代の支払いや事故による弁償金の返還等を求めていた労働争議で、従業員側の主張を認めた一括和解が成立した。和解成立後、そのうちの一人の野村さんは「労働者と使用者の力の差は歴然としている。是非、組合に入ってほしい。しっかりした労働環境を、自分の力で切り拓いてほしい」と語っている。まったくその通りだと思う。

 具体的な闘いを積み重ねることで、目ざす目標に一歩づつ近づくことができる。こうした個々の闘いを拡げ、同一労働同一賃金=均等待遇を実現する闘いを前進させることで、労働者は本来の自分たちの力を発揮できる。(廣)案内へ戻る


 働き方法案で「データ捏造」疑惑

●安倍首相の「陳謝」ではすまない

 安倍首相は1月29日の衆院予算委で「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者より低いというデータもある」と発言していました。

ところが、野党からデータの不備を批判され、2月14日の予算委では「精査が必要なデータをもとに行った一月二十九日の私の答弁は撤回し、おわびを申し上げたい」と陳謝するはめに陥りました。

 野党からは厳しい追求がなされています。「精査せざるを得ないデータをもとに質疑を続けてきた。ほとんどが意味のない質問になってしまう」(立憲民主党・逢坂政治議員)、「データを捏造したのか。法案を出すことは認められない」(希望の党・山井和則議員)。

●「裁量労働制」で作為的比較

 問題の「2013年度労働時間等総合実態調査」では、1日当りの労働時間は「裁量労働者9時間16分」に対し「一般労働者9時間37分」とされ、これをもとに安倍首相は「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者より低いというデータもある」と言い張っていました。

 ところがその比較の仕方が作為的だったことが明るみにでました。裁量労働者については「1日の労働時間」を調査したが、一般労働者については「調査期間中の最長の残業時間」を聞き取り「法定労働時間(8時間)」を上乗せしていた、というのです。「平均」ではなく「最長」を採用していたのですから極めて不適切です。

また「所定労働時間」の上限を定めた「法定労働時間(8時間)」を単純に上乗せしたのも恣意的です。多くの企業では「所定労働時間」はまちまちです。例えば「午前8時半に始業、午後5時に終業、昼休み1時間」の職場では所定労働時間は7時間30分です。

●3年間も国民を欺く

しかも厚生労働省のこの作為的なデータは、過去にも使われていたというのですから驚きです。2015年7月の衆院厚労委でも塩崎厚労相が「むしろ一般労働者の方が平均でいくと長い」と答弁、2017年2月にも同様の答弁をしていました。昨年の労働政策審議会でも同様の資料が取り上げられていたのです。安部政権は3年間にもわたって国民をだまし、「過労死の温床」と言われる裁量労働制の拡大を画策してきたことになります。

2月19日の予算委で厚労省は「不適切なデータだった」と陳謝しましたが、「撤回・陳謝」で済む話ではありません。

●裁量労働制「拡大」の危険

 「裁量労働制」とは「みなし労働時間制」の一種で、「専門業務型」と「企画業務型」の二種類に分けられます。

「専門業務型」は「業務の性質上、その遂行方法や時間配分に具体的な指示をすることが困難な業種」として「新商品、新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計、デザイナー」など19業務が労基法で定められています。「企画業務型」は会社の中枢で経営に影響を与えるような「企画・立案・調査・分析」の業務に就くものが対象となります。いずれも、その業務遂行を労働者本人の自由にまかせ、「労使委員会」であらかじめ設定した時間を労働したとみなすものです。

今回の拡大は、「企画業務型」に「課題解決型開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加するというものです。「課題解決型開発提案業務」は、法人に対して商品開発・提案を行う業務で、法人向け保険商品の開発・提案営業などを指すとされます。「裁量的にPDCAを回す業務」とは、工場の生産プロセスの改善やエリア内の複数店舗の運営・管理の改善を「P(プラン)D(ドゥ)C(チェック)A(アクション)」を通じて行う業務を指すとされます。

●「ソリューション型営業」の重圧

 わかりやすく言うと「ソリューション型営業」を裁量労働制に追加するというのが、今回の拡大の意図であるといえます。

 従来の営業は「顧客周り」が主な仕事でした。カタログを持参して新商品を紹介し、すでに採用された商品やシステムの運用状況をチェックし、クレームがあればアフターサービスの対応をするというものでした。多くの場合は「事業外のみなし労働制」が適用されていました。

 しかし今日の営業職に求められているのは、そのような「御用聞き」的な仕事ではなく、顧客企業のニーズを的確に把握し、それに合った新しいシステムを企画し、プレゼンテーションを行うことです。顧客回りで得た情報を会社に持ち帰り、様々な商品情報を調べ、他部門と相談しながら、パワーポイントを用いて資料を作成し、顧客企業に出向いてプレゼンテーションを行うことが求められています。これが昨今はやりの「ソリューション型営業」です。そのための「営業社員向けセミナー」が花盛りです。これでコンサルタントはボロ儲けですが、そううまい話ではありません。

