ワーカーズ 347号 2007.6.15.      案内へ戻る

自衛隊による国民監視を許すな!民衆敵視はブルジョア軍隊の本性だ

 自衛隊の情報保全隊が国民の様々な活動を監視・調査してきたことが暴露された。監視の対象の中には、年金や消費税をテーマにした運動も含まれていた。
 情報保全隊は、それ以前からあった調査隊を再編・強化し、2003年3月に発足した。背景には、自衛隊の海外派兵のエスカレーションがあった。01年には、アフガンへの攻撃を開始した米軍を支援するためにテロ特措法を制定させて自衛艦をインド洋に派兵した。03年には、アメリカと一体の海外での軍事行動をいっそう拡大させようと、有事関連三法やイラク特措法の制定がめざされていた。情報保全隊の発足、労働者・市民への監視活動は、まさにそのさなかに行われたのだ。
 今回暴露された04年初頭の5週間分の資料だけにもとづいても、41都道府県の290以上の団体や個人が、反自衛隊活動のレッテルを貼られて調査の対象とされている。その内容は、集会など参加人数、スローガンの内容、党派的傾向、そして個人については発言内容、職業、居所にまで及んでいる。
 自衛隊の海外派兵がさらに拡大し、有事法制に基づく国民保護協議会が次々と組織され、防衛庁が防衛省へと格上げされ、教育基本法が改悪され、憲法の改悪に向けての動きが強まっている今、この情報・スパイ機関の活動がいっそう強化・拡大されていることは容易に想像がつく。そうした背景があったからこそ、自衛隊の内部からの今回の内部情報の暴露も発生したのだ。
 今回暴露された情報保全隊の行動が「情報保全隊の本来の任務」を逸脱しているかどうかを問う事も、こうした活動を牽制する上で無意味ではないだろう。しかしより重要なことは、労働者・市民を対象にした調査や監視の活動は、まさに自衛隊の情報機関の、そして自衛隊自身の、ブルジョア軍隊の本性に根ざしたものであることを理解することである。
 自衛隊の情報部隊は、治安出動にあたって特別な役割を与えられていることを私たちは知らなければならない。この部隊は、自衛隊本体が基地内で待機を強いられている状況下でも、武器を携行して基地外で活動することが許されているのだ。
 労働者・市民に牙をむきつつある自衛隊に対し、批判と監視活動を強めていこう!。   (阿部治正)


許すな!宇宙の“軍事利用”―9条改憲の背後で進む宇宙空間での軍拡――

 任期中の9条改憲という野望を隠さない安倍首相の旗振りで、国民投票法案が今国会で強行可決された。あわせて安倍首相はこの7月の参議院選挙で憲法改訂を争点化することを事あるごとに強調している。“宙に浮いた5000万件”を含む年金記録問題などが暴露され、参議院選挙では“生活”を争点化せざるを得なくなった状況下でも、“戦後体制からの脱却”を掲げる安倍首相は改憲問題の争点化をあきらめていない。
  戦後保守政権の下で進められてきた“解釈改憲”路線から“成文改憲”で正面突破をめざす安倍政権だが、これまでの“解釈改憲”の手法は“既成事実”を固めてそれを追認させる、というものだった。その既成事実づくりがまた一つ付け加えられようとしている。宇宙空間の軍事利用を可能にしようとする「宇宙基本法」の制定がそれだ。
 自民党・公明党の与党は、この6月5日、高性能の偵察衛星などの情報を“防衛目的で”利用できるようにする「宇宙基本法案」を今国会に議員立法で提出する方針を固めたという。現実には今国会は6月23日で会期切れとなるため継続審議とし、秋に予想される臨時国会での成立をめざすという。
 日本はすでに情報収集衛星という事実上の偵察目的の軍事衛星を保有し、その既成事実を根拠として今度は“平和利用”に限られていた宇宙空間を軍事利用が可能なものに変えてしまおう、というわけだ。繰り返される既成事実先行の軍拡を許すわけにはいかない。

■軍事利用の解禁

 宇宙空間の利用では日本は69年に宇宙の平和利用原則が謳われていた宇宙条約を批准し、あわせて同年に「宇宙の開発と利用は平和目的に限る」とする国会決議を採択している。憲法9条を持つ日本はこの「平和利用」を「非軍事」と限定解釈した。今回の「平和基本法案」はその国会決議を抹殺し、宇宙空間を軍事目的に利用できるようにするもので、直接的には商用利用の範囲内の既存の“情報収集衛星”に変えて最先端の解像度を持つ“偵察衛星”の保有を意図したものだ。自民党が昨年秋にまとめた「わが国の防衛宇宙ビジョン」(原案)では、ミサイル発射を探知する早期警戒衛星や偵察衛星を15年までに導入することを明記している。
 69年の国会決議に従えば日本は偵察衛星は保有できないはずだ。が、98年の北朝鮮によるテポドン発射を期に高まった偵察衛星保有論議の結果、政府統一見解で「利用が一般化しているか、それと同様の機能を有する衛星」の開発を閣議決定してしまった。これによって周知のように03年3月には日本初の“情報収集”衛星を発射し、今年2月には4期目の衛星を打ち上げて常時4基体制での事実上の“偵察衛星”を保有するに至っている。宇宙からの情報利用はすでに一般化しているという、いわゆる「一般化原則」は85年に海上自衛隊が米国海軍の通信衛星を利用するに当たって“論拠”とされたものだが、それを流用したのが偵察衛星保有に際しての政府統一見解だったわけだ。
 こうした経緯があるので日本の“偵察衛星”は“情報収集衛星”と呼称され、性能も商用衛星並みの解像度1メートル(米偵察衛星は10センチ)ほどだ。管理・運用も防衛省・自衛隊ではなく政府(内閣官房)であり、利用についても気候・資源・測量など汎用目的とされている。そうした制約をすべて突破したい、というのが今回の宇宙基本法案であり、宇宙の平和利用という国会決議を帳消しにして、宇宙の軍事利用を建前上も可能にする内容になっている。

