ワーカーズ558号  2016/5/1    案内へもどる

 災害対策に名を借りた緊急事態条項の創設=戦争への道改憲に反対する!
 被災者への冷たい態度をとる安倍首相は退陣せよ!


 菅義官房長官は4月15日の記者会見で、熊本大地震に関連し、大災害時などの対応を定める緊急事態条項を憲法改正で新設することについて「極めて重く大切な課題だ」と述べました。「憲法改正は国民の理解と議論の深まりが極めて重要だ」とも語り、慎重に検討すべきだとの立場を示しました。
 
 自民党は野党時代にまとめた憲法草案で、緊急事態条項の新設を明記しています。各国の緊急事態条項は軍隊とセットになっています。戦争をする国は、緊急事態条項を持っています。緊急事態条項は、災害対策に名を借りた戦争への道です。また憲法を内閣に集中させ、人権制限を容易にするものです。災害対策で何か問題があれば、現法律で対応するべきです。

 安倍首相は23日、視察先の熊本県益城町で記者団に対し、熊本地震の激甚災害指定について「復興事業に取り組む地方自治体を全面的に支援するため、激甚災害の指定を明後日(の25日に)閣議決定する」と語り、25日の閣議で激甚災害の指定を決めました。

 激甚災害の指定は、国民経済に著しい影響を及ぼす災害について被災自治体の財政負担を緩和し、被災者を助成します。被害額を算定した上で、道路や橋などの公共土木施設の災害復旧事業について、通常より1~2割かさ上げして約9割を国が補助します。

 安倍首相が被災地で避難生活を強いられているお年寄りに言い放った一言に、驚いてしまいました。「地震が続くから心配でしょうけど、しっかり応援してますから」この人ごとのような言い方はあまりにひどいです。安倍首相は初めて被災地を視察訪問し午前9時すぎに現地に到着した安倍首相は、まず被害の大きい熊本県益城町や南阿蘇村をヘリで上空から視察し、自衛隊や警察や消防などを回って「激励」したあと、ようやく被災地の避難所を訪問しました。被災者のことを後回しにしたのです。

 今回の現地視察は、4月14日に最初の大きな地震発生から実に9日も経過してからです。そして何より、「激甚災害指定」の遅さはひどうものです。熊本県では、15日の段階で蒲島郁夫県知事が「激甚災害の早期指定」を求めていましたが、安倍首相はこれを一週間以上無視したあげく、25日にやっと激甚災害指定を閣議決定しました。

 たとえば東日本大震災の際、当時の民主党政権が発生の2日後に激甚災害に指定し、自民党政権のケースを振り返っても、2004年10月の新潟中越地震では、災害発生の3日後には当時の小泉純一郎首相が現地視察し、激甚災害指定を閣議決定しています。また、第二次安倍政権下でも2013年7月の山口県と島根県での豪雨災害時には、安倍政権は発生から4日後に激甚災害の指定を表明していました。

 この間、国会で「早急に現地視察すべき」「1日でも早い激甚災害指定を」という声が上がっていたにもかかわらず、安倍首相が今日まで被災地視察と激甚災害指定を引っ張ってきたのは、24日にあった北海道での衆院補選をにらんでの作戦だったのではないでしょうか。補選投票日の直前に、安倍首相が被災地で激甚災害指定を表明することで、この補選を有利に進めようとしていたのだと思います。

 次期参院選は、自民、公明、維新を少数に追い込むため野党は、真剣に選挙協力すべきです。 (河野)


 同一労働同一賃金
 均等待遇の獲得は自分たちの闘いで──呆れた自民党の「中間報告」──


 安倍首相が今年に入ってから突如打ち出した同一労働同一賃金。女性や非正規労働者の悲願でもあるが、実情は安倍首相によるアベノミクスへのテコ入れと選挙目的の毛針という以外にない。アベノミクスは誰の目にも破綻が見えつつあり、また、今年は参院選挙の年で、民進党と連合の関係にくさびを打ち込む選挙戦術の色合いが濃いものだ。

 同日選は無くなったとも報じられているが、安倍首相の思惑とは無関係に、同一労働同一賃金などの均等待遇は、労働者の生活と連帯のための不可欠の基盤であることは間違いない。安倍首相や政権主導の当てにならない毛針に釣られることなく、自分たち労働者のの団結した闘いによって均等待遇を勝ち取っていきたい。

◆苦し紛れのトリックプレー

 安倍首相が打ち出した同一労働同一賃金。いかにも突然で違和感満載といった印象だ。それ以前の安倍政治は、生涯派遣に道を開く労働者派遣法の改悪や残業代ゼロ法案、それに首切り自由の法制化など、ともかく財界・産業界の要請を代行するものだった。それが今年に入って同一労働同一賃金の実現や労働時間規制に積極的な姿勢を見せ始めたというわけだ。

 安倍首相による同一労働同一賃金の実現という新しいアドバルーンは、アベノミクスの低迷・破綻で苦し紛れに繰り出したトリックプレーの感がある。これまで安倍首相は、企業を富ませる事でその果実が社会の隅々に波及するという,いわゆるトリクルダウン論を装ってきた。第二次政権発足以降、企業に積極的な賃上げを求める、いわゆる官制春闘もその一環だった。ところが異次元の金融緩和や積極的な財政出動を繰り返しても景気は一進一退で低迷し、重ねてきた官制春闘でも実質賃金は下がり続けている。そこでこれまで頑迷に拒絶してきた〝均等〟待遇を目的とする同一労働同一賃金を打ち出してきた、というわけだ。

