ワーカーズ525号 2014/12/1   号案内へ戻る

 大衆行動と総選挙で安倍政権を追い詰めよう!

 安倍政権が2年前に誕生した時、期待を寄せた国民もいたかもしれない。それもそのはず、安倍首相は、アベノミクスで経済が回復する、国民の暮らしも良くなると、首相独特の昂ぶった物言いで強調した。2年経ったいま、庶民の暮らしの現実はどうか。

 アベノミクスの第1の矢、異次元金融緩和、市場にジャブジャブとマネーを注ぎ込む経済政策は、円安と株高を招き、株や債権や為替などを取引する連中、輸出企業に一時的な大もうけをもたらしたが、輸入物価を高騰させるなどして、庶民の暮らしと中小企業の経営には大打撃を与えた。

 アベノミクスの第2の矢の公共事業の大盤振る舞いは、公共工事依存の業界を一時的に喜ばせ、不動産のミニバブルを発生させたが、建設資材の高騰などで行き詰まりを見せている。多くの自治体で公共事業の入札不調がおき、インフラ整備などが続けられなくなっている。

 そして、アベノミクスの第3の矢は、産業競争力の強化という話しだったが、実際には、カジノを導入するという話し、後は雇用のルールの大改悪、働く者を保護している様々な仕組みを壊してしまう話しに行き着いている。正規を非正規雇用で置き換え、ホワイトカラーエグゼンプションという残業代ただ働き、首切り自由の仕組みを導入しようとしている。

 極めつきは、消費税の増税だ。消費税の増税は、庶民の暮らし、特にますます増えつつある低所得の人々、若者達や女性たちに、大きなダメージをもたらした。自民党の政治家、霞が関の役人達には、どうしても庶民の暮らしの実態や実感が分からない。だから、消費税増税でおおぜいの庶民の暮らしが危機に陥っていても、平気の平左の顔をしている。

 安倍首相は、消費税の増税分は社会保障や福祉の充実のため、社会保障を持続可能なものにするために使うと約束した。ところが、消費税増税のすぐ後の国会で、介護保険制度を改悪した。消費増税で庶民のフトコロから搾り取った2兆円の税金は、無駄で浪費が指摘され、経済効果無しが実証済みの公共事業に大盤振る舞いされ、さらに大企業への減税の原資にされようとしている。

 庶民の暮らしを追い詰める安倍政権を、総選挙で、そして何よりも大衆行動を巻き起こすことで、追い詰めていこう。 (阿部治正)


 好き勝手は許さない!──止めさせるぞ、安倍逆流政権──

 安倍首相による突然の解散によって衆院選挙が始まる。先にいけばいくほど政策破綻や露わになる安倍政治の本性などで支持率が下がる安倍首相による、いはば〝政権延命選挙〟だ。

 今回の衆院選は、安倍首相が進めてきた格差拡大を進めたアベノミクスや、戦後政治のレジームチェンジという、歴史を逆流させるような独りよがりの政治にストップをかける選挙だ。

 与党の圧倒的多数の議席を背景に目先の対処療法や歴史の教訓を否定するような、勝手な思い込みによる暴走を続ける安倍政権に、ノーの声を突きつけなければならない。

◆アベノミクス解散?

 今回の解散を安倍首相は〝アベノミクス解散〟だと強弁した。企業の業績を上げることで労働者の処遇が改善され、それが生産の増加となって景気回復の好循環を回復させる、そんなアベノミクスを続けるか否かを問う選挙だという。

 確かに、安倍政権を復活させた12年総選挙では、失われた20年の過程で疲弊していた多くの有権者が、アベノミクスで景気回復へのかすかな光が射すかのような幻影を見せられたともいえる。

 しかし安倍政権発足から2年間、この間の〝三本の矢〟に象徴されるアベノミクスが、有権者を釣る毛針に過ぎなかったことがはっきりした。金融緩和による円安・株高で、確かに輸出産業や資産家は潤った。が、雇用の劣悪化や輸入品などの値上がりで庶民の懐はやせ細るばかり、輸入・内需産業は低迷したままだ。アベノミクスは、労働者や中小企業、それに地方を切り捨てることで、大企業や資産家を肥え太らせたに過ぎないことがますます鮮明になっている。三本目の矢だと称する成長戦略はかけ声倒れ、結局、国土強靱化という「人からコンクリート」への回帰や大企業優遇の減税などで、格差拡大だけが深刻化したのが実情だ。

 そんなアベノミクスの失敗を明確に物語っているのが、11月におこなわれた日銀による追加緩和と安倍首相による消費増税の先送り実施だ。

 その理由とされたのがGDP一次速報だ。7~9月期は対前期比でマイナス1・6%の縮小になった。4~6月期がマイナス7・3%と大きく落ち込んだため、7~9月期は政府や市場関係者は皆プラスになると予想していたので、大きな衝撃を受けた。

 こうした事態は、もはや4月の消費増税前の駆け込み需要の反動などといえる範囲を超えて、明らかな景気失速だ。安倍内閣の唯一のセールスポイントである景気回復、あるいはそれへの期待がしぼんでしまったわけで、安倍政権が慌てるのも無理はない。

 景気失速で余儀なくされた追加金融緩和と消費再増税の延期は、もはやエコノミクスといえるような代物ではなく、単なる目先の対処療法になりふり構わず、といった具合で、もはや迷走というべきだろう。おまけに政府・日銀の分裂も露わになり、日銀による資金供給で円安と株高を演出したものの、財政肥大化と借金頼み財政は止まらない。

 安倍首相は、アベノミクスのぜひが衆院選の焦点だというが、そのアベノミクスの破綻が誰の目にも明らかになった。有権者を引きつけてきた唯一の看板政策が見かけ倒しに終わりつつある今、アベノミクスにきっぱりとノーの声を突きつける以外にない。

◆民意無視

 安倍首相は、衆院選の争点がアベノミクスの是非だけだという。が、そんな手前勝手な虫のいい話は通らない。

 安倍首相は昨年12月に特定秘密保護法を強行成立させ、今年7月には集団的自衛権の行使容認の閣議決定を強行した。

 特定秘密法を成立させた直後には、安倍首相自身が「もっと丁寧な説明をすべきだった」と反省の弁を述べざるを得なかった。12年総選挙では主たる争点として浮上していなかったのに、危惧や反対の声が拡がるなかで強行成立させたからだ。集団的自衛権では、当初の憲法改正から少しづつ軌道修正しながら、最後には国会審議さえ避けて閣議決定で強行したのだ。

 選挙公約では正面に掲げず、いざ政権発足ののちには議席の数を背景に強引に成立させる、そんな何でもやりたい放題という安倍首相による戦争が出来る国づくり、国民主権無視の国家主義の政治路線での暴走という以外にない。

 原発回帰も同じだ。事故から3年半、有権者のなかで大半の脱原発の民意を無視するなど、あの原発事故など無かったかのように原発回帰路線を突き進んでいる。

 原子力規制委員会は、規制基準は安全性を保障するものではないとして、ただ規制基準をクリアしているかどうかだけ判断するとしている。安倍政権は、その規制委員会の基準クリアを「安全が保障された」とすり替えることで、再稼働に邁進している。実際の安全性は置き去りのまま、原子力規制委員会を間に挟んでペテン的手法で原発回帰に邁進しているのだ。

 沖縄普天間基地の辺野古への移設でも、住民無視の強硬姿勢は同じだ。名護市長選や知事選でも、札束で顔をひっぱたく類の介入は露骨だった。知事選で敗北すれば「埋立の知事承認は済んだこと」と、民意無視の負担の押しつけ。ここでも住民・有権者無視の姿勢は露骨だ。

 身の回りをみれば、労働者派遣法の改悪など、安倍政権は大企業の都合優先の規制緩和を推し進めている。現行で3年が限度の派遣労働を、形だけの条件を付けて生涯派遣を強いるようにする派遣法改悪、それに長時間労働と過労死の増加に直結する〝残業代ゼロ〟制度など、生活の基盤である雇用分野で企業の良いなりの雇用破壊をもくろんでいる。

 今回の衆院選は、こうした安倍政権による民意無視の露骨な安倍政治に、〝ノーの声〟を突きつける場面だ。

◆レジーム・チェンジ

 今回の衆院選では、安倍首相の〝アベノミクス解散〟というかけ声にかかわらず、上記であげた5つのテーマが大きな争点になるだろう。他にも社会保障、TPP、それに少子高齢化対策など、重要な課題が目白押しだ。こうした個別のテーマの他にも、選挙で問わなければならないテーマがある。いうまでもなく、安倍首相自身の政治路線、すなわち〝戦後レジームから脱却〟路線だ。

 安倍首相がアベノミクスを打ち出したのは、自分がやりたい政策を実現するには、有権者の生活に直結する目先の景気回復を演出し、内閣支持率を高止まりさせる必要があったからでもある。安倍首相にとって、景気回復は条件整備に過ぎず、本丸は自分が思い描くだけの独断的な国家改造なのだ。

