2006.6.15.トピックス
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教育基本法改悪策動を粉砕せよ!
四月二十八日、日本政府は教育基本法改正案を閣議決定して同日付けで国会に提出した。
自公両党は、連休明けに審議時間が定例日に縛られない特別委員会を衆議院に設置して、六月十八日の会期内に成立をめざす姿勢を明確にした。まさに非常事態とはなった。
今、戦後憲法と一体のものとして制定された教育基本法が改悪されようとしているのはなぜなのであろうか。端的に言えば、日本の支配者階級にとって、帝国主義的自立を追求する上で障害物に転化した戦後「平和」憲法の本丸を攻略するために絶対不可欠な先制攻撃であり前哨戦である。今や日本国家は憲法改正してアメリカと一緒に戦争ができる国になりたいのだ。今週にも強行採決が策動されている共謀罪新設や今期内の成立をめざしている国民投票法は、彼らが戦後憲法を改正するための強力な武器なのである。
私たち労働者階級は、これらの一連の策動に対して、彼らの意図を徹底的に暴き立て粉砕をめざして断固闘っていかなければならない。
旧日本帝国を法的に表現してきた旧明治憲法と教育勅語の本質は、近代天皇制を制度として確立させ、義務教育である「国民教育」を通じて、日本の労働者民衆を、天皇の赤子として統合し滅私奉公を強要する天皇制イデオロギーを注入することにあった。こうした日本国家の姿勢は、アジアに登場した侵略国家として、帝国主義諸国間の世界分割闘争を激化させ、日本はアメリカによって、手痛い敗北を喫せざるをえなかったのである。
アメリカの強い意向を受けて成立した戦後「平和」憲法や現行教育基本法が、問題がありながらも、圧倒的な共感を持って受け入れられた背景には、天皇制イデオロギーによって、労働者民衆が身も心もボロボロになったことが背景にあることを忘れてはらない。
今回、問題となる「愛国心」は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」と明記された。このように、彼らは現行教育基本法には「道徳的価値観の記述」がない、教育勅語を廃止したことが個人のエゴ等を助長し、国家や家族についての認識をなくし「子供のゆがみ」をもたらした、必要なものは「日本人の道徳」であり、「祖国愛は万国不偏の価値観」で、その否定が戦後教育を腐らせてきた等々の浅薄な議論を展開して恥じない。
それにしても何と短絡した一面的な議論ではないか。日本の反動派は、自らの政治的道徳的退廃の事実を棚に上げて、日本資本主義の発展による矛盾の激化や頽廃の中で、「日本国民」に愛国心や道徳心が薄れ後退したから、日本国家は衰退して多くの困難に直面し破綻に瀕していると言い募る。確かに彼らにこそふさわしい議論ではある。だからこそ、彼らは国家主義や愛国主義、抽象的な道徳心や「宗教的情操」を国民に「たたき込め」さえすれば、国家が興隆し繁栄するとの独りよがりの浅薄な観念に取り付かれているのだ。
全く愚劣な考え方である。日本の過去の歴史を少しでも顧みるなら、愛国心の反動的役割が理解できる。その意味において、今回対案となる民主党案も大同小異なのである。
私たち労働者階級は、教育基本法改悪・共謀罪新設・国民投票法提案の一連の策動に対して、彼らの意図を徹底的に暴き立て粉砕をめざして断固闘っていかなければならない。
彼らの反動攻勢が強まれば強まるほど労働者民衆の覚醒もまた容易となる。闘う主体の意思の姿勢と関わるとの意味において、「ピンチはチャンス」なのである。 (直記彬)
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日教組は教育基本法改悪といかに闘っているのか
不意打ちを食らった日教組
四月二十八日に「教育基本法改正案」の国会提出されたが、この教育基本法改悪策動と日教組はいかに闘っているのかを明らかにしたい。
