ワーカーズ478号    2012/12/15     案内へ戻る
迫る衆議院選挙投票日
三党合意派、右翼反動派を落選させよう


●大衆課税に邁進してきた民主党、自民党、公明党に鉄槌を
 民主党政府の3年間は、自民党政治への回帰以外の何物でもなかった。「政治主導」「官僚主導の打破」「米国追随からの脱却」「コンクリートから人へ」等々、すべては投げ捨てられ残されたのは「消費税増税」だけであったと言っても過言ではない。 民主党は、旧来の自民党の政治路線にすっかり横滑りしてしまったのである。しかし、その結果「保守支配」が盤石になったのであろうか?
 そうとはかぎらない。東日本大震災対応、原発事故問題、オスプレイをはじめとする米軍基地問題等々、むしろ国民の国家や政治に対する不信や不満は高まりつつある。脱原発の大きな国民的うねりや沖縄をはじめとする反基地闘争、消費税に対する反発も依然大きい。他方、日本経団連に代表される大独占支配階級は、3年前に喪失した彼らの確固たる政治代表部をいまだに見いだしかねている。

●安倍自民党、維新の会の危険な右旋回
 民主党が「自民党化」するに及んで、本家自民党はますます右へと路線を取りつつある。そして、最右翼である石原維新の会に接近しつつあるように見える。
 実際、新自由主義を信奉しナショナリストで改憲=再軍備派という面では彼らの距離はたいへん近い。彼らは「自己責任」「自助」を乱暴に振り回し、弱者や働く者の権利を理解せず、大資本や富者の利益の露骨な代弁者となっている。
 さらに彼らには過去の日本植民地主義の反省がかけらもなく、アジアの政治状況を理解できず時代錯誤の妄想にとりつかれた輩である。安倍自民党総裁の「靖国参拝」発言はその最たるものである。中国を「シナ」と呼び捨てる石原代表も「尖閣紛争」の危険な仕掛け人だ。彼らの政治進出を許せば、アジア・極東の政治バランスに最悪の影響を与える恐れがある。

●われわれの選択
 今回の選挙において、われわれは以下の立場の勢力・個人を支持する。
 ★脱原発を通じて、新しいエネルギー生産と新しい地域型経済の移行に賛同し推進する。★TPPに反対し、地産地消に基づき農業の再生を目指す。★消費税増税を阻止し、法人税の引き上げ、富裕者への累進課税を求める。★公共投資等の大資本中心財政を転換し、最低生活保障制度、年金制度を守る。★アジア中心の相互安全保障体制を展望し、日米安保条約の廃棄を目指す。★被災地復興を大資本の独壇場とさせず、非資本としての協同組合やNPOなど、協同の経済の推進を目指す。
 労働者・市民はこれらを掲げる勢力を支持しよう。民・自・公三党合意派及び維新派、そしてそれらに類似した諸党派を一人でも多く落選させるべく投票しよう。(阿部文明)


嵐のなかの「もんじゅを廃炉へ!」全国集会に800名の参加者

 衆院選最中の12月8日、時折嵐が吹き荒れ、JRも一時停止する悪条件を突いて、「もんじゅを廃炉へ!」全国集会が開催されました。何しろ、発言予定の方が金沢で足止めにあい来れなくなったし、参加者が無事に帰れるように集会も早めに切り上げたほどでした。
 朝7時にバスで西宮を出発、敦賀近くで雨になったので、屋外集会は大変だなと覚悟を決めたのですが、午前11時からのもんじゅを臨む白木海岸現地での抗議行動は何とか小雨と風だけで無事終了しました。もんじゅへと続くゲート前で、別紙のような抗議要請文を読み上げ、日本原子力研究開発機構側に手渡されました。
 その際、この文書がどの様に取り扱われるか聞いたところ、「回覧する」という回答で、内容を検討するつもりもなく、ただ受け取ったというだけだということが丸分かりでした。かつての〝ウソつき動燃〟の成れの果て、原研機構のお役人たちは相変わらず税金を浪費するために、どこまでももんじゅに寄生し続けるつもりなのでしょう。
 午後の敦賀市内での屋内全国集会のころには時折、横殴りの雪が降るようになっていました。そんななかでも、集会終了後敦賀駅までデモで行くという元気なグループもありましたが、比較的高い年齢層の私たちのグループはバスの都合もあり帰路につき、夜8時前に西宮に帰り着きました。西宮では雨も降らなかったようで、日本海の荒波の寒々しさとは大違い。郵便配達も大変だろうなと、身につまされる思いでした。
 さて、原子力資料情報室の伴英幸さんの指摘によると、もんじゅは建設完了からすでに20年、1度も本格稼働することなく機器・施設の老朽化が進んでいます。2010年試験運転再開前後で、警報発報900件、ナトリウム漏えい検出器の故障(4月26日)、ナトリウム出口配管異常高温(5月8日)、制御棒操作ミス(5月10日)、データ伝送系異常(5月11日)、そして8月26日、3トンを超える重量の炉内中継装置落下事故でまたしても致命傷を負いました。
 日々5500万円の税金浪費ですが、これは冷却材のナトリウムが配管内で固まらないように温め続けるための費用です。ナトリウムは1気圧で融点が約98度、沸点が約883度、つまり摂氏98度から883度まで液体なのです。それで、水より冷却剤としての能力が高いのですが、原子炉停止中は200度程度で維持するため、動いてなくても200度まで温め続けなければならないのです。
 核燃阻止一万人訴訟原告の佐原若子さんによると、1981年から2011年までに六ヶ所村が受け取った電源3法交付金が415億9500万円に上るということです。その結果、村民の平均所得は1364万円(08年)となり、青森県民の平均所得352万4千円(全国46位)とは大きくかけ離れています。
 施設面では、再処理工場建設費は当初予算7600億円が2兆1930億円まで膨らみ、バックエンド(工場の廃止)費用は19兆円です。配管総延長1500キロメートル、不良溶接個所291箇所のペコぺコのステンレスの燃料プール、その3000トンプールはほぼ満杯状態、ということです。
 核燃料サイクル、使用済み核燃料再処理工場、高速増殖炉原型炉もんじゅ、これら見果てぬ夢は今や悪夢というほかありません。今年の全国集会は、今は亡き「原子力発電に反対する福井県民会議」事務局長にして「もんじゅ訴訟」原告団事務局長の小木曽美和子さんの遺志を継ぎ、もんじゅの廃炉まで闘い続けることを誓うものでした。 (晴)案内へ戻る


