ワーカーズ371号  2008年6月15日     案内へ戻る

高揚する韓国の労働者・市民の反政府闘争
米国産牛肉輸入反対闘争から政府の新自由主義政策との対決へと発展


 韓国で労働者・市民のデモの嵐が吹き荒れている。発端は、イ・ミョンバク政権が牛海綿状脳症(BSE)を理由にした米国産の牛肉の輸入制限措置を解除した事への反発だった。市民の反発に驚いたイ・ミョンバク政権は直ちに「陳謝」し、米国との「再交渉」を約束し、大統領室長、秘書官、報道官など大統領の側近8名の辞意を発表し、米国もまた韓国政府をおもんばかって月齢30か月以上の牛肉の対韓輸出規制を発表した。
 しかし国民の抗議行動はおさまるどころかますます激しくなる一方だった。青年、子ども連れの若い親、中学高校生、そして労働組合や革新勢力などを糾合しながら日を追うごとに勢いを増してきた。そして6月10日のデモには、直前の全閣僚の辞意表明と警察や右翼団体による戒厳体制にもかかわらず、韓国全土で100万人を超える人々が参加する事態となった。奇しくもこの日は、1987年の民主化闘争の口火を切った大規模デモの記念日であった。
 今回のデモのきっかけは確かにBSE問題であった。しかし問題は単にそれにとどまらないことは明らかだ。前政権以来の新自由主義政策が生み出した不安定雇用の増大、貧富の格差の拡大に加えて、特定の学閥関係者や超リッチ層を重用した政権人事、露骨な企業優遇税制の採用、教育現場への一層の競争主義の導入、最近の食料と燃料の高騰等々が、広範な市民・労働者の怒りに火を付けたのだ。
 この闘いに明確なイニシアチブは今の時点では見られないようだ。労働組合や革新政党が大きなリーダーシップを発揮しているようでもない。日本ばかりでなく韓国でも、新自由主義と正面から渡り合える政治勢力は未だ明瞭な形では登場し得ていない。
 しかし、民衆の要求と意思は明確である。市民の健康と生命を強欲なビジネスと「国益」の犠牲に供して恥じない政治。弱肉強食の競争に拍車をかけ貧富の格差の拡大を押し進めながらそれを「輝かしい成長」「豊かな社会」と強弁する政治。そんなものは金輪際望んではいないのだということ、「勝ち組」「負け組」を生まぬ社会、人々の健康と労働の尊厳が大切にされる社会をこそ望んでいるのだということ、そのためには犠牲を払ってでも闘う用意があるということを、今回の韓国の労働者・市民の行動は示している。
 日本の労働者も、韓国の闘いを教訓としながら、新たな闘いに備えよう!  (阿部治正)


「集団的解決」の道筋」――秋葉原無差別殺傷事件に思う――

 またしても残虐かつ悲惨な事件が起きた。6月8日に起きた17人を殺傷した秋葉原での無差別大量の殺傷事件だ。
 こうした事件が最近は多くなったように感じるが、その背景には格差社会の進行などを初めとする社会の閉塞状況がある。自身の行く末に悲観・絶望した結果の犯行という性質も見え隠れするが、その背後には家族や同僚など、身近な人との接点が希薄になり、ネット掲示板などバーチャルな仮想空間にしか思いを向けるしかない現実もあらわになった。
 派遣社員などという使い捨て自由な労働力としかみてもらえないという現実が底流にあったとすれば、それを何とかするのは労働運動や労働組合の役割の一つでもある。こうした事件の再発を防ぐ基本的な方向はといえば、やはり集団的な仕方での解決、いいかえれば労働者の連帯による解決以外にない。(6月11日)

■しわ寄せのたまり場

 それにしても今度の事件の被害者の災難は言葉にできない。それぞれの生活を背にした休日の繁華街で、たぶん何が起こったのかさえわからないまま突然命を絶たれた被害者はいうまでもなく、夜には当然のこととして帰ってくると思っている家族、あるいは身近に接してきた同僚や友人など、突然かけがえにない人を失ったやり場のない悲しみや怒りは、想像するにはあまりある。
 なぜこうした悲劇が起こってしまうのか、この事件に即して深く顧みることはまだできない。が、このところの凶悪事件の被疑者の多くが「派遣社員」とか「元派遣会社勤務」などとして報じられているのに、たぶん多くの人が感じているのではないだろうか。
 たとえばついこの間の事件、東京江東区のマンションの隣人を殺害して捨てたといわれているケース、あるいは先月、群馬県の赤城山で女性の白骨死体が見つかった事件で逮捕されたのも派遣社員だった。
 もとより派遣労働者は大勢いる。大多数はこうした凶悪犯罪とは遠いところにいるが、その他の事件でも「派遣社員」など非正規労働者が犯罪を起こしたという報道は確かに多いように感じる。それだけ派遣社員など非正規労働者が多くなった結果ともいえる。
 しかしそうした印象を抱かされるのは、非正規労働者が増えた結果だとばかり言い切れない。低賃金・低処遇、明日の保証もない不安定な就業、派遣元や派遣先の会社やそこで働く正規労働者からの差別的視線、ひとたび派遣など非正規労働者になれば、そこから抜け出すのはきわめて困難で、年を重ねるにしたがい絶望感が深まらざるを得ない現実や他者との関係もとぎれがちになる砂粒のような生活。そうした二重三重の閉塞感の中で生きていくしかない結果として、居場所が見つけにくい生き方を強制されている人は多い。

■根っこは同じ?

