ワーカーズ628号 (2022/3/1)      案内へ戻る

  職場・地域から闘いを拡げよう!――表紙替えだけの岸田政権――

 安倍〔菅〕長期政権を引き継いだ岸田政権が5ヶ月経過した。

 安倍政権による企業優先政治では、「自社株買い」「株価連動報酬」「内部留保の積み増し」などによって、株主や経営者や企業に果実が奪われ、逆に労働者の実質賃金は減らされてきた。岸田首相はその〝格差社会〟〝階級社会〟批判を念頭に、『新しい資本主義』を掲げた。いまさら現実味の無い『所得倍増計画』とも言えない。

 とはいえ宏池会派閥出身の首相として、かつての岸政権や安倍前政権の〝国家〟や〝軍事〟ではなく、所得倍増という〝生活優先政治〟への刷新を掲げた池田政権の再来を売り込みたい思惑もあったのだろう。が、財界の批判や株価の下落局面を前にして、金融所得課税の導入をさっさと引っ込めたり、形ばかりの賃上げ税制では、羊頭狗肉は隠せない。

 他方では、軍事費の急激な増額や、「敵基地攻撃能力の保有」という選択肢を首相として初めて施政方針で明言するなど、戦争中毒国家の米国と安倍政治に引きずられているのが現実だ。

 目前のコロナ対策はといえば、またしても無策と後手。救急搬送困難事案が直近一週間で6000件、入院・隔離できずに〝自宅放置〟された人が58万近く(2月16日時点)にもなるという現実。検査も診察もしない「みなし陽性」、保健所からの連絡も省略だという。医療現場は疲弊し、もはや感染拡大になすすべもなく呆然と漂流しているがごとしだ。

 その岸田政権。発足直後は前政権の強権手法を念頭に『聞く耳』を強調して一定の好感も寄せられた。が、ここに来て内閣支持率も下げ傾向になってきた。コロナ感染の拡大に加え、口先政治や先送り政治の姿勢に批判が向けられている。それでも岸田首相は、7月の参院選に勝利すれば〝本格政権〟として長期政権も見込み、ともかく参院選までは穏便にと、無難な政権運営に徹しているかのようだ。

 岸田政権がそんな姿勢でいられるのも、野党第一党の立憲民主党のていたらく、国民や維新など、政権にすり寄る勢力が伸長した結果でもある。

 闘いの舞台は国会ばかりではない。〝事件は現場で起きている〟。《労働者階級の解放は、労働者自身の事業である》という原点に立ち返り、自分たち自身が行動を起こしていく以外にない。〝劇場政治〟から抜けだし、足下の職場・地域から闘いを拡げよう!(廣)


  ウクライナ市民は決然と武器をとれ!
  ロシアの軍事冒険主義を阻止しよう。
  東西軍事同盟を拒否し中立を戦いとろう。


刻一刻とウクライナ情勢は深刻化している。この原稿は二月二十四日に書かれたあくまでその時点のものです。

■「戦争は政治の延長である」

 どんなに不当な口実であったとしても、ロシアにはウクライナに侵攻する理由がある。旧ソ連時代の世界最高峰の軍需産業を再建したプーチンは、旧ソ連邦諸国を再結集しつつあり、拡大NATOとの軍事対決も辞さない決意だ。付け加えれば、「旧ソ連諸国」の再結集を求めるロシア系国民の「世論」は過半数を超えているという。旧ソ連諸国に散在する親露派も健在らしい。さらには、国内のプーチン人気の低下があり、旧ソ連圏の「再統合」は国内向けにも格好の目標であるだろう。一方では拡大NATOの軍事圧力が迫る中、ロシア政府はウクライナ侵攻の手段あれこれの最終検討を始めていた。

 「戦争は政治の延長である」(クラウゼヴィッツ将軍)であるとすれば、米国とNATOがロシアの要求を入れて「NATO不拡大」「ウクライナの中立」を認めれば「解決」する、あるいは少なくとも軍事対決は回避される。

 NATO(フランス・ドイツや欧州諸国や米国政府)の本音は「ロシアとの本格対決は時期が悪い」「中国包囲に専念したい」のだろう。ゆえにこの取引は難しいものではなかった。   ところが愚劣なNATOとりわけ米国政府には「アフガンの大敗北」というトラウマがあり、半年後の中間選挙では民主党の苦戦は必至だ。今回は弱腰を批判されないようにと無謀にもロシアに一切の譲歩をしてこなかった。しかも米国は、ロシア対応の前面に立つのではなく欧州の裏で関与自体を極力狭めて自らの責任を回避しようとしてきた。

 とはいえ、米欧政府の背後には軍需産業企業群という強力な戦争勢力が存在する。政府内の代理人たちが武器支援などで戦争の敷居を下げ危機を拡大することは彼等の利益には合致する。ウクライナ市民の命は大国同士のくだらない野望や損得勘定や愚かしい見栄のために脅かされている。

■ミンスク合意破棄と米国の不作為を糾弾する

 プーチンは欧諸国とりわけ米国がまともな話し合いに乗ってこず、ロシアの基本的立場(NATO不拡大の保証)に理解を示さないことをもって「ミンスク合意を破棄」し「ドネツク・ルガンスク共和国」の独立を承認し、軍事同盟を確認した模様だ(二月下旬)。国際的にはともかく国内的には「侵攻手続き」を完了させた。

 ウクライナとロシアとの間で調印されたウクライナ東部(ドネツク州とルガンスク州)の停戦に関する合意「ミンスク合意履行に関する総合的な措置」と、調停に当ったドイツ、フランスを加えた4ヵ国首脳による「停戦合意を支持するための共同声明」(2015年)を、一般的にミンクス合意という。ミンスク合意の中心は「ドネツク・ルガンスク州」の特別な自治権付与であった。

 しかし、この合意は全く守られなかった。停戦の脆弱性や「特別自治区」設立へのウクライナの不作為もあるがその原因の一つは米国の消極姿勢である。ロシアは米国が積極的に関与し東部州の「特別な自治」に「米国の保証」を与え、さらにウクライナを説得することもしなかった。米国は大局を見ることができず「ロシアのウクライナ侵攻が今日、明日にも始まるぞ」と馬鹿の一つ覚えのようにこの一か月間世界に触れ回ったが、それを現実に阻止する政治行為を一切取らなかった。

 今回、米国はNATOの背後で武器や兵員支援をしたが、紛争回避の政治的解決に積極的に関与しなかった(ロシアの脅威を煽るだけだった)。このことがウクライナ危機を深刻なものとした。再び米国が世界政治史からその影響力を大きく損なう場面となった。