四月の中旬時点での日教組の教育基本法改悪についての認識は、法案の上程は五月の連休明けだというものだった。その間、0五年三月の日本PTA全国協議会の調査によれば、教育基本法を「よく知らない」保護者が約八十九%で、「議論したうえで改正すべきか考える」と回答した保護者も約四十八%いたこと、また0六年三月のNHK世論調査では、「今国会での成立にこだわらず時間をかけて議論すべきだ」という回答が七十六%だったことから、日教組は、0六年度全国五万ヵ所教育対話集会をはじめとする「教育基本法を読み生かす運動」にいっそう積極的にとりくまなければならないとしていた。
このような認識から日教組は、まず与党合意による改悪法案の国会上程をさせないためには、法案提出の権能を有しない「教育基本法調査会」を衆参両院に設置して、慎重かつ徹底審議するとともに、広範な国民的論議を巻き起こす必要があるとして、今通常国会会期中、緊急に「教育基本法調査会の設置に関する請願」署名にとりくみ、広く世論に訴える戦術を提起していた。その第一次集約の日程は四月二十五日であったのである。
したがって、四月二十八日の自公両党の閣議決定、その後の教育基本法の国会議案提出は、日教組の情勢認識の誤りを端的に明らかにすると共に日教組が不意打ちを食らったものだと評価しなければならない。
このような教育基本法改悪案が何時上程されるのか不明な緊迫した情勢下、徹底審議を行うとともに広く国民的論議を喚起するための「教育基本法調査会」設置の請願書署名にとりくむなどとは日教組のおめでたさを象徴する事件ではあった。
教育の危機宣言は出したものの
さすがに教育基本法改悪案の国会上程について、日教組は直ちに日本教育会館で記者会見を行い、教育の危機宣言を発した。そして、教育基本法政府「改正」法案に反対し、国民的な論議を求めることを明らかにした。しかし、その立場とは、教育基本法改悪絶対反対という明確なものではなく、今回提示された与党合意による改正法案は、自民党、公明党の極めて限られた人数で、しかもまったく密室の論議で決められ、しかも来年の統一地方選挙、参議院選挙への影響を最小限に抑えるべく、成立を急いでいるとの報道には、公正・中立であるべき教育が党利党略に利用されているとする立場からの教育基本法政府「改正」法案に反対しているだけで、慎重で国民的な論議を求めるものでしかない。
また子どもたちの事件・事故が発生するたびに、戦後教育とりわけ教育基本法を攻撃する自公両党幹部の発言が続く中、この攻撃の不当さを追求するのではなく、日教組が今しているような、教育基本法によって、それぞれの事件がどのように必然的に引き起こされた引き起こされたかといったことについて具体的な検証はなされていないと反論するだけでは決定的にまずい対応だと言わざるをえない。これでは政府をつけあがらせだけだ。
現下の政治情勢は、たんなる教育の危機ではなく、戦後教育の一時代を画する非常事態の出来であり、日教組結成以来の一大決戦なのである。昨年の義務教育国庫負担制度改悪阻止闘争において、当該の労働組合としての独自性を発揮することなく、文科省の尻押し部隊に徹してきた日教組は、まさに現行教育基本法改悪という組織存亡の危機の中で、それを知りつつ闘争の主体として立ちきれず、またしても文科省の陰に隠れていたいのであろうか。すべての労働者民衆が日教組の今後の闘いに注目していることは明らかである。
今、戦後憲法と一体のものとして制定された教育基本法が改悪されようとしているのは、日本の支配者階級にとって、帝国主義的自立を追求する上で障害物に転化した戦後「平和」憲法の本丸を攻略するために絶対不可欠な先制攻撃であり絶対勝たねばならない前哨戦である。今週にも強行採決が策動されている共謀罪新設や今期内の成立をめざしている国民投票法は、彼らが戦後憲法を改正するための強力な武器なのである。
私たち労働者階級は、これらの一連の策動に対して、彼らの意図を徹底的に暴き立て、教育基本法改悪案の粉砕をめざして断固闘っていかなければならない。 (猪瀬一馬)
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在日米軍再編は戦争への道!