 他方では弱肉強食の苛烈な競争社会のなか、07年度の自殺者が3万人を超すことが確実になっているという。98年から始まった「自殺者3万人時代」が10年続いていることになる。この10年で30万人もの自殺者を出していることになる。想像を絶する事態という意外にない。この中には経済的な理由で自ら命を絶っている人は1万人ちかくいるという。
 かたや自殺者3万人、かたや多発しているかに感じられる凶悪犯罪。これら双方がとも深まる格差社会とその固定化を共通の土壌として起こっていると読み取る人は多いのではないだろうか。片方は弱肉強食社会の中で足を踏み外したことからくる悲観と絶望に内向きで逃避的な衝動に突き動かされた結果としての自殺。もう片方はその悲観と絶望の長年にわたる蓄積が外部に向けられ、ある一線を越えたところでより凶暴な形で暴発する。99年には会社の理不尽な対応に悲憤を募らせた会社員が社長室に立てこもって包丁で自殺したタイヤメーカーのブリジストン社事件もあった。それぞれ現れ方は対極のものだが、底に流れるものは結局は同じではないだろうか。
 もとより安易な類型化は避けなければならない。が、それにしても進行中の格差社会のあまりの冷酷さや残酷さに思いを向けざるを得ない。

■集団的解決

 問題はこうした格差社会の中で拡がる内向き、外向きの絶望感からする極限行為をなくす道があるのか、あるとすればどういう方向であり得るのか、ということだろう。
 ここで考えたいのは、端的に言って「個人的解決」と「集団的解決」という二つの道だ。
 個人的な解決というのは、格差社会、競争社会の中で当事者がいかに脱落を免れて主流に残れるか、あるいは一端排除され落ちこぼれた状態からいかにはい上がるか、という問題でもある。
 他方、集団的解決というのは、派遣労働者なり非正規労働者であることをとりあえずありのままに受け止め、そうした人たちが集団ごとはい上がる方途を考える発想のことだ。要は個々バラバラに競争を通じて処遇や地位の改善を追い求めるのではなく、集団として相手に向き合うこと、具体的には同じ境遇にある者が連帯してその境遇を改善していく道だ。
 こうした発想は当然の前提として同じ境遇にある者どうしの連帯を前提とした、含んだ考え方だ。以前から熊沢誠氏などが主張してきたことであり、すでに多くの労働組合や活動家グループなどもそうした方策を実践してきたものだ。最近では派遣労働者や請負労働者の決起が相次いでいる。そうした人たちは自分たちの境遇が何か偶然のものでも解決不可能なことでもないことに気がついて立ち上がったわけだ。集団的解決への道とは、そうした解決の道筋を拡げていくことである。
 今度の実行犯も、そうした非正規労働者どうし、あるいは電話相談などでもいいが、何らかの労働者グループと接点があればこういう事件を起こさないですんだかもしれない。

■自分たちの課題

 問題は、そうした集団的な解決の道筋が多くの派遣労働者や非正規労働者の位置からは見えにくくされているし、そうした道筋を呼びかける声がそれを一番必要としている人たちに届いていないということにある。そもそもそうした発想は学校では教えてくれないし、多くの非正規労働者の周辺ではそれが可能とも思えない境遇に置かれている。だから今回の事件で本来一番反省しなくてはいけないのは、私たちも含めてそうした集団的解決の方策を普及すべき側である。
 今回の事件では派遣労働者の暴発に視線が集まった。が、「名ばかり管理職問題」など近年頻発する労働がらみの諸事件は、何も非正規労働者に限ったことではない。正社員でも馬車馬のごとくこき使われている人は多い。格差社会とは、過労死予備軍、過労自殺予備軍を増殖する長時間過密労働と、低処遇・不安定労働の二極化社会でもある。
 あちこちで吹き出る事件は姿形は違えど根っこは同じ。今回の事件をまれにみる凶悪犯罪だとして彼岸視するのではなく、二度と起こらずにすむような「集団的解決」の道筋を拡げていきたいと思わずにはいられない。(廣)
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色鉛筆・やっと私も「日本人」

 いよいよ明日が最高裁の判決という夜に、テレビで姉妹の切実な訴えを聞き、こんな不合理な国籍法が通用していたことに、驚きとショックを感じざるを得ませんでした。未婚のフィリピン人の母と日本人男性から生まれた姉妹なのに、姉には日本国籍が取得できないとは、どういうことでしょうか?
 1984年、国籍法が改正され、これまでの父が日本人の場合に原則国籍を認める「父系血統主義」から、「男女両系血統主義」に変わりました。しかし、未婚の場合、日本人が父で出生後に認知しても結婚しないと国籍を得られない規定が設けられました。テレビで訴えていた姉妹は、妹は胎児の時認知されたため日本国籍が得られたということです。
 姉のマサミ・タピルさんは、小学5年生で児童会副会長も努めるしっかり者。「昔は『外国人、外国人』といじめられた」と苦しみを打ち明けました、日本で生まれ日本語を話し生活しているのに、矛盾を感じるのは当然の事。「かっこいい警察官になりたい」少女の夢は一歩近づいたようです。
 厚生労働省の統計によると、日本に住む外国人母の婚外子は年間2800人。研究者によると、父親が日本人のケースはこのうち2000人を超えると言われています。今回の国籍法違憲の判決で、数万人の子どもたちが「不平等な法律」から解放されることになるのです。
 すでに、アメリカでは自国で生まれた子どもは、親の国籍に関係なく取得可能な「生地主義」をとっており、欧米主要国と比べ婚姻条件を掲げ続けてきた日本の特異性が浮かび上がっているのが現状です。裁判官15人の内9人という多数意見で決まった今回の判決は、国際社会の流れに遅れまいとした良識ある判断だったということでしょう。
 ところで、日本の労働現場は今、労働力不足を理由に、外国人労働者を介護や医療の職場に受け入れる方向で、計画されています。今後予想されるのは、日本人男性と出会い、婚外子が生まれる場合ですが、これからなら未婚であっても国籍が取得できるのです。私の仕事の配達先も、ここ何年間で、フィリピン人や中国人の方を見かけるようになりました。隣国として、お互いどう交流していけるか、それぞれが考える時期に来ています。外国人だからと排除する対応は、憲法に示された人権感覚を理解出来ていないと、見られても仕方ありません。グローバルな世界観が押し寄せている今、どう行動するか問われています。
「差別的な取り扱いで子が被る不利益は看過ごし難く、国籍法の婚姻用件は憲法14条に反する」(婚外子訴訟判決骨子より一部) (恵)