■“防衛目的”はカラ文句

 与党が提案しようとする「宇宙基本法案」は、宇宙の平和利用の再定義、国際法の解釈、宇宙基本計画の策定、宇宙戦略本部の設置、あるいは防災・災害への寄与や先端的な宇宙科学の研究開発の推進などを盛り込んでいる。が、その中心的ねらいは宇宙空間の「非軍事」を反故にして「軍事利用」に道を開くことにあるのはいうまでもない。その柱は宇宙条約の解釈を欧米並みに、すなわち「宇宙の平和利用」イコール「攻撃的でない軍事利用は可能」という“普通の国家”並にしたい、ということだ。米国などはこうした手前勝手な解釈によって偵察衛星や早期警戒衛星などを保有・運用している。「攻撃的でない軍事利用は可能」だ、すなわち防衛目的の宇宙利用は可能だ、としてしまえば、あとは歯止めはないも同然だ。
 今年1月に中国が短距離弾道ミサイル「東風21」(射程1800キロ)で地上850キロの古い気象衛星を破壊した、いわゆる衛星破壊攻撃実験が成功して米国などと物議をもたらした。が、その実験後も中国は宇宙の平和利用原則を維持すると主張している。衛星破壊実験も平和目的だというわけだ。米国内ではこの中国の衛星破壊攻撃の真のねらいがミサイル防衛にあると受け止められてもいるが、そのミサイル防衛システムも米国は防御的なものだと強弁している。“攻撃は最大の防御なり”という軍事思想を持ち出すまでもなく、軍事的には宇宙空間でも“攻撃”と防御”は分かちがたく一体化しているのが現実だ。
 現実の問題としても軍事情報の収集や兵器の誘導、部隊の位置把握など、いまでは衛星情報が不可欠のものになっている。自衛隊もすでに情報収集と通信、測位、気象、ミサイル防衛(MD)の5分野で宇宙空間を活用している。だから昨年の米国家宇宙戦略も「米国の安全保障は宇宙技術に死活的に依存している」と強調している。たとえば日本の次期主力戦闘機の有力候補と見なされている「F22ラプター」も、衛星情報との情報リンクが構築されていることがステルス機能とあわせて最大の特徴になっている。
 こうした例証を繰り返すまでもなく、いまでは宇宙と大気圏内、および地上は共通の情報で結びつけられている。そうしたなか、「攻撃的でない軍事利用は可能」という法的枠組みを提供する宇宙基本法が成立すれば、自衛目的という大義名分で宇宙空間での果てしない軍拡に道を開くことは明らかだろう。

■悪循環を断ち切ろう!

 安倍政権や防衛省としては、当面する課題が“情報収集衛星”という位置づけの閣議決定の縛りで最先端の技術による軍事目的の利用が制約されている情報衛星――といっても、いまでも軍事利用優先で他の活用要請はほとんど無視されている――を、少なくとも名実共に自由な軍事利用体制にもっていきたいという思惑から「自衛目的の宇宙利用」と言っているに過ぎない。
 思い返せば、日本の軍拡は、まず様々な制約を突破するために世間受けする“論拠”を持ち出して既成事実をつくり、その既成事実の上に乗ってそれを許容する法的枠組みを構築する、その法的枠組みを新たな解釈で突破して既成事実をつくり……という繰り返しによって行われてきたのだ。
 仮にH2AロケットやM5ロケットを改良して大陸間弾道ミサイル技術を保有する事態になれば、それは「抑止のためだ」という新たな“論拠”を持ち出すだろう。“論拠”はその都度つくりかえられる。
 すでに日本でも北朝鮮をめぐって敵地攻撃能力がある巡航ミサイルの保有や敵基地への先制攻撃の可能性も議論されている。宇宙基本法案は、そうした“いまそこにある課題”を大義名分とした、果てしない軍拡推進法案であることは否定しようがない代物なのだ。
 対テロ(アフガン)特措法、イラク特措法、有事法制、国民保護法制、集団的自衛権等々、日本の軍拡を推進する体制がいくつも積み重ねられてきた。いままた9条改憲のもくろみとあわせて宇宙空間の軍事利用という軍拡推進法が秋の臨時国会で成立されようとしている。
 私たち一人一人の国民、労働者の位置からは、宇宙空間の利用原則の規制という課題は難しさもある。が、確実な関与の仕方もある。それは日常の各地での反戦・反軍拡行動への積極的参加であり、また7月の選挙で安倍政権を少数派に追い込むことだ。そうした一人一人の声を行動に移すことで、宇宙空間での果てしない軍拡を止めさせ、ひいては9条改憲という全面的な軍拡路線の阻止の展望が見えてくる。(廣)案内へ戻る


コラムの窓・働くものに国境は要らない、ハズなんだけど?