■民衆革命を闘い抜いてきた人々―ウクライナ市民を支持しよう

 ウクライナ民衆はソ連崩壊後の「ウクライナ独立」以降、歴史の荒波に翻弄されつつも懸命に大衆闘争で打開の道を探ってきた。この運動を簡単な枠組みでカテゴライズすることは困難だ。しかし、彼らの闘いは財閥と政界の癒着と政治腐敗をやめさせること、古いソ連以来の政治枠組みからの脱却などであった。オレンジ革命(2004)、ユーロマイダン闘争(2014)さらに現職のゼレンスキー大統領選挙(2019.4)などに示された民衆の高い政治意識は(ゼレンスキーがその期待に応えられているかは別として)、あたかも韓国における反軍閥・反独裁・反財閥闘争のなかで民衆の成長がかちとられたように健全に発展してきたと私は考える。

*************

 今、平和への道は、一義的にウクライナ市民の毅然とした、東西軍拡主義との決別にある。ロシアは軍隊を国境の外に撤退させよ。ウクライナ東部州への新たな軍隊投入を中止せよ。市民は、武器を取りロシア政府の脅迫に立ち向かおう。同時に、ウクライナ国内のロシア人の地位と安全を保障し、かつ国民として対等に取り扱うことをゼレンスキー大統領は約束し宣言せよ。ウクライナの中立こそ平和を守り抜く方法だ。ウクライナ市民は東西軍事同盟の脅しや甘ごとをはねのけよう。ロシアとNATOの軍事機構は、ウクライナの中立を承認せよ。大国同士の取引を監視し不当で不本意な妥協を毅然と拒否しよう。

 世界の人民はウクライナの中立を支持せよ。米国政府はウクライナ紛争を利用して軍事産業の利益を最大化しようとする試みをやめよ。危険な挑発や介入をやめよ。(阿部文明 )


   武装したウクライナ市民は パルチザン闘争を組織せよ!

 ロシア軍がウクライナに侵攻を開始した。

 武装したウクライナ市民は パルチザン闘争を組織せよ!

 徹底抗戦し、プーチンの軍隊に打撃を与えよ。ロシア軍は一枚岩ではない。ロシア軍は混乱している。

 ロシア軍隊の分裂を誘うまで戦おう!

 ロシア内の反プーチン運動と連帯しよう!

 市民の力でウクライナを救おう!(2022.2.25 F.A)

Russian troops invaded Ukraine. Armed Ukrainian citizens organize his partisan struggle!
Fight thoroughly and hit Putin's army. The Russian army is not a monolith. The Russian army is confused.
Fight until you invite the division of the Russian army!
Solidarity with the anti-Putin movement in Russia!
Save Ukraine with the power of the citizens!


   「オミクロン株」を甘く見るな!

●インフルエンザ並?

 これまでの新型コロナ肺炎の変異株と異なり、今回のオミクロン株は「症状がインフルエンザに似ている」と言われているが、この「インフルエンザ並み」という言葉が独り歩きして、「ただの風邪」、「自宅療養で大丈夫」という誤った捉え方が広がっている。

●ただの風邪ではない

 そもそもインフルエンザは「ただの風邪」ではない。ふつうの風邪は、ライノウイルスなどによるもので、十分な休養と栄養の摂取に注意しつつ、抵抗力の回復を図るのが基本だ。

●危険な感染症

 これに対してインフルエンザウィルスの場合は、早期に抗原検査を行い、陽性なら直ちにタミフル等の投与をしないと、重症化し細菌性肺炎などに移行し、死亡するリスクがある。インフルエンザは、新型コロナに負けず劣らず「危険な」感染症なのだ。

●サイトカインストーム

 しかも新型コロナの場合、呼吸器疾患のみならず「サイトカインストーム」による容態急変で、重篤化し死亡することが恐れられてきた。

 オミクロン株では、当初それは少ないのではないかと言われたが、やはり同様な症例が続出し、決して「インフルエンザ」と同じとは言えないことが明らかになってきた。

●深夜の容態急変

 サイトカインストームの場合「自宅療養」がなぜ危険かと言えば、自覚症状が無いまま夜間に急変し、手遅れになる恐れがあるからだ。

 「療養施設」であれば、深夜も含めて医療スタッフが巡回し酸素飽和濃度を測定し、異変があれば医療機関に救急搬送できる。

●自宅療養の危険性

 「自宅療養」の場合、酸素飽和濃度測定器を貸与し、異常値の場合保健所に本人が連絡すれば、救急搬送に繋ぐと言うが、深夜就寝中に急変した場合、本人が連絡するのは困難である。

 実際手遅れになった在宅死は、こうしたケースが多い。自宅療養と療養施設の大きな違いである。

●安易な選別は禁物

 少なくとも、抗原検査が陽性に出て、発熱などの自覚症状があるなら、基礎疾患の有無に関わらず、医療機関に入院、最低限でも療養施設に入ることが必要だ。「重症化リスクのみ入院すればよい」という、安易な選別をすべきではない。

●医療従事者の疲弊

 政府は「第五波を踏まえてベッド数やスタッフの確保など対策を立てた」と言うが、今のレベルでは、全く不十分である。

 重症病床では医師・看護師は過労のため、心身ともに疲弊し、離職が後を絶たない。保健所の保健師も、在宅医療の医師・看護師も、同様の状況である。

●緊急に大増員を!

 「インフルエンザ並み」だから「自宅療養で大丈夫」という誤った認識を改め、医療スタッフの大増員を行うよう声を大にして要求する。(冬彦)


  なんでも紹介・・・漫画でわかる! マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ 監修 斎藤幸平

 経済思想家 斎藤幸平氏が指南役を務め、大きな反響を集めたNHK「100分de名著カール・マルクス『資本論』」再放送されました。

 同番組のエッセンスを漫画でさらにわかりやすく解説した一冊が発売されました。

 長時間労働、格差、不安定雇用、低賃金「資本主義の暴力性」が加速化し社会の矛盾がますます顕著になるなか世界的にマルクスが再評価されています。

 生産力が上がっているのに、人々の暮らしが貧しくなるのはなぜ?

どうして過労死するまで、働き続けなければならないの?

経済成長しなくても「豊かに生きいける」方法はあるの?

