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教育基本法「改悪」案の参議院での強行採決に断固抗議する

 十二月十四日午後六時五分、安倍政権が臨時国会の最重要課題と位置づけてきた教育基本法「改悪」案が突然の質疑打ち切りの動議が可決されるやただちに強行採決された。翌十五日の参院本会議では会期が延長され、野党に一瞬気のゆるみが生じたその時、自民・公明両党の賛成多数により強行採決されて、「改悪」教育基本法は成立した。
 この日、教育基本法「改悪」案の参議院本会議での強行採決を阻止せんと国会前には、教組・市民団体の関係者が朝早くから詰めかけ、また昨日の暴挙に抗議して撤回を求める労働者民衆が年休を取り、続々と結集する中で、再度なされた暴挙であった。
 国会内では、教育基本法の成立を阻止するため、民主党・日本共産党・社民党・国民新党の野党四党は、伊吹文科相の問責決議案を共同提出したものの安倍首相の問責決議案の提出については、民主党が動揺し裏切り、共産・社民の両党が共同提出するに止まった。ここにおいて、この間共同行動を維持してきた野党共闘は崩れてしまったのである。
 またこの十四・十五の両日、誰が考えても教育基本法「改悪」案阻止の山場であったにもかかわらず、日教組本部は、国会前に登場せず逃亡した事実がある。日教組本部は山場での闘いに日和見を決め込んでしまった。東京教組等が辛うじて日教組の旗を守って闘い抜いたのだ。実際北教組・大分県教組・兵庫県教組などが大量動員で現場組合員の闘いの息吹を国会前にしっかりと運んでいるのに日教組本部は彼らに対する指導性を放棄して恥じなかった。しかし、その現場には現れなかったものの世間体を気にしている日教組本部はアリバイ作りのため、十四日には抗議声明を、二十二日には成立した「改悪」教育基本法に対する日教組見解を出すのは忘れてはいない。本当に軽蔑すべき心性の持ち主たちばかりではないか。教育基本法「改悪」阻止とは、誰のための何のための闘いであったのか。
 ここにおいて、私たちは、「日教組本部は死んだ」と宣言する。日教組は「教え子を再び戦場に送るな」の不滅のスローガンを投げ捨てたと断固糾弾していかなければならない。
 衆議院本会議での強行採決以降のわずか一ヶ月間でも、いじめ自殺の頻発と文科省・各県教育委員会の無策ぶりは決定的に暴露された。また高校における未履修問題は、二人の現職校長の自殺と未履修については文科省・各県教育委員会の黙認があった事も明白となった。さらに民意を聞くと全国で開催されたタウンミーティングで、内閣府・文科省等の「やらせ発言」と壮大な無駄金使いが大々的に追及された。まさに政府・与党は、進退窮まるところまで追いつめられていた。この責任を取ると大言壮語した安倍総理のたった三ヶ月百万円の給与返納は、世間の物笑いの種となったのである。
 成立した教育基本法「改悪」案は、一九四七年に制定された教育基本法を全面的に改め、憲法との一体性を否定した内容で、人格の完成と教育の機会均等を否定し、格差社会を肯定・是認するものとなった。また学習指導要領で掲げられていた徳目を、教育の目標にまで高め、さらに、格差社会の拡大で崩れ始める「国民」の一体感を保持する為、「公共の精神の尊重」や「我が国と郷土を愛する態度を養う」との表現で、政府与党が過去一貫して求め続けてた「愛国心」を明記している。その意味で、教育基本法「改悪」は、まさに安倍「戦争準備」内閣に対して、改憲と戦争発動の信任状を与えたに等しいのである。
 しかし、衆参両院の与党の数の圧倒的な状況下ではあるものの教育基本法「改悪」を、四月下旬に法案上程以来、実に八ヶ月の間採決させてこなかった事を私たちは軽視すべきではない。強行採決された事にいたずらに敗北感を持ってはならないのだ。まさに全国津々浦々で闘われた労働者民衆の反戦平和に対する切実で熱い運動があったからこそ、会期末すれすれまで採決を強行できない状況を作り出して、ここまで政府を追いつめたのだ。そうであれば今後の私たちの闘いの方向性も明らかである。
 今後、教育基本法「改悪」を受け学校教育法など教育関連三十二法令案が、次期通常国会へ上程される。それらの政府の法令「改悪」案を、どこがどのように反動なのかを具体的に批判する事で、教育基本法「改悪」阻止で積み上げてきた闘いを強化・発展させていかなければならない。まだまだ闘いは始まったばかりなのである。私たちには失望する暇などないと認識しなければならない。また、「教育再生会議」は、0七年一月には第一次報告として、学力向上策として「教育内容の充実、授業時間の増加」などをまとめている。
 私たち労働者民衆は、この闘いで誰の目にもはっきりした偽の友を糾弾しつつ、自衛隊の海外派兵や戦争の発動とそのための教育の国家統制・権限強化につながる動きに反対して、教育基本法「改悪」阻止の運動で積み上げた闘いを、改憲策動に反対する闘いに拡大・発展させていかなければならない。
 ともに闘おう! (猪瀬一馬) 案内へ戻る