ワーカーズ500号  2013/11/15   案内へ戻る
『ワーカーズ』紙500号を迎えて
秘密保護法、労働法制規制緩和、原発事故開き直りを許すな!
自律した労働者たちによる協働と連帯の社会をめざそう!


 『ワーカーズ』紙は500号を迎えました。この20年の間、本紙は、労働者・市民の立場に立ちつつ、政治、経済、社会、文化や思想について論じてきました。労働者・市民の闘いの現場からの要請に十分に応えられたかどうか覚束ないところもありますが、既成の政治勢力によっては示せない論点や見解を打ち出すべく努力をしてきたと自負をしています。
 現在の情勢に目を移せば、秘密保護法案をめぐる動きが猶予ならない状況を迎えています。政府・官僚機構が、何を秘密にするかを勝手に決め、何が秘密に指定されたかも明らかにせず、指定解除の時期も不明。そうしておいて、その秘密とされた情報を得ようとした市民やジャーナリストや政治家などを厳罰で処罰する。処罰される側が自らを弁護しようとしても、秘密に触れざるを得ないために弁護活動さえままならない。こんな稀代の悪法が、国会議席の多数を笠に着て、強行されようとしています。
 その狙いが、日米の軍事一体化や共同軍事行動のいっそうの強化と拡大、戦争が出来る国づくりであることは明らかです。政府与党が持ち出す口実は中国や北朝鮮の脅威ですが、彼らの口車に乗せられれば、日本もまたグロテスクな情報言論統制国家と化していく以外にありません。
 戦争が出来る国づくりとそのための情報言論統制の体制づくり。それと並んで、いま政府与党が並々ならぬ意欲を示しているのが、労働法制の規制緩和です。現行の労働者派遣法の「常用代替禁止」原則を撤廃し、解雇や労働時間の規制を特例措置として緩めることができる「特区」を創設し、解雇の金銭解決を導入するなどして、そうでなくても有って無きがごとくなってしまった労働者保護の制度をさらに破壊しようとしています。産業競争力の強化などと銘打っていますが、内実は労働者のいっそうの無権利化、雇用や賃金を資本の意のままにさせる施策です。
 アベノミクスによる金融市場へのマネーのバラマキと公共事業の大盤振る舞いはミニバブルや円安を生み出しましたが、それで慢性的な過剰生産状態が解消されることはあり得ません。そこで資本と政府は、彼らの本性を露骨に現して、労働者への搾取の強化の徹底化をめざそうとしているのです。 労働者は、軍事力強化や戦争が出来る国づくりに対しては、働く者の国際連帯と諸国民の情宜を対置して闘います。搾取のいっそうの強化の目論見に対しては、職場からの抵抗、労働組合の組織化や立て直しを通して闘います。『ワーカーズ』紙は、引き続き、働く仲間に無くてはならないメディアとして、内容の充実、発進力の強化をはかることを誓いつつ、ここに第500号をお送りします。(阿部治正)


特定秘密保護法案を廃案に追い込もう

情報を知ろうとしただけで処罰される!
 今号は、ワーカーズ発行500号という記念すべきものです。そこには、約20年の月日が流れています。20年前と比べて、政治情勢はひどくなる一方です。こうした状況を何とかしたいと思い、これからも活動を続けていきます。
現在国会で特定秘密保護法案が審議されていますが、この法案が成立すれば、広範囲な情報が「秘密」とされ情報を漏らした公務員だけでなく、取得した側も処罰の対象となります。政府が不都合な情報を隠し、それを暴くことが罪になれば国民が政府の本当の姿を知ることはできなくなります。
 政府が持っている情報の中から「特定秘密」を指定し、それを漏らすと、最高懲役10年の刑が科せられます。秘密を扱う公務員も限定し、何重にも情報を国民から遠ざける仕組みになっています。
 情報を知ろうとする行為も罪に問われることになります。原案では「あざむき」「脅迫」などで特定秘密を聞き出した側も、最高懲役10年、情報漏えいと情報を聞き出すことを「そそのかし(教唆)」「あおり仕向ける(扇動)」行為にも最高懲役5年が科せられます。
 政府は「通常の取材行為は処罰対象外」と強調するが、その判断は、あくまでも政府の裁量です。かつて、 新聞記者が沖縄返還をめぐる日米の密約情報を入手した時、外務省の女性事務官に漏えいを働き掛けたとして、1972年に国家公務員法違反で逮捕、有罪になった事件がありました。要するに、政府の判断で簡単に処罰されてしまいます。 また、調査活動をする市民や研究者、情報公開を求める民間団体なども、処罰される可能性があります。情報公開法とは、逆の動きです。情報を知ろうとしただけで、最高懲役10年です。とんでもない法案です。 

何が特定秘密かわからない
「防衛」「外交」「安全脅威(スパイ)活動の防止」「テロ活動防止」の4分野で、秘匿の必要が特に高い情報が「特定秘密」に指定されます。どのような情報が秘密なのか外部には分かりません。秘密を扱うことが想定されるのは、省庁の政務三役や防衛省、外務省、警察庁、都道府県警察の職員、それに防衛産業など官庁と契約を結んだ会社の社員らです。政務三役を除き、渡航歴や家族の国籍、犯罪歴、借金、薬物中毒の有無、精神科病院への入通院歴などを申告し、チェックを受けます。「秘密」の内容を、厳罰を設けてまで秘密にするものかどうかのチェック機能はありません。今回の特定秘密保護法案では、防衛相や外相、警察庁長官らが秘密指定し、解除の必要性も行政機関に委ねられています。秘密の指定期間は5年が上限ですが、再指定の回数の制限はなく、何度も指定を続ければ永久に秘密にすることも可能です。30年を超えて秘密指定を続けるときは、内閣の承認があればOKです。
10月28日付けの神戸新聞での世論調査によると、特定秘密保護法案に賛成は35・9%、反対は50・6%、分からない・無回答13・5%となっています。多くの人たちが、この法案に反対しています。私たちの知る権利を大きく制限し、国家による情報統制を拡大するこの法案を廃案に追い込みましょう。(河野)案内へ戻る