 コロナ禍や気候変動といった地球規模の環境危機を踏まえ、いまこそ必要な新しい社会に向けた実践の書として「資本論」を解説しています。

第一章 資本主義の本質は「商品化」にあった
第二章 効率化しても労働時間が減らないのはなぜか
第三章 イノベーションが人間から働きがいを奪う
第四章 「脱成長」にこそ真に豊かな未来がある

 漫画では、会社員の弘恵さんが、毎日必死で働いてヘトヘト、キャンプが趣味で気分転換に休日出かけます。キャンプ場の山を所有する友達から、管理するのにお金がかかるからとキャンプの会費以外に土地使用料を請求されます。すると予定していたお金より高くなるので、土地使用料を払わないで、薪割りなどをして、山を管理するための労働をして、疲れて帰ってきます。

 自然の中にある山の水も商品化しようとしています。

 六甲山の水も昔は父とよく汲みに行ったものです。ある日、柵がされ汲めなくなりお金を払わないと六甲山の湧水は飲めなくなりました。「六甲の水」はヒット商品となり全国で発売されています。

こうやって社会の富を何でも商品化する活動が高じ環境問題に発展しました。

マルクスは、「社会の根源的な富は皆で分かち合い管理する」そういう考え方が持続可能な社会のためには必要だと考えています。もう一度生産手段と自然へのアクセスを平等にして、それらを、共有財産として、皆で管理する。社会に本当の豊かさを取り戻すためには必要なことです。今の過重労働に対しても豊かにならない暮らし対しても同じです。そのためには、私たち一人ひとりがこの目的に共感して行動起こしていくことが必要です。漫画なので読みやすかったです。          (弥生)


  川柳(2020/03) 作 石井良司

マスクでも誰だか分かる三年目
健康に良いと受け売り競い合い
挨拶が済めば話題は三回目

国産のアサリの会話外国語
藤井棋士五冠の笑みも通過点 
ふるさとを聞かれたアサリ貝になる

終活を早くと急かす砂時計(「早」)
寂聴尼恋のゲームを語り終え(「ゲーム」)
ドローンに戦争ゲームさせる国(「ゲーム」)

感染の試合辞退に泣く球児(「ゲーム」)
薬漬け人生ゲーム長過ぎる(「ゲーム」)
難民の新聞記事に腹八分(「食べる」)

再生へIPSが目を開ける(「サプライズ」)
プライドを振りかざさない冬木立(「潔い」)
忖度へ百面相の猿芝居(「百」)

コトコトとおでんが愚痴を聞いている(「おでん」)
無為無策自宅待機の繰り返し(「待つ」) 

マドンナに頬が赤らむ好々爺(「マドンナ」)
マドンナの写真笑顔もセピア色(「マドンナ」)

マドンナの女将待たれる再開日(「マドンナ」)
MVP勝ち取る裏に光る汗(「勝」)


   読書室 アントニオ・ネグリ著『ネグリ生政治的自伝……帰還……』(作品社)二00三年三月刊

○ 21世紀の新たな世界像を分析した浩瀚なマイケル・ハートとの共著『〈帝国〉』で世界が注目する思想家となったネグリによる新機軸の自伝である。この本で彼は最初の政治活動から「赤い旅団」との関係、また逮捕、さらに後のフランス亡命生活、そしてイタリアへの帰還・再逮捕まで、波瀾にみちたネグリの人生と『〈帝国〉』出版に至る思想のキイコンセプトについて率直かつ赤裸々に語り、ネグリのダイナミックな思想は、激動したイタリアの政治状況との深い関わりとその波瀾にみちた経歴からつむぎ出されたものであることがよく分かる。その意味において、ネグリ入門書として実に最適の本である ○

ネグリの経歴と労働者自治運動とは

 著者のアントニオ・ネグリは、一九三三年生まれの八九歳でハンガリー動乱から活動を開始し、『赤い手帳』を創刊し『労働者階級』へと発展させた。一九六八年の学生反乱に端を発したイタリアでの大衆的な反乱の中で、当初はレーニン主義の立場から労働者の組織化と武装蜂起を主張していたネグリも既成「共産党」組織のあり方を批判し、これまで依拠した組織を解散し、労働者の自発性に依拠する運動体を創る。それが七0年代イタリア全土に隆盛の新左翼運動の「労働者自治運動」で、彼はその理論的リーダーになる。

 その渦中、「赤い旅団」によるモロ首相の暗殺事件が発生し、イタリア政府はこの運動の沈静化を狙い、無関係のネグリをでっち上げ逮捕した。ところがネグリは何と獄中から国会議員に立候補し、当選を果たす。そして議員特権により監獄から釈放され、その後フランスへの政治亡命に成功する。パリではドゥルーズ、ガタリなどの支援を受け、パリ第7大学等で教鞭を執る。この時、ルイ・アルチュセールの強い影響を受ける。それ成果が『マルクスを超えるマルクス―『経済学批判要綱』研究』である。一九九七年、ネグリは自主的にイタリアから「帰還」して、空港で再逮捕・再収監される。彼は最重警備獄舎にて画期的なスピノザ論=『野生のアノマリー』を脱稿した。その後、数年かけ徐々に処遇が緩和され、六年後の二00三年四月に釈放となる。その後は、『〈帝国〉』に続く『マルチチュード』等を出版するなど、高齢にも関わらずの旺盛な執筆活動に励んでいる。

ネグリの自伝の新機軸とは

 ネグリの自伝が新機軸だというのは、生政治的なネグリの人生を綴るために、ABC順の頭文字から始まる言葉でネグリにとって特別な意味を持つ言葉を選んで語ることはどうか、との友人からの提案をネグリが賛同し受入れて出来た、読み易いものだからである。

 本の表題になっている「生政治的」とは、初めて聞く人も多いと考える。それは、権力と〈生〉の交差を意味しており、〈生〉を行政的に管理することをフーコーが「生権力」と呼んだのに対して、ネグリは〈生〉の管理に対する〈生〉の抵抗のことだとする。

 まずAはアーム(武器)である。そこではイタリアの国家的なテロリズムが語られる。このため、デモに出かける人々が武器を携行するようになり、ネグリ自身が「国家に対する武装蜂起」の疑いで逮捕された。当時、イタリアではネグリらはキリスト教民主党と共産党との挟み撃ちにあっていた。共産党はネグリらを統御不能の危険分子と見なしていた。ネグリは四年投獄の後、国会議員になったための特権のお陰で出獄し、亡命したと語る。

 Bはブリガード・ルージュ(赤い旅団)で、いまだにネグリが「悪意に満ちた頭脳」だと紹介する人々に対するネグリの反論がなされている。イタリア政治史の一端が分かる。

 Cはシャンプ(畑)で、イタリア語では畑と基地の両義を持ち、ネグリは「畑」に働きかけるように、私の「基地」を選びたいと語る。だがフランス語では「畑」でなく「戦場」だから、そこにいる時のようにネグリは「基地」を選ばねばならないと語るのである。

 以後DからZまでこうしたネグリの語りが続くのであるが、これ以降は省略したい。

〈帝国〉と「マルチチュード」とは

 そこでここでは、ネグリの思想の最大の核心となるEのエンパイア(帝国)とMの「マルチチュード(多様性)」に絞り、ネグリ自身の言葉を使って読者のためにまとめたい。

ネグリは、〈帝国〉をレーニンの帝国主義と同義のものとしては使用していない。それは、「つまり主権の移行、国民国家がある上位の実体に向かって移行する」ことで、そのために〈帝国〉は世界大の国民国家であると暗黙の了解がなされた。この通俗化により〈帝国〉は米国だとの理解が流布したが、現在「軍事的・金融的・文化的・政治的・言語的な領域で生じつつある主権の大きな移行」は「構造的に国民国家の構造とは根本的に異な」る。〈帝国〉は「先進国の労働者階級の行った資本との闘争によって、資本主義体制を国家単位で再生産することが不可能になったこと。反植民地主義戦争やベトナム戦争によって、反帝国主義の動きが高揚して、それが資本の核心部分にまで影響を与えたこと。そして、社会主義諸国を見舞った危機、つまり自由への要求が高まることによって資本の社会主義的管理が発展できなかったこと」、要は「諸過程の蓄積が世界的規模で不均衡をつくりだ」すことにより出来た。その形成過程は起源と発展において矛盾したものである。

