高浜と川内、ふたつの仮処分決定!

 4月14日、福井地裁(樋口英明裁判長)が、関電高浜原発3・4号機の再稼働差し止め仮処分で、再稼働を認めないとの決定を行いました。その内容はすでに報道されていますので述べませんが、この決定が覆されない限り安倍首相や菅官房長官が「粛々と・・・」と叫ぼうと、関電八木社長が「電気料金値上げ・・・」と脅そうが、高浜原発を動かすことはできません。

 引き続き4月22日、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)が九電川内原発1・2号機の再稼働差し止め仮処分を退ける決定を行いました。予想されたことというべきか、司法は鹿児島地裁・前田郁勝裁判長をして原発再稼働路線堅持を再確認させたのです。たった8日で、国家権力の一翼を担う司法は〝危険な〟福井地裁の判断をことごとく否定し、彼らの目指す〝安全圏〟へと逃げ込みました。

 だがしかし、これによって電力会社が原発保有という負債から逃れる道を絶ってしまいました。関電社長にして電事連会長の八木誠は、福井地裁樋口英明裁判長によって差し出された救いの手を払いのけ、原発との心中の道を選びました。あれもこれも愚かと言うほかありません。

 それでも私たちは、再稼働を阻止してこのまま原発を眠らせてしまうことを、あきらめるわけにはいかないのです。子どもたちが核のゴミに埋もれてしまい、放射能汚染におびえて暮らすような明日が来ないように、全力を尽くさなければなりません。

 それでは、ふたつの仮処分決定を新聞各紙はどのように報じたでしょうか。各紙社説(産経のみ「主張」)から、その見出しと内容を紹介します。 (晴)


関電高浜原発3・4号再稼働に画期的な差し止め決定!

朝日新聞「高浜原発差し止め、司法の警告に耳を傾けよ」
「原発の再稼働を進める政府や電力会社への重い警告と受け止めるべきだ」「普通の人が素朴に感じる疑問を背景に、技術的な検討を加えてうえで、『再稼働すべきでない』という結論を示した司法の判断は意味は大きい。裁判所に目線は終始、住民に寄り添っていて、説得力がある」

毎日新聞「高浜原発差し止め 司法が発した重い警告」
「原発再稼働の是非は国民生活や経済活動に大きな影響を与える。ゼロリスクを求めて一切の再稼働を認めないことは性急すぎるが、いくつもの問題を先送りしたまま、見切り発車で再稼働をすべきでないという警告は軽くない」

読売新聞「高浜差し止め 規制基準否定した不合理判断 合理性欠く決定と言わざるを得ない」
「福島第1原発の事故後、原発再稼働に関し10件の判決・決定が出たが、差し止めを認めたのは樋口裁判長が担当した2件しかない。偏った判断であり、事実に基づく公正性が欠かせない司法への信頼を損ないかねない」「関電は、決定に対する異議などを福井地裁に申し立てる。今後、決定が取り消されることを前提に、関電は、保守点検体制の強化などを着実に進めるべきだ」

産経新聞「高浜異議申し立て 迅速に決定を覆すべきだ」
「異議審や高裁には、迅速で正常な審理を求めたい。同時に政府や関電はその間も、再稼働に向けた準備を進めてほしい。この決定は速やかに見直されるべきだ。それほど特異な内容である」

日経新聞「福井地裁の高浜原発差し止めは疑問多い」
「原発に絶対の安全を求め、そうでなければ運転を認めないという考え方は、現実的といえるのか」「差し止めへのもうひとつの疑問は、原発の停止が経済や国民生活に及ぼす悪影響に目配りしているように見えないことだ」

東京新聞「国民を守る司法判断だ 高浜原発『差し止め』」
「福井地裁の決定は、普通の人が普通に感じる不安と願望をくみ取った、ごく普通の判断だ。だからこそ、意味がある」「(政府は)原発のある不安となくなる不安が一度に解消された未来図を、私たちに示すべきである」

神戸新聞「高浜差し止め 安全審査の正当性揺らぐ」
「現在の地震学では予測に限界があるからこそ、最悪の想定をして備えなければならない。関電にその自覚と責任感が欠けていないだろうか」「新規制基準では人格権を十分に守れない。それを示した判決だ」

 読売と産経(日経はいくらか控えめ)は安倍自公政権と一体となって司法判断無視、リスクゼロなどありえない、再稼働すべしという論調です。産経からもう少し引用しておきましょう。これはもう再稼働派の悲鳴だ!
「福井地裁の同じ裁判長は昨年、大飯原発3,4号機運転差し止め訴訟でも再稼働を認めない判決を言い渡し、安全性の判断は『必ずしも高度の専門的な知識を要するものではない』と言及した。
 また、原発の運転停止で多額の貿易赤字が出ても『これを国富の流出というべきではない』とし、『豊かな国土に国民が根を下ろして生活できることが国富である』と定義していた。
 国富とは国の総資産のことであり、経済力のことである。思想家や哲学者の素養まで、裁判官には求めていない。司法が、暴走していないか」


九電川内原発1・2号機の再稼働にお墨付き!

