トピックス2011/08/15    トピックス案内へ戻る
動揺深める国際通貨体制−−ドル・ユーロ安

●世界同時株安と国際通貨危機
 ギリシャの財政危機に端を発した国債金融問題を、EU総掛かりでその波及をひとまず食い止めたかに見えたのであるが、ユーロ危機もまだまだくすぶっているさなかである。 米国の政府債務上限の引き上げ問題をめぐる共和党と民主党の調整が長引き、期限いっぱいの8月2日の当日までもつれ込み、米国債の債務不履行が突然現実味をもった。そのことが、ドル・ユーロ安と世界同時株安という事態の引き金を引いた。
 米国の財政赤字削減問題は、2.4兆ドルの赤字削減を二段階で実施する。当面は9000億ドルの上限引き上げとほぼ同じだけの赤字削減を実施するが、残り1、5兆ドルについては超党派の特別委員会が11月23日まで削減策を検討するということになっている。米国の債務不履行問題も今回の「上限引き上げ」でなにか根本的な改善があったのではなく、危機の引き延ばしであることは言うまでもない。

●退廃深まるグローバル資本主義
 米国や日本ばかりではなく、イタリアやスペインなども含めて、ほとんどの「先進」資本主義国は財政赤字が慢性化しており、そのための国債の発行は巨額である。このような財政赤字が、資本主義諸国をむしばんでいることは明らかなところである。各政府は借金の借り換えや「ムダ」の切り捨てにやっきとなり、雇用促進事業や福祉切り捨てや増税など、社会の軋轢は徐々につよまってゆく。ロンドの暴動も、「先進」資本主義社会の倦み疲れた姿を暴露したのである。
 さて、国債の償還や利払いが万一滞るか、その様な可能性になれば、これらに諸国の貨幣は暴落すると考えられている。あるいはユーロ諸国では、厳しい財政再建政策が「強要」される。
 米国の場合は、他にも巨額な経常収支の赤字も抱えており、ドルの信用は漸進的に下降してきたことは、周知の事であった。今回のドルの動揺は、「基軸通貨」ドルでさえも例外ではないことをしめしたと言う意味では特筆すべき事かもしれない。いや、為替の乱高下や投機筋の餌食にされる世界経済の現実は、「基軸通貨」ドルの存在意義を改めて問うものとなる。また、「国家連合」という手法に基づいたもう一つの国際通貨ユーロも大きな壁にぶち当たっていることも事実だ。

●ドル体制もいよいよ末期だ
 そもそも米国という特定の国家の貨幣であるドルが、金に代わって「国際通貨」としての役割をはたすということ事態が、矛盾に満ちたものであった。戦後圧倒的な経済的パワーと金準備、軍事的優位の下で確立してきた「ドル体制」もいよい退位の時が近づいていると考えざるを得ない。上記の双子の赤字が、ドルを弱めてきたことばかりではない。現在の拡大された世界経済の中で、たとえば中国、インド、ASEAN等々の台頭、あるいはユーロ圏の拡大の中で、ドルの世界の外貨準備率は推定でも60%をかろうじて超える程度のものとなっている(ちなみにユーロは26%)。「ドル体制」消滅のファイナル・カウントダウンが始まったと考えるべきであろう。
 世界同時株安を引き起こした原因は、ひとつには「サブプライム・ローン」問題に端を発した世界経済恐慌が、まだ終了していないということがあるにしても、「ドル体制」に対する世界ブルジョア階級の不信任、あるいは真剣にドルを守ろうとしてない米国政府への不信任のあらわれであるとおもう。
 もし「ドル体制の崩壊」が現実のものとなれば、それは同時に米国の世界戦略上の問題でもある。戦後世界を支配した米国の世界権力もまた、大きな後退を強いられると言うことを意味するからである。こうした面からもこの問題から目を離せない。(ぶんめい)トピックス案内へ戻る