ワーカーズ492号  2013/7/15    案内へ戻る
参議院選挙
アベノミクスに幻惑されてはならない ーー協同社会の旗をかかげよう


●株価上昇だけ?成果の乏しいアベノミクス
 安倍首相の経済政策は、日本経済の再生という幻想を売り込み、「異次元の」金融緩和と財政のばらまきで多くの階層の歓心を買うことであった。しかし、その成果はほとんどない。マスコミ利用の大宣伝に幻惑されてはならない。
 株価の上昇が好景気の反映であったのは昔の話しだ。今では、投資先がないが故に金融投機に向かうしかないのが現実なのだ。安倍バブルは、実態経済不振の証明ですらある。
 むしろ、不正規雇用の増大や、円安による消費者物価の上昇、そして予定されている消費税増税等一般庶民の生活は不安定さを増している。それが現実だ。

●幻想として「安倍人気」
 安倍首相は、かつての小泉首相のようにマスコミを動員して、信念と実行の政治家を演出し六〇%以上の支持率をほこる。
 しかし、未来を顧みないアベノミクスは、五年後十年後の国民生活と国家財政を一層救いがたいものにするのは確実だ。そればかりではなくばらまき財政や官僚主導政治は、政治そのものへの無関心を生み出すだろう。
 たしかに過去の民主党政治は完全な上滑りであったが、例えば「財政支出の仕分け」などで、国民的興奮を巻き起こしたこととは隔世の感がある。
 幻想としての安倍政治を、早急に幻滅へと追い込まなければならない。

●人気取り政治の後は政治反動
 アベノミクスが大衆慰撫策だとすれば、憲法改正はスーツの下に隠したヨロイだ。彼の最大の政治課題は、そこにある。経済政策で人気を博し、国会で多数派を形成し政治反動を強めようと狙っている!自民党憲法改正案は、過去の帝国憲法への回帰であり阻止しなければならない。

●国権主義ではなく、非権力の協同社会を!
 こうしたなかで、安倍政治を批判する野党も対立軸を見いだしていない。それどころか公明党、維新の会、みんなの党は自民党にすり寄るばかり。「自共対決」を唱う共産党ですら個々の政策を非難するが、自民党政治への対抗ビジョンを打ち出せていない。
 ワーカーズは、戦後自民党政治と根本から袂を分かつ、「連帯行動の拡大」「当事者主権」「共生・協同経済の拡大」に基づく社会革命路線を目指す。(「政策要項試案」ワーカーズ7/1号参照)新たな社会ビジョンとともに安倍首相の反動政治に抗ってゆこう! (阿部文明)


対抗軸は労働権の強化と協同・連帯経済
──成長神話を振りまく安倍自民党と対決しよう!──


 参院選挙投票日が目の前に迫っている。その参院選では、昨年暮れに総選挙で政権に復帰した勢いを保って、安倍自民党が圧勝するとの予測が拡がっている。
 安倍人気の源泉は、人々の生活と暮らしに直結する、かもしれないアベノミクスだ。が、早くも劇薬による当然の〝副作用〟も覆い隠せなくなってきた。アベノミクスの内実はといえば、結局は労働者や庶民にツケを廻すことで大企業だけが肥え太る、危うい成長万能路線でしかない。
 アベノミクスに踊らされても、私たち労働者によいことは何もない。対抗軸は労働権の強化と協同・連帯型経済への転換にこそある。

◆張り子の安倍人気

 右翼復古主義の安倍政権が、なぜこれほどの支持を維持しているのだろうか。それは投票行動を左右する有権者の関心の有りどころに左右されている。このところの各種選挙で示されているように、有権者の関心の所在ははっきりしている。それは生活に直結する景気・経済政策であり、社会保障制度の先行きだ。厳しい雇用や暮らしが少しでも改善されるなら、その他の政策課題はとりあえず棚上げしても仕方がない、そんな気分が垣間見える傾向ではある。
 たしかに有権者は、大震災や原発事故からの復旧・復興事業の流用や消費増税、原発回帰などには批判的だ。沖縄米軍基地の移設問題でも同じだ。ただそれは民主党政権時代から引き継いだという面もあって、安倍自民党政権批判に直結しない。
 それより何より、安倍政権は、このところの〝失われた20年〟の経済的な低迷から脱出できるかもしれない、という可能性を演出してきた。他の政策が二大政党の民主党とさほど変わらないのだったら、ここは景気や経済を上向かせるかもしれない安倍自民党に賭けてみてもいいのでは、と考えているのだろう。
 そのアベノミクスとは、右翼復古主義的な安倍カラー政治を実現する環境整備として、目先の景気や生活の改善(の可能性)を演出することにある。アベノミクスを一皮むけば、旧態依然とした借金による利権・バラマキ政治の復活であり、金融緩和は巨額のマネーを市場に投入する着地点抜きでのインフレ政策に過ぎない。規制緩和や企業減税など〝三本目の矢〟も、とにかく営利活動に便宜を図ることで企業にテコ入れするだけのもの過ぎない。
 アベノミクスは、結局はこれまでの歴代政権による企業へのテコ入れによる景気・経済対策という三番煎じに過ぎないし、雇用破壊や賃金切り捨て構造を温存したままでの政策であるが故に、まやかしに終わらざるを得ない。

