ワーカーズ581号  (2018/4/1)     案内へ戻る

 安倍内閣の総辞職を求めて大衆行動を強化せよ!!

 森友事件とは2016年6月時価約九億円の土地をごみ撤去費約八億円値引き約一億万円で売却後に、国から土地改良費約一億円を負担させ実質二百万円で決着した事件である。この展開を籠池元理事長は「神風が吹いた」と評した。では一体誰が風を吹かせたのか。

 昨年2月この大幅値引きの発覚後、国会で売却額が適正か否かが約1年数ヶ月議論されたが、安倍総理の無関係発言等と佐川前近畿財務局長の交渉記録破棄発言で核心に迫る議論は出来なかった。しかし今年3月自殺者と決裁文書の改竄の発覚により状況は大きく動いた。文書改竄は実に14件、約三百カ所に及ぶ大規模な削除・訂正があったのである。

 この改竄自体、公文書偽造罪で懲役十年の重大な犯罪行為。更に又国有財産処分に関って、実際に背任があったか否かの重大事件に発展する現実性を持つ重大な犯罪である。

 財務省の決裁文書改竄により週末(3月16~18日)に実施された各種世論調査で、安倍内閣の支持率は急落した。朝日の調査では支持率は前回2月調査から13ポイント減の31%に急落、不支持は11ポイント増の48%に、毎日は支持率は前回2月調査から12ポイント下落して33%、不支持は15ポイント増の47%に、更に日本テレビの調査でも支持率30・3%に対して不支持は53・0%へ、と過半数を越えたのである。

 又財務省による改竄は「首相に責任がある」との回答は朝日82%、毎日68%、共同通信66%となる。更に安倍首相の「書き換え前の文書を見ても私や妻が関わっていない」事は明らかだとの答弁には、朝日調査で実に72%が「納得できない」と答えている。

 安倍政権の悪辣さが際だつ。これに危機感を持つ村上自民党議員等は安倍氏の友人から始まったと批判を開始した。かくて安倍総理・麻生財務大臣らの佐川前近畿財務局長に改竄の全責任を押しつけの目論みは破綻して、今麻生財務大臣は追い詰められつつある。

 改竄後の文書からは「日本会議」「日本会議の国会議員」「安倍昭恵」「特例的」等の文言が削除されていた。実際、真実は「隠すほど表れる」それ故、改竄は政治案件・昭恵案件を隠すものだ。小池共産党議員の「なぜ決裁文書に安倍昭恵夫人が出てくるのか」との質問に、太田財務省理財長は「総理夫人だから」と答えた。これまで財務省が隠したかったのは実にこの重大な事実であり、更に又国交省へも文書改竄を要請していた事が発覚した。

 今こそ安倍打倒の好機である。3月27日、佐川氏は証人喚問される。引き続き国会に文書改竄に関する全会派の調査特別委員会を設立し徹底追及すると共に、国会外での大衆行動を一段と強化して安倍内閣総辞職を勝ち取ろう!(直木)


 和田議員の財務省憎しの驚くべき妄想質問と「影の総理」の今井総理秘書官に注目せよ!

 3月19日、参議院で行われた公文書改竄に関する注目の予算委員会の集中審議に自民党が送り込んだ二人の議員は、何とネトウヨから絶大な人気を誇るものの、良い噂をほとんど聞いた事がない青山繁晴議員とみんなの党・次世代の党出身で菅官房長官を後ろ盾として、予てから「デマゴギー広報副本部長」の異名を持つ和田政宗議員であった。

 自民党は札付きの二人に党を代表させて質問をさせたのだから、まさに己自身を知り片時も「適材適所」の人員配置を怠らない政党なのだと私は改めて認識を深めたのである。

 紙面の関係から、ここでは安倍政権を支えるために自民党に入党したと豪語して恥じない元NHKアナウンサー出身で破廉恥極まりない安倍チルドレンの代表選手である和田自民党議員の財務省憎しの妄想に発する驚きの“トンデモ質問”をまず取り上げたい。

和田議員の財務省憎しの妄想質問その1―財務省文書改竄と安倍総理の気概

 3月2日の朝日新聞の決裁文書改竄のスクープをデマ扱いしてきた和田自民党議員はまず財務省に文書改竄の全ての責任を押し付けようと、以下のように質問を開始した。

「財務省は自民党に対して官邸に対しても嘘をつき通した訳です。党や官邸が徹底調査を指示して隠蔽の扉をこじ開けなければ、財務省は内部で完全に書換えの事実は隠されていたかもしれません」「これは政治と官僚との戦いでもあります。官僚の暴走を許してしまった政治家も反省もしっかりしながら徹底的な究明をする」和田議員は、徹底した糾明をすると言いながらもこうした一方的な決めつけによる「断定」を敢えてしたのである。

 さすがは先輩議員にこの文書改竄事件を「佐川事件」と命名して恥じる事を知らない西田昌司参議員議員を擁する自民党である。しかし「事実は小説より奇なり」なのである。

 3月5日、そもそも首相官邸に国交省から書換え前の決裁文書の存在が報告されていた。しかもこの重大な文書改竄犯罪を知るや直ちに究明行動を開始するでもなく、安倍首相も菅官房長官も3月11日まで日本国民に隠していたのである。これが正確な事実である。

 この真実を隠蔽し「文書改竄が判明したのは官邸が調査を指示したから」などと歪曲した質問を、衆人監視の予算委員会の場でまるで自民党の手柄かのように公然と語るなど、無知でなければ並の「役者」には出来ない台詞回しに私などは思わず聞き惚れてしまった。

 勿論聞き惚れているばかりでは駄目だ。次の切り出し方も実に「見事」という他はない。

 和田議員は安倍総理の「私や妻が関わっていたら総理も国会議員も止める」との答弁を、私などはこの安倍発言が決裁文書改竄の重大なきっかけとなった発言だと明確に認識しているのに対して、常人の知性を遙かに超えた「財務省憎しの妄想力」を遺憾なく発揮する。そして私の予想を遙かに超えた「論理力」で和田議員は、論点をずらして想定外の安倍礼賛へと話を展開してゆくのであった。

「この書き換えに関してですね、安倍総理の『私や妻が国有地払い下げに関わっていたのであれば総理大臣も国会議員も辞める』という発言について、この発言があったから財務省の官僚が忖度して書換えをやった、不用意だったと言っている人や一部のメディアがありますけれども、これはとてもおかしな話でありまして、疚しいことがあれば国会議員を辞めるという決意はですね、これ政治家として皆が肝に命じておかなくてはならない事でありまして、これだけの気概を持った政治家がどれだけいるでしょうか。その覚悟が褒められるなら分かりますけども、批判される意味が分かりません。政治家は身を賭して政治を行う。こうした決意が批判されるなら、政治はそうした覚悟のない、極めて甘 っちょ ろいものになってしまいます」さすがは元NHKのアナウンサー。お追従は上手なのだ。

