ワーカーズ473号  2012/10/1     案内へ戻る

 民主党や自民党には期待できない! 民衆や労働者の結集で今の政治体制を変革しよう!

民主党の代表選は野田首相が大差で再選
9月21日の民主党代表選で、野田佳彦首相は国会議員、地方議員票で6割超、党員・サポーター票で7割超、全体で66%を獲得して圧勝した。しかし、党員・サポーターの投票率は33.2%にとどまり、菅直人前首相と小沢一郎元代表が激しく競り合った2010年の代表選(66.87%)からほぼ半減した。
 地方議員の投票率も2010年の96%から78%に落ちた。 野田首相には国会議員(336人)の約6割の211人が投票した。野田首相は党員・サポーター投票でも、岩手、山形、佐賀、沖縄を除く43都道府県で最多得票を記録した。青森は首相が最多得票を獲得したが、ポイント数では他の3候補と並んだ。
民主党代表選を大差で再選を果たした野田首相だが、野田首相に期待するものは何もない。消費税増税法案を民主・自民・公明の談合で通したり、今年の夏世論の反対を押し切って関西電力大飯原発3、4号機の再稼働に踏み切ったり、原発稼働ゼロを目指す「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめたものの、閣議決定は見送った。さらに、脱原発を唱えつつ、新しい原発を増設しないとしていながら、全国で建設・計画中の12基の原発のうち大間原発や島根原発など少なくとも7基が今後も計画推進の方針にあるという。そして、国の情報隠しをさらに進めようとする秘密保全法も国家に上程しようとしている。このような民主党政権を、退陣させなければならない。

自民党新総裁はタカ派の安倍晋三
 自民党総裁選は26日、安倍晋三元首相(58)が決選投票で石破茂前政調会長(55)を破り、第25代総裁に選出された。安倍氏の総裁就任は首相を務めた2006〜2007年以来5年ぶりである。安倍氏は総裁選後の両院議員総会で「5年前に突然、首相を辞任し迷惑をかけた。責任をしっかりと胸に刻み、政権奪還に向けて全力を尽くしていく」と再び首相を目指すことへの理解を求めた。
 総裁選は地方票(300票)と国会議員票(198票)の合計で争われた。都道府県連ごとに開票された党員・党友投票に基づく地方票は、石破氏が過半数の165票を獲得し、2位の安倍氏は87票にとどまった。国会議員の投開票は党本部で行われ、石原伸晃幹事長(55)が58票でトップに立ち、安倍氏が54票、石破氏が34票で続いた(棄権1)。合計で石破氏が199票で1位になったが、当選に必要な過半数に届かなかったため、141票で2位に入った安倍氏との決選投票となった。決選投票は国会議員だけで行われ、地方票の結果は反映されないルール。安倍氏が108票で石破氏の89票を上回っての逆転勝利となった。
 民主党政権はひどいが、過去の経験から自民党も財界や官僚の意向を重視する政党である。原発も推進の立場である。
こうした状況を打破するためには、多くの民衆や労働者が力を合わせなくてはならない。 (河野)                                                 
 基軸通貨からのドルの引退試合を告げるゴングが鳴った

量的緩和第3弾の実施とその内容

 9月13日、米連邦準備理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、量的緩和第3弾(QE3)を14日から実施すると発表した。FRBは金融危機後、既に2度にわたって量的緩和を実施していたが、今回の決定の核心は住宅ローン担保証券(MBS)を月額400億ドル購入、労働市場の大幅改善まで買入れを継続、低金政策を従来の2014年終盤から2015年半ばまで延長するというものである。
 読者には、これまで以上に際限なく垂れ流されるジャブジャブとしたドル紙幣の瀬音が聞こえないだろうか。これは、中央銀行の許せざる一線を越えた歴史的な愚行である。今まさに、基軸通貨からのドルの引退試合を告げるゴングが鳴ったのである。
 では今回の措置によるFRBの皮算用とは、一体どのようなものだろうか。
 その1 FRBは、MBSをFRBに売却した当該銀行の口座に振り込み、その銀行がFRBに持つ口座の準備預金残高を増やす。しかし準備預金利子は0・25%と非常に低いため、各銀行はFRBに預けるより貸出しに回す選択をすると期待している。
 その2 FRBがMBSを購入する事による債券価格の上昇と利回りの低下により、サブプライム・ローン破綻以来、現在高止まりの住宅ローン金利の低下を見込んでいる。
 その3 FRBの買入れにより、投資家が価格の上昇したMBSを敬遠し、資金を社債等に振り返れば、社債価格は上昇し、その結果企業の借り入れコストは低下する。したがってFRBの狙いは、金利を引下げ銀行融資を拡大させ、消費を伸ばし、最終的に雇用状況も改善しようと計画しているのである。
 このように今回FRBは、労働市場の見通しが大幅に改善するまで資産買入れを継続するとともにMBSの買入れを今後の経済動向に直接結び付ける措置をとる事で、失業率の押下げに向けた取組みを大幅に強化する意向を内外に示したというところであろう。
 この発表を好感して確かに米株市場は大幅に上昇し、S&P総合500種.SPXは約5年ぶり高値をつけた。原油も上昇、金も6カ月ぶりの水準まで買われた。しかし一方でドル減価の予想からドルは幅広く下落、債券価格はインフレ加速への懸念で売られたのだ。
 実際の所、過去2度の量的緩和の効果の検証は、例えば金利低下により雇用が実際どの位増えたかなどを示す調査結果はほとんどないのだ。他方量的緩和の副作用は、端的にはインフレを引き起こす事だが、FRBはもちろんうまくやるとは明言しているが、今回の前例のない措置からの出口戦略がうまくいくかは当然の事ながら全くの未知数ではある。