実際には、相当の知的力量と作業時間を要し、かなりの時間外労働が発生することは、容易に想像されるでしょう。それを「みなし労働時間」に含めるというのです。事実上の不払い残業を強いられ、顧客に気に入らなければ、その期のボーナスはカットされるのは必至です。

●裁量制で過労死多発

顧客先からは「不満足な企画だ」とクレームをつけられ、会社からは「今回も採用されなかったのか?」と責められ、双方からの重圧で、やがて心を病んでいく営業職が多いのが実情なのに、今回の裁量労働制の拡大で営業職はさらに厳しい状況に追いやられるのは目に見えています。これは「営業職の奴隷労働化」でなくて何でしょうか?

厚労省によれば2011年度から2016年度の間に、裁量労働制で「過労死」したと労災認定されたのは22人、精神疾患による認定は39人にのぼります。

「成果」を迫られ、同時に複数の案件を受け持たざるを得なくなり、長時間労働に自分を追い込んでいく危険な要素が裁量労働制にはあるのです。

●労政審でも労働側委員が反対

9月4日の労働政策審議会で労働側委員からは「2015年4月から5月にかけて、ITエンジニアの労働条件、裁量労働制の実態調査をした。裁量労働制が適用されている方のほうが、適用されていない方に比べて労働時間がやはり長くなっている。」「特に納期前など、忙しい時期の1日の労働時間を比較すると、12時間及び13時間以上の割合が非適用者に比べて約10ポイント高くなっているという調査結果がでている。」「裁量労働制の対象拡大はもとより、現状の裁量労働制における実態は、昨今過労死の現状を見ると危機感を覚えざるをえない。」と意見が述べられています。

●あいつぐ労基署の摘発

最近、裁量労働制を乱用して「時間外手当の削減」に使おうという企業が増えています。労基署もようやく重い腰を上げ、裁量労働制の乱用が摘発されています。昨年8月、スマホ向けゲーム制作会社のサイバードが、専門業務型裁量労働の「無効」を勧告されました。

また野村不動産も、経営の中枢で企画立案をする社員が対象の「企画業務型」裁量労働制を、営業活動をしている課長級社員ら約600名に違法適用していたとして、「対象業務に該当しない」として、未払い残業代の支払いを命じました。

今回の「営業職への拡大」は、こうした労基署の是正勧告を受けるような「乱用」を「合法化」してしまおうとする意図がすけて見えます。

●安倍政権にこそ「是正勧告」を!

安倍政権は、今回の「データ捏造疑惑」への野党の追及に直面し、閣議決定を遅らせ法案提出を3月にずれ込ませることや、裁量労働制拡大の実施時期を1年程延期することで、お茶を濁そうとしています。そんなことを許してはなりません。

労基署は、企業が労働時間把握義務を果たしていないのを取り締まるのが仕事です。ところがその労基署を管轄する厚労省自らが「労働時間把握義務」を放棄し、作為的データを作成し、安倍首相や加藤厚労相がウソの答弁していたのです。「是正勧告」を受けなければならないのは、他ならぬ安倍政権だったのです!

●春闘の最重要課題だ!

「過労死をもたらす長時間労働を根絶せよ!」という労働者の切実な要求に背を向け、こともあろうに「過労死の温床」と悪評のある「裁量労働制」を拡大する法案に、労働者は断固反対しなければなりません。営業社員の皆さん!今こそ立ち上がろうではありませんか!これは労働者全体の問題です!春闘の重点課題に据え、場合によってはゼネストを構えてでも追い込んでいくべきではないではないでしょうか?(松本誠也)


 2018「官製春闘」・・・賃上げした企業への法人税減税は賃上げ分を労働者が税金で支払うと言うことではないか?

 2月に入り、連合翼下の大手労組が賃上げ要求を各企業に提出し、今年の賃上げ交渉が本格化しつつある。

 安倍首相は経済3団体(経団連・日本商工会議所・経済同友会)の新年祝賀パーティーで『経済の好循環を回していく為には、今年の賃上げ3%をお願いしたい』と述べ、経団連の榊原会長は『デフレからの脱却、経済の好循環に貢献したい。賃金は個社が決めることだが、3%の賃上げと言った社会的な期待を意識しながら前向きな検討を望みたい』と安倍首相の意に同調し、それに応えるかの発言をし、働くもの=労働者の労働条件や生活改善の為の賃上げと言うより、企業の利潤追求の為の『経済の好循環』『デフレからの脱却、経済の好循環』と官民挙げての“賃上げ要望”が叫ばれ、2018年の春闘もまた「官製春闘」と言われている。

