ワーカーズ673号 (2025/12/1)
案内へ戻る
軍国主義の高市政権を早期退陣に追い込もう!
高市政権が2025年10月21日に発足してから、1カ月が経ちました。報道各社の直近の世論調査で内閣支持率は70%前後を維持しています。
「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」「責任ある積極財政の考え方の下、戦略的に財政出動を行う」。 高市首相が就任後初の所信表明演説には、こんな言葉が並んでいます。
立憲民主党の岡田克也元外相は衆院予算委で、高市首相が首相就任前、中国が台湾に武力侵攻すれば日本の存立危機事態になり得ると発言したことに対し「軽々しく言うべきではない」といさめましたが、首相は「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁しました。
現代では「戦艦」を現役艦として運用する国はありません。官僚が書いた答弁でないことは明らかです。就任後もブレない姿勢を示したかったのだとしても、現職の首相として初めて対中戦争の可能性に踏み込み、中国を挑発する結果になりました。
台湾統一を悲願とする中国の怒りは収まらず、高市首相の答弁撤回を要求し、経済面の対抗策を繰り出し続けています。日本の輸出入総額のうち2割を占める中国。高市首相が体面を保とうと譲らず、経済損失が膨らめば国民生活が痛むことになります。
高市首相は経済運営に関し、戦略的な財政出動を成長につなげ、税収も増やすと。要するに金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」を掲げた第2次安倍政権の経済政策アベノミクスの再現です。
約8年に及んだアベノミクスは結局、経済成長につながらず、その後も続いた金融緩和は急速な円安と物価高騰をもたらし、実質賃金の長期低迷は今も国民生活を圧迫しています。
高市首相の、国会での「台湾有事」答弁の影響で、中国人の訪日が大幅に減りそうです。2024年の外国人訪日客の旅行消費額のうち、中国人は全体の21%、約1.7兆円で首位でしたが中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけているためです。
政府が11月21日に閣議決定した経済対策は、2025年度補正予算案の歳出とガソリン減税の効果などを合わせると21兆3千億円規模に膨張しました。国債の追加発行を見込む市場では財政悪化の懸念から国債が売られ、長期金利は約17年ぶりの高水準に上昇、円安も止まりません。
高市政権は財政悪化に拍車をかける防衛費のさらなる増額を視野に入れ、殺傷能力のある武器の輸出拡大、非核三原則の見直し、スパイ防止法の制定など軍国主義の濃い政策も進めようとしています。歯止め役を自任した公明党に代わって連立に加わった維新は、高市政権の軍国主義を急進的な姿勢で後押ししています。また、維新は副首都構想を持ち出し、過去2回の住民投票で否決された大阪都構想=大阪市廃止・分割の実現を目指しています。
百害あって一理なしの高市政権、多くの住民の怒りで退陣に追い込みましょう。(河野)
〝国家ありき〟の危険な高市政権――高市首相のトンデモ〝戦争宣言〟――
高市首相から〝戦争宣言〟が飛び出した。
集団的自衛権を限定容認した安倍政権による安保法制は、〝専守防衛〟の否定だった。
岸田政権による安保三文書は、〝先制攻撃〟の解禁だった。
日本が攻撃されてもいない段階での〝敵国〟への先制攻撃も厭わない……。高市首相の今回の国会答弁は、そうした近年の一連の日本政府の本音を、内外に露わにしたものだ。
戦争へと突き進みかねない国家間対立の発想と対立のエスカレーションを乗り越え、国境を越えた反戦平和の闘いの視点に立ち返るべきだ。
◆高市首相の〝戦争宣言〟
11月7日の〝戦争宣言〟から、早1ヶ月弱。日中関係の険悪化をもたらした高市首相の発言は、中国による台湾への武力攻撃が日本の存立危機事態だと判断されれば、日本の中国への武力行使につながり得る、というものだった。
あの安倍〝安保法制〟での集団的自衛権の部分的容認は、「日本が攻撃されない限り、他国に武力行使はしない」という、いわゆる〝専守防衛〟の否定であり、岸田政権の〝安保三文書改訂〟による、日本は〝先制攻撃〟も可能だ、という立場のあからさまな表明だった。それを特定の〝地域〟と〝対象国〟と〝事態〟を挙げて公言したもので、強い言葉が好きな首相は、どこかで、いつかは明言したいと考えていたはずだ。
この首相発言に対し、政権内外から「不注意だった」「手の内を見せてしまった」との批判もある。が、今回の問題はそんな外交技術にとどまる話ではない。日本の政権トップが、日本が武力攻撃されてもいないのに、中国と戦争する意思を宣言してしまったからだ。
筆者は前号で、高市首相による靖国神社参拝は、中国や韓国のハレーションを引き起こす、と危惧する言葉を記した。首相に就任したばかりの高市氏は、まずは秋の例大祭での靖国参拝は見送った。が、今回の台湾有事での武力介入発言で、中国のハレーションを招き寄せる結果となった。
この発言に対し、中国はすぐさま対抗措置を拡大しており、そのことに対しても、国内からは反発も拡がっている。そうした相互のエスカレーション自体、以前から想定されていることであり、まず、避けるべき事だったはずだ。
◆悪循環を招く〝威勢のいい言葉〟
国家間対立の局面では、威勢がいいことががまかり通る。今回もだ。たとえば「首相発言は撤回する必要は無い」「中国の大阪領事を国外退去させよ」「中国の対抗策には毅然と対抗せよ」等々。
高市首相は対中強硬派として〝強い言葉〟を売りにして、安倍元首相の後継者を自認してきた経緯がある。日本の政治リーダーが一旦明言した以上、簡単には取り消せないし、中国が〝撤回〟を要求している今、なおさらだ。その結果中国は、レッドラインを越えたとして、日本への渡航自粛や交流縮小、それに水産物の輸入制限など、矢継ぎ早に対抗措置を繰り出している。要するに、絵に描いたような国家間対立のエスカレーションだ。
このエスカレーションは、戦前にも何度も経験した経緯がある。
たとえば戦前の1922年のワシントン条約での海軍軍縮条約での〝屈辱的な妥結〟と国内の反発、その10数年後のロンドン海軍軍縮条約交渉での、反発する日本の脱退と欧米列強との対立の拡大。その結果としての、対米英戦争への突入などだ。
現状の日本でも、軍事増強、対中強硬論がまかり通る現実。ネット世論ばかりではなく、普通の世論調査でも、高市政権への高い支持率も含め、強硬論もまずは受け入れている現状にある。
