トピックス  2005年8月13日

[郵政解散]
 国家主導でも市場万能でもない「第三の道」――労働者版「構造改革」――をめざそう!
――つまずいた市場万能路線――
2005.8.10
 まさに「自爆解散」「破れかぶれ解散」という以外にない。
 小泉政権は郵政民営化法案の強行突破に失敗し、勝つ見込みも確かではない衆院の解散という非常手段に突破口を見いださざるを得なくなった。郵政民営化法案をめぐる攻防から解散総選挙という新たな事態に、労働者は揺るぎない独自のスタンスに立った闘いが求められている。

■小泉政権――自民党政治は終わりだ

 小泉内閣の一枚看板だった郵政民営化をこの時点で強行突破しようとするには、政権を取り巻く状況としてはいくつかの無理が生じていた。
 小泉首相が政権発足以来取りかかってきたことは三つあった。第一は、グローバリズムに対応した新自由主義的な「改革」という名の日本改造計画、第二は、米国や国際情勢をダシにした政治・軍事大国のもくろみ、第三は、怨念にもなっていた「橋本派つぶし」だった。
 今回の小泉首相による正面突破策の破綻は、小泉首相がめざした新自由主義的な「改革」は一本調子では進まない、という現実を見せつけるものだった。このことは抵抗勢力・造反組が衆参両院で一定の数を確保し得たことに端的に表れている。それだけ日本型護送船団システムは根強く生き長らえているのが現実だからだ。
 なぜこうなったのか、その背景は今となってはよく見える。
 国民・有権者にとって、郵政民営化は「景気対策」や持続可能な年金・医療・介護システム確立などの課題ほどには緊急の課題として受け止められていなかった。それ以上に、社会的弱者、すなわち「改革」の果実から排除される人々へのフォローシステムを切り捨てる構造「改革」路線自体の本質も顕在化しつつあった。いまでは国民・有権者の間に、小泉政権4年間の過程で生じたのは結局は「勝ち組」「負け組」の二極化、さらには新たな「階級社会」「格差社会」ではなかったのか、という疑念も次第に拡がっている。
 こうした小泉構造改革政治の負の側面が明らかになるにつれ、政権発足当初は斬新さを演出できたワンフレーズ政治、パフォーマンス政治の底が割れるにつれ、世論の支持という小泉構造改革政治の推進力は拡散していたのである。小泉政権の賞味期限は切れつつあった。
 これらが少数勢力に追い詰められてとはいえ、旧来型の護送船団システムを基盤とする「抵抗勢力」をして頑強な抵抗を可能にし、小泉首相の強攻策の足下をすくったというわけだ。
 では自民党内の造反派、抵抗勢力に新時代を切り開く「理念」はあるのか。そんなものはない。今回の内部抗争はあくまで「造反」であり「権力闘争」でしかない。それは彼らが郵政民営化に対して現状維持の立場に終始して「対案」らしきものさえ打ち出せず、ましてや小泉構造「改革」に変わりうる旗印もなく、かりに新党を結成したにしてもそれは選挙対策の域を出ない。小泉政治の「独裁的手法」批判にしても、それは「口利き政治」や意志決定過程と利権システムから遮断されることへの反発でしかない。所詮、「国民の利便」や「党内民主主義」をダシにして旧来型の利権システムにしがみついているだけである。