「額賀・稲嶺合意」がまねく沖縄の新たな苦難
5月1日の在日米軍再編最終合意からたったの10日で、稲嶺恵一沖縄県知事が普天間移設を受け入れた。稲嶺知事は「県の基本的な考え方は変わらない」ことを強調しているが、額賀福志郎防衛庁長官との間で交わされた「基本確認書」は米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸への移設(新沿岸案)に弾みをつけるものとなろう。
なるほど確認書の表記は曖昧だが、重要なのは島袋吉和名護市長に続き沖縄県知事が国に屈服したという事実である。所詮、振興策≠ノ呪縛された彼らが国の方針に逆らい続けることなど不可能であった。足元を見透かされ、恫喝をかけられ、ひとたまりもなく沖縄県民の願いと安全を踏みにじってしまった。
まして、稲嶺知事は11月に予定されている知事選に立候補しないことを明らかにしているので、合意後に何を言おうと国は痛くも痒くもないし、聞く耳さえ持たないだろう。焦点となるのは新知事であり、たとえ移設反対の知事が誕生しても、海面埋め立ての許可権限を国に移す特別措置法を準備している。
それでも、沖縄の人々は米軍に棚ぼた式に(労せずして滑走路が2本になった)新基地をプレゼントすることを拒否し、危険極まりない普天間飛行場の即時・無条件閉鎖を要求し続けるだろう。我々は辺野古の闘いを支持し、在日米軍再編・自衛隊の米軍との一体化に反対しなければならない。
在日米軍再編「中間報告」の性格
昨秋10月29日、在日米軍再編「中間報告」なる文書が発表された。米国側はライス国務長官とラムズフェルド国防長官、日本側は町村外務大臣と大野防衛庁長官の4名が署名した「日米同盟・未来のための変革と再編」と銘打たれたこの文書には、中間報告≠ニいった記述はないし、そうした性格もない。
強いて言えば、在日米軍再編の具体化が残されているが、もちろんそれは全体の合意に影響を与えるものではない。むしろそれは、日本政府に課された宿題といった性格を有したものであり、目前で展開されている基地をめぐる攻防として示されている。従って、ここで再編≠破綻させれば、変革≠ノも影響を与えることになるだろう。
そうした事態は、当然にも日米同盟に齟齬を来すことになるので、小泉政権はいかなる反対運動が展開されようと、無視しようとしているのである。また、あらゆるウソと詭弁で再編≠ェあたかも在日米軍基地の縮小であるかに宣伝し、国民世論の支持を得ようとしているが、これは基地反対の闘いを孤立化させるのが目的である。読売新聞の論調などは意図的にそうした分断を画策するものであり、許しがたい犯罪的行為である。
変革と再編≠フ構成は、@概観、A役割・任務・能力、B兵力体制の再編、となっている。これを、ピースデポ「核兵器・核実験モニター」(247号・05.12.1)は「中間報告」というワナ≠ニ題して次のように論じている。
10月29日の日米ツー・プラス・ツー共同声明は、本来の性格として「中間報告」ではない。正確に言うと、米軍再編に関する日米協議は以下の3段階で進められてきたが、10.29共同声明には、第2段階と第3段階の基本指針に関して日米の合意事項が書かれている。第3段階の「勧告」のみが「中間報告」的なものである。
1.日米の共通の戦略目標に合意する
2.目標を実現するための日米の協力と役割分担を定める
3.それにしたがって基地・施設の再編を具体化する
05年2月19日の共同声明は、第1段階の「共通の戦略目標」について日米合意を発表した。今回の10.29共同声明は「第U章、役割・任務・能力」において「共通の戦略目標」を実行するのに必要な協力事項と分担のあり方、つまり第2段階の内容に合意した。さらに、在日米軍再編の基本方針についても、「役割・任務・能力」から導かれるものとして合意した。そして、具体的な基地の再編と部隊の移動に関する内容のみが、06年3月までにパッケージとして策定されるべき「勧告」として出され、その意味では中間報告の性格を持っている。
マスメディアの関心が、基地の再編に集中しているために、「中間報告」という言葉が強調されて、一人歩きしている。もちろん、承服しがたい「勧告」であり、「中間報告」である以上それに拘束されずに市民や自治体が全面撤回を求めるという論理は正当であり、当然のことである。