沖縄通信NO.30「衆院選・沖縄選挙区」

 今回衆院選は自民党が単独過半数を確保すると言われているが、今号がみなさんの手元に届くころには、衆院選の結果が出ていると思われる。
 オスプレイの本格的飛行訓練や米兵士の凶悪犯罪多発で揺れ動いている沖縄。その沖縄の選挙情勢を報告する。
 沖縄選挙区には国政選挙参加以降、最多となる19人が立候補した。沖縄1区には4人、2区は4人、3区は6人、4区は5人である。政党別にみると、民主2人、自民4人、社民1人、共産3人、国民新1人、日本未来1人、日本維新4人、幸福実現1人、無所属2人となっている。
 なぜこんなにも立候補者が増えたのか?政権党・民主党の分裂騒ぎ、橋下の維新の会の国政選挙への参加が、ここ沖縄選挙区でも顕著に現れた。
 前回衆院選で民主党で当選した瑞慶覧長敏氏と玉城デニー氏が離党。それに対して、民主党沖縄県連が離党した2人の選挙区に新人2人を立候補させる。全国に立候補者を立てる維新の会が、沖縄4区全てに立候補させたこと等々で、19人もの多数の立候補者となった。
 次に、それぞれの選挙区の情勢を報告する。
 沖縄1区(沖縄最大の那覇市、それ以外は離島の久米島町、渡嘉敷村、座間味村、粟国村、渡名喜村、南大東村、北大東村)は4人の候補者。現職大臣の下地幹郎氏(51)「元自民だったが、自公候補に対抗して無所属で当選、その後は国民新党で計2期連続当選している」と、共産前職の赤嶺政賢氏(64)「小選挙区ではなく比例区で当選し、唯一の共産党の議席を確保している」と、自民新人で公明推薦の国場幸之助氏(39)の3人の争い。
 国民新党の幹事長で現職大臣となり意気揚々の下地氏であるが、大臣の立場上「オスプレイの沖縄配備」や「辺野古新基地建設」を認める発言もあり、地元沖縄では評判が悪い。これに対して、1区で2度落選している自民の国場氏は沖縄最大の建設会社・国場組(占領時代米軍基地建設で大会社になる)の創業者・国場幸太郎の孫になる人物で、仲井真知事や翁長那覇市長が全面的に支援しており、初当選をめざす。しかしこの国場組は、沖縄県民の9割が反対している辺野古新基地建設に対して、社長が訪米までして米国側に新基地建設の必要性を訴えている会社である。沖縄自民党は普天間飛行場の県外移設を主張しているのに、新基地建設をめざす国場組を支援するという矛盾した立場をとっている。
 沖縄2区(本島中部の選挙区で、浦添市、宜野湾市、北谷町、嘉手納町、西原町、読谷町、北中城町、中城町)は4人の候補者。社民前職の照屋寛徳氏(67)「人権派弁護士から政界入り、衆院選は3期連続当選」と自民新人の宮崎政久氏(47)「本土出身の弁護士で、自民党が本土出身者を候補者にしたのははじめて」との一騎打ちになっている。
 米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市での闘いが注目されている。今年の2月の宜野湾市長選で初当選した佐喜真市長が宮崎陣営の選対本部長につき、市長選と同じように「若さ」と「チェンジ」を前面に押し立て奪回をめざす。一方照屋陣営は、米軍普天間飛行場の返還やオスプレイ配備、辺野古や高江など基地問題の解決のほか、護憲の立場から自民党の憲法改正(特に国防軍の創設)を厳しく批判し議席の死守をめざす。
 沖縄3区(本島北部の選挙区で、沖縄市、うるま市、名護市、本部町、金武町、国頭村、大宜味村、東村、今帰仁村、恩納村、宜野座村、伊江村、伊平屋村、伊是名村)は6人の候補者。前職・玉城デニー氏(53)「民主党を離党後小沢グループに入り、今回日本未来から立候補する」と、自民新人の比嘉奈津美氏(54)「19人のうち唯一女性候補、歯科医師で医療・福祉の充実を訴えている」との一騎打ち。
 なお、沖縄で激しい右翼的活動(オスプレイ配備の容認、辺野古新基地建設の推進、先島への自衛隊配備、日米同盟の強化などを主張)を展開している幸福実現党は、前回衆院選では4選挙区全てに立候補者を立てたが、今回は4区だけに立候補者を立てた。名護市の辺野古新基地建設を推進したい狙いがある。
 沖縄4区(本島南部と離島を含めた選挙区。糸満市、豊見城市、南城市、宮古島市、石垣市、南風原町、八重瀬町、与那原市、竹富町、与那国町、多良間村)は5人の候補者。前職・瑞慶覧長敏氏(54)「民主党を離党後小沢グループには参加せず、地域政党をめざしている。父親は革新・社大党の議員」と、自民元の西銘恒三郎(58)「前回は瑞慶覧氏に敗北したが、その前2期連続当選している。父親は県知事も勤めた保守・自民党の議員」との一騎打ち。
 前回衆院選と同じように瑞慶覧氏と西銘氏の2世議員同士の争いになっている。
 以上見てきたように、4区すべて革新系・前職と自民党の一騎打ちの争い。前回衆院選で全ての選挙区で敗北した自民党は返り咲きを狙い、何としてでも議席を守りたい革新系前職、この両者で激しい選挙戦が繰り広げられている。
 問題としては、全国的には沖縄の基地問題はほとんど争点になっていない(本土の政党や大手マスコミなどが争点隠しをしているとも言える)。
 オスプレイ配備の問題、米軍普天間飛行場返還・移設問題が埋没しているこの状況に対して、沖縄県民は「もっと日本全国の問題として取り上げるべき大きなテーマだ。沖縄への差別的な扱いが出ているのではないか」とワジワジ(イライラという意味)している。
 今回衆院選は、辺野古移設計画を最初に決めた自民党が最多議席を獲得するとみられている。それに民主党や日本維新の会なども辺野古移設を進める立場である。
 党派を超え県内移設に反対している沖縄にとって、改選後はより厳しい情勢になるのは間違いないようだ。
 今後よりいっそう、米軍・自衛隊基地問題への取り組み、沖縄と本土との連帯のあり方などが課題になると言える。(富田英司)


転換しよう、根治療法へ!──対処療法から抜けられない各党の景気・経済対策──

 総選挙投票日が目前に迫っている。事前の予想では自民党の単独過半数の可能性も報じられ、安倍晋三元首相の再登板も見込まれている。何ともやりきれない、うんざりする光景だ。右翼政権の誕生はなんとしても阻まなくてはならない。
 選挙戦で大きな争点となっているのは、やはり原発政策や消費増税、それにTPP参加問題と景気回復を含む経済対策だ。突出しているのは石原(橋下)維新の会や安倍自民党だ。両者は、集団的自衛権の行使や改憲を声高に叫び、核兵器にまで言及している。
 今回の総選挙では、自民党や民主党から分離した議員らによる「第三極」の乱立で、結果的に官僚体制打破や沖縄基地撤廃、それに格差社会の是正など、労働者層や左派の掲げるべき旗印が影が薄くなっている。そのこと自体「保守政治の第三極」にかき回された選挙になった感がある。
 私たちとしては、自民党の復活再登板を許さない選挙終盤の闘いを貫くと同時に、ニセモノ第三極勢力を含めて声が大きい保守政治の土俵自体に厳しく切り込んでいく必要がある。

