ワーカーズ517-518合併号  2014/8/1   号案内へ戻る
 私たちの声と行動を拡げ安倍政権を追い詰めよう!──もろさが露わになった安倍首相の足元──

 安倍首相がやりたい放題のことをやっている、とも見える。集団的自衛権や原発再稼働等などだ。威勢の良い安倍政治、が、一皮むけば、その足元には大きな亀裂が生じている。端的な指標は安倍内閣の支持率だ。報道各社の調査では、軒並み5割台から4割り台半ばに落ち込んでいる。原因は、日本を戦争ができる国にしたいという集団的自衛権の閣議決定の強行が原因だ。が、それだけではない。安倍内閣の内外政策がちぐはぐさや薄っぺらさが露わになっているからだ。
 安倍首相が集団的自衛権の行使が必要だとする根拠は、ミサイル発射など瀬戸際外交を繰り返す北朝鮮、それに尖閣諸島など領有権争いがこじれている中国との緊張関係だ。が、その中国とは領有権問題や靖国参拝で、また本来連携すべき国だった韓国とは、竹島や従軍慰安婦問題で首脳会談もできない状態が続いている。代わりにロシアと北朝鮮とは、領土交渉や拉致事件の解決という外交実績狙いで対話路線を進め、同盟国である米国の不信を買っている。まさにちぐはぐな外交政策である。
 安倍内閣の支持率が落ち込んだのは、なにも集団的自衛権での暴走だけではない。
 昨年末に強行した特定秘密保護法では、露骨な行政権万能政治をあからさまにした。アベノミクスでは市場にお金をあふれさせ、コンクリート優先の土建政治を復活させた。それにあの過酷事故など無かったかのような再稼働優先の原発回帰路線、はては家計から吸い上げた税金を企業減税に廻す消費増税と法人減税……。
 こうした内外政策でのちぐはぐぶりと対処療法を繰り返す薄っぺらさは、ひとえに安倍政治が一握りの取り巻き達による偏った政治に終始しているからだ。
 結局、この間の安倍政治が、ナショナリズムと結びついた軍事優先の対決型外交であり、〈国家あっての国民〉という国民主権を否定する国家改造であり、また庶民から巻き上げたお金を大企業や業界にばらまく財界政治であることが露わになり、それが広く普通の人々に浸透してきたからに他ならない。
 安倍首相自身も、滋賀県知事選での敗北などで焦りを見せている。オスプレイの佐賀空港への移設、農村振興策の策定、株価対策としての年金基金の運用拡大やNISA(少額投資非課税制度)の限度額拡大等など、目先の選挙対策、株価対策を対処療法的に次々と打ち出さざるを得なくなっている。
 安倍内閣は一見すると向かうところに敵無しの感もある。が、一皮むけば、自民党による国政での一強多弱政治、その党内での安倍独裁政治の基盤は脆い。
 そうした安倍政治を追い込んだのは、広範な世論であり、首相官邸前など直接行動の全国的な拡がりだ。さらに声を上げ、行動を拡げることで安倍内閣を追い詰めていきたい。(廣)


 イスラエル軍のガザ侵攻を糾弾する!

●事実上の「収容所」ガザ
 イスラエルによる、パレスチナ・ガザ地域への大規模侵攻がはじまった。
報道によれば、七百人以上の死者がでている。住民は「イスラエル軍は、戦闘員と住民を区別していない」と叫んでいる。
 ガザ地区は、すでに日常においてもイスラエルに包囲され、空や海の航行権はイスラエルが握っている。人の出入りも、物資の搬入もままならず、「天井のない監獄」とガザ住民は言っている。
 逃げ場も避難場所もない場所に閉じ込めたパレスチナ人に、イスラエルは無差別攻撃している。学校も、病院も、障害者施設も、国連施設さえも。これは許され得ない暴挙だ!

●イスラエル国内の勇気ある抗議行動を支持しよう!
 米国国内でも、欧州でも日本でもイスラエルの暴挙を非難する声が上がっている。
そのなかで、とうとうイスラエル国内で勇気ある声があがった。
7月19日、イスラエル北部のハイファとエルサレムで抗議デモが敢行された。(ロイター)
 国民皆兵のイスラエルで、しかも今まさに戦闘中のさなかだ。この様な抗議行動にどれだけの勇気と信念が必要なことか!彼ら彼女らの、大きな心を讃えたい!
 またワシントンポスト23日の報道では、イスラエルの予備役兵五六人が、空爆と地上侵攻および占領地域のパレスチナ人の人権無視に抗議し「軍役拒否」の声明を出している。

●リクード党の膨張主義に歯止めを
 それにしても、首相のネタニアフ氏はタカ派一辺倒の政治姿勢を変えてはいなてい。
 しかし、ネタニアフ氏の勝ち取りつつある勝利は、ヒットラーのポーランド併合とどこがちがうのだろうか?これが勝利なのか?子ども孫世代への安定の礎になるのか?
 イスラエル国民は、強さにおごることなく冷静に考えるべきだ。おそかれはやかれ、リクードの「大イスラエル主義」は、ユダヤ人社会を危機に陥れることを知るべきだ。
ガザの攻撃を止め、封鎖を解き、パレスチナ国家を容認し、占領地を放棄すべきだ。(文)

ガザ地区とは?何が問題なのか?

パレスチナの西南部、地中海に面するガザ地区の総面積は、東京23区の約6割の面積に相当する。
 現在ガザ地区に住む百八十万の人々の3分の2は、一九四八年年の第一次中東戦争によって発生したパレスチナ難民およびその子孫である。つまり、イスラエル国家成立とともに追放されたパレスチナ人だ。イスラエルへの恨みは強い。

 ●世界最大の「収容所」ガザ
 総延長約75キロのガザ境界は、イスラエルにより高さ数メートルの金網フェンスやコンクリート壁でふさがれている。人や物の出入りができるのはエジプト側のラファを含め計5カ所の検問所だけ。海岸線もイスラエルにより封鎖され、漁船以外の出入りはできない。航空管制権と沿岸航行権はイスラエルが保持している。国境線のエジプト側もシシ大統領の登場もあって、ほぼ封鎖されている。
 住民はガザを「天井のない監獄」と呼ぶ。イスラエルは北端のエレズ検問所の上空からカメラ搭載の無人飛行船で監視。軍が境界線に沿った道路をパトロールしている。パレスチナ人が出入りするにはイスラエルやエジプトの許可が必要だ。物資搬入もハマスがガザを制圧した07年6月以降、極端に制限された。人道支援物資の搬入や農産物など一部の搬出が認められているだけだ。
 2008年3月6日、アムネスティ・インターナショナルのイギリス支部など、イギリスの8団体によれば、人口百五十万のうち八十%が食料援助に依存。06年の六十三%より悪化し、失業率は四十%に達する。その後もイスラエルの締めつけはきつくなるばかりで失業率も六〇%と言われる。
 秘密の地下トンネルが多数あるらしいが、「テロリストの攻撃」と単純に結びつけるべきではない。ガザと外界を結ぶライフラインでもある。