 安倍首相は、第二次内閣発足直後から憲法改定を掲げ、当初は憲法96条改定、すなわち改憲条項の緩和をめざした。特定秘密保護法や集団的自衛権など相次いで強引な決め方を重ねたが、元はといえば、戦後憲法への強烈な嫌悪感が背景にある。いわゆる古典的な〝押しつけ憲法〟論だ。

 平和・人権、福祉国家をめざした現行憲法は、なにも押しつけだけで成立したわけではない。敗戦を通じた軍国主義への強烈な反省を踏まえた国民的な判断だった。むろん天皇制の象徴天皇制としての温存など中途半端な面は否定できないにしても、国民が受け入れてきたからこそ、これまで改定されることもなく今に至っているのだ。

 戦後憲法を保持してきた源泉は、大きくいって三つある。国民の強烈な平和意識、アジア諸国の軍国日本への警戒感、それに従属的な同盟国としてコントロールしたい米国の思惑だ。安倍首相は、これら三つの源泉を封殺して、強力な軍事力を背景とした政治・軍事強国を夢見ているのだ。そのことを〝戦後体制の転換〟と称しているのだ。

 こんな〝戦後体制の転換〟など、きっぱりお断りだ。安倍首相自身は、積極的平和主義という美名で武力行使を拡る、改憲をつうじて国民の反戦平和意識を解体する、戦争国家づくりに欠かせない新たな英霊づくりのための靖国神社参拝を強行する、さらには政治・軍事大国としての振る舞いを張り合う中国を包囲するために、〝地球儀を俯瞰する外交〟を語りながら、時代遅れの中国包囲網づくりなどに躍起になっている。

 米国による日本のコントロールに対しても、市民運動上がりのオバマ大統領蔑視の姿勢が露骨だ。今は方便として対米協力路線に便乗しているが、本心では米国によるコントロールを脱却していわゆる独自武装の国家づくりを夢想しているのだ。

 安倍首相の〝戦後体制の転換〟路線は、ちょっと見ただけでもとんでもない時代錯誤のものだ。今回の衆院選は、個々の重要なテーマでの民意を問うと同時に、安倍首相本人やその首相を押し上げている右翼的潮流の跋扈と対決する極めて重要な場面といえる。

 企業に都合の良い雇用制度や法人減税に執着する姿勢に象徴されるように、大企業優先の戦争国家づくりに邁進する安倍政権にノーの声を突きつける闘いに邁進していきたい。(廣)号案内へ戻る


 沖縄知事選敗北&不況突入    解散安倍政権にダブルショック!

■衝撃 なんとGDPマイナス1,6%

 今朝の新聞、各紙「GDPマイナス」の大見出しがそのショックの大きさをしめしています。不思議にも、「朝日」だけが小さな扱いだった。(まあ、ついでの話しです)

[東京11月17日 ロイター電子]から引いてみよう。

- 日本の7─9月期国内総生産(GDP)が予想外のマイナス成長となったことは、マーケットにもショックをもたらした。

 ロイターがまとめた民間調査機関の7―9月期実質GDP予想の下限は前期比プラス0.2%、年率プラス1.0%であり、マイナス予測は1社もなかった。予測中央値は前期比プラス0.5%、年率プラス2.1%。前期比マイナス0.4%、 年率マイナス1.6%の結果は、まさに「ショック」だった。

 7─9月期GDPは在庫のマイナスが足を引っ張った格好だが、弱いのは在庫だけではない。消費は前期比プラス0.4%(事前予想はプラス0.8%)、設備投資は同マイナス0.2%(同プラス0.9%)といずれも大きく悪化した。再増税延期は景気にプラスだが、延期で景気が持ち直すとまでは言い切れなくなってきた。[ロイターここまで]

■悪治療としてのアベノミクス

 経済急落。この結果として、「アベノミクス失敗」「アベノミクス無効」が当然叫ばれることになる。私も、そのように論じてきました。しかし、その認識はまだ甘かったかもしれない。

 私見ですが、この期のマイナスは予想もしていなかった。悪いとしてもプラス1%台と。

 ホントに要注意だ、災害警報ではないが「生活警報」を発令しなければならない。でも残念ながら「災害」のように安全地帯へ避難ということができないのがツライです。

 国民にとって、特に勤労者、年金生活者は逃げ場がありません。日本資本主義は、未知の大不況に飲み込まれるかもしれません。

 景気急ブレーキの直接要因は、ある種のスタグフレーション効果によるものなのは確かです。

 インフレが、増税や円安により増幅されて,個人消費を冷やし続けている。そのために原材料や人件費を価格に転嫁できない中小企業の業績が落ち込み、負の連鎖が拡大しつつあるようだ。

 景気の急速な落ち込みがその証拠です。

「最高益」にわいてるのは、経団連のアベノ企業のみです、ほとんど。

 「アベノミクス・三本の矢」特に異次元金融大緩和が、日本経済をスタグフレーションへと追い込んだのでした。(日銀にお勤めの黒田さん。誰でもなくあなたですからね、この実行犯は。)

 弱り切った日本経済を、これでもかと三本の矢が痛めつけたのだからこうなる。やらずもがなの悪治療のあまりに当然の結果。

 しかし、その根本原因こそが重要だと私は言いたい。今では、資本が日本において利潤を得ることがますます困難になってきたのだ。

 今では企業利潤は、新興国など海外に活路を見いだすか、国内では非正規雇用や長時間労働、低賃金さらには「インフレ利得」というひどい搾取でしか生み出せない。国民の一層の疲労と貧困化の引き替えで、一部大企業の「最高益」が実現している。

 これでは市場経済は国民的不幸の原因と言わざるを得ないでしょう。

 同じくEUなど先進国全体が低迷しているのは、資本それ自身の行き詰まりなのだ。

 アベノミクスは、徒手空拳と浅知恵と向こう見ずで、この課題に立ち向かおうと荒療治に打って出てみましたが、みごとに玉砕したというわけです。

 だから市場資本主義、企業社会を前提としている各政党。維新やみんなの党、生活の党その他記憶できない新党派が、いまさら「アベノミクス批判」をとくいげに展開することは少しも説得力がありません。

 これらの皆さんらに、果たして別な良策はおありなのでしょうか?ないのでしょう、ゆえに安倍首相に「批判するなら対案出せ」「アベノミクスを解散で問う」と開き直られています。

■県民の総意で 辺野古新基地阻止

 時間軸からは逆だが、安倍政権に痛打を与えたのが、十六日投開票があった沖縄知事選だ。辺野古新基地建設を許可した自民党全面支援の現職に、反対派(オナガ候補)が圧勝。ひさしぶりの痛快事でしたね。

 地元の名護市では、今年初めの名護市長選でも、市議選、県議補選そして沖縄知事選と、基地反対派が連戦連勝。沖縄の民意は、これいじょうもなく明白でしょう。

 この勝利は沖縄だけの喜びではないはず。米国と一体となって集団的自衛権をはじめとする「戦争できる国造り」に猛進する安倍政権へのキツイ一撃です。

「沖縄基地推進派大敗北」「GDPマイナス」の二大ショックで安倍政権の命運は尽きかけています。

解散時期をすっかり読み間違った安倍首相。とどめは衆院選で?(文)


 エイジの沖縄通信(本土と沖縄のかけ橋をめざして) <NO-2>
 ・・・沖縄県知事選結果と辺野古工事再開


★はじめに

 新知事に翁長氏が当選した。翁長氏が仲井真に約10万票差をつける圧勝であり、過去の知事選でこのような大差はなかった。那覇市長選も翁長氏の後任候補の城間氏がダブルスコアに近い大差で勝ち、沖縄県民の喜びもひとしおである。

 地元紙も選挙選分析で仲井真が「昨年12月に県民を裏切って辺野古埋立申請を承認したこと」「これでいい正月が迎えられる」などの発言が反発をかったと指摘している。

 私も投票をすまして16日夜、名護の勝手連事務所で地元の皆さんと一緒に開票速報を心配して待っていた。8時1分テレビ画面に翁長当選速報!皆ビックリで大歓声!喜びの余り椅子から転げ落ちる人!感激の余り泣き出す人も!