◆争点としての経済対策

 第三極が既成勢力に取って替わって政治や社会の基軸を転換できるかどうかは、その土台になっている経済・生活政策に現れる。
 その観点でいえば、どの党も明確な将来展望を提示しているとはとてもいえない。各党の経済対策は目先の対処療法に止まっている。それは他の大きな争点で保守政治と明確に対決する共産党や社民党でも同じだ。
 各党のマニフェスト・公約は、前回総選挙での民主党マニフェストが総崩れしたこともあって、総じて数値・期間目標が後退、項目の羅列が目に付く。また似たような公約も多い。各党の経済対策をざっと見ていきたい。
 まず政権与党の民主党。グリーンエネルギー、個別所得補償制度、医療・介護市場で280万人の働く場をつくる、名目3%・実質2%の経済成長、中小企業支援、TPPなど同時並行的に進め、政府が判断する、等と並べられている。要するに官僚的な個別対策の羅列だ。
 次に自民党。国民所得50兆円奪還プロジェクト、成長による富の創出(上げ潮路線?)、金融緩和・財政支出で名目3%以上の成長、インフレ目標2%を政府と日銀で協定、大型補正予算と13年度予算で切れ目のない経済対策、規制緩和、法人税減税、TPPは言及なし。
 安倍自民党は200兆円規模の「国土強靱化法案」と合わせ、日銀による国債の全額買い取りなど、財政と金融政策で政府の役割を前面に出すことで有権者の期待をあおり立てている。とはいえ、本来景気対策を要求してきた経団連の無能で評判の米倉会長からも批判されたり、有権者からも警戒されたりで、選挙戦では浮き上がっている。それもそのはず、戦後のハーパーインフレや歴代自民党政権が重ねてきた景気対策がなんの効果ももたらさなかったことを棚に上げたキワモノ発言だからだ。
 日本維新の会はどうか。公共事業によらないで名目成長3%以上、プライマリーバランスの赤字ゼロ、法人税・所得税減税、競争政策、医療・福祉・保育の成長産業化、TPP参加、ただし国益に反する場合は反対、労働市場の流動化、最低賃金制廃止……。これまた小泉ばりの新自由主義丸出しで、国家主義の石原と合わせると権力と資本の思惑が剥き出しの政策となっている。
 一方小沢主導の日本未来の党はどうか。こちらは政策の柱としての経済対策がもともと無い。あるのは民主とマニフェストで語られた選挙戦術としての大盤振る舞いだけだ。脱原発派の嘉田滋賀県知事を担いだとはいえ、権力の座に就くためには"数は力"、だと考える小沢ならではの選挙戦術ではある。
 脱原発や反消費税で明快な対抗姿勢を打ち出す共産党や社民党はどうか。
 共産党は、国民取得を増やして内需活発化、大企業の内部留保を雇用や中小企業に還元、大企業の優遇税制を改める、TPP参加反対だ。
 社民党はといえば、こちらも消費税反対、TPP参加反対で共産党と同一歩調で、非正規労働者の処遇改善や長時間労働の是正など労働者の要請に添った公約を訴えている。
 これらを見ると、民主、自民、維新など、経済成長を追い求める公約が多い。が、当然にもと言うべきか、カンフル剤に終始して経済システムの抜本的転換を求める公約はない。他方で共産党や社民党も内需主導経済や雇用には言及しているが、市場経済そのものに迫る公約はない。
 総選挙は各選挙区で1人を選ぶ目の前の選択の場なので、どうしても万人受けするスローガンの羅列になりやすい。とはいえ、現状の日本経済や市場経済そのものの行き詰まりを打破する展望を示さないことには、どんな公約も所詮対処療法の域を出ないことになる。いまこそ根治療法の旗印を掲げるべき時なのだ。

◆"ザルに水"の対処療法

 ざっと総選挙に臨む各党の経済対策を見てきた。しかしそうした対策が必要とされている現在の経済状況は一体どんなものなのだろうか。
 真っ先に言及されているのが20年続く平成不況や06年頃から陥ったデフレ経済だ。景気後退と物価下落がいわゆるデフレスパイラルを招いてそこから抜け出せないでいる。その不況とデフレ対策として歴代内閣が実施した経済対策や成長戦略は、ことごとく看板倒れに終わってきた。
 なぜか。それは平成不況を経て起こった日本経済の構造変化が原因だ。結論から先にいえばその構造変化の結果、日本経済が恒常的な過剰生産構造という情況から抜け出せないからだ。いわゆる需給ギャップである。
 要するに利潤の源泉となる生産能力が賃金低下などで低迷する消費需要を大幅に上回る状態を解消できないのだ。08年のリーマンショック時に45兆円といわれた年間の供給過剰は、10年時点で25兆円、10兆円のギャップがある。だからこの間毎年45兆円から10兆円の経済対策をうち続けても、それは供給過剰を補うだけ、新たな設備投資や雇用の増加には結びつかない。企業はそれらの経済対策で手にした利益を懐にしまって、ひとり250兆円もの投資先がない巨額の資金が企業の懐に滞留しているのが実情だ。需要に結びつく賃金や下請け単価に廻せば売上げも上がるのに、だ。政府や総資本としては分かっているのに、個別企業ではそれができないのだ。 いま必要なのは需給ギャップのための政府による人為的な需要づくりではない。それは低迷の継続やインフレを招くだけだ。必要なのは企業が得た利益を労働者や中小企業に廻すことだ。それが廻り廻って企業の生産拡大に繋がる。だから共産党や社民党が掲げている中小企業や労働者への利益配分は、その限りでまっとうで有効な政策ではある。逆に自民党や維新の会が掲げる最低賃金引き下げや生活保護給付の削減などは本末転倒のはなしなのだ。
 日本がぶち当たっている経済危機は、なにも日本だけの問題ではない。米国やEUが抱えている高失業や政府債務問題などは、日本では形を変えているとはいえ本質的には先進国病ともいえる資本主義経済の構造的欠陥の現れ方の違いに過ぎない。
 米国やEUの高失業率は日本を遥かに超えている。が、それはそうした国が日本ほど人為的な政府による景気対策を重視してこなかったからだ。逆に日本は失業者の増大には気を遣ってきた、というよりセーフティ・ネットの不備などで気を使わざるを得なかったからだ。その結果日本では需給ギャップ=過剰生産のしわ寄せは、失業者増大よりも政府債務が膨れあがる方面に噴出した。それがGDPの2倍という世界でも例を見ないまでに膨らんだ巨額の政府借金の意味なのだ。
 そこで次に目を向けるべきなのは、なぜ日本がそうした経済構造に陥ってしまったか、ということだ。
 対外的には、世界経済のなかで日本の占める位置が決定的に変わってしまったことだ。戦後の廃墟からの復興期を経て始まったあの高度経済成長期、日本は低賃金や日本的経営を武器に世界に製品を売りまくった。
 国内的にも、若年労働者不足などもあって企業は利益を労働者にも還元した。廃墟から再出発した日本では、三種の神器など生活用品の需要も旺盛だった。戦勝国に追いつき追い越せという右肩上がりのその時代は、日本は世界での例外的な経済成長を達成し、対外的には東洋の奇跡とかジャパン・アズナンバーワンともいわれる時代を謳歌した。
 しかし、そうした後発国の利点という恩恵にあずかった時代も、すでに過去のものになった。モノ余り時代になって国内需要は飽和状態になり、為替の変動相場制や経済のグローバル化が進んで逆に低賃金を売り物にする新興国に追い上げられる情況に様変わりした。国内の設備投資をなくす産業の空洞化や消費需要を奪う非正規などの低コスト労働者も増やしてしまった。子育て難などで少子高齢化も進み、日本は人口減少時代に突入している。
 元もとあまりものを買わない生活者層を賃金労働者として重要な買い手にしてきたことが発展の原動力となった資本主義経済なのに、目先の利益に目がくらんで自分で自分の首を絞めているのがいまの政府と経営者なのだ。

