ワーカーズ359号  2007/12/15        案内へ戻る

 「アメとムチで米軍再編を押しつける日本政府、岩国市民怒りの1万人集会」

 12月1日、ついに岩国市民の怒りが爆発した。
 防衛省は07年度の「再編交付金」(在日米軍再編に伴う基地負担を受け入れた自治体に支払われる金)の交付対象から岩国を外し、さらに建設中の新庁舎への補助金約35億円も見送ると言い出した。要するに、米軍再編に伴う空母艦載機移転を拒否続ける岩国市に対する”嫌がらせ”以外の何ものでもない。
 防衛省は、在日米軍や自衛隊の12施設がある33市町に、総額約46億円の「再編交付金」を内定額を決めた。しかし、空母艦載機の移転受け入れに反対する山口県岩国市、普天間飛行場の代替施設案に反対する沖縄県名護市、米陸軍第1軍団司令部の設置に反対する神奈川県座間市などの受け入れ反対の自治体に対しては「再編交付金」を払わないことを示した。
 一方、素直に基地負担を受け入れた自治体には多額の「再編交付金」を支払うことを決めている。米原子力空母ジョージ・ワシントンの母港となる横須賀市には5億8400万円。米軍機飛行訓練の分散移転を認めた宮崎県新富町には3億4900万円。座間市と同じ米陸軍第1軍団司令部の設置を受け入れた相模原市には、1億5600万円の交付金が内定している。
 米軍再編に協力する自治体には交付金と言う「アメ」をばらまき、反対し協力しない自治体に対しては見せしめの交付金無しと言う「ムチ」をふるう。まったくひどい国のやり方である。こんな国のやり方は断固許してはならない!
 井原岩国市長も、「昨年の住民投票では、圧倒的多数の市民が『移転拒否』の意思を示した。ところが政府はこうした民意を無視し、あまつさえ言うことを聞かないからと3年目に交付金を突然カットする。こんな非常識な措置は今までなかった。」と、政府・防衛省を厳しく批判している。
 岩国の市民団体は12月16日に、「米軍再編と地方自治を考える 国の横暴をはね返そう!」シンポジウムの開催を予定している。こうした岩国市民の闘いを激励し、全国各地から「支援」活動を取り組もう!(若島三郎)


保守二党制と“大連立”は同根だ!――くすぶり続ける“大連立”策動――

 延長臨時国会が最終版を迎え、新対テロ特措法=給油新法の帰趨と衆院の解散総選挙が焦点に浮上しつつある。
 福田政権としては、対米公約としての給油新法の成立は内閣の存続を掛けた至上命令だ。そのための衆院での三分の二条項による再議決はのもくろみは、衆院の解散総選挙の呼び水にもなるため、与野党の駆け引きは最後の正念場にさしかかっている。
 そうした攻防戦と連動するかのように、いったんは失敗に終わった自民党と民主党の大連立構想も解散総選挙を想定した攻防戦の水面下でくすぶり続けている。
 7月の参院選で生まれた衆参における「ねじれ国会」の中、「政権選択選挙」という有権者に対する公約を裏切るような大連立のもくろみは許すことはできない。とはいえ、いつ大連立に走るかわからないような小沢民主党、あるいは保守二党制という政治構造そのものへの対抗軸づくりの重要性も改めて考えないわけにはいかない。

■決めるのは民意

 延長臨時国会の会期は『ワーカーズ』本号が発行される12月15日で切れる。特措法の成立を至上命令だとする福田政権は、この臨時国会を再延長して今会期中に給与新法を成立させる腹を固めたようだ。
 特措法に対する民主党の態度は、これまでの経緯からすれば参院で否決するのははっきりしている。その否決を受けて与党が今臨時国会で衆院での再議決を強行するとすれば、少なくとも1月半ばまでの延長が必要だ。対抗して民主党は福田首相の問責決議案を提出することになる。そうなれば参院の審議は空転し、衆院解散につながる可能性は大きい。
 いずれにしても衆院の解散総選挙は、世論の動向を挟んで自民党と民主党による攻防戦の帰趨に関わっている。
 いま給油新法の対象となっているアフガン情勢、あるいはイラク情勢は当初の米国などの思惑を超えて混迷を深め、ブッシュ政権が主導した反米勢力に対する“武力による封殺”がまったくの失敗だったことは全世界的にはっきりしている。こうした状況下で対米支援至上主義という歴代自民党政権の是非を問う解散総選挙を迎えることは、それだけ有権者の判断を政治に反映させる好機でもある。