●ガザがほしい?イスラエル
 パレスチナ自治政府はイギリスのブリティッシュ・ガス社とガス田探索の契約を結び、2000年、ブリティッシュ・ガス社はガザ沖に天然ガスを発見した。契約では、ガス田の権利の6割をブリティッシュ・ガス社が、1割をパレスチナ自治政府が持つ。
 しかし、イスラエルはガザ地区を実効支配したハマスに資金が流れることが我慢ならず、パレスチナのガス田を自国のガスパイプラインに結ぼうとブリティッシュ・ガスと交渉中である。ガス田利権が、今回のガザ侵攻の理由の一つという指摘もある。
 04年には、シャロン首相のアドバイザー、アルノン・サフェル (Arnon Soffer) は 「一発のミサイルには十発のミサイルをもって応じる。女性や子どもも死ぬだろう。女性たちが夫にもうカッサム(ロケット弾)を使わないように懇願するだろう。ガザに閉じこめられた二五〇万人は、イスラム原理主義者に影響され、恐ろしい戦争になる。もし我々が生き残りたいならば、彼らを一日中、毎日、殺し、殺し、殺し続けなければならない」(ウィキペディア)。とんでもない被害妄想的政治姿勢だ。しかし、イスラエルはそれを実行している。
 シャロンやネタニアフの所属するリクード党(イスラエル右翼連合・注)は、「大イスラエル」主義だ。ヨルダン川西岸地区やガザ地区は、旧約聖書に基づきイスラエルの地(約束の地)、として「返還されるべき」土地なのである。
 リクード党にしてみれば、47年の国連決議(イスラエルとパレスチナ人の住み分けを定める)などは眼中にないのだ。
 この様に見てくれば、「テロ」「地下トンネル」「ミサイル」など侵攻の理由づけは、二次的なことであり、現に行われているガザの封鎖やその上での過剰な空爆や地上侵攻は、将来イスラエル国家によるパレスチナの領土包摂を念頭においたものであろう。

●パレスチナ政府とハマス
パレスチナの主な政党が、パレスチナ解放機構(PLO)とハマス(イスラム抵抗運動)だ。
 PLOは一九七〇年代頃からは反ユダヤ主義の立場を退け、イスラエルが占有する領土全てを含めた全パレスチナに、イスラム教徒、キリスト教徒などからなるパレスチナ人と、ユダヤ教徒のユダヤ人が共存する民主的・非宗教的な独立国家を樹立することを目標とした。
 ノルウェーの仲立ちでオスロにおいてイスラエル政府と秘密交渉を行い、一九九三年にイスラエル政府とPLOの相互承認とガザ地区・西岸地区におけるパレスチナ人の暫定自治を定めたオスロ合意にこぎつけた。
 オスロ合意の結果、PLOは武装闘争路線の放棄を約束し、イスラエルとの間にパレスチナ暫定自治協定を締結。アラファート議長はイスラエルのイツハク・ラビン首相(労働党)とともにノーベル平和賞を受賞した。
 暫定自治のためのパレスチナ自治政府はPLOを基盤に設立され、その元首(大統領)にはPLOのアラファート議長が就任する。
 一方、ハマスは、一九六七年の国連停戦決議に基づく国境線を容認する構えを示している。イスラエルの承認は拒否しているため、「イスラエルの生存権を認めない」組織として報道されることが多い。マシャアル政治局長は09年6月25日に「パレスチナ民衆にとっての最低限のライン」として、イスラエルによる全入植地の撤廃、パレスチナ難民の自由な帰還、一九六七年6月4日時点での停戦ラインを国境とする、パレスチナをエルサレムを首都とする完全な主権国家とする4条件を挙げている。(ウィキペディア)
 一九九三年の中東和平「オスロ合意」によって、ヨルダン川西岸地区の一部と共にガザ地区はパレスチナ自治政府の統治下に置かれた。治安はパレスチナ政府の治安部隊および市民警察軍によって維持されている。
 14年4月23日、ハマスとファタハは共同声明を発表し、5週間以内に統一内閣を樹立するとした。これにハマスをテロ組織と見るイスラエルは反発し、ガザ北部を空爆していた。

●無力な大国
 現在、地上戦が開始され、死者は七百人を越えようとしている。米国、英仏、国連・・。史上希に見る非人道的な殺戮を前に、国際社会は効果的な行動をとることができないでいる。いや、イスラエルの凶行に、渋面をつくってうろたえるばかりだ。「もう少し、手加減しながらやってくれなきゃ困るよ」と。彼らの本音は、中東イスラム世界に打ち込まれたクサビであるイスラエルに肩入れしたいのだから。
 市民による突き上げしか、この悲劇を止めることはできない。「人権」を重んじるのなら、日本、米国、国連などは北朝鮮以上の制裁をイスラエルに課すべきではないのか!その前に、米国は年間三千億円の軍事支援をただちに中止すべきだ!(文)
(ウィキぺディア、ブリタニカ、朝日新聞、『アラブとイスラエル』講談社現代新書を参考にしました。)
【注 リクード党(イスラエル右翼連合)。支持者は、イスラエルでは下層をなす、セファルディウム。つまりアラブ地域由来のユダヤ教徒とされている。「約束の地」「大イスラエル主義」が看板だが世俗政党。軍隊にも支持者が多い。建国以来、欧米由来のユダヤ教徒であるアシュケナジムが社会のエリート層を形成。イスラエルの主流派として労働党政権を支えてきた。それに対抗しつつ、より攻撃的なパレスチナ政策を掲げ支持を拡大してきたのがリクードだ。】
結論ありきで暴走する御用専門家会議が外部専門家たちの意見・批判で動揺号案内へ戻る


 現実化する海外派兵
   安倍首相の不戦パフォーマンスに怒り 


●許せない、ナチス伝授のデマ政治
 安倍晋三首相は11日、パプアニューギニア北部ウェワクで、第2次世界大戦の戦没者の碑に献花し、黙とうした。献花後、記者団に「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないと英霊の前で誓った」と強調した。
 安倍首相の不戦の誓いは、欺瞞に満ちたものだ。
 いうまでもなく、平和憲法の下で、これまでの自民党、歴代政府でさえも越えたことのない一線。「海外での戦争行為はできない」という憲法解釈を公明党との協議で変更。集団的自衛権の行使・集団安全保障をみとめた。つまり、米軍や国連安保理の要請があれば、イラクでも、アフガンでも、アフリカでも自衛隊が戦地に赴くことを閣議決定している。
 ところが、政府のデタラメは底なしだ。政府自民党が最近作成した、集団的自衛権をめぐる「一門一答」には「徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られる?」と設問を立てている。その答えが、「全くの誤解です」と。
 自衛隊員が「戦地に行く」「米軍や英仏の多国籍軍とともに戦闘に参加する」ことは、今では安倍首相の国際的約束となっている。米国政府はコメントを出して、それを歓迎している。今後自衛隊法の改正など関連法案がこのまま成立すれば(させてはならないが)「海外での戦争参加」は現実となる。

 政府自民党のこの信じがたい詭弁!麻生副総理の言う「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」(去年)など憲法改正の「知恵」を披瀝(ひれき)したが、ナルほどそういうことか。
 何が変わったのかを、大半の国民が知らないうちに「戦争をする国造り」をひた走っているのだ!