 ネグリとハートは、〈帝国〉の内部における党争と反権力の場を確定させ、根元的な要求を確定する。大事なことは以下の三点だ。①グローバリズムに対しては世界的次元での市民権を要求すること②移動の権利、最低賃金を「市民としての収入」と見なす権利を擁護すること③生産は「マルチチュード」に属すること事実を承認されること、である。

 ここで使われる「マルチチュード」は、ネグリのスピノザ研究の成果である。この概念は①「主体の多様性を意味する」。つまり「一なるもの」への還元の誘惑ではなく、逆に還元されざる多様性、点が無数に集まったもの、いわば絶対的に差異化された集合体である。②それは「階級概念でもある。生産的な〈特異性〉の集まった階級、非物質労働のオペレーターの階級である」。分かり易く言うなら第三次産業の労働者たちで、「この新しい労働力は一つの階級ではなくても、極めて強力な生産力である。労働者階級である」。労働者階級の階級闘争はもう存在しないが、今や「マルチチュード」が階級闘争の主体として名乗りを上げた。③その有り様は、「マルチチュード」は存在論的な力であり、それは欲望を表現し世界を変えようとする装置を体現するもの。さらに「マルチチュード」は世界を自らのイメージに似通ったものへと再構築する。「つまり自由に自己表現し、自由な人間の共同体を構成する主観性の大いなる集合的地平として世界を創りかえる」とした。

ネグリは、『〈帝国〉』出版後にこの「マルチチュード」概念をさらに深化させて『マルチチュード』上・下、『コモンウェルス』上・下、『叛逆』を、そして本年二月には『アセンブリー』の邦訳本が出版される。まさにネグリの不断の努力が結実したものである。

「マルチチュード」か労働者階級かの対立

 ネグリの共著者のマイケル・ハートも、二0一九年八月刊行の『資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐』において、斎藤幸平氏から「マルチチュード」という多様性や差異に焦点を当てた主体性の概念がなぜ必要になるのだとの質問に対して、彼は「これまで労働者階級と言えば、多様性というよりは、均質的な階級だと理解されてました」「それに対して、工業化が終わった現代においては、労働者階級を構成する人たちの多様性を認識しておくことが、ますます重要になって」いる。これをプロレタリアートの言い換えだとの批判はその通りだが、ネグリと私が言いたかったことは、「社会変革の主体を多様なものと捉え直すこと」だと答えた。斎藤氏はこうした認識に反論するのである。

 このやりとりはまだまだ続くのであるが、ここではあえて省略したい。果たして未来を切り拓くのは、「マルチチュード」か、労働者階級か。ハートと斎藤氏との実にアクチャルな討論は今でも続いている。翻って読者にはこの両者のやりとりを含めて、ネグリとハートの問題意識を斎藤氏の指摘を踏まえてぜひとも検討して貰いたいものである。
 その意味においてこのネグリの自伝は、ネグリ入門書として最適のものと考える。読者にはぜひ一読を薦めたいと考える。 (直木)


  カジノはいらない!維新政治にストップを!

大阪は、現在府政も大阪市政も維新が権力を握っています。

 大阪では、カジノを含む統合型リゾートIR 予定地の夢洲の土壌改良費用として790億円の税金を投入しようとしています。これはIR予定地のみの費用で、大阪市が夢洲に所有する土地全体なら、1580億円とさらに膨らむと。

 こんなお金があるなら、コロナで苦しむ住民のために医療や福祉、財政援助に振り向けるべきです。

 大阪府と大阪市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐり、誘致の賛否を問う住民投票の実施を求める市民団体が2月21日、大阪府庁で記者会見し、住民投票条例の制定を直接請求するための署名運動を3月25日に始めると発表しました。2カ月間で20万人分以上の署名を目指します。

 署名運動を主催するのは「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」です。

 地方自治法に基づき住民投票条例の制定を知事に直接請求するためには、有権者の50分の1の有効署名を集める必要があります。署名が提出されれば、知事は20日以内に大阪府議会を招集し、意見を添えて条例案を提出しなければなりません。大阪府内の有権者は昨年12月1日時点で約733万人で、50分の1では約14万6600人となります。

 大阪府と大阪市は両議会で整備計画への同意を得て、4月28日までに国に整備認可を申請する方針です。記者会見した事務局長の山川義保さんはこの時期に合わせて運動する狙いを、「行政手続きが進む間に署名を集めることで計画を凍結し、府民の意見を聞いた上で決定するよう求めるため」と。「(新型コロナの感染拡大で)説明会も途中で打ち切られ、住民の意思は全く届いていない。大阪の未来は住民が決めていくと示したい」と話しました。

 カジノに反対する「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」など9団体の方々が、2月10日に大阪市役所で記者会見を開き、代表者3人が意見を表明しました。同団体代表の桜田照雄阪南大教授はIR用地の土壌汚染対策費用を大阪市が負担することについて、「(土地所有者として瑕疵(かし)担保責任をみるという)大阪市の考え方では、(現在示されている土壌汚染対策費の)360億円ではとてもすまない」と費用膨張の可能性を訴えました。理由として「土壌汚染対策法の基準が明らかになるまで20年近くにわたってしゅんせつ土砂や建設残土にかかる環境規制がなかった」ことなどを挙げました。

 また、カジノの違法性阻却の理由とされる「経済効果があり観光産業の振興を通じて大阪経済が活性化される」という経済効果について、「試算の源データの公表を拒否していることは手続きに瑕疵がある」と。

 マイス施設が当初計画の5分の1の規模でスタートすることについて憤るのは「大阪を知り・考える市民の会」の中野雅司世話人。「延べ床面積が10万平米から2万平米に縮小されていた。インテックスが7万平米で、インテックスよりはるかに小さくてしょぼい。これで本当に統合型リゾートと呼べるのか疑問。看板に偽りありと言わざるを得ない」と。

 「あかん!カジノ女性アピール」の藤永のぶよ代表も大阪市から入手した資料を示し、「廃棄物関連ごみが約1400万トン埋まっている。すでに埋まっている廃棄物の中には産業廃棄物があり、汚染土壌対策の費用がますます増えていく」と。

 カジノは、博打です。そんなものを認めるわけにはいきません。何としてもストップしなければなりません。そして、カジノを推進しようとする維新政治も止めなければならないです。 (河野)