<6月10日の100万大行進への全国公共運輸労働組合連盟の呼びかけ文>

BSE牛肉輸入反対!民営化反対!大運河反対!ガソリン価格を引き下げろ!
公共運輸労働者が先頭に立ってロウソクを松明(たいまつ)に!
 組合員のみなさん。ロウソクの力は偉大です。
 5月の初旬に女子中学生、女子高校生たちの小さな集会から始まったロウソクが全国民の胸を照らし今10万人が集まり、20万人が集まり、ついに6月10日には100万人が集まる巨大な行動に発展しています。
 私たちは今、1987年民主化闘争の巨大な力がふたたび街に表れ出ていることを目撃しています。ロウソクの力に押されてイ・ミョンバク政権のBSE牛肉輸入、許せない民営化、とんでもない大運河政策が、いやイ・ミョンバク政権そのものが深刻な危機に直面しています。
 ロウソクの力に驚いたイ・ミョンバク政権は責任のなすりあいを演じ、権力争いと内紛に突き進んでいます。
 6月10日100万ロウソク大行進に労働者が立ち上がりましょう。
 私たち公共運輸労組の労働者は、BSE牛肉輸入反対闘争をともに闘ってきました。運輸労組のBSE牛肉輸送拒否宣言はたいへんな支持を得て、ロウソク集会にも大きな力になりました。公共研究労組のキム・イテ組合員の大運河良心宣言は、みみっちい策を弄していたイ・ミョンバク政権を窮地に追いやり、大運河の強行をとりあえず阻止するのに決定的な役割を果たしました。この渦中に残念にも公共労組組合員のイ・ビョンニョルさんがイ・ミョンバク政権に対して焼身抗議されましたが、結局今日亡くなられました。
 ロウソクは偉大ですが、いっそう強力な松明の炎に燃え上がらせなければなりません。傲慢なイ・ミョンバク政権は相変わらず米国と韓国の大資本の利益と自分自身の権力を維持することに汲々とするだけで、国民の声を無視し続けています。
 1987年の巨大な民衆抗争の力によって誕生して韓国社会の進歩と闘争の求心を象徴した労働者運動が全面的に立ち上がるときです。
 すでに学生たちは行動しています。ソウル大学では89%の圧倒的な賛成で同盟休校が決議され、ソウルと釜山、そして光州など全国で同盟休校が拡大しています。
 組合員のみなさん!6月10日にはあらゆる力を尽くして100万ロウソク大行進にともに参加しましょう。1987年6月抗争21周年を迎えるこの日、公共運輸労働者たちが総力闘争に立ち上がりましょう。ストをし、車両デモを繰り広げ、総会を通じて街頭に出ましょう。組合員だけでなく家族や友人、市民をロウソク大行進にいっしょに参加するよう呼びかけましょう。
 圧倒的なストライキへの賛成で、民主労総ゼネストを作り上げましょう。
 もう仕事を中断し、車両を停め、本を閉じて、私たちの未来のために闘争するときです。6月10日から14日まで行われるストライキ賛否投票は、ただBSE牛肉輸入に反対するストライキの賛否投票であるだけではありません。この投票は、公企業民営化と構造調整に立ち向かう賛否投票です。
 私たち公共運輸労働者が圧倒的な賛成票でストライキを決議し、また実際にストに立ち上がりましょう。政権は危機に陥っており、全国民が民主労総と私たち公共運輸労働者たちの闘争を支持しています。
 今こそ闘って勝利するときです。
   2008年6月9日 全国公共運輸労働組合連盟 委員長イム・ソンギュ     案内へ戻る


Revolveする世界  6      北山 峻  (ワーカーズ前号からの続き)
 
(5)再びアジアの時代へ、そしてラテンアメリカ・アフリカが続く

 そして、イギリスの女王エリザベスを「女酋長」などと呼んで侮っていたオスマントルコのスルタン(皇帝)ばかりでなく、弱小西欧諸国にとっては雲の上の存在であった当時の超大国であったインドや中国の皇帝までをも、西欧諸国はわずか200年ほどの間に次々にうち破り、そこから略奪した膨大な富によって、西欧諸国は世界を分割支配する列強に成長したのでした。  
 欧米列強が完全に世界の支配権を獲得した19世紀半ばからのこの150年は、かつて父祖の地である中央アジアから流浪の末に定着したユーラシア大陸の西の果てのヨーロッパ半島で、ギリシャ・ローマ文化と融合して小国に割拠してきたゲルマン・ノルマン人の子孫が、栄耀栄華を極めた年月でした。
 しかし、その栄光の日々も今落日の時を迎えています。現代世界の覇者であったアメリカ帝国主義の没落が始まった1970年代を境にして、かつて世界の富の6〜7割を握り、長きにわたって世界に覇を唱えていた超大国であった中国とインドが、巨竜の飛翔、巨像の行進のごとくに再び嵐を起こして飛び、地響きをたてて前進し始めたのです。
 1973年、それぞれ世界のわずか4・5%と4・2%しか占めていなかった中国とインドが、2005年には、それぞれその生産力を37倍、17倍化して、世界の14・6%、6・2%を占め、世界第2位と4位の堂々たる大国に成長してきたのです。