■大連立策動の第二幕

 ところが現実はそんなに単純には進みそうもない。
 福田首相と小沢代表の間でほぼ合意した例の大連立のもくろみが、姿かたちを変えて再度浮上しそうな状況もある。いずれにしても総選挙結果を受けての話だが、再び自民党と民主党の連立の可能性がもたげているからだ。
 先の10月末に発覚した福田首相と小沢代表の密室談合による大連立策動は、民主党の役員会で総スカンにあって頓挫を余儀なくされた。が、その役員会の拒否といっても、一皮むけば参院選での公約破りへの批判を恐れた民主党役員の逡巡の結果であって、選挙で自民党を政権の座から引きづり下ろすという姿勢で一貫していたわけではない。その証拠に、大連立失敗後の「連立そのものは間違っているとは思わない」という小沢代表の本音を拒否するどころか、その発言を明確に否定することもなく小沢代表の辞意表明を撤回させて続投させているからだ。
 その小沢代表は予想される解散総選挙での民主党の獲得議席の目標について「三膳の策」を公言している。最善の結果は民主党の単独過半数の獲得、次善の結果は野党による過半数の獲得、三膳の結果は比較第一党の獲得、だという。真意としては、獲得議席目標の下方修正とその場合でも代表を続投する地ならし、にある。
 小沢代表がこうした獲得目標をあえて公言したのにはいきさつがある。周知のように、小沢はあの辞任会見で、総選挙で民主党が過半数をとるのは厳しいと表向きの目標をあっさり後退させ、併せて民主党には政権担当能力がないかのような発言をしてしまった経緯がある。要は、民主党の獲得議席が、与党が過半数を維持した中での民主党の比較第一党か、あるいは自民党に肉薄するような第2党の地位の獲得がせいぜいのところだ、と言うことだろう。そうなれば自公連立政権は維持されることになるが、その場面で与野党の議席数が接近したものであれば、大連立ばかりでなく、様々なバリエーションの政界再編の可能性も生まれる。何よりも小沢自身が選挙の“敗北”を問われて辞任に追い込まれるのを避けることができる。小沢代表はそうした思惑を込めて「連立自体は間違っていない」と言っているわけだ。
 そうした小沢代表の思惑は、彼がこれまでやってきたことを見ればはっきりする。ここでは省略するが、小沢の目的は自民党政治の根本的転換などではなくて、あくまで権力の獲得、しかも自分が主導できるような権力の獲得にある。
 自民党やあるいは財界も含めた支配勢力としては、衆参ねじれ国会で自分たちの都合がよい政治が混迷、停滞するのは避けたいところだろう。そうであれば、前回の読売新聞の社主兼主筆のような黒幕のうごめきも含めて、連立工作の第二幕や政界再編もあり得ると見なければならない。

■「ねじれ国会」は通過点

 ところで、あの参院選の結果生まれた衆参の「ねじれ国会」をどのように評価すべきなのだろうか。
 財界や支配勢力、それに福田首相を含めて自民党などは、国政の停滞だと受け止め、それを打開する目的もあってあの大連立を仕掛けた。しかし「ねじれ国会」とそこでの法案成立の停滞が、果たしてほんとに国政の停滞だといえるのだろうか。
 世論調査に見られる有権者の判断はちょっと違う。
 朝日新聞が12月1,2の両日に実施した世論調査では、総選挙の時期について「できるだけ早く」は34%で「急ぐ必要はない」は55%だった。この結果は、衆参のねじれ国会の現状を肯定的、あるいは冷静に見ていることを示している。これは重要法案を強行採決も含めた数の力によって成立させる、という自民党長期政権に対する疑念の反映でもあり、参院での否決という事態など両院での緊張関係も含めた慎重な判断を期待しているということだろう。それ以上に現実問題として、一旦は派遣した自衛隊が現実に引き返す、政財官の談合で推移してきた政策も現実にストップするかもしれない、という現実政治が変わる可能性を評価しているからではないだろうか。有権者は必ずしも“ねじれ国会”を否定してはいないし、そうした“ねじれ国会”での攻防戦の中で有権者の思いが国政に反映されるかもしれない、という有権者の冷静で且つ真剣な視線が反映したものと受け取るべきだろう。
 “ねじれ国会”を肯定的に見る有権者の視線は、次のようなことにも現れている。たとえば今国会では3人の天下りの国会同意人事が否決された。実に56年ぶりだという。これなども高級公務員に対する有権者のリコール権の発揮の一つの形態であり、そのこと自体評価されるべきだし、官僚と癒着した自民党政権の姿勢をチェックする逆転国会の効用も有権者は判断したと思われる。
 他方、新テロ特措法では有権者は複雑な反応を示している。焦点のインド洋での補給活動の再開が「必要だ」と「必要ではない」がともに44%で並んでいる。一方、給油新法に「賛成は」は36%で「反対」は43%だった。反面では、この新法が参院で否決された場合に衆院で再議決して成立させることについて「妥当だ」が46%で「妥当ではない」の37%を上回ってた。特措法自体には反対する傾向が強かったのに対して、何らかの国際支援や憲法の規定に基づく再議決を是認する声も大きい、という結果になった。
 こうした結果を見ると、既成事実を容認する傾向にある世論の傾向を物語ってはいるものの、有権者としてはこれまでの対米支援のあり方そのものの見直しを求める姿勢が反映された結果になった。

