ワーカーズ590号 (2019/1/1)
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安倍政治打倒の闘いはいよいよ正念場
労働者民衆の対抗運動で行き詰まり深める資本の支配を乗り越えよう
米国企業を中心とする世界の巨大資本は、資本の利潤率の低下の趨勢に悩まされてきたが、鳴り物入りのIT技術革命でも経済の金融化でもそれを打ち払うことは出来なかった。そこに登場したのがトランプであり、彼はこれが資本主義にとって最後の処方箋だとして、米国第一を唱え、貿易戦争、経済戦争を発動することで、利益の排他的な囲い込みに打って出たのだ。
中国はかなり以前から、アフリカや中南米などで独自の勢力圏づくりを進めていたが、今では全世界を股にかけた一帯一路構想、世界最強国の前提となる中国製造2025を打ち出すことで、米国の支配層に一層の危機感を抱かせている。したがって、今や米中の戦いは、単なる経済戦争の域を超えて、最先端の科学技術力、情報技術力、それを応用した軍事能力での優位をかけた総力戦の様相を呈し始めている。
米国は今や経済でも政治でも傷だらけ、老いて衰退しつつある大国であることは誰の目にも明らかだが、しかしこの国はトランプの下で世界中に災厄をまき散らしながら、最後の悪あがきに必死だ。ロシアも米国に劣らぬ老大国だが、プーチンの下でまだ超大国の叶わぬ夢を追い求めている。こうした中で、中国はまだのりしろを残した新興大国として、さらなる隆盛を求め気を吐いている。そしてこうした諸大国の動きを見ながら、欧州も、中東も世界の各地も、これまでの位置に居続けることが出来なくなっている。
こうした光景の中で、日本の支配層の目は何を見ているか。40年も前のジャパン・アズ・ナンバーワンの残影、それどころか80年も100年も前のアジアの盟主への郷愁に取り憑かれたような首相を戴いて、それと一緒にこの激動の世界に漂おうとしている。かすかに現実感覚を取り戻して一帯一路に秋波を送ったりはするが、米国がファーウェイ排除を本格化すると、政権ともども直ぐにそれに追随をする。プーチンからは、支配層としての主体性も矜恃も持たないと見透かされて次々と変化球を投げつけられるが、まるで手が出ない。
こんな安倍政権や日本の資本の勢力も、労働者民衆に対する搾取強化、苛斂誅求、抗議の声に対する強権抑圧にだけは一貫した姿勢で励んできた。秘密保護法や共謀罪や戦争法、派遣労働拡大、労基法改悪=過労死促進法、入管難民法や水道法の改悪強行。そして消費税の10%への増税と憲法の改悪の狙い等々。
もちろん、世界の各国の支配層も同じようなものだ。だから、米国ではサンダースやコルテスの闘いが生じた。韓国ではろうそく革命が起きた。そしていまフランスから欧州にかけては黄色いベスト運動が広がりつつある。そして私たち日本の民衆も、彼らと同じ世界に生きている。私たちは、私たちが置かれた立場にふさわしい行動を示さなければならないし、示すことが出来るのだという事を、実証して見せなければならない。
(阿部治正)
安倍政権を退陣に追い込もう!――陰りが見えた安倍政権――
第二次安倍政権が発足してからちょうど6年が経過した。
〝一強政治〟を構築した安倍首相は自民党の総裁選で三選を果たし、戦後最長政権も視野に入ったという。が、今年は統一地方選と参院選挙の年。前途に暗雲が漂い始めた安倍首相にとっても正念場だ。
私たちとしては、暴走を続ける安倍政治をこれ以上続けさせるわけにはいかない。各方面での闘いを拡げ、なんとしても安倍政権を退陣に追い込みたい。
◆紙切れだった〝看板政策〟
安倍首相は、第一次政権発足時から掲げてきた戦前回帰をめざす〝戦後体制からの脱却〟という旗印の下、いくつもの攻防ラインを越えてきた。集団的自衛権、特定機密法、安保法、共謀罪などだ。一方で、政権発足以降、内閣改造ごとに掲げられた看板政策は、ほとんど前進していない。
安倍首相が掲げた各内閣発足時のネーミングは次のようなものだった。
――危機突破内閣→経済再生(デフレ脱却)→アベノミクス(12年)、成長戦略→実行実現内閣(14年)一億総活躍社会→未来へ挑戦する内閣――アベノミクス第二のステージ(15年)、働き方改革→未来チャレンジ内閣(16年)、仕事人内閣→森友・加計問題の反省(17年)、社会保障改革→全員野球内閣(18年)。
これらの看板政策でどういう成果があったのか、については立ち入らない。が、その一つ一つの看板と結果を記憶している人はほどんといないと思う。表紙や看板だけ取り替えることで世論をつなぎ止めようとしてきただけだからだ。
それを象徴しているのが、アベノミクスの綻びだ。
安倍首相は、第二次政権発足後、異次元の金融緩和、機動的な財政出動、経済の成長戦略という、いわゆる〝三本の矢〟を掲げ、15年には〝新三本の矢〟を掲げてきた。しかし、当初から目標とした安定した2%の物価上昇というインフレ・ターゲットは、6回にわたる延期の後、その目標さえ棚上げしてしまった。
それに、年明けにも戦後最長となる好景気局面が続いているとされる中、ずっと異次元金融緩和を続け、仮に景気後退局面になっても、何も手も打てない状況になっている。米国や欧州が、金融緩和の出口戦略を進めているのと対照的だ。
成長戦略も、原発輸出プロジェクトの全滅に象徴されるようにほとんど成果は得られていない。GDPの成長率でも賃金の上昇率でも、先進国では最低の位置から抜け出せない。
アベノミクスの賞味期限は切れている、という以外にない。
◆閉塞情況は内外政策でも
失敗はなにも看板政策だけではない。財政赤字についても同じだ。
安倍政権も、プライマリー・バランス(基礎的財政収支)の黒字化を20年度に達成するという目標を掲げていた。が、昨年6月の経済財政諮問会議で、あっさりと5年の先送りを決めてしまった。それも年間成長率を3%と、近年にはない高成長を前提としたもので、財政再建は空約束でしかない。
安倍首相による〝官制春闘〟も単なるパフォーマンスで、効果はなかった。
安倍首相は、経済の好循環を達成するためと称し、昨年まで5年にわたる官制春闘を演じてきた。昨年は経団連に3%以上の賃上げ数値目標まで要請してきた。が、実際は大手企業の多くが3%に届かず、賃上げは低迷しているのが実情だ。
安倍首相が力を入れてきた外交政策でも、成果は得られていない。
まず、朝鮮半島危機。トランプと金正恩の“劇的”な米朝首脳会談で半島危機は一転、米朝関係正常化へと動き出した。が、北朝鮮の脅威を政権への求心力として利用してきた安倍政権、ただ制裁強化を叫ぶだけ、なんの手を打ってこなかったことで外野席に追いやられている。
拉致事件も同じだ。圧力一辺倒で、解決の見通しさえ持てないし、正常化の後に浮上する北朝鮮の経済再建のサイフとしての役割以外は、当の金正恩にも相手にされない。
北方領土交渉も同じだ。
プーチンの「年内の平和条約締結」というくせ玉を受けて、「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」というこれまでの「四島返還」路線から、事実上「二島返還」で手を打つ態度に転換した。私たちとしては、北方四島の日ロ共同管理・共同利用をベターな選択だとしてきたが、国境線の画定という妥協的選択もアリだとは思う。が、それは両国の当該住民の今後の暮らしの改善や善隣友好関係づくりを目的とすべきであって、自身の政治的功績、政治的遺産づくりを意図しているとすれば、将来に惨禍を残すだけだ。功を焦ってプーチンの土俵に乗るだけでは、土俵上で弄ばれて〝うっちゃり〟を喰らうのが関の山だろう。
TPPも同じだ。
当初は、日米を中核として対中国封じ込めという冷戦志向を土台とした経済圏構築をめざした安倍首相。意に反して米国のトランプ大統領が離脱してしまった。目算が狂った安倍首相は、日米の二国間交渉ではTAG(日米物品貿易協定)とかいう国内向けの解釈で乗りきろうとしているが、成算があるわけでもない。
◆拡がる暗雲
そもそも、安倍政権は政権発足時から幸運に見舞われていた。