特定秘密保護法案
統制社会がお好きな安倍政権──国民を敵視しつつ肥大化する行政府──


 国家安全保障会議の設置が決められたなか、こんどは特定秘密保護法案の国会審議が始まった。その法案が持つ性格は、国家・行政が中心の社会、国家が国民を統制する社会をもたらすことにある。
 特定秘密保護法案を廃案に追い込み、国家・行政中心の統制社会をつくろうとする安倍政権の逆流攻勢と対決していきたい。

◆行政による情報独占

 特定秘密保護法案の国会審議が続いている。しかも現状の国会情勢の中では、若干の修正で成立させられる可能性もある。この法案の問題点や危険性は、すでに多方面から指摘されている。それらを要約すると、
○特定秘密を指定するのは行政機関の長で、実質的には官僚が指定する。行政機関や官僚による恣意的な指定が防げない
○何が秘密情報かは曖昧、一端指定されれば何が秘密扱いにされたか監視・検証は不可能
○「知る権利」は明記されず、「配慮」の扱いどまり
○5年、30年という制限も延長可能
○情報取扱者の適正評価が拡大され、親族への調査も。身元調査は交友関係など身辺調査に拡大?
○共謀、教唆した人にも罰則──共謀罪、教唆罪による監視・弾圧が拡大
などだ。
 安倍内閣は特定秘密保護法案を、先に成立した国家安全保障会議と表裏一体のものとして位置づけている。米国との情報共有の必要性・重要性を掲げ、外圧をテコに成立を目論んでいる。が、この法案が持つ意味は、米国との情報共有のレベルにとどまるものではない。同会議や同法案は、外交・軍事の司令塔としての機能や戦争体制に関わるものだからだ。
 その戦争・戦争体制というのは、民主主義と対極のものだ。戦争は敵対関係そのもの、敵の動きを見抜き、敵に対して自分を隠すことを本質としている。敵から身を隠すためには、味方からも身を隠さねばならない。敵を欺くためには、見方を欺かねばならない。情報はどんどん隠され、一部のリーダーに独占される。
 民主主義・国民主権とは、主権者たる国民がすべてを知りうる立場を確保する、ことが前提になっている。特定秘密保護法案は、そうした意味でも、民主主義・国民主権の否定をもたらす。

◆国家・政府を守る?

 安倍自民党による国家主義への傾斜は、何も特定秘密保護法だけに限らない。あの自民党改憲草案にも色濃く反映している。草案で国家中心主義が色濃く反映している条項を上げてみよう。
○前文──天皇制国家、愛国心、国家形成の強調
○第一章──国旗・国歌の尊重義務
○国民の権利・義務──「公共の福祉」から「公益および公の秩序」による制限に
○家族の助け合いの義務
○国家緊急権の創設
○基本的人権の不可侵を削除
○憲法に対して、天皇、国務大臣、裁判官などの尊重義務から、国民の尊重義務に転換
 これらに国民総背番号制=マイナンバーによる国民の個人情報の把握や靖国参拝など、安倍自民党の国家中心主義は、上げればきりがないほどだ。
 安倍自民党による改憲策動や、来年に先送りされている集団的自衛権の容認へのもくろみ、それに今回の秘密保護法案など、安倍政権が舵を切る先に見えるのは、国家主権に立つ統制社会そのものだ。国民の安心と安全のためだという建前、すでに馬脚を露わにしている。
 表向きの説明と現実が逆になる、という実例は、北朝鮮を監視する偵察衛星打ち上げの場面でも露わになった。当初の説明では、防衛目的の情報収集で相手の情報がよく分かるようになる、という触れ込みだった。が、いったん導入されてからは、北朝鮮の衛星情報は〈防衛情報〉だと秘密にされ、国民は以前より情報が見えなくされてしまった。
 政府は外交・防衛には秘密があり、その秘密を守ることが必要だとしている。が、実際は、国民を重要な情報から排除し、情報に接近する国民を弾圧し、情報を行政機関が独占するためのものでしかない。そうした法案の思想は、国家中心の社会、国家が国民を統制する社会だ。政府が守ろうとしているのは政府や国家であって、国民ではないのだ。安倍政権の野望は、なんとしても打ち砕かなければならない。

◆三位一体

 国家による情報統制を志向するのは、なにも安倍首相に限らない。ただ安倍首相が突出しているだけだ。同じような法案は以前も出された。中曽根政権時代の1985年に国会に法案を提出した「国家機密法案」だ。最高刑は死刑。後押ししたのは、安倍首相の祖父、岸信介だった。
 中曽根元首相は、日本列島を浮沈空母として、米ソ冷戦時代に日米運命共同体論を主張していた。スパイ防止法という建前だったが、本質は特定秘密保護法案と同じ、国家による情報独占だ。その法案も、国民・各界による反対運動の広範な拡がりで、廃案に追い込まれた。
 国家が情報を独占しようとすれば、国民にウソをつく。ウソをつくばかりでなく、秘密を握られないために国民監視を強化する。いまドイツのメルケル首相など、米国による同盟国の首脳などへの盗聴事件が波紋を拡げている。オバマ大統領は、盗聴の事実を公式には認めていない。国家による情報独占と、国民へのスパイ、国家によるウソは、三位一体なのだ。
 秘密の存在は、本来民主主義と相容れない。外国に対して隠すのだと言いつつ、実際には国民から政府の情報を遮断する。主権在民を建前とするならば、主権者である国民は、すべてを知ることができなければならない。
 国民主権の立場からも、特定秘密法案を廃案に追い込もう!統制社会をつくる安倍自民党を政権の座から引きづり下ろそう!(廣)案内へ戻る