 敵は国内にいる 戦争勢力の跳梁を許すな(中)―日米軍事同盟の変化と深化

■日米&英仏共同軍事訓練の拡大

共同軍事訓練の「意義」については一般的に以下のような説明がなされる。「実戦経験豊富な米軍から習得できる知見や技術は極めて貴重。日米共同方面隊指揮所演習、対潜特別訓練、日米共同戦闘機戦闘訓練など各軍種において、相互運用性及び日米の共同対処能力の向上の努力を続けている」(2020防衛白書)

 その頻度や延べ日数などはグラフのように拡大している。そればかりではなく、戦略プランの統合性に基づく日米共同作戦計画といってよいものへと質的にも変化しつつあるようだ。順番に見てみよう。
     「しんぶん赤旗」2021/2より

 資料のグラフを見れば、安倍政権以来日米共同軍事訓練は飛躍的に増大したことが知られる。そして当の安倍晋三氏はそれを誇りとしている。21年になってもこの傾向は続いている。新聞に報道されたものから去年の分もいくつか「見出し」を拾って見てみよう。

 自衛隊、米軍と共同訓練 沖縄の先島海域で初・尖閣問題で中国をけん制21/11。フランス陸軍、米海兵隊との共同訓練「アーク21」、陸上自衛隊が霧島演習場(宮崎県、鹿児島県)で実施。日米英蘭加新6カ国共同訓練異例の空母3隻展開 2021/10。日米 南シナ海で初の潜水艦参加訓練21/11。日米共同訓練(レゾリュート・ドラゴン21)に北海道と東北で実施21/12。

 さらに「史上最大の軍事訓練」が去年9月から11月にかけて実施された。「中国の脅威」を念頭に約十万人を動員する過去最大規模の自衛隊演習。そのうち約1万2000人の隊員と約3900台の車両を九州の演習場に集結、民間のフェリーなど輸送機関も巻き込みながら、全国の自衛隊では有事即応体制の構築が目指され、在日米陸軍も参加等々。

 共同訓練が国内のみならず、西太平洋に拡大。さらに米国との共同訓練のみならず英仏などへと拡大していることが分かる。

 「沖縄タイムス」は以下のような指摘をしている。陸上自衛隊の作戦や部隊運用の原則を定めた最上位の教範「野外令」について、日米共同作戦に関する従来の記述「我が国への侵略を排除するため」との文言が2017年の改訂で削除されたことが12月11日、分かった。17年改訂は日米共同作戦を「我が国の平和と安全を維持するため」と日本の有事に限定していない。日本の安全保障政策の基本となる「専守防衛」から逸脱し、自衛隊の役割が変化しつつあることを示している。「日本有事を米軍が支援するシナリオではなくなり、自衛隊の海外での戦争を示唆している」(沖縄タイムス2021/12/13)。

 この転換を導いたのが2015年成立の「新安保法制」だ。

    ハイポスト2015/7

■「専守防衛」から「海外日米共同軍事作戦へ」―集団的自衛権と新安保法制による枠組みの大転換

 「新」安保法制は歴代内閣が否定してきた集団的自衛権の行使容認を基礎として米軍ら同盟軍の戦争行為に共同対処するものだ。米軍はすでに世界各地に軍隊を送り込み殺戮を繰り返しているのだから、この米軍が攻撃(反撃)される可能性は高い。そのさい、日本領海外・領土外でも米軍とともに「戦う」ことが定められたのだから危険極まりない「戦争法」なのだ。

 この法律の制定とともに、残念ながら「専守防衛」と憲法九条は放棄されたといって過言ではない。現在、自民党国防族や防衛省などで盛り上がっている「台湾(海峡)有事」論などは「日本の存立危機事態」だとしてさらに拡大解釈(つまり派兵可能性)をおしすすめている。制限があいまいな法は時の政権によりいくらでも海外軍事関与を正当化させる危険性がある。

 北朝鮮を主に念頭に置いた「敵基地攻撃能力」論。2月に岸防衛相は「敵国での軍事拠点空爆」を認めた。現役の防衛相は「専守防衛」も「憲法九条」もすでに突破され乗り越えられたものとして一顧だにしていない。日本政府には憲法遵守精神はもとより戦争の悲劇的結末への想像力さえ見られない。

■南西諸島で基地「日米共同使用」計画

 さらに今年の「2+2」では「閣僚はまた、日本の南西諸島を含めた地域における自衛隊の態勢強化の取組を含め、日米の施設の共同使用を増加させることにコミットした」と。つまり、対中国戦争作戦に沖縄等南西諸島が重要な前線基地として想定されていることが明示された。沖縄を再び戦場として想定するこの戦略は到底受け入れられない。

 沖縄県民の反発は不可避である。「住民はもとより国会も国民も無視して戦争準備を進めるこの事態は、〈軍部暴走〉の再来と言うべきではないか。自衛隊に対するシビリアン・コントロール(文民統制)を機能不全にさせる暴挙」(琉球新報)。

 自衛隊基地が南西諸島で建設され、すでに奄美大島、宮古島、そして現時点では住民力で阻止しているが、石垣島もミサイル基地化されようとしている。今回さらに米軍の出撃拠点としても「共同使用」され沖縄本島を含めたこれらの「基地の島」は、中国軍事包囲網の最前線と明確に再定義された。こんなことが推し進められれば住民が戦争に巻き込まれるのは必至だ。

 ところが防衛省には住民救済計画がないという。自衛隊制服組幹部は「申し訳ないが、自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と吐露した。第32軍司令部の神直道航空参謀は戦後、「軍隊は敵のせん滅が役目。住民を守ることは作戦に入っていなかった。住民は大事だが作戦にとっては足かせになる。純粋に軍事的立場からは住民を守るゆとりはない」と述べている。「軍隊は住民を守らない」が沖縄戦の教訓だ(琉球新報)。

 さらに懸念されるのは「共同通信」にスクープ(去年12月)された日米共同作戦計画作成だ。ところが今年1月の「2+2共同声明」ではその公表を意図的に避けたとみられる。国民とりわけ沖縄県民の激しい反発予想したからだろう。国会の議論も経ず国民の見えない場所で、南西諸島から台湾に至る日米共同軍事計画作成を進行させている。これが「遠征前方基地作戦(EABO)」という無謀な戦術だ、それについて次に見てみよう。

■台湾「有事」と「遠征前方基地作戦(EABO)」の現実化

 共同通信が昨年暮れに報じた内容はおおよそ次のようなものである。米海兵隊は、小規模の部隊を敵ミサイルの射程圏内にある複数の離島に展開して攻撃拠点を確保し、味方艦艇の行動を支援する「遠征前方基地作戦(EABO)」を採用し、訓練を続けている。中国の高性能ミサイルに対抗するため従来の、敵の眼前に大規模部隊を強襲上陸させるという考え方を見直したのである(共同通信)。