「金融政策ではなく『経済政策』を」の欺瞞的批判

 9月17日、米連邦準備理事会(FRB)傘下のニューヨーク連銀は、先の決定に従って公開市場オペにより短期国債77億9千9百万ドルを売却した。FRBはすでに2兆3千億ドルに上る国債および住宅関連債券を買入れており、今回の措置はこれを拡大するもの。過去2回の量的緩和では、FRBは月間千億ドル近いペースで債券を買い入れていた。また米国債資産表の中の短期債を減らして同額の長期債を増やす資産内容の改善というその場しのぎの付替え策、「オペレーション・ツイスト」の一環により、今後2014年12月から2015年5月までに償還を迎える国債を売却する予定だとの事である。
 彼らの危機乗切りの「知恵」とは、結局の所、米国債の資産内容における短期債と長期債の付替えなのだ。この事は、アメリカにおける財政危機の深刻さを象徴する局面である。
 FRBは、こうした「ツイストオペ」により「FOMCの長期証券保有は今年末まで毎月約850億ドル増加する。こうした措置は長期金利に下方圧力を加え、住宅ローン担保証券市場を支援するとともに、より広範な金融状況を一段と緩和的にする一助となるだろう」としている。まさに捕らぬ狸の皮算用だ。計画だけなら誰にも出来る事ではある。
 このFRBの金融緩和策についてブラジルのマンテガ財務相はドル減価を警戒し、これまでのFRBの債券買入れは米ドル相場を不当に引き下げたとして、レアル(ブラジル通貨名)に与える影響を引き続き注視すると述べ、明確に批判的な視点を押出している。
 わが日本にとってもドル安・円高を解消するため、頻繁に円高為替介入という名のアメリカへの上納金が発生すると共に巨大額となる現実性が極めて高くなる。つまりアメリカは国内の恐慌を外国に輸出する事で直面する危機を乗り切ろうと、これまで以上に見苦しい振舞いに打って出たという事が、今回の量的緩和第3弾(QE3)決定の核心である。
 その意味において、今まさに基軸通貨からのドルの引退試合のゴングが鳴ったのである。
 共和党の選挙対策委員会のトップであるコーニン上院議員は、FRBは11月6日の大統領選挙前に、オバマ大統領を助けようとしている。政治的だ」と批判している。またロムニー氏の大統領選政策担当者ラニー・チェン氏は、FRBの発表を受けて、金融政策ではなく「経済政策」に重点を移動する時期にきていると強調した。「われわれは、ドルを印刷するのではなく富を創造すべきだ」と述べた。まさにそれは選挙対策なのである。
 しかし当のロムニー氏には「低所得等の理由で人口の47%が所得税を納めていない」「47%はオバマの支持であり、政府に依存しており、自分を被害者だと信じており、政府は自分たちの面倒を見る責任があると思っている」と非難、「私の仕事は貧困層の心配をする事ではない」と失言した。彼らの「経済政策」とはそれ故欺瞞的な批判でしかない。
 9月21日、オバマに「大富豪」だと追詰められたロムニー氏は、2011年の納税申告書を公表し、夫妻の年収が千三百七十万ドル(約十億七千万円)だった事を明らかにした。所得税率は14・1%で、納税額は約百九十万ドル(約一億五千万円)であった。その所得の大部分は株式の配当など過去の投資による利益だった。米国では配当収入にかかる税率が通常の給与所得税より低く、ロムニー氏の税率は米国人の大半の所得税率を下回っている。さらに同氏は同時に1990〜2009年まで20年間、法令に従って所得税を納め、その平均税率は20・2%だったとする監査法人の証明書も公表した。
 これに対しオバマ陣営は声明で、「ロムニー氏のような人たちは、中間層より税率が低い事が再確認された」と批判し、オバマ大統領陣営から求められていた2009年以前の納税申告書を明らかにしなかった事で「資産状況は不透明なままだ」と指摘したのだ。

FRB内部でのツイストオペ停止条件論争

 9月14日のニューヨーク外国為替市場ではドルが幅広く売られ、ユーロに対して4カ月ぶりの安値をつけた。これは、米連邦公開市場委員会(FOMC)が前日、追加緩和を打ち出した事から高利回りだが元本割れの危険もある金融資産、つまりリスク資産への買い意欲が高まったからであった。
 ユーロ/ドルは一時、5月上旬以来の高値となる1・3168ドルまで上昇した。終盤は1%高の1・3124ドル。ユーロ圏の周辺国の国債利回りが低下した事を受けてユーロが買われた。また8月の米小売売上高が予想を上回り2月以来の大幅な伸びとなった事や9月の米ミシガン大消費者信頼感指数が5月以来の高水準となった事も、リスク資産選好の拡大につながったと考えられる。
9月18日、米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁と米ニューヨーク連銀のダドリー総裁はツイストオペが期限切れを迎える年末以降も、米連邦準備理事会(FRB)は積極的な緩和スタンスを躊躇する事なく維持し、また雇用改善に向け、一段の措置を講じる用意があると発言して、雇用市場に有意義な改善の兆候が見られるかを注視する考えを示した。まさにこの点が核心である。アメリカにとって失業率の改善は至上命題だからである。
 しかし買入れ停止条件に関してダドリー総裁は、経済を「正しい方向へ向かわせる一押し」が必要だとし、「経済が一段と弱まれば、さらに(資産買い入れを)行う」と言明する一方、「景気が力強さを増し、より早期に雇用市場の見通しに著しい改善が見られる場合」には、資産買入れを減らすとした。インフレを危惧しているからだ。
 他方、エバンズ総裁は、年末までに著しい雇用改善を示す十分な兆候が見られればそれは意外だとの見方を示し、「こうした状況では、FRBは850億ドルベースの買い入れを継続するだろう」と述べ、既にツイストオペの下で既に月額450億ドルの買い入れを実施しているが、年末のツイストオペ終了後も、FRBは恐らく月額850億ドルの資産買い入れペースを維持する必要があるとの見方を示した。こちらは「いけいけ」派なのだ。
 さらにこの買入れ停止条件をめぐり、ダドリー総裁は失業率の他、雇用者数の伸び、求職断念者の数、就業率、就職率をFRBは注視するとした上でツイストオペが期限切れを迎える年末以降、一段の国債買い入れを行うかどうかについては、費用対効果と雇用の改善状況次第との考えを示し、「時期尚早に緩和措置を解除する理由とはならない」と極めて慎重な姿勢を示した。両者の違いは容易に収まらず、その対立の根は深いのである。
 さらに少数派の意見もある。ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を今年有していれば、前週の追加緩和決定に反対したと述べ、「設備投資や雇用に関する企業の決定を妨げる他の要因があるため、現時点では効果は比較的低い」とし、「このプログラムに高い効果があるとは思わない」との見方を示した。
 フィッシャー総裁は長らく、税制や規制をめぐる不透明感が企業の採用を阻害し、成長加速を妨げているとの立場を取り、減税失効と歳出の自動削減開始が重なる「財政の崖」が迫る中で、金融政策だけで経済の問題を解決する事はできないと主張する。「FRBとして最善を尽くすが、単独では解決できない。単独で対応する事を求められると、抜け出す事のできない極めて難しい状況に陥る事になる」とし、議会にも行動を促している。
 ある意味で、バンカーとして当然の主張ではある。まさに金融は全能ではないからだ。