 官製春闘の中で強調されているのが、アベノミクスによる賃上げ支援策としての法人税減税政策である。政府・与党は昨年、企業に賃上げや設備投資を促す法人減税の内容を固め、3%以上の賃上げをした大企業は賃上げ総額の最大2割を減税することなどを柱に、2020年度までの3年間の措置として、本年度の与党税制改正大綱に盛り込んだ。

 法人実効税率は29.74%(18年度)で据え置きつつ、賃上げや人材投資に積極的な企業の実質的な税負担を20%台半ば程度に引き下げる。賃上げと生産性を高める革新的な情報関連投資を行った企業は税負担を20%程度にする。

 平均給与支給額を前年度より3%以上増やしたうえで、生産性向上につながる国内の設備投資や社員の教育費を一定額以上増やした場合、従来は2%以上の賃上げで最大12%の減税だったが、賃上げ総額の最大20%を法人税額から差し引き手厚くする。

 法人税で賃上げ優遇税制も導入する。大企業では3%、中小企業では1.5%の賃上げを実施することで、2018年度から29.74%となる実効税率を25%程度まで引き下げることができる。

 逆に平均給与支給額が前年度以下など、賃上げや設備投資に消極的な企業は、業績不振の企業を除いて既存の減税措置の一部を受けられなくし、「アメ」と「ムチ」の政策で企業の賃上げを促そうというものだ。

 働く労働者には賃上げ、賃上げした企業には法人税減税・・なんと言う振る舞いだろうか?!!

 しかし、法人税は働く者が給与から差引きされる所得税と同様、法人が得た利益(所得)に課せられる税金で「消費税」「所得税」とともに日本の主要国税の一つで国家財政(地方財源も)に盛り込まれるものであり、財源のうちの法人税の削減部分(財源と支払いに回る赤字分)は後で補填されなければ今ある赤字は解消されない。一体誰が払うのか?国民全体が負担を負うのであるならば、働く者も税金でそれを補うと言うことで、将来支払う税金で今賃上げがなされると言うことではないか!?。 

 2018年度の与党税制改正大綱が示され、閣議決定されたが、賃上げや設備投資に積極的な企業向けに減税を拡充する一方で、個人向けには各種控除の縮小・廃止、たばこ税引き上げ、出国税の創設など増税メニューが並び、19年秋には消費増税が控えてる。

 政府の基本的な考え方は、企業には景気拡大への貢献を期待し、家計に分配機能と負担を担わせようというもので、企業を儲からせて負担は働く労働者庶民に負わせようとするものなのだ。

 企業決算の純利益から配当などを除いた残高の合計=内部留保は財務省によると16年度で約406兆円。12年度から5年連続で過去最高を更新し413兆円にもなっている。「企業が内部留保を過剰にため込んでいる」との批判は政権内にもくすぶってはいるが、政府の国民に負担を強いて、法人税削減という“アメ”で企業から賃上げを促す政策よりも、長時間労働や低賃金で苦しむ多くの労働者が団結して立ち上がり、企業が賃上げの原資に内部留保をはき出させることが戦う労働者のあるべき姿だと思うのだが!。

 企業優先のアベノミクスによって労働条件の悪い非正規雇用は増大し、それによる相対的な貧困率は増加しつつある。

 働く労働者に負担を押しつけ、企業の利潤追求に手を貸す政府主導の官製春闘では本当の意味での生活改善の為の賃上げはできない。労働者の権利を守る為には労働者自身が自らの力で立ち上がりその力で勝ち取る以外にはない。(真野)案内へ戻る


 読書室 『核と戦争のリスク 北朝鮮・アメリカ・日本・中国 動乱の世界情勢を読む』
      薮中三十二氏・佐藤優氏 共著 朝日新書 八百二十一円

 2003年に始まる日本・アメリカ・中国・韓国・ロシア・北朝鮮の6者協議において北朝鮮・中国相手に厳しい交渉を行った薮中三十二元外務事務次官と元外務省主任分析官の佐藤優氏が今後日本が生き残るための戦略と極意を語る「緊急ガチンコ対談」とは銘打ったものの、アメリカ政界のキーマンであるキッシンジャーとプーチンや習近平との関係には全く触れずじまいであり、その意味で日本の外交戦略の弱さを露呈させた本である

 本来であれば決して実現する筈がない元外務官僚トップと黒子に徹すべき任務を担いながらも鈴木宗男事件に連座し解雇された元外務省主任分析官との対談である。しかし北朝鮮の核・ミサイル危機が進行する非常時であればこそ、この対談が実現したのである。

 藪中氏が開口一番「佐藤さんとこうやって話をするのはほとんど初めてですね」と切り出すと、処世の達人の佐藤氏は「そうですよね。藪中次官と私とでは、役所のランクで“天と地”ほどの差がありますからね。いまだに次官と呼んでしまいます」とまずは挨拶する事を決して忘れはしない。この心配り、これが佐藤氏お得意の第1の処世術である。