◆白紙委任はしない

 安倍政権は、昨年暮れに発足してから一貫して〝参院選までは経済だけしか手を付けない〟としてきた。この参院選で勝ってねじれ国会を解消するまで、景気や経済が上向くかもしれないという幻想を振りまくことだけやればよい、というものだ。
 そうはいっても、安倍右翼復古政治を封印してきたわけではない。すでに自民党の改憲草案は公表されているし、その他も参院選後の夏以降、順次政治日程にのせられるように、検討機関などの仕掛けを整備してきた。
 その安倍首相がめざす政治は、戦前回帰をめざす〝戦後レジームからの脱却〟であり、その柱が憲法改定だ。その延長には、あの敗戦への屈辱に起因する〝坂の上の雲〟を追い求めるような強い日本への回帰願望がある。具体的には集団的自衛権の容認による戦争ができる普通の国家路線、国防軍、天皇の元首化など国家が中心になった日本への回帰という野望だ。
 安倍首相は、そうした復古的な戦前回帰の政策を実現するには、強くて安定した政権が不可欠だと考える。想いの道半ばにして倒れた第一次安倍政権の教訓だという。第一次政権では、自身の思いが先走りすぎて、身の回りの生活を置き去りにしたことで世論から遊離し、結局は政権を投げ出さざるを得なくしてしまった。その轍を踏まないという想いが、有権者を毛針で釣るかのようなアベノミクス、ということなのだろう。
 安倍首相がどう考えているにせよ、私たちとしては戦前回帰の野望に突き進む安倍自民党に白紙委任することなど、できるはずもない。安倍自民党にきっぱりとノーを突きつけなければならない。

◆成長神話

 安倍自民党が圧勝するような政治を許してきたのは、安倍自民党を真っ正面から撃つような対抗軸がないからであり、そうした対抗勢力が見えないからだ。
 端的なのは、安倍自民党政権の多くの政策が、鳩山、菅、野田各民主党政権の手によって着手されてきたものであるという点だ。たとえば、鳩山内閣での普天間基地の国外・県外移設の挫折、菅内閣によるマニフェストにはなかった消費税増税の打ち上げ、野田内閣による人からコンクリートへの回帰、消費増税・原発再稼働・TPP参加等などだ。いわば民主党政権は三代の内閣を経るなかで、かつての自民党政治へと回帰してしまったわけだ。安倍自民党政権は、本来の財界や官僚にベッタリの政策を、自分たちこそ本家であるとばかりに民主党政権から引き継ぐだけでよかった。
 安倍自民党政権によるアベノミクスの演出を成り立たせているのは、二大政党が結託した民自公の三党合意政治という翼賛政治だ。民主党と自民党のなれ合い政治としての三党合意政治があるからこそ、アベノミクスへの幻想が生まれるのである。
 アベノミクスとは、端的に言えば輸出主導の経済成長至上主義である。成長神話と言ってもよい。経済成長と人々の暮らしを直結するものとして考える立場は、企業業績の改善こそが人々の暮らしの改善をもたらすとの短絡化した見方に簡単にすり替えられる。その土俵上では、企業業績の改善は誰も否定できない大義となる。
 こうした企業利益至上主義は、企業業績の改善→利益の分配→人々の生活や暮らしの改善という三段階論法で正当化されてきた。いわゆるトリクルダウン理論だ。しかし、この理論は、日本の失われた20年で完全に破産している。その間、大企業は雇用や賃金を切り刻むことで空前の企業利益を上げてきたからだ。企業業績の改善が労働者の処遇改善に直結しない経済モデルがつくられてきたのだ。
 経済のグローバル化にともなう追いつき追い越せ時代の終焉、少子高齢化による人口減少時代の到来等々、これまでの発展モデルや経済展望が根底から崩れていることは、もはや覆い隠せなくなっているのだ。アベノミクスに惑わされている暇はない。