真の解決策とは何か

 確かに投票権を有する12人のFOMC委員の内1人を除く全員が賛成に回った今回のQE3の決定は、失業率が7%を下回るもしくはインフレ率が3%を超えるリスクが出てくるまで超低金利を継続して、雇用改善が不十分なら今後も債券買入れを行うと表明する点で「いけいけ」派のエバンズ総裁の主張に近いものである。
 そもそも経済政策はダメで金融政策しかないではない。まさに求められているのは、富裕層への所得課税を強化し、所得減税を徹底する等のアメリカ現代社会に見合った根本的な経済・財政政策であるが、大資本家であるロムニー候補がいうような安直な「経済政策」でもない。それにアメリカでは工業生産品額が中国に抜かれたように産業構造の著しい偏りから財政・経済政策がダメになり、打つ手が金融政策しかなくなったのではなかったか。
 それゆえにアメリカが今まさに直面する困難から脱出する真の解決策とは、ジャブジャブとドル紙幣を今まで以上に垂れ流す新しい方法を模索して、誰も考えも及ばなかった「名案」を考えつく事では断じてない。それは、何よりも行詰まり閉塞状況に陥ってしまった現代のアメリカ資本主義社会の根本的な変革をめざしたものでなければならない。
 その萌芽は既にアメリカに芽生えている。1年前、自然発生的ながら「ウォール街を占拠せよ」との呼びかけでアメリカから始まり、全世界的に今も拡大しつつあるオキュパイ運動の中にこそ、アメリカ労働社会の変革を現実化する芽が育つ事とはなるだろう。
 私たちワーカーズもまた、その実践的運動で提起されたように1%の資本家の立場ではなく、99%の労働者・市民の立場に立ち、労働社会を成り立たせている共同労働の原理を基軸として、現代社会の再編成をめざして断固闘っていくものである。  (直木) 案内へ戻る


 「働くこととは・・・過労死に思う」

 新聞の小さな記事の「最低賃金下回る」という見出しに、思わず目が引き付けられました。JRのホームでよく見かける「キヨスク」という売店なら、読者の皆さんもよくご存知と思います。兵庫県福崎町にある「キヨスク福崎店」で働いていた56歳の男性が、最低賃金を下回る報酬しか支払われていなかったのは不当として、提訴に踏み切りました。
 男性が働いていた期間が2010年1月〜2012年3月までで(3月に閉店)、「事業主」として契約していたが、実際は1人で1日10時間以上働いていたので、「労働者」にあたると男性が主張していると、説明されていました。キヨスク側の主張は、「事業主」なら店の運営を任されることになり、「労働者」とは異なるのだから「最低賃金」は関係ない、ということでしょうか。
 訴状によると、男性は売り上げの一部を報酬として受け取る委託契約を「キヨスク」と結び、上記の2年3ヵ月間、同店を運営。しかし、実際は自分1人で1日10時間以上働き、事実上の「労働者」にあたると、「未払い賃金」の支払い総額約660万円の損害賠償を求めています。訴えられているのは、キヨスクの業務を委託する「キヨスクオペレーションサービス福知山」(京都府福知山市)と、キヨスクを経営する「ジェイアール西日本デイリーサービスネット」(尼崎市)で、男性にとっては2つの事業所を相手にしなければならないのです。「結んだのは、委託契約で事実無根」と業務を委託した側からの答弁からも、困難な闘いとなるのは予想できるでしょう。しかし、男性の勇気ある提訴が、キヨスクで働く労働者たちの最低賃金以下の労働からの解放につながるはずです。
 もう一つの記事。6年前突然の一人息子(27歳だった)の死に、泣き寝入りせずに労災認定を勝ち取ったある母親の記事が紹介されていました。息子さんの死を受け止めその後、元教師の母親は、神戸市在住の「過労死を考える家族の会」の会員となり、「過労死防止法兵庫実行委員会」の事務局長を務め、実現に向けて署名活動に取り組まれています。不況を背景に、過労死・過労自死が増え続けており、過労自死は20代、30代の若者が過半数を占めていることからも、どこの家庭で起きてもおかしくない。だからこそ、法律の制定が早急に必要との訴えです。
 防止法は、@過労死はあってはならないことを、国が宣言すること、A過労死をなくすための、国・自治体・事業主の資格を明確にすること、B国は、過労死に関する調査・研究を行なうとともに、総合的な研究を行なうこと、を柱にしています。この防止法を求め、北陸から九州まで多くの方に訴えている母親の西垣迪世さんの言葉で締めくくりたいと思います。
「過労死に倒れた愛すべき命を、この国の働き方を変えるために生かしてやりたい。息子が願った、普通に働き普通に暮らせる社会の実現を願う。若い貴重な働き手を死に追いやることはいかなる理由があろうとも許されない。この国の未来が失われる」 (恵)


 頼れる《中間組織》を育てよう!──対抗勢力の形成に向けて──

 領土紛争やオスプレイの普天間基地配備等で緊迫化するなか、民主・自民の党首選では何とも締まらない政治劇が展開されている。民主党は出来レースで野田首相の再選を決め、自民党も長期政権の反省もどこへやら、候補者だけが張り切っている。これでは橋本「日本維新の会」がクローズアップされるのも無理はない。
 すでに政界は選挙モード。「近く」行われる可能性がある総選挙やその後に見込まれる政界再編を視野に入れた新党づくりと国会議員の離合集散の動きも始まった。私たちとしては「あれか、これか」ではなく、中長期的な展望も含めて既成政治への対抗勢力を育てていく以外にない。(9月25日)