 両氏に共通する問題意識とは「起きるはずもなかった」戦乱がトランプ氏と金正恩氏の売り言葉に買い言葉、無知と誤算により本当に引き起されるのではないかというものだ。

 そして両氏が対談の中で相互に意見交換し合う各論点は、両氏の体験に基づくものが数多く紹介されていて参考になるものが多いので、確かに本書を読む価値はあるであろう。

 何点か指摘すれば、トランプ氏の「晋三」一緒にやろうの恐怖、横田で国連軍会議が開かれている、「日本の領空」発言の不正確さ、現場が国際法を知らない、「戦闘行為」の意味を知らない、制裁効果が表れているかについての証拠把握の弱さ、核武装といった場合まず一番のネックとなるのは原発、原発というのは日本が核開発に乗り出さないための人質、NPT(核拡散防止条約)体制が維持されている限り日本で核開発の可能性はないとの認識が一部の保守政治家には弱い、日本が核武装できないのは核実験が出来ないからだ、北朝鮮の核保有を認めると今度は韓国の核保有という論調が起きる、等々である。

 この「晋三」云々以外は全て佐藤氏の提起であり、これが佐藤氏の第2の処世術である。

 両氏は決して日本が対米従属にあるとは言わないが、朝日新書編集部は本書に対米従属なら日本も他人事ではないとの帯をつけて、しっかりと北朝鮮危機の核心を突いている。

 ではまず本書の目次の構成を紹介しよう。第1章から第8章までは北朝鮮危機に関わって重要なので、中見出しを全て書き出した。

はじめに 日米一体路線への不安(薮中三十二)

第1章 北朝鮮とアメリカ─―今そこにある戦争の危機
 日米「べったり」がはらむリスクとは?
 アメリカに日本はどう向き合うべきか?
 国際情勢が緊迫する中、リーダーの役割は何か?

2章 日本の上空を北朝鮮のミサイルが飛んだ日
 日本政府はなぜ浮足立ったのか?
 「なんとなく」ではなく、ハードエビデンスで分析できないのはなぜか?

第3章 北朝鮮の核容認論と日本の核武装論
 アメリカの論調「核保有やむなし」への異論
 核をめぐる日本のシナリオとは何か?

第4章 小泉訪朝と6者協議─―あのとき何が起きていたのか
 2005年の非核化合意はなぜ破られたのか?
 拉致問題でなぜ読み違えたのか?

第5章 北朝鮮の真相─―リーダーの頭の中、民衆の本音
 金正恩の革命観の根底にあるものは何か?
 北朝鮮の国民は現状をどう認識しているのか?
 北朝鮮の経済発展と管理システムは両立できるのか?

第6章 変貌する中国とのつき合い方
 肥大化する中国の自己イメージに日本はどう向き合うか?
 日本から提案できることは何か?

第7章 海洋をめぐる戦い─―尖閣問題と東シナ海
 「尖閣問題」の本質とは何か?
 東シナ海での日中共同開発合意のメッセージ

第8章 二つの顔を使い分けるしたたかさ
 「大義」とタテマエを使って優位に立つにはどうすればよいか?
 中国にどこまで迫れるか?
 アメリカにとって日本とは何か?
 トランプの対北朝鮮問題への本気度は?

おわりに 歴史的大転換を読み解く力(佐藤 優)

 これらの見出しで確認できる事は、両氏ともヒラリー氏が勝利すると信じ疑わなかった外務省の大失態を問題にしていない事である。これに関わり対談者が嫌がる事は問題にしないのが佐藤氏の第3の処世術である。では一体誰が、またどのような線を辿って安倍総理とトランプ次期大統領との会談をセットしたのか。さらにそれは何故に可能だったのか。

 これまた両氏は全く問題にしていない。全く不思議な事であり、藪中氏は安倍総理の行動力に感心している。しかも外交の観点からオバマ現大統領の任期中に次期大統領に会いに行く事が日米外交上で問題はないか否かの検討すら、全くなされていないのである。

 さらにトランプ氏の当選を予言した副島隆彦氏はトランプ氏の当選にキッシンジャー氏が大きな影響力を及ぼしたと指摘しているが、両氏はこの指摘を無視して話を進めている。藪中氏はいまだに米・民主党の情報のみに頼って、「自分の親分の言っていることは正しい」とする部族がトランプ大統領を支持するとの驚くべき批評をしているのである。

 このようにウクライナ危機に機敏に対応しプーチン氏に会いに行ったキッシンジャー氏を無視する、また彼の中国への影響力を無視する態度は、まさに両氏に共通する特徴的だ。

 現在、安倍総理や日本の世論はアメリカが北朝鮮の金正恩政権を打倒する、つまりアメリカの軍事力による先制攻撃での解決を期待しているようだが、藪中・佐藤両氏ともこの考えを否定する。なぜならアメリカの軍事力に依存すればするほど、日本の独自性が無視される現実性が高い(黙ってトランプ氏に従えという)事を危惧しているからである。