沖縄通信・NO42・・・ 押しつぶされないぞ沖縄は

 昨年末に誕生した第2次安倍自民党政権は、憲法改正、国防軍創設、武器三原則見直し、集団的自衛権の確立によって米国と共にいつでも戦争のできる体制づくりをめざしている。今国会では戦時体制意識した「特定秘密保護法」と官邸主導の日本版「国家安全保障会議(NSC)」成立を画策している。
 そのために、日米軍事同盟に抵抗する最大勢力である沖縄を国家権力(防衛省・外務省の官僚機構、警察権力、司法、マスコミ、ネット右翼等々)を総動員してつぶそうとしている。あくまで「米国と日本本土の二重の軍事植民地」である沖縄を支配していく決意のようだ。

1.オスプレイ2年連続の強行配備とやりたい放題の飛行訓練
 ①ゲート前抗議行動への弾圧・・・7月22日夜、沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の野嵩ゲート前に新たなフェンスを突然設置した。言うまでもなく、8月に追加配備のオスプレイ12機が普天間飛行場に来ることを考えて。
 昨年の9月下旬のオスプレイ配備の際、反対派市民グループによって全てのゲートが封鎖された事があり、今回の新フェンス設置は追加配備で再び高まる反対運動を押さえ込む狙いがあった。
 ②墜落の恐怖・・・日米両政府はオスプレイ配備に際して、オスプレイは「安全だ、安心してほしい」と強調するが、そんな事を信じる県民はほとんどいない。
 なぜなら、米国ではオスプレイの墜落事故が毎年2件も起きている。今年の8月には、ネバダ州のクリーチ空軍基地近郊で着陸に失敗した事故が発生。その際、海兵隊員らは着陸を「墜落」と言い、機体は「黒こげだ」と証言するが、基地広報室は「ハードランディング」との表現で「墜落」という印象を否定。今回の事故現場はクリーチ空軍基地から約5キロ、公道沿いの地点で、周囲に住宅などがない平地だ。
 米軍普天間飛行場には、事故機と同型のオスプレイが配備されている。住宅地が密集していて「世界一危険な飛行場」と言われる普天間飛行場で同じような事故が起きたらどうなるか?「日米政府は、沖縄で事故が起きないと分からないのか」と、怒りの声があがっている。
 ③騒音と低周波の被害・・・「いつ墜落するか不安だ」などの声が日ごとに高まり、日米両政府への怒りは募るばかり。同時に、オスプレイのもたらす騒音・振動で「すぐ起きてしまう」と体の変調を訴える人も。
 オスプレイが低空飛行で通過する度に重低音を響かせ、窓や建具を「ガタガタ」と振動させる。テレビの音は聞こえず電話もできない。9月末には、オスプレイが4日連続で10時過ぎの夜間飛行訓練を実施した。「近ごろの夜間訓練はひどい。騒音が耳の中にも響いて、寝始めた時に何度も起こされる」と怒りをあらわにする。
 7月に県はオスプレイの日米合意違反飛行が318件もあると指摘した。ところが、沖縄防衛局は「違反なし」との回答。合意違反がなかったとする根拠のほとんどは米側の説明に基づくもの。合意当初から懸念されていた通り、「なるべく避ける」「できる限り」などのただし書きを持ち出し違反ではないと結論付けている。このように、防衛省は沖縄県民の生活を守ることよりも米軍の運用を優先させ、米軍に追随しているのが実態だ。

2.オスプレイパッドの強行建設
 ①伊江島・・・反対運動が少ない伊江島では、米軍伊江島補助飛行場内でのオスプレイパッド建設がどんどん進み、6ヶ所のパッドがもう完成し、伊江島はオスプレイ最大の訓練基地になっている。海兵隊は「規模の大きな訓練が可能になり、師団レベルでの着陸訓練が可能になった」と言っている。
 6月には、同村西崎の酪農家(補助飛行場のフェンスから約600メートルの位置)で、乳牛3頭が早産し、母牛2頭が死んだ。「オスプレイの騒音が原因ではないか」と言われている。オスプレイの低周波は人体(特に乳幼児)にも大きな影響を与えると指摘されており、国や県レベルでの長期的な騒音測定調査が必要である。
 ②高江・・・高江は米軍北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)と隣り合わせになっており、高江集落を囲むように新たな6ヶ所のオスプレイパッドの建設が予定されている。7年前から「ヘリパッドいらない住民の会」が中心となり、毎日24時間の工事阻止活動を続けている。