 しかし和田議員の言う通り安倍総理が本当に「これだけの気概を持った政治家」だったらば、そもそも昭恵夫人が森友学園の土地取引に大きな影響を与えたと有権者から疑われたその時点で、総理も議員も直ちに辞めていただろう。だが現実に総理を辞めてはいないし、また関与は口先でこそ否定してはいるものの、昭恵夫人の国会参考人招致すら逃げているのが実態である。まさに「論より証拠」なのだ。なぜ積極的に昭恵夫人を国会の証人喚問に出して無関係だと訴える姿勢は示さないのであろうか。この明確な事実を指摘すれば安倍総理に何らの気概もない事は明らかである。つまり総理は政治家失格なのである。

 したがってこの事実は和田議員による実に贔屓の引き倒しであり、安倍総理には迷惑な話である。それ故、決裁文書改竄により昭恵夫人の名が消えた事は象徴的な事のである。

 先人の知恵としての諺に「隠すより表れるはなし」とある。都合が悪いと真実を隠す事で、逆に都合が悪い事がしっかり真実として浮かび上がってくる。この場合、昭恵夫人の存在を隠した事が、実際の土地取引において昭恵夫人の果たした役割の大きさをまさに問わず語りに語っているのである。真実は先人の「隠すより表れるはなし」の通りである。

和田議員の財務省憎しの妄想発言その2―財務省答弁はアベノミクス潰し

 しかし人並み外れて破廉恥な和田議員は、3月16日の参院予算委員会での太田理財局長が安倍総理の「私や妻が関係していたなら総理も議員も辞める」との発言の影響を明確に否定しなかった答弁を殊更に問題視し、自分は全てお見通しだとの妄想を展開する。

「まさかとは思いますけども、太田理財局長は民主党政権時代の野田総理の秘書官も務めておりまして増税派だから、アベノミクスをつぶすために安倍政権を貶めるために意図的に変な答弁をしているんじゃないですか?」まさに記憶するに値する「名台詞」である。

 和田議員の突然の質問に不意を突かれ、いつも冷静な答弁している太田理財局長もこれにはさすがに表情を変えた。しばし間を置き、太田氏はこのように抗議したのである。

「いや、お答えを申し上げます。あの、私は、公務員としてお仕えした方に一生懸命お仕えするのが仕事なんで。それをやられるとさすがにいくらなんでも、そんなつもりは全くありません! それはいくらなんでも……それはいくらなんでも、ご容赦下さい!」和田議員の質問による太田理財局長の心の動揺が、手に取るように分かる発言ではないか。

 この時、太田理財局長は自民党議員の質の劣化をつくづくと感じたであろうし、自民党がこうした議員に党を代表して質問させている現実、そしてまたこうした議員が安倍政権を支えているのだと改めて驚愕し日本の未来を寒々しく考えた事であろうと私は考える。

 財務省が「安倍政権を貶めるために、意図的に変な答弁をしている」との和田議員の発言はまさに言いも言ったりの妄想に発する“トンデモ質問”であり、「名台詞」ではある。

 しかし残念ながら安倍総理に対するこの忠義心に満ちた和田議員の質問の想像を絶する破廉恥さには、聞いた者全てが仰天した。そのため自民党等からも批判が集中し和田議員の「考え抜かれた」質問も、参議院予算委員会議事録からの削除が決まったのである。

寒々しい和田議員の質問が明らかにしたものとは―示された政権与党自民党の内実

 その後も和田議員は勉強不足から森友学園と近畿財務局との土地取引に関する事実経過すら碌に知らない事を暴露する質問を連発したが、ここで質問を一々取り上げて問題にする事は止める。結局の所、和田議員は妄想や誤認による多弁を弄しつつも、財務省が決裁文書改竄する犯罪をなぜ何のため犯したのかの理由は、全く解明できなかったのである。

 このように本来は野党中心に集中審議すべき予算委員会を、和田議員のような全く呆れ果てた問題意識によって時間つぶしされては税金の無駄遣いである。更に和田議員自身が折角考えを巡らして実際に発言した質問の核心部分が議事録から削除されてしまった。自民党は和田議員の質問をどのように総括しているのか。ぜひとも聞いてみたいものである。そしてこんな質問しかできなかった和田議員を党の代表として財務省の文書改竄について質問させた自民党の内実の驚くべきお粗末さ、更にこんな惨めそのものの自民党が現在の日本の政権与党だという恐ろしい現実を、私たちはもっと深刻に知るべきなのである。

財務省が国交省に文書改竄を要請していた事が発覚

 また財務省の決裁文書改竄に関わって、新たに財務省の決裁文書の原本を保有する国土交通省に対して財務省から公文書改竄の依頼があったとの重大な事実が発覚した。

 そもそも今回の森友事件・加計問題は安倍総理が「私も妻も無関係でもし関係あれば総理も国会議員も辞める」との断言から、総理の意思を官僚が忖度したものではないかとの憶測が語られてきた。しかしこの事実の発覚は、忖度云々のレベルを遙かに超えている。

 そして当然の事ながら他省つまり国土交通省へ文書改竄を依頼するなどは、両省の局長クラスの判断でできる事ではない。もし麻生財務大臣の関与がないとすれば、当然財務省事務次官から国土交通省事務次官経由でないと国土交通省の職員が動くはずもない。だが本来的に平目で保身に長け天下りを考える両事務務次官同士が、自分だけの判断で犯罪に手を染めるなど想像する事は出来ない。明確な指示があったとしか考えられないのだ。

前川前文科事務次官に対する文科省の介入と今井総理秘書官

 現在、前川前文科省事務次官の名古屋公立中学校の道徳の授業に文科省が調査という名で執拗な介入が行われていた事が発覚して問題になっている。なるほど加計学園の獣医学科新設問題については不当な介入があり、文部行政が歪められたと安倍政権を批判した事で周知の人物である。これには自民党の文教部の二人の議員が既に特定されている。

 その二人とは、安倍政権の著名な「安倍チルドレン」である自民党文科部会の赤池誠章部会長(参院議員、細田派)と池田佳隆部会長代理(衆院議員、細田派)の二人である。

 彼らが授業内容を報告するよう名古屋市教育委員会に求めたり、林芳正文科相を無視して文科省に照会する事は、当然ながら「教育の自由を侵す権力的抑圧」「文科省への不当な支配」に当たる。3月20日、これを厳しく批判する立憲民主党など野党6党は、国対委員長会談で文科省が前川前事務次官の授業内容を問い合わせた問題に関与した彼らに対し、衆院文科委員会などで参考人として招致し、説明を求める方針で一致したのである。