 外交官だった両氏が強く主張する事は、外交的イニシアチブを日本がもっと発揮しアメリカや中国を巻き込んで問題をよりベターな方向へと引っ張っていく事である。日本のソフトパワーにはその実力があるとして、過去の自分たちの知る事例を解説してその実績を紹介しているが、現実的には既に昨年の早い段階でトランプ大統領たちが北朝鮮攻撃を決断している発言等々を知ってか知らずかは不明だが、故意に無視しているのである。

 さらに指摘すれば藪中氏の安倍総理とトランプ大統領がたいへん仲がよいとの主張についても何故仲がよいのかの理由については、説明が出来ていない。したがって藪中氏の単なる「期待」が語られるばかりで具体的根拠の提示はない。それ故に藪中氏はトランプ大統領が一緒に北朝鮮と闘おうと言ったら、安倍総理は危ないと考えているのである。

 さらに藪中氏も「アメリカ内では北朝鮮の限定的核容認論が多数出てきており危ない」との自らの危機意識に基づく指摘はするものの、昨年来繰り返し何回もトランプ大統領がビル・クリントン政権ができた1992年から数えて「もう25年間、アメリカ政府は北朝鮮に引きずり回されて、問題を解決する事が出来ずにここまで来た」と言い、「自分はこの問題を片づける」と言い切っているのを全く無視し問題にすらしていない事である。

 例え百万単位で人が死のうとトランプ大統領は間違いなく決断する。藪中・佐藤両氏はここを何とか話し合いで解決しようとの儚い願望を語るが、その現実性はないのである。

 今年1月から沖縄で相次ぐ米軍ヘリの墜落事故、2月佐賀県神埼市での陸自対戦車ヘリの墜落事故、そして草津白根山爆発による陸自隊員の雪中訓練死亡事件、さらには2月20日の三沢基地F16のエンジン出火事故は、迫り来る北朝鮮有事のための日米の厳しい軍事訓練と一体となり、深く関連した事故ではないか、と私自身は疑っているのである。

 現実政治の具体的な推移の予想をリアリティをもって解析するには、一事が万事を貫くとの原則をもつ弁証法の理解が絶対的に必要不可欠な事を忘れるべきではない。(直木)案内へ戻る


 紹介・・・映画『米軍が最も恐れた男その名はカメジロー』と沖縄

 米軍が最も恐れた男 カメジローという映画を観てきました。

 三年前沖縄にいき、不屈館にいき、瀬長亀次郎さんのことを知りました。アメリカの占領下の沖縄はとても大変な状況で、那覇市長、国会議員と立場を変えながら闘い続けた政治家のドキュメンタリー映画です。

 私自身20歳のときにも、パスポートを申請して、沖縄に旅行したことがあります。那覇空港をおりると、目の前は米軍基地、機関銃を持ったアメリカ兵士がいて、飛行機の中で、旅行会の方からうるさくしないような、再々注意されていました。車は右側通行でした。外国にきたていう感じでした。那覇空港の前は、ものものしい雰囲気で、あの頃は、正直怖かったです。しかし、離島でスキンダイビングをして、沖縄の美しい海に到着時の恐怖は忘れていました。

その中で瀬長亀次郎さんは、不屈の精神で闘ってきました。理不尽な現状を変えるために、この映画は教えてくれました。

 三年前は、那覇空港の前の米軍基地は看板が自衛隊に変わってました。38年前とは、大分雰囲気は変わっていましたが、大半がアメリカの基地であることは変わらず、悲しいなと思います。オスプレイも宮城県にきました。自衛隊の基地近くに住む知人は大変怖がっていました。

 沖縄だけのことでは、ありません。私も不屈の精神でこれからも、みんなとともに歩んでいきたいです。( 宮城 弥生 )


 えん罪にあらがう「獄友」-近日中に映画公開

 獄友と聞いて、その言葉をすぐに理解できる人は少ないかと思います。監獄で寝起きを共にした仲間、しかも無実であるのに何十年も囚われた5人の男性たちです。1月末、大阪で狭山事件の石川一雄さんの再審実現に向け、獄友も駆けつけ、元気一杯のトークセッションが行われました。

 1963年に発生した狭山事件は随分前のことですが、私も幼い娘の手を引いて東京のデモに参加した記憶があります。しかし、その後は自分の関心が反原発や戦争反対などに向いて、情報も入手する努力もせず、正直、忘れかけていた冤罪事件でした。今回の司会は、「フェイスブック狭山事件の再審を実現しよう管理人」のノジマミカさんで、彼女の存在が運動の幅を大きくし広がりの可能性を見出したと言えます。

 トークセッションに登場した獄友は、足利事件の菅家利和さん、布川事件の桜井昌二さんで、お二人とも石川一雄さんの高齢に気遣い、一日でも早い再審実現を願い温かい励ましの言葉を掛けられ、会場にもその想いは伝わってきました。