長い引用になったが、こうした指摘は重要である。基地がどう再編されるかということは、その前に合意された内容によって規定されているのであり、大方のマスコミは再編≠ノのみ関心を寄せて報道することによって、合意されたことの重大性を覆い隠す役割を果たしている。これは小泉政権にとって願ってもないことであり、さらに読売新聞のように踏み込んで基地反対はわがまま≠ニする報道は強い援軍となっている。
未来のための変革と再編
言うまでもなく、これは9.11∴ネ降の米国の世界戦略、対テロ戦争と先制攻撃、そして対中軍事戦略のための米軍の世界的な変革と再編≠ェ前提となっている。その一環としての日米同盟の変革と在日米軍の再編であり、「新たな脅威や多様な事態に対応するための同盟の能力を向上させるもの」ではあっても、「全体として地元に与える負担を軽減するもの」(概観)ではありえない。
日米同盟は「日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安全のために不可欠な基礎だ」とされ、さらに「同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は、世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない」(概観)とされている。もはや地域的な枠組みは消え去り、全世界的な展開、つまりは介入へと道を開こうとしているのである。
米国の戦略は自衛隊を米軍の目下の同盟軍として、米兵の代わりに自衛隊員が戦死するような体制を全世界で展開したい、そのために米軍の再編にともなう自衛隊の再編も組み込まれている。さらに、次の点も見落としてはならない。
「日本は、米軍のための施設や区域提供を含めた接受国支援を引き続き提供する。また、有事法制に基づく支援を含め、米軍の活動に対して事態の進展に応じて切れ目のない支援を提供するための適切な措置をとる。双方は、在日米軍のプレゼンスおよび活動に対する安定的な支持を確保するために地元と協力する」(役割・任務・能力)
小泉政権は、対テロ特措法による海上自衛隊のインド洋派遣、イラクへの人道復興支援≠名目とした陸海空自衛隊のイラク派兵というかたちで、すでに切れ目のない支援を提供≠オてきた。今回とりわけ問題となったのは、在沖縄海兵隊のグアム移転経費負担や普天間飛行場の名護移転、さらに岩国などの地元の反対運動である。その課題を3月末までに果たすことを求めたのが、以下の「V 兵力体制の再編【2 再編に関する勧告】」である。
「日米安保条約および関連取り決めを遵守しつつ、以下の具体案について国内および2国間の調整が速やかに行われる。閣僚は地元との調整を完了させることを確約し、06年3月までに、具体案を最終的にとりまとめ、具体的な実施日程を伴う計画を作成するよう指示した。これらの具体案は統一的なパッケージの要素であり、全体についての合意を受けて実施される。双方は、これらの具体案の迅速な実施に必要な措置をとる」
在日米軍再編最終合意
5月1日の在日米軍再編最終合意に移る前に、思いやり予算≠ノついて触れなければならない。これは前記接受国支援≠フ一環として、2000年度までの過去22年間に1兆6000億円もの税金が投入されてきたものである。本来、在日米軍の維持経費は全額米国が負担すると取り決められていたが、ベトナム戦争の泥沼に足を取られるなかでドル安・円高にあえぐ米国が日本に負担を求めたものである。1978年6月、金丸防衛庁長官が米国を訪問し、「駐留経費の問題について、思いやりの立場で地位協定の範囲内でできる限りの努力を払いたい」と述べたことから、思いやり予算≠ニいう言葉が使われるようになった。
神戸新聞は「日米安保協議委員会(2プラス2)でまとめた在日米軍再編最終報告のキーワードは、司令部機能統合などによる日米の軍事的『一体化』の加速だ。両国の連携強化は軍事情報共有や訓練など運用面で進む」(5月2日)と報じ、朝日新聞社説は「米軍再編最終合意 軍事が突出する危うさ」(5月3日)を論じている。しかしどちらも、「沖縄では海兵隊削減など一定の負担軽減が図られた」(神戸)、「全国の米軍基地のうち4分の3を引き受けている沖縄の荷が軽くなる。その見通しが開けてきたことは評価したい」(朝日)としている点で、大きな誤りを犯している。