 外国人研修・技能実習制度の見直しがかまびすしい。@1年目の研修を廃止して技能実習を3年に延ばす厚生労働省案(厚労省研究会中間報告・5月11日)、A研修1年・技能実習2年の現状を維持し、さらに2年程度の高度技能実習の新設を提案した経済産業省案(経産省研究会とりまとめ・5月14日)、B技能実習を廃止して期間3年の就労者受け入れを提案した長勢甚遠法相私案(5月15日)、などです。しかしこれらは、麗しい建前とあけすけな本音の乖離をそのまま温存するものにすぎません。
 この制度が殺人事件≠必然化したことは、本紙(3月15日号)でも紹介しましたが、この3案は各省やその背後の業界の利害を争うのみです。例えばこんなふうに。経産省・研究会委員「メンバーが制度を活用する業界の代表者ばかりで、利便性の向上との結論でまとまった」、厚労省・辻哲夫事務次官「単純労働者の受け入れは若者や女性の雇用を妨げる。慎重な検討が必要だ」、政策研究大学院大学教授・浜口桂一郎「外国人受け入れでは欧州も問題を抱えている。後悔しないように制度設計を国民的に議論すべき時期だ」(5月25日付「神戸新聞」)
 さらに、神戸新聞は6月4日、フィリピン人看護師・介護福祉士(その候補生)受け入れ問題について、ヒューマンライツ大阪の藤本伸樹氏のインタビューを掲載し、8日には日本入国の研修・実習生が5年間で1万人失踪と報じています。法務省によると2006年だけで約93000人が研修目的で入国するなかでのこの失踪ですが、不法残留≠オているのは3千人余で、過半は出国したと見られています。インドネシアからの研修では、次のような実態です。
「インドネシア政府の集計でも、政府管理下で1993年以降に日本に派遣されたインドネシア人研修制約26000人のうち、7%近い1775人が研修先から失踪、約6%の1577人が研修計画未了のまま帰国したとされる。失踪が最も多かったのは2002年7月8日に出発したグループで、参加者76人のうち53人にも上った」
 神戸新聞はこうした実態を踏まえ、「日本での出稼ぎを望む外国人労働者の流れが、現状の外国人研修制度で制御できるレベルを超えつつあることを示している。『単純労働者』を正式に受け入れるべきか、日本は決断を迫られている」と報じています。なお、フィリピンからの候補生℃け入れは2年間で千人ですが、看護士3年・介護福祉士4年で日本語の試験に合格するのは不可能に近いとのことです。藤本氏は次のように制度への懸念を述べています。
「人手不足で賃金を上げないといけないのに、下げる要因をつくってしまった。これだけグローバル化が進んでいく中で、外国で働くことがもっと自由になればいいと思うが、そこで自国民と外国人とに労働条件に差別があってはならない。安上がりの、都合のいい労働者ばかり受け入れることは絶対に避けなければならない。人が足りない、お金が足りない、だから外国から導入しよう、という発想では駄目。単に安い労働者として、しかも、何年かごとに使い捨てられるような制度なら、日本の国際貢献にならない」
藤本氏のナイーブな懸念にもかかわらず、いずれの制度も、その見直しも何年かごとの使い捨て≠根本的に改めることはないでしょう。
 全統一労働組合の中島浩氏は、研修生・実習生が裁判に立ち上がるまでに14もの歳月が流れたが、「同制度によってこの14年間で壊されたもの、失ったものはきわめて大きい。そのことへの真摯な反省と総括は、今回の3つの報告からは感じられない」(6月1日付「労働情報」)と指摘しています。そこには、私たちが研修生・実習生を同じ労働者として受け入れてきたのか、その奴隷的労働実態を見過ごしてきたのではないか。その結果、「この制度が地域の労働基準や人権規範を破壊し尽くしてしまっている」という思いがあります。
 労働者に国境は要らないはずだけど、日本人という優越意識が、とりわけアジアの人々に対する労働者的連帯を阻み、労働現場からモラルを駆逐し、命令と服従でランク付けられた人間関系で固めてしまったのではないでしょうか。       (晴)
 

藪の中の扶桑社と「新しい歴史教科書をつくる会」の関係

扶桑社に突然叩き付けられた「会長声明」

 0七年五月三十一日、突然発表された「創立の初心に立ちかえり、『つくる会』10年目の挑戦にお力添えを」との「新しい歴史教科書をつくる会」新会長藤岡信勝氏の余りにも唐突な「会長声明」を読み、私はたいへん驚かされた。
 確かに「つくる会」は、十年前の一九九七年一月、日本の歴史教科書の現状に危機感を抱いた同憂の人士の任意団体として発足した。彼らは、社共両党の近代日本を悪逆非道に描き出す「自虐史観」を克服し、次世代の子どもたちに時代錯誤の「誇りある日本の歴史の真の姿」を伝えようとしたのではあった。この「会長声明」の主要な部分を引用する。