◆大増税時代

 この夏の政治は、脱原発と消費増税政局、それに領土紛争とオスプレイ配備問題で沸騰した。その喧噪をよそに、民主党政権の保守回帰は行き着くところまで進み、バラマキ政治と官僚主導システムが幅をきかせる政治がものの見事に復活した。加えて、民主党と自民党が呼応するかのように保守回帰路線を深め、有権者もメディアが煽る劇場政治を前にして、自由ではあるが孤立した個々人≠ヨと細分化された結果としてか、新たな救世主を求める声が充満している。
 まず消費税騒動から振り返ってみたい。
 野田内閣は「社会保障と税の一体改革」を看板に掲げ、民自公談合政治によってなりふり構わず消費増税法を成立させた。多方面の人々から批判されたように、この消費増税は社会保障の充実を目的としたものではない。それは他の財政支出、たとえば公共事業や軍事費、その他様々な利権と結びついた各省庁ごとの既存の支出を聖域化するものだった。現に、一体改革と称した社会保障改革は「国民会議」に先送りにされた。そのうえ消費増税法附則に、景気対策や防災対策を名目とする財政支出の大盤振る舞いに道を開く文言を滑り込ませた。これは消費増税の目的とされた本則での財政再建を、附則で棚上げするペテンとしかいいようがない代物だ。いってみれば社会保障改革や財政再建は単なる口実、実際には既得権やバラマキ財源を庶民に負担させるもの以外の何物でもなかった。
 現に消費増税を見越した民主党政権の「人からコンクリート」へのなし崩し的軌道修正は続いていた。その象徴だったのが、八ツ場ダム建設再開・整備新幹線・高速道路建設・首都圏環状道路の解禁だ。
 国家財政の私物化は民主党政権に限らない。自民党も消費増税を見込んで10年間で総額200兆円の事業規模を見込む「国土強靱化基本法案」を国会に提出した。消費増税で膨らむ13・5兆円のうち7兆円は国債を減らすとされているが、そのワクを当て込んで毎年5兆円、10年間で50兆円の国費投入を見込んでいる。公明党の10年で100兆円という「防災・減災ニューディール推進基本法案」も同じような類だ。
 民主党政権から自民党・公明党それに各省庁の官僚まで、消費増税で社会保障を充実させようと考えている人などほとんどいない。近づく解散総選挙を前に、余裕ができた財源をどう自分たちの手に取り込むか、これが最大の関心だった。自民党「長老」が、消費増税で民自公談合を後押ししたのは、そうした旧態依然とした政治世界での話なのだ。劇場政治の裏舞台で、政治家と官僚が予算の箇所付けに奔走する姿が目に見えるようだ。「増税は財政規律を失わせる」という、危惧されたことがそのまま現実に起きたというわけだ。
 5月28日に発表した防災対策や国際競争力の強化を謳った「社会資本整備重点計画」でも同じような露骨な姿勢が貫かれている。13年度の各省庁概算要求も同じだ。野田内閣が「日本再生戦略」に基づく「グリーン、ライフ、農林漁業」で各4倍増の要求を公認したこと、それを口実に国交省や厚労省など、そうした要求枠を膨らませて総額100兆円を超える概算要求となった。
 消費増税法成立を受けて早くも次の引き上げに向けたアドバルーンが上げられている。今度は年金改革を名目として消費税を10%からさらに6・2%引き上げるというものだ。政官業利権ムラは、財政支出を抑えるつもりなどない。負担は庶民へ、消費税引き上げへ、だ。各種控除の削減などで膨れあがる庶民の負担増も含め、野田内閣のもとで大増税時代はすでに始まっているのだ。

◆官僚主導と保守回帰

 「政治主導」も同じだ。民主党政権誕生のバックボーンとなり、また民主党新政権の「一丁目一番地」といわれたあの「政治主導」。
 野田内閣は、鳩山・菅両内閣での失敗≠反省して、開き直ったかのように「官僚依存」を深めた。それは内閣の意志決定、財務省主導の消費増税による財政再建、事務次官会議の復活、官僚による人事の壟断の容認、「人からコンクリート」への回帰による官僚による箇所付け(裁量権)の容認、前号でも取り上げた「増税による東北復活」ならぬ「ゼネコン復活」等々、あらゆる場面に拡がっている。
 目立つのは「政治主導」の空洞化だけではない。民主・自民の「保守回帰」だ。
 これは民主党や自民党の綱領策定(改定)論議で浮き彫りになった。国家主義、家庭責任の強化、集団安全保障、武器援助、戦後補償、等々。それに領土紛争のなかで露骨に復活したナショナリズムなどだ。橋下維新の会の「八策」も同様の傾向が際立つ。要は「保守回帰」、あるいは「復古主義」だ。
 まず民主党。8月8日の両院議員総会で提示した綱領素案では、当たり障りない条項に加え、天皇制の護持や市場重視の姿勢を明文化した。
 対する自民党。4月27日に発表した綱領案だ。憲法改定、天皇の元首化、国旗・国歌の明記と国民の尊重義務、自衛隊の国防軍化、秩序重視、国家緊急権(戒厳令)の明記、憲法改正の要件緩和、自助努力、家庭責任…………。
 橋下「維新八策」。首相公選制、参院廃止、議員定数240人への削減、公務員の身分保障の廃止、教育委員会制度の廃止、生活保護の厳格化、憲法改定と改定要件の緩和、などだ。
 頭がクラクラするしかないが、総じて自民党時代への逆戻り、あるいはそれ以上のタカ派的な国家至上主義が目につく。
 民主党の綱領素案は、寄り合い所帯の実情からか抽象的な表現が多くを占めているが、問題は野田内閣のもとで進む実質的な国家・軍事優先姿勢を始めとする保守回帰路線だ。すでに野田内閣のもとで外国軍への軍事技術援助や海外派兵、宇宙や原子力の軍事利用にも道を開く法改訂や政策決定を行っている。野田内閣で踏み込んだ民自公談合政治も念頭に置かれているだろう。保守回帰は野田内閣での既定路線になっているのだ。

◆「孤立した自由人」?

 民主党と自民党の代表選びでは、両党とも不人気の代表を取っ替えて総選挙を迎えたいとの議員心理が劇場を賑わした。本の表紙を取り変えれば支持率が上向くという感覚自体、有権者をなめたものだが、そうした風潮が拡がっているのもまた現実だろう。旧来型利権政治に「ノー」を突きつけて政権交代を実現した、と思った有権者からみれば、自分たちとの約束をものの見事に裏切った民主党政権への幻滅感は広範に拡がっている。その間隙をぬって中央政界に進出しようとする橋下「維新の会」は、テレビのバラエティー番組で培ったワンフレーズ話法を駆使し、攻撃型の極論や物議を醸すきわどい発言で世間の耳目を集めようとパフォーマンスを繰り返している。次の総選挙での追い風を受けたい現職国会議員や地方議員も含めて、有象無象がその「維新の会」になびく有様だ。政治世界で救世主を求めるかのような有権者、それを助長するメディアによるヒーロー待望論や「あれがダメならこれ」式の二者択一政治の劇場政治が蔓延しているのが実情だ。
 その舞台となったのは、小泉政権での「刺客選挙」や民主党の「マニフェスト選挙」、それにメディア受けした「事業仕分け」などだ。劇場政治と並行するかのように最近の選挙ではその時々の気分で投票先を変えるいわゆる「浮動票層」が増えている。それだけ既成政党のふがいなさが拡がっている結果であり、また個々人が業界団体や労組など所属組織の意向にとらわれない自由な判断で投票するようになったことの結果でもある。
 あるいは中間組織を介さない個々人への直接給付という、民主党政権による統治システムの導入も影響したのかもしれない。子ども手当や農家の個別補償などだ。それまでの自民党的統治システムは、業界団体や農協、自治体など、中間組織を介して給付するシステムだった。そうしたシステム転換の動向は、それまでの中間組織を介した国との繋がりから、有権者と政治のダイレクトな関係に変える作用をもたらしたと推察できる。これは功罪相半ばするものだが、政治的な意思表示がそれだけ選挙の機会に限られることになり、日常的な政治参加が狭めらる結果ももたらした。
 さらにネット社会の拡がりの影響も大きなものだった。いまでは中間組織抜きで多くの人が繋がっていて、これまであまり政治の舞台に参加してこなかった人々にとって、政治的意思表示を可能とする空間を創り出している。