朝日新聞「川内の仮処分‐専門知に委ねていいか」
「鹿児島地裁の判断は、従来の最高裁判決を踏襲している。行政について、専門的な知識をもつ人たちが十分に審議した過程を重視し、見過ごせない落ち度がない限り、司法はあえて踏み込まない、という考え方だ。
 だが、福島の事故では、専門家に安全を委ねる中で起きた。ひとたび過酷事故が起きれば深刻な放射線漏れが起きて、周辺住民の生活を直撃し、収束の目途が立たない事態が続く」

毎日新聞「割れた司法判断 丁寧な原発論議が要る」
「規制基準を厳格にしても事故の発生率はゼロにならない。ゼロリスクを求めるだけでは、現実的な議論になっていかない。
 政府は『新規制基準に合格した原発の再稼働は進める』と繰り返しているが、それでは、国民の理解にはつながらない。再稼働を進めたいのであれば、脱原発の道筋をきちんと示す必要がある」

読売新聞「川内原発仮処分 再稼働を後押しする地裁判断」
「今回の決定は、福井地裁による14日の仮処分の特異性を浮き彫りにした。新基準を『緩やかに過ぎ、安全性は確保されない』と断じ、関西電力高浜原発3,4号機の再稼働を差し止めたものだ。
 ゼロリスクを求める非科学的な主張である。規制委の田中俊一委員長も、『(新基準は)世界で最も厳しいレベルにある。多くの事実誤認がある』と論評した」「規制委に安全審査が申請された14原発20基については、未だ『合格』に至っていない。
 安全確保を最優先に、規制委は迅速に審査を進めるべきだ」

産経新聞「川内差し止め却下 説得力ある理性的な判断だ」
「東京電力福島第1原発の大事故以来、国内には原子力発電に否定的な評価が根を張っている。しかし、原発に背を向け続けるだけでよいのだろうか。
 日本がエネルギー資源の貧国である現実を忘れると問題の解決は遠ざかる。原発の適正活用は、日本に限らず、将来の世界のエネルギー安全保障に資する道でもある。鹿児島地裁の決定を確かな第1歩としたい」

日経新聞「地裁の原発判断が問うもの」
「原発をめぐるこれまでの司法判断や安全審査の経緯に照らせば、鹿児島地裁の決定の方がより説得力をもっている」「同様の訴訟は各地で相次いでいる。原発の再稼働をどう判断するかは、政府や規制委だけでなく司法も重い役割を担う。安全審査の根幹部分が妥当かどうかや、原発が経済や国民生活の及ぼす影響も含めて、幅広い視点からの判断を司法には期待したい」

東京新聞「川内原発仮処分 疑問は一層深まった」
「規制委の基準に含まれない事故発生時の避難計画は『現時点において一応の合理性・実効性を備えている』とした。
 鹿児島県の試算では、原発30キロ圏内の住民が自動車で圏外へ逃れるのに30時間近くかかるというのだが。
 全体的に、約20年前に、最高裁が四国電力伊方原発訴訟(設置許可取り消し)で示した『安全基準の是非は、専門家と政治判断に委ねる』という3・11以前の司法の流れに回帰した感がある。
だがそれは、もう過去のことであるはずだ」

神戸新聞「原発の差し止め 専門家任せにしたくない」
 「地裁は『巨大噴火の可能性は十分に小さい』とし、監視によって前兆をつかめるとする九電などの主張をうのみにした。
 火山学会などは反発している。火山学では噴火は予知できず、前兆をつかむことは難しい。可能性は低いが、破滅的なカルデラ噴火はいつ起きてもおかしくない。川内原発への影響は大きいが、その危機感がない。
 川内の決定に事実誤認があると指摘されても仕方ないだろう」「自然現象や科学技術は不確実性がついて回る。特に原発は事故が起きると人や環境に大きく影響し、生きる権利を根こそぎ奪いかねない。専門家だけに任せられない問題だ」

 どちらの判断を支持するか、くっきり分かれています。リスクがゼロになることはあり得ないことを前提に、それでも再稼働すべしという読売・産経・日経は司法判断が分かれては困るという論調で、福井地裁の判断は〝特異なもの〟として退けることを要求しています。樋口英明裁判長への個人攻撃が組織されつつあるのでしょう。
 しかし、責任を持って誰も安全だと言わない、言うことができないのにどうして再稼働が可能なのでしょうか。安倍晋三自公政権は、2030年の電源構成に占める原発比率は20~22%だと言いだしています。原発新規建設をも視野に入れているのです。幸運にして事故が起きなかったとしても、将来世代に背負いきれない負債を押し付けることになるにも関わらずです。  トピックス案内へ戻る
 
トピックス2015年4月28日     トピックス案内へ戻る