 そして、獄友の皆さんが心優しいのは、トークセッションには登場されなかった獄中48年の袴田巌さんの再審実現にも共に力を合わせようと、連帯の意志を強く表明されたことです。金聖雄監督のこれまでの冤罪被害者を追い続ける映画2作品は、石川一雄さんと妻の早智子さんの日常を紹介したもの、もう1つは袴田巌さんの獄中生活を引きづった日常を追ったもので、どちらの作品にも獄友が登場し楽しい場面を創りだしてくれました。

 3月に入れば、全国各地で公開される映画「獄友」は、小室等さんなどのミュージシャンの応援を受け、テーマ曲が提供され、元気の出る曲が流れます。この日、参加者には予告編を見る機会があり、フォークソング的な曲がきっと観客の心を掴んで揺さぶってくれるだろうと予測できます。色んな業界からの支援を受けて、そのきっかけからまだ冤罪という存在すら知らない世代にも関心を持ってもらいたい。「獄友」各地での上映会に皆さんも是非参加して下さい。(兵庫・折口恵子)


 「エイジの沖縄通信」(NO48)・・・日本は本当に独立国なのか?
  
(1)私の錯覚
 
 私は三沢の米軍機の事故報告をテレビで観ていて、ある錯覚を起こした。

 テレビ画面で、年配の濱田正隆組合長が米軍から詳細な報告がないことに怒り「謝罪の一言すら全くない。(組合員の)の命が取られる間際までやられたのに」と、泣きながら訴えていた。

 ところが私は一瞬、この年配者は沖縄のどこの市町村の人なのか?と思ってしまった。沖縄の米軍事故だと錯覚したのである。

(2)今度は青森県の三沢米軍機がトラブル! 

 20日午前、青森県米軍三沢基地所属のF16戦闘機が離陸直後にエンジン火災を起こし、基地近くの小川原湖に燃料タンク2個を投棄した。

 小川原湖でシジミ漁をしていた漁師は「すごい水しぶきで驚いた。当たっていたらと思うと冗談じゃない。けが人がいなくて良かった」と述べている。当然、湖面に油や部品のような物が浮いていて、シジミ漁に被害が出たのである。

 小川原湖はシジミやシラウオ、ワカサギの漁が盛んで。同漁協関係者によると、この時期は1日300万円以上の売り上げがあり、「特にシラウオ漁は3月中旬までが佳境。禁漁が長期化すれば多大な影響が出る」と話す。

 困った青森県は、自衛隊に災害派遣?を要請し、湖に漏れた油の回収を求めた言う。これを受けて海上自衛隊・大湊地方隊が派遣されて、オイルフェンスの設置や吸収マットを使って油を除去した。

 でもなぜ?自衛隊が後始末をするのか?

 この事について、元外交官の天木直人さんは次のように指摘する。

 「驚いたことに自衛隊が落下した燃料タンクの回収や汚染された湖の油除去作業をやらされているという。それを小野寺防衛大臣は国民に向かって、恥ずかしげもなくこう説明したという。『米軍が本来回収する案件だが、米側から自衛隊にお願いできないかと要請があった』からだと。冗談じゃない。

 事故が起きても日本には指一般触れさせない米軍が、機密のものは何もないからと言って、金のかかる面倒な事故処理だけは、自衛隊に後始末しろと命令したのだ。日本政府は、そんな理不尽な命令に言いなりになって、従ったのだ。まさしく自衛隊は米軍の下請けである。しかも経費負担までさせられている。

 沖縄といい、青森といい、飛行機事故のために生活や安全を脅かされた地元住民が怒るのは当然だ。しかし、彼ら住民の怒りだけに終らせてはいけない。

 主権者であり、納税者である国民こそ、米国の下請けに甘んじる日本政府に怒らなければいけない。間違いなく、日米同盟関係は根本的に見直さなければいけない時に来ているのだ。なぜ政治は、与党も野党も、本気でそれを行おうとしないのか。なぜメディアは、日米同盟関係を見直す時期に来ていると、本当のことを書かないのだろう」。

 「日刊ゲンダイ」も日本政府の対応を次のように批判している。

 「米軍タンク投機の漁業補償日本の税金で尻拭いのデタラメ・・・全国屈指のシジミ漁場が大損害だ。米軍三沢基地所属のF16戦闘機が、青森・東北町の小川原湖に燃料タンクを投棄し、湖には燃料が流出。地元漁協は水質の安全が確認されるまで、漁の全面禁止を決めた。
 小川原湖は海水と淡水が入り混じる汽水湖で、今の時季は全国有数の漁獲高を誇るシジミ漁のほか、ワカサギ・シラウオ漁がピークを迎える。地元の漁師は米軍のせいで、書き入れ時に仕事を奪われるのだ。その怒りは察するに余りある。

 自公与党の二階、井上両幹事長は21日、漁業補償を含めた対応を取るよう政府に要請することを確認したが、やや古いが『違うだろうー!』と叫びたくなる。

 米軍がやらかした燃料投棄の被害による漁業補償を、何で日本国民の税金で賄わなければいけないのか」。

 私も、燃料投棄したのは米軍戦闘機、なぜその後始末を自衛隊なのか!なぜ後始末費用も日本の税金なのか!これでも日本は独立国なのか?と問いたい。 

 沖縄も青森県も他県も、米軍基地や自衛隊基地付近に住む住民は軍用機などの事故で泣かされている。これが今の日本の現実だ!