◆自立した連携経済

 高度経済成長時代の経済モデルはすっかり過去のものとなったいま、かつての経済成長モデルを追い求めること自体が時代錯誤なのだ。コスト原理の市場経済モデルでは、もはや私たちの働きぶりや生活の改善には結びつかない。いまこそ成長や利潤のためではなく、私たち自身の生活のための経済モデル、人間ための経済システムに転換することが必要なのだ。
 具体的にはネット社会を活かした産直運動など生産者と消費者の連携経済、労働者の働き方と自己決定を大事にする労働者協同組合、第六次産業(生産・流通・サービスの統合)による自立した地域経済をめざす取り組みなどだ。そしてそれらの運動の原動力ともなる、正当な雇用や賃金を闘い取ることで格差社会を打破する労働組合運動などだ。これらの取り組みは、すでに多くの地域や職場で実践されていることなのだ。
 こうした取り組みはなにも選挙の時だけのものでもないし、政府に依存することでもない。自分たちができることを自分たちで率先して取り組む課題なのだ。
 日本経済が突き当たっているこうした実情を知ってか知らずか、安倍自民党総裁は選挙戦のなかで物議をかます奇抜な〝経済対策〟をノー天気にぶち上げている。デフレ克服のために3%のインフレターゲットを設定する。そのために建設国債を全部日銀に引き受けさせる。日銀はどんどん輪転機を廻してお金を印刷する……等々。
 戦費調達などで国債を乱発したツケが回ったあの戦後のハイパーインフレの教訓などどこ吹く風、無責任な大風呂敷という以外にない。これらの発言は、市場経済は人為的に制御できるという勘違いから出ているものだが、それが間違いだったことは歴代政権の経済対策が無効だったことでも明らかだろう。より拡げて言えば、規制緩和など政府の関与を否定することで経済成長できるという新自由主義、それに財政出動など政府のテコ入れを重視するケインズ主義経済学は、いずれも市場経済の病弊に対する対処療法の域を出ないもので、すでに破綻しているのだ。いまこそ対処療法を超えて、原因としての弱肉強食の利潤原理に基づく市場経済そのものを転換し、自立的な連携経済への転換という根治療法に切り替える時期なのだ。
 16日の投票では、ノー天気で無責任な安倍自民党など体制派の増長を許さない意思表示が必要だ。(廣)
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読書室 広瀬隆氏著『原発ゼロ社会へ!新エネルギー論』集英社新書 価格798円

 原発ゼロ社会を指向する確かで具体的な提案を満載した新エネルギーの解説本

 この本は広瀬氏が、11月21日に出版した最新刊の本である。
 今年は暑い夏だったが、大飯原発以外の原発が稼働しない中でも、政府・財界が一体となり、大声で叫んでいた電力不足はなかった。なぜなのか。本書が真相を明らかする。まさにここにこそ、原発ゼロの具体的な道筋が隠されていた。広瀬氏は発見したのである。
 彼は、3・11のフクシマ原発事故以来、日本の未来を思い暗澹たる気分に陥っていたが、首相官邸前金曜日の定例抗議行動がはじまり、共に参加する中で新たな息吹を感じる事が出来た。まさに若い人達の行動を見て共に行動する事で広瀬氏に元気が出てきたのだ。
 本書は、脱原発のために行動する人達に感謝するための新エネルギーの解説本である。
 彼は、第一に新エネルギー技術について、具体的に「原発ゼロの社会を実現すること」をめざして、日々骨折ってきた起業家と販売員の人たちに感謝して書いた。まさに彼らの頭脳とテクノロジーの実力なくして本書はなく、この夏の電力不足を押さえ込むことは出来なかった。彼らの努力が原発即時廃炉への具体的な道筋を示してくれたのである。
 彼らガス業界・エネルギー業界の業界人こそ、私広瀬隆を講演会に招き日本社会を変えている人々なのである。これらの優れた経営者たちは、舌鋒鋭く「事故があれば全てを失う。原発をやめろ!」と地元の政治家を追いつめている。彼らは敵ではないのである。
 第二に感謝するのは、真の原発問題・自身問題の専門家である。彼らの慧眼と解析力がなければ、つまり具体的に原子力と大地震・大津波の危険性を私広瀬に教えてくれなければ、私の執筆活動はなかったのである。
 最後に広瀬の本を出し続けた出版業界の人々とエネルギー業界の真相を伝え続けているガスエネルギー新聞と広瀬の資料と報告をインターネット発信する「日々雑感」サイトに感謝するとして本書を結んだ。
 杉並区に住む広瀬氏は、東京8区から石原伸晃元自民党幹事長と闘うために「新党今はひとり」から立候補した山本太郎氏の全面支援を行っている。彼の辻立ちの演説では、脱原発を訴え、次はガスだと明言しており、広瀬氏の強い影響を伺い知る事が出来る。
 原発ゼロの具体的な道筋とその根拠を知るには、本書の熟読が不可欠である。 
 目安となる本書の目次を紹介しておこう。
 序 章 関電の電力不足騒動
 第一章 発電の方法はいくらでもある(民間の発電能力)
 第二章 熱エネルギーの有効利用が日本の活路を拓く(コジェネ)
 第三章 化石燃料の枯渇説は崩壊した(ガスの未来)
 第四章 自然エネルギーを普及する真の目的
 第五章 地球の気温と電力コストの予測
 あとがき
 もしあなたが、脱原発には自然エネルギーしかないと考えているのなら、具体的な事実と図表を示して、脱原発の道筋を具体的に指示している本書を是非お読み下さい。(直木)


色鉛筆  衆院選 ―非正規雇用の若者たちは?―

 今、衆院総選挙の真っ只中(12/10)、テレビ、新聞などのマスコミが大騒ぎしているが「いったいどこに投票すればいいの?」という話しが職場や友人、家族の話題になっている。「自民党が優勢なんていやだ、また同じことの繰り返し」「たくさんの政党があってよく分からない」「いれたい人がいない」「みんなが投票用紙に自分の書きたいことを書いてくればいい」「いれたい人がいなければ白票だね」等々話は尽きない。
 先月、今の若者たちの苦しさが紹介されていた新聞記事があった。私立大学を中退した28歳の男性は、正社員の仕事が見つからず週3~4日、時給850円のアルバイトをしてしのぐ日々。交通費や残業代は出ず、月の手取りは約9万円。家賃3万円のマンションに同居する彼女は塾講師だが、2人で月20万円を稼ぐのがやっとだ。「2人そろってワ-キングプア。結婚して子どもを育てるなんてとても無理ですよ」という。今の職場に応募したのは正社員登用制度があったからのだが、「正社員にはなれそうもない。僕らのような人間を安く使い倒そうとするのは納得できない」と言っている。本当に彼のいうとおりで、今の社会は若者たちを安くこき使っている。アルバイトやパ-トで働く34歳以下のフリ-タ-は、2010年平均で183万人。2年前より13万人増え、派遣・契約社員も含めた非正規で働く34歳以下の若者は、同世代の労働者の約3割に達するという。 また、表のように30代男性の未婚割合が正規雇用者は30・7%に対して、非正規雇用は75・6%というのだから驚いてしまう。こうした若者たちの苦しさは人ごとではなく私の息子も非正規で結婚するかどうか悩んでいる。年収が少ないから生活できるか不安になるため一歩踏み出すことができない。女性側からすると「結婚相手が非正規なのか正社員なのか、気になる」「独身女性が結婚相手に求める年収が503万円」というのだから月収200万円台の非正規の男性は結婚できないのだろう。非正規の女性もおひとりさまで生きていくには、低収入で貧困予備軍といわれ先々不安になっている。結婚しない若者が増えているのは非正規などの雇用の不安定や低賃金にあるのだ。私の同世代の友人たちも娘が結婚したが、婿が非正規で生活できなく同居していたり、娘夫婦と同居はしていないが娘夫婦は実家で食事をして生活費をきりつめ、孫の教育費や衣服費を援助してもらう等、親に頼ざるを得ない話をたくさん聞く。
 先に書いた28歳の男性は、前回の総選挙で「最低賃金1千円」「派遣労働者の雇用の安定」を掲げる民主党に比例区で1票を投じて「若者の働く環境を変えてくれる」と期待したという。ところが最低賃金は政権交代後の3年で全国平均36円増えて749円になったが1千円には遠く、雇用の安定も解決されなかった。期待をさせながら何もできなかった民主党に責任はある。(表参照)これでは、政治不信になってしまう。今回の選挙では低収入の若者が増えている現状をどうするかということはあまり議論されていないが、非正規雇用の若者たちはどこの政党にいれるのか悩んでいるだろうか、それともあきらめているのだろうか。選挙の結果はどうなるのか?(美)案内へ戻る