他方、政権と対峙すべき立憲民主党は腰砕けだ。あれほど反対してきた安倍首相の安保法制に対し、野田代表は、違憲部分も今すぐ廃止しなくても良い、と発言し、また立憲の創設者である枝野元代表も、安保法制合憲論など、妥協を重ねている。さらに、野田立憲民主は、当初の〝リベラルの立憲〟を捨て、〝中道ど真ん中〟という立場を強調するありさまだ。
◆戦争準備は新たな段階へ
いうまでもなく、高市発言は〝失言〟などではない。本音・本性の発露であり、確信犯の発言だ。かつての安倍元首相による〝台湾有事は日本の有事〟麻生元首相による〝台湾有事で闘う覚悟〟などと同じ立ち位置だ。
いま進められる防衛費倍増の前倒し達成や、〝非核三原則〟の〝二原則化〟と将来的な核保有への野望、原子力潜水艦の保有も含めた安保三文書の改訂、それに国家情報局や日本版CIAの設置等々。これらを見れば、明らかに〝戦争も視野に入れた国への脱皮〟そのものだ。
日本の核保有にしても、かつては技術的には〝1年もあれば〟や〝半年で〟から、今では、〝一夜にして〟保有できる、というのが現実だ。
具体的には、弾道ミサイル製造技術はイプシロン・ロケットで、大気圏への再突入技術は〝地球帰還衛星ハヤブサ〟で、ウラン濃縮技術は六ヶ所村の日本原燃施設で、核燃料は再処理で大量にため込んでいるプルトニウムで、すでに保有している。いきなり核武装では、核不拡散条約や米国との原子力協力協定という高いハードルがあり、また国内でも反核のハレーションを引き起こす。まずはその入り口として、〝三原則〟から〝二原則〟へ、などと言っているわけだ。
日本はあの敗戦で二度と戦争を起こさないと反省した、ことになっている。が、今ではそうした反省はどこへやら、〝戦争前夜〟の様相がしだいに拡がっているのが実情だ。その兆候はすでにあちこちで現実化している。
敗戦80年の今年、戦前の出来事、総力戦研究所による〝必敗〟の対米英戦争になぜ突入したのか、というテレビ・ドラマ『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』が注目を集めた。そのドラマに歪曲があった、という疑義も含めて、だ。
○歪曲は別として、〝必敗〟が明らかな戦争に、なぜ突入したのか。後から振り返れば、それは個々の強硬論の相乗効果としか思えない事態が、今、まさに日本で繰り返されている、という現実だ。
自民党ばかりでなく急進右派の参政党や維新の会、それに国民民主も含めて、勇ましい強行論であふれている。が、果たしてそれがどういう結末をもたらすのか、考慮しているのか、という問題提起でもあった。
◆〝内なる敵〟の摘発
今、高市首相の発言に焦点が当てられている。が、それだけにとどまらない。逆方向から、高市発言を引き出した立憲民主の岡田質問への攻撃も行われている。要するに、〝不適切な質問だ〟〝しつこく質問するからだ〟などだ。なかには〝中国を利する質問だ〟と外国のエージエント扱いする言葉もあった。
なんと、国外の武力衝突に日本も参戦する、という日本の政治リーダーの態度表明の是非より、質問した議員を攻撃するという転倒。これが戦後80年たった現実なのかと、暗澹とさせられるばかりだ。ここからは、次の〝内なる敵〟のあぶり出しや弾圧が地続きの話となる。
現に、スパイ防止法など、自民党だけでなく、参政党や国民民主、維新も掲げている。まずは受け入れやすい〝外国のスパイ〟摘発を名目に、実際は、〝スパイの手先〟や〝敵を利する〟という決めつけで、本来の標的である抵抗する〝内なる敵〟や〝非国民〟としての労働者や普通の市民のあぶり出しと弾圧だ。
◆ネット世論は?
高市発言と中国のハレーションに対し、ネット空間などでは、首相や自民党など国家権力への翼賛と批判勢力への攻撃が拡がっているの現実が垣間見える。
そうしたネット世論は、就職氷河期をはじめとする現役世代などの声が大きいとされ、〝手取りを増やす〟という標語に飛びつくそうした人たちは、現実や将来ともに希望が持てない不安定・低処遇層やその予備軍が多いとされる。
本来、そうした人たちは、政権やエリート層など、既得権層の人たちに批判の目を向けるはずだが、日本では逆に、野党や政権批判の人たちに矛作を向ける、という現実。果たして、そうしたやり方で自分たちの境遇改善が実現するのだろうか。
そうした〝失われた世代〟をはじめとするネット住民は、現実の生活不安などに対し、せめてネット上では、上位に立ちたい、強者の側に身を置きたい、との思いの表れなのだろうか。理不尽な社会をつくった政権を、逆に押し上げる言説をせっせと流している。
近年の研究では、政府や軍部が暴走した結果としての、戦争に巻き込まれた国民の苦難という物語への強調ばかりでなく、逆に、国民自身による熱狂の結果としての開戦と敗戦でもあった、という見立ても提起されている。軍備増強や対中戦争での成果を喝采する世論、それに、自身の閉塞状況からの脱出や自己実現・自己正当化の手段(=口実)として戦争を利用した人々の存在に着目したものだ。そうした世論と軍部強硬派の合作による一時の熱狂が、軍部や政治家を後押しした、という見立てだ。(増田 肇氏『人々の社会戦争』)
こうした現象は、昨今の、ちょっとしたことで支持・投票する政党を次々に変える現象にも見て取れる。米国のラストベルト地帯ではないが、そうした人々の切実な希望、誰か自分たちに目を向けてほしい、境遇を根本的に改善してほしい、それができる救世主が現れてほしい、という、藁にもすがる思いなのだろうか。現にそうした声も存在する。
私たち左派の立場からしても、そうした最も結集すべき人々と連携できていない現実を直視する必要がある。
◆〝国家ありき〟では打開不可能
安保=軍事問題を考えるとき、現局面での特徴的な傾向が露わだ。それは、利害得失などを国家間関係として捉える視点・立場だ。要するに、上か下かではなく、内か外、という視点だ。とにかく、米国はどうか、日本はどうか、対する中国はどうか、等々、とにかく物事を国家間関係に一元化して観てしまう立場だ。
私たちは以前から、国家間関係ではなく、それぞれの国における労働者・民衆の政権に対する闘いの問題として提起してきた。そうした〝上下の関係〟および、〝下どうしの連携〟という視点がないと、どうしても、国家間対立の構図に絡め取られてしまいがちだ。
そうした国家主義的判断基準を、根本的に転換することがいまこそ重要だ。確かに、現在の東アジアでは、国境を越えた反戦平和運動など拡がっていない。しかし、そうした視点に立たなければ、国家間対立に巻き込まれ、憲法前文の「政府の行為による戦争と惨禍」に再び絡め取られてしまう。
◆国家至上主義と対決しよう!