 さらに凄いのが県議補選の結果である。下記の選挙結果を見て欲しい。名護市と那覇市の両県議補選で、共産党の市議を無所属・革新統一候補として勝利したことだ。

 特に名護市の県議補選は、1月の市長選挙において稲嶺市長に対抗して出馬して落選し、もう一度県議に返り咲きを狙った自民党の末松文信、この末松の当選を何としてでも阻止したいと、長年市議を勤め引退した共産党の具志堅徹氏が、急きょ無所属・革新統一候補として立候補し、末松を破り当選した。

 これで、名護は1月の稲嶺さんの市長選勝利、9月の市議員選挙でも与党勝利、今回の県知事選の翁長氏当選、県議補選の勝利と4連勝である。稲嶺市長は「名護から沖縄が変わる」「沖縄から日本が変わる」と訴える。

1.今回の沖縄選挙結果

 ①県知事選挙・開票結果(投票率64.13%)
  ・翁長 雄志(無所属、オール沖縄)  360,820票当選
  ・仲井真弘多(自民、次世代推薦)   261,076票
  ・下地 幹郎(無所属、そうぞう)   69,447票
  ・喜納 昌吉(無所属、元民主党)     7,821票

 ②那覇市長選挙・開票結果(投票率65.25%)
  ・城間 幹子(翁長氏の後任で前副市長)   101,052票当選
  ・与世田兼稔(自民、公明推薦、前県副知事)  57,768票

 ③名護市県議補選・開票結果(投票率65.44%)
  ・具志堅 徹(無所属・革新統一候補、前共産党市議) 15,374票当選
  ・末松 文信(自民、前県議)            14,281票

 ④那覇市県議補選・・・3人の立候補者がいたが
  ・比嘉 瑞己(無所属・革新統一候補、前共産党市議)が当選

2.安倍政権、辺野古工事を再開・・・ゲート前で怪我人続出

 安倍政権は県知事選3日後の19日、知事選勝利に沸く沖縄県民の気持ちを踏みにじるように、防衛局が米軍キャンプ・シュワブゲート前に県警機動隊を配備し、海上には海保のゴムボート7隻を動員して辺野古基地工事を2ヶ月ぶりに再開した。

 工事再開の狙いは、辺野古崎付近に長さ約300メートルの仮設岸壁の設置。沖縄防衛局が県に提出した岩礁破砕申請書では仮設岸壁は辺野古崎付近、仮設桟橋は大浦湾側に設置する計画。いずれも重機で砕石を投入し、網に入れた石の塊を海上に積み上げる工事である。「仮設」と言うが、2万3000立法メートルの砕石を海に投入する訳だから、サンゴ等の海が破壊されることになる。

 こうした工事再開の中で、20日米軍キャンプ・シュワブゲート前で怪我人が出た。ゲート前で抗議していた辺野古の島袋文子さん(85歳)が機動隊員に排除された際転倒し、一時意識を失い市内の病院に搬送された。県警の機動隊員は、抗議活動をする市民や取材していた新聞記者や映画監督・藤本幸久氏らを、力ずくで現場から連れ出したり、撮影させないなどの取材妨害を繰り返した。三宅弁護士は「彼らは警察じゃない。国家権力を背景にした暴力団だ」と怒っている。また海上では、カヌー隊19名が海保に拘束されることも起こった。

 さらに21日には、辺野古・大浦湾沖に海保の巡視船が14隻、ゴムボートは33艇、沖縄防衛局に雇われた警戒船が約20隻。基地ゲート前では県警機動隊が、力ずくで座り込む市民を排除。その際、県警機動隊の暴力で怪我人が続出する。

 辺野古工事再開を受けヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は「海上作業が始まりカヌー隊が抗議している。翁長次期知事は日米政府との交渉。われわれは現場で闘っていく。政治と大衆運動が一体となって頑張りたい」と述べている。

 現地からは「知事選での圧倒的勝利後の辺野古現場は沖縄と日本国家との関係、日本国家の有り様をより鮮明に浮かび上がらせている。まさに、辺野古の闘いは沖縄の未来をかけた闘いとなっている」との報告が届く。

 ところが22日になると、沖縄防衛局は設置したばかりの浮桟橋を撤去し、海保のゴムボート隊も姿を消して作業が中止された。どうも21日に衆議院が解散したので、県知事選と同じように選挙選を意識した判断のようだ。

 国民多数が反対している原発再稼働を何とか推進したい安倍政権は、鹿児島県の「川内原発」に対して、「地元の合意を尊重する」という理屈を盾に、川内市長や市議会の再稼働賛成を取り付け、さらに県知事や県議会の賛成も取り付け再稼働を決定した。

 では、辺野古基地建設に対してはどうなのだ。地元の名護市長も市議会も明確に反対姿勢、また今回多くの県民が基地建設反対の翁長氏を新知事に選出した。県議会は前から一貫して新基地建設反対を決議している。

 「地元の合意」などまったくないのに、沖縄県民の民意を無視して強引に建設を進める安倍政権。自分たちに都合の良いケースでは「民意の尊重」と言い、都合の悪いケースでは「民意の無視」である。まさに二枚舌のご都合主義の政権だ。

 いよいよ総選挙である。本土の私たちも本気度を問われるときが来た。このチャンスを生かし「辺野古基地強行工事」「原発再稼働」を阻止するためにも安倍政権を打ち倒そう!自民党議員を落とすための「協力と合同」戦線を大胆に作り上げていこう!

3.「辺野古の闘い」のビデオ紹介

 本土から名護に移り住み28年の、自称「商人」(名護予備校校長)を名乗る輿石正監督の辺野古ドキュメンタリー映画作品の第4作目。

冒頭の「艦砲ぬ喰えーぬくさー」(比嘉恒敏 作詞・作曲)のゆるやかな歌声が胸にしみる。辺野古の闘いの現場を、丁寧に紹介しつつ、過去にあった反CTS闘争などを取り上げ、それが今日の闘いにも繋がっていることを指摘する。稲嶺進名護市長が、基地交付金に頼らない市政が可能であることを誇りを持って語り、一方かつては基地容認派であったかりゆしグループの平良朝敬さんが、基地の無い自立した豊かな沖縄の未来を確信をもって語っている。(いずれも生き生きと楽しく語っているのは、聞き手の輿石さんの存在が大きいのだろう)

 「辺野古の闘いの現場」「反CTS闘争から学ぶもの」「沖縄の自衛隊の実態と不気味さ」「辺野古新基地建設とは」など、予備校教師ならではの才能で丁寧に分かりやすく紹介している。見終わった時、沖縄の豊かで美しい海と、人々への暖かな想いが胸いっぱいに残る。自然も人々も、ともに潰されてなるものか!ぜひご覧下さい。(富田 英司)

※ビデオ申込先・・・「じんぶん企画」(0980-53-6012) http://www.edic-121.co.jp
 ・作品名「泥の花・・・名護市民・辺野古の記録」(カラー90分)
 ・一般販売価格 3000円(消費税込)号案内へ戻る


 色鉛筆・・・ 辺野古で闘う島袋文子さん(85歳)へ

 お会いした事はないけれど、あなたが11月20日キャンプシュワブゲート前で沖縄県警の機動隊員に排除されけがをしたと聞き胸が痛む。どんなに怖かったことか、どんなに痛かったことか、そしてどんなに心が傷つけられた事か。

 「辺野古の新基地は絶対に作らせない」と訴えた翁長さんが、現職に圧倒的な差をつけて新知事に当選した11月16日の夜、喜びに沸くシュワブゲート前であなたは「これで座り込みは終わった」「本当におしまいにして欲しい。そろそろ私の努めも終わりが来たかな」と涙をぬぐって喜んだと「沖縄タイムス(11月17日)」が紹介していた。心の底からほっとし、長い長い闘いがやっと終わったと安心していたのに、そのわずか3日後に基地建設工事が強行された。あなたは、基地内に入ろうとするダンプカーのミラーをつかんで阻止しようとした。その胸は怒りと悔しさでいっぱいだったはず。警察官4、5人が囲み引き剥がしたところ、路上に転倒し一時意識を失い病院に搬送されたと聞く。
 
 名護市民も、沖縄県民もともに選挙で新基地建設にNO!の意思表示を示した。今の安倍政権のやっていることは、ルール無用の極悪人と同じだ。たくさんの屈強な手下を使い、暴力を使って丸腰の相手を攻撃し、何が何でも従わせようとする。こんなにむき出しの権力による暴力を許した政権があったろうか?
 
 85歳のあなたには、おそらく私たち本土に暮らす人間には想像もできないつらい体験がおありだろうと思う。沖縄戦、そしてその後の何もかも奪われた戦後生活。1972年沖縄が返還されるまでの米軍支配下の生活、その後も変わらぬ米軍基地。70年以上も人権や平和に生活する権利を、踏みにじられ続けている。

 そして今も、穏やかで心休まる老後など遠くに押しやって、焼け付く夏の日も、雨や風の冷たい日も座り込みに通い続けている。ネット右翼が言うように、中国からお金をもらっているわけでも、誰に命令されたのでもなく、ただただ次の世代に基地の無い平和な沖縄を残すために、豊かな美しい自然と人間の尊厳・誇りを守る為に。島袋文子さんの周りには、そこに来られぬたくさんの人、死んでしまった人たちの魂もきっと一緒にいるはず。 長く辛いことの連続の人生の最後に、なお闘いを強いる。その人たちに怪我を負わせてまで強行に基地建設をすることの大義とは?美しい海を永遠に埋立て汚してまで作ろうとする新軍事基地の意味とは何?選挙で示された民意を政府が踏みにじるとしたら、それは独裁国家そのものなのでは?