 そしてこの中国とアセアン、インドを先頭としたアジアは、この30年という短期間の間に史上例がないほどの急拡大によって、今では世界経済の半分を担う世界最大の工業圏にまで成長したのです。しかしこれで驚くのはまだ早いのです。この中国とインドが、アメリカや西欧諸国や日本などのような、もう伸びきったゴムのようになったいわゆる先進工業国と決定的に異なっている点は、この両国ともが、万人の認めるところいまだ「堂々たる発展途上国」であって、今後どこまで巨大になるのか底知れぬ可能性を秘めているところでしょう。
 2006年における中国の就業者総数7億6400万人のうち、農村就業者数は4億8千万人、およそ63%に上りますが(「中国情報ハンドブック2007年版」蒼蒼社刊、p313)、しかし今後農業の機械化が進めば労働人口に占める農民の比率は、60年代の日本がそうであったように10%程度までは下がることは十分可能ですから、今後中国は、労働人口の半数を占める4億人もの労働人口を労働生産性が非常に低い農業から、生産性がはるかに高い生産セクターに移動させることが可能であり、またそうなることは必然であると思われます。そうなったときの中国は、少なくともアメリカのGNPの2〜3倍の規模の超経済大国になると思われますし、またインドも同様な規模になると思われます。
 中国のGNPがアメリカに追いつくのはいつ頃かという問いに対して、マサチューセッツ工科大(MIT)の中国専門家、トーマス・クリステンセン教授は「早ければ2013年ごろ」と答え、アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスも、「実質購買力ベースで計算するなら2010年代の後半期」、世界銀行は「中国経済は2016〜2020年ごろに世界一になるだろう」と予測し、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は「2020年ごろには中国の経済力はアメリカと対等なものになる」と言い、外交問題評議会(CFR)の上級研究員マックス・ブートは2005年のレポートで、「実質購買力で計算した場合、中国経済はあと10年余で世界最大の規模になろう」と述べているそうであるが(伊藤貫著「中国の『核』が世界を制す」PHP研究所刊、2006年、p85)もしこのまま成長率9%で成長し続けるならば、もうこの5〜6年の間に中国はアメリカを追い越し、インドはらくらく日本を抜いてアメリカに迫り、かつてのように世界を睥睨する巨竜と巨像となって、世界の政治・経済に決定的な影響力を及ぼすようになるでしょう。
 その経済力とともにその軍事力や政治力も、十分にアメリカに対抗しうる侮りがたいものになるでしょうから、アメリカや中国国内では、2020年〜2030年の間に世界的な覇権交代に伴う米中の激突を予測する人々が少なからずいるようです。
 中国でもインドでも、上は政府高官から下は庶民に至るまで、過去200年にわたる自国の悲惨な状態については極めてはっきりとした認識を持っていますから、たとえどんな事があっても再び欧米諸国や日本にあれほどに蹂躙されることはありえないし、逆に現在の世界の趨勢から言って(現在の日本などはこの間の「中国特需」によってかろうじてバブルの崩壊から抜け出しつつあるのです)アメリカや日本が圧倒される可能性のほうがはるかに高いでしょう。
 最近明らかになってきている長江文明などは、5000年前から続いているといわれる黄河文明よりもさらに5000年から1万年も古い巨大文明であったようですし、インド亜大陸でも、インダス文明に匹敵するガンジス文明があったであろうと言われているように、中国にしてもインドにしても人類最古の巨大文明を独自に確立した自負に満ちており、現在どれほど貧しかろうと必ず世界のどこにも負けない文明国を建設することが出来るという民族的な自信と風格は、東海の小島に住む日本人にはなかなか理解できないものがあるように思われます。(安田喜憲著「大河文明の誕生」角川書店刊・徐朝龍著「長江文明の発見」角川書店刊など)
 以前中国国内での偽ブランド商品やCDやビデオの海賊版の氾濫に業をにやしたアメリカ政府が、中国政府に対して知的所有権の厳守を要求したとき、中国の高官が「中国も火薬の使用料や紙の使用料を戴いてはおりません」と煙に巻いたという話が、まことしやかに伝えられたことがありましたが、彼らを見ていると確かに「そんなことも有るかもしれない」と思わせるものがあります。
 そしてその中国やインドに続いて、かつてユーラシアからアフリカに及ぶ巨大な帝国を築き、華麗に中世世界を飾ったイスラム世界や、稲と小麦と並んで今では世界の4大食糧となったとうもろこしと芋の上に、独自の文明を築いたアメリカ大陸のインディオ世界が、また人類発祥の地でありかつてはきらびやかな多くの大国が盛衰したアフリカ世界が、再び栄光を取り戻して復活してくるであろうことは間違いないと思われます。そして、それはもうそこまでやって来ていると私には思われるのです。 
 100年後、200年後の世界から振り返れば、たかだかこの200年の西欧文明に「毒された」現代世界の常識などというものは極めて一面的で偏頗なものであることは次第に明らかになるでしょうし、まして主人顔をしてのさばってきたイギリスやアメリカやソ連や日本などの行動は、きわめて愚かで反動的なものでしかないと断罪されるに違いないと私は思うのです。