昨今の政治では、やれ抑止力だ、軍事費倍増だ、台湾有事は存立危機事態だ、との〝国家ありきの政治〟が際立つ。とりわけ高市政権は、〝まず国家ありき〟の政治が前面に出ている。
現に、スパイ防止法や国旗損壊罪の創設に前のめりだ。国旗損壊罪は、すでに参政党が法案を参院に提出済みだ。〝主権は国家にあり〟とする参政党と同じく、高市政権もつねに〝国家〟が主語だ。国民主権、当事者主権をないがしろにする姿勢は、一貫している。それは憲法9条に「国軍」を明記する、緊急事態条項(=戒厳令)条項の創設などを含め、国家主義、国粋主義からの姿勢が際立つものだ。
戦争ではなく平和、国家中心ではなく、国民・当事者が中心の政治を実現することこそ私たちの目標とすべきだ。高市政権下でも、反戦・平和の闘いと国民主権・当事者主権を実現する闘いを結合し、正念場を闘い抜いていきたい。(廣)
案内へ戻る
高市答弁を失言で済ませてはいけない=戦争を引き寄せ軍拡と強権政治を狙う=
高市答弁が国際情勢を揺らしています。中国の台湾統一の出方次第で日本も直接的に「参戦する」と宣言したからです。
■「存立危機事態」高市答弁は 安保法(2015年)が戦争法であることを示した
十一月七日、十日の高市首相の答弁の核となる主張を整理すれば❶中国軍による米軍に対する攻撃の有無にかかわらず➋中国による台湾侵攻作戦が大規模な武力行使を伴うものであれば❸日本が「存立危機事態」に該当すると断定する可能性が高い(かくして「存立危機事態」と断定されれば自衛隊は中国軍と対決する)という見解を示したのでした。中国が「侵略行為」と激高するのも不可避でしょう。
私見では、高市首相の見解は「従来の政府見解」とは異なるが「存立危機事態=安保法」の戦争法としての原点に立ち帰りその危険な全貌を浮き上がらせたのです。中国や野党が騒ごうが、高市見解からすれば「安保法の正統な解釈」なのでしょう。まさに確信犯と言うべきです。「存立危機事態」の要件は以下の通りです。
★我が国と密接な関係にある他国(これまで同盟国である米国と運用解釈)に対する武力攻撃が発生★これにより我が国の存立が脅かされ★国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること・・。
高市答弁は安保法に淵源があるのです。さらに台湾を「国」に含めた事は安保法に加えられた新見解となります。これで「台湾有事は日本の有事」(安倍麻生)の法的正当性が示されたというわけです。
あらためて、2015年成立の安保法(存立危機事態を含む)が、平和憲法や日中共同声明(1972年)を全否定し、恣意的解釈を許容し海外でも戦争を可能にするまさに「戦争法」であったことが明らかとなりました。この戦争法を成立させた安倍政権の後継である高市内閣の危険性をまざまざと示したのです。「答弁撤回」ではなく安保法の廃止が必要です。
■日中対立はアジアの覇権争い
高市国会答弁は要するに、日本の首相は武力をもって中国との覇権争いに乗り出す決意を語ったという事です。台湾への大規模な武力侵攻(準備段階も含む?)は即刻「日本にとって存立危機事態」であり自衛隊を差し向けうると。まるで台湾は「日本領土」かのようですね。「つい口が滑った」としても本音の発言でしょう。日台中の市民には恐ろしく迷惑な話です。
しかし、高市答弁のもう一つの狙いは米国のトランプ政権なのです。「世界の警察」であることを辞め「国は自分で守れ」と言い、コンパクト戦略に移行し「選択的介入」に転じた米国が台湾への関心を後退させ、場合によってトランプは中国との戦略的妥協に至る可能性があります。高市首相はそれを何としても阻止しようとしたのです。高市が目指したのは、強固な日米同盟の下に同志国をも結集させた宿敵中国の包囲網、なのです。
トランプに媚びへつらい、軍事費のGDP比2%の前倒しで米国の歓心を買い、自衛隊の米軍への「従属的」指揮権統合を推進したのは日本政府です。そこまでするのは、中国との軍事的覇権争いで優位を得るためには米軍の引き留めが不可欠だからでしょう。
しかしトランプは今回の高市答弁及びその後の日中政府の非難応酬には冷ややかです。フォックスニュースに「中国は酷いですね」と質問されて「同盟者(日本)こそ友達でなく米国からかすめ取っていった、中国よりも。習氏とはうまくやっている・・」(トランプ)と日本政府の肩を持つどころか突き放したのでした。そもそもトランプにとって、台湾市民などはさほど重要ではないのでしょう。トランプは(国内の窮地もあり)この台湾では何もしない、出来ないのは世界の共通認識になりつつあります。高市首相の思惑は完全な空振りでした。逆に高市発言は日本の国際的孤立を浮き上がらせたのです。
■極右勢力と軍拡経済を結ぶ結節点に立った高市首相
高市政権の背後を調べてみましょう。そうすると解るのは高市の政治的「成功」は、日本会議・神社本庁・神道政治連盟などおどろおどろしい極右集団と、他方では国内の投資先が見いだせず停滞した伝来の軍需産業界はもとより宇宙・サイバー、半導体業界を取り持つ「結節点」に彼女がのし上がったからです。この勢力は生活苦と現状に不満を持つ人々に「中国の脅威」と排外主義を流し込み、国内で日々増殖しつつあります。
高市は「防衛力の強化」を米国からの単なる兵器購入で賄うのではなく、日本国内の防衛・軍需産業の再生と技術育成を軸にした「国産化・自立的防衛力」を打ち出しています。
つまり、防衛力強化をこれまでのような「防衛費増額」や米国製兵器「爆買い」ではなく、むしろ国家的産業戦略として組み込む方針を持っています。その一環で武器輸出も制限(殺傷力兵器)撤廃に向けた具体的なプロセスが自維政権下で動き出しました。それ等の勢力には抵抗あるのみです。
■「中国は一つ」なのか?