■かくも危うい“保守二党制”

 この世論調査ではねじれ国会を連立で打開することの是非も問うている。結果は自民党と民主党の連立について「賛成」が30%で「反対」が55%だった。
 当然だろう。米国の戦争への荷担や憲法改定、あるいは格差社会の深まり等に象徴されるような、自民党政治を抜本的に変えて欲しいという思いを込めて民主党を押し上げた結果のねじれ国会だ。ここにはそうした思いを大連立とかいうなれ合い政治に舞い戻ることは許さないという有権者の思いが込められている。
 福田首相や小沢代表による大連立という「保守一党制」は国会で9割を占める巨大与党の出現であり、新たな大政翼賛政治をもたらすだけである。そこでは有権者の声は当然のごとく無視される。
 とはいえ、自・民による二大政党制は、常に保守連立という巨大与党による大政翼賛政治をもたらす可能性を内在させているのだ。いわば保守二党制と大政翼賛政治は同じ保守の圧倒的優位の政治構造の表裏の事態なのである。
 私たちとしては、体制派としての自・民両党による二党制か大連立かという選択肢しかない状況に風穴を開けていくしかない。格差社会、二極化が進行しているなか、そうした中で抑圧され、虐げられている人々の立場に立った新たな政治勢力づくりの課題が浮かび上がる。(廣)案内へ戻る


 コラムの窓・・・「イラク帰還自衛隊員35人の死に思う」

 イラクやインド洋やクウェートなどに派遣された自衛官の中に、自殺した人がかなりいるらしい、との声が上がっていた。
 今回、共産党の大門議員や社民党の照屋議員の質問に対して、防衛省はようやく正式に死者の人数とその内訳を発表した。
 @自衛官の死者数・・・07年10月末現在、「イラク特別措置法」に基づき派遣された隊員のうち、在職中に死亡した隊員は35人。内訳は陸上自衛隊が14人、海上自衛隊が20人、航空自衛隊が1人。そのうち自殺者は16人。内訳は陸上自衛隊が7人、海上自衛隊が8人、航空自衛隊が1人、という。病死の人は7人で、内訳は陸上自衛隊が1人、海上自衛隊が6人、航空自衛隊は0人、という。事故または不明の人は12人で、内訳は陸上自衛隊は6人、海上自衛隊は6人、航空自衛隊は0人、という。
 A各年度の死者数・・・派遣が開始された02年度は2人、03年度は3人、04年度は4人、05年度は8人、06年度は10人、今年の07年度は8人、という。
 B自衛官の派遣数・・・「テロ対策特別措置法」に基づき、インド洋に派遣された海上自衛隊員は1万9百人。また「イラク特別措置法」に基づき、派遣された自衛隊員の延べ人数は8千8百人。内訳は陸上自衛隊が5千6百人、海上自衛隊が3百3十人、航空自衛隊が2千8百7十人、とのこと。
 なお、防衛省は退職した後に、精神疾患になった人や自殺した人については、まったく把握していないと言っている。
 皆さんは、この数字をどう思いますか?
 昨年7月、サマワから陸上自衛隊が撤退したとき、当時の小泉首相は「一発の銃弾も撃たず、一人の死者も出さずに任務を立派に遂行にやり遂げた」と訓示したという。
 確かに派遣された自衛隊員から「戦死者」は一人も出なかった。ところが、派遣6年の間に実際は35人もの自衛隊員が死んでいたのである。特に死者の最大の死因がなんと「自殺」であることに驚かされる。この6年間に16人もが自殺しているのである。さらに、各年度別の死者を見ると05年度から8人、06年度が10人と年々増加していることがわかる。
 この事からも、イラク戦争の実態は米国が宣伝するような「安定化」とか「民主化」というレベルではなく、イラク国内はまさに内戦状態でありイラク戦争が年々ますます泥沼化していることを示している。
 こうしたイラクの戦場に派遣された自衛隊員にとっては、毎日がすごい緊張とストレスの連続であったと思われる。また、自衛隊員の自殺に関して気になることは、「いじめ」の問題である。これは、イラク派遣自衛隊員ばかりではなく、国内各駐屯地でも自殺者が増加しているという。自衛隊員の息子さんが、自衛隊内の「いじめ」によって自殺をしたとの訴訟を起こした遺族も現れている。
 いずれにしても、戦場という異常な世界(人殺しの世界)に身を置くこと、自衛隊という軍隊組織(人の殺し方を訓練する場)の中で、『人間が人間でなくなっていくこと』、このことは昔も今も同じ事実だと言える。
 そのことは、戦中派の作家城山三郎さんや映画監督新藤兼人さんの作品からも学ぶことができる。(英)