■めざそう!労働者版「構造改革」

 今回の自民党内部の抗争は、冷静にみれば支配者階級の間での利権抗争か権力闘争という以外にない。
 一方は「官から民へ」という新自由主義的スローガンを表看板にした弱肉強食の市場万能主義であり、他方は「公共性」「利便性」を表看板に掲げた利権政治の温存だった。いいかえれば〈国家〉か〈市場〉かが問われたわけだが、大きな流れから言えば双方とも政官業利権システムから、利潤原理万能・市場万能の弱肉強食社会化への流れの中での〈コップの中の争い〉以上のものではない。抵抗勢力・造反組の頭目の一人、亀井静香が「自分こそ無駄なダム建設の中止など構造改革をいっぱいやってきた」と豪語しているとおりだ。ゼロ金利という預金者収奪での不良債権の処理にしても、リストラや非正規雇用化による景気「回復」にしても、「抵抗勢力」を含めた自民党が推し進めてきたのではなかったか。すでに日本版新自由主義「改革」は着実に進んでいるのだ。双方の違いは、「改革」を装いながらやるのか、それとも国民生活の擁護を隠れ蓑にやるのかの違いにすぎない。自民党の背後にいる財界=大企業はすべて構造改革推進派なのだ。
 ここは「労働者版構造改革」の立場にしっかり立つことが肝心だ。
 基本スタンスとしては、国家・行政主導でも市場・利潤万能でもない、「第三の道」を追求することだ。郵政の分野でいえば、郵便も含めた弱肉強食を排した通信・物流ネットワークづくりや、収益を労働者や住民の福祉に使える労働者金融システムづくり、そこでの労働者・利用者の決定権の確立をめざすことなどこそ、私たちがめざすべきことだろう。一例を挙げれば、労金なども含めた郵便貯金の「勤労者貯蓄銀行」への改変もあっていい。こうした「第三の道」は、将来的には国家・行政や企業からの自立、労働者自治・住民自治のアソシエーション社会への扉に通じている道である。
 こうした社会変革の展望と結びつけるためには、郵政労働者としても経営形態の維持――利権システムの維持を至上命令とする「郵政一家」の尻尾にとどまる理屈はないはずだ。大事なのは自分たちの雇用や権利、さらには実際に事業を担っている労働者の当然の権利として事業運営への発言権を要求・獲得することだ。そのためにこそそれらの共通の要求のもとに通信・物流、あるいは金融機関の労働者が官民の経営形態の壁を越えて提携を拡げていくことこそ必要なのだ。そうした闘いの土台の上でこそ、民営化をテコとした雇用破壊、生活破壊と効果的に闘っていくことができる。土台がなければ本来建つべき家も建たない。
 労働者階級として体制内二大政党とは区別されたこうした「第三の道」を説得力を持って打ち出すことができれば、今は小泉政権の「改革」幻想に揺れている国民・有権者を労働者がめざす将来展望とそのための闘いに必ず引きつけられるはずだ。

■自民党政治を終わりにさせよう!

 解散総選挙となった今、郵政民営化だけに争点を限定することはあり得ないだろう。小泉首相は郵政民営化の是非を総選挙の争点にすることで「改革派」対「抵抗勢力」という構図を演出したがっているし、それに勝算を賭けている。が、郵政民営化法案をめぐって亀裂を深めている自民党そのものが、もはや自民党が旧来型の護送船団システムと市場・利潤万能システムの間で抗争を繰り返すしかないという、政権政党として機能不全に陥った証左だと見なすべきなのだ。
 小泉政権の4年間は、軍拡を推し進めて「戦争もできる国家」づくりを推し進めた。また雇用や老後などの将来不安を増幅し、かつ新しい格差社会を招き寄せもした。さらには庶民の不安を偏狭なナショナリズムへと誘導することで、労働者・市民にとっては万国共通の理念である善隣友好関係の形成を日増しに破壊している。
 私たちはこうした反省に立ち、今度の総選挙を小泉政権4年間の総決算として、自民党そのものを少数勢力に追い詰めるために全力を挙げて闘いたい。
 むろん民主党など第二自民党にすぎない。が、政治の転換には通過点も必要だ。民主党政権の誕生に期待も恐れも抱くことなく、政治の転換への道を切り開くためにも、ここはなんとしても「改革」派も「抵抗勢力」も含めて、自民党を政権の座から引きずり落とさなくてはならない。(廣)          トピックス案内へ戻る