高市答弁に反発する人たちは「台湾は中国の一部であり、不当な内政干渉になる」と。ゆえに「存立危機事態」の規定にある「密接な関係にある《他国》」は「台湾であり得ない」と反論します。「台湾統一は国内問題」で自衛隊の武力関与などは「国連決議に反するものだ」とも。確かにその通りですが、現に独立独歩している台湾社会と市民はどうなるのだろうか?複雑な思いになります。
先月、沖縄で数十年間反基地闘争を担ってきた闘士と話した時、長くは述べることができませんが、台湾はあえて比較すれば、日本における沖縄に似ているという話になりました。あるいはそれおとらず悲劇的抑圧に耐えてきた島です。
近代でも日本の植民地支配、国民党による台湾軍事制圧とそれに続く開発独裁(国家による急速な資本蓄積)とその強権支配が続きました。他方では抵抗した台湾労働者市民による民主化へのうねりがあります。試行錯誤を伴いつつも権利が拡張され政治的民主化が進み、労働者・市民は主体的に政治的に発言し行動しています。台湾は未来ある人々の社会です。私はこのことを想ってしまいます。
「統一問題」については当面は現状固定こそが賢明であるでしょう。中国は武力統一を排除しないとしながら平和統一を基本としています。その話が信じがたいとしても、中国の国内および国際情勢をみれば右派論 壇や高市の煽る「急迫する台湾侵攻」は悪意あるデマです。
台湾人の大多数は「台湾人としての独自のアイデンティティ」を持っています。ところが最新のTPOF(台湾民意基金会)の調査(2025年11月13日発表)によると、回答者のうち44.3% が「台湾独立」(将来独立)、13.9% が「両岸統一」、24.6% が「現状維持」を支持。「民意基金」は独立派系の団体ですが、独立賛成は半数に達していません。時間が必要です。別な調査では「当面現状維持」が多数派のようです。台湾市民の選択は冷静かつ慎重です。
この台湾に自衛隊が「日本を危機から守る」と称して自己判断で台湾海峡方面に進軍すれば新たな侵略以外の何物でもありません。これでは台湾社会の破滅となるでしょう。「安保法」や高市答弁には台湾人のことは何も配慮されていません。恐ろしいガン無視です。差別されてきた台湾人は未来において平和裏に国際社会復帰させるべきです。(阿部文明)
案内へ戻る
色鉛筆・・・だまされないで 今の高市政権に
十一月十二日の参議院予算委員会で、榛葉賀津也さんが高市早苗総理に「電子レンジ、サランラップ、缶詰、ボールペン、腕時計、生理用ナプキン、GPS、バソコン、自動ドア、携帯でんわ、三Dプリンターなど身近なものの共通点は?」とクイズを出しました。
高市早苗総理は「軍事産業」と即答。榛葉賀津也さんは「民間と軍事の境界がなくなり、デュアルユース化が進んでいる」と説明し、防衛予算を成長戦略にも活用するよう求めました。小泉進次郎さんは「防衛力強化に理解を得られるよう丁寧に説明したい」と答えました。SNSでは「良い質疑だった」と評価されています。
私は、週刊誌に高市政権が注目されていることや、SNSで良い質疑だったと評価されているのが、残念でたまりません。私たちが身近に使っているものを取り上げ、つまり軍事産業が身近なものであると周知しようとしている点はとても残念に思いました。
その質問の五日前、台湾有事をめぐり、「戦艦を使って、武力行使も伴うものであれば、在立危機事態になりうるケースだ」と発言しました。これは、総理大臣が国会の場で、台湾という地域をあげ、有事の具体例を想定し発言すること自体が軍事的危機をあおることになります。
政府が「在立危機事態」と判断すれば、日本は攻撃も侵略も受けていないのに、海外での自衛隊武力行使が可能になります。自衛隊は災害時だけの派遣ではなく、戦争している国に出かけて、相手国の戦士に銃を向けなければいけません。また、自分も撃たれることもあるのです。憲法9条で守られている命、平和の概念が壊されてしまいます。
中国がこのことに憤りを感じ、日本への観光制限をかけている現状になっても、高市早苗さんは、撤回しようとはしません。
そして、北東アジアの軍事的緊張を高める大軍拡を進めるため、外国の領土を攻撃できる長距離ミサイル配備計画が進んでいます。
日本初の配備地とされる熊本県では、住民が不安を抱いている中、防衛省は住民説明会すら開いていません。長距離ミサイル・弾薬庫の配備計画は、全国あちらこちらで、着々と進められています。
また、トランプ政権からの要求に応えるためと、軍事費を国内総生産費の2%増額を二年前倒しで達成すると表明しました。毎年増額されていく軍事費、限られた予算の中、戦争するお金ではなく教育費や介護費等を増額してほしいと切に願います。
高市早苗総理は、安倍晋三が生前掲げた「美しい国日本」つまり戦争に強い日本を作ろうとしていた色々な政策を引き継いて、戦争国家の道を着実に進もうとしています。
諦めずに、平和の国に進んでいけるような運動を仲間とともに続けていきたいと思います。(宮城 弥生)
世界秩序再編の「トランプ的段階」について パクスアメリカーナ崩壊への儚き抵抗
トランプ第二次政権の登場によって世界が変わりつつあります。すでにこの問題は多くの「識者による解説」がなされてきました。ここではその基本的趨勢を概観てみましよう。と言っても、その「プラン」を彼らが文書化しているものではありません。トランプ第一次及び第二次政権の10か月の政権の政策行動から推論しうるのみです。
■トランプによる「新たな世界支配」
戦後とりわけソ連解体後の米国による一極支配すなわちパクスアメリカーナ=「帝国的」段階では、米国は政治・軍事・通貨・文化で世界を統合し、「秩序提供者」を自任していました。その背景には、言わずもがなの経済・軍事パワー、そしてそれによって基礎づけられた「ドル支配」がありました。しかし、そうした米国の圧倒的優位性が、中国の台頭ばかりではなく、グローバルサウスと言われる諸国、あるいは新興国とされる諸国の経済的・政治的台頭によって相対的に後退を始めてきました。
トランプ時代の米国戦略は、従来の拡大期と全盛期と言える「帝国的グローバリズム」(ネオコン〜オバマ期)から、「守勢の帝国維持」への転換を象徴していると言えます。世界のリーダーであるよりも米国に都合よい(関係が米国に利益をもたらすかどうかでの)差別的介入に転換されました。トランプ的段階では、「秩序提供」のコストを拒絶し、「米国の利益に直接関係ない場所からは撤退する」という方向に舵を切りました。これはヤクザが「みかじめ料」を恐喝仕立てで搾取し、その相手のみ「守る」よぅなものです。