◆対抗軸

 対抗軸として提起すべきものは、短期、長期の二つ考えられる。
 当面の課題としては、労働者・労働組合による雇用や労働時間などに関する規制力の獲得だ。働いているという現実から生じる労働権を復権し、雇用と賃上げを闘い取る体勢を創り上げることがどうしても必要だ。
 この間の〝失われた20年〟の内実は何か。それは経済のグローバル化の中、企業が生き残りるために労働者の雇用と賃金を切り刻んできた結果である。派遣労働の緩和などで非正規労働が劇的に増やされ、いまでは非正規労働者が全雇用者の3分の1を超えてしまった。非正規労働の拡大は当然のことながら不安定雇用や処遇の劣悪化をもたらしている。賃金は減らされ、ブラック企業も横行している。その〝失われた20年〟のただ中で、企業利益は過去最高を繰り返してきた。その象徴が、疲弊する家計の対極での、企業の内部留保250兆円という現実なのだ。
 こうした現実をみれば、企業の利益は労働者の雇用と賃金を切り刻んだ結果として生み出されたものであることがはっきりする。この現実が突きつけているのは、労働者は雇用破壊と処遇悪化と闘うことなく、企業にいいように扱われてきたという厳しい現実だ。この間の出来事は、労働者は自ら闘わずして自分たちの処遇と生活を改善することはできないことを、改めて私たちに突きつけている。アベノミクスなどという毛針政策に踊らされているわけにはいかないのだ。
 長期的な課題は、生産者と消費者が結びついた協同組合型の経済など、協同・連帯型経済への転換を目指すことにある。高度成長という過去の栄光を追い求めても,それはもはや不可能だ。経済のグローバル化は、世界に占める日本の位置を劇的に変えてしまったからだ。かつては1ドル=360円という為替レートのもとで、高い労働生産性や低賃金を武器に、世界に製品を輸出できた。が、いまは後発国に追い上げられる立場になった。
 いまこそ経済成長神話から卒業すべき時ではないだろうか。自転車操業的な成長神話から解き放たれ、人々の生活改善そのものを直接目的とする協同型・連帯型経済への転換をめざす立場から、安倍自民党と対決していきたい。(廣)案内へ戻る