●地域戦争における「後方支援」
 現代の戦争は、昔の米国対ソ連、というような国家間の闘いとはかぎらない。現実に戦地となっているイラクやアフガンその他ナイジエリア、南スーダン等をみればわかることだ。
 これらの戦闘は「ゲリラ戦」「遊撃戦」が主だ。武装勢力や「テロリスト」は強大な多国籍軍と正面から対峙する能力がない。彼らはそれ故に、多国籍軍の兵站、食料や弾薬運搬などの「後方攪乱」が重要な戦術となる。これは常識だ。安倍首相の言うように「後方支援だから危険が少ない」ということは断じてない。そこも「戦場」なのだ。
 ドイツでもアフガン戦争で、「後方支援」のはずが数十人の戦死者をだしている。

●日本国民への憎悪と敵対を生み出す
 紛争国家内部は、二分、三分され、部族や民族、宗派対立がからんでいる。その一つに肩入れすることは、自衛隊のみならず日本国民を新たな標的としてしまう。
 シリアのアサド大統領派と反政府派が内乱を続けている。イラクのマリキ首相も、クルド人やISISと激しく対立している。そもそもこれらの戦争に善悪はない。
 米国は自分の戦略的都合からシリアの反政府勢力を支援したりマリキ首相の立場に立つ(立ってきた)。日本も米国にならうのだろう。しかし、どんな理由に基づいても、海外で自衛隊が現に戦闘を挑む勢力は、日本政府や日本国民もあらたな「敵」と見なすはずだ。
 それが新たな暴力の連鎖を生み出す。日本人は、海外戦地以外でも、憎悪の連鎖(報復)を覚悟すべきなのか?

●「シーレーン防衛」ではなく政治と経済で解決
「日本の国益を守れ」「シーレーンの防衛」を連呼する安倍首相。だから海外に自衛隊を送れと。それはちがう。
 国民に必要なエネルギー源は、再生可能エネルギーの普及や外交でこそ多様化できるし、安定をはかれる。そのために技術革新の投資や世界の安定に資する経済支援など、やれることはたくさんあるはずだ。
 安倍首相の発想は古い古い戦前型の、軍事力=植民地=資源確保という発想を超えていないようにおもえる。この様な19、20世紀型の野蛮な政治から脱却しなければならない。(六)


 集団的自衛権
 安倍暴走列車を止めるぞ!(下)──向かうのは戦争国家への野望──


(掲載案内)
◆暴走──前号
◆詭弁──前号
◆核心──今号
◆野望──今号
◆攻防戦──今号

◆核心

 (前号から続く)安倍首相が執着する集団的自衛権の行使容認に対し、私としてはその核心的な目的は「実際に武力を行使する」ことにあると言ってきた。「海外での武力行使」も「他国を助ける武力行使」も、形容詞の部分は便法だと考えるからだ。
 いうまでもないが、戦後日本はあの戦争への反省から戦争と武力の行使を放棄し、戦力の不保持と交戦権の否認を掲げることで国際社会への復帰を果たした。それが朝鮮戦争を契機に自衛隊が発足して、自衛権とそのための必要最低限の武力の保持へと憲法解釈を変えてきた。とはいえ、その変更を実現するために「専守防衛」のタガをはめざるを得なかったことで、自衛隊はこれまで戦争で交戦したり戦死者を出したことは無かった。「専守防衛」では、日本が直接攻撃されないかぎり武力行使はできないことにし、実際、日本が攻撃されることはなかったからだ。それに近い将来においても、日本に対する本格的な武力攻撃が行われることも想定しにくい。中国にしたところで、現時点で日本と本格的な武力衝突をすることが国益にかなっていると判断しているわけではない。そうすると日本の自衛隊はいつになっても武力行使する機会など無いわけだ。国連平和維持活動(PKO)などでも同じだ。「専守防衛」というタガをはめられ、戦闘地域での武力行使はしない、という大義名分の範囲での派遣に止まってきたからだ。
 安倍首相はそれが気に入らない。日本は高度成長期以降、日米安保の枠組みのなかで着実に軍事力を整備してきた。バブル崩壊に至るまで、日本は米ソに次ぐ世界第3位の軍事費・軍事装備大国に上りつめた。だがその軍事力がタガをはめられ、実際には使えない宝の持ち腐れにとどめ置かれるのが、安倍首相にとって我慢ができない。それをなんとか使えるようにしたい、使って中国などに対抗していきたい、これが安倍首相の本音なのだ。
 ただしいくら好戦派の安倍首相でも、そうした本音を露骨には言えない。そこで集団的自衛権、実際には米軍支援という看板を掲げざるを得ないのだ。.米軍は戦後も世界中で戦争を引き起こしている。いまでもアフガン・イラクやアフリカでは無人機などで人殺しを続けている。その戦う米軍を助けると称して、自衛隊を戦闘に参加させる、これが戦える国軍づくりの近道だ、と考えているのだ。いったん武力行使を行い交戦できる実態をつくれば、後は情勢の変化と軍事整合性論によってそれを拡大していくだけだ。相手国への先制攻撃にまで可能にするのはそこからほんの一歩の跳躍でしかない。