これら地元負担の軽減≠評価する報道は、「新しい時代の日米同盟関係の強化と、沖縄など地元負担の軽減に役立つ」(5月3日付「朝日新聞」)としている小泉のデマに加担するものである。朝日新聞社説は「政府は普天間飛行場が移設される名護市とは折り合ったものの、・・・」とまで言っており、辺野古現地を含めた沖縄の人々の反対の意思を踏みにじるものである。
あけすけに合意支持を打ち出しているのは、もちろん読売新聞である。5月3日の社説は「同盟を深化させる『行程表』の実行」という見出しをつけ、「政府は、関係自治体の理解と協力を得て、今回の『ロードマップ(行程表)』を着実に実施しなければならない」と叱咤激励している。そう主張する根拠は何か。
「今回の在日米軍再編は、世界的な米国再編の一環ではあるが、米軍のためにのみ進めるものではない。 大量破壊兵器やミサイルの拡散、国際テロなど『新たな脅威』に対応し、日米同盟を基盤として、日本の安全を確保するのが、最大の目的である」「変化にあわせて、日米同盟の目的、理念を柔軟に見直し、日本の役割と責任を明確にするのは当然だ」等々。
合意内容を見ると、海兵隊グアム移転経費の59%を含め、2014年までに延べ3兆円の経費負担とされている。この金額を示したローレス米国防副次官は、これがガセネタ≠セったと撤回したが、防衛庁は2兆7000億円という金額を示しており、いずれにしろ途方もない金額であることにかわりはない。しかも、これらの再編が実現しない限り、米軍は現状で居座り続けるというのだから、そのあつかましさは半端ではない。
そのあつかましさを助長しているのが日本政府、小泉の奴隷的なブッシュ追随の姿勢である。しかし、それに目を奪われて、対米従属が本質的問題であるかに見なしてはならない。日米同盟を選択し、自衛隊を米軍と一体化させることは、日本の資本にとっても利益であるとの判断からである。もちろん、中国への接近もひとつの選択肢であり、そこに本質的違いはない。それにしても、小泉の無定見な追随は世界に恥を曝すものである。
この流れをどう止めるか
過去において、沖縄県知事選や名護市長選での敗北が基地反対闘争に困難を強いてきたが、この間の闘いの高揚のなかで4月23日の那覇市長選は勝利した。岩国においても、住民投票を強行実施した前市長が、同じく4月23日に新岩国市の市長選に勝利した。井原市長がどこまで国に逆らうことができるのかは分からないが、基地の強化拡大に反対する闘いにとって弾みのつく結果であることは間違いない。
首都圏においても、「断固として基地強化を阻止するとして、相模原市の小川勇夫市長は『戦車に轢かれようが、命をかけても』と発言。座間市の星野勝治市長が、『ミサイルを撃ち込まれても』と、これを受けた」(「週刊金曜日」4月28日号)という首長の勇ましい発言が飛び出している。横須賀では、「原子力空母の母港はいらない」を合言葉に、2008年原子力空母母港化のための工事に反対する闘いが続いている。
5月4日、韓国・平澤の反基地闘争が戦闘状態≠ノ入ったことが報じられた。干拓によって得られた豊かな農地を米軍が強奪しようとしているのだが、直接的には、盧武鉉政権が田植え前の接収を強行しようとしたために衝突となっている。米軍の平澤への移動は、北への核攻撃を行なっても、米兵が死なないようにするためだ、という指摘がある。同じように、沖縄から第3海兵遠征軍司令部などがグアムに移転するのは、沖縄が中国からのミサイル攻撃の圏内にあるからだという。
以上のように、米国はとことん自国中心主義であり、同盟国といってもそれは利用しつくされるたぐいのものに過ぎない。今回の在日米軍再編は、北朝鮮への軍事攻撃と対中国軍事対決のための体制づくりである。これを阻止するために、総ての在日米軍基地の撤去を要求し、国軍化しつつある自衛隊の解体をめざさなければならない。そのために、全国で展開されている基地反対闘争を支援しよう。 (折口晴夫)
労働運動、市民運動の弾圧狙う「共謀罪」を許すな!