橋下大阪市長と嘉田由紀子滋賀県知事が全国遊説をする「異常な国」日本

衆議院総選挙における特別職員の選挙活動

 現在、衆議院総選挙が行われている。その渦中にあって、日本維新の会代表代行の橋下徹大阪市長と日本未来の党代表の嘉田由紀子滋賀県知事の顔や名前がマスコミに登場しない日はない。彼ら特別職の市長や知事には、一般公務員のような職務専念義務や勤務時間の拘束はなく、従来から彼らの選挙活動自体は違法ではないと判断されてきた。まさに「日本の常識は世界の非常識」ではないか。
 こんな中、自治体首長と国政政党のリーダーを兼務する「二足のわらじ」に問題ありとし、「選挙活動中の給与の差し止め」を求める住民監査請求をそれぞれの地元から突き付けられた。住民監査請求したのは、大阪市は反橋下の市民オンブズマン「見張り番」、滋賀県では反嘉田の同県彦根市の獅山向洋市長であった。これらの動きを見れば、統一的な意思による行動でない事は明白である。彼らはお互いの「敵」に対して足を引っ張り合っているだけなのだ。
 12月3日、「見張り番」は橋下氏が市長の公務に専念せず、選挙活動を優先しているのは不当として、給与返還と今後の支払い差し止めを要求した。大阪市によると、橋下氏が代表代行に就任した11月17日から12月3日までの17日間の内、13日間が「公務日程なし」だった。12月6日、獅山彦根市長は嘉田氏が4~6日の3日間、党の選挙活動に携わり、県政とは関係のない一政党の党首として行動したと指摘し、3日間の給与相当額約10万2千円と今後の給与の支払い差し止めを求めた。
 これらの住民監査請求に対して、橋下氏は「市長の仕事をもっとしろ!選挙ばかりするな!とのご意見。選挙や政治がいかにバカにされているかの象徴。仕方ありません。日本の政治はその程度のものだったのでしょう。 しかし政治、選挙は大阪市民にとって非常に重要」「市役所や職員が公務員として国に要望をする。しかし実現できない。それを選挙を通じて政治で解決するのが今回の目的。
公務員が役所を通じてやるか、選挙を通じて政治でやるかの違い。いずれにしても大阪市民のために変わりない。もうちょっと選挙が重視される政治をやらないとね」とツイッターでただちに愚論を臆面もなく展開したが、嘉田氏も住民監査請求について「知事は勤務時間が決まっていないので、請求は成り立たない」と呆れ果てた答弁した。当然のことながら彼ら同士この点については、触れない事で意思一致しているのである。
 国政政党の党首等と首長の兼務については、1977年12月から3カ月間、社会党の委員長と横浜市長を務めた飛鳥田一雄氏の例しかない。橋下氏は2年半、地域政党の大阪維新の会代表と大阪府知事、大阪市長を兼務した事があった。しかしこの両者とも今回のような住民監査請求はなかった。
 今回の請求の根拠には、両氏が連日、衆院選の全国遊説に明け暮れている事実がある。何とも「異常な国」日本なのである。

特別職員の国政選挙運動をどのように考えるのか

 ここに注目すべき見解がある。橋下氏の全国遊説に対して「しんぶん赤旗」に大阪市長の仕事をしていないとの批判的な市民の意見が掲載されたのだが、驚くべき事には「しんぶん赤旗」では特別職員には職務専念義務がないとしてそれ以上の事は書いていない。彼らは昔はこの事を批判していたが、矢野狛江共産党市長の誕生以来、自分たちが同様の選挙運動をやってきた手前静かになってしまったのである。
 つまり「大阪市の首長の仕事放っぽって国政にばかりかまけてる」または「一般職には選挙運動の禁止を強く訴えて、処罰さえ口にしているのに自分はやり放題」だとの庶民の批判に対して、共産党の対応といえば「一般職と特別職の区別がついてない」との呆れた対応となっている。
 なるほど、なるほど。石原都知事が週に2・3日、それも1日数時間の勤務に批判があったが十数年間都知事の職を無事全うできたのも、何にでも文句をつける印象があるものの日本共産党の特別職員を側面擁護して恥じない政治姿勢の賜物だったとは。日本共産党は実に大政翼賛勢力の補完物だったのである。
 しかし現実に特別職員に職務専念義務がないという事は、彼らに職務専念義務が全くないという事ではない。地方公共団体の首長の場合は「地方公共団体の行政管理という特定の職責を果たす」事が求められている。つまり1日24時間、その職責にあった「即戦即応体制」を要求され、彼ら首長の行動は常に「地方公共団体の行政・運営」と一体のものだからこそ、首長なのである。
 この点を考えれば、先の橋下市長発言についていえば「国政運動は地方公共団体の直接の運営には関係しないから、地方公務員特別職の行うべき行動ではない」のであり、「勤務時間が定められてる一般職は勤務時間内のみ公務員としての行動を求められるが、勤務時間(登庁時間)の定まっていない特別職に於いては24時間即応体制での公務員としての行動が求められ」ているのである。
 近代行政法の精神からは、そもそもこのような結論が出る他はない。改めて明記する必要がないほど自明の事だ。したがって特別職の職責は一般職は比べものにならないほど重たいものなのだ。しかしそうでありながらも、日本の裁判所はこうした世間知すら自己判断できないほど、法学的思考に雁字搦めにとらわれているのである。
 ところが橋下大阪市長も嘉田滋賀県知事もこの点を理解しておらず、全くの勘違いをしている。橋下大阪市長には以下の付録に紹介した大阪市条例の確認を求めたい。そして彼らの選挙運動を正当化する反論には、市民と区別された特別職は「殿上人」の感覚が見隠れする。そして日本共産党が彼らに根本的な問題提起をせず、この点を一切免罪している点に口先で「日本の遅れた政治風土」と闘うと言い続けながら、実の所本気でない政治姿勢がこのように疑いようなく示されているのである。(直木)