 狙われた前川氏は、財務省の決裁文書改竄は今井尚哉総理秘書官の指示だと言明している。まさに「蛇の道はヘビ」という。官僚世界でその省のトップを経験した事がある人物は、司令塔がどこにあるかを一瞬で見抜く。退職した官僚は何でも言えるのである。

今井総理秘書官と安倍総理との関係

 では今井尚哉総理秘書官とは、一体どのような人物なのであろうか。

 事情通は、以下のような興味深い話を披瀝する。「元経団連会長今井敬氏と元通産事務次官今井善衛氏を叔父に持つ今井氏ですから、元々財界との太いパイプがありました。安倍総理がまず目論んだのは、今井氏を介して財界をバックにつける事での票集めでしょう。財界をバックにつけるとなれば、そのツケとして、財界にとって得になる政策を打ち出さねばなりません。その結果、人事、法案、アベノミクス……全てが今井氏中心の下、財界が得をする(=後押ししてくれる)シナリオが形成されていきました」(政府情報筋)

 今井氏は第1次安倍内閣で内閣総理大臣秘書官となった事から、安倍総理の知遇を得た。そして内閣総理大臣秘書官を務めた井上義行氏は、今井氏の叔父今井善衛氏と安倍総理の祖父岸信介氏とが商工官僚同士だった縁から両者が接近したと述べている。また井上氏は安倍総理の姻族である牛尾治朗氏が、安倍総理へ今井氏の活用を進言したと述べている。

 第1次安倍改造内閣退陣後も長谷川榮一氏と共に安倍氏を高尾山登山に誘うなど、今井氏は安倍氏と交流を深め、第46回衆議院議員総選挙直前、安倍氏の事務所ではベテランの政策担当秘書が突然辞任し人材が払底していたので、安倍氏は今井氏を雇用したのだ。

今井総理秘書官は「影の総理」

 その後、第2次安倍内閣では政務担当の内閣総理大臣秘書官に就任するよう要請した。このように秘書官として仕え内政から外交にまで暗躍した影響力から、今井氏を「影の総理」と見る向きもある。一説では「今井氏との折り合いが悪い」という理由により、斎木外務省事務次官が田中財務省事務次官と共に退任に追い込まれた可能性があるとの事だ。

 確かに消費増税を延期すれば延期した分だけ将来にツケが回る。だが私たちが背負う将来のツケで甘い汁を吸っているのは大企業だけだ。その他の中間層以下には何の利益もないアベノミクスである。こうした大企業だけが得をする安倍=今井政治は今直ちに止めさせねばならない。問題の「働き方改革」もこの大企業本位の政治からの提案なのである。

 実際に内閣人事局に深く関与して官僚の人事まで口を出して、各省の官僚幹部に恐れられている今井氏ではある。この今井氏の経歴と前に紹介した前川氏の指摘をよくよく考えれば、これまで安倍内閣に付きまとってきた謎の全てが太い一本の線でつながっていく。

 今回、発覚した財務省決裁文書の改竄や加計学園獣医学科新設問題、安倍番記者山口氏のレイプ事件もみ消し等々も、巷間言われているような官僚が忖度したものではなく全て安倍総理の無言の意を受けた今井総理秘書官が企み、かつ明確に指示した事なのである。

国交省への文書改竄要請の指示者が分かれば真実が分かる

 実際国土交通省へ文書改竄を指示し要求したのが一体誰かが分かれば、ついに真実が分かる。このような明確な線のリーク(国土交通省への文書改竄の依頼)などは国土交通省内の職員が直接リークしたか、大阪地検にリークしたか以外には考えられない事である。

 既に財務省の文書改竄が明らかになって安倍内閣もその事実を認めざるを得なくなり、それ故、佐川氏の国会証人喚問に反対する事は出来なくなってしまった。今後、今井総理秘書官の国会証人喚問は、安倍内閣が既に崩壊寸前の今、安倍内閣に最後の止めを刺す一撃となる。野党は国会に文書改竄調査特別委員会の設置を求めるだけでなく、安倍総理の背後で動く今井総理秘書官の国会証人喚問を要求して断固闘い抜くべきであろう。(猪瀬) 案内へ戻る


 安倍改憲封じ込めは首相退陣で!――安倍首相による自己都合の押しつけはノーだ――

 自民党の憲法改正推進本部が9条改憲の案文をとりまとめた。安倍首相が打ち出した現行9条2項を維持した上で、9条の2として、自衛隊の保持を書き込む、というものだ。

 安倍首相は改憲の必要性について、最近は主に研究者などで自衛隊違憲論が根強いこと、その違憲論を封じることをあげている。今回の自民党案のとりまとめは、今年度中の発議と19年の国民投票で、20年には新憲法成立を目ざすという安倍首相の思惑を具体化するものになっている。

 とはいえ、現状は、改憲を主導してきた安倍政権の屋台骨そのものが傾いているのが現状だ。森友事件で発覚した公文書改ざん事件で、三権分立の建前が根底から歪められたからだ。3月26日の自民党大会では、その改憲案文が確認されることもなかった。
 時代錯誤な安倍改憲への批判の声を拡げることで、一連の安倍改憲策動を封じ込めていきたい。(3月26日)

◆首相ごり押しの改憲案

 今回自民党がとりまとめた9条改憲案文は、安倍首相が昨年の憲法記念日に日本会議系の集会に寄せたメッセージで「9条1項、2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込む」と明言したものであり、いわば安倍首相の思い入れを自民党に押しつけたものといえる。安倍首相は今年の年頭記者会見でも「憲法のあるべき姿を国民に提示する」と明言したように、自身の首相在任中での改憲への執着を隠さなかった。

 永年、自衛隊が合憲であると強弁し続けてきた自民党。その自衛隊の合憲化を目的にする改憲自体、根拠薄弱、とってつけたような言い分ではある。14年の集団的自衛権の一部容認を組み込んだ15年の戦争法の強行採決で、安倍首相は日本が攻撃されなくても武力行使できるようにした。それで安倍首相の目先の思惑は一部実現できたはずで、それを考えれば、いま明文改憲しなければならない、という情況にはないはずだ。

 それを承知で無理やりにでも改憲の実績を残したい、というのが、安倍首相による9条2項追加案だ。あわせていったん改憲を経験すれば、次なる改憲への足がかりになる、との段階的改憲への思惑も、当然あるだろう。

 そんな今回の安倍首相案による9条2項追加という改憲案文、それは〝加憲論〟の公明党対策、教育無償化を加えての大阪維新の会対策、支持基盤の保守派への配慮……。こうした判断は、首相のブレーンで日本会議の政策委員の伊藤哲夫氏の「まず加憲から」という改憲戦術を踏まえて採用したと言われている。これが「政治とは結果であります。」という安倍首相が取り入れた現実主義ということなのだろう。

 とはいえ、安倍首相の本音である国家優先、軍事優先の戦前回帰にはいまだほど遠い。9条を始め、憲法体系を根本からひっくり返す戦前回帰のためには、何はともあれ通過点としての明文改憲は欠かせないとの思い入れががなせる技ではある。

◆あっさり条文?