 「しかし、残念ながら1昨年の採択では、採択率が1パーセントに満たないという不十分な結果となりました。版元の扶桑社が継続発行するかどうか不安であるとの会員の声に応え、昨年11月、つくる会は扶桑社に対して継続発行の方針を明示されるよう求める要望書を提出しました。
 2月に扶桑社から受け取った回答は、従来のつくる会との関係を解消するというものでした。その後の調査で、その理由は『現行の『新しい歴史教科書』に対する各地の教育委員会の評価は低く、内容が右寄り過ぎて採択が取れないから』であり、社の方針に賛同する人々を執筆者とし、書名も変え、別会社をつくって発行するというものであることが判明しました。
 ことここに至って、つくる会は、会創立の理念を明示した趣意書の立場を守るため、別の出版社をさがし、現行の『新しい歴史教科書』を発行し続ける道を選択しました。また、その方針を推進するためにふさわしい指導部を選出しました。そうしない限り、会は理念的にも組織的にも自滅の道をたどります。今回の会の選択は、必ずや会員と支援者の方々の真意に沿うものであると私は確信しております」
 「この際、私たちの志に共鳴し事業として成り立たしめる目算のある出版社を公募する方向を目指したいと思います。いずれにせよ、出版社は必ず見つかり、道は開けます。
 10年間お世話になった扶桑社との関係断絶は誠に残念ですが、もしも上記の方針を白紙撤回してお声をかけてくださるなら、いつでも交渉のテーブルにつく用意のあることを付け加えておきます。
 つくる会10年目の挑戦に、会員の皆様、国民の皆様のご支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。私も、『自ら顧みて直からば千万人といえども吾往かん』の気概をもって微力を尽くします」

 この声明を読めば誰でも確認できるように、藤岡氏が「扶桑社から受け取った回答は、従来のつくる会との関係を解消するというもの」で、その理由は「現行の『新しい歴史教科書』に対する各地の教育委員会の評価は低く、内容が右寄り過ぎて採択が取れないから」であり、「社の方針に賛同する人々を執筆者とし、書名も変え、別会社をつくって発行する」ことが判明し、事「ここに至って、つくる会は、会創立の理念を明示した趣意書の立場を守るため、別の出版社をさがし、現行の『新しい歴史教科書』を発行し続ける道を選択」し、また、その方針を推進するためにふさわしい指導部を選出」したと読める。そして「今回の会の選択は、必ずや会員と支援者の方々の真意に沿うものである」と藤岡氏が確信している事実である。

伝えられた扶桑社の回答

 六月一日、先に紹介した「会長声明」が発表された翌日の「J―CASTニュース」は、「『つくる会』は、扶桑社が『右よりで教育委に採択されない』と述べたと考えている『新しい歴史教科書をつくる会』と、同会が執筆した日本史や公民の中学生向け教科書を発行している扶桑社が、袂を分かったようだ。共にこれまでの『自虐史観』から脱却した教科書を供給しようと手を結んでいたはずの両者だが、『歴史観』を譲れない『つくる会』と、教科書を売りたい扶桑社の「すれ違い」が背景にありそうだ」と報道した。
 それによると、「新しい歴史教科書をつくる会」は、扶桑社との関係を断絶し、扶桑社以外の出版社から教科書を発行する方針を発表した。これに伴い、扶桑社側との妥協点を探っていた会長の元神教組委員長・元参議院議員であった小林正会長を解任して、新会長に藤岡信勝拓殖大教授を選出したのだという。
0六年十一月、「つくる会」は、発行元の扶桑社に対し、「つくる会」の教科書を継続して発行する方針を明示するように要求してきた。0七年二月、扶桑社は、「広範な国民各層に支持されるものにしなければならない」として、別法人を設立して新しい内容の教科書をつくる意向を「つくる会」に伝えた。「つくる会」は、その後も扶桑社と交渉を続けたが、結局「断絶」の道を採ることになったのである。
では、扶桑社はなぜ「つくる会」の教科書を発行するのをやめたのか。0七年二月に扶桑社が「つくる会」宛てに送った回答書によると扶桑社の主張は、「つくる会」が会長人事で0六年九月以降に組織内に混乱を生じ、有力メンバーの一部が「日本教育再生機構」を設立するなどして分裂し、「つくる会」有力メンバーが「再生機構」との協働を拒否し、これまでの枠組みで教科書の編集ができないため、別の新法人を作り、広範な国民各層の支持が得られる執筆人で教科書を発行するに至った。
五月二十五日に行ったこの回答後の最終交渉の主要な発言を「つくる会」は、次のように紹介している。
 
 扶桑社 「また同じものを出して、今の採択結果では、採算、ビジネスとして困る」
 つくる会 「西尾・藤岡をはずし、教育再生機構側の人を責任者にするのは理解できな い。教育再生機構が組織としてつくる会の教科書に発言する権利はない」
 扶桑社 「2回目の検定を通った教科書をそのまま3回目にも出すというなら、それは それで結構だが、私たちはそれは取らない。それなら、扶桑社として、極論をいえば、 どこかの出版社から出してもらいたい」
 つくる会 「結局、中味が悪いから採択率が低かったと判断されているようだが、間違 いだ。扶桑社としては、つくる会との関係を従来の2回の採択の時の状態に戻すという ことについて、再考の余地はないという風に受け止めてよいか」
 扶桑社 「はい」