 天木さんが指摘する「日米同盟関係」の根本的見直しとは「日米安保条約」の事であり、早急に取り組まれるべき課題とは「日米地位協定」の改定、「日米合同委員会」の在り方を見直すことである。

(3)日米地位協定=沖縄からの告発!

 この「日米地位協定」について、沖縄の「琉球新報」から「東京新聞」に出向して半年たつ吉田健一記者は、2月23日(金)の東京新聞「視点」<「改憲」より「改定」を>で次のように述べている。

 「首相官邸を拠点に政府高官らを取材してきた。政権中枢で地位協定の抜本的見直しが語られることはなかった。・・・沖縄でも日常生活で地位協定について真剣に考える機会は少ない。しかし、ひとたび米軍関係者の事件、事故に巻き込まれると、日本の法律より優先される地位協定の存在を思い知らされる。・・・2012年11月、沖縄本島中部で泥酔した米兵がアパートに侵入し、部屋にいた男子中学生を殴打する事件が発生した。米軍によって日常が壊され、その家族は引っ越しを余儀なくされた。事件から2年後、再会した被害者の母親が『私たちの生活は一変したのに、地位協定は何も変わっていないね』とつぶやいたのが、今も心に残る。・・・沖縄にいれば、いびつな日米関係がいや応なくみえる。首相が提案する9条改憲で自衛隊の存在を明記すれば、米国に押しつけられた不平等な関係が消えるとも思えない。そりよりも不平等の源流である地位協定の改定を、多くの県民は求めている」。

 私もこの「日米地位協定」問題では苦い思い出がある。

 沖縄で米兵による運転事故で息子さんを失った父親の話を聞き、その後「米軍人・軍属による事件被害者の会」に入り、その父親と一緒に国会や国会議員回りをする活動に参加したが、まったく「日米地位協定」の改定は進まなかった。

 この事は、森口豁氏の本「『安保』が人をひき殺す/日米地位協定=沖縄からの告発」<高文研>で紹介されている。(富田 英司)案内へ戻る


 コラムの窓・・・ 今村岳司西宮市長の退場!

 野々村竜太郎兵庫県議が政務調査・活動費のデタラメな支出で破綻し、その号泣会見が世界を駆け巡ったのち、彼を県議会に送ってしまった西宮市はその後も何かと話題に上っています。西宮市民として、その不名誉に情けなくなります。いままた、今村岳司西宮市長が物議を醸したのち、あっけなく舞台を降りました。

 今村氏は西宮市議を4期、そのうち3回はトップ当選という実績を引っさげ満を持して市長選に挑戦しました。そして、大方の市議が推す現職市長を破って市長となったのですが、いま思えば受験競争を勝ち抜いた受験生のように、その時点で彼はもう終わっていたのかもしれません。

 国道2号沿いのアサヒビール跡地の活用を争点化し勝利した今村氏でしたが、市長として完全白紙化で押し切ることができずに中途半端な収拾となってしまい、これがつまずきの石でした。議会はこれを〝公約違反〟と批判し、彼を支持していた数少ない市議たちも反発しました。

 2014年6月17日、今村市長は初の所信表明で誇らしげに次のように述べました。「3千6百人の職員を擁する西宮市役所の経営者として48万7千人の住民の福祉の増進を司り、西宮の未来に責任を持つようになったことに、身の引き締まる思いであります」

 みられるように、今村市長は自治体行政を〝都市経営〟だと認識していたのです。その姿勢を最もよく示したのが、借り上げ復興住宅から
の例外なき退去強制、20年の期間が過ぎたら裁判に訴えて住民を追い出すという切り捨て行政です。神戸市も追い出し裁判を強行していますが、一定の条件を満たせば継続居住も認めているのに、です。

 いまや全国の多くの自治体首長選挙において公務員バッシングが行なわれ、今村氏も「私物化された税金と市役所を取り戻す」として、給与カット、人員削減、民営化を掲げていました。市長になったら市役所内に嵐が吹き荒れるかと思われたのですが、橋下徹氏のように暗い情熱を傾けることもなかったので、更に保守系の市議たちの反発を強めました。

 その一方で、今村市長はマスコミの批判を嫌い、マスコミとの対決に情熱を傾けた感があります。そのあげくが〝殺すぞ〟発言でのみっともない市長辞職となったのですから、自業自得というところでしょう。2月20日の3月市議会初日が焦点の日となり、議会側からの退職金カットという攻撃、これを阻止するために同日付けの退職願いを前日に市職員を通じて議長に届けるという反撃、この勝負は今村氏の勝利で終わりました。