 自民党党が3月末に集約した案文は以下のようなものだ。
「9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。②自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」

 この部分は、現行憲法9条の、1項「戦争・武力行使の放棄」2項「陸海空軍その他の戦力の不保持」の後に書き込まれる部分だ。自民党の改憲草案では「自衛権の発動を妨げない」と「国防軍」とされていたものだが、結果的に上記の表現で取りまとめられたわけだ。

 自民党内の意見集約では、憲法に自衛隊をどう書き込むかについていくつかの案が出されていた。「自衛隊」と明記するのか、それとも「実力組織」と表現するかだ。現に、「陸海空自衛隊」「自衛隊」と具体的な組織・機関を明記するものと、「自衛権の行使」と「そのための実力組織」との案もあった。

 今回の自民党改憲案は、改憲条文も簡素であっさりしたものだ。とはいえ、そのためともいえるが、安倍首相が自衛隊違憲論を最終的になくすため、としていることに反して、仮に改憲が実現したとしても、新たな対立点や論争点が残されたものとなった。

◆発言力増す自衛隊・軍人

 安倍首相の9条2項維持による加憲案は、9条2項削除に比べて妥協的判断ともいえるが、それでも明文改憲の絶大な効果はある。

 現行憲法で具体的な行政・執行機関として明記されているものはない。現行憲法第の5章「内閣」には、「行政権は内閣に属する。」との
規定の他、「内閣総理大臣」や「国務大臣」それに「行政各部」という言葉は出てくるが、個々の行政機関などは出てこない。現状でいえば、防衛省や自衛隊は国家行政組織法や各府省庁設置法で内閣の下に設けられる行政機関の一つに過ぎない。

 そこに自衛隊という実力組織が憲法に具体的に明記されることになるわけだ。そうなれば、一行政機関としての防衛省より憲法で規定された国家機関となる自衛隊のほうが上位概念となり、法体系上は逆転してしまう。

 結果的に自衛隊は、憲法で直接認められた国家機関として、他とは違う特別な行政機関となる可能性もある。現に、制服組(軍人)が背広組(文官)に従属していた「文官統制」も15年6月に防衛所設置法改正ではずされ、双方が対等の地位とされた経緯もある。自衛隊、それも制服組の発言権の肥大化など、この影響は今後計り知れない意味を持つかもしれない。

 「自衛権の行使」や「自衛権の発動」、あるいは「そのための実力組織」という概念についても同じだ。「自衛権」の限界や範囲が明確になっていないからだ。結局、「自衛」概念を取り込めば、個別的自衛権、集団的自衛権など、拡大解釈はいくらでも可能だ。

 現に、集団的自衛権を一部認めた安保法成立後では、日本が攻撃されていなくとも対米協力での武力行使は可能だとされた。それも「自衛の措置」に含まれることになる。法律を変えれば、フルスペックの集団的自衛権の行使も可能になる。解釈次第でなんとでも運用できる。9条の「戦争の放棄「戦力の不保持」そのものが骨抜きにされ、形骸化されるのは避けられないだろう。

 こうした問題も含まれているので、改憲後も「自衛の措置」の限界や範囲が問題となり続け、これまで続いてきた論争は今後も止むことはないし、追加的な改憲への誘惑も残ったままだ。

 安倍首相は、9条への自衛隊明記は、自衛隊を合憲化するだけで他はなにも変わらない、と言っているが、簡単に見てきただけでも、合憲化されるとは言い切れないし、自衛隊の存在意味が大きく変わる可能性もあると言う他はない。

◆危険な非常事態条項

 9条ばかり取り上げられる安倍改憲、しかし自民党案には、それに劣らず危険で重大な国家緊急権条項が部分的に盛り込まれている。自民党の改憲4項目の一つで、従来から自民党や改憲派内で語られてきた国家緊急権としての非常事態条項の新設だ。

 これが組み込まれれば、国家、政府は主権者たる有権者からますます遊離し、逆に主権者たる国民を指図する存在になる。〝権力を縛る憲法〟から〝国民を縛る憲法〟に様変わりする。国民主権・民主主義の否定の第一歩になる。

 今回の自民党改憲案は、「大地震その他の異常かつ大規模な災害」に限定して法律と同じ効果を持つ「政令を発する事ができる」としている。自民党改憲草案にあった「外部からの武力攻撃」や「内乱等」は除外しているし、一見穏やかな文章になっている。が、行政府である政府に法律と同じ機能を効果を持つ「政令を制定できる」とし、実質的な立法権を付与することにしている。現行の三権分立を棚上げするもので、ますます政府の暴走に道を開くものになっている。

 今回の非常事態条項の新設であえて「戦争や内乱」を除外したのは、これもお試し改憲の類で、次の段階で条項にそれを追加して挿入すればいいだけの話になってしまう。

 そんな重要な改憲案であるにもかかわらず、年度末でしかも森友問題など逼迫する情況のなかで国会発議につなげられてはたまらない。

◆改憲封じは首相退陣で!

 改憲阻止の闘いは、長期・短期の複合的な闘いだ。長期的には、平和憲法を形骸化させた日米安保との並立体制そのものをどうつくり変えていくのか、現実に戦争を遂行できるまでに肥大化した〝防衛力〟の保持、軍事大国化してきた経緯そのものをどうやって転換していくのか、という課題だ。言葉を換えて言えば、戦争を根本的になくすための善隣友好関係づくりと軍備縮小をどう実現するのか、という課題につながるものだ。

 短期的には一党一派による改憲策動を阻止する闘いだ。国家体制の根幹でもある憲法改定は、一党一派に政変ではなく、最低限、野党第一党の同意を含む国民的合意が必要だろう。今回の安倍改憲策動は、安倍首相の戦前回帰の思い込みに執着した改憲策動であり、さらなる戦前回帰の改定を含んだ危険な野望という他はない。

 安倍首相の改憲に向けた思い込みは半端なものではないにしても、その安倍政権は、森友疑惑で政権の先行きそのものが危うくなってきた。安倍首相と右派人士の癒着と利益誘導といった話から、公文書改ざんという民主主義と三権分立の土台を侵食する事態が表沙汰になったからだ。

 現に世論調査でも、今年1月には改憲支持が41%、支持しないが42%(朝日)と拮抗していた。それが3月19日の調査では、支持が33%、支持しないが51%と逆転し、安倍首相への不信感から改憲支持が大幅に低下しているのだ。他の調査でも同じような傾向だ。森友疑惑や公文書改ざん事件で、安倍首相という行政府の長が煽る改憲の正当性が大きく失われているのだ。

 いま国会周辺などで「戦争させない・9条壊すな!総掛かり行動実行委員会」などが呼びかける抗議行動が連日続いている。こうした行動を拡げ、安倍改憲の動きをなんとしても封じ込んでいきたい。森友疑惑の徹底的な追求をつうじて、安倍政権を政権の座から引きずり下ろすこと、それが目の前の改憲を阻止する短期的な闘いの近道でもある。(廣) 案内へ戻る


 「エイジの沖縄通信」(NO49)   ・・・判決裁判支援の沖縄ツアー報告

 辺野古・高江の闘いの中で不当逮捕・長期勾留され、その後裁判闘争を続けてきた山城博治さん、稲葉博さん、添田充啓さん3人の判決裁判が3月14日(水)と聞き、仲間7名で判決裁判支援の沖縄ツアーを計画し13日(火)に出発した。

★13日(火)夕方、那覇空港に到着。みんなで暑い!暑い!