◆野望

 今回の集団的自衛権の行使容認に対し、結局は米国の戦争に巻き込まれるだけだ、という批判がある。いわゆる巻き込まれ論だ。現実には集団的自衛権を行使できるようにした場合、米国の求めに対して武力行使を拒否するのは困難だろう。だから米国の戦争に巻き込まれるという危惧は、確かに現実のものだろう。ただし安倍首相が進める軍事大国化の野望は、単なる日米同盟の延長線だけで考えることはできない。それだけ安倍首相の野望はそれなりに〝体系的〟なものだからだ。
 ざっと見ていこう。
 安倍首相は第一次政権のときから〝戦後レジームからの脱却〟という旗を繰り返し訴えてきた。12年末の総選挙でのスローガン〝日本を取り戻す〟も同じだ。どちらも曖昧で、戦後体制をどう捉えているのか、それをどういう体制に転換するのかについては直接の明言を避けている。が、言わんとしているのは憲法や米国にタガをはめられて自由に行動できない戦後日本の現状を、戦前のように強大な軍事力を背景とした強い国家にする、というものだろう。
 そうした思いがすでにいくつか形を取り始めている。それは執行権力の排他的権限を拡大する特定秘密法の制定であり、軍事力増強につながる武器輸出三原則を拡大する防衛装備輸出三原則への改定、PKOなどでの武器使用基準の拡大、それに新たな英霊づくりを念頭に置いた靖国参拝、国家主義的な改憲への執着、それに首相就任以降精力的に手がけている中国包囲網づくりのアジア歴訪等などだ。
 これらの首相主導による安倍政治の性格と実際の行動を読み解けば、それが単なる日米同盟の強化などに収斂されるようなものでないことは明らかだろう。それは明治以降の富国強兵ならぬ強大な軍事力を背景とした国家主導の強い国づくりであり、国家目的に国民を動員する翼賛国家づくりだ。靖国神社参拝に「失望」を表明した米国に対し、「市民運動上がりのオバマ大統領になにが分かるのか」と言わんばかりの官邸の反応がそれを如実に表している。
 ただし、それは安倍首相や取り巻き連中の頭のなかでの青写真に過ぎない。集団的自衛権の行使にしても、アジア諸国に根強い警戒感などを考えれば、実際は米国への追従にしかならないし、米国の戦争に荷担するだけの結果に終わる可能性は高い。しかし、一部の極右勢力の野望ではあっても、安倍政治が向かっている方向はそういう性格のものであることをはっきり捉えておく必要がある。安倍政治は極めて危険な性格を持っているものだ、と。

◆攻防戦

 集団的自衛権の行使を容認する閣議決定は、自衛隊法など関連法案の改定などを経て具体化される。その法案審議は統一地方選挙が実施される来年4月以降に先送りするという。それ自体有権者を馬鹿にした話だが、戦争ができる国づくりでの攻防戦は、それだけ今後に引き継がれるわけだ。
 むろん法案での国会審議をあてにできる状況ではない。国会議員レベルでは、8割以上が賛成派で占められているからだ。党派レベルでも同じだ。自民・公明の与党は言うに及ばず、維新の会やみんな、それに石原新党の次世代の党などはみんな賛成派だ。
 それでも国会審議は世論や反対運動に影響されざるを得ない。それらを拡げていくことで、暴走する安倍政治をストップさせることは可能だ。
 現時点の攻防ラインを綱引きにたとえて描いてみたい。
 当初、安倍首相が自民党改憲草案などを示して明文改憲を掲げていた頃は、攻防ラインはだいぶ安倍首相側に引っ張られていた。それが無理だと判断した安倍首相は、憲法96条の改憲要件の緩和に狙いを変えた。そこでは少し安倍首相も綱を緩めざるをえなかった。次はそれも無理だとして、こんどは集団的自衛権行使の容認という解釈改憲という手法に出た。ここでまた安倍首相は綱を若干自分たちの側に引きつけたといえる。とはいえ世論の拒否感や反対行動も拡がるなかで〝限定的行使〟だとか「おそれ」を「明白な危険」に変えたり、結局は「自衛権」の概念に滑り込ませた場面では、また一歩安倍首相側が譲歩を余儀なくされた。結局最後に閣議決定まで持ち込んで現実の政治日程にのせたことで、安倍首相がまた一歩綱を引き寄せた、といったところだろうか。
 安倍首相が集団的自衛権の閣議決定まで実現したことの意味は私たちにとっても重いものだ。これまでの長期にわたる自民党政権のなかで、安倍首相のような極右政治家が政権の中枢を占めることはなかった。極右政治家の代名詞であるあの石原慎太郎でさえ、首相の座をあきらめて衆議院議員を辞任せざるを得なかった。それだけ極右政治家の自民党内での居場所が狭かったからだ。それが同じような極右政治家の安倍晋三が、いまでは首相として日本を再び軍事中心の国権主義的な国家改造を推し進めつつあるという現実を、私たちは深刻に受け止める必要がある。
 とはいえ、この間の攻防の推移は、その足場は盤石なものではないこともはっきりした。前のめりが目立った当初の安倍首相をそこまで押し返したのは、広範に存在する反戦平和への願いと安倍首相の野望を見透かした世論の存在、首相官邸前や全国に拡がった直接行動だった。安倍首相も今回の閣議決定に自信を持ちきれないことは、関連法整備を来年の統一地方選以降に先送りしていることにも現れている。
 だとすれば、私たちとしても、世論を喚起したり直接行動をこれまで以上に拡げていくことで、法整備をさせないという目標が浮かび上がる。そのために今回の閣議決定の意味と狙いやごまかしを暴き出し、それを自分たちの周辺に働きかけことを手始めに、闘いと行動を拡げていきたい。(廣)号案内へ戻る