第二次安倍政権が発足した12年暮れから13年初頭、当時はリーマンショックによる景気の落ち込みからの回復過程にあり、税収も10年から増加傾向となって財政基盤が強化されつつあった時期だった。国際環境としても、それまで深刻化していた欧州の政府債務危機は、沈静化に向かっていた。
為替についても、11年から12年にかけて1ドル=70円台と円高が続いたが、第2次安倍政権が発足した12年終盤から円安が進み、最近3~4年は110円台~120円台を推移している。円安は、多国籍企業や輸出産業にとっては追い風となり、また、製造業の国内回帰の追い風となっている。
株価をみれば、08年のリーマンショックもあって09年から12年まで7000円台から10000万円の間で低迷していた。が、リーマンショックの混乱をくぐり抜け、た安倍政権発足の直前から上昇基調に転じた。雇用破壊や賃金抑制などのリストラの結果、企業利益が膨らんできたからだ。
安倍政権は、低迷していた世界経済・国内経済が回復へと転換しつつあった、まさにその時に誕生した政権だった。幸運という以外にない。その幸運が、今反転し始めたのだ。
欧州から拡がったナシュナリズムは、米国でのトランプ政権の一国主義・自国優先主義で、輸出産業や多国籍企業は逆風に晒されている。安倍首相のアベノミクスやTPPについては、すでに触れた。
そのアベノミクスの失速をカバーするために招致した20年オリンピックや25年大阪万博なども、イベント頼りの単発の〝宴〟でしかない。負の遺産だけが残るという、〝宴の後のツケ〟が待っているだけだろう。
さらに安倍首相は、政権への求心力維持と、安倍政治の本命である改憲への野望をつなぐために、今年夏の衆参同時選挙も狙っている。そこで勝利すれば、衆参での3分の2の議席を手にしたまま、改憲発議の期間がさらに3年確保できるからだ。
その解散総選挙の大義名分は、消費増税の三度目の先送りか、あるいは北方領土交渉の妥結に置いている節がある。消費増税については、新年度予算などで増税対策などを盛り込んでいるが、まだ最終的な決定にはなっていない。リーマンショック級の経済危機が無ければ、という、留保付のものだ。状況次第で、三度目の延期の余地も残している。
北方領土については、この1月には再度ロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳外交で北方領土返還に道筋をつけようとしている。この領土交渉の成果を解散・同時選挙の大義名分にすることを狙っているわけだ。
そんな安倍首相の思惑を許してはならない。
◆反転攻勢に転じよう!
今年こそ、安倍政権に対する反転攻勢の年だ。フランスではガソリン価格の引き上げに端を発した大衆デモで、マクロン政権の富裕層優先政治への反撥が拡がっている。沖縄でも、安倍政権の露骨な世論無視の辺野古基地建設への抵抗が続いている。こうした政権への抵抗や反転攻勢を日本、あるいは本土でも拡げていく必要がある。
その安倍政権。第二次政権発足後も繰り返される〝安倍カラー〟の政策では相次いで強行採決を連発してきた。その姿は〝安倍一強政治〟として語られているが、安倍政権の暴走は、今では行政権による専制政治ともいえる段階に到達している。特命大臣9人を抱える内閣府の肥大化、政務・事務の首相補佐官など官邸官僚の権限拡大と首相官邸への権力集中。次年度の国家予算も100兆円を超え、GDPの2割になっている。これら内閣機能は格段に強化された一方、議会は行政権力の承認装置・下請け機関と成り下がっている。行政権力の肥大化による議会制民主主義の形骸化がかつて無く進行しているのだ。
なぜそうなったのだろうか。
まず、小選挙区制による与党の強大化、300億円を超える政党交付金、内閣人事局による官僚統制や、日本版CIAといわれる内閣情報調査室(スタッフ400人)による情報独占、領収書がいらない10数億円の官房機密費、それらをすべて統括する内閣総理大臣=与党総裁の強大な権力なのだ。
こうした情況と闘うためには、目先の闘いと長期的な闘いの統合という、両面作戦が重要になる。
目先の闘いでは、沖縄基地・軍拡・日米安保をめぐる攻防、そして改憲阻止の闘いや参院選。長期的闘いでは、現体制へのオルタナティブとしてのアソシエーション革命を土台とする協同組合型社会の建設だ。
私たちとしても、いまだリアルで説得力ある対抗戦略を打ち出せていないのも確かだ。その反省に立ち、こうした二正面作戦を推し進めながら、今年の政治決戦での勝利に少しでも貢献していきたい。(廣)
外国人労働者・生活者に、今こそ包括的な移民政策を!
●はじめに
12月7日、安倍政権はわずか一ヶ月の審議で「入管法改正案」を強引に可決成立させました。そして4月の法施行へ向けて「政省令」作りに着手しています。闘いは法務省や厚労省など各省庁に対する交渉や要請行動という、新たな段階を迎えたと言えます。そこで「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」が発表した「声明」(「今こそ、包括的な移民政策を!」10月25日付)を紹介しつつ、今後の具体的な課題について考えてみたいと思います。(以下、小見出は引用者による)
●「外国人材」は労働力商品?
声明では「外国人材」という用語は「労働力を『商品』として捉え、その有用性のみを『活用』しようとする」安倍政権の姿勢の表れと、強く批判します。「労働者・生活者としての権利を保障し、同じ社会で共に生きる『人間』として迎え入れるという大前提のもと、『外国人材』という用語の使用はやめるべき」と要求しています。
●家族帯同の権利を!
新たな在留資格は、「特定1号」(相当程度の知識又は経験を要する業務に従事)、「特定2号」(熟練した技能を要する業務に従事)とされますが、声明では「前者の外国人労働者に対しては、家族の帯同が認められていない。最長5年間、家族が離れ離れになる可能性があることは人道的に極めて問題」と、見直しを強く求めています。
●技能実習制度の廃止を!
また「特定1号」資格へは、現在の技能実習制度で「技能実習2号」を修了したものも移行できるとしています。しかし「途上国への技術移転を本来の目的としながら、実際には人手不足対策に利用され様々な人権侵害を引き起こしてきた」ことを批判し「技能実習制度は、ただちに廃止されるべき」と声明は断じています。
●雇用の調整弁は認められない!
雇用形態について「分野の特性に応じて派遣形態も可能」について「外国人労働者の就労の不安定さの原因にもなっている」と指摘し、声明では「直接雇用に限るべき」と要求しています。また人手不足の状況の変化等に応じて「受入れ停止・中止の措置を講じる」ことも「雇用の調整弁として利用することを容認する」と見直しを求めています。
●国や自治体の公的責任を!
「生活のための日本語習得」など様々な「支援」について「受入れ機関」や「登録支援機関」に担わせようとしていますが、これは技能実習制度における企業や監理団体に類似しており「ブローカーの介在」の余地があります。「支援」は「国や自治体など公的機関が責任をもって行うべきであり、そのためには必要な予算措置を」要求しています。
●悪質な紹介業者の排除を
「保証金等の徴収がないことを受入れの基準とする等の防止策を講ずる」としていますが、技能実習制度の経験から「民間の送出し機関に頼っていては、悪質な紹介業者を実質的に排除することは不可能」と指摘し、「技能実習生や留学生の送出しと切り離し、公的な送出し機関と国レベルで契約する」よう要求しています。
●法務省の「司令塔」は問題!
「法務省が司令塔的役割を果たす」(骨太方針)との方針で、法務省の外局として「出入国在留管理庁」が設置され「管理強化が懸念」されます。声明は「『管理』より『支援』や『共生』が優先されるべき」で「司令塔的役割は、既存の官庁においては『内閣府』が」「それが難しい場合は、専門的省庁が別途設置されるべき」と提言しています。
●包括的な「移民基本法」を!