 この日は、みんなで「対馬丸記念館」(本土に疎開する子どもたちを乗せた対馬丸が米国潜水艦に撃沈され多くの子どもたちが亡くなる)を見学し、那覇市内に宿泊。

★14日(水)10時には、那覇裁判所に到着。

 29人の傍聴人抽選をめざし約300人の行列が出来る。抽選が始まりメンバー全員が外れたと思いきや、運良く1人だけ抽選に当たり傍聴券を手に入れた。その後、みんなで相談してこの傍聴券を長く裁判支援している地元グループに譲ることにした。

 12時から、裁判所前の公園で事前集会が始まる。本当に多くの人たちが集まり、山城さん、稲葉さん、添田さん3人が力強い挨拶をする。特に、添田さんは検察から厳しい求刑を受けていたので「今日はボストンバックにたくさんの下着も入れ用意してきました」と報告し、緊張感も漂う事前集会だった。その後、判決を待ちながら待機。

 13時40分頃、裁判所から弁護士さんが出てきて、判決結果を報告する。
 ・山城博治さん、懲役2年(求刑2年6月)/執行猶予3年
 ・稲葉 博さん、懲役8カ月(求刑1年)/執行猶予2年
 ・添田充啓さん、懲役1年6カ月(求刑2年)/執行猶予5年

 全員有罪となる不当判決である。裁判所は、米軍基地を巡る沖縄の歴史や現実にはまったく触れなかった。なぜ、このような抗議行動が起きたのか?という背景にも触れなかった。山城博治さんは、判決後の記者会見で「沖縄の実態を見ようとしない不当な判決だ」と声を荒げた。
 そもそもこの3人が逮捕され、拘束され、罪に問われるような犯罪を犯したのか?
 この裁判を支援してきた人たちから提起される問いがある。「本来、問われるべきは何なのか?」「裁かれるべきは誰なのか?」という問いかけだ。

 まさに、最初からこのような判決を出すための筋書き「辺野古・高江の闘いを潰すために用意された不当逮捕・長期勾留」であり、今回の不当判決と言える。

 この判決裁判に参加し判決を傍聴した「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(しんすこ)さんは次のように述べている。
 「司法が権力の暴走を止めず、補完する作業をしている。憲法の何を勉強してきたのか。法曹人として恥ずかしくないのかと思った。
 (辺野古新基地反対の)選挙結果が出ても、(国は新基地建設を)強行している。抗議行動以外に意志を表明できる場を奪った上でこの裁判がある。この裁判自体が茶番だ。

 執行猶予を付けることで基地反対運動への参加も禁じることができるとの考えではないか。やり方が巧みだ。基地反対運動への偏見・差別などのデマの補完にもなる。沖縄ヘイトする人たちに(攻撃材料となる)弾を与える役割を司法がやっている。

 沖縄の基地建設反対運動は日本社会の希望だ。彼らが頑張っているから日本の民主主義はまだやり直せるのではないかと思える。」
 夜、18時~の自治会館大ホールでの「3人の無罪を勝ちとる地裁判決報告集会」にも参加して、車で宿泊所の辺野古に向かった。

 この日はほんとに長い長い1日だった・・・

★15日(木)朝7時過ぎには、全員で辺野古ゲート前の抗議行動に参加する。

 次々に工事人車両や海兵隊車両が入ってくる。特に、凄い数の工事人車両である。中には本土の車両番号をつけた車もある。聞くところによると、本土からもかなりの工事人が雇われ働いているとの事。
 8時~のゲート前集会に参加し各団体の挨拶があり、本土から来たと言う事で私たち7名全員が挨拶をして今回の裁判支援の報告をした。
 今日は工事ゲートから工事車両は1台も入らなかった。良かった!

★16日(金)今日も朝7時過ぎから、辺野古ゲート前の抗議行動に参加。

 今日も工事車両の搬入はなかった。聞くところによると、天皇来沖の関係で機動隊がそちらの警備にいくので、17日~29日まで工事車両の搬入はないとの事。
 午前中の抗議行動を終え、午後の飛行機で無事に帰る。
 
 最後に、14日の判決について地元のマスコミ「琉球新報」と「沖縄タイムス」は次のように報道している。

 ・琉球新報→「山城議長有罪判決、問われるべきは政府だ」「那覇地裁は、弁護側が提出した国際人権法専門家の証人申請を却下し、長期勾留を批判した国連特別報告者の資料などの証拠申請も却下した。・・・日本は国連人権理事会の理事国である。国際基準と向き合わない裁判所の姿勢は異様ですらある」と。

 ・沖縄タイムス→「辺野古・高江裁判、みせしめが萎縮を生む」「裁判所にはもともと限界があり、過剰な期待をもつのは禁物だが、人権のとりでとしての司法がその役割を果たさず、行政と一体化すれば、三権分立は成り立たない。辺野古・高江裁判は、日本の民主主義を、根っこから問う裁判といっても過言できない」と。

 辛淑玉さんは「沖縄の基地建設反対運動は日本社会の希望だ」と言った。
 私たちも、「日本社会の希望のため」に安倍政権に終止符を打とう!(富田 英司) 案内へ戻る


 書評 『奨学金が日本を滅ぼす』大内裕和著(朝日新書)を読んで

●新入生と奨学金

四月といえば新入学シーズン。
 かつては、入学手続きを済ませた新入生を待っているのは、キャンパスの桜吹雪と共に「部活の勧誘」のビラ吹雪だったのではないでしょうか。

 「来たれ馬術部へ!」、「探検部は呼ぶ!」、「オーケストラは君を待つ!」、「国際交流部から世界へ!」
 ビラに目を落としながら、膨らむ夢に思いを馳せた・・・。そんな光景は、今は昔。

 現在はといえば、入学手続きを済ませた新入生が次に向うのは、「奨学金の説明会」なのです。
 三十年前なら、奨学金を借りる学生はクラスに一人か二人でした。しかし、今や学生の過半数が奨学金を借りなければ、学費も払えないし、下宿代も払えない状況なのです。