 「自衛隊はEABOに基づく共同作戦を将来のものと考えていたが、台湾有事への危機感を募らせた米軍が今回、策定へと押し切ったようだ。」(琉球新報)。  この作戦はもともと米国海兵隊のものだ。自衛隊との役割分担や南西諸島の島々がどのように作戦に巻き込まれるのかが大きな問題となる。

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 別の資料を見てみよう。21年4月、米海兵隊のデイヴィッド・バーガー司令官は、『フォース・デザイン2030:年次改訂版(Force Design 2030 Annual Update)』を発表した。これは1年前に公表された改編構想をアップデートしたもので、海兵隊の将来像をより具体化したものとなっている。その肝は、米海兵隊がノルマンディー型の強襲揚陸作戦によるパワープロジェクションから脱却し、対艦ミサイルを含む分散型拠点を一時的に敵対勢力の影響下にある海域内の島嶼や沿岸部に前進配備することによって、海軍のシー(オフショア)コントロールに寄与する方向に作戦構想の転換を図っている、要は「拮抗する敵対勢力が存在する中での作戦」海上・航空優勢獲得のために作戦する艦隊をサポートするため、「海兵隊が一時的に小規模かつ分散した拠点を前進させることが主眼」となり、このための拠点は、対艦火力、局地防空、航空燃料・弾薬の再補給に必要な能力を有し、かつ、迅速に展開できる機動性に富んだものとなる。EABOの眼目は、「海において、海から、また、地上から海に対して戦い」、かつ、「敵の長射程火力の射程内で作戦し、残存し続ける」ことである(笹川平和財団)。

 中国側の本土・領海防衛網である接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略は、皮肉なことに日本以上に「専守防衛」だ。この中国の強固な防衛網を外側から包囲するのが、シー(オフショア)コントロールである。自衛隊も参画している米軍の中国包囲網戦略だ。それに対してEABO作戦は、単に中国包囲だけではなく「その内部に侵攻」し、A2/ADを突破して拠点を作り味方の軍事力をその内部に導くという役割があるようだ。
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最新鋭の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)、EABO作戦のカギとなる兵器だ。

 去年3月の日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)共同声明で「実戦的な二国間及び多国間の演習及び訓練が必要」と明記されたことを踏まえ、自衛隊としては初めて、EABOとの連携を訓練の目的に据えた。

 2018年末に改定した防衛計画の大綱では陸海空の領域に宇宙・サイバー・電磁波領域を融合させる「領域横断作戦」を打ち出している。陸自の吉田圭秀幕僚長は18日の記者会見で「領域横断作戦と米海兵隊のEABOの連携を図ることが最大の焦点だ」と述べた。(産経2021/11)

 最新鋭の高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)を日本国内で長距離空輸は陸自の傘下のもとすでに実施された(レゾリュート・ドラゴン21)。「沖縄県の離島などで有事」が発生した際、遠方から展開した海兵隊がハイマースと陸自の地対艦誘導弾(SSM)で中国のミサイル網に対抗する作戦をとろうということだ。

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 作戦としての「EABO」は、「互角の戦力」を相手にした場合の敵の弾幕に突撃することを意味する。戦後の米国の世界戦略の先鋒であった海兵隊は圧倒的な火力と制空権のもとでの「上陸作戦」を当然のものとしてきた。しかし、中国の本土ないしは台湾、そして南西諸島での軍事作戦は優越した中国軍の火力を突破しなければならないと想定される。中国はなんどか触れたように日本以上に防衛を徹底しており、ミサイルなどで近海での他国の軍事行動を抑止している。それは敵に対する「接近阻止・上陸拒否」戦略といわれる。

 「日本側は離島防衛などでEABO部隊の来援に期待する。」(産経)としているが、これは誰が見ても危険極まりない非人道的作戦だ。有人・無人の島しょにいきなり上陸して「基地」を作るという。「敵」の雨あられの弾幕下で生き延びて反撃拠点を構築し維持しさらに移動するという。島民にとって危機の到来なのはもちろんだが、兵士たちが大量に戦死する可能性がある。米国のような訴訟の多発する国柄からすればこのような作戦判断は可能なのだろうか?

 そこで、思い当たるのが共同新聞のスクープにあった「日米共同作戦計画」の作成だ。日本の自衛隊の代行が進められるのは必至ではないのか。(続く 阿部ぶんめい)


  「沖縄通信」・・・ウクライナと沖縄

 この原稿を2月25日(金)に書いているが、東京新聞1面の大見出しは「ロシア、ウクライナ侵攻」である。

 ロシア軍は24日ウクライナへの侵攻を開始し、首都キエフなどの軍事施設をミサイルで攻撃し、制空権を握り、地上部隊が国境を越えてウクライナ全土に侵攻した。心配されていたロシア軍のウクライナ侵攻が始まってしまった。その攻撃の凄まじさと被害を受ける住民の姿をテレビを通じて知る事が出来る。

 攻撃を受けた住民の姿がテレビに出てくる。自分の家が攻撃で破壊され悲しむ人、地下鉄に避難する住民、シェルターに逃げ込む子どもたちの姿、車でキエフを脱出しようとして大渋滞の自動車道路、銀行やスーパーに並ぶ住民、等々が・・・。

 この逃げ迷うウクライナ住民の皆さんを見ていて、1945年の「沖縄戦」の事を思った。戦争になり、武力の強い軍隊から攻撃された住民は逃げ迷うだけである。

今の沖縄はまた「大きな戦争」に巻き込まれる危険性を抱えている。

 1月の「日米2プラス2(外務・防衛閣僚協議)」の合意以降、台湾有事が発生した際、南西諸島を軍事拠点化する日米共同作戦計画によって、台湾有事に米軍が関与すれば自衛隊が支援、共同対処し、米中戦争に自動参戦する流れが進んでいる。
 そんな時、米軍は2月8日~13日に那覇軍港で約250人が参加するオスプレイによる「非戦闘員避難、大使館増強」訓練を強行した。戦事下の米国人避難、大使館の警護を強化する訓練だ。軍事や安全保障の専門家は「台湾有事」に関連する訓練と見ている。アメリカは米国民、大使館員の救助を最優先する。

 この那覇軍港は旅行客の玄関である沖縄空港の近くで、空港から那覇市内に車で向かうと左側に金網のフェンスが続く広い場所が見える。ここが那覇軍港(55、9ヘクタールで東京ドーム12個分)である。米軍関係の貨物の積み下ろしに使われて、ベトナム戦争時はこの那覇軍港に「戦車」や「軍用車」が多く並びフル活用されていた。しかし、最近はほとんど活用されず「遊休化している」状況であった。

 沖縄県は在沖海兵隊と日本政府に「那覇軍港の使用目的は港湾施設だから、訓練する場所でも航空機が飛び場所ではない。県民に新たな基地負担を強いるもので断じて容認できない」と訓練の中止を申し入れた。ところが、米軍は「九州や東北などでも同じような訓練をやっている」と反論。日本政府も「合意の範囲内との認識を示した」と言う。