◆頼れる《中間組織》を育てよう

 中間組織を介さない直接的な関係や直接的な個人行動の拡がりは、民主主義の前進にとって不可欠な通過点だといえる。と同時に、本来は目標達成の拠点でもある中間組織の形骸化を招き、ひいては日常的な政治参加の道を狭めるという,負の結果をもたらしている。
 中間組織の形骸化を指摘する旧来型の見方では、それは業界や農協、労組、地域団体などだ。私たちの場合、それは各種の自立した労働組合や市民団体・NPOなどであり、その相対的無力化が問題となる。とりわけ労働組合の存在力と行動力の形骸化は、いまさら指摘するまでもない。電力会社を代弁するかのように原発推進の発言を繰り返す電力総連に象徴されるように、連合労組は労働者の立場に立った対抗勢力としての内実は始めから無い。地域ユニオンや雇用形態別ユニオンなど一部の独立労組などはがんばっているものの、いまだ大きな勢力を築くには至っていない。
 いま行動力を発揮しているのは、脱原発などを掲げた生協や福祉サークルなどで活躍している少数の自治的グループだ。ただ現状ではそうした行動は脱原発や環境問題などに限られ、政治システムや税財政システムへの異議申し立てには拡がっていない。
 とはいえ、そうしたグループが提起した直接行動での政治参加の道は、既成政治を打ち破る突破口を開きつつあり、現にそうした行動には独立系労組や市民団体の多くが当然のように結集している。さらに運動を拡大していくには、少数であっても既成政治に対抗しようとする中間組織、独立、自立したグループの役割は非常に大きい。対抗運動を日常化できるからだ。
 そうした中間組織は簡単には形成されない。運動づくりや組織づくりは本当に大変だ。が、そうした大変さにぶつかっていく覚悟とエネルギーなしに、強固な既存システムを突き崩すことはできない。既存システムへの異議申し立てには,自律的な中間組織が不可欠である。とりわけ各種の自立した労働組合の役割はきわめて大きいはずだ。(廣) 案内へ戻る


 コラムの窓・・・「松川地熱発電所」

 自然エネルギーの活用、日本は自前のエネルギー源を持たないから原発だ、核燃料サイクルだといわれてきましたが、そんなことはありません。地球上どこでも太陽のエネルギーが降り注ぎ、風が吹く。川が流れ、海にも流れがある。これらのエネルギーが活用できれば、それこそ尖閣諸島下にあるとされる石油の奪い合いも無意味になるのです。
 選り取り見取りとまではいかないけれど、それぞれの地域に適したエネルギーを自然から取り出す(いや、頂くというべきか)ことは容易くはないけれど、可能だと思います。原発20基分の潜在的可能性と称される、今は総電力量の0・3%に過ぎない地熱発電は前途洋洋のようです。8月下旬に青森まで出かけたところ、岩手県にある地熱発電を見学できる機会があり、しっかり見てきました。
 東北水力地熱株式会社の松川地熱発電所は岩手県八幡平市にあり、商業用地熱発電としては日本初のもので、出力は23500キロワットです。ちなみに自家用も含め全国で18地点、約535000キロワットという現状です。見学で入手したパンフレットには、次のような説明があります。
「火山地帯の地下数キロメートルから十数キロメートルには、1000度にものぼるマグマ溜まりが存在します。そのマグマから伝わる熱を地熱と呼びます。マグマから伝わった地熱が地下水を加熱して、高い圧力をもった熱水や蒸気を作り出します」
 十和田八幡平国立公園内の谷間にひっそりと、その発電所はあります。最も目立つ構造物は冷却塔で、敷地にはパイプが走り、見学者は発電棟の中に入り、タービンや発電機も含めすべてを見ることができます。危ないということでは、一般に工場内に足を踏み入れるところとかわりません。硫黄のにおいと蒸気の熱、原子力発電とは対極にあるものでしょう。
 直径が45メートル、高さが46メートルある自然通風式の冷却塔の前まで行くと、滝のように水が流れ落ちています。上部からは白い蒸気が出ているのですが、復水器から来た温水は流れ落ちる間に熱を逃がし、再び冷却水として利用されるようになっています。
 この施設には、普段は一人の作業員しかいないということで、同社が稼働させているもうひとつの地熱発電所とともに、遠方監視制御されています。国立公園内にあるので、「冷却用水の水質を定期的に測定するなど、自然環境の保全・調和には細心の注意を払」っているそうですが、建設後は原料もいらないのだから経済的に有利な発電だと思います。
 しかし、実際の地熱発電はコストでも苦戦しています。松川そうですが、国立公園内だといろいろな制限があり、許認可に必要な労力が半端じゃないそうです。温泉地であれば、泉源を枯らしてしまうのではという不安から、建設に反対されることが多いようです。しかし、発電後の温水を温泉として利用することも可能だし、地域暖房や温水プールにも利用できます。工夫次第で可能性は広がりそうです。
 さて、この地熱発電ですが、「週刊金曜日」が9月7日号から3週続けて連載しています。少し紹介すると、アイスランドにはサッカー場より大きな、広さ5000平方メートルの世界最大の露天風呂が地熱発電所に併設されています。大分県にある杉乃井ホテルは自前の地熱発電を持っていて、使用電力の半分をまかなっているそうです。
 地熱であれ風力であれ、太陽光等々であれいずれも万能ではないし、欠点もあると思います。だからダメというのではなく、地域的エネルギーを獲得することの楽しさを夢見たいものです。 (晴)