 学生の日常は、授業が終わったらバイトへ。夜間も土日もバイトに追われ、それも「名ばかり店長」を任されるなど、長時間労働のブラックバイトが横行しています。ブラックバイトから抜けられず、試験に間に合わず、単位を落として留年する事態も多発しています。

●新入社員と奨学金返済

 さてもうひとつ、四月と言えば入社シーズン。

 新入社員の関心は、もちろん初任給とその使い道。かつては「親に月々何万円か入れてます」という「親孝行」ぶりが話題でした。

 しかし、ここでも奨学金は尾を引いています。今度は、奨学金の返済が待っているからです。「親への仕送り」どころか「奨学金返済」でアップアップです。実際、僕の職場でも新規採用職員の歓迎会で聞いたら、半数以上の新人が「奨学金もらってました」と答えました。一般の労働者だけでなく、教師も弁護士も、なのだそうです。

 返済が出来ず、多重債務状態に陥る人もいます。ブラック企業から抜けられない要因ともなっています。

●「奨学金問題」はどこがおかしいか

 さて、本書は大学の教員をしている著者が、学生達がなぜ奨学金を利用せざるを得ないのか?有利子返済型の奨学金制度が、いかに若い労働者の生活を圧迫しているか?実体験を含めて告発した本です。

 以下、「はじめに」から引用しましょう。

 「第1章では、私が奨学金問題を発見したきっかけからスタートし、奨学金利用者が大幅に増加していること、2016年現在の大学生活が、私自身が過ごした30年前とは大きく変わっていることを明らかにしました。

 第2章では、どうしてそれだけ多くの人が奨学金をかりなければならなくなったのかを分析しています。学費の値上げや高卒就職の激減、親の所得低下などについて解説しています。

 第3章では、奨学金返済が困難となっている実態と、回収強化がもたらしている問題点など、奨学金を「返せない」問題について考察しました。

 第4章では、奨学金を「返す」ことによって引き起こされる問題を検討しました。奨学金返済の重さは、結婚や出産、子育てなどを困難にしています。」(「はじめに」より)

 以下、第5章では奨学金制度の歴史、第6章では著者が学生と共に始めた奨学金改善運動、第7章では貸与型奨学金制度の改善案、第8章では社会的背景の考察と給付型奨学金制度の必要性、と続きます。

●社会運動に参加できない背景

 僕がこの本を読み始めたのは、著者の大内裕和氏の講演を聞いたのがきっかけでした。

 それを通じて、ひとつ気づいたことがあります。

 様々な社会運動の場面で、よく「参加してくるのは、いつも団塊の世代ばかりだなあ」、「もっと若者が参加しやすい運動スタイルにしないとねえ」と言う意見が聞かれます。もちろん僕も同感です。

 しかし、「運動のスタイル」の問題だけなのでしょうか?「講演と討論の集会」を「トークライブ」と言い換えたり、「デモ」を「パレード」に衣替えしたり、「シュプレヒコール」をヒップホップ調のニューバージョンにしたりしても、やっぱり集まった面々を見ると、「昔はべ平連」、「元は全共闘」だったり、ではないでしょうか。

 「運動のスタイル」を変えても、学生が奨学金を借りながら、夜も土日もバイトと試験に追われ、集会に誘われても、とてもじゃないが参加する時間を作れない。そればかりか会場へ行くバス代、電車代も捻出するのが困難な状況が変わらない限り、社会運動への参加なんて、時間的空間的にミスマッチということなのです。

●ゼミのテーマがきっかけに

 著者がゼミのテーマに奨学金問題を取り上げて、はじめて、学生達が自分達の切実な問題である奨学金制度改善運動に参加するようになった現実に注目する必要があるます。

 となると、大学のゼミで社会的問題を提起できる立場にある教員と、どのようなコネクションを作れるかが、若者を社会運動にアクセスできるようサポートするカギでもあるということではないでしょうか?
実際、奨学金問題に限らず、様々な社会問題のワークショップに参加してくる若者に聞くと、「ゼミの先生に勧められて」という返事をよく聞きます。「社会運動に参加している」という感覚ではなく、自分の専門と関連させて「社会的視野を広げに来ている」という感覚ですが、それでもいいのではないでしょうか?

 「奨学金問題」は若者を取り巻く格差・貧困・ブラック企業の問題であり、また社会運動へのアクセスを阻む要因をいかに取り除くかという問題でもあるように思います。(松本誠也) 案内へ戻る


 コラムの窓・・・国民という言葉への違和感

 2月16日、佐川は辞めろのデモが神戸でもありました。神戸税務署に差しかかったとき、ひときわ大きな抗議の声があがりました。その後の展開のなかで、めでたく佐川が辞めて、今は麻生は辞めろとか安倍政権総辞職へと煮詰まっています。何とか自公連立政権の瓦解まで進まないものかと期待しています。

 ところで、その折のコールがいまも引っかかっています。曰く「国民の・・・」、これって税金は外国籍の方も払っているのだから、まずいのではないでしょうか。同じように「日本人・・・」という言い方も、そもそもに日本人ってなんだという疑問もあるのですが、外国人を阻害しています。共に手を取り合って進んでいるのに、仲間外れを生んでいるのではないでしょうか。

 さて、ここでネトウヨの山田賢司・自民党衆院議員の話題ですが、彼は兵庫7区、我が西宮から国会議員になってしまった困った人物です。その彼が2月23日の予算委員会でとんでもない質問をしていますので、少し紹介します。

山田:日本にはサンフランシスコ講和条約で日本国籍を喪失した韓国籍・朝鮮籍と呼ばれる方々がいます。このうち大韓民国の国籍を保持する方は韓国籍として、それ以外の方はどこの国民に当たるのか。

法務省官房審議官:朝鮮半島出身者と台湾出身者になります。出入国管理で使う用語としての「朝鮮」は、朝鮮半島出身者のことで、国籍を意味するものではない。

山田:彼らは北朝鮮を「祖国」と言い、北朝鮮も「同胞」と言っている。北朝鮮でないなら、無国籍なのか。
法務省官房審議官:日本国として北朝鮮を国と認めていないことから、無国籍です。

山田:北朝鮮を国として認めていないから北朝鮮国民がいないってことになると、北朝鮮国民に対しる核開発関連の教育をするなという安保決議がまったく意味がなくなる。

 さらに山田議員は外務省に対して「朝鮮大学校で物理工学や情報工学の授業を行なっていることは、決議違反ではないか」「わが国国内において、北朝鮮国籍者に対して労働許可を提供しないことをどのように担保しているのか」「朝鮮籍の人が北朝鮮籍者かどうかわからないということであればこの制裁を履行徹底するっていうことは出来ないんじゃないか」などと詰め寄っています。

 山田議員はさらに、拉致被害者救出のために自衛隊を派遣(派兵?)できないかなどと、無理難題の質問をしています。彼は戦争でもしたいのか、それとも朝鮮民主主義人民共和国をよほど侮っているのか、その尊大な言いぐさに呆れます。

 この国には日本国籍のあるなしも含めて、〝日本人〟以外の多くの方々が生活しています。それぞれの来歴も様々で、例えば「人権」の意味さえ違っています。憲法さえ「すべて日本国民は・・・」とされ、あたかも外国人には人権はないかのごとく扱われています。

 デモでも集会でも、そこに集まっている人々は日本人だけではないし、国民だけではありません。そこでは誰もが自立した個人として尊重されるべきなのに、現実は日本人的無頓着が何の疑問もなく通用しています。この違和感はいつになったら解消するのだろう。 (晴)


 清水LNG火力発電所建設中止!!