「右寄り過ぎて」を巡る藪の中

 また、藤岡新会長は公式コメントのなかで、扶桑社が「つくる会」との関係を解消した理由は、扶桑社が「現行の『新しい歴史教科書』に対する各地の教育委員会の評価は低く、内容が右寄り過ぎて採択が取れないから」と判断したことにある、と説明している。
 つまり、「つくる会」としては、同会の教科書が内容的に教育委に採用されず、ビジネスを優先させたために関係を解消しようとしたと判断しているようだ。実際、「つくる会」の教科書は、0二年度供給本については歴史教科書で約一千部、0六年度については約五千部の採択にとどまっているからだ。
「J―CASTニュース」の取材に対し、扶桑社は「『つくる会』の動向についてはコメントを差し控えたい」としながらも、次のように述べた。

 「(『つくる会』が公表している最終交渉の内容は)正確な表現ではない。そういうこ ともあり、今後(扶桑社として)公式に見解を述べたいと思っている。現段階では、(事 実関係について)申し上げられない」
また、藤岡新会長が「右よりで教育委に採択されない」と扶桑社が述べているとした ことについては、「そんなことは一切申し上げていない」と全面否定している。
扶桑社のこの主張について、「つくる会」関係者は「そんなこと言ったのか?確かに扶桑社はそう述べたはずだ」と驚いた様子を見せている。両者の「すれ違い」は深刻そうだ。この関係者は、「ずっと一緒にやってきたし、喧嘩なんてするつもりはないのだが・・・」と漏らしていると伝えている。
 この間の経過からも明らかなように、「新しい歴史教科書つくる会」の分裂は、安倍総理の立ち上げた「教育再生会議」が絡んだものであった。
 この「右寄り過ぎて」の内実は、「反米保守」と「つくる会」教科書の反米的記述を書き直した岡崎久彦氏ら「親米保守」との分裂と深く関わったものであったのである。
 「西尾・藤岡をはずし、教育再生機構側の人を責任者にするのは理解できない。教育再生機構が組織としてつくる会の教科書に発言する権利はない」との「つくる会」の発言は「つくる会」の黄昏を決定づけている。彼らは扶桑社に替わる出版社を見出せないだろう。
 扶桑社と「新しい歴史教科書をつくる会」の真の関係は、まだまだ藪の中にあるとは言え、核心部は私たちに見えたと言うべきだろう。     (直記彬)案内へ戻る


色鉛筆― バイオ燃料は地球に優しい?

 この1年でトウモロコシの国際価格が2倍に高騰したのは、ご存知でしょうか。皮肉なことに、地球温暖化防止のためにと石油などの化石燃料を削減することを目的にしたことから、事を発しています。その代替燃料に食糧のバイオエタノールを転用したのが1番の原因のようです。
 アメリカは今年1月にブッシュが「2017年までに年間350億ガロンの自動車用代替燃料化を義務付ける」と発表しました。アメリカがトウモロコシの生産量の約20%をエタノールに転用するようになって、国際価格が2倍に高騰したのですが、350億ガロンを賄うのには、現在のトウモロコシ生産量のすべてを投入しても不足するという膨大な量と、言われています。
 このトウモロコシの価格高騰の影響は、食用油や鶏や牛の餌の不足や高騰、肉や卵の生産費の上昇など大混乱になるだろうと予測されています。また、バイオエタノールの最大生産地のブラジルは、主にサトウビキを原料としており、この余波で砂糖の国際価格も高騰。少し大げさですが、世界の食糧危機目前! 食糧自給率30%を切っている日本にとって深刻な問題なのです。
 「化石燃料もバイオ燃料も車に使えば同じように二酸化炭素が発生するが、バイオ燃料は作物の生育中の炭酸同化作用があるから、バイオ燃料化は地球に優しい」、この説が正しいのでしょうか? あまりにも短絡的との指摘が「提携米通信・黒瀬農舎発」(07・5月号)で発信されています。
「人間の食糧生産(農業)は、元々『原生林』を破壊し、切り拓き、行なわれてきた営みです。これ自体が地球温暖化を呼ぶ行為です。バイオ燃料推進はこの原点を忘れた主張だと感じます。直接人間が食べる食糧を確保する場合であっても、耕す土地が少ないほど、また、循環型の農法により環境に負担を掛けない配慮や工夫が温暖化防止には是非必要です。化石よりもバイオ燃料がよいと、アマゾンの原生林を切り拓いて、トウモロコシやサトウキビをどんどん作れば、地球温暖化は益々進行することに繋がります」
 自然を大切にし、無・低農薬で米作りをされている農家の方の鋭い視点に、私は自分の知識の不足を痛感しました。私は、トウモロコシの実ではなくて、外側の皮を廃棄利用するから有効な方法と思っていたのですが、こんな深刻な影響が出るとは知りませんでした。まず出来ることは、車利用の回数を意識的に減らすことです。確かに、車社会に慣れてしまった現代人の生活を変えていくのは困難ですが、健康のためにも徒歩・自転車を利用し、一石二鳥と賢い方法をとりましょう。
 ところで、家庭から排出される二酸化炭素の排出量が全体の13%と、意外に多いことはご存知ですか? しかも、1990年を100としたら、32%も家庭が増加しているのです。ちなみに、エアコンの冷房温度を1度上げて28度にすることで、年間11・4キログラムの二酸化炭素の排出量を減らし、670円の電気代節約になるそうです。今年の夏、挑戦してみてください。わが家では、毎年、扇風機とうちわで頑張っています。(恵)


教育関連三法の改悪を粉砕するため日教組を再生しよう!