「沖縄通信・NO38」・・・参院選沖縄選挙区

 今、沖縄選挙区で三期目をめざす糸数けいこ氏と沖縄比例代表に初挑戦する山シロ博治氏(大田昌秀氏から山内徳信氏へ、そして山シロ博治氏へ引き継ごうと)の二人を当選させようというセット選挙作戦が力強く取り組まれている。
 沖縄選挙区(改選1)は届け出順に幸福実現党公認の新人で党県本部副代表の金城竜郎氏(49)、任意団体国際ガイドクラブ代表で新人の新島メリー氏(67)、自民党公認の新人で沖縄偕生会理事長の安里政晃氏(45)=公明推薦、社大党委員長で現職の糸数慶子氏(65)=社民、共産、生活、みどり推薦=の4氏が立候補した。
 「21日投開票の参院選に向け、沖縄タイムス社は朝日新聞社と合同で4、5の両日、県内の有権者に電話で序盤の情勢調査を実施した。沖縄選挙区は、現職で社大委員長の糸数慶子氏(65)=社民、共産、生活、みどり推薦=が先行し、新人で自民公認の安里政晃氏(45)=公明推薦=が猛追している。」<7月7日、沖縄タイムスより>
 沖縄選挙区は糸数氏と安里氏が事実上の一騎打ちを展開し、有権者約110万人の審判が下される。
 こうした情勢調査もあり、自民党本部は沖縄を重点選挙区(岩手、山形、千葉、東京、三重、沖縄の6都県を重点区に絞り込む)と位置付け、21日の投開票日をにらみ安倍晋三首相が現地入りをする方向だ。しかし、自民党本部は「辺野古新基地建設推進」を党公約にし、一方の党県連は「あくまで県内移設反対」を県連公約に、党として公約が一致していない選挙戦おこなっており、県民の不信感は根強い。
 一方、参院選比例代表には県内から4人が立候補した。当初、民主党から喜納昌吉氏が立候補宣言をしていたが、結局立候補を辞退した。立候補は社民党の山シロ博治氏(60)一人になると思われたが、なぜか告示直前になって三人も立候補する事態となった。
 共産公認の西平守伸氏(62)。そして、日本維新の会公認の儀間光男氏(69)<前浦添市長>。本部町在住で緑の党推薦の音楽家の三宅洋平氏(34)。彼は、東京都の吉祥寺駅前で第一声を上げた。
 参議院議員・山内徳信氏の後継者として、沖縄比例代表に立候補した山シロ博治氏は、2月頃よりこまめに全国を回り各地で集会を重ねてきた。
 東京と関西が合同で取り組む沖縄意見広告運動(第四期)は、2月よりオスプレイの沖縄配備撤回!と低空飛行訓練中止を求める全国キャラバンを取り組み、山シロ博治氏がそのキャラバン隊長を担当した。その活動内容とその成果を次のように報告している。
 「第四期は、ノー・オスプレイ全国キャラバンを、山シロ博治キャラバン隊長(沖縄平和運動センター事務局長、意見広告全国世話人)のもとで、西日本と東日本の2つのキャラバン隊をもって、全国の低空飛行ルート(7ルート)を中心に実施した。関西は2月19日より西日本ルートの中国地方、3月25日から四国ルート、4月16日から九州ルートを担当した。東日本は3月11日に福島現地に、5月12日から長野、新潟、秋田、山形のルートを回った。その活動をへて全面広告の取り組みとなりました。」
 「『普天間基地即時閉鎖、辺野古やめろ、海兵隊いらない』沖縄意見広告運動(第四期)は、6月9日(日)、琉球新報、沖縄タイムス、毎日新聞、東京新聞4社の朝刊に全面意見広告を掲載しました。」<写真参照>
 その後、大阪・京都や東京と各地に、山シロ博治の当選をめざす「勝手連」組織が作られ、活発な活動を展開している。東京で立ち上げられた「山シロ博治勝手連・東日本」(東京、神奈川、千葉、埼玉、静岡などの市民団体が加入)は、発足にあたって次のように述べている。
 「7月の参議院選挙は、日本の平和勢力・護憲勢力にとっては「自民党を中心とする改憲勢力の過半数獲得阻止」が最大の課題です。とりわけ沖縄差別に反対し、全国で米軍基地はいらないと運動をすすめている平和勢力にとっても重要な選挙です。私たちは、平和を願い、沖縄の気持ちを実現させるべく奮闘されている山シロ博治さんの活動をささえるため、この度『山シロ博治勝手連・東日本』を結成いたしました。全国の平和と民主主義を愛する皆さまに、山シロ博治さんの今後の米軍基地撤去、オスプレイ撤去を求める闘いとともに歩まれることを心より要請いたします。」
 このように、6年前の山内徳信氏の参院選の時より本土の選挙運動は大変盛り上がっている。やはり、沖縄問題と基地反対闘争が全国的に広がっている証拠ではないか。(富田 英司)