 前号(580号)で清水LNG火力発電所建設反対運動の報告をしたが、私たちも思いも寄らないことが突然に起こった。3月24日の静岡新聞の一面トップで「清水LNG火力発電所建設計画をJXTGエネルギーは計画の正式中止を県や市などに伝える意向と」と報じた。

それを見た仲間が早朝に「おめでとう」と知らせてくれたが何がおめでとうなのかわからないほどの出来事だった。というのは、前号でも報告したが環境アセスメントの準備書がでれば、一定の手順で審議され経産省に送られれば認可されてしまうのだから準備書がでたらどうするかと危惧し、さらに私たちが苦労して集めた署名を不採択にした市議会の「清水都心まちづくり特別委員会」が、JXTGエネルギーに対し清水都心のまちづくりへの参画を要請することが20日の新聞に報じられ市議会が動き出したこともわかり危機感をつのらせていたばかりだったので、24日の計画中止はまさに青天の霹靂だった。 

 次の日25日は、以前より計画されていたデモ行進で、仲間たちと会うと「びっくりしたね」「まだ信じられない」「まさかこんな日が来るとは夢のよう」「よかったね」と言葉を交わすと自然に笑顔になり、リレートークでは、「やったぜ!」「本当に嬉しい」「人生の中で一番嬉しいことだ」「みんなで勝ち取った」「3年間のことを走馬灯のように思い出す」「やはり清水の住民運動は負けない」等と喜び合った。その中で今回の計画中止を報じたのは静岡新聞だけで他のマスコミは知らなかった事から「疑い深いので正式発表されないと喜べないな」と心配する仲間もいたが、「JXTGエネルギーがこの報道は違うという抗議もないから大丈夫だ」「今週中には正式発表があるだろう」と言う声もあり正式発表を心待ちにすることになった。また、「これからの清水のまちづくりに市民も参加していきたい」「100億円近い税金をかけて、清水区の新庁舎を津波浸水区域に造っていいものか」等の声もありこれからの課題や問題もあがった。

 そして、暖かで桜も咲くなか「ありがとう」のデモ行進をした。今までのデモ行進とは違い仲間たちは心弾む思いで元気に歩くと、道行く人たちが今までになく温かいまなざしで「よかったですね」と声をかけてくれる人もいた。

 帰り道仲間たちと、「勝利報告集会をやりたいね」「祝賀会もいいね」「活動を残すように本にしたいね」等と話が盛り上がり計画中止の喜びをかみしめた。【3月26日記】(美)

追記 3月27日JXTGエネルギーは火力発電建設計画を白紙撤回すると正式発表した。 案内へ戻る


 なんでも紹介  スカイカー時代の到来と垂直離着陸機(VTOL機、ヴィトール機)

未来の自動車スカイカーの登場。

 今日、自動車は動力部に電気モーターを使い自動運転が行われるような時代に入りつつあるが、空飛ぶ車「PALーVリバティ」がジュネーブモーターショーで公開され市販化される。

オランダのパルヴィインターナショナルの空飛ぶ車「PALーVリバティ」は2004年より開発が始まった陸空両用の乗り物であり、ヘリコプターに変形する機構を備えて、2012年にプロトタイプによる初飛行に成功、ドライブモードとフライトモードの2つが存在し、ドライブモード起動時はローターブレードは折りたたまれ、ルーフに格納され、地上走行時の最高速度は160km/hで、フライトモード起動時は最高高度が3500m、最高速度は180km/h、そして最大飛行距離は500kmとなっています。

 2017年2月より一部限定で市販モデル「PALーVリバティ」の受注を開始され、価格はフライトレッスンなどのオプションを含む90台限定の「パイオニアエディション」が59万9000ドル(約6500万円)、廉価版の「スポーツエディション」が39万9000ドル(約4300万円)とまだまだ高額ですが、量産車としては世界初の空飛ぶスカイカーです。

 自動車もいよいよ空飛ぶ時代に入ってきたと言うべきか?!。

垂直離着陸機

 空飛ぶ車「PALーVリバティ」はプロペラをつけてヘリコプターのように垂直離着するが、プロペラやジェット推進装置をつけ垂直離着し空を飛ぶ航空機類を垂直離着機と言えるが、垂直に離着する航空機には今話題になっているオスプレイや3つ以上のローターを搭載した回転翼機の「マルチローターヘリコプター」「マルチローター」のドローンなどと大気圏外へのミサイルロケット(着陸は実験段階だから含まれないかも)など垂直離着できる航空飛行機類総てが含まれるが、専門的にはミサイル・ロケットやヘリコプター類との分別として垂直離着陸機(VTOL機、Vertical Take-Off and Landing、ブイトール機、ヴィトール機)があり、さらに、垂直離着陸機(VTOL機)に類似するものとして、STOVL機(Short take-off and Vertical Landing aircraft、短距離離陸垂直着陸機)が分類されている。

 垂直離着陸機(VTOL機、ヴィトール機)はヘリコプターのように垂直に離着陸できる航空機であるが、ヘリコプターと区別されるのは、ヘリコプターの利点(空中でのホバリングが可能である。そのため、離着陸場所を比較的自由に選べるなどの利点がある。)欠点(回転翼端が音速を超えると衝撃波が発生し揚力を失うため、速度の上限が370km/h前後に存在し固定翼機ほどの高速性はない。また前進効率は固定翼機に劣るため、移動距離あたりの燃費効率が劣る。)を考慮し、固定翼機の、離着陸の際に十分な距離を持つ滑走路(ただし必要距離は機体によって大きく異なる)が必要等の運用制限を補う為、距離の長い滑走路が存在しない場所への高速飛行という要求を満たすために、固定翼機の高速性とヘリコプターの場所を選ばない離着陸性を兼ね備えた、垂直離着陸機(VTOL機)が開発された。したがって回転翼機であるヘリコプターは慣例的に垂直離着陸機(VTOL機)には含めづ、離着時にはヘリコプターで飛行時に翼を使うオスプレイは(プロペラまたはローターの角度を飛行中に変えられるようになっているものを特にティルトローターと言い、ティルトローターを備えた航空機をティルトローター機オスプレイは)垂直離着陸機(VTOL機)として区別されている。