これら具体的な問題点を指摘した上で、最後に声明は「外国人労働者の『受入れ』とは『人間』の『受入れ』である。移住者とその家族をはじめ日本社会に生きるすべての人々が対等な立場で社会に参加し、主体的に議論することで、まっとうな移民政策を確立していかなければならない。」とし、これまで起きた人権問題、労働問題を教訓とし「よりよい他民族・多文化共生社会に向けた、包括的な『移民基本法』と実質的な差別解消を担保する『差別禁止法』を制定することを改めて提言する。」としめくくっています。
私たちは、外国人労働者・生活者を支援する人々が、様々な議論を経て発表した、中身の濃いこの「声明」を尊重し共有し、さらに発展させる立場で、共に闘ってゆくことが求められていると思います。(松本誠也)
大詰めの英国EU離脱が語るもの 問題は諸国民・民族の自治を前提に欧州統合を目指すことだ
メイ首相とEUがまとめ上げた、英国のEU離脱案が、英国議会で難航し、いわゆる「合意なき離脱」「ハードブレグジット」という最悪のシナリオになりそうである。当然、欧州の経済は動揺しつつある。下記参照すれぱわかるようにEU大乱の様相だ。
★英国株、今世紀の上昇すべて吐き出す-EU離脱国民投票以来の大幅安(ブルームバーグ)
★迫る「リーマン以上」EU離脱案、英で否決の公算強まる(朝日デジタル)
英国の離脱派が一時期であれ、勢力を持った理由はよく知られているように「難民・移民問題」であった。同時にEU官僚による統治ではなく、「英国は英国の議会が決定権を持つべき・・」という一種のナショナリズムの高揚があった。こうした熱情が冷めつつある今離脱が大詰めだ。
◆メイ首相の言い分は将来の楽観的見通
以下がメイ首相による「離脱案」である。
今回の離脱合意の実施を強く求めるメイ首相は記者会見で、英国にとって譲歩も含まれるが、「英国の明るい未来を解き放つ良い合意内容」だと強調した。メイ首相は記者会見でさらに、この離脱合意によって以下の状態が確保されると述べた。
①EU域内の自由移動は「完全に決定的に」終わる
②英国の憲政上の一体性が守られる
③「民主的に選ばれた政治家がこの国の法律を作り、英国の裁判所がその履行を確保する」状態に戻る
④英領ジブラルタルの扱いについて最後までスペインと交渉が続いたが、これについてもジブラルタルが「英国の家族」から引き離されることはないと説明した。(「英国とEU、離脱条件で正式合意 「最善で唯一可能な合意」」BBC)・・
これなら、国内離脱派を完璧に説得できるはずだが、EU残留派ばかりではなく、離脱派もかなりの反発があるという。メイ首相案は、議会内の孤立が深まっている。
英国のEU離脱案は六百ページにおよぶ膨大なものだが、BBCがそれを数ページに要約(日本語版)したものがあり、それを読んでみた。
【検証】ブレグジット合意案 585ページの中身を検証
これを読むと、メイ首相の言い分が一面的かあるいは将来の楽観的見通しを含めたものにすぎないことがわかってくる。
一読して感じるのは、この案で行けば確かに、互いの市民の持つ権利関係や投資・経済関係には大きな問題が生じにくいといえるだろう。ソフトブレグジットと呼ばれるゆえんだ。しかし、他方ではこの移行期間をふくめて、負担する英国の義務(いわゆる手切れ金)は金銭も含めて小さくはない。負担金、分担金からの即座の解放はない、他方では、英国はEUに持っていた発言権や権利をすべて失う。離脱派が失望するのはまずこの辺りだろ。誰が見てもこの離脱案は英国民にとって「最悪ではないが・・メリットも少ない」「こんな中途半端なら、そもそも離脱を再検討すべきではないか」と思わせるものだ。
◆北アイルランドのバックストップ条項
しかし、最大の問題は「北アイルランドのバックストップ条項」である。
この北アイルランドの問題は、一連の離脱交渉経過に突き刺さった槍のようなものである。あるいはトロイの木馬のようなものだ。これは実際問題として、英国のEU関税同盟からの離脱を阻止するものだからである。安倍首相がメイ首相に「EU離脱後はTPP加盟を歓迎・・」と語ってニュースになったが、これらもEUの許可なくしてはできないことになる。つまり、経済・通商権は英国には単純には戻らない可能性がある。
日本人にはわかりにくいはなしだが。北アイルランド紛争が和平に至った理由の根底には、アイルランドも英国も双方がEU加盟国であり、国境がなく(問題にもならず)それ故にこそ玉虫色解決ができた。これは、EUの積極的側面である。
だが、離脱するとすれば理屈の上では「ハードボーダー」を設置し、人物の出入りを管理し税金を取るなどが必要となるが、その国境をアイルランドと北アイルランドの境目に設けることは和平を阻害するのでできないし、したがって国境設置はしないとメイ首相は明言してきた。つまりは、「独立した英国だが、この部分だけは従来通り」となる。新たな協議が決着するまでは「英国はEUと単一関税区域」となる。
これは関税同盟と同義である。EU単一市場のルールや規則により足並みを揃えることになる。TPPなどに勝手には参加できないということになる。これが、英国内離脱派を激怒させているというわけだ。
ここまで、英国政府とEU政府との離脱合意案を見てきましたが、そこに貫かれているのは言うまでもなく、国民の熱意であると同時にその根底として英国多国籍企業の利害が深くかかわってきた。EUの創設や拡大も、国民の遠大な理念や欧州和平という国民の強い願望もあったが、それらを主導してきたのはこれら資本勢力でもあった。「一つの欧州」は資本の金城湯池として大いに活用されてきたのである。
◆労働者には国境はない
たほう、労働者はそもそも「国境など無い」のであり、この前時代的な遺物を復活させる「英国離脱」劇に賛成できない。と同時に、新国家としてのEU官僚拡大や、その支配を無条件に受け入れることはできないし、彼らの無慈悲な権威主義は、諸国民の反発を巻き起こし離脱派やナショナリストに政治利用されてきた。「国境の廃止」の正当性が、EU官僚国家の正当性に置き換えられてはならないのであり、国境廃止は、EU国家の強化であってはならない。その逆である。諸国民・民族の自治を前提にするべきである。(上)
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日本資本主義はご臨終に向かっている? 日銀が唯一のつっかえ棒となる株式市場の意味するもの
12月7日、日銀の黒田東彦総裁は衆議院財務金融委員会で、上場投資信託(ETF)の買い入れについて、株式市場のリスクプレミアムは明確に低下したとして効果を強調した。(ロイター)
この話自体は嘘とは言わないが、最も重大なことを語らない。・・黒田氏は金融政策担当に過ぎないから自分の担当分野だけの応答だろう。「リスクプレミアムの管理」だと?ふざけるのではない。
「それは歴史上最も過激な資金供給だ。日本経済をデフレから救い、成長を支援するため、日本銀行は量的・質的金融緩和策の下でこの5年半余りに400兆円近くを市場に供給した。ただ、一般庶民にはその恩恵がほとんど行き渡っていないようだ。」(ブルームバーグ12/18)
彼の挑戦は徒労に終わり、天文学的借財が国民の上にのしかかる。
◆日銀が国家財政と株式市場を必死でささえる日本資本主義経済の夕暮れ
日本経済は笛吹けど踊りはしない。誰が見てもこれは深刻な「何か」が待ち受けていると考えざるを得ない。アベノミクスのから騒ぎにもかかわらず日本経済の足腰部分では砂が崩れ去るように踏みとどまる場所が見えない。日銀が国家(税金)をテコにどれだけ株式市場の安定化を演出しても、実際の民間資本は逃げ去るか及び腰だということである。ここ三十年余、富を生み出す生産資本への投資は活性化せず、GPIFの年金資金をつぎ込んだりしたが、世界的な金利上昇もあり金融投資家もリスク回避に走り出している。