3.辺野古新基地建設のごり押し
 ①埋め立て申請問題・・・3月22日に沖縄防衛局は県に「辺野古埋め立て申請書」を提出した。県は6月~7月にかけて「告示・縦覧」を行い、利害関係者の意見書を受け付けた。この11月には地元「名護市長」の意見聴取も行われ、いよいよ仲井真県知事の可否判断(不承認、保留、承認)が、いつ?どうなるか?注目を集めている。
 この「埋め立て申請書」で驚くことは、埋め立て工事費だけで2310億8700万円を予定。飛行場建設を含む全体の工事費はまだ示していない。
 埋め立てに使う土砂の採取量は約2100万立方メートル。2100万立方メートルと言われてもピンとこないと思う。10トンダンプで計算すると350万台分の量である。
 キャンプ・シュワブ陸上部や辺野古ダム周辺から土を採取するが、県内外から購入する土砂(海砂や岩ずり)は約1700万立方メートル。その採取場所は県内が本部と国頭、県外が徳之島、門司など7県の9地区15カ所。
 まさに過去に例のない、とてつもない埋め立て工事となる。自然団体が指摘するように、ジュゴンやウミガメがいる辺野古の海、サンゴの宝庫である大浦湾が全滅してしまう。
 ②どんどん進んでいる陸地(キャンプシュワブ内)工事・・・埋め立て海上基地建設は、県が県外移設を強く求める中、全く進んでいない。ところが政府はその裏で移設を前提としたシュワブ陸上部の整備事業を先行させている。2006年の米軍再編合意以降で242件、事業総額は約295億円に上がっている。
 埋め立てに関する環境影響評価(アセスメント)調査費のほか、隊舎や倉庫や管理棟の建設、造成工事など。さらに訓練施設建設費等々。「移設を前提とした工事を先行して進めることは県民に対する背信行為だ」との批判が出ているが、防衛省は「陸上工事は代替施設とは直接関係ない建築物だ」と言って工事を進めている。やはり、彼らはあくまで辺野古移設を前提に事を進めている。油断は禁物だ!
 ③新基地建設推進派の動き・・・いよいよ1月19日投票の「名護市長選挙」が始まる。稲嶺ススム氏の再選を阻止したい推進派は、保守系から末松文信自民党県議と島袋吉和前市長の2人が出馬を表明。三つどもえの構図となっている。保守一本化が焦点と言われているが、今後の展開は予断を許さない。
 さらに、今「基地統合縮小実現県民の会」と名乗る団体が、「基地の危険性の除去」と「米軍基地の縮小軽減」のためには「辺野古の米軍基地に統合縮小すること」が最も有力で、「辺野古の埋め立て承認申請書」をすみやかに認可するよう要請するとして、5万人署名活動を展開している。
 この会の中地昌平会長は、「美しい日本の再建と誇りある国づくり」を掲げ、憲法改正の推進や「従軍慰安婦」の強制連行の否定などで国民運動を展開する「日本会議」(会長・三好達元最高裁長官)の沖縄県本部会長を務める人物である。
 この呼びかけ人の中には、普天間飛行場の県外移設を公約にして当選した西銘恒三郎衆議院議員と島尻安伊子参議院議員・内閣府政務官の2人がいる。2人は選挙公約を破棄して、「辺野古移設」賛成を言い出し、県民から厳しい批判を受けている。

4.竹富町教科書で是正要求・・・・下村博文文部科学相は10月18日、竹富町教育委員会(中学校公民教科書で東京書籍版を採択)が同一採択地区の石垣市と与那国町(こちらは育鵬社版を採択)と違う教科書を独自に採択している問題で、これは教科書無償措置法に違反しているとして、地方自治法に基づく「是正要求」をするよう県教育委員会に指示した。
 教育改革を掲げる安倍政権が、国の教育方針に従わない地方自治体に対して「是正要求」という最も強い措置を初めて講じた。保守色の強い教科書の採択を義務付けることで、国の地方教育行政への介入を鮮明にした。
 「子どもと教科書全国ネット21」の俵義文事務局長は「政府、自民党は戦前のような中央集権的な教育体制をつくろうとしている。そんな中で竹富町の抵抗は目障りになり、放っておいては示しがつかない。見せしめのための是正要求だ」と批判する。

5.与那国島への自衛隊配備・・・陸上自衛隊の沿岸監視部隊配備の是非が争点となった8月の与那国町長選挙は、自衛隊配備推進派の自民党現職の外間守吉氏が47票差で反対派の崎原正吉氏を破り3選を果たし、これで自衛隊配備が進むと見られたが?
 配備予定地は町有地で、現在農業生産法人南牧場(大嵩長史社長)が町と契約して与那国町有地を牧場として使用している。
 ところが、町と防衛省は6月、南牧場等の町有地を年間1500万円で賃貸する事を定めた仮契約を締結した。その事を、南牧場社に説明しなかったこともあり、不信感を抱いた同社代表らは選挙戦で反対派の崎原正吉氏を支援した。部隊が配備されれば牧場の大部分を失うことになり、廃業の危機も感じていた。
 今回、南牧場は「牛や馬がいるので経営を続けなければならない。途中で事業を放棄すれば国の補助金の返還もある」と説明し、14年以降も町有地を借りて牧場を続ける考えを示した。
 沖縄防衛局と町は、南牧場と町の契約解除を条件とする町有地賃貸借の仮契約を結んでいるので、南牧場が契約更新をすると、15年末までの建設計画に遅れがでる可能性がある。今後の展開がどうなるか?注目しよう。(富田英司)案内へ戻る


3・11をも利用し、原発輸出を策す安倍首相!