コラムの窓・・・ビクトリ・ユゴーの議会闘争

◆クーデターに抗して◆
 「レ・ミゼラブル」の執筆をユゴーが再開したのは、ナポレオン3世によるクーデター(一八五一年)により、ユゴーがイギリスに亡命してからのことである。ようやく完成した「レ・ミゼラブル」がパリ、ベルギー、プロシャ(後のドイツ)で刊行されたのは、クーデター勃発から約十年たった一八六二年のことである。「レ・ミゼラブル」は、クーデターによって成立した「第二帝政」に対する闘いを、亡命の地から呼びかけるためだった。ところで、亡命にいたるユゴー自身の闘いは、どのようなものだったのか?
◆議会で「貧困の根絶を」◆
 クーデターが起きる以前、ビクトリ・ユゴーは、詩人・小説家として活動する一方、民衆の立場から、何度も選挙に挑戦し、議員としても活動している。一八四八年の「二月革命」後の「憲法制定国民議会」にユゴーは立候補し、この時は落選したが、その後の補欠選挙で当選した。その後、ナポレオン三世が大統領選挙に勝利し、反動政治への歩みが始まると、ユゴーは、「貧困の根絶」をテーマに、ナポレオンとその手下たちを論難する演説を始めた。
◆「闇の権力を摘発!」◆
ユゴーは次のように演説した。「わたくしは「貧困の根絶」が可能だと考えるものであります。この議場では人民に向けた勇ましい演説がなされ、議場裏では選挙目当ての私語がささやき交わされています。(略)いやしくも人民の未来、国家の法律を定めようとするにあたり、なにも裏でこそこそ談合する必要はないと思うのであります。(略)わたくしは闇の隠然たる権力を摘発し、明るみにだしたい。それこそが、わたくしの義務なのであります。」(西永良成「訳者ノート」より)
◆議会解散・戒厳令に抵抗◆
 大統領となったナポレオンにとって、ユゴーやルイ・ブランなどの骨のある「社会主義者」は目の上のたんこぶでしかない。一八五一年十二月、ナポレオンは「議会の混乱」を理由に、クーデターを敢行し国民議会を解散し、戒厳令を敷いた。ユゴーらは抵抗委員会を組織し、一部の共和主義者と共にバリケードに立てこもり、「ルイ・ナポレオンは裏切り者だ。彼は憲法を蹂躙した。共和国万歳。憲法万歳。武器を取れ!」と檄を発した。しかし抵抗は広まらず、逮捕の危険が迫る中、やむなくユゴーは亡命した。
◆帝政下の新たな議会闘争◆
 ユゴーの亡命から十年。「レ・ミゼラブル」の刊行と機を一にするかのように、それまで「第二帝政」のもとで窒息しかかっていたパリの労働者の闘いは、息を吹き返し始めた。十年の間に、世代交代が起きた。新しい世代を代表する一人が、独学の熟練労働者(青銅工)のアンリ・トランであった。彼らは一八六三年の議会(立法院)の選挙に、「共和派」ではなく労働者の「独立派」として候補者を擁立した。
◆「過渡期」の闘い◆
 結果は惨敗であったが、トランはこの経験を「過渡期の闘い」として、前向きに総括した。彼は『パリの選挙に関する若干の真実について』というパンフレットで「われわれが通過する過渡期においては、人が受けたりあるいは獲得する教育は真理と誤謬の混合であり、古い教義の断片と新しいモラルの最初の準則が混じりあっている。」と述べている。(木下賢一「第二帝政とパリ民衆の世界」より)
◆「棄権主義」を批判◆
 トランの言う「過渡期」とは、共和派の中に、十年前のクーデターによる挫折感から「帝政下の選挙に白票を」投じ消極的な抗議を示すことしかできない「棄権主義者」と、帝政下であっても選挙に挑戦しようとする現実的な「行動派」が存在する状況のことである。トランは「棄権主義者」を、帝政前の第二共和制時代の崇高だが古い価値観にしがみついている人々として批判し、積極的に選挙を利用することを主張したのである。
◆現代に活かすべき経験◆
 長々と、ビクトリ・ユゴーの闘いと、その後のパリ労働者の闘いについて見てきたのは、時代は異なるが、現代の状況と微妙に共通するところがあり、今の私たちの課題について、じっくり考えさせられるところがあるように、私には思えるからである。(誠)案内へ戻る


連載⑧   オジンの新◆経済学講座ーー互酬性と対等性 上藤拾太郎

●互酬性から読み解く「人の心」の謎
 「人の心」なんてまるで哲学や心理学のテーマのようで「経済学講座」らしくないが、脱線と思わないでくれ。というのは、「社会・経済」と「人の心」の発達は密接な関係にあることが分かってきた。 
 進化理論の第一人者R・トリバースは言う。「感情や道徳があったから互酬性が発達したのではない、互酬性の発達にともない人間的感情や道徳の基礎が形成されたのだ」(趣旨、『生物の社会進化』参照)。
 このように人間は、バンドのような少数の集団の中で、互酬などの協力行動が「人の心の進化」を導いたのだ、その逆ではない。
 だから未開社会では自然な形で、人の心や人間関係と経済は調和していた。K・ポランニー風に言えば「経済は社会に埋め込まれていた」のである。