海外資本をはじめ信用不安が拡大する兆しがあれば、民間資本は一斉に逃げ出す。ところで、株式売買益を目的とせずに「市場安定(リスクプレミアムの低下)」のための投資をしている日銀はどうなるのか。株価の崩落に直面しても踏ん張って「買い支える」のか?逃げ出せないとすればどれだけの赤字を被る気か・・これは初めから指摘されてきたことである。日銀が逃げ出せば、日本資本主義は最後のつっかえ棒を失い倒壊する。株式ばかりではなく、同じく信用不安の拡大は債券市場の暴落となり発行国債の四割を所有する日銀は巨大な含み損を抱える・・。かたずをのんで「何が起きるのか」を黒田氏は見続けるしか方途はないのである。(竜)
産業革新投資機構(JIC)の惨めなとん挫は 日本資本主義の深刻な低迷を改めて示した
官民ファンド「産業革新投資機構(JIC)」の田中正明社長や社外取締役の坂根正弘氏ら計9人の取締役が十二月月九日、辞任する意向を固めた。JICは所管する経済産業省と、役員の高額報酬や投資の手法で対立を深めており、業務の継続が不可能と判断したとみられる。(読売オンライン)
「産業革新投資機構(JIC)」のホームページには以下のような言葉が掲げられている。
〔私たちは、最終受益者(国民、投資者)*本位の投資活動を通じ、産業競争力の強化と未来の産業の育成に寄与し、
そして長期的なリターンの最大化を実現することを、その使命としています・・・〕
政府が肝いりで立ち上げたこのインチキ会社は、三か月も経ないうちに空中分解しそうだ。この企画自体、低調な資本投資=低経済成長を打破しようと「成長産業」「ベンチャー企業育成」という悲願を託したものだったのだ。ところが、この官民ファンドは「高額報酬」で批判を受けたばかりではなく、そもそも産業育成どころか、株式をはじめとする金融商品売買に手を出す計画を持ち出していたのである。下記は朝日新聞による。
「産業革新投資機構(JIC)が、投資資金の一部を公開株など金融商品の運用に充てる検討をしていることが7日、わかった。金融商品の運用による利ざや稼ぎは、新産業の育成というJIC設立の趣旨にそぐわないとして、経産省はJIC経営陣への不信感を強めている。」
アベノミクスは、何度も指摘してきたように、三本の矢の一つに「成長産業育成」を肝として掲げてきたが、実際は金融バブル経済の深化でしかなかったのである。だからこそ今頃になって「産業育成・・」を鳴り物入りとする、経産省の企画の誕生となったのに、ふたを開ければ、またまた「金融経済」を煽るだけのものであり、日本資本主義の命脈が尽きつつあるあることを強く示すものとなったのではないか。
◆金融資本主義という「呪縛」に身動きできない経済
世界で初めての本格的金融バブル時代と崩壊(不況)を体験した日本だが、過剰貨幣資産の整理を政府による救済に変えてしまい、その後、低利潤=低金利=産業の停滞という道にはまり込んだ。
そんな中で、政府や経産省は、当然新たな成長産業の発掘に熱心である。グーグルやアップルやFacebook等々を日本でも起業させ成長軌道に乗せたいという試みである。これは決して安倍政権だけのものではない。官僚たちの悲願であったろう。
しかし、今回、革新投資機構が「契約を守れない経産省・・」「ガバナンスが不明確・・」などの怒りの暴露にうって出ることでその内容があるていどマスコミにも流れることになった。同床異夢・・ということだろう。新官民ファンドの経営主体の方針は、米国に革新的ベンチャー企業を設立すること、子ファンド、孫ファンド・・を通じてリスク資産の販売等の金融商品売買さらには株式売買まで組み込まれていたらしいのである。(朝日新聞など)・・。
世間的には、巨額報酬が経産省により取り消され、怒ったから役員総辞任、とも言われたが、根は深い。私的であろうが、官民ファンドであろうが、国営資本であろうが今の日本では、資本にとって「儲かる」場所がますます縮小しているのである。この革新投資機構が、多少でも実績を上げるためには、米国ベンチャーに投資したり、それを基にリスクファンド(ハイリスクハイリターン)商品を開発して販売し、同様に株式の売買益などに活路を見出さなければならないのである。つまり、利潤を求め自由に活動する資本は、今では日本国内のベンチャー支援(安倍政権が生み出した所謂ゾンビ企業救済)や投資にまったく魅力を感じず、結局は「官民ファンド」という形での一種の金融資本と化してしまうのである。経産省が、どんな「指導」「指示」をだしても聞く耳は持たれなかったということなのだ。その対立が根本だ。
高額報酬に見合った事業展開は、機構の役職に参集した「国際的マネージャー」たちにとってグローバルな金融取引を抜きには現在ではありえないのであり、経産省の時代遅れのビジネスセンスとの衝突であった。
アベノミクス=経産省の願望である「日本国内での新成長産業の発掘・育成・・」などは論外との結末であった。だからと言って原発輸出、カジノ誘致、兵器産業育成に走るアベノミクスはなおさら好ましくないし、幸いに(皮肉にも)破綻の連続である。(竜)
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《何でも紹介》皇族を離脱するとは 小室氏との「納采の儀」についての秋篠宮発言に寄せて
2018年度の皇室関係年間予算は約213億円、前年度より約39億円も増加した。前年度に比較して今年度増額の主な理由は、①天皇の退位等に関する皇室典範特例法の施行に向けた準備に必要な経費が約36億円、②眞子内親王殿下が皇族の身分を離れる際に支出する皇族費(上限額)約1億5千万円、③三の丸尚蔵館の設計等約4億円である。
天皇の退位等に関する予算等については別稿を準備する予定であるので、ここでは省略し、今年皇族の身分を離れる予定であった眞子内親王を中心に論じることにしたい。
元より結婚とは私事ではあるが、皇族となると単なる私事とは言えなくなる。勿論、今年予定されていた小室氏との「納采の儀」も、今後どうなるかは全く不明である。しかし既に婚約内定がなされたという事実は、来年明仁天皇の退位により皇嗣となる秋篠宮家の長女が今後何時になるかは不明ながら、皇族離脱の問題を鋭く提起しているのである。
皇室関係予算の区分とその内容
ここで問題を私たちが正確に認識するため、皇室関係の年間国家予算を概観しておく。
読者のため皇室関係予算を解説する。皇室関係の予算を大別すると、皇室費と宮内庁費との二つに分かれる。皇室費は、さらに内廷費・皇族費・宮廷費の三つに分かれている。
内廷費とは、天皇・内廷にある皇族の日常の費用、その他内廷諸費に充てる予算のことで法律により定額が定められており、ここ10数年は3億2千4百万円である。内廷費として支出されたものはその後天皇の手元金となり、宮内庁の経理する公金ではなくなる。
皇族費とは、皇族としての品位保持の資に充てるためのもので、各宮家の皇族に対し年額で支出される。皇族費の定額は法律により定められ、各皇族ごとに皇族費を算出する基礎となる額となり、平成30年度の皇族費の総額は約3億6千万円で、皇族費として支出された経費は内廷費と同じく各皇族の手元金となり、宮内庁の経理する公金ではなくなる。
なお、皇族費には皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金として支出されるものと皇族がその身分を離れる際に支出する一時金が含まれる。今回の場合は1億5千万円である。
宮廷費とは、儀式、国賓・公賓等の接遇、行幸啓、外国訪問など皇室の公的活動等に必要な経費、皇室用財産の管理に必要な経費、皇居等の施設の整備に必要な経費などで、平成30年度は約92億円で、宮内庁の経理する公金である。この点が前二者と異なる。
象徴天皇制を支えている国家組織―宮内庁と皇宮警察本部の2千人
さらに宮内庁費とは、宮内庁の運営のために必要な人件費・事務費などが主なもので、平成30年度は約115億円である。平成30年度の宮内省の職員数は特別職56人で、国家公務員法で規定するもの(宮内庁長官、侍従長、東宮大夫、式部官長、侍従次長)、人事院規則で規定するもの(宮内庁長官秘書官、宮務主管、皇室医務主管、侍従、女官長、女官、侍医長、侍医、東宮侍従長、東宮侍従、東宮女官長、東宮女官、東宮侍医長、東宮侍医、宮務官、侍女長)の他、一般職は971名で宮内庁次長以下の内閣府事務官、内閣府技官等である。現在の皇族数が10数人に対してこの職員数。驚愕の真実ではないか。