 さて、今村氏の長々しい最後の「活動日記」ですが、これは3月20日現在、まだ西宮市のホームページには彼が市長として存在し、そこにリンクされています。なかなか興味深い文章です。ここでは誰からも邪魔されず好きなことを書けるがゆえに、人格的にも立派な政治家今村岳司を演出してみせることができるのです。実に根暗だと、しみじみ感じます。

 さっさと神戸市北区に引っ越して西宮から逃げ出したくせに、「永遠に西宮ファンであり続けます」なんてよく言えるものです。そのうえ、「引退を決めたときから1年以上かけて、私が新しい西宮にふさわしいと見込んだ人物を口説き続け、三顧の礼を以て彼に西宮市長選挙への立候補を決意してもらいました」とも書いています。しかし、その人物が何やらいわくありげな人物らしいのですから、全く呆れ果てます。
 今村氏は5度の選挙を「そのすべてに美しく勝利」したのですが、彼の勝利は即ち市民の敗北ではなかったかと私は思うのです。敵をつくりだし闘う選挙を行う、これに目を奪われ、彼の5度も〝勝利〟させたことを反省することなく、〝だまされた〟などと言って済ますなら、もっと悪い明日を迎えてしまうでしょう。 (晴)


 色鉛筆・・・清水LNG火力発電所建設反対運動 
       建設反対の請願静岡市議会が不採択 白紙撤回するまであきらめない!


 静岡県静岡市清水区のJXTGエネルギー(旧東燃ゼネラル石油)が計画しているLNG火力発電所は、JR清水駅から500㍍の所でいつ地震が起きてもおかしくない状況の中で「LNG火力発電所は危険すぎる!あまりにも人口密集地に近い」と、住民や市民たちが声をあげて反対運動が始まり約3年目に入った。様々な活動をして運動を広げていくと昨年、県知事、市長、地元の議員、経済界の人たちが反対の方向に動き出して、事業者は危機を感じたのか9月、建設に必要な環境影響評価(アセスメント)の手続きを延期した。私たち反対運動の6団体がまとまった「清水LNG火力発電所反対問題・連絡会」は、建設計画が白紙撤回するまで反対運動を続けていくことを確認し合った。

 そして、静岡市議会に建設中止の決議を求める署名活動を昨年の5月から始め、汗だくになる暑い夏の日、雨が降ったり風が吹いたり、寒さが身にしみる冬の日等々、仲間たちと地道に署名を集め25829筆を2月の市議会に提出した。

 この間、私たちはJXTGエネルギーの担当者と2回面談したが11月には『すべての火力発電所建設のための活動はやめている』と言ったはずなのに、12月頃から近隣の町内会長さんなどにカレンダーなどを配布して訪問したり、経済界とコンタクトをとっていることがわかった。活動はやめているといったその約束は見事に破られ、1月の面談の時に追及したが『地元の皆さんに受け入れられる発電所を建設したい』と、あくまでも建設をあきらめていないことがわかった。

 事業者が地元の町内会長に根回しをしているなら私たちは地元の住民の思いを調べてみようと、住民宅を1件ずつ訪問して意向調査を行った。昨年行った江尻、辻地区に加えて西久保、袖師、横砂地区を行うと、地元住民の大多数は建設に反対し、賛成はわずかである事がわかった。(表参照)この結果を地元新聞が掲載し、私たちは意向調査をした地域に1万枚のチラシを配布していくつもりだ。

 また、静岡市会議員の自宅を訪問して話をしたり、会派と意見交換会などを行って保守系議員にも働きかけを行ったが、2月21日賛成少数で不採択になってしまった。署名や意向調査でもあきらかなように多くの市民が反対しているにもかかわらず保守系議員は『準備書が出されなければ検討もできない。今、判断する時ではない』『環境影響評価(アセスメント)をはじめ法律に基づく手段に従って判断すべき』等と、手続き論に終始していて事の本質である建設の判断をしないとはあまりにも情けなく怒りを感じる。環境アセスメントの準備書がでれば、一定の手順で審議され、県知事と市長が反対意見をつけても、参考意見としての効果はあっても拘束力はなく、経産省に送られれば認可されてしまうのが今の法律なのに保守系議員は何もわかっていない。今ならば、議会が反対決議をして、県知事、市長、市議会、市民と共に準備書の提出を控えている事業者に圧力を与えて計画を断念させることができたかもしれないのだ。

 私たちは、議会で否決されてもあきらめないで白紙撤回するまで運動を続けていくつもりで、早速仲間たちと「敵はJXTGエネルギーにあり」と28日にはJXTGエネルギーの東京本社に行って建設の白紙撤回を求め、抗議の声をあげてくる予定だ。【2月24日記】(美)

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