慎重審議を要請するだけの日教組本部

 六月十一日、水戸市と横浜市で、十二日いわき市と名古屋市で、教育関連三法の改悪案についての地方公聴会開催の後、六月十六日、政府与党は中央公聴会を開催して、かっこ付けの締めくくりの総括質疑を行って、審議を打ち切り、採決に持ち込む方針だと伝えられている。この六月の中旬が文字どおり教育関連三法案についての国会の山場となる。是非とも勝利しようではないか。
 六月五日、昨年末大量自主動員で闘った日教組現場組合員は、今回も北海道教組・石川高教組・大分県教組等を中心に、約百名が国会議事堂前に座り込みを行った。
 教育基本法改悪阻止のたたかいの山場に闘争の現場から逃亡した日教組本部は、またまた教育関連三法改悪を追認して、慎重審議を要請する事で闘争放棄を決め込んでいる。またしても、全国の日教組現場組合員の怒りの闘いで、辛うじて日教組の闘う旗が守られているのが現状である。

教育関連三法案の狙いとは

 今更言うまでもなく、教育関連三法改悪案は、昨年末強行改悪された教育基本法の具体化法案である。その狙いは、国家的統制を強めることで、教育労働者を競争させ個々に分断し、組合組織を破壊し、国家が思うがままの教育をすることにある。それは「戦争国家」の完成であり、子どもたちを直接に「今後起こるであろう戦争」へと動員することにある。
 今回提案されている教育関連三法改悪案の具体的中身は、学校教育法改悪・地方教育行政法改悪、そして教員免許法改悪・教育公務員特例法改悪からなっている。
 学校教育法改悪では、「義務教育」という章を新設し、その教育目標に「愛国心」をすえ、さらに学習指導要領を全面改訂して、小・中学校の全教科を、「愛国心」に直接的・間接的に関連づけた授業展開を、個々の教育労働者に要求するものだ。一言で言えば、天皇制教育に一変させ、さらに副校長・主幹教諭・指導教諭を新設し、校長を頂点とする上意下達・絶対服従の教育労働現場へと変質させる事を狙っている。これによって、すでに日常的に常態化している多忙化と教育労働者への管理強化・分断と競争の人事・賃金制度を実動化させ、具体的には反戦平和闘争の中核部隊である日教組の解体をめざしている。
 地方教育行政法改悪では、文科大臣が各教育委員会に対して「指示」「是正要求」を出せるようにする。具体的には「日の丸・君が代」を指導しない場合などをあげている。このように、国家が自治体の教育行政に直接口出しするのを是認する事なのである。
 最後の教員免許法改悪・教育公務員特例法改悪では、従来は終身免許であった教員免許を十年毎の更新とし、三十時間の講習を義務づけ、修了認定した上で更新するとし、更新しない場合は免許失効とする。また「指導が不適切な教員」を認定し、研修を受けさせる。研修修了時に「不適切」と認定されたら免職にし、教員免許も剥奪するというものだ。
 これらの改悪の狙いの露骨さは、一体何と形容すべきか全く言葉がない。こうして教員は、事実上十年毎の有期雇用となるとともに教員免許更新制とセットにする事で、文科省等の方針に従わない教育労働者を合法的に排除する法整備が完成することになる。
 まさに闘う教育労働者と日教組各県組織の排除を狙った法案である。ところが日教組本部は改悪教育基本法の具体化であるこれらの法案についても、慎重審議要求なのである。

今こそ日教組を再生させよう!

 この期に及んでも、日教組としての闘争態勢の確立を追求せず、今期参議院選挙で勝利しなければならないと言うのみで、この国会議事堂前の闘いから逃げている日教組本部を、今こそ現場組合員の力で追いつめ、闘う日教組を再生していかなければならない。
 安倍内閣は、統一地方選挙を辛うじて乗り切ってと来たが、松岡農林大臣の自殺と「消えた年金記録」を巡り暴露された破廉恥な諸実態の暴露と議席数による反動法案の強行採決とで安倍政権の危機は今や完全に露呈してしまった。今安部内閣の支持率は急落している。あまりの急落ぶりに彼ら自身がどうして良いか全く分からないといった状況である。
 こうした中で、労働者民衆を愚弄し続けてきた彼らの目算は、破綻寸前までに追いつめられている。常日頃規範意識を声高に叫んできた厚顔無恥の彼ら自身の化けの皮が、今大きく高まる怒りによって、労働者民衆の前で決定的に剥がされかけているのである。
 今が絶好の機会である。断固とした闘いで教育関連三法改悪案を粉砕しよう!(猪瀬)