その他の天皇等が必要とする特筆すべき国家機関に明治19年、宮内省に皇宮警察署として誕生し、その後幾多の組織的な変遷を経てから、昭和29年の新警察法の制定に伴い警察庁の附属機関となり、名称が改称された皇宮警察本部がある。そしてこの皇宮警察は、天皇及び各皇族の護衛や皇居・御所・御用邸などの警備を専門に行う国家警察であり、皇宮警察には都道府県警察のような刑事部門や交通部門などはないのである。
皇宮警察本部の職員は、皇宮護衛官・警察庁事務官と警察庁技官で構成され、身分は国家公務員で皇宮警察本部の定員は、警察庁の定員に関する規則により規定されている。
2018年4月1日現在、皇宮護衛官896人及び事務官等40人の合計936人であり、予算規模も約84億円に迫る一大組織である。この事実はあまりにも知られていない。
ここまでの記述から私たちが確認できるように、戦後憲法により国民統合の象徴として象徴天皇制を抱え込んだ日本国家は、現実的に生死する生身の天皇を持つことにより、その生活と身辺の警護の必要に迫られ、他の先進民主政体の国家と比較しても、直接的には約213億円、さらに間接的には約84億円の合計約297億円の余計な予算を、皇室関係予算として持っているのである。それに関わる国家公務員の数は実に2千人である。
日本はデモクラシーの国家とは対立するテオクラシーの国家
この実に驚くべき冷厳な事実を天皇制について考えている、どれだけの日本人が自覚しているだろうか。すべての日本人は今回の小室氏との婚約について云々する前に、又このことから小室氏も皇宮警察等の警護対象者になっていることを深く認識すべきである。
大きく捉えるならば、象徴天皇制そのものとその維持に費やされている金銭の面についても、私たち日本人は大いに議論していかなければならないと考えるものである。
ほとんどの人々は、日本は民主政体の国家だと考えてきたであろう。日本の本当の姿は今明らかにしたように、私たちが税金で養っている、祭祀王の天皇が鎮座まします王制の国家である。つまりデモクラシーの国家とは対立するテオクラシーの国家なのである。
しかし実際の所、何という税金の浪費であろうか。天皇に幻惑させられている人々は、天皇及び皇族に支出された国家予算の規模がどのくらいのものであるか正確に認識しているのであろうか。今話題の中心人物である秋篠宮家には、何と20名が傅いているのだ。
私たちは既に時代遅れの象徴天皇制の即時廃止を要求する。ここにこそ真の構造改革のメスを大胆に入れるべきではないだろうか、私たちはそのように確信しているのである。
皇室離脱の一時金は1億5千万円―皇室経済法
普通人なら全くの私事でしかない結婚が、皇族の結婚となると単なる私事とはならない。
今回話題となった眞子内親王殿下が皇籍離脱をする際に支出する皇族費(上限額)は約1億5千万円とされている。ではその根拠とは一体どういうものなのであろうか。
読者のために、その根拠となる皇室経済法の一部分を以下の引用することにしたい。
第六条 皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額により支出するもの並びに皇族であった者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範の定めるところによりその身分を離れる際に一時金額により支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。
(2~6は省略する)
7 皇族がその身分を離れる際に支出する一時金額による皇族費は、左の各号に掲げる額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額とする。
一 皇室典範第十一条、第十二条及び第十四条の規定により皇族の身分を離れる者については、独立の生計を営む皇族について算出する年額の十倍に相当する額
二 皇室典範第十三条の規定により皇族の身分を離れる者については、第三項及び第五項の規定により算出する年額の十倍に相当する額。この場合において、成年に達した皇族は、独立の生計を営む皇族とみなす。
ここ20数年に及ぶ長期不況下で生活保護認定が一段と厳しくなったこともあり、生活苦に呻吟する一般民衆の生活とは想像を絶して、皇族についてはこのようにあまりに手厚い保護があることに読者は驚かれたのではないだろうか。この法律の対象者は何と天皇と皇族のたった18人である。
このことを読者に実際に確認して頂きたかったこともあり、敢えて長々と引用した。まったくもって日々酷税にあえぐ私たちにとっては、実に腹立たしい記載ではないか。
ここで読み取れたように離脱一時金とは、算出する年額の10倍に相当する額である。
成る程成る程、法律では言葉使いにおいても私たち庶民とは差をつけて、皇族に対しては給付する年額や支給する年額との言い方ではなく、自分たちは国家から税金でもって養われている事実を皇族たちに少しでも意識させないようにと官僚が知恵を絞って、算出する年額と言い換えているのである。まさにこれは官僚の悪知恵の極致ではあるだろう。
日本に象徴天皇制は必要なのか―大嘗祭とは何か
しかしその眞子内親王の皇籍離脱の論議の前提となる金額は、年収ほぼ百万円未満の結婚相手の小室氏にとっても、また普通の人々から見ても、想像を遙かに超えた額であることは明らかである。それにしても「皇族であった者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範の定めるところによりその身分を離れる際に」一時金を与えるとの皇室経済法とは、一体何のための法律なのだろうであろうか。戦前はともかく戦後の今現在は天皇の他にはたった17人の皇族しかいない。象徴天皇制もその命脈は尽きかけてるのだ。しかしもっともっと日本人には象徴天皇制に対しての議論が必要であると私は考える。
ここでは憲法の大前提である法の下の人間の平等などという理念などは、全く消え失せてしまっている。このように8月以来の高円宮家の絢子内親王の皇籍離脱と今回の小室氏との「納采の儀」の件では、象徴天皇制と全く民主政体は両立しないことが実にはっきりと露呈してしまった。ここには象徴天皇制が持つ矛盾が明らかになったのである。
そもそも大嘗祭とは何か。大嘗祭は新天皇が即位の礼の後、初めて行う新嘗祭である。新嘗祭とは毎年11月に天皇が行う収穫祭で、その年の新穀を天皇が神に捧げ、天皇自らも食す祭儀である。即位後初めての新嘗祭を一世一度行われる祭として、明治以降は大規模に執り行うこととなり、律令(日本官僚制の基)ではこれを「践祚大嘗祭」と呼ぶ。つまりは天皇が行う宗教行事に過ぎない。それ故政教分離原則の憲法体系では明確に区別されなければならない。ここに10億円単位で行われる大嘗祭問題の核心があるのである。
秋篠宮発言の真意とは
1990年に行われた前回の大嘗祭では、公費である宮廷費22億5千万円が使われたため、「政教分離に反する」との批判があった。今回も政府は「宗教的性格」を認めつつ、「伝統的皇位継承儀式で公的な性格がある」として宮廷費から支出することを決めている。
これに対して秋篠宮は53歳誕生日の記者会見で「大嘗祭の予算は国庫の支出ではなく、内廷費からの支出にすべき」との談話を発表した。つまり秋篠宮は公費である宮廷費からではなく、天皇の私費である内廷会計で賄う身の丈に合った儀式にすべきとの考えを持ち、前回でも同様の意見を述べていたのである。この発言の真意とは一体何なのであろうか。
秋篠宮によれば、天皇陛下からは即位関係の儀式などは皇太子とよく相談して進めるよう伝えられており、皇太子の「ご理解を頂いて進めている」としている。要は天皇家も内廷費でやりたいのである。これは他の宗教行事を皇室の行事として行うことと同様だ。
しかし自民党がこれを許さず大嘗祭を国事行為として行いたいのである。このことは明仁天皇が象徴とは何かを考え抜いた上で得た象徴に徹するとの基本戦略とは、大いに反するものだ。それ故、戦後憲法によって米国により許された天皇家の存続(注1)を使命と考える明仁天皇は、戦後憲法下の天皇を改憲で元首にと指向する安倍内閣に対しては不信感を露わにしている。要は明仁天皇はトーマス・アクィナスの哲学を尊重しているのである(注2)。これら二つの注は、「ワーカーズ直のブログ」のそれぞれの表題である。