●互酬性は「心」の自立を生み出した
 たとえばこのようなことだ。
 互酬性などの協力行動は人間進化戦略の核心だ。それにともない「愛着」「恩」「友情」「感謝」「信頼」その他にも「気配り」といった内面の発達をもたらせたと考えられる。また、それが裏切られた場合「寛容」も必要だが度を超せば「不信」「不快」「軽蔑」「怒り」「報復(制裁)」という要素もある。このチェック機能がないと互酬性は成立しないからだ。
 互酬性の返礼は多すぎても少なすぎても良くない。相手の要望も的確にキャッチする必要もある。周囲とのバランスも無視できない。だから相手のみならず周囲の心を読みつつ、複雑な方程式を瞬時に解くように人間の心は進化した。
 このような人間の複雑な心の成長こそが、個々人の個性や自己意識、自立心をはぐくみ、原始共同体の団結を柔軟で厚みのあるものに成長させたと考えられる。言語の登場はその流れをさらに加速したであろう。
 ちょっと難しいが、オジンの言いたいことわかってくれたかな?

●団結は対等であってこそーーボスはいらない!
 原始社会では個々人は対等である。しかも厳格にだ。
 他人に命令口調や見下すそぶりは許されない。尊敬されている人物(長老など)はいるが、命令することはできない。狩猟採集民は、社会の文化やシステムすべてが集団内部の対等性の維持のために工夫されている。
 例えばすごく立派な肉を贈与すると「貸し借り」が二人の間に発生する。だから二人でこの肉の悪口をを言うのが習いだ。「なんて貧弱な肉だ!」と。あるいはこうだ。狩猟の名手に手柄が集中するのを防ぐために、弓矢の所有者(制作者)の手柄にもなるようにつねに配慮されている。
 原始的社会では対等性は決してゆるがせにできない掟だ。「(ブッシュマンは)特別上等のナイフを、ながく持ちつづけようとする者は誰もいない」(『狩猟民』E・サービス)ささやかな不平等もねたみや嫉(そねみ)をうむ。だからいくらほしい物でも手を出せない。(原始社会はおおらかに見えるが、自然界で生き抜くための掟は厳しく窮屈すぎるところがある。)
 何故だろうか? オジンは思う、協力関係を高め団結を固めるためには、人々は対等でなければならなかったのだ。ボスやお偉い「指導者」がワンマンに牛耳る組織で、団結や協力は心底生まれるだろうか? 自己意識の高まった人間が真摯に協力し合うためには、アカゲザルやチンパンジー集団のようなボス(アルファー雄)や序列は必要がなく、むしろ邪魔になった。だから、初期の人集団では「ボス」「位階序列」は退化しそしていつしか消滅したのだ。かくして名実ともに「対等な人社会」が生まれた。これが「オジン説」だ。
 話しを飛躍させよう。現代企業の取締役会を頂点とする位階組織は、労働者の自主性を削ぎ、働く意欲を奪う。対等性も協同性もないからだ。
 一方現代のワーカーズコープは、対等な所有者たちの協働労働を目指している。この違いが未来への分岐点だ。

●反骨のDNA
 新石器時代以降、農業などの生産力の向上は、しだいに部族間の優劣を造りだし、支配と被支配の関係が全く新しく生まれるようになった。しかし戦いに敗北しても、人は支配や抑圧を本能的に拒否する。日本軍国主義の支配下にあった朝鮮や中国人の怒りと反抗のすごさは、今も歴史に残るばかりではなくその怨念は今も生きて。
 「長いものには巻かれろ」と雌伏の時はあっても、人の不満や恨みは内攻する。格差や抑圧のある社会は、だから分裂しやすく脆(もろ)い。当然のことだ。
 対等性にならされてきた人類にとって、他人との格差・差別は怒りの原泉だ。支配者・富者は文字通り「目の上のたんこぶ」だ。
 目覚めた現代市民たちの反乱は、今ではトルコやブラジルまで拡大している。エリート政治家の、権力と予算の乱用は、容認できる物ではない!
 何度でも言おう。だから対等者の連帯に基づく経済を再興し、広域に安定した社会を打ち立てる必要がある!
    *   *    *    *    *    *    *
 すまん!最後はアジ演説口調になってしまった~。次回は冷静に互酬性をさらに分析するぞ。 (つづく)