連載 グラフで見る 高校生の意識調査 その14 最終回

 問14 今後、あなたが、男女があらゆる分野で最も平等になるために最も重要だと思うことは何でしょうか。次の中から1つ選んでください。
1 法律や制度の上での見直しを行い、女性差別につながるものを改めること
2 女性を取り巻く様々な偏見、固定的な社会通念、慣習・しきたりを改めること
3 女性自身が経済力をつけたり、知識・技術を習得するなど、積極的に力の向上を図ること
4 女性の就業、社会参加を支援する施設やサービスの充実を図ること
5 政府や企業などの重要な役職に一定の割合で女性を登用する制度を採用・充実すること
6 わからない
7 その他
 
男女共に一番多いのは「2 女性を取り巻く様々な偏見、固定的な社会通念・慣習・しきたりを改めること」です。
 男子が女子よりも強く感じていることは、「2 女性を取り巻く様々な偏見、固定的な社会通念・慣習・しきたりを改めること」と、「1 法律や制度の上での見直しを行い、女性差別につながるものを改めること」です。
 一方、女子が男子よりも強く感じていることは、「3 女性自身が経済力をつけたり、知識・技術を習得するなど、積極的に力の向上を図ること」、「4 女性の就業、社会参加を支援する施設やサービスの充実を図ること」、「5 政府や企業などの重要な役職に一定の割合で女性を登用する制度を採用・充実すること」です。
 女子の方が、社会の現状に対してより具体的な改善をのぞんでいるのがわかります。
 なお、重要な課題であるにもかかわらず、「わからない」との回答が2番目に多くなっています。これまでの調査結果にもあるように、学校での生活は平等と感じている人が多いことや、まだ実社会の体験が少ないことなどから、問題意識を持つ機会が少ないのではないかと思われます。
(「男女共同参画社会に向けての高校生アンケート調査報告書」 発行者・南阪神ねっと、より転載)

 今回で、高校生意識調査の連載は終わります。グラフのスペースが不十分で読み取りにくかったと思います。この調査が行なわれたのが、2005年の2月から3月、社会はあれから、どんどん格差が拡大し失業者も増え、家庭の事情で高校生活も危ぶまれる生徒が出てきている状態です。法律や制度の見直しは、目標に掲げても、実社会では権利としての意識が低く、守られていないことが多くまた、活用もできていないのが実情ではないでしょうか。
 「西宮市男女共同参画センター・ウエーブ」が2007年3月に発行したパンフレットには、審議会委員・市議会議員・管理職など意思決定の場に女性委員比率30%を、当面(2006年度末)の目標にと、記しています。西宮市の女性の参画の現状は、審議会などの委員25・1%、議員15・6%、事務職の課長級以上の管理職10・4%、という低い数字です。パブリックコメントを実施して2007年4月に出された「西宮市参画プラン」には、審議会等の女性の登用率の目標数値35・0%としました。しかし、男女平等にはあまりにも遠い数字です。しかも、2011年度までと期間は長く設定しているのに、低すぎる目標数値に女性グループからも市の姿勢を問う声が上がっています。
 2000年10月にオープンした「西宮市男女共同参画センター・ウエーブ」ですが、なかなか市民一般には利用されていない様子です。高校生の姿も時折見かけますが、たいてい試験前の勉強にテーブルを利用しています。どんな使い方でもいいから、足を運んでくることから始まりがあると思います。女性情報関連の書籍・雑誌等にも関心を持ってくれたら一歩前進です。そして、子育て中の女性たちにも気軽に来れる空間作りを模索し、世代交流の場にしていきたいものです。やがて、訪れる自分自身の老いを楽しむためにも・・・(恵)