(注1)『昭和天皇の戦後日本〈憲法・安保体制にいたる道〉』を今また再読する
(注2)明仁天皇の生前譲位と象徴天皇制
日本国家は前近代国家だ、と事あるごとに友人たちに私は言っている。天皇家の祭祀やその宗教性に関する日本人の認識は、あまりにも希薄である。そのことと現在の秋篠宮長女と小室氏との婚約を巡るマスコミ報道に怒りを募らせるとともに、この深刻な不況の時代に何とも呆れ果てた税金の無駄金使いだというしかないのである。 (直木)
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読書室 堤 未果氏著 『日本が売られる』 幻冬舎新書
今、日本ではとんでもないことが進行している。この本は2018年10月に出版されたのだが、この本でかくも重大な問題の一つ一つに対してなされていた警告はまったく無視されており、結局は安倍政権により次々と実行されて法律となっていったのである。
通常国会では「働き方改革」という名の「働かせ方改革」が強行され、さらに臨時国会では水道法改定、漁業法改定、入管法改定が強行採決された。このように日本国民の生活、日本国の根幹に関わる重要な諸問題が国会で十分な審議も尽くされずに、自公等の国会議員の数の力だけで強行採決されたことは万死に値する蛮行であり、暴政そのものである。
このように国会では米国や中国、EUなどのハゲタカ資本が我々の重要な資産に目を付け、買い漁るために法律が次々と変えられた。水道民営化の審議会には、仏資本の日本子会社の(元横浜市副市長だった)社長が入っている。これには当然利益相反の疑いがある。
つまり現在、水やコメ、海や森や農地、国民皆保険に公教育に食の安全に個人情報など、日本が誇ってきた貴重な資産に値札がつけられ、叩き売られている。堤氏は、日本のマスコミがほとんど報道しない衝撃の事実の舞台裏とそれに反撃する戦略を、世界を巡る緻密な現場取材で得た情報とそれに関連する膨大な資料を基に鋭く提起しているのである。
それでは、以下に本書の目次を紹介したい。
〈目次〉
まえか゛き いつの間にかと゛んと゛ん売られる日本!
第1章 日本人の資産か゛売られる/1水か゛売られる(水道民営化)/2土か゛売られる(汚染土の再利用)/3タネか゛売られる(種子法廃止)/4ミツハ゛チの命か゛売られる(農薬規制緩和)/5食の選択肢か゛売られる(遺伝子組み換え食品表示消滅)/6牛乳か゛売られる(生乳流通自由化)/7農地か゛売られる(農地法改正)/8森か゛売られる(森林経営管理法)/9海か゛売られる(漁協法改正)/10築地か゛売られる(卸売市場解体)
第2章 日本人の未来が売られる
1労働者か゛売られる(高度プロフェッショナル制度)/2日本人の仕事か゛売られる(改正国家戦略特区法)/3ブ゛ラック企業対策か゛売られる(労働監督部門民営化)/4キ゛ャンフ゛ルか゛売られる(IR法)/5学校か゛売られる(公設民営学校解禁)/6医療か゛売られる(医療タダ乗り)/7老後か゛売られる(介護の投資商品化)/8個人情報か゛売られる(マイナンバー包囲網拡大)
第3章 売られたものは取り返せ
1お笑い芸人の草の根政治革命?イタリア/292歳の首相か゛消費税廃止?マレーシア/3有機農業大国となり、ハケ゛タカたちから国を守る?ロシア/4巨大水企業のふるさとて゛水道公営化を叫ふ゛?フランス/5考える消費者と協同組合の最強タック゛?スイス/6もう止められない! 子供を農薬から守る母親たち?アメリカ
あとか゛き 売らせない日本
この本で具体的に指摘された重要な諸問題がほとんどマスコミでは取り上げられていない。まずそれが驚きではないか。最近漸く水道民営化の問題点が岩手県雫石町のペンション村の水供給停止問題が民営化の問題点として報道されてはいる。しかし農業経営に大打撃を与えると予想される種子法廃止は、今もほとんど触れられていないのが現実である。
ぜひ第1章と第2章は読者の皆様の精読を期待したい。その上で第3章は現状に対する具体的な反撃の方法と実践が紹介されている。特に「4巨大水企業のふるさとて゛水道公営化を叫ふ゛」は水道民営化の先進国フランスでの25年にわたる水道事業の民間委託に終止符を打った闘いが紹介されている。パリの市民は「水道再公営化」「任期中は水道料金値上げなし」を公約した市長を当選させた。この決断がEU内の各自治体に水道再公営化の動きを加速させているのである。たった6頁なのでここだけでもぜひ読んでほしい。
その他、日本で現在進行する、これら同様の事態に対して世界ではどのように反撃したのかを知ると共に、具体的・実践的な問題意識を持って皆様には読み込んでいただきたい。
堤氏は、あとがきの中で具体的な反撃として、以下のような重要な提起をしている。
「2017年5月16日。衆院の地方創生に関する特別委員会は、国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案の附帯決議の中で、『民間議員が私的な利益の実現を図って議論を誘導し、利益相反行為にあたる発言を行うことを防止する』『特定企業の役員や大株主が審議の主導権を握ることを防ぐため、直接利害関係を有する時は、審議や議決に参加させないことができる』という2点を明記している。
附帯決議に拘束力はないが、これを大きな力に変えるべく、日本の切り売りを止めようと声をあげた心ある議員たちを今度は私たちが後押しする番だ」まさに重要な指摘である。
また世界の各地で取材し、討議してきた堤氏は、次のような重要な発言もしている。
「四半期利益ではなく、100年先も共に健やかで幸福に暮らせることの方に価値を置き、ユネスコが無形文化遺産に登録した、『協同組合』のそれが、強欲資本主義から抜け出して第三の道へ向かおうとする人類にとっての貴い羅針盤となることを、この間出会った農業や漁業、林業に医療、福祉や教育、自治体や協同組合関係者、同じ祈りを共有する多くの国の人々が教えてくれました」
このような考え方は、資本主義体制の中で誕生した協同組合が未来社会において果たす役割を強調したマルクスの思想を彷彿とさせるものがある。一読を勧めたい。(直木)
「エイジの沖縄通信」(NO57)
1.辺野古土砂投入!県民の怒りますます燃え上がる!
12月14日(金)11時、安倍政権・沖縄防衛局は辺野古崎南側の埋め立て予定区域に土砂を投入した。琉球新報はこの土砂投入を、第4の「琉球処分」の強行だと報じた。
この土砂投入は沖縄の民意をまったく無視した暴挙である。土砂の積み出し予定港だった本部の塩川港が台風で破損しすぐ使用できなくなると、民間会社の「琉球セメント」の積み出し港を利用するなど、正式な手続きを無視した極めて悪質な不法行為だ。
これに対して、沖縄県民も辺野古の浜で1000人の抗議集会を開催し、「阻止あきらめない」の声を上げた。
玉城デニー知事もさっそく15日に辺野古の土砂投入現場を視察し、ゲート前での抗議集会に参加して「国の暴挙に対し、本当の民主主義を求めていく。対話は継続するが、対抗すべき時は対抗する、絶対に諦めない」と述べて、県民と思いを一つにした。
岩屋防衛相が辺野古への移設について「日米同盟のためではない。日本国民のためだ」と述べ、沖縄県民から「日本国民の中に沖縄県民は入っているのか!」「沖縄のことを何も考えていないことがよく分かる」等の猛反発の声を受けた。
まったく話にならない。本音は「日本国民のためではない。日米同盟のためだ」と言いたいのではないか。
私が住む静岡県の川勝平太知事は、定例記者会見で国が土砂投入を強行したことについて「ふらち、無法なことはしてはいけない。辺野古埋め立てに反対する翁長知事の遺志を継ぎ玉城知事が選ばれた。しかし、国はその民意を全く無視している。同じことが静岡で行われたと思うと、沖縄県知事の胸中は察するにあまりある。県民に暴挙とみられること、手続きにおいて乱暴なことはしてはいけない。」と国の姿勢を批判した。
政府と静岡県知事のどちらがまともな事を言っているのか、明らかである。
2.辺野古新基地建設費が2兆5500億円と沖縄県が試算!