 
 政府・防衛省がパトリオット3を強行配備
 広がる「ミサイルはいらない」の声


■11・29 未明の強行配備に市民が緊急抗議行動

 11月29日の午前3時25分、千葉県船橋市の陸上自衛隊習志野分屯基地に大型トレーラー5台が到着した。積まれているのは、パトリオットミサイルの発射機5機だ。今年3月の埼玉県入間基地に続いて、二カ所目の強行配備である。
 前日の28日の夕方、「パトリオットミサイルはいらない! 習志野基地行動実行委員会」に、PAC3の製造元の三菱重工小牧南工場を監視する仲間の市民から、大型トレーラーの車列が工場を出たとの知らせが入った。すでに、一両日中には配備が強行されるだろうとの予想を立てていた市民団体は、直ちに仲間たちに抗議行動のために基地の前に集まるよう連絡し、深夜0時頃には80人近くの市民が集まった。
 未明になってトレーラーが到着するや、防衛省側は事前に動員していた200名近くの機動隊を全面に押し立てて、基地前に座り込んで抗議の声を上げる市民を暴力的に排除しはじめた。未明の基地前は、迷彩服姿の自衛隊員、乱闘服で身を固めた機動隊、それに大音量の拡声器で声援を送る右翼の部隊、そして彼らの暴虐に抗議する市民の声で騒然とした状況となったが、防衛省、警察の無法な実力行使によって、PAC3の発射機は基地内に搬入されていった。
 防衛省が29日の未明にPAC3を強行配備する挙に出た裏側には、防衛省側の焦りがあったに違いない。防衛省疑獄事件に市民の関心が次第に高まっていた。28日には前防衛省次官の守屋がとうとう逮捕されるという事態となった。このままでは防衛省・政府への不信が高まり、と同時にPAC3反対の市民の行動への世論の共感が強まることは避けられないとの危機感が、この日の夜陰に乗じての強行配備という行動をとらせたのだ。
 しかしこの日防衛省が習志野基地に運び込んだのは発射機のみ。PAC3を機能させるためにはまだレーダー装置や射撃管制装置などが必要であり、習志野基地での搬入阻止闘争は始まったばかりだ。この日基地前に集まった市民は、PAC3反対の世論と闘いをさらに大きく発展させていくことを確認して、帰路についた。