垂直離着陸機の長所と短所

長所としては、
●他の固定翼機と違って滑走路を必要としない、もしくは短距離の滑走路で済むため、狭い場所や不整地においても離着陸できる
●滑走路を必要としない場合、滑走路が破壊されるなどの状況下でも離着陸が可能
●滑走路を使用して離陸する場合、燃料の節約でき離陸重量の制限も緩和される
●ヘリコプターと比べて高速度飛行が可能
●ヘリコプターと比べて航続距離が長い

短所としては、
●垂直離陸時に大量の燃料を使用してしまう。かつ垂直離陸のために重量の制限もあるため、航続距離や搭載量で固定翼機に大きく劣る。そのため任務目的によっては水平離陸もしくは短距離離陸で運用し、垂直着陸しか行わない場合が多い
●垂直離着陸時に非常に高温のエンジン排気、ヘリコプター以上の強烈な風圧が地面に対し直に噴きつける
●離着陸地点には高温・風圧を運用を前提とした設計・改造が必要となる場合がある
●通常のヘリポートや飛行甲板では高温に耐え切れず溶解する場合がある(例として護衛艦「いずも」にF35Bを搭載するために発着甲板を耐熱化する必要がある)
●野外運用の場合、高温のエンジン排気により枯れ草の発火や、巻き上げた砂塵をエンジンが吸い込む事による不具合のリスクがある【高温や風圧の問題は、リニア装置のような磁力を使った(プラスとマイナスは引きつけ合うが同極の場合反発する推進)装置が開発されれば磁場が及ぼす弊害はあるがこの問題は解決される】
●同等の固定翼機と比較して、最高速度・加速性能に劣る。また、水平離陸で運用する場合においても、航続距離や搭載量に劣る
●固定翼機・ ヘリコプターに比べ、構造的に複雑になり、製造コスト、運用コストが高くなる
●垂直離着陸という特異な性質上、通常のパイロットよりもさらに育成期間・育成コストが掛かる

 階級社会における最先端技術の応用と未来社会への影響

 垂直離着機の最先端技術は今開発と研究途上で、オスプレイに見られるように故障や事故が多発しているのが現状ではあるが、その技術は搾取社会の資本主義的社会にあっては階級対立や国家間の軍事的強化にまず利用され優先されることが常で、軍事力強化と戦術的応用からミサイル・ロケットの配備・オスプレイ・ハリヤー・F35B等々実戦配備段階は進んでおり、航空基地の分散化と戦術の変更が進んでいる。

 米軍強襲揚陸艦「ワスプ」はF35Bやオスプレイを搭載し、中東にも派遣されたが、日本の制海艦構想(空母の小型化)では、「ワスプ」をまねて、大型空母の代替として、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)「いずも」にF35Bを搭載する「研究」も進んでおり、「専守防衛を超える」空母化が計られるなど、垂直離着機を応用した、攻撃と防御の為の戦術的応用と航空基地の縮小化と分散化が行われ、研究開発が進められている。

 将来、滑走路をそなえた大型の航空母艦に替わって、垂直離着機を搭載した潜水機能を備えた隠密輸送護衛艦が現れるかもしれないが、垂直離着機の可能性を応用した戦術的対応はかなり変わってくることだろう!。

 軍事的戦術に変化をもたらし始めている垂直離着機の開発・研究と実現化は生活面でも大きな変化をもたらすだろう。

 「マルチローター」のドローンを利用し小荷物配達実験を行うなど実験が行われているが、将来的には荷物や人間を乗せたドローン型のスカイカーが飛び交うかもしれないが、垂直離着機による空間の三次元的利用が進めば、広大な飛行場はもとより、道路の概念やその利用も見直され、土地利用も変わってくることだろう!。(真野)


 色鉛筆-冤罪を許さない仲間たちが主役 映画「獄友」上映始まる!

シリーズ第3弾「獄友」を紹介するビラに監督の熱い想いが表れています。

 「人生のほとんどを獄中で過ごした、〝殺人犯〟と呼ばれた男たちがいる。彼らは言う『〝不運〟だったけど、〝不幸〟ではない、我が人生に悔いはなし』と。」

 彼らと7年間の付き合いになる監督の金聖雄氏は、獄中で奪われた時間の中で、彼らは何を失い、何を得たのかを問いかけます。社会から閉ざされ自由を奪われた監獄であっても、彼らにとっては生活の場であり、学びの場であり、仕事場であった・・・。まさに青春を過ごした場所だったのではないかと。

 私は、3月9日、先行上映で早々と「獄友」を観てきました。当日は、上映前に監督と布川事件で再審無罪を勝ち取った桜井昌二さんの挨拶がありました。桜井さんの持ち前の明るさは、獄友仲間を癒しお互いを支え合う、大切な力になっていると思います。獄中生活は不幸ではなかった、むしろ良い経験をしたと笑顔で語る桜井さんの度量の大きさに、いつも感心させられる私がいます。

 映画では、獄中生活を思い出し、野球や将棋、仕事場のことなどを語り合うシーンや桜井さんが千葉刑務所の開放日に訪問し、刑務官と懐かしく話す場面などが映し出されます。石川一雄さんは、以前から走ることを日常化されていましたが、やや日焼けされた袴田巌さんがスポーツ着で歩くような速さで、走行に挑戦される姿にはびっくりしました。やはり、ボクシングの経験が体を動かすことを欲求しているのか?
 これは、再審開始請求にむけての意気込みと捉えるべきかもしれません。

 3月中旬に神戸で、兵庫弁護士会館にて「死刑制度」を考える集いがあり、「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」の映画上映がありました。1961年3月に事件は起こり、その後冤罪を訴え続けた奥西勝さんが第7次再審請求まで粘り強く独房で闘う姿は、獄友の皆さんとだぶって目に入ってきます。そして86歳の奥西勝さんを支え続ける弁護士たちの努力は、報われることなく映画は終わります。一審は無罪を勝ち取っているのに、少なくとも50人以上の裁判官が再審請求棄却の判断を下した司法の罪は、許せるものでありません。

 再審請求は10次まで続き奥西勝さんは89歳まで生き、八王子刑務所で死刑囚の汚名を着たまま亡くなりました。最近の再審請求の棄却は、仙台高裁での北陵クリニックの筋弛緩剤事件で、無期懲役が確定した守大助さん。もう一人は、札幌地裁で殺人と死体遺棄で懲役16年が確定した恵庭事件の大越美奈子さん。無実を訴える再審請求者の当然の権利を、裁判官は真摯な態度で新証拠に向い、自分自身の判断で決定すべきだと思います。(恵)

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