色鉛筆-配達員を縛る「DOSS」・その後

 梅雨が明けたとたん、真夏の日差しが照りつけ、郵便配達の仕事は暑さとの闘いです。熱中症への注意は、毎日のミーティングで管理者から淡々と伝えられ、現場の状況を把握出来てない人物からの説明に、自身を守るの自分しかないと、言い聞かせる日々です。
 団地配達の私たちは、集合受箱での配達なので比較的、「楽」というイメージがありますが、3年前頃、分譲の一戸建て住宅ができました。そこには、ヨーロッパ風のカラフルな建物もあり、玄関は門で閉ざされ、日本建築にある軒先がありません。暑い日差しも大変ですが、雨の日はもっと厳しい現実が待っています。留守の際に書き留める不在通知が、雨に濡れて読めない状態になってしまうことがあるのです。
 そんな私たちの苦労も知らないで、「DOSS」(ディーオス)の導入が今年、6月1日から実施されました。このことは、既に「ワーカーズ」紙上で紹介しました。「DOSS」とは、「集配業務支援システム」のことですが、一ヵ月の体験をふまえ、感想ですが「支援」してもらっているという感覚は全く感じません。むしろ、この端末操作で現場は混乱している、と言っていいと思います。
 先日、私の同僚は午後の配達時に、出勤してから全く端末操作をしていないことに気付き、あわてて操作を開始したところ、「大区分」「戸別組立」がそれぞれ1分間という記録が出てきて、本人も含めみんな大笑いでした。そんな失敗も、管理者からは注意もアドバイスも無く、いわゆる、ほったらかし状態です。まあ、私たちもその程度のものかと、あまりこだわっていません。
 しかし、この「DOSS」の導入で成果があったことは、端末操作するなかで、配達に色んな種類・形態があるということを発見したことです。私たちの職場は、10時から14時の4時間勤務と9時から15時の6時間勤務の2種類です。端末の画面には1面に6種類の形態が出てきて、その面が4面以上あるのは確かです。そして、私たちは本来、「団地配達」(通常の普通郵便と書留や追跡調査のある郵便の配達)ですが、今は(1年前位から)混合配達も行かされているということを気付かされました。
 混合では、速達・ゆうパック・レターパック・EMS(海外からの速達)・時間指定の郵便物などですが、混合の要員不足を理由に、私たちに午前・午後①も配達を強行に押し付けてきます。要員不足の代替に課長(元課長代理)が配達してみましたが、時間がかかり過ぎお客さんに迷惑になったということでした。私たちは1日に3回も、行ったり来たりで、この暑い時にみんな疲れているのが実態です。
 「混合配達」という契約には無い業務を強いられているなら、時間給をアップしもらいたい、そんな声が、ちらほら出てきています。私も正当な要求と思います。この素朴な要求を管理者に伝えたらどんな顔をするやら? 神戸の長田郵便局で働く青年は、不当な時給切り下げに対し、裁判闘争に立ち上がりました。その勇気を共有することは、職場を少しでも改善していくことに繋がっていくことと思います。暑い闘いが、あちこちから上がってきたら・・・、そんな期待を描きながら、また明日も郵便を配達する私です。みなさんも、猛暑に負けず頑張りましょう。  (恵)案内へ戻る


「限定正社員」ってなに?