 11月7日のサンケイ新聞主張(社説)は「インフラ輸出 首脳外交で一層の弾みを」と題し、安倍首相の原発輸出外交を称賛している。
「新興国に向けた日本のインフラ輸出に弾みがついた。三菱重工を含む企業連合により、トルコでの原発4基建設が正式に決まったことだ。
 安倍晋三首相が今年2回目の訪問で受注を後押しした。官民連携による成功例といえよう」「アジアでは今後20年間に原発が100基増え、世界の原発は2030年までに約430基から最大800基に増えるとの試算もある。高成長が見込まれる新興市場を開拓する好機である」
 さらに主張は、東電福島第1原発事故の収束と停止中の原発の再稼働によって本格的な原発輸出に対する内外の理解が深まる、と指摘している。そして安倍首相は「原発事故の経験と教訓を共有することで、世界の原子力安全の向上を図ることは日本の責務だ」と豪語している。
 このもの言いは、汚染水はコントロールされているとウソをついて東京五輪招致を実現したときと同じだ。日本と同じ地震国トルコへの原発輸出がどれ程危うく、〝新興市場の開拓〟がどれほど原発過酷事故の可能性を高めるものであろうと、インフラパッケージ輸出の柱である原発輸出の先頭に立つ決意なのだろう。
 ところが、その福島原発がどうにも手が付けられない状態にある。同じく7日の新聞各紙は、4号機の燃料プールからの核燃料の取り出し作業が始まる、廃炉への第1歩だと報じている。しかし、使用済み燃料の取り出しはまだ先で、とりあえず未使用の核燃料の取り出しが始まるにすぎず、とても廃炉への第1歩とは言えない。
 1~3号機は溶けおちた核燃料の取り出しなど不可能だろうし、4号機もたとえ燃料プールが空になっても、解体・廃炉の目処などない。茨城県東海村の動力試験炉は日本で初めて廃炉となり、1996年に廃炉が完了したが、放射性廃棄物3770トンは埋設場所がなく、今も敷地内に保管されている。核のゴミの処理は埋め捨て方針だが、地震多発の日本列島にはそんな場所などない。
 さて、この安倍首相の原発生き残り策だが、いま完全に暗礁の乗り上げている。汚染水処理のことだ。外では何とでもウソがつけるが、足元から崩れるのを止めることは出来ないだろう。国内にあってもあまりに見え透いたウソゆえ、10月末の共同通信の世論調査において、「状況はコントロールされている」発言は信頼できないが83・8%に上っている。
 東電はサボタージュを決め込み、思惑通り国が汚染水対策の前面に立つことになった。といっても打開策はなく、ひたすらタンクに溜め込む等の糊塗策の末に公然と海に投棄するつもりのようだが、これが国際的非難を招くのは必至だ。ちなみに、こうして国が東電を支えきる姿勢を示したことで、銀行の融資も継続されることになった。
 東電は潰さないという初手の誤った対処が東電を増長させ、除染費用すら出さないで拒否している。その結果、東電支援のための税金投入がなし崩しで拡大し、豆腐ではあるまいし、2ちょうだの3ちょうだの値踏みに励んでいる。さんざクリーンな原発、安全で安いとされてきたが、取り返しのつかない核汚染によって、今後何兆円の税金がこの泥沼に投げ捨てられることか。
 環境汚染と経済的打撃、そして健康破壊。これほどまでの代償を払っても、安倍首相らは原発の延命を図ろうとしている。時間を巻き戻すことは出来ないが、かけ違えたボタンは最初からかけ直すほかない。ちょうど戦後補償のように。
 東電を破綻させ、経営者や株主に責任を取らせ、銀行等にも債権を放棄させ、事故収拾と被害の補償をさせる。もちろん、刑事責任も取らせる。さしあたっての攻防は再稼働阻止であるが、3・11の原点に立ち返って間違いを正していくことによって、原発にしがみついている勢力を打ち砕き、核なき未来を勝ち取ろう。
 (折口晴夫)案内へ戻る


コラムの窓・・・ ブラック企業許さず!『連帯を求めて孤立を恐れず』闘いましょう!

労働法を無視、あるいは法の網を悪用して従業員に長時間労働を強制する企業=ブラック企業(会社)が社会問題化し、「働くひとを守るために、働くひとがいる。」と言う 労働基準監督官『ダンダリン』の漫画やテレビドラマ化。「ブラック企業の個別の事例はもちろんのこと、それら企業を生み出す背景や社会構造の問題を広く伝え、誰もが安心して働ける環境をつくることをめざし」た人たちが、『ブラック企業大賞』なるサイトを設けて、ブラック企業の暴露と告発をしています。
 『パワハラ、セクハラ、残業代未払い、長時間労働、派遣差別、偽装請負・・・。日本の労働環境はいまますます悪化の一途をたどっています。それらの職場はここ数年で「ブラック企業」と称され、社会的にも注目されつつあります。しかし個別事例の調査やその問題の発信・解決も簡単ではなく、ブラック企業で働く当事者は、不当な処遇を受けていても声をあげられる状況ではありません。さらにはブラック企業を生み出す社会・経済的な構造についての分析や提言についても不十分であるため、きわだったブラック企業の存在は一時的に取り上げられても、企業全体・働く場全体の質の向上にはなかなか結びついていません。』という指摘は、 今日の各企業内における過酷な労働環境を述べつつ、改善策を見いだせない、閉塞的状況を指摘しています。
 ブラック企業が公然化し、大手を振るって存在しているという現状を造りだしてきた背景は、資本(企業)が利潤を得るために時の政府を利用しつつ、労働者の団結を弱め、懐柔しながら諸権利を奪ってきたからで、労働者対資本・政府という力関係の変化があります。
 1950年後半から70年代の日本の高度成長期に起こった三井・三池炭鉱争議、国鉄や郵政の反マル生闘争等に代表される合理化・「生産性向上運動」と労働組合弱体化政策によって、労働組合は“労使協調路線”が主流となり、労働者の意識も権利意識を持った“労働者”から「お客様は神様」という“従業員”や“職員”といったものに意識改革される等、“アメとムチ”による懐柔策が行われました。
 近年では小泉構造改革政策やアベノミクスなどの規制緩和によって、労働者の権利を保護していた労働基準法など労働法の改悪が行われつつあり、能力賃金・変形労働時間・正規と非正規の雇用形態の導入等々、労働者と企業(資本)との法律上の対等関係は後退し、その関係が変化しつつ、差別やイジメ、サービス残業やただ働きによる長時間労働、解雇制限の見直しなど、労働者を守る労働法など無いに等しく、指摘されているブラック企業だけでなく、多くの企業で日常化されているということ、山で例えるなら、頂上にブラック企業があり、裾野は広く大きく広がっている状態だということです。
 “団結”を唯一の力とする労働者は今、正規や非正規など雇用形態や労働条件で分断されており、右傾化した労働組合も当てにはならないかもしれません。一人で!無から運動を造りだしていくことは大変なことですが、困難を乗り越え一人から二人・三人と少しでも多くの人と、権利や職場の労働条件について話し合い・学習し、労働者の状態を改善していく運動を広げていく努力をすべきです。
 『連帯を求めて孤立を恐れず、力及ばずして倒れることを辞さないが、力尽くさずして挫けることを拒否する』これは、1969年東京大学安田講堂に立てこもった全学共闘会議の学生が、壁に書き残したものですが、筆者が倒れることを前提とした悲壮感で書いたどうかは不明だが、私達は、職場・地域の労働環境の改善を図り、生き抜くために『連帯を求めて孤立を恐れず』闘いましょう(光)