もちろんトランプらの目論見としては帝国の「縮小」ではなく、帝国の「再編」です。世界全域に張り巡らされた支配網を、より収益的・防御的に再編する試みとみなせます。しかし、彼らの思惑は自己都合に終始しています。その代表なのが「ドル支配の維持」については一歩も後退させる気が無いのです。「世界の警察」を辞退し産業力を外国に求めておきながらドル防衛を成功裏に維持することはあり得ません。だから金の高騰につながっています。
■「世界の警察」放棄と「選択的軍事介入」は新たな火種
繰り返しになりますが、このようにトランプが掲げた「世界の警察ではない」というスローガンは、「介入をやめる」ではなく、「割に合わない介入をやめる」という意味でした。シリア・アフガニスタンからの撤退を唱える一方、イラン・ベネズエラ・中国への経済・情報戦は強化されてきました。NATOへの不信と同時に、日本・韓国・台湾に対しては「もっと金を出せ(武器を買え)」と要求。要するに、「防衛責任の分担」と称して、軍事的支配を収益化する方針です。
しかし、EUにしても日・韓にしてもことは簡単ではありません。国内には「親米派」が多数いるとしても「自国による防衛力強化」を目指す新たな(日本の高市のような)軍拡勢力が動き出しつつあります。ドイツではショルツ政権(SPD・緑の党・FDPの連立)および後継政権であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)を率いるフリードリヒ・メルツが首相に選ばれ、SPDとの大連立で新政権が発足し、軍拡主義は加速しています。軍産複合体の構築(再構築)は、李韓国でも、高市日本において始動していると考えられます。
そればかりではありません。米国の世界的火遊びは依然として世界人民の脅威なのです。それは、中東ガザにおいても、近々ではベネズエラへの公然たる軍事介入(現政権打倒)の策動に繋がっています。
■「西半球主義」と軍事的モンロー主義の復活
トランプ派のもう一つの特質である「西半球への集中支配」は、軍事的新モンロー主義の復活と解釈できます。トランプ政権下では、特に以下の傾向が見られました:ラテンアメリカへの再介入: キューバ再制裁、ベネズエラ政権転覆支援、メキシコ国境軍事化などです。
経済的支配の再構築もあります。 TPP離脱後、USMCA(北米協定)を通じた「域内経済ブロック化」進行です。資源確保の重視の動きもあります。 鉱物・エネルギー・農産物サプライチェーンを南北アメリカ内で完結させようとする動きです。こうして「西半球の覇権確立」は、「グローバル支配の縮小」ではなく、米国にとってコアの再集中を意味します。
トランプ政権の米国第一主義は、かくして世界への選択的介入や他方では地域大国への軍事負担の肩代わりや高関税の一方的負荷により、「友好諸国」の離反や諸国民的反発を生み出しており、その結果として多極化敵な趨勢を呼び起こしています。もはや米国の一極集中からの離反は進行しはじめ米国の影響力低下は時間の問題です。
■トランピズムは米国民の敵
最後に述べなければならないのは、トランプの「アメリカファースト」が、米国の国民にとっても唾棄すべきものであることです。この一年弱の経過においてすら、それは明らかです。トランプ予算(六月成立)によれば、その階級的性格は明らかです。ここでは、資産家優遇の税制を維持し、低所得者の医療保険を切り縮め他方では軍事・警察予算の増大を提案し、ぎりぎりながら可決させたのです。反大衆、低所得者への裏切り以外の何物でもないのです。さらに、トランプは「不法移民取り締まり」と称して「州兵(National Guard)」を民主党自治体に軍事介入を試みるなど、強権ぶりを強めています。
あらためて米国人民によるトランプ政権打倒を期待するものです。米国民の「王様はいらない」運動に連帯すると同時にニューヨーク新市長マムダニらのアソシエーション的運動も注目に値します。「左右の闘い」から「上下の闘い」へとさらなる運動の深化を期待するものです。(阿部文明)
注 「パクスアメリカーナ」とは、ラテン語で「アメリカによる平和」を意味し、第二次世界大戦後、超大国となったアメリカ合衆国の圧倒的な軍事力と経済力がもたらした、世界秩序を指します。これは古代ローマの平和を意味する「パクス・ローマーナ」に由来します。ローマ帝国の全盛期を指すパクス・ロマーナ(ローマによる平和)に由来する。「パクス」は、ローマ神話に登場する平和と秩序の女神である。
案内へ戻る
米国に革命の火種 ニューヨーク新市長に 民主社会主義者マムダニが選出
マムダニ氏は、若者、移民、労働者などの底辺層に徹底的に働きかけ、熱烈なボランティアの支援を得てマムダニ陣営は終始選挙戦をリードし、勝利を得ました。マムダニ氏はニューヨーク市初のイスラム教徒市長であり、移民出身者として「移民がリードする街」を掲げてきました。SNSを活用した草の根選挙戦で勝利したとも指摘されます。勇気づけられますね。
また彼は自他ともに認める「社会主義者(民主社会主義者)」です。政策などを観ればあたかも北欧型の社会民主主義のように見えます。
★保育の無料化。0〜3歳児向けの保育サービスを無償化し、既存のプリスクール制度を拡充。★バスの無料化:市内交通の負担軽減を目指し、公共バスを無料に。★家賃凍結:急騰する住宅費に対応し、家賃の据え置きを提案。★市営スーパーの設置:食料品価格の高騰に対抗するため、市が運営するスーパーを試験導入。
■財源と富の再分配――富裕層に増税
しかし、マムダニが単に改良的政策の羅列において人気を博し選挙に勝ったという薄っぺらなものではありません(国民民主党の玉城氏のようなポピュリストではありません)。彼の人気は、断固とした「税制改革」の提案にあります。富裕層や企業への増税を通じて、これらの社会サービスの財源を確保する方針を明確にしたからです。富裕層の腐敗と搾取を徹底批判したうえで彼らへの増税の正当性を訴えました。
■トランプらの富裕層支配との対決
ウォール街などの金融業界からは、競争力への影響を懸念する声も上がっています。トランプは彼を「狂った共産主義者」と罵倒してきましたが、逆効果でした。トランプは選挙の最終段階で対抗馬のクオモ元州知事(民主党)にテコ入れを図りましたが、これもまた失敗しました。
しかし、マムダニの改革は、現在の制度ではニューヨーク市だけでは十分なものにはならないと考えられています。例えば、税制などは州議会・州知事らとの連携が不可欠です。その点では両方ともに2025年11月時点で民主党が支配しているのは少しは幸運だと言えます。
しかしこの新しく始まる市政は、単なる福祉拡充ではなく、都市の構造そのものを問い直す挑戦でもあるのです。これは大いに学ぶべきところです。
■マムダニ市政の原点「誰が都市を所有し、管理するのか」?