 とんでもない、この那覇軍港は那覇市の市街地にあり、沖縄県庁や那覇市役所からわずか1キロの場所にある。地元の那覇市長は「こんな密集した地域での訓練と言う事は容認できない」と反発。地元住民も「県庁や高層ビルが立ち並んだところで、万一のことがあれば大変な事になる」と抗議の声を上げた。

 今回はデモ行動を米兵が制圧する訓練もあった。軍港内の建物周辺に鉄条網が設置され、銃で武装した兵士が警備するように配置。私服姿の男性らがプラカードを持ち、何か叫びながらデモのように動きを繰り返した。民間人を装う私服の米兵が掲げるプラカードには「US EMBASSY DISTURBS THE PEACE(米大使館は平和を乱す)」と書かれていた。米兵が銃を構えて民衆を制圧し大使館を警護する訓練である。

 このような台湾有事への日米関与で沖縄が戦場となることを危惧して、沖縄県民の有志の皆さんが「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」を立ち上げて活動を始めた。

 誰でも加入できる会である。本土も私たちもこの会に参加して一緒に活動していくことを呼びかける。
(富田英司)


  公安警察に法の網を!2・21大垣警察市民監視違憲訴訟判決傍聴記

 岐阜地裁民事2部(鳥居俊一裁判長)は2月21日、岐阜県警大垣署員が中部電力子会社シーテックに原告4人の個人情報を提供した行為は違法だと認定し、岐阜県に国家賠償としてそれぞれ4人に金55万円の支払いを命じた。

 裁判長の声はよく聞こえなかったのだが、「却下」と「その余は棄却」という言葉のあいだに何か言ったようだった。これでは完全に敗訴かと思ったら、旗出しでは「勝訴」となっていたので、余計にわからなくなった。説明を聞いて、損害賠償として総額440万円を求めていたものが、220万円が認められたというものだったことがようやく理解できた。この訴訟は国家賠償請求と個人情報抹消請求を行っていたが、情報抹消については請求が特定されていないとして「却下」となった。

 裁判終了後の報告集会で発表された原告弁護団声明は、この点を次のように述べている。

「公安警察は、犯罪などとは関わりなく、目星をつけた特定の個人について個人情報を収集し、保有しているが、それを外部の第三者に無断で提供したことが違法と評価されたものである。訴訟において、公安警察は「公共の安全と秩序の維持」のために必要な活動であると主張していたが、判決はこの主張を退けて原告らのプライバシー侵害を認め、国民の権利を守る正当な判断を下した」

 声明は「しかしながら」と続き、個人情報の収集と保有に関する判断を批判した。
「判決が、収集・保有の必要性がないとはいえないと判断し違法性を認めなかった点は問題である。公安警察が個人情報を収集・保有する明確な法的根拠は存在しない。公安警察は警察法2条1項を根拠として主張しているが、同条項は、『公共の安全と秩序の維持』という行政事務を警察組織に委ねるという組織規範であって、権限規範ではない。国民は、法的な根拠なく、公安警察に個人情報を収集・保有されているのであり、プライバシーを侵害されているというべきである」

 岐阜県警・県公安委員会はこうした情報の取集・保有・提供を「通常の警察業務の一環」だと強弁していた。判決で〝提供〟に関しては違法だとされたことは大きな成果である。漏洩とかの過失や個人の行為ではなく組織としての行為に対する判断であり、「裁判所が公安警察の活動を違法とすることは極めてまれ。非常にいい判断だ」と弁護士は語った。判決は、プライバシーのなかでも思想信条に関する個人情報はなおさら認めがたいとしている。

名古屋地裁ではDNAデータ抹消命じる判決!

 1月18日の名古屋地裁(西村修裁判長)判決も注目すべきものだった。愛知県警に原告のDNAと顔写真データ抹消を命じたもので、携帯電話データについては抹消を認めなかった。判決はプライバシー権を保障する憲法13条を根拠に、4情報(名前・性別・生年月日・住所)に比べ、「DNA型や指紋はより高い秘匿性が認められるべきもので、公権力からみだりに取得されたり、利用されない自由が保障される」と指摘している。

 残念ながら被告が控訴したので原告も控訴し、この判決は確定していない。そもそも、DNAの採取や保管、抹消について定めた法律はなく、法の定めにないことは何でもやっていいという都合のいい解釈のもと、警察・公安による法的根拠のない市民監視、情報の収集、プロファイリング等、目に余るものがある。

 そしていま警察法改悪、「サイバー警察局」新設という野望をたくましくしている。その狙いは警察庁に言論・表現を専門に取り締まる警察組織の新設であり、都道府県の警察の枠組みを超えて警察庁が捜査権限を持つことを可能にするもの。これは、戦前の国家警察の反省から生まれた自治体警察の枠組みを骨抜きにしようという目論見のようだ。

 原告弁護団は最後に次のような決意で声明をしめくくっている。

「公安警察が原告らの個人情報を保有する限り、いつまた今回と同じような違法な情報提供が行われるとも限らない。この点についての原告らの不安は大きなものがある。これを解消するためには、公安警察が保有している情報を抹消させるほかない。
 公安警察が特定の個人に着目して情報を収集し保有し続ける行為は、国民監視という他なく、国民の政府に対する市民活動や表現活動を委縮させるものである。本判決は、この観点からの判断を不十分と言わなければならない。

 弁護団は、引き続き、公安警察による国民監視を許さず、個人情報の違法な収集・保有に対して抹消請求が認められるよう取り組んでいく決意である」

 原告がいみじくもこの事件の発覚は氷山の一角に過ぎないと指摘したが、こうした事態は誰にでも起こりうるものであり、対岸の火事ではない。ただ、発覚していないだけかもしれない。公安警察に法の網をかけ、その手を縛る以外にこの危険を回避することはできない。 (折口晴夫)

事件の概要(2014年7月24日「朝日新聞」スクープ)

 大垣警察が、勉強会を開いた地元住民2名と脱原発活動や平和運動をしていた大垣市民2人の「氏名」「学歴」「職歴」「病歴」など個人情報、地域の様々な運動の中心的役割を担っている法律事務所に関する情報を事業者に提供してたことが発覚しました。

 2015年、証拠保全手続きにより、シーテック社が作成していた意見交換記録「議事録」を入手し、大垣警察署が住民運動・市民運動を敵視し、事業者に「運動潰し指南」を行っているさまが赤裸々に記載されいます。
*大垣警察市民監視違憲訴訟基本資料集(改訂版・「もの言う」自由を守る会)より。なお、「勉強会」「運動潰し」とはシーテック社による巨大風力発電施設計画反対に関するもの。


  コラムの窓・・・監視捜査の先の監視社会!