500号を迎えて

 本紙「ワーカーズ」が500号を迎えました。月2回の発行なので、ざっと数えて25年近くになります。創刊号がいつだったか、さかのぼれるほど記録もしっかりしていないし、記憶も定かではありません。
 1992年に社会主義労働者党から離脱し、その後2転3転して今に至っています。その間、細々とではあれ新聞を発行し続けられたことの達成感を味わっています。とは言え、今や紙の新聞は読まれなくなりつつあります。発行し続けることの意義もどんどん小さくなっています。とりわけ若い世代は、スマホやタブレットから情報を得るようになっているとか。私たちはそれに追いつけないでいるようです。
 20世紀の後半から21世紀初頭、私たちが生きてきた時代は未来の歴史書にどのように記載されるのでしょう。ソ連圏の崩壊は資本主義の勝利ととらえられ、左派は混迷を深めました。現実世界では米軍の破壊力が世界を席巻し、そのコントロール下で泥沼の地域紛争が続発しました。
 9・11はその結果として発生したものでしたが、ブッシュ米大統領はこれに最悪の反応を示し、21世紀は〝対テロ戦争〟で幕開けしてしまいました。或いは、これは米国が好んで招きよせたものかもしれません。つまり、軍産複合体の利益のために戦場を必要とする米国支配層が仕掛けた罠として。しかし、米国の命脈も切れたのか混迷を深めています。
 その間、日本社会は底が抜けたような墜落感に襲われ続けてきました。終身雇用という企業への隷属下での安泰も今はなく、いくらかでも安定した生活は手の届かないものとなりつつあります。2度の大震災が発生し、東電福島原発震災が追い打ちをかけました。この国に明日はあるのでしょうか。
 さて、本紙500号の発行を迎え、いささかポンコツ気味の私たち、しかしまだ役割を終えたとは考えていません。崩れ去ったかのようなこの国にあって、どの様を社会をめざすのか、考え抜き、若い世代にも届くメッセージを送り続けたいと考えています。そうした決意を持って、「ワーカーズ」を発行し続けます。読者の皆さんには、引き続き紙の新聞を手に取り、読み続けていただけますようお願いします。 (折口晴夫)
   

「ワーカーズ」500号を記念して

 私は、今、「色鉛筆」の記事を担当しています。女性4人で輪番制で、自分の思いを読者の皆さんにアピールしています。話題は身近なことになりますが、そこから見えてくるものを生活の中から、具体的に何が問題かを指し示す。そんな大袈裟なことではありませんが、自分の実感を大切にして書くことをモットーに しています。
 思い返せば、娘たちの入学・卒業を迎えた年は、君が代・日の丸に抵抗し、その取り組みとして校門でビラ配布をしたこともありました。その時々の記事は、読み返すと当時を思い出し、懐かしく思います。その娘たちも無事に社会に出て、それぞれが仕事に就き、末娘も来春、大学を卒業して社会人となります。私の子育ても一区切り付いたというところです。
 「ワーカーズ」を発行することの意義は、会員それぞれがどんな社会をめざすのかを問い、その視点で今、起こっている社会の出来事を読者の皆さんと、考え共有していくことにあると思います。会員も現役を引退した者が増え、労働現場の声を反映する機会が減少せざるをえませんが、労働者の立場を更に追いつめる法改正などには、鋭く分析しその意図を見抜き正しい方向性を提起できていると思います。
 社会を変えていく原動力は、労働者にあると言い続けてきたのですが、労組の組織力も低下し先が見えてきません。一方、反原発運動は年齢層の幅も広く、目的を一つにして集まってくる自由な人々で、参加も自分たちの意志で決められる集まりです。運動の形態は異なるけれど、自分の意志を明らかにし、社会にアピールしていく行動は、何らかの形で労働運動にも影響していかないかと、期待しているのですが。
 そう言う私も、郵便局の職場で20年以上働き、現在にいたっています。ここ数年、上司が入れ替わり、現場の管理も強化され、事細かに日々の仕事に口出し指導をしたがります。後、数年したら現役を引退できますが、スキル評価の導入後、配達の仕事の複雑化、迅速性を強要され誤配の罰則制など、ますます働きにくくなっています。
 こんな職場でも、辞めずに働き続けられるのは、「ワーカーズ」の仲間が居て、しんどさを共有できるからです。そして、読者の皆さんが支えてくれる「ワーカーズ」に記事を書いたり、投稿することで自分の思いを整理し冷静さを取り戻す、そんな大切な作業だったんだと思います。500号続けてこれて良かったと、今、つくづく思います。 ( 折口恵子)案内へ戻る