(六 )「世界の工場」が資本主義世界の中心になる

  18世紀の後半に始まった産業革命と機械制大工業を基礎に成立した資本主義は、その発生以降、常に工業生産の拡大と歩調を合わせて発展してきました。そして最初の100年は、「世界の工場」といわれたイギリスの世紀でしたし、次の100年は、イギリスに変わって世界の工業生産の中心地となったアメリカの世紀でした。そして今始まった三番目の100年は、今、新たに「世界の工場」となった中国に中心を移して展開し始めています。
 かつて、アメリカに「世界の工場」の地位を持っていかれたイギリスは、その後の100年間、ロンドンのシティと呼ばれる一画において、世界経済のあらゆる情報を集中し、世界中のあらゆる生産物の先物取引と証券・資本取引を行うことによって、つまり金融取引の中心となることによって引き続き資本主義世界の中で重要な地位を保ち続けてきました。
 今、工業生産においては「世界の工場」の地位を失いつつあるアメリカも、「世界の工場」の地位をアメリカに奪われた後も、かつては「七つの海を支配する」といわれた巨大海軍と得意の情報戦によって2度の世界大戦を画策してのたうち回り、主役の座を降りることを拒否し続けたイギリスに倣って、ここしばらくは超大国としての過去の幻影を追い求めてのた打ち回るでしょう。巨大な累積赤字をかかえる世界最大の債務国家になったとはいえ、現在でもアメリカは世界の軍事費の半分の軍事費を使い、世界最大の核兵器・ミサイル部隊と世界中に展開するいくつもの大艦隊を持ち、基軸通貨であるドルと世界一の証券取引所であるウォール街を握る世界一の大国であることには変わりはないのだからです。
 しかし今、新たに「世界の工場」になった中国のすぐ後ろには、かつて1800年に渉って、中国と並ぶ大国として繁栄を二分してきたインドが続いていますから、近い将来には再びこの二大国が共に並び立つ世界が到来するように思われるのです。この、世界が大きく転換する変わり目の時点に立って、工業生産の世界分布を簡単に一覧してみよう。

(1)アメリカの衰退は工業生産の衰退に現れている

  今、サブプライムローンの破綻によって、この15年来続いてきたアメリカのバブリックで空虚な景気の拡大=住宅価格の値上がりで消費を拡大する=が終わり、深刻なリセッション(景気後退)が始まったのではと世界中がざわついています。日経新聞‘08・1・23日付けは、「サブプライムローンをめぐる欧米金融機関の損失は、2007年10〜12月期までに総額で1250億ドル(約13兆円)に達したもようだ。」だが、「金融機関の損失処理はピークを過ぎた」(ドイツ銀行)とする一方で、「ここにきてモノラインと呼ばれる金融保証会社の経営問題が浮上。モノラインはサブプライム関連の有価証券の元利払い保証を行っているため、再び損失の底が見えなくなっている。」と報じている。
 つまり、保証会社が倒れれば底が抜けた状態になり、総額で100兆円とも150兆円ともいわれた日本のバブル崩壊時と同様に底なしの奈落へと落ち込むやもしれない。それを裏付けるように早速2月1日の日経は、「優良個人向けの住宅ローン(プライムローン)やクレジットカードの焦げ付き増も表面化。景気減速による不良債権増で、新たに五百億〜千億ドルの追加損失が出る」(米調査会社グローバル・インサイト)と報じ、3月4日付の日経夕刊は、米財務省の発表として、「サブプライムローンの問題に絡み、世界の金融機関が公表した損失額が二千億ドル(約二十兆七千億円)を超すとの集計を明らかにした。半分は米国系、四割弱の七百五十億jは欧州系が占める。」
 戦後30年ほどの間の日本は、輸出にしても輸入にしても圧倒的にアメリカに依存した構造になっていたから、当時は、「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪を引く」とか、「アメリカが風邪を引くと日本は肺炎になる」とかいわれたものでした。
 しかし今、アメリカがサブプライム問題で、深刻な景気後退に陥り、緊急に中東の政府ファンドなどから高利の資金を導入するなどと大騒ぎしているというのに、日本はせいぜい2〜3千億円程度の損害で済みそうだと落ち着いているのを見ていると隔世の感がします。今では日本経済の主要な取引の相手が、アメリカからアジアへとはっきり変わっていること、そしてアメリカのリセッションにもかかわらず、中国のGDPは、2007年度に11・4%の成長を記録したばかりか、2008年度も引き続き10%前後の高成長を維持すると観測されているからでしょう。(日経新聞”08年1月24日)
 米連邦準備理事会(FRB)は、金融機関の資金繰りを助けるため、昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに3回連続の利下げを行いましたが、さらに1月下旬にも0・75%に続く0・5%の利下げ(1月30日)で、1週間あまりの間に1・25%の大幅な利下げを行いました。しかし、日経新聞は「(アメリカの)専門家の間では今後景気後退の深刻化によって一層の利下げは避けられないとの見方で一致している」と報道しています。つまりアメリカの専門家の誰もが今回の景気後退はこの程度では終わらないことを自覚しているのです。
 かつてはイギリスの没落期もそうでしたし、また今回のアメリカの衰退の過程もそうですが、アメリカの衰退の第一の現れは、アメリカは今では工業生産の国際競争において決定的に敗北し、工業生産の主導権を他国に奪われてしまった事に現れています。
「世界の工場」と言われて工業生産で世界の先進となった国々では労働者の闘争によって必ず労働賃金が上昇します。また先進技術の海外への流出や工場そのものの海外への移転によって、先進国の工業は賃金の安い後進諸国に対して必ず比較劣位に陥り、工業生産の中心から脱落しはじめます。その結果先進国は、現在の日本のようにそれまでに蓄積した資本をフルにつぎ込んで次々と高度で新しい技術や製品を開発し超過利潤を獲得し続けようとしますが、しかしそれを続けることはきわめて難しいですから、先進国はその体制を保持するために政治力や軍事力によって他国を縛り上げたり、さらには資本投資や証券投資などの金融によって(この点ではかつてのポンドや現在のドルのように基軸通貨の発行権を握ることはきわめて重要です)詐術的に他国の上前をはねたり、今のアメリカの石油支配のようにある重要部門を支配することによって他国に対する支配と利益を維持しようとしてあがきます。現代世界では、最大限利潤の獲得を目指して日々そのような競争と資本や技術や労働力の移転が絶え間なく行われ、昨日の先進は今日には後進になり、今日の繁栄も明日には没落するという歴史の鉄則が貫徹しているのです。
 では現時点で、世界の工業生産がどの国で行われているのか、いくつかの製品について簡単に考察してみよう。