マムダニはこれまで「民主党のニューヨーク州議員」でした。しかし同時に彼はDSA(アメリカ民主社会主義者「党」)に所属しています。マムダニ氏やDSAが言う「都市の構造を問い直す」とは、次のようなことを指しています。
【都市の資源(住宅・土地・交通・エネルギー・金融)は誰のものか?利益ではなく、住民の合意と公共性によって運営できるのか?】
彼らのたどり着いた結論は次のようなものです。たとえば居住は権利なのです。住宅を「売り物」「商品」ではなく「権利」とする(housing as a right)という思想を掲げています。また公共電力を創設し、再生可能エネルギーの協同組合運営へと移行を目指します。エネルギーを公的管理下に置く(public power movement)と言うのです。このように「都市空間の民主化」「経済の民衆化」こそが目標なのです。これは、マルクスのアソシエーション的社会革命に違いありません。
なるほど自ら大富豪であり、世界有数の企業所有者を支援者にしているトランプが震え上がるのはもっともなことです。
■アメリカ民主社会主義者(DSA)の「生産手段・公共財の民衆的管理」
アメリカ民主社会主義者(DSA)が掲げる「資本主義の否定」と「生産手段の民衆的管理(popular control)」という理念についても少し見てみましょう。これは単なる選挙スローガンじゃなくて、彼らの長期的な社会構造変革のビジョンでもあります。
DSAは1982年に設立された政治団体で、アメリカ社会党の流れを汲みながら、資本主義に対する批判的立場を明確にしています。彼らが目指すのは、企業や資源が少数の資本家によって私的に所有されるのではなく、労働者や地域社会が共同で管理する仕組みです。
この「popular control」は、国有化とは違って、中央集権的な官僚支配ではなく、それらの資源(公共住宅や電気など)を現に必要とし利用する人々による意思決定と管理運営を重視する点が特徴です。労働者協同組合や地域主導のエネルギー供給、民主的に運営される住宅制度などがその具体例として挙げられます。
DSAはスターバックスなどの企業で労働組合の結成を支援し、労働者の権利を守る運動を展開していますが、スターバックスが協同組合になれば大変愉快です(冗談です)。
このように、マムダニらの闘いは、選挙の時だけ人々を集めて投票所に誘うのではなく、社会の公的な本来コモンであるはずの公共財(住宅・土地・交通・エネルギー・金融)を民衆的に管理し運営する主体へと新たな高みに人々を導こうとします。当然、民主党・共和党を問わず富裕階層が攻撃を開始するでしょう。しかし、彼がその道を歩もうとするかぎり支持してゆきたいと思います。
マムダニもDSAも国際的には、パレスチナ連帯や反軍事主義運動にも積極的で、資本主義と帝国主義の結びつきに対抗する姿勢を鮮明にしています。(阿部文明)
極右と右派の激突 宮城知事選挙と参政党の野望
十月二十六日の宮城県知事選の結果は現職の村井氏が辛勝しました。上位三人は次の通りです。
村井・・・約34万票(自民党系)
和田政宗・・約32万票(参政党・自民党系)
遊佐美由紀・・・約17万票(立民系)
【いずれも「無所属」で立候補】
今回の宮城県知事選挙は、今年七月の参議院選挙で水道民営化に絡んで「神谷・村井」論争に端に発し、事実上の自民対参政党、という異例の対決となりました。つまり、右派対極右の対立となり注目を集めました。
■争点は、新自由主義(村井)対反グローバリズム(和田)
和田は公認候補ではないものの参政党陣営は、街頭への大量動員やSNS戦術で激しく村井を批判しました。
宮城県の合計特殊出生率が全国ワースト2位(当時)である点を挙げ、「村井県政の政策が思い切ったものではない」と批判し、抜本的な改善策が必要だと主張しました。つまり出産支援金の支給、県独自で1子あたり30万円を給付。県独自の大型給付金を主張。カラ約束もいいところですが。
・・・・・・・・・・・・
安倍政権は、経済成長戦略である「日本再興戦略」の中で、コンセッション方式(PFI法に基づく公共施設運営権の民間への設定)を公共サービスの効率化と民間資金活用を促す手段として強く打ち出しました(新自由主義)。その流れのなかで村井宮城県知事が、市民の反対を押しのけて全国に先駆けてコンセッション方式で事実上の「水道民営化」をゴリ押ししてきたのでした。それに対して和田陣営は反グローバリズムの立場から、新自由主義派である村井知事との対決となりました。
和田らは水道事業の一部民間委託(コンセッション方式)について、「命の水を扱う公共インフラに外国資本が参入する危うい判断」であるとして、再公営化を主張しました。日本の民間資本がヴェオリア(仏)に運営権を引き渡したことが問題となりました。
市民派の運動がかつてより「いのちの水を資本に売り渡すな」と民営化=資本の弊害を問い続けてきたのに対して、今回の和田陣営は「再公営化」を謳うものの「外資が参入しており、安全保障上の問題がある」ことが強調され、排外主義を煽る立場からの批判が溢れました。
狡猾な参政党は、これまで市民が村井知事と闘ってきた成果や運動の横取りを狙ったのでした。排外主義を取り混ぜながら。
・・・・・・・・・・・・・
土葬問題も安倍政治と深く関係しています。安倍政権下では、外国人労働者の受け入れが拡大しました。その流れで事実上の移民である外国籍労働者を宮城県に導いてきた村井県政。彼らは、大資本の人手不足の解決策として外国人労働者の導入に肯定的に対応し、その延長上で、墓制に火葬ばかりではなく土葬も導入する案を推進してきました。イスラム系の人々の増大により、当然、土葬の要望が広がると考えたこの案は、保守的な村井県政においては珍しく移民の平穏な生活に結びつく肯定的な政策として評価できます。
ところが、夏の「神谷対村井」論争以来、参政党は一部土葬に不安と不満を持つ県民を扇動し激しく村井を攻め始めました。和田らは土葬墓地計画を水道民営化と並ぶ「売国」政策の一つとして位置づけ、「移民推進・移民優先反対」などを強く訴えました。政策に信念も確信もない村井はこの参政党・和田の圧力により選挙直前にこの政策を跡形もなく投げ捨てたのです。このように、両者の対立がいかに浅薄であり政争の類であり、外国籍の労働者にとって問題解決に結びつかないものとなっています。
・・・・・・・・・・
立民系の遊佐は、村井県政がトップダウン型であることの裏返しとして、「ボトムアップ型の県政」への転換を訴えたが具体的政策論争に食い込めず、前回の知事選の立民系候補の半分にとどまりました。
・・・・・・・・・・
以上のように、今回の宮城県知事選は、地方的テーマを通じて、全国的な政治闘争の一側面を形成したのでした。ただし、上記してきたように、反グローバル主義とやはり専断統治を特色とする地方の新自由主義派の闘いは、表面だけであり何ら国民、市民の生活を守り改善するものではないのです。それらは、これからもいくつでも出てくる「資本による支配」の一変種にしかすぎません。市民や働く者の立場を守り、前進させるためには市民の主体性や権利、そして自らの地方自治を実現すべきです。その前提として高市極右政権との闘いと結び付けて展開してゆきましよう。(六)
案内へ戻る
読書案内 もしも君の町がガザだったら 著者 高橋真樹 ポプラ社 定価1980円