 コラムの窓  繰り返される悲劇 マレーシア航空機撃墜事件

 7月17日、ウクライナとウクライナからの分離独立を目指すドネツク州の親ロ派「ドネツク人民共和国(DNR)」との内戦が続くウクライナ東部上空で、アムステルダムからクアラルンプールへと向かっていた、内戦とは全く関係のないマレーシア航空MH17便は、どちらからの攻撃によって撃墜され、搭乗していた乗客乗員298人は全員死亡した。
 内戦とは関係のない民間機への誤射による惨劇を招いた原因について、ウクライナのポロシェンコ大統領は、「ここ数日間でウクライナの軍用機2機が撃墜されていて、マレーシア機が撃墜された可能性は否定できない」と述べ、親ロ派を後押しするロシアのプーチン大統領は、「ウクライナ東部が平和で、戦闘が再燃しなければ、事件は起きなかっただろう」「この恐ろしい悲劇に対して事件の起きた国に責任がある」と述べ、責任はウクライナ政府にあるとの考えを示した。ウクライナも分離派のどちらも相手の行動をそしるだけで、撃墜したのはどちらかなのかは今のところ不明だが、悲劇としてしか言いようのない出来事である。
 こうした民間機への攻撃と惨劇は今回が初めてではない。
1983年、大韓航空007便は米国のスパイ機と思われ、ソ連の戦闘機に撃墜された。1988年には、米海軍の巡洋艦ヴィンセンスが、イランと米海軍との間で連日小規模な戦闘やにらみ合いが続いている最中、イランの領海を侵犯し、イラン航空655便を撃墜し、乗員・乗客290名が死亡するという事件。2001年には、訓練中のウクライナ軍がロシアのシベリア航空1812便を撃墜、乗員・乗客78名が死亡した(ただし、ウクライナ軍は関与を否定)。等々で、特定の条件が重なれば、非武装の民間機と言えども攻撃を受けるということは充分にあり得ることで、通常は紛争地域への飛行の中止や旅客機には民間機であることを知らせる信号の送受信装置が搭載されてはいるのだが、数十㎞、場合によっては百㎞以上という目で見えない場所の敵を、電波だけを頼りに攻撃する以上、誤って民間機を撃墜してしまうということはあり得ることで、旅客機の場合、ミサイルを回避したり、誘導システムに妨害を掛けるなどの手段はなく、ひとたびミサイルの直撃を受けると戦闘機のような脱出装置がないため、ほぼ自動的に乗員・乗客が全員死亡という結果になりやすい。
 航空機の参加による近代戦争においては、単に平面的な戦闘だけでなく、立体的な攻撃と防御を視野に入れ、特に、制空権の確保の戦略・戦術によって、迅速・広域で破壊力のある戦闘が行われるので、その為の「防空システム」確立は各国が競い合って開発に力を入れている。
 「防空システム」とは、敵の航空機やミサイルが自軍の空域に入って来られないようにする兵器・装備全てを指し、艦船・戦闘機、地上のレーダー基地や空中早期警戒機、管制センター、地上や艦船から発射する高射砲や地対空ミサイル等で、今回、マレーシア航空MH17便を撃墜したと言われている旧ソ連製の「BUK(SA11)」防空システムは、高速で進撃する戦車部隊が敵の空襲を受けないよう上空を防護することを任務として開発され、ミサイル、レーダー、指揮所などはすべて移動可能なプラットフォーム(キャタピラ式のシャーシやトラックなど)に搭載され、進撃する部隊に合わせて移動することが可能、性能については、バージョンやターゲットによって違いがあるものの、旧ソ連軍で標準的に使用されていた「BUK-M1」シリーズならば概ね30-35㎞の射程があり、高度2万~2万5000㍍までのターゲットを攻撃でき、能力の面で言えば、高度1万㍍を飛行していたMH17便を撃墜することは充分に可能であった。
各国の思惑が絡み、「自国の防衛」行為を認める、今の国際情勢の中では、どちらかの勢力がこうした「防空システム」を使い、民間機を撃墜したか等の原因究明はうやむやにされかねないが、兵器開発と戦争が及ぼす影響・その惨劇を思い、貧困や差別による民族・宗教対立など戦争に至る原因を無くす為に、反戦・反軍拡の活動を広めていこう!      (光)


 「何でも紹介」・・・東京新聞を読もう!

 私は今現在、二つの新聞を購読している。
 一つは、沖縄の「琉球新報」。飛行機便で2日遅れで到着。代金は郵送代含め4千円以上と少し高い。
 もう一つは、本土新聞で一番まともと言われている「東京新聞」を取り始めた。私の周りでもこの「東京新聞」を取り始めた人は多い。ただ、私の住む地域は東京新聞の正式配達区域でないので中日新聞を取り扱う新聞店が朝刊だけ配達してくれる。代金は2400円程度。
 沖縄の新聞は「琉球新報」と「沖縄タイムス」の二紙。二紙とも、県民に立脚した取材と執筆で、県民から信頼され愛されている。そして、県民(オジイもオバアも)は新聞を良く読み、積極的に投稿する。投稿記事に対して反論・異論も出てきて大変参考になる。
 しかし、沖縄でも若者の「新聞離れ」が問題になっている。失業率の高さ・収入不足などで、新聞を購読しない若者が増えている。そうした若者は新聞の代わりに、スマホのネットニュースで情報収集。そのネットには右翼的記事だらけ。右翼論客も沖縄の講演会で「沖縄の新聞は偏向新聞・左翼新聞だ」と煽り、新聞社に抗議デモを展開する。自民党幹部も沖縄の新聞に対して「偏った報道ばかりだと」文句ばかり。
 この沖縄の新聞に慣れている私には、本土の新聞(良く頑張っている幾つかの地方新聞はありますね)の報道内容にガッカリさせられる。一体どっちを見て、どっち側に立って記事を書いているのだ!市民が本当に知りたいこと・知らせることを書かない新聞は読む価値がない。
 今日本に住む私たちが一番直面してい課題は「原発」と「戦争」。具体的には「福島原発事故と被害者支援」問題と「沖縄の基地」問題である。
 この視点から東京新聞の記事を読めば、この二つの問題をよく取材し的確な報道を展開している。
 少し例を上げて指摘したい。
 福島原発に関しては、7月19日の2面「福島第一の1週間・またケーブル誤切断」の記事。「掘削作業中に地中の電源ケーブルを誤って切断する事故がまた起きた。東電社員が誤認したのが原因という」。私が非常に感心したのは、その記事の左側に「福島第一原発の現状」という記事の中で、今の1号機・2号機・3号機・4号機の図が出ており、それぞれの問題点を指摘している。「1号機」は「溶け落ちた核燃料はコンクリートも溶かした可能性」・「冷却水は高濃度汚染水として漏出」と。「2号機」は「水位が同じのため損傷の可能性大」・「ロボットで汚染状況を調査。結果次第で建屋上部の解体も」と。「3号機」は「内部の調査手つかず。水位は560cmはある可能性大」・「コンクリートのふたに30cmのたわみ。格納容器の損傷のためか、水蒸気が漏出」と。「4号機」は「使用済み核燃料プールから核燃料7割取り出した。9月に再開、年内に完了予定」と。それ以外にも「建屋内」のミリシーベルトを数字で表示。「汚染水」の量をトンの数字で。「核燃料」が何
体あるのかを数字で表示している。今の福島原発の現状と問題点を知る上で、とてもわかりやすい。
 そして、22日20面の「こちら特報部」記事では、「被害者の不信呼ぶ・国の住民健康支援」「健診拡充に後ろ向き」「母親の不安・子の状態調べてほしい」「住民の期待に応えず」との見出しで、「16日に開催された環境省の健康支援を議論する専門家会議。ゲストに招かれた疫学者の津田敏秀・岡山大教授が『線量評価にこだわるより、健診の拡充が大切だ』と求めたが、この津田教授を招きながら、専門家会議座長の長滝重信・元放射線影響研究所理事長は『非常にユニークな方がおられる。先生と議論するつもりはありません。線量に基づいて議論する』と述べ、一方的に話を打ち切った。」と、報道している。
 さらに、この記事のデスクメモを紹介したい。「専門家会議を長滝さんが仕切っている。この事実だけで、政府が福島原発事故をどう総括したかは明白だ。放射線影響研究所の全身は『治療せず、原爆の効果を調査』した米国の原爆傷害調査委員会(ABCC)だ。そこに連なる人脈が『安全神話』に関与した。いまは『安心神話』の流布に奔走している(牧)」と、なかなか鋭い指摘で原発村の実態を暴露している。
 沖縄関連の記事においても、7月23日の1面は「米ヘリ基地反対『通行妨害』で敗訴」「国の提訴はどう喝」「スラップ訴訟・市民団体が最高裁に抗議」の見出し。東村高江で米軍ヘリパッド建設に反対した住民を「通行妨害だ」と国が訴えた裁判で、国の勝訴が今年6月に最高裁で確定した。
 この判決に対し首都圏の市民団体「STOP SLAPP!高江」が、「表現の自由に対する侵害」として、最高裁に抗議文書や署名を提出し、最高裁前で抗議の横断幕を掲げ抗議活動をしたことを報道。市民団体の活動を一面で取り上げるなど、他新聞では考えられない。
 24日の28面「こちら特報部」では、「辺野古緊迫」の見出しで、20日未明に突如として資材搬入した防衛局の行動に対して、「防衛局、未明に資材運び込み」「抗議行動逃れ『卑怯』」と指摘し、「防衛省は海底のボーリング調査を今月中にも強行。県民感情を逆なでするような安倍政権の強権手段は、反発の炎をますます大きくしている」と報道。
 また、「政府 知事選前に強行」という見出しで、「工事を急ぐ背景には、11月の沖縄県知事選がある。知事選前に移設の既成事実を積み重ねたいという思惑がある」また「政府は沖縄の負担軽減を懸命にアピールしている。その一つが、米軍普天間飛行場の海兵隊が使う新型輸送機オスプレイの、佐賀空港の暫定利用だ。・・・政府は、またぞろ、『アメ』も用意しようとしている。在日米軍の再編に協力する自治体向けの新たな交付金制度の創設を検討している。現在の交付金は市町村だけだが、都道府県にも対象を拡大する」と指摘。
 最後に、元沖縄県知事の大田昌秀氏の「国は振興策の名目でカネをばらまいているが、魂を買い取ろうとする卑劣な行為だ。基地を沖縄に押しつけて何も説明しない政府に、県民の怒りは燃え上がるだろう」という声を取り上げている。
 事実、防衛局のやり方に反発する反対派県民はこの暑い中、キャンプ・シュワブのゲート前で昼間も夜も抗議行動及び監視活動を展開して、ボーリング調査阻止をめざしている。
 福島問題、沖縄問題、集団的自衛権問題などなど、私たちは重要な岐路に立っている。今が闘いの正念場だ!まともな報道やジャーナリズムの声を広げて共有していこう!内閣として「機能不全」に陥っている安倍政権を皆の力で一日も早く葬り去ろう!(英)号案内へ戻る