紹介・・・仙台牛タンの歴史

はじめに
 宮城県仙台市の牛タン料理は、「仙台牛タン」の名称で名物として知られています。新幹線で仙台駅下車すると、牛タンどおりがあり専門店が並んでいます。いつも、行列になっています。牛タン専門店では、牛タン焼きに麦飯やテールスープをつけた「牛タン定食」が供される。白菜漬けと「南蛮」という赤唐辛子の味噌漬けがつく場合が多いが、各店により少し違います。
 仙台の牛タン焼き自体の特徴としては、店により薄切りから厚切りまで様々とはいえ、焼肉屋の牛タンと比べると総じて厚切りで、厚さにかかわらず、柔らかく焼いています。また、味付けは「タン塩」のほか、「味噌」「からし味噌」といったタン肉自体の味噌漬けの焼肉も定番です。私も大好きですが、厚切り定食だと二千五百円くらいして、高いのでなかなか食べられません。
 
歴史
 太平洋戦争後、仙台にもGHQが進駐しました。その際、大量に牛肉を消費する駐留米軍が残したタンとテールを有効に活用するために、一九四八年、仙台の焼き鳥店「太助」初代店主・佐野啓四郎が、牛タン焼きの専門店を開業したことが 「仙台牛タン」 の始まりであるとされています。佐野はタンシチューから着想して、タンを薄い切り身にして塩焼きするという調理法を考案しました。(米軍の残り物説について否定説もあります。佐野はむしろ公式見解として認めており、自信のある元祖とイメージダウンを嫌う新規参入業者との間で見解の相違が生じているそうです)。

 戦後の食糧難に出来た牛タン料理はそれほど市民に人気があるわけではありませんでした。もともとが外食から生まれた料理であり、家庭で食べられることは殆どありませんでした。やがて高度経済成長期になって、他都市から仙台への転勤族や単身赴任者(仙チョン族)が増えると、昼食時や夜の街で仙台牛タン焼きの味を知り、仙台赴任からとりわけ東京に戻ったサラリーマンの間で仙台牛タン焼きは評判になりました。また、牛タンの高蛋白質の割に脂肪が少ないことがマスメディア等で紹介され、ヘルシー志向の人たちのみならず国民全体に牛タンが受け入れられていきました。このような流れに乗って仙台牛タン焼きも有名になっていきました。
 仙台牛タン焼きは、旅行の一般化によって観光客たちの食べるところとなり、また、外食の一般化によって仙台市民も食べるところとなったが、最大の転機は、一九九一年に始まった牛肉輸入自由化です。自由化に伴い安価に材料が入手できるようになり、これ以後新規参入した業者が増えました。

 実際、材料の牛タンは、その殆どが輸入品です。しかし、農畜産物・水産物の地元での生産と消費(地産地消)を目指している宮城県で、輸入物の牛タンを名物と称するには疑問の声もあり、国産肉を提供する店もあります。牛タンの原料供給の九割を米国からの輸入に頼っていたため、二〇〇四年、大手牛丼チェーンと同様、牛海綿状脳症(BSE)発生によるアメリカ産牛肉輸入停止の影響を大いに受けてしまいました。中には支店を撤退させたり、廃業した業者もありました。

最後に
東日本大震災で、放射能汚染が広がり、東北の牛肉もむずかしい状況になっています。
福島の酪農農家で、牛舎の壁に放射能にくいと書き残し、残念ながら自殺された方もいます。ひどい話です。少し前は、アメリカ産BSE問題がありました。戦後、食糧難で始まった誰も食べなかった部位が料理され、時代の流れに乗ってたくさんの人に好まれ、ブランド商品になり値段が高騰しました。でも、またいろいろな問題にぶつかり牛タンの歴史がこれからどのようになるのかと思います。それは、すべて資本主義社会の中で利潤を追求した結果、結局は私たちの進む道が、険しくなったのではないかと感じています。(晃子)


色鉛筆・・・保育が「ビジネス」??

 今月の初め『マンション保育所 県主導』という新聞の見出しに驚いた。今や社会問題になっている待機児童対策のひとつとして、埼玉県がマンションの一居室を使う“家チカ保育所”づくりに乗り出したというのだ。マンション業者が独自に保育施設を併設する例はあるが、今回は県から業者に対して『営業』して回り、計画段階から施設内容や運営について助言、県と市が補助金を給付するという。「どうしてマンションなの?」と、50代の保育士としては納得がいかない。
 ところが、今や待機児童数が多いなどの理由で規制緩和政策が進められ都市部では、鉄道の高架下(元は飲食街)や鉄道の陸橋の下やビルの上の階に保育園を作っている。これではひと昔前、社会問題になった『ベビーホテル』と何も変わらず、子供たちが安心して過ごせる、安全な保育園が必要だという教訓が何もいかされていない。この規制緩和政策を特に推し進めているのが横浜市。かつて、常に待機児童数全国ワーストの上位に名を連ねていた横浜市が今年の4月、「待機児童ゼロ」の発表をして新聞やテレビなどで大きく報道され話題になった。ところが4月25日、実は希望しても認可保育所に入れなかった子どもは1746人いることを明らかにした。また、「待機児童」にカウントされなかった子どもも869人いることもわかり「待機児童」の定義を市の都合で変えてまでゼロにしたというのだから驚いてしまう。何が何でもゼロにしたいという執念だろうか。
 横浜市で待機児童数が減ったのは、保育室の面積基準を下げて、ビルの中を保育室にして、近くの公園を「園庭」とする等と緩和し、認可保育所の二六%が企業運営の保育園(日本の平均が二%) という横浜方式を進めたからだ。今まではとても「認可」と認められないような場所に、基準を下げた保育園を作り、それらをどんどん認可している。最低基準よりまだ狭い部屋の中で子供たちは閉じ込められたら、子供たちも保育士も精神的余裕がなくなってしまう。0歳から3歳くらいの子供たちは、自分の思いを言葉で言えない時期なので、泣いたり怒ったり、イライラすると友達を噛んだりすることが見られる。だからこそ保育室は空間が必要なのに、最低基準より下げているとはいつ事故が起きても不思議ではない危険な環境に子供たちは置かれている。安倍首相は、横浜が待機児童を解消した「横浜方式」を絶賛し、企業の参入を進めようとしているが、私は「企業は利益がなければいつでも撤退してしまい不安定ではないか」と考えていた。
 ところが、ジャーナリストの猪熊弘子さんは「保育が『ビジネス』になったとき」(ちいさいなかま十月号)の中にこれから保育企業が利益を出していくことを書いている。「保育企業にとっては、新制度が導入される前の今、なるべく多くの保育園を作ることが必要。今、この時期に最大限に拡大しておけば、新制度の導入後は保育企業が利益を出して、株主への配当をすることが許されるようになるからです。保育企業が多くの保育園を開設するのは『待機児童解消のため』と、まるで社会のためにいいことをしているかのように宣伝されています。しかし実は、待機児童解消のためだけではなく、企業自身のために拡大しているとも考えられるのです」(二〇一五年四月から子ども・子育て支援法などに基づく保育新制度いわゆる新システムが導入される)これを読んで「そうかそうだったんだ」と、納得してしまったが、あまりにもひどい!慈善家のように振りまく企業の魂胆がわかり、その企業が政府と一緒になって進めているのだ。このままでは保育がビジネスになってしまうのだろうか?反対の声を上げていきたい。(美)案内へ戻る