著者の高橋正樹さんの経歴 ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師、朝日新聞コメンテーター 1973年、東京・多摩地域生まれ。1996年、早稲田大学在学中に国際NGOピースボートと出会い、世界をめぐる。以降、NGO職員として世界約70ヶ国を訪れ、主に難民支援、核兵器廃絶、国際協力、平和教育などの分野で活動する。
この本は、2025年7月に発行されました。だから、ここで今から紹介する数字は、現在とは違います。
2023年10月7日にパレスチナのハマスという組織がイスラエルを攻撃し、1200人ほどが殺されました。そこから、イスラエルが反撃しガザ地区では、6万9千人をこえるパレスチナ人が殺されました。
ハマスが先に仕掛けたのだから、やられても仕方がないと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。イスラエルは、以前からパレスチナを攻撃していました。
歴史をさかのぼりすぎると長くなるので、1947年11月国連では、もともとパレスチナの国を「ユダヤ人の国」と「パレスチナ人(アラブ人)の国」の2つに分ける決議が行なわれました。このパレスチナ分割決議は、パレスチナ人にとってはとても不公平でした。パレスチナ人は、当時の人口の多数(約70%)と、ほとんどの土地(94%)を所有していました。しかし国連の提案は、半分以上の土地(56%)を新しくできるユダヤ国家に与えるものでした。これは国連で賛成多数で可決されました。世界の国々は、ユダヤ難民を受け入れたくないためにパレスチナに問題を押しつけました。
1948年5月、イスラエルの建国が宣言されました。そしてこれに反対するアラブ連合軍(エジプト、ヨルダン、シリアなど)とイスラエルで戦争になり、イスラエルが勝利、第一次中東戦争の休戦交渉で、領土を56%から78%に広げました。残りの22%の土地はヨルダン川西岸地区をヨルダン、ガザ地区をエジプトが支配しました。パレスチナ国家はできませんでした。
第一次中東戦争やイスラエル建国前後の混乱により、当時135万人いたパレスチナ人口のうち、約75万人が故郷を追われ難民になりました。パレスチナ難民はヨルダン川西岸地区とガザ地区にほか、ヨルダン、レバノン、シリアなど周辺にも避難して難民キャンプで生活を始めました。77年経った現在も故郷に帰ることができないし、パレスチナ難民は約600万人に増えています。
1967年第三次中東戦争で、イスラエル軍はエジプト、シリア、ヨルダンに攻撃し勝利、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を占領下に置きました。その後いろいろあり、1993年イスラエル政府とパレスチナ解放機構(PLO)による「オスロ合意」という和平条約が結ばれました。このオスロ合意では、ヨルダン川西岸地区を拠点に、PLOによる暫定自治が始まりました。しかしイスラエルは、パレスチナを交渉相手と認めただけで、パレスチナ国家を認めたわけではなく、難民問題や入植地もほったらかしでした。オスロ合意により、ヨルダン川西岸地区のA地区西岸地区の面積18% (治安とは警察の役割 民生は教育や医療、水道やゴミの回収など)は、パレスチナ自治政府が、治安と民生を管理、B地区は面積22%治安はイスラエルが民生はパレスチナが、C地区は面積60%治安、民生ともにイスラエルが支配しています。ガザ地区は、パレスチナが自治することになりました。
イスラエルは、2005年、ガザ地区からイスラエルの全入植地が撤退、2007年イスラエルがガザを完全封鎖、2008年~2009年イスラエルがガザ地区を攻撃ーパレスチナの死者1400人超、2012年イスラエルはガザ地区を攻撃パレスチナの死者140人超、2012年国連総会はパレスチナをオブザーバー国家として承認、2021年イスラエルはガザを攻撃パレスチナ死者256人、とパレスチナへの攻撃はとどまるところを知りません。
そして、2023年から現在イスラエルによるパレスチナへのジェノサイド(大量虐殺)がありますが、以前のパレスチナについて見てみます。まずガザ地区、蛇口から水は出るがくさい、汚染された海水の水が混じっています。水は料理にも使われ、下痢になったり肝臓の病気にかかる人もいます。病院は、人であふれてなかなか診察してもらえず、必要な薬がないことも多いです。電気が使えるのは1日5時間くらいしかありません。町に発電所はあるが燃料が足りていないので、電気が届きません。夏は電気が足りないので、扇風機も使えません。冬は寒くても、毛布にくるまって我慢します。町の病院で治療のできない病気になっても外には出られません。イスラエルの軍隊に封鎖されているからです。
この町は壁で囲まれていて、検問所を通らないと外には出られません。ほとんどの場合、検問所を通ることを許されません。その理由をイスラエルは、「テロに使われないため」だと言います。無茶苦茶な理屈です。監視塔や巡視船、ドローンなどからいきなり攻撃されることもあります。そして多くの人が殺されています。殺した方は処罰もされません。数年ごとに大きな攻撃があります。戦闘機やヘリコプターから家にミサイルが撃たれます。病院も攻撃されます。
ヨルダン川西岸地区は、2023年10月から2025年1月までの間に、西岸で少なくとも870人のパレスチナ人が殺害され、7100人以上が負傷しました。パレスチナ人の土地が、イスラエルの入植者に奪われています。占領した土地に入植することは、国際法違反ですが、警察も取り合ってくれないし、入植者や兵士によるパレスチナ人への暴力も日常的にあります。町の許可なしには家を修理できません。許可が出ないので仕方なく修理をしたら、家を取り壊しになりました。小さな壁と140か所以上の検問所があり、兵士が人々の移動をチェックしています。検問所では、IDカードを見せ荷物検査や身体検査を受けます。
イスラエルによる国際法違反をまとめると、イスラエルによるパレスチナの占領は止め占領地から撤退すべき。イスラエルはすべての入植地を撤去して、入植者全員を退去させるべき。イスラエルは占領による被害を賠償すべき。
世界各国と国際機関は、国際法違反のイスラエルに以上のことを履行させるべきです。
私たちにできることは、イスラエルの蛮行をSNSなどで明らかにしパレスチナ支援の団体への支援、署名、抗議行動などへの参加など、自身ができることをやっていくことかなと。
そのために、この本を読むことをお勧めします。(河野)
読書室 大西 広著『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』((講談社+α新書)
○本書の最大のテーマは「資本主義が続く限り、人口はゼロになる」である。なぜ少子化対策は失敗するのか?人口減の根本にあるメカニズムは何か?「ヒトの軽視」「ジェンダー差別」「新自由主義」が生む真っ暗な未来。今世紀末になっても人口減少は止まらない。日本民族が消滅する前に「資本主義文明」からの脱却が必要だ! これが著者の主張だ○
なぜ人口は減少してゆくのか
プロレタリアートとは、資本主義社会における労働者階級のことである。この言葉は、フランスの二月革命など欧州各地で起きた一八四八年革命に強く影響を与えた、ドイツの法学者ローレンツ・フォン・シュタインが、一八四二年に刊行した『今日のフランスにおける社会主義と共産主義』において、このドイツ語を使用して資本主義体制下の生産手段を持たない貧困階級=労働者階級を表現したのが初出とされている。