この税金の無駄遣いをあなたは許せますか!
私は「沖縄ツアー」(辺野古に行きたいという人達を現地まで案内するガイド)を何度も取り組んできた。
その「沖縄ツアー」の時、辺野古ゲート前や海上現場に、大動員されている機動隊員・海上保安庁員・民間会社の警備員達を見ていて、いったいどの位の人件費(税金)がかかっているのか?疑問を感じていた。最近、民間会社の警備費だけで3年間で260億円もかかっていた事が明らかになった。
また、毎日毎日1日に300台以上の工事車両がゲートから入り工事を続けているが、一体どの位の建設費用(税金)がかかるのか?一体これから基地建設に何年かかるのか?ずっと疑問を感じていた。
今回沖縄県が、この疑問に対して明確に答えてくれた。
この辺野古の工事費について12月1日の「東京新聞」が次のように報じた。
『工事費について、現状の護岸建設までの費用が当初予定の10倍になっている事を踏まえ、防衛省の当初埋め立て工事全体の費用2400億円も10倍になると試算。さらに、問題になっている「マヨネーズ状態」の軟弱地盤の改良工事費が1500億円や県外からの追加の土砂調達費を加算すると、約2兆5500億円と試算。
工期期間についても「土砂埋め立て工事」に5年、「軟弱地盤の改良工事」に5年、埋め立て後の施設整備」に3年、計13年を要すると指摘。
沖縄県はこの試算を、政府との集中協議でしめしていたことを明らかにした。県は「1日も早い普天間の危険除去につながらない上に、2兆円以上も費用がかかる計画を続けるのか」と、辺野古移設以外の方策の検証を国に求めている。
なお、工事費用の県の試算は県の主張を補強するためのおよその想定で、公式の調査ではない』と言う。
あなたはどう思いますか?
ここで辺野古工事をいったん中止して、玉城デニー知事が主張するように日本政府と沖縄は「対話」(検証)をすべきである。(富田 英司)
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コラムの窓・・・病は口より入り、禍は口より出づ!
新年に諺をひとつ。軽率な発言を戒めた言葉ですが、もとは「病気は飲食物から起こり、災難は言語を慎まないことから起こる」(広辞苑)というもの。言葉だけではなく判断や行動も実に何もかもが軽率なあの人物、話題にするのもはばかられるのですが・・・
2012年リトアニアが国民投票で日立製作所の原発建設を否決、16年ベトナムが日本とロシアによる原発建設を断念。さらに、昨年の12月には三菱重工がトルコで建設を計画していた「シノップ原発」を断念、日立がイギリスで計画していた「ウイルヴァ原発」建設計画を断念との報道がされました。
満を持して再登場した安倍晋三首相がインフラ輸出を成長戦略の柱としていた原発輸出の破綻、どれも建設費の高騰に耐えられなくなった末の撤退です。シノップでは建設費が当初の2倍以上の5兆円に高騰。ウイルヴァでは2基で3兆円という建設費に音を上げた日立は、2700億円の損失を出しても〝傷は浅い方が良い〟とか。いずれも正式な決定ではないようですが、いずれ明らかになるでしょう。
長く続く安倍自公政権がこの国を蝕み、昨年末の国会はその終末を示すものとなりました。移民ではない外国人労働者の受け入れという実に都合のいい政策のごり押しは、外国人技能実習生の非人間的労働実態を表面化させました。奴隷労働を強制され、逃げ出したら入管に収容され強制送還が待っています。実習生は8年で174人が死亡、交通事故や溺死、自殺、病死など。
そのなかには労災死も多く、入管でも病死や自殺が発生しています。しばしば、ハンガーストライキによる抗議が行われています。昨年12月にも、大阪入管で病気収容者への対応に抗議してハンストが行われ、「私たちには在留資格はないが、命や健康を粗末に扱われたくない。それができないなら仮放免で拘束を解いてほしい」(12月6日「神戸新聞」)と収容者は話しています。この〝拘束〟に期間はないのです。
さて、安倍晋三氏と安倍氏に従う自民党議員たち、これを支持する人々は一団となってこの国をとんでもないところへ連れて行こうとしているのです。例えば、旧来の家族を絶対視し、これまで婚外子の遺産相続や選択制夫婦別姓について反対してきました。未婚のひとり親の住民税軽減に関しても自民党が難色を示し、保守的支持者から「『結婚して出産する伝統的な家族観を軽視している』と批判されることを恐れ、慎重論が強かった」(12月14日「東京新聞」)と報じられています。
安倍氏とその取り巻きはどうも〝家父長制〟下の呼吸をしているようです。そこに人権はなく、排除の範囲が徐々に広がっています。今はその対象になっていない者も、いずれその対象になることでしょう。こんな時代を生き延び、〝騙されていた〟という過ちを繰り返さないために、今年はすべてを疑い事実を見際めることから始めましょう。 (晴)
読者からの手紙・・・カショーギ事件の大嘘
最近の新聞報道によれば、カショーギ氏はサウジアラビアの国籍、彼のビジネスは三度(スパイ~ジャーナリスト(ワシントン・ポスト記者)~武器販売コミッショナー)変わっている。彼の本当の商売は最後の(死の商人)だろう。彼は私用でトルコにあるサウジアラビアの領事館に出かけ、そのまま行方不明(あるいは絞殺された)という。
トルコ側は領事館内部で殺され、四肢をバラバラに切断されたものと言い、サウジ側は領事館に入り再び出て行ったという。世界のマスコミの大部分は領事館内でこの惨劇がなされ、遺体はどこかに捨てられたというアメリカの見解に沿っている。
この事件について、アメリカのトランプ大統領は、たとえ、この事件の背後にサウジの皇太子ビン・サルマン(ムハンマド・ビン・サルマン)がいたとしても、アメリカとの協力関係は失われず、皇太子に対する法的処分は考えていないと発表した。アメリカはどんな権限で他国に起きた他国の人間の取り扱いを決定できるのか? カショーギがアメリカに在住しているというだけで事件に介入出来るのだろうか?