読者から・・本の紹介

 息子を亡くして4年半になる。「元気そうだね」と声をかけてくれる人が多い。本当に元気になったわけではないけれども、少なくとも元気そうにしていないと生きてゆけそうもない。
 悲しみも消えたわけではない。悲しみを抱えながら生きている。悲しみの色は黄葉と同じく少しずつ変化しつつあるけれども。
 「がんばってね」という善意の励ましほどきつい言葉はなかった。これ以上頑張れなかったからである。喧嘩しても仕方ないので「頑張ります」と応えてきた。自分自身も配慮のない発言で、人を傷つけていることが多い。相手の立場や気持ちに立っていないからだ。
 息子ばかりでなく亡き父母にも優しくなれなかった。よく飲み語り合った義父にもガンを告知しないまま見送ってしまった。いまだに自責の念が消えない。 
 そんなもやもやは、今春、徳島と高知の歩き遍路(約600km、3週間)の旅に向かわせた。そして8月から一人スペイン巡礼「ポルトガルの道」(約600km)を歩いた。それは多くの巡礼者と地元の人々と触れ合い、助けられながらの道のりだった。その記録が旅日記「出会い旅」である。
 もう一つ、西アフリカの「カーボベルデ」旅日記。火山群のため耕作地は少なく、海外での出稼ぎに依存する国である。旅する前に、カーボベルデの悲しみの哀愁歌「モルナ」のCDを毎日、聞いた。その悲しみも現地で私なりに感じることができた。
 ジュンク堂池袋店の2階旅コーナーかホームページ「地球旅遊―ONLINE」の通販のコーナーで販売中。スペイン巡礼「出会い旅」(48ページ)は300円、「火山群島の国カーボベルデ」(24ページ)は200円。いずれもカラー印刷。
 ご興味ある方はぜひ一読して感想・ご意見を下されば大変うれしい。周囲の方に回し読みして頂ければもっとうれしい。(石井良司)案内へ戻る


編集あれこれ

 前号の1面は、「特定秘密保護法案を廃案に追い込もう!」と題する記事でした。安倍内閣は、国家安全保障会議設置法案(日本版NSC)とともに、特定秘密保護法案を今国会で成立させようと目論んでいます。特定秘密保護法案は、政府が軍事情報やその他情報を隠してしまうものです。取材の自由や知る権利は、あくまでも配慮されるだけです。特定秘密情報を知ろうとしたら、市民運動なども捜査の対象にされてしまいます。家宅捜査や逮捕、拘留などされてしまうということになります。こんなとんでもない法案は、廃案に追い込むしかありません。そのために、多くの反対の声を結集していきましょう。
 2・3面は、「核をめぐる二枚舌―核不使用宣言の影ですすむ核保有への野望―」という記事でした。政府は、当初は賛同しなかった核不使用声明に賛同しました。これは、賛同しなかったことに批判の声が挙がり、態度を変えたものです。核保有への動きに反対の闘いを拡げていく必要があります。
 4・5面は、映画紹介「together(ともに生きともに働く) 危機に打ち勝つ協同組合 字幕場版」でした。ヨーロッパでの協同組合運動は、私たちの目指す社会の参考になります。こうした動きを進化してよりよいものにしていかなくてはならないと思いました。
 5面は、「水俣条約に思う」と題する記事でした。10月10日、熊本市で「水銀に関する水俣条約」が採択され、水銀汚染による健康被害から、水銀の使用や取引を規制しようとするものです。水俣病は不治の病なので、この人災を繰り返させないことが重要です。
 6面は、沖縄の東村高江の闘いの報告です。沖縄の問題は、沖縄だけにとどまりません。オスプレイの訓練が、本土でもやられるようになっています。何としても、こうした状況を変えていかなくてはなりません。
  9・10面は、秘密保護法案反対の集会案内がずらりと並んでいます。こうした動きと連動して、この法案を反対に追い込みましょう。
 今号は、500号記念号です。よくここまで継続できたなと思います。読者の皆さん、これからもよろしくお願いします。(河野)

案内へ戻る