■12・1  PAC3の配備強行糾弾、市民統一行動が行われる

 PAC3強行配備の3日後の12月2日、津田沼駅近くの公園での集会とデモが、そしてそれに続いて習志野基地に向けてのデモ行進が行われた。この日の集会と連続デモには、11月29日の強行配備への怒りを胸に抱いた250名の市民が参加した。
 集会において、実行委員会の吉沢さんから以下のような基調報告が行われた。
地元住民に一切の説明なく、習志野基地にある旧軍の毒ガスの調査も終わっていないのに配備を強行したのは許せない。私たちは入間の市民に学び、沖縄に学び、運動広げてきた。イラク戦争支持の急先鋒は日本とオーストラリアだったが、オーストラリアでは政権が交代し、ミサイル防衛への参加も見直しは必至だ。韓国、ポーランド、チェコなどでも、アメリカによる対中国・ロシア包囲のためのMD構想への批判が高まっている。私たち日本の市民もそれに続こう。岩国や座間の市民とも連帯し、ミサイル防衛構想とイラク戦争からの撤退を実現しよう。軍需企業と官僚・政治家を肥やすだけのPAC3配備とPAC3首都圏移動展開訓練、そしてハワイ沖で予定されているイージス艦金剛のSM3発射訓練に反対しよう。武力に頼らない平和の実現をめざそう。
 続いてPAC3配備反対闘争に取り組んでいる千葉県内(船橋、習志野、八千代、竜ヶ崎)の諸個人・諸団体、そして首都圏(入間、練馬、横須賀、)の諸団体からの挨拶が行われた。
 また9月30日の第1回市民行動の時と同様、衆参の国会議員や政党から多くの力強いアピールが寄せられた。

■PAC3配備の根拠、ますます虚ろに

 政府・防衛省は、今年3月の入間基地への配備、そして今回の習志野への配備に続き、武山基地(神奈川)、霞ヶ浦基地(茨城)、浜松基地(静岡)、岐阜基地(岐阜県)、春日基地(福岡)などの11基地、計16部隊にPAC3を配備するとしている。また入間基地に配備されたPAC3を、年明けにも首都圏各地で移動展開訓練させる計画を進めている。
 政府・防衛省は、北朝鮮の核ミサイルの脅威を口実にアメリカのミサイル防衛構想への参加、その一環としての11基地へのPAC3配備とイージス艦へのSM3配備を強行してきた。しかし彼らが唱える北朝鮮の脅威なるものは、アメリカ自身が進める六カ国協議の中でますますリアリティーを失いつつある。またもし仮に脅威が事実だとしても、その脅威に軍事力の強化で対抗する発想の愚かしさ、とりわけ自国防衛どころか相手国に対する先制攻撃の誘惑を高めてしまうミサイル防衛システムで対抗することの危険性は、ますます明らかになりつつある。 
 政府・防衛省は、ミサイル防衛構想とPAC3配備は首都機能と首都圏を防衛するためのものだと主張している。しかしそもそもPAC3は、成層圏からほぼ垂直に落下してくる相手国の弾道ミサイルをその真下からねらい打ちにしようというものであり、その防衛効果はたかだか半径4〜5キロの地域にしか及ばないと言われている。もし首都圏防衛を本気で考えるなら、首都圏内に数百のPAC3基地を持たなければならないという非現実的な話しだ。
 専門家は、PAC3はもともとごく狭い地域を敵ミサイルから防衛するために考え出された兵器であり、それはまさに軍事基地防衛のためのミサイル以上ではないと言う。例えばいま沖縄に配備されている米軍のPAC3は、沖縄の米軍基地を防衛するためか、それでなければ中東の砂漠に空輸してそこに置かれた米軍キャンプを守るためのものだというのである。そしていま首都圏に配備が進められようとしているPAC3は、米国にとって沖縄に次ぐ重要性を持つ神奈川県内の米軍基群を防衛するためのものだと言われているのだ。
 PAC3は国民・首都圏市民の安全を守るために必要だという政府・防衛省の主張の空疎さ、でたらめさは明らかだ。PAC3は、アメリカの日本の支配層による中国とロシアに対する軍事的優位の保持、相手国への先制攻撃を可能にする条件の獲得、市民生活ではなく軍事基地・施設の防衛、軍需産業と官僚と政治家の懐を肥やすための巨大なビジネス、民主的な諸権利の制限のテコ、支配階級による国民統合・権力強化の手段以上の何ものでもない。
 MD構想、PAC3の導入と移動展開訓練に反対して立ち上がろう!案内へ戻る