 九電川内原発の規制基準合格 誰も安全と言わないのに再稼働か!

 7月16日、原子力規制委員会が九州電力川内原発1・2号機について、「新規制基準適合を認める審査書案」を示した。規制委田中俊一委員長は基準に合格とは言うが、安全だとは言わないし、避難できるかどうかは関係ないと言いはなっている。
 菅義偉官房長官は事業者が立地自治体の理解を得て再稼働を、と言う。安倍晋三首相はお気楽に、規制委が審査して安全だと結論が出れば立地自治体の理解を得て再稼働をすすめたいという。規制委は〝安全審査〟などしていないのに、だ。
 7月17日の「日経」は社説で次のように言う。「安倍政権は安全性が確認できた原発の再稼働について『国が前に出て地元の理解を得る』とした。電力会社まかせにせず、国がやるべきことは多い」「審査体制を見直し、規制委と、事務局である原子力規制庁の役割分担を明確にする必要がある。審査官の増員も真剣に考えるときだ。原発の安全性をないがしろにすることなく、審査を迅速化することはできるはずだ」
 ぐずぐずしないでさっさと安全確認して再稼働、川内原発を突破口にそういう流れをつくりだそうとしているようである。しかし、問題は再稼働を望む勢力のなかで誰も安全だと断言しないで、その判断を押し付け合っていることだ。何という無責任、何という強欲。目先の利益がすべて、将来にどれ程の禍根を残そうとも自らが責任を取ることはない、というわけだ。
 5月21日の福井地裁判決、関電大飯原発3・4号機の運転差し止めの判断が出たとき、再稼働を望む勢力はこれを無視しようと決めた。規制委田中委員長は「司法の判断について私から申し上げる必要はない。われわれの考え方で従来通り審査をしていく」(5月22日「産経新聞」・以下引用はすべて同紙から)と言い、菅官房長官は「規制委が安全性を確認した原発を再稼働させる従来の政府方針について『全く変わらない。規制委が世界で最も厳しい安全基準で審査し、その結果を待って(再稼働させる)ということだ』と述べた」
 その産経新聞は次のように主張している。「判決は『原発に求められる安全性や信頼性は極めて高度なものでなければならない』とした。その指摘は当然だとしても、そもそも『100%の絶対安全』などあり得ない」「上級審では、ゼロリスクに固執せず、脱原発による国力低下という現実のリスクも踏まえた理性的な審理が求められる」
 語るに落ちるというべきか、事故の危険性に目をつぶって再稼働を急げと言っているのである。原発再稼働の前に〝安全性が確認された〟という前置きがついているが、それは世論を欺く修飾語に過ぎない。第2のフクシマが起きるかもしれないが、今はとにかく原発を動かすことに利益を見いだしているのだ。
 事故は大したことなかったし、放射能の影響は微々たるものにすぎない。誰も責任を取らないし、犯罪者として裁かれることもない。その程度のリスクで原発を手放すことはない、等々。かくして、フクシマは切り捨てられ、原発をめぐる利益共同体は生き延びる。こんな暴挙を許してはならない。 (晴)


 結論ありきで暴走する御用専門家会議が外部専門家たちの意見・批判で動揺
  第8回「原発事故に伴う健康管理のあり方に関する専門家会議」を傍聴して


 7月16日夕刻より、第8回目の「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が開催されました。同会議は、「原発事故・子ども被災者支援法」の13条2項・3項に定める健診や医療費の減免措置などの健康支援を、福島県下だけでなく群馬、栃木、茨城、千葉、埼玉などの汚染状況重点地域を含む幅広い地域で実施することを求める市民の強い要望を受けて発足しました。ところが、これまでの会議では、長瀧重信座長(長崎大学名誉教授)と会議の多数を占める御用学者たちによる、最初から「被曝量は少ない」「健康調査などの必要はなし」との結論に立った強引な会議運営が行われてきました。