 「オスプレイ配備撤回・普天間基地の閉鎖・撤去・県内移設断念」の建白書を、昨年1月に沖縄県下全市町村長が一丸となって政府に提出した。保守・革新がひとつにまとまった歴史的な事で、当時那覇市長だった翁長さんの尽力が大きかったと聞く。その時の翁長さんの話として「建白書を持って東京に行ったら「中国のスパイ。琉球は日本から出て行け!」と罵声を浴びた。ショックだったのは、周りの人が知らん顔をして通り過ぎて行った事。」

 ・・・罵声そのものよりも、周囲(本土の人)の無関心の方にショックを受けたという言葉が、胸に突き刺さる。この時の建白書は、政府はほとんどまともに取り上げず、本土のマスコミも同じだった。今回の沖縄県知事選では、この建白書の精神「オール沖縄」が支持を受け翁長さんが新知事に選ばれた。11月19日シュワブゲート前を訪れた翁長さんは「ウチナーの思いを、本当の民主主義とは何なのかを、沖縄から発信していく」と決意を述べたと言う。それに向き合い、受け止めるのは私たちだ。島袋文子さんどうぞお体をお大事に。

 後日談!島袋さんは「沖縄戦を生き延びて来た。機動隊くらいに負けない」と語った。さすが沖縄のおばー!!参りました、そしてうれしい!!(澄)


 コラムの窓・・・2020東京五輪への激流

 昨年9月7日、ブエノスアイレスにおいて安倍晋三首相は次のような演説を行いました。

「委員長、ならびにIOC委員の皆様、東京で、この今も、そして2020年を迎えても世界有数の安全な都市、東京で大会を開けますならば、それは私どもにとってこのうえない名誉となるでありましょう。

 フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。

 さらに申し上げます。ほかの、どんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、2020年東京大会は、その確実な実行が、確証されたものとなります」

 これは、言わずと知れたIOC総会における安倍首相プレゼンテーションの冒頭部分です。首相官邸ホームページを開けば、英語で演説している安倍首相の得意然とした映像も見ることができます。そして、〝ウソつき安倍〟の名をほしいままにしたアンダーコントロールという言葉を聞くことができるでしょう。

 この世界に向けた大ウソから始まった、東京五輪へと向かう濁流は、今や激流となってすべてのものを押し流そうとしてるかです。すべての競技団体が2020年をめざすのは当然としても、上層部の利権、オリンピックへというかけ声にあおられ駆り立てられる子どもたち、そこにスポーツを楽しむという体験はあるのか疑問です。

 ムダで環境破壊のリニア新幹線も、名古屋まではムリとしてもたとえ一部だけでも開通させろという要求。海外からのオリンピック観戦客を当て込んだ観光開発、とりわけ、「特定複合観光施設区域整備推進法案(IR推進法案)」成立させてカジノ誘致で大儲けの要求。いつの間にか、あれもこれも2020年を到達点としてしまっています。

 そしてマスコミ。テレビは視聴率というものがあり、オリンピックの映像は欠かせないから批判がましいことは言えなくなるのでしょう。新聞などもアンダーコントロールに対する批判は結構あったと思いますが、東京五輪による福島冒涜を一貫して批判する姿勢はないようです。

 スポーツからはじまる愛国。露出する日の丸・君が代。酷使し、消費される子どもたち。そして、韓国などと金メダル獲得数を争う、オリンピック精神すら踏みにじる愚かさ。全てが東京五輪の害悪を示しています。今はオリンピックなど開催している場合ではなく、そんなムダ金があるなら、フクシマ被災者への支援策を考えるべきときです。選挙で選択によって、アベノオセンを洗濯しましょう。 (晴)


 号泣事件から5ヶ月、兵庫県議会の今!

 野々村県議号泣事件から5ヶ月、もう大方忘れ去られ、今年の10大事件で取り上げられるくらいです。だから、県議会はもうすっかり正常化したと思っている方も多いでしょうが、さにあらず。

 10月1日には、野々村県議がかの会見で「手引きに従って報告した」と終始主張し、その支出を正当化していた『手引き』は改定されたました。しかし、例えば食事代の上限は5000円のままです。5000円の食事が出る勉強会などというのは、どのようなものでしょう。宿泊費は一律16500円の計上から実費払いとなりましたが、上限は16500円のままです。しかも、これには隠された裏があります。

 県議会には費用弁償(旅費・宿泊費)というものがあり、こちらでは宿泊費一律16500円が維持されています。しかも、議員は議会と契約しているホテル(議員宿泊対象施設)に泊まった場合、その場では宿泊費を支払う必要はありません。ホテルが宿泊日数を取りまとめて議会事務局に請求し、議会事務局が実費を支払うのです。議会事務局は議員の報酬から実費分を引き去り、16500円の費用弁償を議員に支払います。

 実に見事な連係プレーで、議員は現金に触ることなく16500円と実費の差額をポケットに入れる、議会ぐるみの御手盛りと言うほかありません。一泊5000円とか6000円のホテルもあるので、1泊で1万円以上の税金が浪費され、議員は特権的余禄を受け取れるのです。

 ちなみに、これらの税金のムダ遣いを止めさせるために、「政務活動費、費用弁償、宿泊費、グリーン車利用の見直しを求める請願」を県内オンブズ3団体が9月県議会に提出しました。この請願は紹介議員を除き
、自民党から共産党会派、無所属議員まで全会一致で「継続審査」とし、事実上採択しない、特権を今後も維持するという県議会の強い意志を示したのです。

 県内オンブズ3団体が行った監査請求では、切手の大量購入も『手引き』に違反するものではないとされ、監査委員も議員のデタラメな政務活動費支出を追認しました。切手の大量購入、とりわけ年度末の大量購入は使い残して返還することを避けるため、とりあえず切手を買っておくというもので、多くの議員が(オンブズによって)告発されている不正です。

 とりわけ、水田裕一郎県議は自分が代表をしている播磨海運から大量の切手を買い続け、年度末には270万円分もの切手を使い残していました。それでも、切手の購入先の制限はない、4年の任期内に使い切ればいいと監査委員が判断し、疑惑まみれの水田議員の支出は正当とされてしまいました。

 そうすると、年度末に使い切るために切手を大量購入し、そうして3年間貯めた切手を改選前に使い切ればいいということになります。政務活動費を選挙活動に使ってはならないという規定があるのに、これでは脱法の進めではないでしょうか。

 ここには高い壁があります。兵庫に限らず、こうした壁はどこの自治体にもあり、そびえるような壁のなかで税金が好き勝手に、日々浪費されているのです。全国のオンブズ団体は請願や監査請求によって壁の内でも闘いつつ、壁の外では住民訴訟などの闘いを進めています。

 最も確実なのは、デタラメ議員を選挙で落とすことですが、これが最も困難なようです。なぜって、自治体議員は今も地域代表が多く、その支持層さえ固めておけば、何をしても、あるいは何もしなくても、選挙は安泰です。こちらの壁もなかなか強固ですが、これも打ち破るべき課題です。 (折口晴夫)号案内へ戻る


 魔の螺旋階段 スタグフレーションとは何

■どうなってる 日本経済?

 4~6月のマイナス7.3%に続いて、衝撃の「GDPマイナス1.6%」が11月17日に公表されました。
「おだやかな景気回復」(政府)どころかその後も景気後退の情報に事欠かない。

先日も「個人消費の停滞懸念 最多58社」(朝日)が公表されました。

[ 今後の国内景気への懸念材料を、主要企業100社への景気アンケートでたずねたところ、58社が「個人消費の停滞」を挙げた。昨春以降の4回の調査では最多となり、「海外経済の先行き」を初めて上回った。4月の消費税率引き上げの後、個人消費に勢いが戻らないことへの不安が広がっている。](朝日電子2014年11月22日)

 一体日本経済はどこへ?国民の生活は?

 さて、一方で①大企業の「最高益」の連続発表に沸いています。それにもかかわらず、

②GDPはこの半年間下がりっぱなし。

③もちろん設備投資も鉱工業生産も低迷している。

④労働者の賃金は15ヶ月間も低下し続けている。当然、朝日アンケートのごとく個人消費が全体として低下している、となってます。

 一見、錯綜した諸経済指標の動きです。しかし、それが政府の言うように「弱い回復過程」「まだら模様」ということではありませんね。

 ではどうして本業が縮小ないし停滞し「在庫調整」に追われても「大企業最高益」が実現できるのでしょうか?