だがそもそもの語源はイタリア語のプロレタリーである。古代ローマ帝国時代、広大な帝国の富はローマに集中していた。ローマの市民は、被征服民を奴隷化し酷使して徐々に特権化し、次第にパンとサーカスに没頭して働くことを放棄した者(多くは土地を所有しない)も増えていった。彼らの日常生活はこれら奴隷に支えられていたのである。
そして当時の国勢調査では住民を財産別に六階級に分けていた。最下位は、子供以外には財産を持たない層をプロレス「子供」タリ―「作る者」と記載した。これが語源である。
当時の奴隷もその子供の生活費は奴隷主の負担である。労働者は労賃で妻子を養わなければならないのだから、その生活はカツカツだ。そして現在はそれすらも困難になった。
このように現在の人口減少問題の核心は現代の労働者階級そのものの貧困化にある。若者が結婚しないのも、結婚・出産が貧困化の入り口になるのも、経済的な理由で出産数に制限があるのもすべては労賃の水準が低いこと、労働者階級の再生産の困難が原因である。
著者は言う、人間の数が減ればどういうことになるのか、どういう打撃をこうむるのかについて、永らく無関心でいた。しかし人口減はその深刻さを認識させつつある。最近は政府でさえ「人間への投資」を主張するようになっている。だが日本社会の基本は全然その方向に進んでいない。実質賃金は三十年近くも減少した上、最近の物価上昇でさらに大きな切り下げが進行している。政府が「少子化対策」と称しているものを確認しても、それらで人口減が解決するとは思えない。政府は「やってる感」を出すことにしか関心がない。これはこの問題が相当大きな日本の構造転換を必要とし、それに手を出せないことから来ている反応と考えざるをえない。何より今の少子化は、人々が望んでもたらしているのではない、子供をつくろうとしてもできない状態に労働者がおかれているからこそ起きている、と。私たちもこの見解に深く同意するものである。
人口問題は資本主義の超克を要求する
現代の人口問題は労働力の再生産が困難になっていることが核心である。したがって問題はこの再生産を円滑なものにするにはどのようにしたらよいかということになる。
労賃を上げればよいのか。至極当然の答えではあるがそれには大きな限界がある。
マルクスがこの問題の解決のために現わした著作が『資本論』である。そしてこの完成のための核心となる基本概念は労賃の本質と資本主義化での労働疎外である。
若き日のマルクスは、「賃金を決定する際の、これだけは外せない最低限の基準は、労働期間中の労働者の生活が維持できることと、労働者が家族を扶養でき、労働者という種族が死に絶えないこととに置かれる。通常の賃金は、アダム・スミスによれば、ただの人間として生きていくこと、つまり家畜なみの生存に見合う最低線に抑えられている」(『経済学・哲学草稿』)と労賃の本質をつかんだこと、そして資本主義化での労働者の労働は疎外された労働になっているとの認識はその後の『資本論』の完成へ道の源となる。
現代における労働力の再生産が困難になっている状況の打開には、大きな問題になっている出産数の減少が個々人の経済環境等による個人選択ではなく、さらには資本主義社会からの要請でもなく、人間社会からの要請と受け止めるための観点が必要なのである。
それにはまさに「社会化された」社会=資本主義を超克する社会が求められている。
「数理マルクス主義」者の大西氏は、第Ⅱ部のマルクス経済の人口論と第Ⅲ部の人口問題は資本主義の超克を要求するにおいてその健筆をふるっている。近代経済学のいいとこどりを追求している「数理マルクス主義」の立場からの大西氏の斬新な提案を、それぞれ自らの立場から真剣に検討することも本書を読むことの醍醐味の一つになるであろう。
特に私が関心を持ったのは、第九章の「真の解決は国際関係も変える」である。そこでは欧米が過去に奴隷狩りシステムを構築し、発展途上国に今でもそのような収奪システムを使用し続けていることに対して、中国が評判が悪いながらも途上国にインフラ充実のための投資をしていることに注目して持論を展開していることに大いに興味を持った。
勿論、本書を如何に読むかは、読者の自由に期する。ぜひ一読を薦めたい。(直木)
案内へ戻る
コラムの窓・・・兵庫県民の憂鬱!
11月9日、立花孝志N党党首が兵庫県警に逮捕されました。自死した竹内英明元兵庫県議に対する、死後も含めた名誉棄損の容疑です。その後、宮城県警が19日に7月の参院選選挙ポスターにおける名誉棄損で書類送検しました。
まさに引っ張りだこの人気ですが、N党は崩壊の瀬戸際のようです。参政党を先頭とする極右政党の登場によって、N党は必要なくなったということでしょうか。雨後のタケノコのように登場する怪しげな政治勢力がもてはやされるのは閉塞した社会を反映したものですが、何ともやり切れない思いが募ります。
少なからぬ兵庫県民は「立花の次は斎藤だ」と思ったのですが、何と斎藤元彦知事に対する公選法違反(買収)などいくつかの容疑は神戸地検が12日に「嫌疑不十分」として不起訴にしてしまいました。これで幕引きのような対応ですが、自死した内部告発者、元西播磨県民局長の私的情報を漏洩した井ノ本知明前総務部長に対する地方公務員法(守秘義務)違反容疑がまだ残っています。
この件に関しては県の第三者委員会が5月に公表した報告書で、「斎藤氏や片山氏の指示による可能性が高い」としています。というのは、第三者委の調査の中で片山元副知事などが斎藤知事の関与を認めているからです。しかし、斎藤知事はこの件も含めすべてに疑惑を全否定、適法・適正・適切といった空虚な言葉を並べて逃げ切ろうとしているのです。
さて、本コラムで内部告発問題を何度か取り上げていますが、最初の記事は「劣化のはての斎藤再選!」(昨年12月)でした。立花がのちに「2馬力選挙」と称されるようになったありったけのデマで斎藤再選に貢献した不正選挙に対する反論、問題の本質は内部告発潰しであること、権力者・企業経営者らが内部告発にあたって常に行う犯罪的行為の典型だったという点でした。
なので斎藤知事が不正選挙での当選から1年を経た今も知事の席にあるという現状は、そこから流れ出る害悪がこの列島を包み込んでしまうということであり、兵庫県民の浅はかな選択がそれを支えてしまっているということです。宮城県知事選では参政党がその役割を担い、5期20年の村井嘉浩知事の県政を問うまともな選挙は消し飛んでしまっています。
例えばこんな例も、「福岡県で不適切な土地買収が明るみに出た後、県が『個人情報流出』の可能性を理由におよそ職員100人への内部調査を実施していた問題です。専門家から『職員を萎縮させる』との指摘が出る中、服部知事は『必要な対応だった』と」(11・21、RKB毎日放送)
斎藤知事の公益通報者違反状態は今も続いており、「朝日新聞」は11月19日の社説で「兵庫の公益通報 知事の責任 追及続けよ」と主張しています。「知事は『一定の決着がついた』と述べたが、およそ決着にはほど遠い」「『適切、適法に対応してきたと今も考えている』と語り、第三者委の見解を受け入れない姿勢を改めて示した。このまま放置すれば、公益通報制度を揺るがし、第三者委の意義を否定することになりかねない」
そして、「知事が自省しないなら、知事とともに県民を代表する県議会が、その役割と責任を果たすしかない」と指摘していますが、県議会は111万票の〝支持〟を背にした斎藤知事の強気に屈しています。
立花容疑者の拘留は11月29日まで、起訴されるのかしないのか、別の容疑で拘束が続くのか、本紙が届くころには一定の結論が出ていることでしょう。立花がどうなろうと、斎藤知事は我が身だけは潔白と言い続けることでしょう。兵庫県民の憂鬱はさらに続きます。 (晴)
案内へ戻る