 安倍政権が成長戦略の一環として、「限定正社員」の普及に意欲を示しています。非正規社員の正社員化を促すということですが、いかにも眉唾物です。このアイデアは「規制改革会議」の雇用ワーキンググループにおいて、座長の鶴光太郎慶大教授が「労働市場が正規と非正規に二極化したままで良いのか」と言い、「限定正社員」の導入促進が打ち出されたのです。
 この〝限定〟というのが曲者で、明らかに正社員とは違った処遇(職務や勤務地、労働時間)が用意されているものです。こうしたものが、実態的には非正規労働者の処遇改善ではなく、正社員の労働条件切り下げに利用されるのは確実です。狭い枠での雇用から、その枠がなくなったら解雇ということにもなりそうです。
 時あたかも6月14日、「日本郵政が限定正社員」来春導入へという報道がありました。「日本郵政グループが、勤務地などを限定する『限定正社員』を2014年4月から導入する方針を固めたことが13日、明らかになった。当初は内部の月給制契約社員ら非正規社員から登用し、15年度からは新卒採用にも広げる」(神戸新聞)というものです。
 報道では〝待遇抑え非正規登用〟という評価をしていますが、これは明らかに間違いです。今やブラック企業の代表となっている郵政です、期間雇用社員の処遇改善なんて建前に過ぎません。むしろ、正社員がどんどん退職していくなかで、新規採用はこの限定正社員・新一般職に置き換えるのが狙いでしょう。しかも、年収470万円で頭打ちです。
 まだ郵政省下の国家公務員時代、私の年収は700万円はありました。そこからどんどん賃金カットが進んで定年退職時には600万円を切っていました。それと比較しても、最高年収が470万円程度というのは低すぎます。郵政グループは現在の正規職レベルの処遇はなくすという意思表示を行っているのであり、JP御用労組はこれを受け入れることで生き残りを図ろうとしているのです。
 さてここで思い当たるのは、男女雇用機会均等法が成立し、雇用において労働者に対する男女差別が禁止されたとき、企業が考え出した総合職と一般職のコース別雇用形態です。女性労働者を女性であるという理由だけで補助的業務に就かせる、雇用条件を切り下げることができなくなったため、転居を伴う転勤がない一般職が女性労働者にあてがわれました。
 結局のところ、企業戦士として忠誠を誓う幹部候補生のみを高処遇の正規職とし、それ以外は適当な雇用形態とし、簡単に解雇できるようになるのが経営側の望みです。そして、「限定正社員」はその望みをかなえるための一つの選択肢として、安倍首相は資本家に提供しようというのです。
 改正労働契約法が5年の年限を切って有期雇用から無期雇用への転換を規定し、差別的処遇も禁じたものを、「限定正社員」がその受け皿になるのです。もっと手っ取り早く、多くの企業は5年になる前に非正規労働者を雇止めにするでしょう。どう転んでも、団結の力で立ち向かわない限り、労働者はこうした使い捨ての劣悪労働条件を撥ね退けることは出来ないでしょう。 (折口晴夫)


編集あれこれ
 前号の第一面は、「低調な得票率の東京都議選 参議院選は原発推進・容認の自公の議席を大幅減にしょう!」でした。この一面記事は、現下の階級闘争の一面を鋭く付いたものです。確かに共産党は第3党になり、「躍進」したかですが、実際には43・5%の低投票率の下での「躍進」でしかありません。本当であれば低投票率が問題とされなければならないのに、共産党はその点には全く触れずに久しく停滞していた党勢の「躍進」に大騒ぎしています。
 ここから分かる事は、共産党には現下の階級闘争の閉塞状況に対する危機意識が欠如している事です。共産党は久々の議席倍増に浮かれていますが、都議選での自公の躍進は、国政レベルでは自民党が長らく追求してきた憲法改正に手を付けられる状況を生み出しています。
 今回の参議院総選挙は、まさに憲法が改正される状況を作らせるかどうかの正念場です。私たちは自公の策動を打ち破らねば成りません。
 第二面から三面に関しては、「ワーカーズの政策要項(試案)」が掲載されています。この政策要項は、ワーカーズの当面の「具体的」な目標であり、ワーカーズの政治潮流としての方向性・立ち位置を明確化するものです。現在組織内討論を行っていますが、読者の皆様の感想や意見をお伺いしたいと考え、ここに公表するものです。
 私たちは、この政策要項を充実させるため、読者の皆様からの質問等を共同作業として大歓迎いたしますので、よろしくお願いいたします。
 第四面から五面には、「安倍“毛針公約”には踊らされない!」との記事を掲載しました。私たちは、安倍自民党が推進している戦前回帰には反対しているし、当然の事ながら彼らへの白紙委任は拒否をするものです。断固闘っていこうではありませんか。
 第六面には、連載記事である「沖縄通信№37」を掲載しました。今回は、「慰霊の日」と「高江の裁判判決」についての記事です。
 第七面は、例の自民党の高市政調会長の「原発事故によって死者は出ていない」発言を、事実隠蔽と被災者への冒涜を糾弾する立場から厳しく批判した記事を「コラムの窓」で取り上げました。
 第八面から九面には、何でも紹介として、家族を取り上げて問題を論じています。ぜひ読者の皆様には何回も読んで頂きたいと考えています。読者の皆様にいささかにでも話題提供できたとしたら、編集者としての大いなる喜びです。
 また第五面には、出生率を話題とした「色鉛筆」を、第九面には、連載の「オジンの新◆経済学講座⑦」を掲載しました。
 第十面には、読者からの手紙を2通掲載しています。皆様からの手紙は必ず掲載いたしますので、どしどしお寄せ下さい。
 前号は、このような多彩に記事を掲載することができました。今後も努力いたしますので、ワーカーズをよろしくお願いいたします。(直)

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