 今日はこの謎解きにチャレンジしてみましょう。

■スタグフレーション起動か

 現在の大企業は、物やサービスを提供して「利潤」を堅実に上げていません。そんな真っ正直な路線だけでは「デフレ脱却」はできない。こう考えてきたはずの経団連。二年前に安倍首相や日銀の全面支援を得て開始したのがアベノミクスです。

 ご存じのようにアベノミクスとは「金融大緩和」「巨額財政出動」「民間成長戦略」。
この三つは、それぞれに過去の自民党政策の焼き直しで新味はありません。

 今回の大問題は、金融緩和の規模とそのタイミングです。

 伝統的な景気循環は、景気低下とともに諸物価下落=デフレとなります。かくして物価の崩落ののちには資本の利潤率が向上し(利子率の低下、資材費、人件費の低下による)資本の再循環が開始されるという経緯をとります。

 しかし,現代日本の場合不況が長期化しても利潤率の向上が見られません。長期金利はそもそもゼロにへばりついています。期待できる新産業がみあたらず、市場経済はジリ貧。それがバブル崩壊以後二〇年間のこの日本です。

 なぜこんな日本になったのか、という問いに答えるのは別の機会とします。

 今問題なのは、不況のさなかに発生するインフレーション(=スタグフレーション)がどんな作用を経済に与えるのか、労働者・国民の生活をどのように苦しめるのかです。

■ スタグフレーションは追加大衆収奪

 現代のインフレは貨幣現象です。なので実は「物価上昇」ではなく「貨幣価値の下落」なのです。上がるのは「名目物価」だけです。デフレも同じことが「貨幣価値の上昇」時におきます。だからどんなに不景気でもインフレは発生しうるのです。

 スタグフレーションは「負のスパライル」とも呼ばれ、個人消費の減少が資本活動の拘束となり、螺旋階段を下るように、不況を悪化させることで知られています。(冒頭の朝日アンケートで大企業が懸念しているのが、まさにこの点です。「最高益」と浮かれるのも今だけとの不安があるのです。)

 この大衆の富の減少はほとんどが大資本の手に移動しますが、経済ダメージのひどさ故、その富を資本として再投資することが長期的に困難になります。

 72~3年の狂乱インフレは、日本を代表するスタグフレーションで、戦後最大の経済恐慌となりました。当時の20%のインフレは日本経済を激しく萎縮させました。(現在の日本と比較できませんが、ソ連崩壊後のエリツィン時代のロシア。IMF=新自由主義の主導の下で、ハイパーインフレが発生し生産力が半分までに衰弱した、こんな極端な例もあります。)

 さて、そもそも論から始めます。古来景気の上昇時に「物価騰貴」が発生するし、景気の下降時には「物価の崩落」が生じます。そのため現代のほとんどの経済学者・エコノミストは、「インフレ=好景気」「デフレ=不況」と間違って認識していますね。

 つまり実体経済から貨幣現象を区別することができていません。(これは労働価値説を無視しているためです。)

 少しそれますが、だから安倍首相は「デフレ退治」に固執しているのだと思います。カウンターパンチとして「リフレ論」「管理インフレ」の2%で景気回復ができると。

 もちろんマト外れです。実体経済と貨幣現象の混同はマネタリストの致命的欠点です。

 本題ですが、インフレで一斉に全部の名目物価が上昇すれば特に問題は無いはずですね。お米もパンも衣類も自動車も、そして賃金も年金もいっせいにあがればですが。ところがインフレは時間差をもちつつサプライサイドより波及してゆくものです。

 インフレの波は、一般的には原材料価格、部品価格、製品価格、卸屋・小売価格と時間をかけて広がります。ところが、大企業が価格上昇分を上乗せできても、中小企業などは価格形成力が弱く、価格転嫁に遅れたりします。

 同様に労働者や高齢者大衆は仮にインフレ率と同じ賃上げとなっても「後追い」となりインフレ利得を大企業に大きく奪われてしまうのです。(当然、労働者の団結力で、この波及を逆転することもできます。六〇年代のようなインフレ率を上回る賃上げです。)

 しかも、外的要因もあって現在は急速な円安が進んでいます。輸入インフレの波が同じように広がりつつあります。4月の消費税増税も、個人消費の縮小に追い打ちをかけたのは間違いありません。(大企業減税のツケをトコロテン式に国民全体で担う消費税は納得できないでしょう。)   

■打開の道はある

 現在のEUも、日本に劣らず景気の低迷の上に国家財政の赤字が深刻です。その理由はともかく各国政府の財政緊縮政策、つまり社会保障の改悪・切り捨て、そして失業との闘いに労働者が大胆に決起しています。スペインでもギリシャ、フランスでも若者が声を挙げている。

 アベノミクスは、「日本経済の再生」「デフレ脱却」とは無縁の経済政策です。安倍首相が意図はどうあれ、結果として現実には経済はさらに急降下しつつあります。負のスパライルへと。

 財政赤字は、あのソブリン危機のスペインに劣らない最悪の状況に至りました。企業家も投資家も半ば公然と日本の国債を危ぶみ始めています。

 労働者・勤労者が、現在の国家財政危機や日本経済の衰退の責任をとる必要は全くありません。一般国民は被害者といっても良いのです。

 当面、「病気より悪い治療」=アベノミクスを止めさせる必要があります。選挙でも、そして街頭でも職場でも、声と行動で生活と権利を守らなくてはなりません。そのような時代になってしまったということです。

 安倍政権と経団連は、国民をすつかり甘く見ているようです。反乱や騒乱は起きないだろうと。
 ささやかでも反撃してゆきましょう。国民のフトコロに手を突っ込むような追加収奪を許してはなりません。
(文)


 連載30 オジンの新◆経済学講座
  水野和夫氏vSピケティ「中間階層の没落=大衆窮乏化」論
    上藤 拾太郎

 「vS」なんて大げさだが、両者を比較させながら説明するとこの問題は分かりやすい。

●水野氏の「中間層没落」論

「米国の金融帝国化は、決して中間層を豊かにすることなく、むしろ格差拡大を推し進めてきました。この金融市場の拡大を後押ししたのが、新自由主義だったからです。」「資本分配を市場に任せれば、労働分配率を下げ、資本側のリターンを増やしますから・・これはつまり、中間層のための成長を放棄することに他なりません。」

「振り返ってみれば、『地理的・物的空間』で利潤を上げることができた一九七四年までは、資本の自己増殖(利益成長)と雇用者報酬の成長とが軌を一にしていました。資本と雇用者は共存関係にありました。」「アドルノが言うように、近代主権国家とは資本と国民の利害が一致して中間層を生み出すシステムなのです」
「二十一世紀の『空間革命』たるグローバリゼイションの帰結とは、中間層を没落させる成長にほかなりません。」一億総中流を破壊する金融革命は反近代です。(『資本主義の終焉と歴史の危機』集英社新書)

 新自由主義や金融革命が先導したグローバリズムが、すでに見てきたよう新興国労働者を網羅的に搾取する事や、国内でも、勤労者の非正規雇用化や中小企業の圧迫などで中間階級からむしり取ることは事実だ。

だが、それ以前は「資本と国民の利害が一致」していたとは、オジンはいささか当惑してしまうが・・。

●これに対してピケティの「中間層の没落」論

ピケティはここんとこが違う。

 「この本(『二十一世紀の資本論』)のメッセージはシンプルだ。要約すれば①先進国では、長期的・趨勢的に労働分配率が低下し、資本への分配率が上昇している。②資本の分配率の上昇の恩恵をより大きく享受しているのは、中間層ではなく富裕層である。」(『週刊エコノミスト』解説より。日本語版がいまだ未刊行)

 資本主義は長期的傾向において、貧富の格差をますます拡大すると言うことだ。グローバル化や金融革命で労働者と資本がはじめて「決別した」という水野さんとは見方がかなり違う。

 そもそも、資本主義の成熟とともに労働者も適度に豊かになる、というのはノーベル経済学賞受賞者で米経済学会元会長のクズネッツの理論だ。彼が統計的に論証したことは、資本の「発展段階の初期に格差が拡大して、その後格差が縮小する。」というものだ。

●だが クズネッツの曲線は短かった?

 この理論というか「統計的通念」は、広く戦後資本主義社会では受け入れられてきた。

 だから、現在の新興国も、今は開発途上で格差が拡大するが、成熟期とともに格差は縮小し中間階級が形成し、経済的にも政治的にも社会が安定すると一般には考えられてきた。

 だが、ピケティはそれは間違いだと言う。

 第1次大戦、第2次大戦にともなう富の破壊といった経済外的要因で、たまたま「格差の縮小」が先進国で発生したに過ぎない。統計の比較をクズネッツの1913年から48年、ではなく、さらに現代まで含めて長いトレンドで検討すれば、この二つの大戦の時期こそが「例外なのだ」と強調する。

 日本を例に取れば、つまりこういうことだ。(『週刊エコノミスト』参照)

 戦争時代(19世紀後半から第二次大戦)を経て、米軍占領統治時代をふりかえろう。
①金持ち達が購入していた戦時公債が無価値になる。
②農地改革による土地所有農民の増大と地主階級の没落。
③財閥解体、工場の崩壊等による、大富豪や大資産家の縮小。

 付け加えるのなら、労働権などの権利の確立が労働運動を活気づけ、要求を突きつけていった。こうして終身雇用など「日本型雇用形態」が一時期成立した。
等々、日本では挙げることができる。

 戦後米国などの経済支援で、再生した資本主義体制は、大富豪が減少し小作農が消滅するなど、戦前に比べて中間層の厚い社会となったのは確かだろう。しかし、これは日本資本主義が意図したものでは全くなかった、ということになる。フムフム。

 事実、日本資本主義は、戦後の復興、高度成長のあと徐々にこの中間層の存立基盤を分解させた。社会的格差が拡大し、大衆窮乏化がすすんでゆく。

《ピケティ関連ブログはこちら》http://ameblo.jp/masatakayukiya/entry-11906766250.html

●軍配はどちらに?