共謀罪をめぐる攻防が大詰めを迎えている。政府・与党は、強行採決の機を虎視眈々とうかがっている。労働者・市民は、早急に共謀罪反対の世論喚起のための行動を強化し、この稀代の悪法を葬り去らねばならない。
共謀罪とは、すでに行われた犯罪に対してではなく、「犯罪」の遂行について話し合い、合意したことを根拠に捜査を開始し、逮捕し、裁判にかけ、刑を下すことが出来るという法律だ。この法律で引っかけることが出来る「犯罪」は、刑の上限が4年以上のもので、219種の犯罪が該当する。その中には、これまでも警察・国家権力が労働運動や市民運動を弾圧する際の常套手段としてきた「威力業務妨害罪」「監禁罪」「傷害罪」「恐喝罪」等々のリストがずらりと並んでいる。
政府・与党は、共謀罪は決して一般の市民を取り締まるものではない、国際的な組織犯罪を対象とするものだ、と弁解している。しかしここには二重の底意が隠されている。
ひとつは、政府・与党がなんと言い逃れようと、この法案の条文や構造自体は、一般の市民の行動、労働運動や市民運動を国家権力の恣意によって取り締まることが可能な内容となっている。「労働運動や市民運動などには適用しない」などというのは、何の担保もない空約束、というよりもむしろ本意を隠す詐欺的言辞にすぎない。
また国際的な組織犯罪を対象とするという理屈も、要注意だ。というのは、共謀罪の背景となっている「国連国際組織犯罪条約」自体が、誰しもが容認し得ない社会悪を処罰対象としたものというよりも、むしろ近年の民衆運動の大きな特徴である越境性、国境を越えた支援や連帯や団結を取り締まることを大きな目的としているからだ。麻薬、マネーロンダリング、人身売買等々の取り締まり、などというのは、国際的な民衆運動を取り締まる条約や法律を作るための単なる口実にすぎない。したがって、「もし本当に国際的な組織犯罪を対象とする法案なら仕方がないか」と受け取る向きがあるとすれば、そうした姿勢はすでに政府や与党の土俵に乗せられてしまっていると言わなければならない。
共謀罪が、労働運動や市民運動、国境を越えた民衆運動などの弾圧を狙ったものであることは明らかである。
しかもこの法律は、実際に行われた犯罪を問題にするのではなく、国家権力が「犯罪」と見なす行為について相談や合意をなす事自体を取り締まりの対象とするという点に、その特異な性格を有している。つまり行為そのものではなく行為についての相談や合意を犯罪視することを導入路にして、人々の考え、意志、思想を取り締まる方向に日本の刑法システムを大きく切り替えようとしているのだ。
またこの法律は、共謀に加わったことを自首した者の罪を軽くする条文を組み込み、密告を奨励している。この点は、市民生活の中に疑心暗鬼をもたらすものとして批判されているが、そればかりでなく犯罪のでっち上げの横行も生じさせかねない。権力がある団体をつぶしたいと意図した場合、スパイを潜り込ませ、共謀を行わせ、その後にスパイに自首させれば、目的は簡単に達成されるからである。
共謀罪の新設は、近年の日本の政治の右旋回、教育基本法の改悪案や憲法の改悪に向けた動きとも完全に一体のものだ。こうした政治の右旋回は、市場原理主義や弱肉強食の奨励による貧富の格差の急拡大、社会矛盾の深刻化が必然的に生じさせるであろう労働者・民衆の不満の噴出、政府や資本への抗議や批判の行動の開始とその発展を予防し、押さえつけようとするねらいから出たものだ。もちろん、日本の軍事強国化、海外派兵のいっそうの拡大の要求もその背後に潜んでいる。
労働者・市民の生活を締め上げ、その闘いを押さえつけようとする共謀罪を決して許してはならない。我々に残された時間は余り多くない。共謀罪反対のキャンペーンに、直ちに立ち上がろう! 2006年5月15日 記 (阿部治正)
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