 ほぼ毎回傍聴をしていますが、今回は委員外の専門家のヒアリングがメインでした。市民や支援法国会議員連盟からの強い要請を無視できず、第6回目の会議でも外部から崎山比佐子氏(高木学校、元放医研)を招いてのヒアリングが行われましたが、今回は5名の医師や科学者からの意見表明が行われました。
 5名を紹介すれば、木田光一氏(福島県医師会副会長)、木村真三氏(獨協医科大学准教授、放射線衛生学)、菅谷昭氏(医師、松本市市長)、津田敏秀氏(岡山大学教授、環境医学・臨床疫学)、森口祐一氏(東大教授、大気拡散・物質のフロー分析)の各氏です。
 木田氏は医師会の副会長としての立場から放射能被曝から健康を守るための政策提言を行いました。菅谷氏は、直近のベラルーシ訪問の報告を交えて低線量内部被曝の脅威について述べました。木村真三氏は吸入被曝と経口摂取の両方について考える必要などについて発言しました。津田氏は線量評価に拘泥している現在の専門家会議のあり方に対して、小児甲状腺がん多発の動かぬ事実から出発して早急に対策の手を打つべきことなどを強調し、長瀧座長を厳しく批判しました。森口氏はこれまでの線量評価の方法や内容に大きな限界があることを、この分野の最新の知見の紹介を通して報告しました。

 各氏の見解はそれぞれ説得力のあるものでした。専門家会議の側は、一度に5人の異論派・批判派の専門家に1人10分という時間制限を設けてしゃべらせ、ガス抜きを図ろうと算段したのでしょうが、その思惑は完全に外れました。いつもは「サイエンスとして」「専門家の責任において」等々と強調していた御用学者の面々が、外部から招いた5氏に対しておずおずと質問や批判を試みたものの、明快な返答と厳しい反批判で返され、立つ瀬無しという趣でした。これまでの御用学者中心の会議運営に大きく風穴を開けたのは確かです。
 7月13日の滋賀県知事選挙の結果のように「潮目」が変わったことを示す現象が、これから様々な分野で、次から次へと発生することになるでしょう。安倍首相は、集団的自衛権行使の関連改正法案を秋の国会に提出したのでは来春の統一自治体選挙に響くと心配し、時期の延期を決定してしまいました。「地方版アベノミクス」などを提唱することで、逆に本体のアベノミクスの破産を自ら認めざるを得なくなりました。御用学者連中がタジタジとなった今回の専門家会議の姿も、そうした「潮目」のひとつの表れかも知れません。
 第9回目の専門家会議は8月5日の17時から開催されます。傍聴には予約が必要ですが、市民とメディアからの強い要望によって、ネット中継が行われています。是非ご注目下さい。
 放射能被曝から人々、特に子どもの健康を守り抜くために、頑張りましょう。
 第8回専門家会議の詳しい内容は、アワプラネットの録画をご覧下さい。
 http://www.ustream.tv/recorded/50141139?(阿部治正) 号案内へ戻る   


 野々村県議号泣事件をめぐって

 ことの発端は、地元紙「神戸新聞」が6月30日夕刊1面で「野々村氏目的示さず300万 城崎、佐用など日帰り195回」と報じたことによる。翌7月1日の釈明会見において〝号泣映像〟が得られたことから、マスコミが取材合戦を始め、海外においても〝号泣〟が話題となり、野々村竜太郎兵庫県議はにわかに時の人となった。
 こうした映像の洪水は視聴者にアピールする、つまり視聴率は取れるが、野々村氏個人への非難を必要以上に高め、人権侵害へと堕すものである。手慣れた政治家はこういう場合、さっさと謝罪してお金を返し、それでことは終わる。野々村県議は新人であり、そういう場は初めてでどう対応していいかわからない、厳しい質問に感情を爆発させてしまった、というところではないか。
 それでは、野々村県議は何をやったのか。先輩県議がつくった抜け道、例外規定を最大限利用し、政務活動費(2012年度までは政務調査費)をだまし取ったのである。
「以下のように、領収書等を取得できない場合や銀行口座等からの引き落としで領収書が発行されない場合は、『支払証明書』(添付様式3)により、領収書に代えることとします」(兵庫県議会「政務活動費の手引」)
 これはまさしく不明朗な支出を〝手引き〟するものであり、問われるべきは県議会における制度的不備である。野々村氏についていえば、議員辞職して全額返還すればその限りで責任を取ったことになるが、市民への説明責任は果たされなければならないだろう。
 7月15日、兵庫県内オンブズ3団体が「野々村竜太郎県議の『号泣事件』に対する私たちの見解」を明らかにした。そこで述べられているのは、県議会の幕引きを許さない、報道は制度の不備に踏み込むべき、市民による監視こそが公費の乱費を防ぐことが出来る、等である。
 その後の経過は、18日に兵庫県警が野々村氏の自宅を家宅捜索、22日にはオンブズ3団体が虚偽公文書作成・同行使だけでなく詐欺罪も加えて刑事告発した。オンブズ3団体はさらに、全県議の2013年度政務活動費支出の点検に取り組む模様だ。こうした作業に誰もが取りかかることによって、野々村県議の不正が特異なものではなく、少なからぬ議員が同じようなことをしていることが明らかになるだろう。 (折口晴夫)


 野々村竜太郎県議の「号泣事件」に対する私たちの見解
  (7月15日・市民オンブズマン兵庫・市民オンブズ尼崎・市民オンブズ西宮)


 兵庫県議会の2013年度政務活動費収支報告の閲覧公開が6月30日に行われ、その日の「神戸新聞」夕刊で野々村県議(西宮市選出)の不正支出が報じられました。そして、翌日7月1日の釈明会見で説明責任を果たせないまま「号泣」し、その映像が全国・海外にまで流れ、「号泣県議」という報道があふれだしました。
 これに対し、県議会は会派代表者会議において「説明責任を果たせないなら全額返還を」という決定をし、野々村県議に事実上の辞職勧告を行いました。そして11日、野々村県議は辞表を提出し、政務調査費・政務活動費全額返還の意向も示しました。
 県議会は野々村県議の辞表を受理せず、100条委員会を設置して組織的に真相を究明し、制度の不備、不適切な支出を洗い出すという作業をすべきでした。そうしないで、県議会は異例の速さで辞表を受理し、刑事告発したことは、議会としての責務を果たさないものです。また、再発防止に向けた制度見直しを行うことを表明しましたが、身内だけでの見直しでは県民の理解は得られないでしょう。
 こうした動きのなかで、私たちは情報公開による野々村県議の支出関係全資料を入手し、違法・不当支出の返還を求める住民監査請求と刑事告発に取組むことを確認しました。しかし、そのコピーを得られたのが7月11日であり、この間の県議会のあわただしい動きは事態の幕引きを急ぎ、市民による真相追及をかわすものであることは明らかです。
 事件発覚後、多くの市民の皆さんから励ましの電話などを頂き、とりわけ西宮市民・兵庫県民の皆さんからは「こんなことで名前が出るのは恥ずかしい」という声が上がっています。また、「辞めたら、お金を返したらそれで済むのか」という思いも強くあります。ここにおいて、私たちは野々村県議事件に対する私たちの見解を明らかにするものです。