 もちろんこれは冗談だ。

 ピケティについては、主著『二十一世紀の資本論』日本語翻訳版が12月に発売らしい。だから、細部は分からない。  

しかし、きわめて大胆な結論であるが、歴史的経験とも大局で合致する。資本と賃労働の非和解的な抗争を長期統計により暴き出したのである。これは、とんでもない革命論ではないか!

 しかし、水野さんの貢献も大である。

 先進国資本主義に吹き荒れている三つの〈嵐〉、「金融革命」「新自由主義」「経済のグローバル化」は、一体となって戦後に築きあげられた中間階層の分解を先導していったのである。その共通のキーワードは「利潤率の傾向的低下」なのだ。

●資本が資本でなくなるとき

 水野さんは利潤率の低下から、資本主義の終焉を語る。

もっともなことである。利潤を上げられない資本は資本ではない。「非営利事業」にしかすぎなくなるのだから。だったら、はじめから非営利事業をやればよいということになる。

 しかし、現実には欲たかりの資本家や株主は、それを許さない。配当を約束している投資銀行など投資機関は、ハゲタカファンドでもなんでもやる、儲かるなら脱法ギリギリにアコギに生きる。共存なんてクソ食らえだ。

 先進国資本は、低成長が予想されるからこそ、新興国の利潤の取り込みに必死となるし、国内でも「成長産業」を作りだそうとカジノにまで手を出すご時世だ。さらに、濡れ雑巾みたいに中間・低所得層を絞ろうとあの手この手。それがアベノミクスだ。

 日本には、生産の設備があり働きたい人がおり、知恵も技術もある。自然も豊かだ。物を作り、古い物は修理し、貧困や高齢者時代を乗り越える手段も蓄えもある。それを許さないのが「資本」というカタチで経済の根幹が動いていることだ。

 資本はいずれ協同の経済に席を譲るしかない。次回からこの話に入るぞ。

*   *   *   *   *   *   *   *

 ちなみに「利潤率の傾向的低下」の元祖マルクスは、低下の結果として周期的な経済恐慌にますますはまり込む、という点を強調していたとオジンは記憶しているな。号案内へ戻る


 シリーズ 「田母神」を読む  論文『日本は侵略国家であったのか』② ソフトな植民地?

●「条約」で正当化はできない

 「この(戦前に日中条約遵守の)日本軍に対し蒋介石国民党は頻繁にテロ行為を繰り返す。邦人に対する大規模な暴行、惨殺事件も繰り返し発生する。これは現在日本に存在する米軍の横田基地や横須賀基地などに自衛隊が攻撃を仕掛け、米国軍人及びその家族などを暴行、惨殺するようものであり、とても許容できるものではない。これに対し日本政府は辛抱強く和平を追求するが、その都度蒋介石に裏切られるのである。」(田母神論文、以下引用は同じ)

 そもそも、中国朝鮮で、当時「日本だけが国際条約を守り続けた」というのは事実ではない。関東軍の満州での数々の軍事暴走、たとえば柳条湖事件を口実とした満州制圧は、「条約」「合意」とは一切関係がない。当時の国際連盟のリットン報告に論究するまでもなく世界からの孤立を招いた。

 のちに論究するが、その問題はここでは棚上げして、田母神氏の「日本軍による条約順守の軍事行動」もまた正当化できるのかを問うてみよう。(当時の日本がカタチの上で「条約」にこだわったのは、英米等列強の警戒感を意識した限りでのことだろう。)

「我が国は国民党の度重なる挑発に遂に我慢しきれなくなって1937年8月15日、日本の近衛文麿内閣は《支那軍の暴戻(ぼうれい)を膺懲(ようちょう)し以って南京政府の反省を促す為、今や断乎たる措置をとる》と言う声明を発表した。我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである。」

 聴くに堪えない、目も当てられないとはこのことなのだろう。当時の政府見解、大本営発表(大本営はこの年の11月設置)をそのままなぞっているだけだ。これでは「論文」などというようなものではない。

 どうかどうか、田母神氏に考えてほしい。 

いわば、他人の家に武装して押し入った強盗が、有無を言わせず居座っていたのが、当時の日本軍の状況ではないか。(朝鮮半島はもとより満州から山東省その他へ軍を拡大させせいた)

 家人が、表向きは武力に怯え「帰順の態度」を見せたとして、他方では何とか盗賊を追い出そうとしたり、略奪に抵抗するのは当然の権利ではないのか?

 この弱い立場の家人の抵抗を「テロリスト」「腹に据えかねる」と非難するとは、盗人(ぬすっと)猛々しいにもほどがある。そうではないだろうか田母神氏。

●開き直っても事実は変わらないのでは?

「もし日本が侵略国家であったというのならば、当時の列強といわれる国で侵略国家でなかった国はどこかと問いたい。よその国がやったから日本もやっていいということにはならないが、日本だけが侵略国家だといわれる筋合いもない。」

 氏が確認したいというのであれば教えて差し上げよう。当時の侵略国は、英国、仏、ドイツ、(ロシア)などであり、それと並んで日本は確実に「植民地主義」「侵略国」であった、ちがうのだろうか?
戦後はそれらに取って代わり、米国と旧ソ連などが侵略を繰り返した。ベトナム、イラクやアフガン、ポーランド、ハンガリーへの軍事侵攻を見れば明瞭だ。

 それにしても田母神論文の基調は、「悪いのは自分だけか?みんな同じ事したじゃないか!」という大人げない繰り言だけだ。被害者が存命しているというのに、これ以上日本国民に赤恥をかかせないでほしい。
 日本の植民地主義を批判する勢力を「反日」だと連呼する田母神氏であるが、日本国民を貶(おとし)めているのは一体どなたなのか? 

●国民国家形成と植民地主義の反動性

 そもそも国民国家は歴史的存在だ。つまり、永遠ではないどころか絶えず変貌しつつある。例えばEUをみるとよい。国家という枠組みが消滅する兆しはないが、たえず変貌しつつある。

 国民国家の成熟は、人々にとっても必要な通過点なのである。部族主義や地域主義の狭い利害関係から、より広い国民的意識と国民的利害関係が成長してくる時代である。しかし、その歴史は地域によりかなりのバラツキがあるのだ。そこが問題だ。

 この社会進化の成長過程を妨げ、そればかりか介入し、いまだ脆弱な国家統合につけいり領土や資源のぶったくりを策したのが「帝国主義」「植民地主義」だ。だから、侵略主義・植民地主義への勝利が中国やインドやベトナムのように、国民国家の形成に直接につながっているのだ。

 また、帝国主義の手になる「国境線」という置き土産もやっかいなものになっている。中東やアフリカのように(シリアやイラク、リビアなど)、当時の列強により無理やり線引きされた「国民不在」国家が今問題である。

 シリア、イラクに典型的に見られるように民族・部族や宗派対立が絶えず、それに乗じて大国が軍産複合体の影響の元で介入し、紛争を長期化させている。今、世界の軍事的不安定化の主たる要因に、この問題がからんでいるのだ。

 国民国家の形成は、人類にとって経過点にしか過ぎない。
しかし、それを無視すること、その国家成熟を支援するどころか外部から攪乱することは、歴史に逆行することである。いわんやその混乱に乗じて「国益」「企業利益」を追及すべきではないはずだ。

 だから田母神氏のように、苦しい言い訳などに終始することを止めるべきだ。グローバルな視野から、わたしたちは帝国主義、侵略主義には徹底して反対する必要があるのだ。

●「日本の穏健な植民地統治」!?

「我が国は満州も朝鮮半島も台湾も日本本土と同じように開発しようとした。当時列強といわれる国の中で植民地の内地化を図ろうとした国は日本のみである。我が国は他国との比較で言えば極めて穏健な植民地統治をしたのである。」

 なにをかいわんや、あきれ果てるという他はない。グローバル・スタンダードをたびたび口にする氏であるが、国際的センスの持ち主にはとても思えない。

 田母神氏の高い評価をうけた日本による朝鮮・台湾の「内地化」とは民族の否定ではないのか、一種の「民族浄化」というべきだ。朝鮮や台湾、そして沖縄などでは皇民化政策として「創氏改名」、日本語教育、「正庁改善」、神社参拝などを押しつけてきた。これは朝鮮民族文化等の抹消ではないか。

 氏は、日本による近隣諸国・地域に対する皇民化政策、強制連行・労働、「従軍慰安婦」等々暗い歴史を直視しようとせず、それをたいしたことの無いように「比較で言えば穏健な植民地・・」とさりげなく語る!(つづく)〈文〉


 《何でも紹介》
 『選択』誌上で展開されている<日本のサンクチュアリ(聖域)>の実態暴露に注目

 ワーカーズ読者の皆さんは、『選択』という名前の雑誌をご存じであろうか。

 この雑誌は、日本の辛口ジャーナリズムの極北にある雑誌である。何よりもその姿勢は、雑誌を書店で販売していないことに象徴されている。この雑誌に広告はない。広告主に気兼ねしなくてはならないのでは、真実の報道など出来ないことを知っているからである。