 色鉛筆  講演会に行ってきました

 職場の研修会で「ありのままの子育てー自閉症の息子と共に」(ぶどう社)の著者である明石洋子さんの講演会に行ってきました。息子さんである徹之さん(34歳)も一緒に神奈川県から来られお母さんがお話ししている間、いすに座って絵を描いていました。お母さんから自己紹介するように言われると、お母さんと一緒に考えた自己紹介の文を100名近くいる大勢の人の前でしっかり読んでくれました。そして、なんと今、現在川崎市の公務員として特別養護老人ホームで働いているというのです。私は以前、知人から知的発達障害を持つ方が、会社等でみんなと一緒に仕事をしていくことの難しさを聞いたことがあったので、よけいに一般企業ではなく、公務員によくなれたことや10年間も働き続けていることに驚いてしまいました。
 明石洋子さんは、我が子の障害があると知った時、絶望して将来を悲観してしまったそうです。ところが「ノーマライゼーション」の思想、障害があっても「地域の中であたりまえに生きてもいいのだ」ということを知り、徹之さんと共に地域に飛び出す勇気をもらったと言います。そこからが明石洋子さんのパワフルな行動のお話に圧倒され「すごい!!」というひとことでした。その中で私が印象に残っているお話は、小さい頃お水が大好きな徹之さんは水道の蛇口を見ればひねってお水をさわっていたようです。ある時、ご近所の老夫婦の庭の蛇口をひねって水びだしにしてしまい、その家に謝りに行きながら徹之さんのことを何とか理解してもらおうと、毎日二人で庭へ水まきに行くようにしたというのです。するとそのうち徹之さんひとりでも水まきが出来るようになってその老夫婦に大変喜ばれたというのです。お水に興味があって水をさわりたくなるというこだわりをやめさせようとするのが普通なのに、明石さんはやめさせるのではなく『得意なもの・興味あること=こだわり(記号・数字・文字・標識・水・トイレ)』であって「こだわりを利用しよう!!」という発想にたって徹之さんを育ててきたのです。
 また、地域の人に徹之さんを知ってもらおうと長年「徹ちゃん便り」20歳以降は「明石通信」を発行して毎月100枚ほど地域の人たちに手渡しをして配布しているというのです。何というパワーでしょう。自分達の訴えたいことをただ紙に書いてポストに入れるのではなく、顔と顔を合わせて手渡して、徹之さんの特徴を理解してもらって徹之さんとの付き合い方を工夫してもらえるようにしていったのです。講演会の中で以前、NHK総合テレビで放映された「新日本探訪ー笑顔で街に暮らすー」のVTRを見せてくださり、徹之さんが老人ホームで大好きな風呂掃除、車いすの手入れなどの仕事を毎日、手順書通りに一切の手抜きもしないで一生懸命働いている姿が映し出されていました。明るく屈託のない徹之さんの「お仕事がんばります」というひとことが、明石さんご家族の宝物のように思えたのでした。
 さらに、講演会でいただいた資料の中に「足の不自由な人に歩けと言わないで車いすを用意するように、自閉症の人に出来ない部分(障害)を理解し、その支援の手立てを考える事が大切」と考え・・・・(略)公務員チャレンジに際しても「身体障害者の方の雇用に構造設備等の改善が必須なのと同様、知的障害者の雇用にはジョブコーチとプログラム(手順書)等が不可欠」と川崎市に交渉しました。ジョブコーチとは障害のある人と一緒に職場で働き指導を行う「職場適応援助者」のことで、同時に職場の同僚や上司との関係調整を行ってくれる人です」と書かれていて、初めてジョブコーチということも知ることが出来ました。
 現在も明石さんは、24時間365日そして一生安心して暮らすための支援システム、確立のため「サポートセンターあおぞらの街」を開設し、地域の人が地域の人を支えるシステム作りを目指しているのです。まだまだパワーにあふれいます。私は、そのパワーを見習いたいという想いと、自分達の訴えたいことを地域の人に理解してもらえるように運動していくことが大事であることを痛感させられた講演会でした。(美)


 宣伝するなら時給を上げろ!