1 野々村氏による政務調査費・政務活動費の違法支出(詐取)は、その支出に関する制度的不備を悪用したものであり、辞職・返還によって許されるものではありません。私たちは野々村氏に市民に対する説明責任を果たすことを求めるとともに、その法的責任を追及します。
2 この問題に対する兵庫県議会の動きは真相究明ではなく、事態の早急な収束を目指すだけのものであり、野々村氏個人を切り捨てることによって幕引きを図ることは許されるものではありません。県議会が公費支出の抜け道を残してきたことを真摯に反省するなら、少なくとも全県議の2013年度支出について点検を行い、不正支出が明らかになれば、その返還を行うべきです。ずさんな政務活動費支出をただし、透明性を確保するためには、収支報告時の「議長の勧告」による不適切支出是正などの制度改革が必要です。
 なお、年10万円以上購入している切手代の大量購入についても、十分な説明がなされておらず、他の証拠書類の提出と説明が求められます。
3 再発防止策として、領収書添付例外規定の原則廃止と領収書が取れない時の別の証明資料添付義務付け、視察(出張)報告書の提出義務付け、会計帳簿の提出義務付け、収支報告書と会計帳簿の県議会HPへのアップ、年1回の活動報告書作成等の取り組みを行うこと。また、支出基準、支出内容のチェックについて、公募市民が参加した継続的な監視委員会を設置することが必要です。
4 報道が「号泣県議」という点に傾き、感情的非難が先行してしまいました。この事件が個人を叩くだけで終わることなく、公費支出の制度的不備、ひいては全国の自治体にある同じような問題点の是正へと向かわせる契機となるよう、掘り下げた報道がなされることを望みます。
5 多くの市民の皆さんが議員による公費支出のデタラメさを目の当たりにし、腹立たしさを抑えられないものと思います。私たちはこの問題を野々村氏個人の不正の告発のみで終わらせないために、他の県議の支出についても調査し、違法・不当な支出を明らかにし、その返還を求める作業を継続します。
6 全国のオンブズマンは自治体議員のずさんな公費支出に対して、住民監査請求・住民訴訟を通じてその是正を求めてきました。しかし、その目の届かないところでは今もデタラメな公費支出がまかり通っています。さらに、オンブズマンの干渉を排除したいという自治体議員の要求によって、地方自治法の一部改正が行われ、政務調査費は政務活動費(政活費)へと名称が変更されました。
 こうして、公費のずさんな支出が今も続いています。多くの市民の皆さんが野々村県議事件を契機として、それぞれの自治体議会の実態を知り、私たちと共にその是正に向けた取り組みを始められるよう呼びかけます。 以上号案内へ戻る


 色鉛筆・・・今、辺野古で!

7月1日、安倍内閣は「集団的自衛権の行使容認」とともに、辺野古沿岸の「臨時制限区域」を閣議決定し、同時に工事に着工した。米軍キャンプ・シュワブ沿岸提供水域(常時立入制限区域)を、現行の「沿岸から50メートル」から「同2キロメートル」へ大幅拡大し、ここに立ち入れば(抗議行動などを視野に)ただちに「刑事特別法」を適用して取り締まるというとんでもない代物だ。
5月5日の「琉球新報」世論調査によれば、普天間基地県内移設反対は県民の73、6%(うち無条件撤去33、2%)にのぼる。名護市民も1月の市長選で、新基地建設反対の意思を明確に示した。そうした民意を知りながら強行しようとするからいきおい『汚い手』を使うしか無いのだろう。法律を、政府に有利なように勝手に作ったり、「制限区域」を囲むための資材搬入を20日未明(真夜中)に行うなど、一貫して汚い、こそ泥的やり方に終始している。
6月23日沖縄全戦没者追悼式で安倍首相は、「基地の負担をあたうる限り軽くするため沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら『できることは全て行う』との姿勢で全力を尽くして参ります。」と言ったが、それはこういう事をするという意味だったのか?当日参加した遺族、そして戦没者の慰霊という場で、堂々と事実と真っ向から反する言葉を発する事の出来る人間を首相としている現実に、心底恐ろしいと思う。
その舌の根も乾かぬ十数日後には、防衛省幹部を呼びつけ移設作業を「急いでやれ!」と声を荒げ、机をたたくなどしてまくしあげたと「琉球新報」(7月19日)は報じている。
 『「時の眼-沖縄」批評誌N27・NO2』(2013年12月発行)が、大田昌秀元県知事の話を紹介している。
「沖縄はもちろん植民地ですよ。しかもアメリカの軍事植民地、日本の植民地、二重の植民地であるのがいまの沖縄です」
「普天間飛行場のキング副司令官が、NHKのインタビューに答えて『辺野古に作る基地は普天間の替わりではなく、軍事力が20%強化された新基地を造る』」
「いま普天間の年間維持費が280万ドル。辺野古では2億ドル(90億円)になる。日本政府は、5000億円で出来ると言うがアメリカは1兆から1兆5000億円かかるといっている。建設費や維持費、メンテナンスなどなど『多額の日本の税金』が投入される。本当に怖い」
「沖縄はいつも水不足。普天間ではヘリコプターを2週間に1回洗う。1機洗うのに4トンの真水が必要。100機なら400トン。(略)実際問題として、どれだけの税金がおっかぶさってくるのか、知りませんよと警告している。」
これら膨大な税金の使われ方は、私たちにはほとんど知らされない。福島原発事故による被害も置き去りにしたままだ。
5月30日、名護漁協(正組合員87人・ 准組合員26人)は、新基地建設のための埋め立て工事に伴う岩礁破砕の同意、制限水域拡大などの承認をしたことで「漁業補償金」として一組合員あたり最大3200万円、総額30億円を沖縄防衛局から受け取ることが判明している。これもほとんどの日本国民は知らない。
基地・安全保障の問題を、私たち日本国民が「自分たちの問題」として考える上で、こうした沖縄関連の情報を、また国全体の税金の使われ方を、明白に開示されることは必要不可欠であるにもかかわらず、日本政府は意図的に隠し続けて居る。
今この瞬間にも、辺野古で、東村高江で、普天間基地前で炎天下に汗まみれになって非暴力の抗議行動が、粘り強く続けられている。沖縄は、炎天下に立つだけでめまいがするほどの厳しい暑さが続く。前日未明に資材が運び込まれた米軍キャンプ・シュワブ第一ゲート前での7月21日の抗議集会には、110人を越すひとたちが駆けつけた。悔しさをばねに、「今後は夜間にも座り込みを続ける」「力を合わせて止めていく」との声が上がっている。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤ-」の具志堅隆松さんは「基地ができて、戦前が近づこうとしている。私たちは大勢が亡くなった沖縄戦から何を学んだんだ、と言われているような気がしてならない」と語っている。(澄)

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