(2)産業別人口と第三次産業

 産業別人口のうち直接に物を作り出さない第3次産業の従事者が70%を超える社会(つまり農林水産業や鉱工業の従事者が10人中3人以下しかいない社会)は、一般的に言って他国人民の生産的労働の上前をはねる形で生活していると言ってよいでしょう。ちなみに2005年の統計で、世界最高の強盗国家であるアメリカの第3次産業就業率は世界一の87・4%となっています。これは農林水産業(第一次産業)や鉱工業(第二次産業)に従事する人が、労働人口100人中13人弱しかいないことを示しており、社会が直接的生産から非常に離れていることを示しています。他の国々を見てみるとイギリス76・9%、フランス71・9%、ドイツ67・7%、日本66・5%、ロシア64・7%、中国30・6%、インド18・7%、ブラジル58・6%、キューバ54・4%となっており、中国では労働人口100人中70人が、インドに至っては100人中81人が直接的生産に従事していることを示しています。(「データブック・オブ・ザ・ワールド、2008年版」)

(3)主な工業生産の世界分布

(a)銑鉄・粗鋼生産

 工業生産の基本材料である銑鉄・粗鋼の生産を見ると、2006年で、1位中国;銑鉄404億トン(46・4% )粗鋼 419億トン(33,8%)、2位日本;銑鉄84億トン(9・7%)粗鋼116億トン(9・4%)、3位アメリカ;銑鉄38億トン(4・3%)粗鋼98億トン(7・9%)、4位ロシア;銑鉄52億トン(5・9%)粗鋼71億トン(5・7%)、5位ドイツ;銑鉄30億トン(3・5%)粗鋼47億トン(3・8%)、6位ウクライナ;銑鉄33億トン(3・8%)粗鋼41億トン(3・3%)、7位インド;銑鉄28億トン(3・2%)粗鋼44億トン(3・8%)です。ここにはかつて「鉄を支配するものは国家を支配する」「鉄は国家なり」と豪語し権勢を振るったアメリカの鉄鋼王カーネギーの面影はもはやないというべきでしょう。

(b)原油消費量と自給率

  鉄鋼と並んで現代産業のもう1つの最も重要な原材料である、つまり自動車・航空機・船舶や火力発電などの主要な動力源であり、石油化学工業の原料でもある原油消費量と自給率を見ると、さすがは石油帝国主義として20世紀の世界に君臨していただけの事はあって、依然としてアメリカが強いことがわかります。
(2004年・単位;10万トン)1位アメリカ;消費量8003(22・1%)自給率33・5%、2位中国;消費量2901(8・0%)自給率60・6%、3位日本;消費量2012(5・6%)自給率0・1%、4位ロシア;消費量1913(5・3%)自給率233・2%、5位インド;消費量1294(3・6%)自給率26・3%、6位韓国;1129(3・1%)自給率0・0%、7位ドイツ;消費量1119(3・1%)自給率3・1%です。
 この石油の支配こそがアメリカの生命線といってもいいでしょう。これに対し、昨年サウジアラビアを抜いて生産高世界一になり、埋蔵量世界一といわれる天然ガスのドイツやポーランドなどのヨーロッパへの輸出によってEUとの連携を強化している資源大国ロシアや、政府のてこ入れによって国内の石油資本を中国の三大メジャーとして再編し、カスピ海の大油田カシャガンに至るパイプラインを建設し、イランやアフリカ諸国の石油開発に力を入れ、アメリカと対立するミャンマーの軍事政権と提携してベンガル湾の天然ガスの利権を手に入れ、さらにチャベス反米政権と連携してベネズエラの石油や、最近(07年11月)発見されたブラジルの大油田(埋蔵量50〜80億バレル)にも手を伸ばす中国が、米英石油資本の支配に挑戦しこれを崩そうとしており、この中ロとアメリカとの石油や天然ガスをめぐる世界規模での戦いは、中東の産油国やEUをも巻き込んで、アメリカの世界支配の野望を崩す最後の大闘争になりつつあります。
 中国がエネルギー開発で投資している国はすでに世界の40カ国に上るというのです。
 