 一九七五年に創刊された『選択』誌の表紙には、実際に「三万人のための情報雑誌」と印刷されている。現在は六万部印刷しているとホームページで紹介されているが、先に触れたように、この雑誌は書店で販売せずにすべて年間予約購読者の自宅への“自宅直送”での販売であるという創刊以来の徹底ぶりに私は驚かされる。

 このため、ずばり本音が書ける雑誌として、実際に執筆している記者たちからも高く評価されている。無署名で書く記者たちも実に多士済々で、約四百人を擁するという。

 私がこの雑誌に注目しているのは、徹底して地道な取材の積み上げによる記事の重厚さである。まさに刹那的で浅薄なダマスゴミと真逆の姿勢に、私は感服しているのである。

 その中でも特筆すべき連載物は、<日本のサンクチュアリ(聖域)>の実態暴露物であろう。それも何とこの七月までに三冊も出版されている。この雑誌により組織実態が暴露されたのは、私たちが殆ど伺う事すら出来ない七十余の実に問題多き組織等であった。

『日本の聖域』第一集の説明として、ホームページには、「行政組織の知られざる実態。司法や警察の驚くべき行状。『そんなことはしないだろう』と信じていた者たちによる背徳行為。税金は浪費され、法の下で正義は歪み、食や医療が命を脅かす。あってはならないことが、この国に点在する『聖域』の内部で、実はまかり通る。有権者、納税者ならば知っておくべき二十六の現実を収録」とある。具体的に紹介してみよう。

 第一部 欲望が生み出す闇

 入国管理局・諮問機関委員・生保「総代会」・「人工透析ビジネス」の内幕・パチンコ業界・原子力安全・保安院・厚労省の犯罪「ドラックラグ」・創価学会エリート官僚・児童相談所・

 第二部 とがめる者なき無為無策

 日本最大の機関投資家「農林中金」・学生のいない学校「国連大学」・国営「穀潰し」独立行政法人・都立松沢病院・東京高等裁判所・国立大学「法人化」の内幕・二千七百万匹「ペット市場」の実態・日本銀行・無きに等しい「検屍制度」

 第三部 国民への背信行為は続く

 厚労省「医系技官」・瀕死の「国立がんセンター」・食品安全委員会・日本相撲協会・NHK・交通安全協会・精神鑑定の世界                    以上

『日本の聖域』第二集の説明として、ホームページには、「この国は偽装だらけだ。消費者も、専門家も、大新聞も、公共放送も、みんな手も無くコロッと騙される。弱者のために、子どもたちのために、正義のために――。見た目は清らかだが、実はお為ごかしという悪党どもは、今も昔もこれからも消えてなくなることはない。単行本から二年後の現況を加筆し、さらに充実して文庫本化」とあり、サブタイトルはアンタッチャブルである。具体的に紹介して見よう。

 第一部 誰がための国益か

 厚労省「薬系技官」・児童相談所・「法螺吹き」気象庁・新聞休刊日・犯罪被害者の会・日本赤十字・米軍「横田基地」

 第二部 不実と惰性の連鎖

 偽装農家・公安調査庁・箱根駅伝・NHKと相撲協会・「地震予知」という大嘘・原子力村・「主犯GE」フクシマの罪・世論調査・

 第三部 私欲のみがまかり通る

 福島を食い物にする「被爆医療」・記者クラブ制度・利権と化した「除染事業」・ままならぬ「尊厳死」・「宝くじ」の闇・子どもたちの被爆・東京大学地震研究所・行政委員・在沖縄海兵隊                               以上

 この七月に単行本として出版された『日本の聖域』第三集のサブタイトルには、「この国を蝕むタブー」とある。そして帯には、「病理に蝕まれた『悪』は、知られざる『聖域』に潜んでいる」と書かれている。具体的に紹介してみよう。

 第一部 この国の深淵をのぞく

 理化学研究所・東宮・学習院・裏金まみれの「国立がん研究センター」・日本体育協会・スポーツマフィア 電通・自民党東京都連

 第二部 不義と不正の巣窟

 人工妊娠中絶・中国大使館・公安警察・高齢者医療・膨張する警察の「利権」・日本貿易振興機構(JETRO)・教育委員会・沖縄防衛局・防衛省情報本部・

 第三部 欲望に勝るものはない
 私大と新聞の「異様な関係」・農薬ムラ・日本内科学会・暴力団を蘇らせた「フクシマ」・「科学研究費」の闇・自治医大と高久史麿・トクホ(特定保健用食品)の闇   以上

 これら三冊で告発暴露された各組織等の実態に、私はまさに驚きの連続である。この間、福一原発事故で私たちは、原子力安全・保安院等の原子力ムラの呆れ果てた実態を知ることが出来たが、『選択』は福一事故の約五年前にその実態を告発していたのである。

 さらに最近大騒ぎされたSTAP細胞事件は、上記の「理化学研究所」また「『科学研究費』の闇」などで充分に伏線が張られており、背景が明らかにされていたのである。

 一九七五年の創刊号から、<日本のサンクチュアリ(聖域)>は掲載されていた。そして現在までの<日本のサンクチュアリ(聖域)>の実態暴露の積み上げは、壮観の一言と形容するしかない見事さではないだろうか。

 本来であれば一つひとつについて、『選択』の具体的な指摘を紹介したいのだが、今はとても出来そうもないことが残念至極である。まさにこれらの一つひとつの暴露の中に日本国の病理が存在することを私たちは知らなければならないのである。

 さらに付言すれば単行本を出版した後も、創刊時からの問題意識による<日本のサンクチュアリ(聖域)>の実態暴露は続いている。そして二0一四年十一月号の『選択』最新の記事は、「<日本のサンクチュアリ>原子力損害賠償機構」である。

 ホームページには、この記事について以下のリードがある。

「肥大化する経産省の新『伏魔殿』<日本のサンクチュアリ>原子力損害賠償機構 福島原発被災者の救済はそっちのけ。今や東電解体と電力自由化推進の組織に変貌した。新たに廃炉を担うことで、電力各社と原発の生殺与奪の権も確保。向こう40年は安泰となり、経産省は笑いが止まらない」とある。
 ホームページから内容一部を紹介してみよう。

 あの3・11から三年半余り、東京電力と中部電力が火力発電事業の包括提携に合意した。首都圏と中京圏をまたぎ、燃料の共同調達、火力電源のリプレースなどを推進する新会社を、今年度中に折半出資で設立する。それは、戦後の電力九社による「護送船団」体制の終焉を意味する。

 しかし、十月七日に揃って記者会見した東電の廣瀬直己社長、中電の水野明久社長の表情は晴れなかった。その場にはいない「影の演出家」が存在するからだ。

 実はこの提携、エネルギー業界では「官製アライアンス」と呼ばれ、仕掛けたのは東電の五〇%超の議決権を握る原子力損害賠償支援機構―。経済産業省が実質運営するこの認可法人は、福島第一原子力発電所の事故を受け、名称通り被害者の損害賠償を円滑に行うために設置された。だが実態はほとんど知られていない。 ・・・

 この引用からも分かるようにマスゴミが書けないタブーを物ともせずに追及する姿勢が、今現在も紙面に溢れていることを読者の皆さんに確認して頂けただろうと思う。

 小沢一郎のベストセラーに『日本改造計画』があるが、全くの正反対の意味において私たちも日本改造を志すに当たっては、これらの著作群から指摘されている問題点の把握と共にその克服を真剣に考えねばならない課題を突きつけていると考える。

 ぜひ読者の皆さんにも、『日本の聖域』三部作を手にとっていただきたい。 (清野)号案内へ戻る


 読者からの手紙 「消費税増税延期」年末総選挙実施はなぜ実施されるのか

 11月9日、読売新聞による年末総選挙の報道は天から降ったような早さで事実となり、11月21日衆議院解散、12月14日に総選挙が実施されることになりました。

 ここに至るまで、安倍総理が今の時点でなぜ解散するのかを様々な人々が語ってきましたが、以下の二つの事実に注目する人々は極端に少ないのが現実です。

 共産党などは、安倍総理が総選挙を決断したのは国民に追い詰められた結果だとの全く主観的な願望を吐露する政治党派の代表選手です。一国政治評論は止めましょう。

 では注目すべき事実とは何でしょうか。それは解散の風は、富士山会合をきっかけとして吹いてきたという冷徹な事実です。

 共に最近は日本政府公認の広報誌だと揶揄されている日本経済新聞の記事ですが、「富士山会合」についての記事を紹介します。他のダマスゴミは記事にしていないようです。

 まずは、富士山会合が開催されるとの記事です。

 二0一四年十一月一日「ケネディ大使、関係強化に意欲 日米対話『富士山会合』式典 」

 日本経済研究センターと日本国際問題研究所は10月31日夜、国際関係や安全保障に関し 日米の政府関係者や専門家らが対話する第1回年次大会「富士山会合」の開会記念レセプション を東京都内のホテルで開いた。安倍晋三首相やキャロライン・ケネディ駐日米大使らが出席した。年次大会は11月1~2日の日程で神奈川県箱根町で開催する。