 民営化によって誕生した郵政グループ会社の情緒的宣伝が盛んにテレビに登場している。これを苦々しく観ている関係会社傘下の労働者が多いのではないか。かく言う私もその当事者だが、それだけ宣伝に注ぎ込むお金があるなら、「非常勤労働者の時給を上げろ」と言いたい。
 それというのも、本紙前号でも触れられているが、時給が低いので年賀アルバイトが集まらないのである。年末年始を休みなしで働かせるのだから、それにふさわしい時給を払うのは当然である。これまで、実態はともかく建前だけは公的≠ネものだったので、高校生の社会勉強的アルバイトとして認められていたが、そんなものをかなぐり捨てた今、低い時給で集まらないのは当然である。
 年末始繁忙に増して深刻なのが、非常勤労働者の定着の悪さ、通年的な人手不足である。低い時給で消耗品のようにこき使うのだから続かないのは当然だし、無権利で弱い立場の非常勤労働者が行使できる最大の反抗は辞めてしまうことである。地域の労働組合に入って頑張る道もなくはないが、そうした事例はまだ例外的なものにとどまっている。
 そうしたなかで、私の職場で「ゆうメイトも人間だ!」という人権標語の応募があった。これは12月初旬の人権週間の標語募集で起こった事件≠ナあるが、オバカな支店長(郵便事業会社なので郵便局長とは言わない)は朝の全体ミーティングでこんな標語があるような職場では困る言っただけで済ましてしまった。最も、そういう標語があった事実を隠さなかっただけでもましなのかもしれないが。
 こうした標語が公然と登場するということは、深刻な人権侵害が存在するということであり、実際に嫌がらせ・虐めに遭って辞めていった労働者が何人もいたのである。非常勤労働者だけではなく、本務者でもそうした事例はあるだろう。ただ、本務者の場合は失うものが多い(辞めたら、次は時給の仕事しかない)ので、最後まで我慢をしている。
 最近の情報だが、同じ職場(新東京郵便局第1輸送課)で7月と11月、2人の労働者が突然死したということだ。49歳の非常勤労働者と57歳の本務者、どちらも深夜勤をこなさなければならない郵便内務の仕事をしていた。同じ職場で働く報告者は、この事態は生存権を保障している憲法25条に違反するものだと告発し、深夜勤の廃止を訴えている。
「亡くなったKさんやYさんのことは他人事とはとても思えない。『明日は我が身』だ。そして、同じ課で半年たらずの間に2人も死んだということは、全国の職場でもこうした事態がおそらく進行しているにちがいないということなのだ。御用組合が告発をさぼっているだけなのである。深夜勤導入いらい『在職死亡』がこれほど続出するのは、共同作業で導入をきめた旧郵政公社や労組幹部の思惑すら超えているのではなかろうか。まさに『非常事態』である」(「伝送便」345号・2007年12月)    (晴)


 六時間雇用が始まった(郵便局)

 少し前に、「色鉛筆」でお伝えしたように、郵便配達の仕事をこれまでの4時間雇用から6時間雇用に変更して、働くことになりました。その近況報告をしたいと思います。11月から勤務時間が2時間延長となり、10時から16時45分で休憩1時間(休息時間も含む)が加わりました。職場は作業をするスペースしかなく、ゆっくしかも、4時間雇用で働いている同僚が仕事を続けている横で、お弁当を広げるという具合です。課長は「休憩場所が無くて申し訳ない」と平謝りですが、当面、目途は付きそうにありません。
 そもそも私が6時間雇用の変更を申し出たのも、1ケ月15万円の所得の月があり医療保険の被扶養者として不適確とされた経過があったからです。6時間雇用になれば社会保険に加入でき、厚生年金の対象にもなれる、そんな単純な埋由からでした。しかし、実情は残業が頻繁にあり帰宅時問が以前よ大幅に遅くなり、夕飯も手抜きが続くという日常です。
 そして、12月からは新たに、2人の若い同僚(30代と40代)が加わりました。彼女たちは、私とは違ってリーダー格となる6時間
雇用に、前向きに受け入れ責任ある仕事として自覚し頑張っています。しかし、6時間の本来のリーダー格としての仕事より、雑用や4時間雇用の同僚が時間不足で出来ない配達を任される、という矛盾の壁にぶつかっています。
 4時間雇用では消化できない郵便配達業務になっている今、週30時間を超えてはならない働き方が無理であるのは、職場の同僚には分かっているはずです。しかし、夫の扶養家族から抜けられない同僚がほとんどです。夫を主人と呼び妻は従うそんな世間の風潮が職場では感じられます。130万円という日本独特の配偶者配慮の行為は、結局は妻・女性の自立を妨げていると言えるでしょう。
 意欲をもって6時間雇用を選択した若い同僚が、本来の業務をこなせるよう職場での話し合いを持つことを今、考えています。解決の方向は、6時間雇用の希望者がもっと増えることでしかないのですが…。4時間雇用と6時間雇用の取り組みは今後どう展開していくのか、一歩前進と受けとめ見守って行きたいと思います。   (折口恵子)

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