 日本政府を側面援助する日本共産党の醜悪な姿

「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」

 9月11日、日本共産党は「しんぶん赤旗」第5面をほとんど使って、「領土問題 日本共産党はこう考えます」のQ&A形式の分かりやすい記事を掲載した。
 今ここでは紙面の関係から尖閣問題だけに絞るが、そこでは何と「Q尖閣列島の領有権は? A歴史的にも国際法上も日本」だとして、「Q日本政府はどんな対応? A本腰入れ正当性主張せず」と過去の日本政府の対応を非難した。
 その上で「領土問題はあくまでも歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって解決を図ることが大切」また「緊張を激化させるような行動は問題の解決にはならない」との立場から、日本共産党は歴史的経緯を全く無視した事を主張して、一人悦に入っているように見える。
 この日以降、9月20日には「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」の提言を日本政府に手交し、翌21日には中国大使館を訪ねて程永華駐日中国大使に向かって「尖閣諸島に対する日本の領有権の正当性を主張するとともに、両国間に領土に関する紛争問題が存在するという立場に立って、冷静で理性的な外交交渉を通じて問題の解決をはかることが必要だ」と説教して来たのだから、この無駄に掛ける精力には驚かされるではないか。
 確かに日本政府は、こんな共産党のような態度で大胆にも中国大使館に押しかける事となど出来はしなかったであろう。まさに共産党こそは政府の別働隊ではないか。
 共産党は、盛んに尖閣諸島問題は「国際法上の通りにのっとり」「外交交渉で解決を」だの、「緊張を激化させるような行動」だの、「物理的対応、軍事的対応の自制を」だのといったご高説を日本政府や中国大使に垂れてすまし顔である。
 日本政府には、「尖閣諸島は日本が戦争で不当に奪取した中国の領域には入っておらず、中国側の主張は成り立たない。日本の領有は、侵略主義、領土拡張主義とは性格が全く異なる、正当な行為であった」だの、「それ(日本政府の問題点)は、『領土問題は存在しない』という立場を繰り返すだけで、中国との外交交渉によって、尖閣諸島の領有の正当性を理を尽くして主張する努力を避け続けてきたことである」だのと持ち上げたりけなしたりの忙しさである。しかし全ては歴史的経緯を無視した戯言なのである。
 共産党の尖閣列島の領有権についての正当性に関する国際法上の論拠は、「無主の地」を領有の意思を持って占有する「先占」にあたるという事だけだ。

『「尖閣」列島――釣魚諸島の史的解明』

 ここでは一点だけはっきりさせておこう。かって日本共産党の党員歴史家であった井上清氏は、日本共産党の議会主義的な堕落に抗議し脱党して、中国派を政治的な立場としていた。その井上氏に1972年10月現代評論社から出版した『「尖閣」列島――釣魚諸島の史的解明』がある。この本は釣魚諸島問題と沖縄の歴史との2部構成である。付け加えておけば、絶版であった本書は、1996年10月第三書館から復刊されている。
 また現在、釣魚諸島問題に関する第1部の全文はインターネット上に公開されている。
 一部の章の題目だけでも紹介しておくと、
 1なぜ釣魚諸島問題を再論するか
 2日本政府などは故意に歴史を無視している
 3釣魚諸島は明の時代から中国領として知られている
 4清代の記録も中国領と確認している
 5日本の先覚者も中国領と明記している
 6「無主地先占の法理」を反駁する
 7琉球人と釣魚諸島との関係は浅かった
 8いわゆる「尖閣列島」は島名も区域も一定していない
 日本共産党が科学を信奉しているというのなら、この本の存在を明らかにした上で、なおかつ本書の根底的な批判を成し遂げる事で、自らの主張の正しさを証明しなければならないのである。なぜなら現在までの中国の主張は、ほとんど全てこの本にある主張が論拠となっているからである。
 井上清氏は、この本の結論として中国が歴史的に尖閣諸島を領有していたとし、日本の尖閣諸島領有は国際法的に無効だと主張している。また1997年には、井上氏は中国社会科学院から名誉博士号を授与された。この本が中国語に翻訳されていると判断される。
 こうした歴史的な経緯ある。それだからこそ「尖閣列島は紛争地」なのである。それゆえ周恩来・ケ小平は、尖閣列島の領有権を「棚上げ」してきたのである。

「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」

 また解雇された外務省職員の佐藤優氏の的確な暴露がある。ブログスから引用する。

 1997年11月11日、東京で署名され、1998年4月30日、国会で承認され、2000年6月1日に効力が発生した日中漁業協定(正式名称「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」)という条約がある。両国の排他的経済水域(EEZ)におけるルールを定めたものだ。
 この条約の第6条(b)に、「北緯27度以南の東海の協定水域及び東海より南の東経135度30分以西の水域(南海における中華人民共和国の排他的経済水域を除く。)」という規定がある。まさに尖閣諸島が含まれる水域である。日中漁業協定本文はこの水域に関する規定を何も定めていない。
 ただし、この条約には「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定第6条(b)の水域に関する書簡」という文書が付属している。全文を正確に引用しておく。
 「本大臣は、本日署名された日本国と中華人民共和国との間の協定に言及するとともに、次のとおり申し述べる光栄を有します。
 日本国政府は、日中両国が同協定第6条(b)の水域における海洋生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを確保するために協力関係にあることを前提として、中国国民に対して、当該水域において、漁業に関する自国の関係法令を適用しないとの意向を有している。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向かって敬意を表します。
    1997年11月11日東京で        日本国外務大臣小渕恵三

日本国駐在中華人民共和国特命全権大使 徐敦信閣下 」
(中略)
 中国の挑発に対して、日本政府は尖閣諸島の平穏を維持するために中国政府と外交交渉を行うべきだ。「領土問題は存在しないので、中国側と交渉する必要がない」というのは、もはや面倒な仕事から逃れるための外務官僚の口実に過ぎない。外務省は、小渕書簡の撤回も視野に入れ、毅然とした態度で中国と交渉して欲しい。

 まさに外務省の元職員だからこそ出来た目からウロコの的確な暴露ではないか。

共産党は鈍感な政党になりはてた

 だから昨年秋に前原が条約で取り締まらない事になっている漁船を強制的に拿捕し、今年の4月に石原が尖閣の国有化を打ち出して、この両国での「棚上げ」に対し挑発してきたのだ。日本共産党がまともな政党だとするなら、何故今尖閣列島なのかを世界政治の中で解明して、前原や石原の戦争挑発を暴露する闘いを展開していかなければならない。
 こうした政治判断を思いつかずに日本政府と中国大使にのこのこ出かけて説教する事しかなしえないほど、共産党は政治に鈍感な政党なってしまって、現下の政治情勢を切り開く事が出来ないでいる。まさに共産党の醜態はここに極まったといわざるをえない。(猪) 案内へ戻る