 大阪高裁での2月10日のマイナンバー違憲訴訟控訴審第2回口頭弁論、危うく結審になりかけたけど、弁護士の奮闘で次回期日が入りました。この日、原告側から福島至龍谷大学名誉教授の意見書が提出されましたが、実に明快な内容でした。「監視捜査」についての考察、例えば尾行や張り込みなどはよほどひどい対応でなければ任意捜査に入る。そして、捜査令状が必要なのが強制捜査、だと。

 こちらにも問題が多く、裁判官は検察からの求めに何でも応じてしまい、捜査令状を出しています。外部の判断とはいえ、実際には司法という官僚機構の内輪の判断に過ぎません。自治体に対する住民監査請求がほとんど退けられているのと同じで、市民的常識が通用しない強制捜査が横行しています。

 福島氏の意見書が取り上げているのは、任意捜査には外部(裁判所とか)の判断が入らないので、捜査側の判断で権利侵害の「監視捜査」が横行しているというものです。特定の対象への監視カメラの設置、GPS捜査などは発覚したから問題となりましたが、マイナンバーカードによる本人確認は顔認証とシリアル番号で個人の行動が特定され、シリアル番号はマイナンバーと紐付けられ、個人の行動が丸裸になります。

 GPS捜査は2017年の最高裁大法廷判決で、「個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害しうるもの」とされました。福島氏は捜査手法を3分類し、①市民やDNA型の照合による人物の特定、②特定の人物の情報を統合して人物像を得る、③対象を人物を特定せずに多数の者の大量の情報を統合分析して捜査対象者を浮上させる。このうち、②と③を現代的監視捜査としています。

 第2類型型は、「インターネット商店の購買歴や銀行の取引記録、IC乗車券の入出場記録など、対象者の日々の行動に伴いデジタルデータとして残す痕跡を手掛かりに、特定の者の行動を再構成する手法である。」

 第3類型型は「事件の現場付近の防犯カメラの画像や最寄り駅におけるIC乗車券による改札口通過記録などを収集し分析し、さらには同種事件の防犯カメラ画像の分析などを加え、容疑適格者として抽出していく捜査が考えられよう。抽出の過程では、犯罪プロファイリングの技法も用いられる。」

 福島氏はこれにマイナンバーが結び付けられることを危惧しています。「捜査機関は、対象者のマイナンバーに紐付けられたこれらの情報を、マイナンバーのデータベースの関連情報について開示を受けることによって、容易に取得することが可能である。」と指摘。現在、政府がマイナンバーカードの取得と活用を促進していることと合わせ、次のような想定を行っています。
「例えば、病院の診察歴や投薬歴、ワクチン接種歴、キャッシュレス決済による購買歴、図書館の利用歴など、生活履歴に関する情報を取得することができるであろう。これらの情報量は膨大なものに及び、網羅的な質を有し、しかも無限定に拡大しうる。」

 さて、この日の法廷で原告側弁護士が問題としたのは、任意捜査の判断は何によって担保されるのかという点でしたが、国側は何によってそれが権利侵害に及ばないようにできるのか答えられなかったのです。結局それは、現場捜査の成り行きだったり、決まっていないことはやってもいいという意味での〝任意〟にすぎないのです。任意捜査は〝任意〟であるがゆえにやりたい放題、というところでしょうか。 (晴)


  色鉛筆・・・原発賠償ひょうご訴訟、本人尋問始まる
 
2011年3月11日、東北大震災で津波が押し寄せ甚大な被害となり、東電福島第1原発で事故が発生したことは、今でも鮮明に記憶に残っていると思います。あれから、11年。被災地はどうなっているのか? 以前の生活を取り戻せているのか? とりわけ、原発被害で避難した人たちの生活は? 今でも、各地で裁判が続けられている現状からは、厳しい条件の下での生活を強いられていると言っても、過言ではないでしょう。

 ひょうご訴訟は、2013年9月に神戸地裁に提訴され、国と東電の賠償を問うてきました。いよいよ、今年1月から本人尋問が始まり、31世帯84人の原告が7回の期日で年内終了予定で行われることになっています。弁護士によると、担当の裁判長が理解があり、この裁判長の任期中に尋問を終わらせ、判決につなぐための期日設定のようです。

 1月20日の本人尋問には5名の原告が立ち、震災当時の住居は、郡山市2人、富岡町1人、南相馬市2人でした。それぞれ、原告側弁護士からの主尋問が20分、東電・国側の代理人による反対尋問が40分で、合計1時間の尋問となりました。最初の尋問は原告代表の橋本洋一さんで、自宅が全壊し、続けたかった画材店も廃業を余儀なくされ、家族で兵庫県への避難したこと。その後の避難先では、慣れない土地で仕事も安定せず、妻と孫に甲状腺の異常が見つかったと説明。故郷への帰還は「諦めていない」とする一方、公表される故郷の放射線量は「『平均的数値』とあり、そのまま信用できない」と、国・東電への不信感が顕わになりました。

 反対尋問では、画材店の経営状況と避難先での仕事からの収入などを確定申告書を示して比較し、避難して収入が増えたように印象づける場面がありました。単純な数字の比較だけからでは、画材店を失った喪失感や新しい土地での不慣れな生活の苦労は見えてきません。そもそも、原発事故が無ければ、自宅も画材店も失う事は無かったのです。国と東電は自分たちの責任を放棄して、よくもそんな反対尋問が出来たものだと、腹立たしく思います。

 他の原告の反対尋問でも、子どもの習い事の月謝をこと細かく確認したり、夫婦で障がいがあるのに交通費が減額されない請求額になっていることの指摘や、娘の家へ避難した場合の宿泊費は0円になるはずと、執拗に原告を困らせ少しでも賠償額を減らすことだけに専念してるようです。尋問が終わると傍聴席から自然と拍手がおこり、裁判長は制することなく静かに見守っていたことも付け加えておきます。

 裁判に持ち込まない場合、「原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)」に相談することも出来ます。しかし、センターが提示した賠償金額を東電が受け入れずに、長引いている例が多いようです。2020年3月26日には、文部科学省から、東電に対し「センターの示す和解案の受諾を拒否したことにより和解仲介手続が打ち切られた案件や、貴社の被害者の方々に対する賠償の姿勢について、地方公共団体や関係団体から当省に是正を求める要望が寄せられて」いると要請がなされています。

 そんななか、今年1月27日、6人の若者が東電を提訴しました。当時、6歳から16歳の男女6人が、甲状腺がん発症は福島原発事故による放射線被曝の影響として、慰謝料を総額6億1600万円請求しました。26歳の女性は、「甲状腺がんで苦しむ子が300人いる、声を上げることで少しでもいい方に状況を変えたい」と訴えています。ふつうのくらしを取り戻したい! 福島からの避難者、帰還者への支援は、まだまだ続きそうです。

なお、裁判報告は「ふつうのくらしニュース」2022年2月10日号を参照しました。(恵)