 レセプションであいさつした安倍首相は「富士山は裾野が広いから美しい。日米関係も裾野を広げることが重要だ」と述べ、政府関係者に加えて学識者や企業経営者らも一堂に会し、安保や経済などを議論する富士山会合へ期待感を示した。

 ケネディ大使も「日米の協力関係は比類なく広いが、当然と見なし何もしないわけにはいかない」として、関係強化への意欲を示した。レセプションには、自民党から福田康夫元首相や麻生太郎副総理ら、民主党からは玄葉光一郎前外相らが出席した。

 次に富士山会合閉幕の記事を紹介します。

 二0一四年十一月二日「富士山会合閉幕、『日米対話継続を』」

 日米の政府関係者、経営者、専門家ら二百人弱が参加し、神奈川県箱根町で開いた第1回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センター、日本国際問題研究所共催)が2日、閉幕した。米戦略国際問題研究所(CSIS)のハムレ所長は「日米に立場の違いがある分野もあるが、対話を続けて解決策を探るべきだ」と総括した。

 ハムレ氏は「日米の官民の出席者が自由に討議する、まれに見る会合だった」と評価、「今回の対話のように率直に問題を話し合うことが重要だ」と話した。日本国際問題研究所の野上義二理事長は「来年の戦後70周年を(日米同盟や友好の)よき到達点とするため、今後も友人同士の議論が欠かせない」とした。

 会合2日目は米ハーバード大のジョセフ・ナイ特別功労教授が講演し、日本の対中政策について「もっとソフトパワーを活用したほうがいい」として、文化的な影響力を行使すべきだと力説した。中国の台頭については「(近い将来に)米国を追い抜くことはない」とし、日米は中国の脅威を過大評価すべきではないと強調した。中国とは気候変動やエボラ出血熱など地球的課題では協力できるとした。2日間の議論をまとめた議長声明「富士山宣言」は近く発表する。

 これらの記事にあるように参加者は、アメリカ側キャロライン・ケネディ駐日米大使、米戦略国際問題研究所(CSIS)のハムレ所長、ジョセフ・ナイ特別功労教授らと日本側石破茂前幹事長、長島昭久元防衛副大臣、日本国際問題研究所の野上義二理事長、竹中平蔵慶応大学教授らの合計二百人でした。まさに一大交流会というに相応しい陣容です。

 こうした点を考えれば、従来日本の未来を動かしてきたD・ロックフェラーの「日米欧三極委員会」は、この第一回「富士山会合」にその席を譲ったと総括できるだろう。

 この日米協力関係の話し合い中から、今回の解散話が始まったのです。事実、その先鞭を切ったのは、飯島勲内閣参与なのです。11月2日のテレビ番組で彼は年末選挙について云々しています。このことを大々的に取り上げたのは、読売新聞でした。まさに仕組まれていると言うべきではないでしょうか。

 更にもう一つの革新的事実は、自公議員の中に消費税延期を主張する議員は殆どいなかったのに、何と最大の反対者は米国のルー財務長官だったということです。

 2014年9月21日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の閉幕後の記者会見で、ジェイコブ・ジョセフ・ルー財務長官は、日本について「消費税率を4月に8%に引き上げて以降、個人消費と投資が落ち込んでおり、経済活動の縮小による困難に直面している」と最近の日本経済の成長鈍化に懸念を示しました。

 この発言は、夕刊フジが9月22日付けで「消費増税 米もダメ出し 財務長官が『失望』表明」という見出しをつけて報じたのですが、ダマスゴミは一切無視してきました。

 実際、9月29日から始まった臨時国会で行われた安倍首相の所信表明演説に対して、30日からの野党民主党の海江田万里代表、維新の党の江田憲司共同代表が代表質問した中でも、この米財務長官の指摘には一切触れなかったのです。これでも野党だと言えるのでしょうか。

 彼らは、2015年10月1日から消費税が10%にアップするのは、もはや当然のことだと考えているでしょう。これで自分の役割が果たせたと考えているのでしょうか。

 この米国国務長官の行動力には実に驚かされます。2013年11月12日、来日中のルー財務長官は安倍首相らと会談し、安倍政権の経済政策に期待して掲げる「第3の矢」の実行を要請させしていたのです。

 2014年9月17日、ルー長官は講演会で「強いドルは良いことだ」と述べ、円安ドル高を事実上容認して、19日には麻生太郎財務相に「内需拡大を維持するための政策」を要請、「政策を総動員して景気の底割れを回避すべきだ」と力説していました。

 しかし麻生太郎財務相は、消費税10%にアップした場合、消費が伸びず、景気がダウンし、税収減となる危険が発生することが予想されるのに備える方策として「補正予算を検討する」と常々発言していました。この発言を知ってたルー財務長官は、「当然ながら税金が使われることになる。ならば何のために消費増税するのか、本末転倒ではないか」と考えて、「そんなことなら、消費税アップを中止すべきだ」と警告していたのです。

 ルー財務長官とは一体全体何者なのでしょうか。

 ここで私は、板垣英憲氏が彼について解説したブログを引用しておきます。「ここで注意しておかなければならないのは、ルー財務長官が、欧州最大財閥ロスチャイルド総帥ジェイコブ・ロスチャイルドの一族であるということである。ロスチャイルド財閥は、世界の中央銀行(株式会社であり、国家機関ではない)の最大の出資者であることも忘れてはならない。各国政府の経済景気政策が失敗すれば、中央銀行が損失を受けかねない。つまり、最大の出資者であるロスチャイルド財閥も大損害を受ける。つまり、ルー財務長官の発言は、ジェイコブ・ロスチャイルドが安倍晋三首相のアベノミクス政策に強い懸念を抱いているシグナルである」この解説以外に彼の発言の背景は考えられません。

 4月以降の日本経済の成長鈍化について、ルー米財務長官が「期待外れとなった」と表明したのです。それ故増税推進派は「消費増税は国際公約」といいますが、再増税を強行する日本経済の先行きに米国が強く警戒しているのは明らかでしょう。

 幾ら言って聞かせても、消費増税を止められない自公政権。「富士山会合」は、この点について大胆で率直な議論を展開させました。その結論は、だから解散なのです。

 属国の悲哀を味わったのは、またしても安倍総理だったのです。    (S)


 「読者からの手紙」・・・衆議院解散の命名に思う

 任期2年を残して衆議院が解散した。

 一体、誰のための、何のための解散か?多くの有権者から疑問が出ている。

 安倍首相は「アベノミクス解散」と言っているが、多くの人たちは「安倍の安倍のための安倍による解散である」と理解していると思う。従って、「デタラメ解散」とか「リンカーン風解散」と命名する人もいる。

 そこで、今回の解散の命名を「11月18日の東京新聞」からいくつか紹介する。

 ・「『延命』解散・・・アベノミクスは失敗で経済は成長しない。野党は選挙態勢が整っていない。いま解散すれば、与党が勝って次の4年間延命できると考えた。

 ・「『自己疑惑』解散・・・一部週刊誌による首相の脱税疑惑報道を打ち消すため。参院予算委員会でもこの報道が取り上げられると、安倍首相は「重大な名誉毀損だ」と声を荒げた。

 ・面白いのが「堪忍袋爆発寸前解散」・・・堪忍袋には、在日米軍基地や政治とカネの問題など、有権者には不満がたまっていて爆発寸前。

 ・沖縄からは「知事選敗北隠し解散」・・・解散風が吹き始めたのは、10月30日の沖縄県知事選告示後である。首相官邸は仲井真が大敗することを事前調査で予期していた。衆院選で政治の流れがリセットされ、国会での追及がしにくくなる。国民の関心も衆院選に向き、知事選の敗北という衝撃を和らげる首相官邸の意図がある。

 いずれにしても、国会の重要法案の審議を投げ捨てて、この次期に衆議院解散を決めたのはまったく大義がない。聞くところによると、今回の衆議院選挙費用は「700億円」かかるという。

 大義もなく、700億円ドブに捨てるような選挙、ただただ自分の政権延命のための衆議院解散である。特に大地震・原発被害を受け復興が進まない東北3県の皆さんは、腹立たしい思いであろう。

 沖縄知事選も沖縄の将来を決める重要な選挙であった。今回の衆議院選挙は日本の将来を決める極めて重要な選挙である。安倍政権にNO!をたたきつけよう。(O)号案内へ戻る


編集後記

 ワーカーズはA3紙二つ折りの裏表4㌻立てが基本構成で、投稿記事の量によって8から12㌻立ての範囲で作成していますが、購読料を考慮し、紙代と印刷や郵送費のコストなど合わせて考えれば適切な範囲だとは思いますが、どうでしょうか?最近は投稿記事も多く12㌻立て編集が続いていますが、投稿記事が多くて12㌻立てでは入りきれないと記事の大きさや文字間を縮めたりしてなんとか入れ込んでいますが、文字が小さく読みづらいかなと思いつつ、今回も入れ込みました。が?、キジについての感想やご意見と合わせてご感想をいただければ幸いです。。(光)

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