(c)自動車生産

 自動車生産では、各国の自動車メーカーが他国に工場を建てて生産し販売する体制が一般化しており(例えば2006年統計で、トヨタの海外生産比率は48,5%、日産は62・8%、ホンダは63・6%である)、国別の生産台数ではその国の国力を正確に反映しないうらみが有りますが、一応国別の生産台数と、主な自動車メーカーの生産台数を見てみると、2005年の統計で、
 1位アメリカ;1198万台(18・0%)、2位日本;1080万台(16・2%)、3位ドイツ;576万台(8・7%) 、4位中国;571万台(8・6%)、6位韓国;370万台(5・6%)、7位フランス;355万台(5・3%)となっており、これを会社別に見てみると、
 1位ゼネラルモーターズ(米)892万台、2位トヨタ(日)804万台、3位フォード(米)627万台、4位フォルクスワーゲン(独)569万台、5位ホンダ(日)367万台、6位ブジョー=シトロエン(仏)336万台、7位日産(日)322万台となっています。
 ここでも世界を支配していたGM、フォード、クライスラーの衰退はすさまじく、トヨタ、ホンダの日本勢ばかりか、ルノー=日産、ブジョー=シトロエンのフランス資本やフォルクスワーゲンなどのドイツ資本がアメリカに取って代わりつつあります。さらにその後には、現代自動車や起亜自動車などの韓国や、中国・インド勢の台頭もあり、もはや世界を席巻していた「アメ車」の栄光の日々は永遠に過去のものとなりつつあるようです。(次号に続く)


反戦通信(NO・22)・・・「G8サミットに抗議の声を」

 7月7・8・9日の日程で、北海道・洞爺湖をメインにして、G8サミットが8年ぶりに日本で開催される。8年前の2000年は小渕首相が計画した沖縄サミットであった。
 このサミットは先進国8カ国の首脳だけが集まる訳だが、まさに世界を支配している先進資本主義連盟の相談会である。G8はWTO(世界貿易機構)やFTA(自由貿易協定)や世界銀行等を利用して、弱肉強食の新自由主義を各国に押しつけ世界経済を支配している。
 だからこそ、ヨーロッパ諸国ではサミットへの抗議・反対運動は当たり前になり、その抗議活動も激しいものになっている。
 日本でも小泉政権以降、新自由主義のもと規制緩和がどんどん進み、雇用の不安定化で格差と貧困が深刻化し、福祉政策の切り捨てのもと社会的弱者は排除され、国民への監視・管理は進み基本的人権が脅かされている。
 今回の洞爺湖サミツトをひかえ、このG8に反対の声を上げていこうと、「『G8サミットを問う連絡会』貧困・労働ワーキンググループ」が中心団体となり、下記のような取組みへの参加と闘いの連帯を呼びかけている。
 (1)G8サミット直前東京行動
   @東京直前行動シンポジウム
    ★分科会の紹介
     ・日 時・・・6月28日(土)13:15〜17:00
     ・場 所・・・文京区男女平等センター(丸ノ内線・本郷3丁目下車)
     ・内 容・・・5人のパネリストからの問題提起と意見交換
    ★全体会の紹介
     ・日 時・・・6月28日(土)18:00〜
     ・場 所・・・文京区民センター(地下鉄・春日駅下車)
     ・内 容・・・スーザン・ジョージの講演など
   Aオルタナティブサウンドデモ
    ・日 時・・・6月29日(日)集合14:30で出発15:00〜
    ・場 所・・・新宿柏木公園(大江戸線・新宿西口駅下車)
 (2)札幌での「連帯フォーラム」
    ・日 時・・・7月4日(金)〜8日(火)
    ・場 所・・・札幌市内「かでる2.7」「エルプラザ」など
    ・内 容・・・シンポジウム、ワークショップ、野外ステージ、ブース出展、ピ           ースウォークなど

 なお、G8サミットに先立ち、7月1日から平取町の二風谷では次のような「先住民族サミット」が開かれる。
 (3)「先住民族サミット」(7月1日〜4日)
・日 時・・・7月1日(火)〜2日(水)→二風谷「平取中央公民館」
・日 時・・・7月3日(木)〜4日(金)→札幌「コンベンションセンター」
 このサミットを企画した結城事務局長は、このサミツトの意義を次のように述べている。 「私たちアイヌ民族も日本ではこれまで「旧土人」と差別的に扱われ、自分達の文化を奪われてきた。・・・文化・言語を奪われたアイヌは社会の中で、ストレスや恨みを覚え、家庭に持っていくのはドメスティックバイオレンスであったりします。学校でアイヌとして差別を受けたら、どこにも行き場がないから自分がアイヌに生まれたことを恨んでしまう。恨みを持った子どもが成長したとき、アイヌを名乗らないとか、嫌なことを隠すとか、悪循環に陥ってしまいます。そうした現実を日本人たちは『見ない 触らない 近寄らない』という姿勢です。以前は『差別』という暴力がありましたが、現在は『知らない』という暴力がはんらんしています。その延長線上に私たちがいます。積み重なってきた苦しみの歴史をここで断ち切るためには先住権が必要です。アイヌやネーティブアメリカン(インディアン)、マウリ、アボリジニなど先住民族20人ほどを招く予定で、伝統文化に触れてもらい、魂の叫びのようなものを感じ取ってもらいたい。」(「社会新報6/11号」より引用)
 それぞれの持ち場から、さまざまな方法で抗議の声を上げよう!(若島三郎)


ポテッと太ってしまった(ワイルド)キャット

 「ワーカーズ」(08・6・1)NO370号の10ページ末尾の写真に、のらねこならぬ家ネコのボテッと太って寝そべる写真がある。このねこ君、与えられたエサを食べ、食っちゃ寝、食っちゃ寝≠ナすっかり太ってしまったねこ君であるらしい。
 2・3年前、生涯学習講座の中で、ある宗教の中で、太ったことの罪を原罪の1つとする、といったお話を聞いたことがあった。ベトナム戦争の折、アメリカの若者たちの反戦デモの中で、木に自分の体を縛りつけ、「5kg太ったことの罪」てな文句を書いていた。デモをしていた黒人の学生の映像を思い出した。
 太ってしまったメタボねこ、何だか我がことのようで、太った罪を感じざるを得ない。これに至るまでに問題があるのであろうが・・・。好きなことばかりやってられない環境にあるのだから。だが、この環境の中でやれる最大限のことをやって、皮下脂肪を燃やしつくしたいもの。のらねこ≠ヘ太ってるの? やせてるの? 彼ら、彼女らの運命は?08・6・5 宮森常子     案内へ戻る