 付録 政治的中立性を確保するための組織的活動の制限に関する条例(平成 24年7月30日施行)
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/chonaikaigi/cmsfiles/contents/0000179/179123/4-2.pdf
http://www.city.osaka.lg.jp/templates/chonaikaigi/cmsfiles/contents/0000179/179630/shiryou4-3.pdf
第1条 この条例は、本市が行政運営において組織的に政治的活動を行っているとの疑いを市民に与えることがないようにするため、市長その他の職員の責務を明らかにするとともに、政治的行為であると疑われるおそれのある行為を市長その他の職員が職務として行うことを制限することにより、公務の政治的中立性を確保し、もって市民から信頼される市政を実現することを目的とする。
(責務)
第2条 次に掲げる者は、前条の目的を達成するため、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第3条に規定する公職の選挙において特定の人を支持し、又はこれに反対するために職務上の組織若しくは権限又は影響力を用いているのではないかとの市民の疑惑や不信を招くような行為を、職務として行ってはならない。
(1) 市長
(2) 副市長
(3) 地方公営企業の管理者
(4) 特別職の秘書の職の指定等に関する条例(平成24年大阪市条例第1号)第2条の市長の秘書の職を占める職員
(5) 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条第2項に規定する一般職に属する職員
(活動の制限)
第3条 省略(市長選挙前の市長の政治活動制限に関する規定)→一般職員より禁止の範囲が大。
*「政治的中立性を確保するための組織的活動の制限に関する条例」ガイドライン
http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000184/184823/gaidorain.pdf
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コラムの窓・・・ あなたは誰に投票(如何に)しますか?

 12月4日第46回衆院総選挙が公示され、16日の投開票に向け12日間の選挙戦が始まっている。
前職か参院議員のいる主な政党だけでも、現行制度では最多の12党による選挙戦で、立候補者は小選挙区(定数300)、比例代表(同180)の計480議席に対し、1504人が立候補している。
 政権(民主)党から離党者が相次ぎ、解党し、別の新党へと合流するなどし、「維新」や「未来」などの新党が続々と生まれ、めまぐるしいばかりの離合集散の果ての、まれに見る「多党化選挙」で、混戦と言えば混戦なのであろうが、第3極を伺う「維新」や「未来」「みんな」と言った政党は「地方分権化」などを主張し、マスコミなどの影響もあって、「自民」や「民主」と違って真新しさを感じるだろうが、基はと言えば「自民」や「民主」と言った“保守”政治から生まれ出た政治思想の一部分であり、資本主義経済体制を保持しつつも、資本主義経済の活き詰まりや停滞からの脱却を国家財政に頼りながら“民営化”路線といった構造改革しか立て直す術を見いだせないものであり、「自民」や「民主」の補完的役割を担う党派である。こうした元自民党からの分裂党派が分裂と融合を繰り返しつつかつてないほどに増えているのは、現代日本の経済的破綻と政治的混迷の中での“あがき”が生み出したとも言える「多党化選挙」状況なのである。
 これだけの選択枠があるとどれを選べばよいのか迷ってしまうが、3年余りの民主党政権での「決められない政治」「公約違反」と内部分裂にへきれきしてか、序盤戦では、日銀の買い取りによる大量の国債発行と公共事業の拡大による内需の刺激策や「憲法改正」自衛隊の「国防軍」への格上げなどを訴える自民党が、小選挙区制の下、優位な情勢のようであるが、この責任はすべて民主党にあることは明らかである。 
 今回の総選挙では、日本のこれからを左右する大きなテーマがいくつも問われている。消費増税を柱とした社会保障と税、財政再建。震災からの復興、原発・エネルギーのあり方。近隣諸国との領土外交や安全保障。等である。
 原発問題では、自民党は(安全神話の崩壊で反発から目をそらすために一応言わざるをえなくなって)『安全第1』の原則を考慮しながら原発容認と共産党・社民党の「即時原発ゼロ」以外は、「脱」と「卒」などの反原発への違いがあるものの概ね原発の危険性やリスクを認め原発依存度の縮小傾向が大勢を占めているので政党間の違いが判りにくくなっているので注意しなければならないだろう。
 「景気対策と財政再建」の課題については、自民党安倍総裁は「国の借金」で「やるべき公共事業はたくさんある。安全を守り、補修するため公共投資を行う」と強調、一方、「コンクリートから人へ」を掲げて公共事業削減に取り組んできた民主党野田代表は自民党の政策を「借金による公共事業で一時的な景気浮揚を図る過去の政治に戻ってはいけない」「ばらまき」と批判し、「エネルギー分野や医療分野を成長させ、雇用をつくる」と訴え、違いを強調しているが、財政のテコ入れを最小限にしながら、どのようにエネルギーや医療・福祉分野、農業を成長させるのかの具体策がなく、前国会で消費税率のアップなどの増税路線を取っているので、結局は、共産党の大企業や富裕層への増税による捻出以外は、どの政党も「大規模な補正予算」を組み、その財源を国の借金(国債発行)でと言うのが本音と言うことだろうが、国の借金(国債発行)だけに頼って財源を賄おうとすれば、財政赤字はますます膨らみ、国債価格の暴落(金利の急騰)につながる危険性も否定できないと感じる各政党は財源確保のことをあまり語りたがらないのである。
 こう見てくると本当に投票したい政党・候補者が我々には無いようにおもえるのだが、投票率の低下や無党派層の拡大の中で、「投票しなければ世の中は変わらない」とよく言われるが、政治への関与が“投票行為”だけならそう言えるかもしれないが、「一票の格差是正」「小選挙区制」などの選挙制度の問題や利益誘導やぐるみ選挙など違法な行為も後を絶たない中では“投票行為”だけでは「世の中」をそう簡単には変えられないのではないか?!
 今、毎週末、首相官邸前で原発再稼働反対デモが続き、再稼働の是非を問う住民投票を求める市民運動の動きも各地に広がっている。そうした表明された民意が、既成政党の原発政策や、脱原発を訴える新党の旗揚げに大きく影響していることは間違いがないし、代表制民主主義の限界を補う、直接民主主義の動きとして注目されもしている。原発問題だけでなく、職場や生活問題でもこうした活動を起こし発展させていくことで、政治を不断に監視し、かかわり続け自らが動くことで政党や政治家に「やってもらう」のではなく、彼らを鍛え・育てていくこそが必要ではないだろうか。(光)