読者からの手紙
 中国を理解するための必読書の紹介

 現在マスコミでは、毎日のように尖閣問題での中国の動きを詳細に報道しています。この動きを惹起したのが、野田内閣の尖閣列島の国有化である事は間違いのない事です。
 それは、実力者の周恩来やケ小平が歴代自民党政権との間で「棚上げ」にしていた尖閣列島の領有権を石原の挑発に乗り一方的に破棄し、さらには胡錦涛自らが野田総理に「国有化はしないように」と直接に頼んだにもかかわらず、公然と無視してその数日後に野田総理は閣議決定で尖閣列島を国有化したからです。
 この事で胡錦涛の面子は丸つぶれ。胡錦涛にとって国家主席の面子は守りきらねばならないものなのです。彼は、「バルネラビリティの原理」に支配されている中国人として、当然の事として猛然と反撃を開始しました。当然の事ながら、国内でもこれにつけ込んで胡錦涛を追及する反胡錦涛派の「反日デモ」が猖獗を極めたのです。
 中国人は「他人につけ込まれやすいところは見せてはいけない=バルネラビリティ」を行動原理とし、また直接他人を名指してその人を攻撃せずに全く別の事を批判するのです。これを「指桑罵槐(しそうばかい)」、桑の木を指してえんじゅの木を罵るといいます。
 この原則によると中国における外交問題は、全て中国内部の権力闘争の手段であるという視点が生み出されます。この事から一時的に次期国家主席になる予定の習近平の動静が分からなくなったのは、「反日デモ」と関係があるとの見方が出てくるのです。私は胡錦涛側が、今後の中日関係について習近平を中日戦争をするのかどうかと「査問」していたと考えています。この間、公式的には両者は互いに弱みを見せてはならず、互いに意地を張合っていなければなりません。それも共産党大会まで。既に水面下では、中国は様々なルートを使っての事態収拾に動き始めています。大会が終われば、セレモニーは終了して遠からず「反日」姿勢は弱まっていく事でしょう。
 それにしても言い出しっぺの石原の沈黙は破廉恥です。さらに七光りの石原伸晃にいたっては、自民党総裁選挙の最中に「中国は攻めてこない。誰も住んでいないから」また「東京都に売れば(問題にならなくて)よかった」と失言し、政治的判断力の全くの欠如が露呈して総裁になる資格がないとまで酷評されました。
 私たちが戦争をしたくないように、中国指導部もアメリカの意図に乗った戦争をする事はできれば避けたいのですから。その意味で中国指導部は、前原や石原の見え透いた挑発の手口に乗るほど愚かではありません。マスコミにこの事態を招いた前原誠司・石原慎太郎批判がない事も、呆れ果てた対応だと言わざるを得ません。
 私は、今回の尖閣列島問題と「反日デモ」を理解する上で非常に参考になる必読書として、岡田英弘氏の『この厄介な国、中国』と『厄介な隣人、中国人』(共にWAC)2冊を紹介いたします。是非一読をお勧めいたします。             (米原)


 なんでも紹介・・・ 韓国ドラマに夢中。

 なぜなら、国ができるあがるまでの課程や人々のコミュニティー文化にふれることができます。そして時には王の非難もタブー扱いされることなく、歴史を忠実に再現しようと作り手の気持ちが伝わってきます。そのことをヒントに自分自身が今後の理想的な未来を描く一手段とできればと考えています。感動した韓国ドラマの紹介します。

『朱蒙』 高句麗誕生
 紀元八年、漢の侵略により古朝鮮国が滅亡する。国を失った流民たちを率いて漢に抵抗する民族の英雄ヘモス(解慕漱)は漢軍との闘いで重傷を負い、河伯(ハベク)族の娘ユファ(柳花)に救われる。やがてふたりは恋に落ち、ユファはヘモスの子を身ごもるが、それを知る間もなくヘモスは漢軍の矢に倒れてしまう。愛する人を失った悲しみの中、ユファはヘモスの親友で扶余(プヨ)の太子クムワ(金蛙)に保護されて男児を出産し、チュモン(朱蒙)と名付ける。心ひそかにユファを思うクムワは彼女を側室に迎え、友の忘れ形見チュモンにあきれながら、ソソノはなぜか彼のことが心に残る。その後、兄たちの策略でついに宮中を追放されてしまったチュモンは、実父ヘモスであるとも知らず偶然出会った盲目の男性から武芸を学び、強く生まれ変わっていく。

『鉄の王キム・スロ』
 紀元一世紀の初め、朝鮮半島の北部ではドラマ『朱蒙』の主人公チュモンが建てた高 句麗が、『風の国』の主人公ムヒュルの代に入って急速に強大な国に発展していったころ朝鮮半島の南部ではまだ小さな部族がバラバラに存在し、互いに牽制しあっていた。そんな小部族をまとめ上げ、優秀な鉄器製造技術と海洋貿易で名を馳せる国家、伽耶(カヤ)の初代王になったのがキム・スロだ。
 このドラマ『鉄の王キム・スロ』は王になると予言されたキム・スロが、数々の試練を乗り越えて王に成長していく姿を描いていく。伽耶の中心は日本に向いた海に面していて、古代の日本とのつながりも深かったと考えられている。遺跡からは日本人が居住していたと思われる痕跡も発見されており、もしかするとキム・スロ自身も日本人と関係があったかもしれない。だが、実際の伽耶の歴史はまだわかっていない面が多い。このドラマはそれを逆手にとって、スロの人間的成長を軸に、激しい権力闘争あり、出生の秘密あり、哀切なロマンスありの想像力あふれたエンタメ作品に作りあげた。
 
『善徳女王』
 舞台となったのは、六世紀後半の三国時代の後半、新羅が伽耶を滅亡させるというあたりだ。当時、半島にはいくつもの部族が存在し、それらを連合した四つの国が互いに覇権を争っていた。北部には高句麗、南西部には百済、南東部には新羅、南部には伽耶。この伽耶をはずした強国三国が互いにけん制しあったこの時代を、三国時代と呼んだ。「太王四神記」の舞台となった四世紀末〜五世紀に掛けては、高句麗が現在の中国までその領土を拡げ、一番の強大国として隣国を脅かしたが、やがて新羅が台頭し始め、最初に伽耶を滅亡させた。その後、唐と連合して百済、高句麗と破って、新羅が朝鮮半島を統一した。

そもそも新羅は、紀元前五十七年、卵から生まれたとされる赫居世(ヒョッコセイ)が建国したという神話がある。新羅の神話は「昔、六つの村があった」というフレーズから始まっている。首都を徐羅伐(ソラボル)と呼び、六つの村の村長たち=貴族による和白という評議会にかけて合議で政治を行っていた。当時の新羅の王権はそれほど力があったわけではない。こうした背景の中、王の支配を地方にまで行き届かせるため、二十三代王の法興の時代には、律令の頒布と仏教が公認され、次の真興王の時代には、花郎制度が整備された。善徳女王の父、真平王の祖父だ!
ちょうど、同じ時代に『薯童謠(ソドンヨ)』というドラマがある。これは、百済の王の波乱の生涯と、新羅の王女の悲恋物語である。また三国統一を阻止、負けてしまったけれど最後まで勇敢に戦った『ケベク』将軍の物語もある。