DVD紹介  ALWAYS  続・三丁目の夕日

 前作のALWAYS 三丁目の夕日に続く作品です。時代は1959年です。私自身は、このときはまだ生まれていませんでしたが、この映画の雰囲気は、私の子供時代に体験したので大変懐かしく感じました。家には当然風呂はなく、しばらくは銭湯に行っていたりしました。
 さてDVDのほうですが、主人公の小説家茶川竜之介(吉岡秀隆)とそこに同居する古行淳之介(須賀健太)、そこへ淳之介の実父である川渕康成(小日向文世)が淳之介を取り戻そうとやってきます。川渕は会社社長で大金持ち、一方茶川は売れない小説家です。それでも淳之介は、茶川のもとから離れないと言い、茶川も淳之介を離さないと言いました。しかし、川渕は淳之介のことをなかなかあきらめません。
 一方、鈴木オートでは、鈴木則文(堤真一)の親戚である鈴木大作(平田満)が事業に失敗したため、大作の娘 美加(小池彩夢)をしばらく預かることになりました。美加と鈴木則文の子供である一平(小清水一輝)は、最初はけんかばかりしていましたが、だんだんと打ち解けていきます。そのあたりも実に興味深かったです。
 鈴木オートで住み込みで働いている星野六子(堀北真希)と、幼なじみの中山武雄(浅利陽介)との再会と2人の絡みがおもしろかったです。
 そして鈴木オートの鈴木則文が、戦友たちとの同窓会に出席し、そこで戦友の牛島(福祉誠治)と再会しました。そこで鈴木則文が牛島に「こうやって生きていることは、死んだやつに申し訳ない」、といったのに対し牛島は「いいんですよ。生き残った人間は、思いっきり幸せになればいいんです。仲間のぶんまで」、という意味深な言葉を発しました。実は牛島は死んでいたのでした。本当に切ない気持ちになりました。
 小説家の茶川は、淳之介や恋する石崎ヒロミ(小雪)のために、再度芥川賞を目指して頑張ります。さて、茶川は芥川賞を取ったのか、ヒロミとの恋の行方はどうなったか、後はDVDを観てのお楽しみです。
 三丁目の夕日を観て思うのは、古きを温ねて新しきを知る、そういう心境です (河野)


コラムの窓・「taspo」って何だ?

 配達記録という書留扱い≠フ郵便があります。中身は大方がカードで、最近、差し出しが「taspo」(タスポ)となっているものが増えており、これはなんだろうと思っていました。私はたばことは全く縁のない生活をしているので、これがたばこをめぐる新たな仕掛けだとは全く知らなかったのです。しかし、配達先には2通来るところや幼児がいるところもあり、家庭内でのタバコ被害はどうなっているのだろうと心配になります。
 5月下旬、社団法人「日本たばこ協会」のチラシが新聞折り込みで入り、「6月1日からtaspoがなければ自動販売機でタバコが買えなくなりました」という成人識別たばこ自動販売機♂メ動のお知らせです。未成年者が自動販売機でタバコを買い、喫煙習慣(ニコチン中毒)を身に着けてしまうのを防ぐためのもののようです。そこまでやるかという思いと、いっそのことたばこ自動販売機をすべて撤去すればすむものを、という思いが交錯します。
 実際、そこまでしなくても対面販売でいくらでも買えるのにと思いますが、喫煙者にとってたばこを切らすことはそれほど切実なのでしょう。その分、「日本たばこ協会」は強気です。フリーランスの平田剛士氏によると、タスポは同協会と全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会の3団体が導入を決めたもので、今年7月までに全国約51万台のたばこ自動販売機を成人識別機能付きに切り替える計画だということです。
 平田氏はこのシステムを「タスポから始まる最新鋭の監視ネットワーク」と断じて、次のように解説しています。はたして、初期投資約900億円、年間100億円の費用が見積もられているこのシステム、どのような果実≠ェ期待されているのでしょう。
「もっと大きなパイ‐機能拡張自在なICカードを全国津々浦々、数千万人の喫煙者たちにあまねく持たせて管理下に置くこと‐ではないだろうか。そのうえで、タスポカードをたばこ自販機限定から汎用の電子マネーに切り替える。壮大な『囲い込み』の完成だ」(「週刊金曜日」4月11日号)
 さて、6月1日以降の動きですが、タスポの普及率が低調、例えば兵庫県では5月27日の段階で212028枚(推計喫煙人口の18・7%)ということで、自動販売機の利用は低調。その一方、コンビニなどでの対面販売が急増という、悲喜こもごもの様相です。小さな扱いの記事ですが、母親が15歳の次男にタスポを貸して未成年者喫煙禁止法違反の疑いで書類送検される、という事件≠熾汢ェ市で起きています。歩きたばこを禁止し、違反者に過料を科す自治体も増えており、喫煙者はいよいよ肩身が狭くなっています。
 そしてその決定版ともいうべき、たばこ一箱1000円時代が到来しようとしています。そんなことは個人的にはどうでもいいことなのですが、それを主張する政治家達(自民党の中川秀直や民主党の前原誠司)の政治的思惑には警戒が必要です。実現すれば9兆5千億円の増収になるとか、やっぱり禁煙しかないと思うのですが、進むも地獄、引くも地獄のニコチン中毒者の明日は限りなく暗いようです。   (晴)案内へ戻る