何でも紹介・・・「宋神道さん」

 宋神道さんの90歳を祝う会の案内が、「在日の慰安婦裁判を支える会」から届いた。愛犬を抱いて笑顔で写っている宋さんだが、昨年3月11日の大震災の津波で自宅を流され、今は「支える会」の手助けにより東京で新しい生活を送っている。
ーーーまた否定する動きがーーー
 ずっと以前から、そして最近もまた頻繁に「慰安婦」の強制連行、軍の関与否定発言が相次いでいる。8月に橋下大阪市長が「軍に、暴行、脅迫を受けて連れてこられたという証拠はない」「あるなら韓国側にだして欲しい」などと発言。同日、東京で石原都知事が「ああいう貧しい時代には売春は非常に利益のある商売だった。貧しい人たちは仕方なしに、しかし決して嫌々でなしにあの商売を選んだ」と発言。松原仁国家公安委員長は8月27日の参議院予算委員会で、安倍元首相はテレビで各々河野談話の見直しの必要性を述べている。
 これらの動きに抗議するため、9月に韓国の金福童ハルモニと李容洙ハルモニが来日し緊急の抗議集会が東京と大阪で開かれ多くの参加者が集まった。そして一週間前から面談を申し入れていた橋下市長を訪ねるも、市側は「会えない」と繰り返すのみ。翌日登庁した橋下市長は、あきれたことに“面会の意思はある”と発言。この日すでに帰国の支度中のハルモニには面会に行くことは不可能だ。前日の雲隠れは平気で隠し、会う意思など皆無であろう橋下氏のこの発言は、卑劣・卑怯そのものだ。
 11月4日付米国ニュージャージー州の地元紙(約23万部)に、従軍「慰安婦」に関する意見広告が掲載された。すぎやまこういち氏・櫻井よしこ氏らで構成する歴史事実委員会が呼びかけ、安倍晋三氏や松原仁氏ら39人の国会議員が賛同者として名を連ねている。同州の韓国系米国人が多く居住する市の公立図書館に、旧日本軍に性奴隷にされた女性たちの記念碑が建てられたことに抗議する意見広告だという。2007年にも同様の意見広告を「ワシントンポスト」誌に掲載し、人権侵害に対し無自覚・無知であるという恥を、自ら国際社会にさらしたばかりだのに、、、、。
ーーー宋神道さんのことーーー
 宋さんは、1938年、16歳の時、植民地支配下の朝鮮半島から中国に連行され、敗戦までの7年間、戦地を転々としながら軍人の暴力にさらされ続けた。毎日ビンタされた頬にはタコが出来、痛みの感覚は麻痺。鼓膜の破れた片耳は聞こえなくなった。多い日には70人もの軍人が押し寄せ、弾の飛び交う最前線でさえ、その場所での「慰安」を強いられた。2度の出産(いずれも手放さざるを得なかった)、幾たびかの堕胎は、たった一人で自らの手で処理した。性病検査、食糧配給等は軍が担当し、移動も軍のトラックだったのだから、紛れもなく“軍と一体”だったのだ。
 敗戦で日本に連れてこられ、宮城県内でも差別や罵詈雑言を浴びせられ続けた。だが、支援者と出会い、1993年『在日韓国人元従軍慰安婦謝罪・補償請求事件』として国を相手に裁判に立ち上がる。当時、その心境について「戦地に引っ張っていく時は『御国のため御国のため』といっておいて、なして今になって『朝鮮人』だの『慰安婦』だのと差別つけるのや。軍人は恩給だの、年金だのと威張り腐って、オレは『(生活)保護』食らってるって、白い目で見られるんだよ。なして自分の国の戦(いくさ)に朝鮮人のオナゴを引っ張っていかなきゃなんねえの。なして今になって、こんな差別つけられるのかってことを、はっきりさせねえと死んでも死にきれねえ」と語っている。
 1972年から生活保護を受給している宋さんに対して、「生活保護受けて、人の税金で食ってるくせになんの文句があって裁判するのか」「日本の国に住んでいるのに日本人ばかり悪者にするな」「文句があるなら韓国に帰れ」などの罵声が投げつけられた。加害の国に被害者が住み、その被害者に一切何の落ち度も無いのにこうした罵声が浴びせられるのは、日本政府が一貫して加害を認めず、正式な謝罪も拒んでいるからに他ならない。余談になるが、加害者である軍人の恩給は手厚い。1992年度で軍人恩給予算が1兆5473億円が計上され、182万人に支給。遺族も対象であり、東条英機の妻(1982年死去)には毎月80万円が支給されていた。(田中宏「日本の戦後補償とアジア」『岩波講座近代日本と植民地8』岩波書店1993年による)
 月7万円の生活保護費で10年の裁判を闘った宋さんは、2003年最高裁で敗訴が確定した時も、「俺の心は負けてねえ」「あんな残酷な戦争は二度とやってはいけねえ!」と強く訴えている。
 戦中戦後の苦難を経てもなお、こうした真っ当なことばの言える宋さんは、日本政府と日本人にとって宝物では無いかと私には思える。(富田澄子)2012/12/10案内へ戻る


読者からの手紙

誤報ではない 日銀による買いオペ

12月2日付け東京新聞朝刊の社説欄に、他メディアの「誤報」なるものを載せて論じています。それは、先月17日に自民党総裁安倍氏が熊本市内でした講演での発言内容についてのもので、安陪氏の発言を、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらうという買いオペをしてもらうことによって、新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と示して、「多くのメディアは『買いオペ』の部分を省いて『安倍総裁が建設国債の全額日銀引き受けを検討する考えを示した』と言った調子で報じました。」と伝え、「買いオペ」を「日銀引受け」と「誤報」したとして、選挙に際して「あってはならない事態」と批判しています。そして「買いオペ」と「日銀引受け」との違いを中学・高校生にも分かる程度(中・高生に失礼)の形だけの説明をしています。
 しかし、これは本当に「誤報」でしょうか。たとえ言葉としては「買いオペ」と言ったとしても、安陪氏の発言の本旨は「日銀引受け」にあるのではないか、上記の発言を読んでも分かるとおり、誰が聞いても「日銀引受け」のことを言っていると受け取れます。しかも、白川日銀総裁も米倉経団連会長も「やってはならない項目」「禁じ手」とコメントしていると記事の中でも書いています。当の本人(日銀)も自民党のスポンサー(経団連)もそのように、つまり「日銀引受け」と受け取っているのです。
 もし本当に「誤報」を言うなら、他社の報道を批判する前に、日銀総裁や経団連会長に対してそれは「誤解」ですぞと、ご注進することのほうが先決のはずです。しかしそれをしないで他のメディアに対してクレームをつけているのは、つまり、本当のことは報道するな、このような劇薬(=日銀引受け)はストレートに言うのではなく、徐々に国民の間に浸透させていけ、とこう言っているに他ならないのです。
 社説氏は、「買いオペ」と「日銀引受け」とは「実は大違い」と言っていますが、ことは安陪氏の言った「買いオペ」であり、社会科の教科書に載っている「買いオペ」ではありません。教科書の「買いオペ」は、すでに市中で引き受けて(それを一応の建前としては健全と譲歩しても)流通しているものを日銀が買うその国債は、政府が発行する際には日銀が買うか否かは未定の局面のもので、市場の判断で引き受けられたものです。しかし安陪氏の「買いオペ」は、予め日銀に「全部」買ってもらう(政府の指図で買わせる)ことを前提にして発行するものです。つまり日銀が「買いオペ」をすることを前提に国債を発行することは、「日銀引受け」と経済的効果に違いはなく、「買いオペ」という見せ掛けで事実上の禁じ手を行うということです。だからこそその様なことをスムーズに行える法的措置として、今彼らは日銀法の改正を声高に叫んでいるのです。
 要するに、「実は大違い」どころか事実上大差のないものです。せいぜい違いと言えば、安陪氏の言っていることは、国債の利子と手数料を市中銀行に稼がせてやるという財界に優しいことくらいでしょう。メディアの主張の中に「誤報」の指摘という形を取って、国民に日銀引受けという事態について徐々に麻痺させ、一つの方向に導こうとする意図が見え、司法面での裁判員制度・外交面での領土ナショナリズム・軍事面での国軍創設論と共に、財政面での国債乱発・日銀法改正論に戦時体制の準備作りを感じずにはいられません。集大成はもちろん憲法改悪です。(T・K)