日本の常識は世界の非常識

 行政官僚と大手ゼネコンによる「官製談合」にようやくメスが入り、全国各地で逮捕者が続出している。特に、06年には福島・宮崎の県知事が逮捕されて「談合は許さない」という世論が高まっている。
 こうした中、静岡の市民団体「情報公開を求める静岡県民の会」は、建設中の静岡空港の本体用地工事の入札について談合の疑いが濃厚だったとして、県入札監視委員会に調査を要請した。
 静岡空港の工事入札については以前より疑惑が指摘されていた。なぜなら、2000年〜2004年度の平均落札率が96.5%と異常に高く、04年度の包括外部監査で「きわめて不自然」と指摘されたことがある。それでも、その後の05年度も94.0%の高い落札率が続いていた。
 ところが、06年の8月から急に落札率が下がっている。この時の入札が予定価格の51%であり、07年2月の入札は43.5%であった。
現在の工事は予定価格の半額以下で適正工事が出来ると言うことは、過去の工事の96%という異常に高い落札数字は、まさに談合がありゼネコンは大もうけしていた可能性が高いことを示している。
 日本のムダな公共事業の典型として静岡空港を連続的に取材しているイギリスの「ザ・タイムス」記者は、07年2月の井上英作さんの自殺を取り上げながら、次のような極めて正当な報告記事を書いている。
 タイトルは、「1,900億円以上の空港に抗議の自殺」となっている。
 「たくさんのブルドーザーが2,500メーターの滑走路を作るため、森に覆われた岡を削り、谷を埋めている。希少なオオタカと消滅の危機にさらされている蘭の花の生存域は破壊されつつある。空港に反対する人たちは静岡は新幹線や高速道路の便がよくて、東京や大阪に手軽に手ごろな値段ですばやく移動できると言っている。
 日本経済がバブルの真最中の1987年に建設が打ち出されて以来、静岡県の空港の乗客見込み数は下げられる一方である。井上さんの死の数時間後、経営難の日本航空は巨大な経費削減計画を発表した。それには余剰人員の削減と共に、静岡県にとっては運の悪い事に国内便の減便や廃止が含まれていた。
 世界で2番目に大きな経済規模を持つ国としての繁栄にもかかわらず、日本の自然の美しさは思慮に欠けた不必要な建設事業によって損なわれてきた。川の土手は侵食を防ぐという名目でセメントで固められ、河川はダムや堰によって細々とした水の流れに成り果てている。辺鄙な田園の中に巨大なスタジアムが立っているが客を集めることができず建設にかかった借金を返すことに四苦八苦している。
 何十年もの間、政治家、官僚および建設会社の癒着の下、こんな按配に巨額のお金が日本経済の中に注ぎ込まれてきたのである。」
 工事の落札率が急に予定価格の半額以下になる「日本の常識」。これでも「談合」はないと発表する「日本の常識」。ムダな静岡空港の建設によって地球の貴重な森林を破壊してしまう「日本の常識」。空港を望まない県民の方が多いのに1,900億円もの税金が投入されてしまう「日本の常識」。
 これらの「常識」は世界から見れば、まさに「非常識」である。(W)


住民税の大幅値上げについて

 この六月、住民税徴収票が職場で配られました。今年の住民税は、税源移譲と定率減税の終了により大幅な増税になるとは聞いていたものの実際この徴収票を手にしてみるとあまりの増額ぶりに驚かされました。ほとんどの人が前年を大きく上回っているのです。
 税金の取り方でその国家の性格が分かるとは、財政学の基本中の基本ですが、日本国家は何と無責任で恥知らずの国家なのでしょうか。所得税は、先進国家としては例外的な源泉徴収を行っており、医療費等の各自個別の控除は、自主的に提出する還付申告に委ねられいるのは周知のとおりです。「代表なくして負担なし」のタックス・ペイヤーである「国民」各自に税金の控除が出来ることは、どのくらい周知されており、国家としてはどのくらい「国民」に対して周知させる努力をしていることでしょうか。まさに税金については、「由らしむべし、知らしむるべからず」の世界で、全く物言えば唇寒しの現状です。
 二00五・六年度の税制改悪で、自公連立政権は、所得税・住民税の定率減税を0六年には半減し、0七年には廃止することを決定してしまったのです。この措置を実行するに当たって、彼らが口実にしたものは、年金財源の確保だったのです。しかしこの実施により生み出された財源は約二兆七千億円でしたが、実際に今年の財政制度等審議会での財務省発表によると、基礎年金の国家負担を引き上げられることに充当されたのは、何と約五千億円(二割強)だということです。私たちは完全にウソに誘導されてきたのです。
 こうしたウソで「国民」を誑かしてきて、今また年金財源不足の解消は、消費税率の増税あるのみだというのは、私たちをどれだけ侮れば気が済むというのでしょうか。
 「消えた年金記録」ともどもこの責任を断固追及していかなければならないと私は考えます。来るべき参議院選挙には、私たちの意地に掛けても、自公連立政権に怒りの鉄槌を叩き付けなければならないのではないでしょうか。    (笹倉)


特別あつらえは好きでない‐枝雀落語より‐

 世間≠ノ受け容れられているもろもろの事象が、果たして世論であるかどうか。世間≠ニいうだだっ広い流れは、ゆるやかに流れつつ変容していくもののようだ。世の移り変わりはどのようにして? 非常識がやがて常識となるように。
 突出したものが興論(少数ながら)であっても、やがては世論となる。大地に滲み込む水のように一般化していく。歴史≠ニは、こうした動きの繰り返しのように思われる。ベルグソンはこうした流れを創造的進化≠ニいったそうな。
 枝雀落語の中に服の購買についてであろうが、あつらえ≠ヘ好きではない、といって少数の異色よりも、大量生産で安いのを好む大衆的で平凡な側に立つ。彼の立場と言っていいようだ。しかし、彼は後にコトバを失った、という。彼の依って立つ足場が彼の好きでない流れに変わったからだろうか。
 彼が自殺にも等しい終りようとしたのはなぜ? 彼の超え出ることのできなかった壁≠ニは何だったか。彼の伝記≠ゥら知ることはできないだろうか。
 かつて中国の哲人、老子さまが舌一丁で庶民の流沙の中に消えていったのと似ている気がしてならない。彼は落語という笑いの武器≠もって資本のもつ悪≠ニたたかったのでは? これから彼の身辺についての記録からつかめないものかと、読書三昧に入ろうず。 2007・5・31 宮森常子
〔おまけ〕
 枝雀さんは笑い≠フ天才でありながら凡人の側にいようとした、またその枠組から出ようとした(おはなしを語ることで)ムリから、コトバを失ったのでは? 彼がいま生きていたら・・・。
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