トピック2007/5/15
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安倍晋三の供物
安倍晋三首相が靖国神社の春季例大祭にあわせ、「内閣総理大臣」名で供え物を送っていたことが5月7日、関係者の話で明らかになった。翌日の新聞報道によると、供物は5万円相当の「真榊」と呼ばれるサカキの鉢植えで、ポケットマネーで支払ったという。安倍首相は春季例大祭直前の4月20日、記者団に靖国神社参拝について聞かれ、例によって「外交問題、政治問題になっている以上、行く、行かないということは言うべきではない」(神戸新聞)と述べている。
相手によっていかようにも対応を変える、その節操のなさが安倍氏の身上とはいえ、一方で態度を明らかにすることを避け、他方でこっそりと「国のために戦った方々のご冥福をお祈りし、尊崇の念を表わす」ために供え物をしているのである。もっとも、彼の行為は戦死者に向けられたものではなく、靖国神社に特別な感情を持つ人々に向けられたアリバイ工作≠ノすぎないのだが。
この事実が明らかになっても、安倍首相はだんまりを決め込み、塩崎官房長官は「首相の私人としての思想、信条にかかわる事柄なので、政府としてコメントを控えたい」と逃げを打っている。彼らには公人として自らの行為を律することも、自らの行為についての説明責任を果たすこともできない。身内の集まりでは勇ましく語り、マスコミの前では沈黙とはぐらかしに終始し、そしてブッシュには媚びへつらう、これこそが安倍の信条≠ナはないか。
野党が二枚舌だ、姑息だと批判するのも当然だが、これではヤスクニ派からさえ不満が出るだろう。しかし安倍には、前任者がとことんこじらせてしまった中国や韓国との関係を少しでも改善しなければならないという任務≠ェある。それは経済的要請であり、資本の利益のために中国をこれ以上怒らせるなという要求である。安倍はこれに従うしかないのだが、ヤスクニ派を無視することもできないために姑息≠ネ手段に走るしかないのだ。
さて、中韓の反応はどうか。韓国政府は「極めて遺憾」とし、「域内の平和と安定の根幹になる正しい歴史認識の確立に逆行する」(以下、5月9日付「神戸新聞」)と批判している。通信社・聯合ニュースは「安倍首相は4月の訪米前後に元従軍慰安婦の被害者に対し、何度もおわびしたが、一連の発言が真実なのか、再び疑わせる」と報じている。確かに、謝罪は口先だけに過ぎないし、その謝罪もブッシュやアメリカ議会に向けられたものであり、戦争被害者に向けられたものではない。
中国政府の反応は韓国ほど直接的ではない。それは、経済的関係を重視する政府にとって事を荒立てるのは得策ではないからである。もちろん、国内の反日感情を無視できないので、安倍の靖国神社参拝は認めることができないとクギを刺している。「今回の問題を強く批判すれば、『訪日は成功だった』と表明した温首相の威信にもかかわるだけに、年内の安倍首相訪中や胡錦濤国家主席の訪日を控え、冷静に見守る方針だ」という事情もあるようだ。
いずれにせよ、ヤスクニの存在はこれを利用しようという勢力にとって、実に好都合なものであり、またそこに靖国神社が敗戦を超えてなお変わることなく存在し続けている根拠がある。戦後の歴史に刺さって抜けない棘、その存在を許してはならない。(折口晴夫)
国民投票法の強行採決糾弾!
支配層の憲法改悪=軍事強国化の野望を許すな!
自民・公明の与党は、5月14日の参院本会議で改憲手続き法の「国民投票法」を強行成立させた。
憲法という政治と社会の大もとをなすルールを変えようとするならば、その大前提として労働者・市民の自由な意見表明が何よりも尊重されなければならない。しかし、与党がごり押しした国民投票法は、むしろ勤労者の自由な発言や行動を許さず、その手足を縛り上げようとするものだ。
第一に、改憲の是非を決する「過半数」の解釈は、「投票総数」ではなく「有効投票」の過半数とされた。有権者の過半数または3分の2以上などとしている諸外国と比べ、勤労者の総意を著しく軽視している。
第二に、投票に効力を生じさせる最低投票率の規定を設けていない。そのために、投票率が最近の国政選挙並みに5割前後にとどまるとするならば、その過半数つまり25%前後の賛成で、改憲案が成立してしまうことになる。
第三に、有権者の2割を占める公務員や教育者が意思を表明し訴えることを厳しく抑制しようとしている。公務員や教育者が「地位を利用」して国民投票運動に関わることを禁止し、また公務員の政治活動制限規定の適用除外も明確にはされなかった。
第四に、改憲案を国民に知らせる「広報協議会」メンバーを、各党の議席数に比例させ、改憲を目指す与党に圧倒的に有利な構成にしようとしている。これでは公正な広報内容および活動になる保証はない。
第五に、TVなどを用いた有料広告を、投票日の2週間前までは放任している。人目をひく、洗脳的な回数の広告を打てるのは、潤沢な資金を自由に出来る財界に支えられた改憲勢力だけであることは明らかだ。
何よりも問題なのは、改憲の目的が、「自衛隊」に本格的な「軍隊」としての地位を与え、この「日本軍」の海外での武力行使を可能にさせる点に置かれていることだ。その背景には、もちろん、多国籍化を推し進めつつある日本の財界・大企業の要求がある。彼らは、世界中に張り巡らせた自らの権益を維持し、防衛し、拡大することを求めて、自衛隊=日本軍の海外での本格的な活用を開始しようとしているのだ。
安倍首相は、憲法問題を7月の参院選挙の争点のひとつとして押し出そうとしている。自分の任期中に改憲を仕上げようとの野望の実現に向けて突き進もうとしている。
労働者・市民の力で憲法改悪のための国民投票を許さない闘いを発展させ、九条改憲の策動を葬り去ろう!
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