だが、この発言は誰が真犯人であるかを自ら暗示している。なぜなら、場所がトルコで建物がサウジ領館、被害者がサウジアラビアの死の商人と材料がそろいすぎている。
トルコとアメリカの関係は、近年トルコにクーデターが起き、危うく大統領レセップ・アードガン(レジェップ・タイイップ・エルドアン)が殺されるところ、危機一髪で逃れ、彼の大衆への訴えと大衆の身を挺した敵のクーデター部隊への反撃と包囲をクーデター部隊のヘリが上空を圧する中で果敢に行ったことで決着した。当然クーデター犯人捜しがその後あらゆる階層に対して行われ、公務員・教師を始め驚くほどの者たちが逮捕拘留されその事件の根の深さを感じさせられたが、背後で糸を引いていたとされるアメリカに自己逃亡しているキリスト教ミッションをトルコがアメリカ側に引き渡し請求をしたが、言を左右にしてアメリカは応じていない。クーデター鎮圧をロシアのプーチンは祝する電報を送ったが、西側はドイツを始め各国がクーテーター犯人を厳しく扱うことを非難した。
その他、トルコのモスクワやテヘランへの傾斜と大量の難民を率先して受け入れているトルコがEUに対する約束違反に反発している事などアメリカ側の面白からざる存在となっている。此処で凄惨な事件にトルコが関与しているかもしれぬという噂が立てば、トランプや取り巻き連中の思うつぼだろう。
サウジアラビアは世界の石油売買の半分近くを取り仕切る、アラブの石油諸国・OPECの総大将である。しかもアメリカの兵器産業から数十億ドルを出して購入してくれる、アメリカ帝国主義者が簡単に手放すわけはない。しかし、ビン・サルマン皇太子が主導権を握った事で風向きが変わってきた。皇太子の石油のみの経済依存からサスティナブル(持続可能)エネルギー開発プラン、アメリカべったりの世界的政治戦略の変化などやはり面白からざる状況が始まっている。共和党タカ派の得意の「“此処でガツン”と食らわせなければならぬ」が発動し、できるだけサウジの残虐さをアピールする事で、サウジのアメリカ離れに警告を発し、我々から離れるとどうなるかの見せしめとしなければならぬと思ったとしても不思議ではない。
なぜカショーギをサウジが殺さなければならないのか?最初カショーギがスパイと銘打たれた。なぜ?スパイならアラブ側の秘密を漏らしたからサウジの特殊部隊か領事館員に殺されるかもしれないと一般の人想像する。どんな秘密を?アメリカから武器購入の事実を漏らしたから?これは秘密でも何でもない。国連の武器引き渡し禁止条項には違反しているかもしれないが。皇太子がロシアと取引を考えているから?これも殺す理由としては脆弱である。
トルコの領事館員はカショーギが領事館から出て行ってはいないという。では殺した連中を領事館員は見ているのか?それについては領事館は何も述べていない、殺した連中は部屋の中で殺されたカショーギと一緒に一晩過ごしたのか、誰も死体そのものを見てはいない。死体は首を絞められ死んだ後四肢を切断されたと言うからには誰かが見ていなければならない、殺した連中とカショーギの遺体は外へ運び出されなければならない。不審に思った領事館員は出てこない部屋を一度もチェックしに行っていないのか?多分切り刻んだ時流れ出た血で床・壁一面は汚れていなかったのか?
一番疑わしいのは、彼ら(誰?)のいうその残虐な殺し方である、これはサウジの殺し方であると言う事を示す為の虚言であろう。確かにイスラムスンニ派の中には犯人を投石して殺したり、刃物で首を切断したりして死刑執行する場合がある。それだけで人は犯人がサウジであると推定する、逆手にとったのであろう。
トランプは仕掛けたワナに自ら落ちた。今回のメキシコの総選挙での左翼オブラダー(アンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール)氏の大統領当選、国境にバリケードを張り巡らしメキシコ人の入国を阻止しようとした。その他差別発言、貿易阻害などに心から怒ったメキシコ大衆の心情を理解しようともしなかったトランプ政権への痛烈なパンチである。保護貿易で中国の貿易戦争ではすでにアメリカ経済への不利を悟って、関税率を引き下げるという白旗を掲げたトランプ、総て自ら仕掛けたワナに自ら落ちた帝国主義者の醜態であると言えよう。(M)
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新しい年を迎えて
昨年を振り返ってみると、安倍政権に屈しない各種集会に参加する日々でした。反原発・反基地集会はもちろん、難民問題や民族問題など忙しく時間に追われていました。特に昨年は、裁判の傍聴が増えました。というのも、西宮市が原告になり、入居者を訴えている借上げ復興住宅の追い出し裁判があり、他方、西宮市が訴えられている、アスべスト被害問題・宅地開発許可の是非をめぐる「まちづくり権」の問題の合わせて3件の裁判でした。アスベスト訴訟と復興住宅追い出し裁判は証人調べを終え、近く結審となります。支援する側としての私たちの姿勢も問われています。
小さな旅の出来事を紹介します。12月中旬に高知の知人宅に招待されました。1泊2日の旅では日常から解放され心が癒されました。知人というのは、40年来の付き合いで私たち夫婦の結婚の際に仲人役をしていただいた方です。ご夫婦とも病院通いで、1週間後に手術の予定であるにも関わらず、病気を苦にされる様子もなく、むしろ明るく前向きな考え方に感心しました。笑いながら、語られるこれまでの紆余曲折は、乗り越えることで人との繋がりが築かれ、心の余裕が生まれたのかなと思いました。会えて良かった。また、会いに来ますと約束し、私たちは高速バスで帰途につきました。
ところで、私たちが主催する学習会「現代を問う会」、平和を願い駅頭で訴える「西宮ピースネット」は、どちらも月1回の活動ですが、誰でも参加し共に行動が出来る場所です。気軽に市民同士が繋がり語り合える手頃なグループとして、今年も粘り強く頑張りたいと思います。読者の皆さん、今年もよろしくお願いします。
(折口恵子)
色鉛筆・・・ いかに生きるべきか
病は突然にやってきました。今年七月に人間ドックで悪性リンパ腫が見つかり、仕事を休んで治療に専念することになりました。悪性リンパ腫の種類を調べるための生体検査、全身麻酔の手術でお腹を二十センチ切りリンパ腫を取り出ししばらくはお腹が痛くて、状況についていけない私は心も痛かったです。結果は濾胞性リンパ腫、ステージ三でした。
悪性リンパ腫は血液のガンなので、臓器の発生するガンと違って、手術とかで取り除くことはできず、私は六回の抗がん剤投与でガン細胞を殺すという方法の治療です。副作用としては、白血球などが下がり抵抗力が落ち、感染症にかかりやすくなる。そして味覚がわからなくなったり、手足が痺れたり、頭髪が抜けたりします。
八月から抗がん剤治療が始まりました。治療の前には、血液検査、心電図とレントゲンをとり健康状態を確認してから抗がん剤投与が可能かどうか判断されます。一回目の抗がん剤治療では、心電図をつけたままでした。血糖値の確認も一日三回ありました。幸いにも、ものすごく大きな副作用はなく六回の治療は無事に終わりました。腹部のリンパ腫がとても大きく六回とも入院して治療しました。おかげさまで腫瘍はだいぶん小さくなりました。
二十八年働き、半年も仕事を休んだのは初めてで、私自身の余命もどうなるかわからない、なので残りの人生をいかに生きるべきかをものすごく考えました。
最初に取り組んだことは、エンディングノートの作成でした。バソコンや銀行の暗証番号、生命保険等は記入しましたが、未だなかなか仕上がりません。
次に取り組んだことは、整理整頓です。仕事の資料などは、すべてシュレッターをかけました。私がいなくなり周りの人が私の持ち物の処分に困らないようにということが、基準になりました。
その次に取り組んだことは、残された人生を精一杯に生きたいと思ったことです。それは組合活動や市民活動に参加しおかしな社会に抵抗していくこと、将来の私たちの子供の子供のために。趣味の合唱を続けること、仕事の復帰を目指すことです。
沖縄の土砂投入反対集会に参加し、自分と同じ思いの人が周りに多くおり、つながることで自分自身が元気になる、こんなことがすごく大切だと改めて実感しました。
趣味の合唱では、コンサートに二回暗譜してドレスを着て出場しました。コンサート出場を達成するために、入院中も楽譜を何度も見直し、練習を録音した音声を何回も聞きました。コンサート当日は発熱しましたが、出かけるまでに氷枕と鎮痛剤で熱を下げ、体調を調整しながら実現することができて自信につながりました。
次は仕事復帰を目指します。
ガン患者は二人に一人と言われる時代になりました。ガンになって同じ病気で闘っている人たちと知り合いになり、勇気をもらいました。周りの人の優しさを感じることが増えました。ガンだからと悲観することなく、病気のことをよく学び、ガンとうまく付き合う方法を考えながら、残された人生を精一杯に生きていきたいと思います。 (宮城 やよい)
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