現状では共産党支持

「保守王国の群馬で、憲法理念の柱である人権・福祉・平和の実現こそ民衆の求める世の中であると確信する私は、対抗勢力として共産党に依拠する。もちろん、共産党のダメな救い難い面は承知だ。しかし、少数とはいえ、党員議員の地道で良心的な活動は支持されている。ワーカーズの日共批判は首肯できるが、保守右翼の結果的には反共攻撃と同一歩調になるのは辛い。遅まきながら、脱原発、反オスプレイ、消費税、貧困対策に力を入れ農協等の保守組織とも連携を図る姿勢は良いとすべき。選挙オンリーになり、大衆迎合に陥り、保守政党に転落の可能性はあるが、私は、党のそれなりに旺する平和・福祉の志向を共有。反面、政党なるものに不信懐疑もあり、個人かつ他者との協働の中で、社会性・自治の訓歌陶冶されたコミニュケーション社会にこそ、未来を託せると思うが。

 生活困策故、年金だけでは足りず、土・日・祝日のアルバイトを市施設で働いている。二人で勤務しているが、休憩時間等で、様々な会話が出る。ある日、私がある新左翼系の機関誌の投稿記事を朗読した。内容は杉並区の元課長が定年退職後再任、再雇用された区関連の協議会の業務局長のポストを、会長との折り合いが悪いことを聞いた山田区長(当時)が、二年後に雇用止めにしたことに抗議し、高裁まで争ったが、敗訴した事実経過を聞いた同僚(女性)が拍手したのである。彼女のような中小企業で低賃金で苦闘し、定年後も低賃金で働いている人間にとり、公務員の現役及び定年後も恵まれた人生を送っていることに非常に反感嫌悪がある。こうした大衆が圧倒的な社会で、高次元な政治にからむ理論、日共批判は現実はるかだろう。(F)案内へ戻る


「維新の会」の選挙公約(最低賃金廃止)に若者からの批判噴出、竹中を弾劾しろ!

 「維新の会」を支持してきた20代・30代の若者が維新の会の選挙公約の「最低賃金制の廃止」に対して批判が噴出しました。当然です。よく彼らは明記したものです。
 ネット上には「橋下を持ち上げてた奴らは反省しろよ」「労働する国民を奴隷化するものだ」「望むのは財界だけだろう」といった怨嗟の声が噴出しました。彼らの想定外の怒りに対して、「維新の会」は公示の直前「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」に表現を修正しましたが、賃金を下げるとの実質は全く変わっていません。まさに「朝三暮四」の例えの通りで、人を馬鹿にするのもいい加減にしろといいたいところです。
 当初、橋下徹は「最低賃金のルールがあると、後2、3人雇えるのに1人しか雇えない」「他の党には示せないもの」だと胸を張っていましたが、今でも低賃金を強いられているワーキングプアは1千万人を超えているのに、最後の砦の「最低賃金制」というセーフティーネットを廃止したらどうなるのでしょうか。彼らの事は考えてもいないのです。
 たとえば、最低賃金である時給800円を廃止して3人雇うという事は、1人当たりの時給は約260円になり、1日8時間働いても日給2080円、月給5万2千円です。生活できるはずがありません。これでは貧困は底なしで悲惨な状況を作り出します。
 喜ぶのは、労働者を安い賃金で酷使しようとする竹中たちだけです。筑波大名誉教授の小林弥六氏は「橋下市長のブレーンは、竹中平蔵さんだそうですが、まさに『市場原理主義』の発想です。人件費を下げて、グローバル企業を儲けさせる事しか頭にない。労働者はコストという意識です。安ければ安いほどいいと考えている」といっています。
 若者の反発に想像力の乏しさから動揺した小心者の橋下に対して、人材派遣会社長の竹中はワルの首魁に相応しく実に呆れる程の堂々とした態度を取り続ける事が出来ます。
 彼は全く傍若無人に振る舞い悪びれず平然と「私が、若い人に1つだけ言いたいのは、『皆さんには貧しくなる自由がある」という事だ。『何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、その時に頑張って成功した人の足を引っ張るな』」と。
 まさに戦後の日本をここまで破壊した首魁の一人の発言として、今後の日本歴史に残る「時代の証言」ではないでしょうか。 (笹倉)案内へ戻る


編集あれこれ

 本紙前号では衆院解散・総選挙が大きく取り上げられましたが、直前の日本未来の党の動きは伝えられませんでした。リアルタイムでこうした動きを伝えるために、ホームページの活用を模索中です。
 民自の2大政党に続くところはどこか、やはり日本維新の会あたりだと言われていますが、この党は選挙公約に「最低賃金制の廃止」を掲げていました。橋下徹代表代行は「最低賃金のルールがあると、あと2、3人雇えるのに1人しか雇えなくなる」と言っていたそうです。さすがにこの本音はあまりに〝刺激的〟過ぎるので、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」と言い換えたそうです。
 いま、大阪府の最低賃金は時給800円ですが、最も低い県は652円です。手元にある新聞折込み求人のなかに、郵便局の年賀アルバイト内務749円(高校生)とあります。これは兵庫県の最低賃金ですが、高校生ならこれでもいいということなのか。さらに、自爆営業が蔓延し、発売当日からチケットショップに年賀が並ぶ、郵便局は今やブラックな企業に成り果てているようです。
 むろん、郵便局だけではなく、最低賃金での求人広告は他にも散見されます。こうした現状を知っているのか、橋下代表代行が気に留めているのは雇う側の〝雇用確保〟であり、雇われる側の雇用破壊、まじめに働いてもまともに暮らせない境遇など眼中にないのです。年金掛け金が払えない、健康保険も持てない、職を失ったら生活保護があるかといえば、生活保護受給者は怠けていると非難を浴びせ、自己責任だと切り捨てる。橋下維新の会支持者はこのことをどう理解しているのか、聞いてみたいものです。
 原発をどうするのか、3・11後の総選挙ということで脱原発が大きな課題となり、野田政権までもが、安倍自民党の原発存続に対抗するために、2030年代としながらも原発をなくすと強調しています。しかし、原発輸出の推進、大間原発の建設再開、再処理工場やもんじゅも続けるというのだから、これは立派な原発推進です。ウソをつくにも程があります。
 前号では領土問題も引き続き論じていますが、この問題ではわが国固有の領土であるというところで、大方の党は一致しているようです。その先で、自衛隊を派遣してでも守ると言うのか、話し合いで解決と言うのかの違いだけのようです。中国も同じように考えていたら、話し合いによる解決もないでしょう。国際社会に訴えるといっても、かつて侵略した側と侵略された側の領土をめぐる対立なのだし、どちらにしても日本に勝ち目はないでしょう。選挙で領土ナショナリズムを煽り、票をかすめ取ろうなどというのは無責任の極みです。
 色鉛筆で紹介されている死刑囚袴田巌さんのお姉さんのスピーキングツアーは兵庫県にも来たのですが、他の予定があって私は残念ながら参加できませんでした。真実の究明よりも犯人逮捕を重視する警察・検察による冤罪でっち上げは後を絶たず、袴田さんのように再審請求などで表面化しているのは氷山の一角だと思います。
 再審無罪になっても謝罪しない、無罪の証拠を隠していても罪に問われない、権力・暴力を行使するものの過ちが問われることのない現状では、冤罪はこれからもつくり出され続けるのでしょう。他人事ではなく、私たちもその餌食にならないよう気をつけなければならない、嘆かわしくもそれがこの国の刑事司法の現状です。 (晴)
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