 天命王女ドラマ「ソドンヨ」に登場する姫はトンマン王女(徳曼公主=後の善徳女王)の妹だ。もっとも、「ソドンヨ」に姉のチョンミョン王女(天命公主)は登場するが、トンマン王女は出てこない。
『薯童謠(ソドンヨ)』『淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)』『大祚榮(テジョヨン)』などのドラマを併せて見れば、当時のことがよりはっきりと分かるだろう。

そして朝鮮王朝になってからのドラマ『トンイ』『王女の男』も楽しんでいます。(弥生)案内へ戻る 


 色鉛筆・・・「オスプレイはいらないよ!」

@自衛隊や米軍が市民の前に出てくる。
 昨年3月11日以降、自衛隊や米軍の迷彩服や戦闘機などが私たちの前にひんぱんに登場するようになった。彼らによる救助や捜索が行われたことは事実だけれども、それは何も迷彩服を着た兵士でなくともやれるはずだ。
 8月に行なわれた「第65回清水みなと祭り」に、海上自衛隊の護衛艦『ひゅうが(ヘリコプター搭載艦)』と『やまゆき』が入港し、2日間で約5千人の市民が艦内見学や体験航海などに参加した。
 9月2日、静岡県が行なった総合防災訓練では運転停止中の浜岡原発が、津波で全交流電源がが喪失し冷却機能が失われたとして放射能漏れをチェックする訓練として、陸上自衛隊相馬駐屯地(群馬県)の化学防護小隊と共に、キャンプ座間(神奈川県)から初めて米陸軍が参加した。静岡県の川勝平太知事が、浜岡原発で重大事故が起きた際、米軍の出動を要請するとジョン・ルース駐日大使に伝え、この日の訓練につながった。
 世界的な規模の米軍再編の波にあおられ強化されてゆく自衛隊。そして、より強固な日米軍の協力態勢作り。それが今、市民の目の前でひんぱんにくりひろげられている。

Aまた実弾演習、そしてオスプレイも。
 8月17日、防衛省南関東防衛局は沖縄駐留米軍海兵隊が、東富士演習場で155ミリりゅう弾砲実弾射撃訓練(104訓練)を9月9日から20日まで行なうと発表した。これで東富士では11回目の実弾射撃訓練となる。
 かって沖縄本島中部の生活道路・県道104号線を閉鎖して行なっていたこの訓練を、1995年の県民大会での抗議を受け、負担軽減措置として翌年から、北海道・宮城・山梨・静岡・大分各県への分散移転実施がされてきた。実際は負担軽減とは名ばかりで、拡大強化以外の何ものでもない。
 それに先立つ6月13日、オスプレイ沖縄配備に向けた米海兵隊の環境審査の内容が防衛省から発表され、全国6ルートでの低空飛行訓練(年間550回)のため、岩国とキャンプ富士を月2〜3回程度利用と明記されるなど、オスプレイが日本全土を傍若無人に飛び回ることが明らかになった。
 これに抗議して、9月8日御殿場市で、県平和・国民運動センターや市民団体ら約150人余りが「(緊急)沖縄県道104号線越え実弾射撃訓練の東富士演習場での実施と、オスプレイ派遣に反対する県民集会 」とデモ行進を行なった。
 これまで日本政府は「米軍機の基地内の移動である」として、低空飛行訓練ルートの存在を否定してきた。けれど今回のオスプレイ訓練ルートが明らかになる以前から、この低空飛行訓練ルートでの事故はずっとあった。
 1995年にリムピース(ウェブサイト「追跡!在日米軍」)が四国・早明浦ダムの米軍機墜落事故についての米軍事故報告書を分析。全国に低空飛行訓練ルートが8本あり、地上の標的として、ダムサイトや小学校(北海道)、漁港や灯台(釜石)などを設定して、低空飛行訓練を行なっていることを発見している。その爆音は、野外の馬が驚いて骨折する程に激しいことを証明している。そして、数多く発生した被害の補償は、日本政府が私たちの「税金」で支払っている。

Bオスプレイはいらない!
 1959年6月30日、米軍ジェット戦闘機が沖縄・宮森小学校に墜落し、18名の子どもの命を奪い、200余名の子ども・市民が傷を負い、後遺症に苦しんだ。その後も、米軍機の墜落によりたくさんの命・生活が奪われてきている。沖縄の人々の、その恐怖や怒りは体中にしみ込んで忘れ去ることは出来ない。
 「日米安保条約」「日米地位協定」「抑止力の強化」等など、どんな根拠・理由づけがあろうとも、人々の命と平和な暮らしを守るために、「いかなる軍用機も飛ぶな!」「オスプレイも基地も軍備をいらない!」と言う声を上げていこう。(澄)


編集あれこれ
 前号は12面で多彩な紙面でした。1面は、混乱極める民・自の政治 資本主義の反動としての『日本維新の会』と題する記事でした。橋下徹大阪市長が党首の日本維新の会が発足しました。橋下は、大阪市長として公務員労働者への攻撃を強めています。賃金の切り下げや日の丸君が代の押し付けや、思想・信条の侵害になるアンケートの強制等ひどいものです。一方、民主党・自民党・公明党等既成は、消費税増税法案を通すなどこれもひどいものです。こうした状況をなんとか打開しなくてはなりません。
 2面は、オスプレイ配備に反対する沖縄からの記事です。沖縄県民集会に10万3千人も結集したとのこと、仲井真知事が集会に欠席したことは良くないと思います。オスプレイの配備に反対するため、多くの力が必要です。
 3・4面は、第19回全国市民オンブズマン弘前大会の報告記事でした。原発事故での情報隠しや、秘密保全法にみられるさらなる情報隠しの動き、地方自治法改悪による「政務調査費」から「政務活動費」への名称変更、これで地方議員の無駄なお手当が増加します。こうした動きに、反対していかなくてはなりません。
 6・7面は、被災地復興のデタラメと題する記事でした。復興予算の多くが他に使われているとのこと、こうした動きをやめさせるために多くのグループと連携していかなくてはなりません。
 10面は、北海道旅行記でした。稚内の風力発電、太陽光発電と合わせてこの地の90%が自然エネルギーとのこと、危険な原発なくてもやっていけると思います。
 その他常設の、コラムの窓や色鉛筆、また読者からの手紙、本の紹介などいい内容の記事がそろいました。 (河野)
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