 他方で安倍首相とすれば、連合を念頭に置いた選挙対策としての計算もあるのかもしれない。賃上げ要請にしても同一労働同一賃金にしても、本来は財界・産業界がすんなり了承できるものではない。が、代わりに民主党(当時)の支持基盤である連合への牽制という側面もある。

 連合は、本音では同一労働同一賃金に反対だ。正社員の賃金が削減されかねないからだ。大多数を正社員で構成する連合は、好意的に評価しても正社員の利益団体でしかない。これまで成り行きで民主党を支持してきた連合だが、その主流派の出自と本性は、労使運命共同体という企業統治の支柱そのものだった。だから野党第一党の民主党との支持協力関係を、安倍首相が「ねじれ」と感じているとしても不思議ではない。この際、連合と民主党(現民進党)の関係にくさびを打ち込み、あわよくば連合を牽制し、できればひれ伏させたい、という思惑もあるのだろう。

 安倍首相のもくろみは、連合の実情を考えれば半分は当を得たものであったとしても、半面ではそれは出来ない相談でもある。なぜかと言えば、連合は連合で企業体制の支柱という本来の役割をモロ出しすれば、今でさえやっと組合員をつなぎ止めている組合への求心力は失われ、内部から連合への批判や離反が噴出する事態も招きかねないからだ。今でさえ原発依存やTPPで政権に歩調を合わせる姿勢が露骨なのに、自民党への屈服は労働組合としての自己否定に繋がってしまうからだ。

 そうした微妙な関係の上で、安倍首相は民主党と連合の関係にくさびを打ち込めればめっけものと、官制春闘を演出したのだが、今回の同一労働同一賃金や残業時間規制も同じような意味合いを帯びている。

 そんな思惑がらみの同一労働同一賃金、どれだけ期待しても実現の見込みはないと知るべきだろう。

◆竜頭蛇尾

 ところで安倍首相が描いている同一労働同一賃金とはどういう代物なのだろうか。

 まだ具体的な政策としてはまとめられていないが、この4月8日に自民党雇用問題調査会のプロジェクトが中間報告を出した。主な項目は、それによれば、

○正社員の賃金引き下げではなく非正社員の賃上げをめざす

○企業横断的ではなく、同一企業の「同一労働同一賃金」を基本とする

○賃金の「要因分解」を行い、「職務内容」に相当する賃金は……同一にすべき

○「要因分解」した賃金の決定要素を……情報提供し、求めに応じ説明していくべき

○昇給についても、……「職業能力の向上」と「昇給」の関係について説明していくべき

などとし、具体策としてガイドラインの作成、包括的な法整備、最賃の引き上げ、中小企業の生産性向上への支援や取引条件の改善を進める、大都市と地方の最低賃金格差を縮小できる支援策を講じる、としている。

 なんともはや、見て取れるのは呆れるほどの無内容さと厚顔ぶりだ。

 たとえば賃金の決め方として,仕事の内容や転勤の有無、能力や成果といった観点から賃金の内容をわけて、「仕事の内容」だけ同一賃金にする、のだという。こんな代物で実現する同一賃金とは,現状とどこが違うというのだろうか。

 さらに問題なのは、同一労働同一賃金の土俵を、企業横断的にではなく同一企業内の「同一労働同一賃金」、にわざわざ限定していることだ。笑止千万とはこのことだろう。同一労働同一賃金原則は、基本的に企業の壁を越えた、企業横断的に形成することではじめて実効性を確保できるものだからだ。西欧でも基本はそうなっている。仮に企業内に限定すれば、それは親会社の正社員を頂点とする新たな賃金のピラミッド構造につくり変えるだけだろう。

 同一労働同一賃金の特質は、賃金のランク付けが人ではなく仕事で決まること、賃金が決まる場所が企業ごとではなく企業横断的な産業レベルで決まることだ。言い換えれば、それぞれの職種ごとの賃金決定で個々の企業の裁量権が排除されること、だ。結果的に個々の労働者が個々の企業に従属することが少なくなり、労働者は企業の壁を越えて団結できる、そういうものなのだ。

 このことをもっとも恐れているのが、現在の個々の企業、経営者なのである。だから安倍自民党が企業内部での同一労働同一賃金と言っているかぎり、文字通りの企業横断的な同一労働同一賃金など実現するハズもない。安倍首相のお題目の実効性が問われている所以でもある。

 長時間労働、残業時間規制も同じだ。法改正だけでは改善は望めない。現在でもたとえザル法であっても労基法を活用して残業規制はある程度可能だ。これまでは御用組合がまともに規制してこなかっただけなのだ。仮に、本気で残業規制をする気があるのであれば、残業認可の要件を厳格に制限した上で時間数を明記した法改正をやればいいだけの話だ。ただし、労働者の闘い抜きの残業規制は、サービス残業や風呂敷残業を増やすだけの結果を招くだけに終わるだろう。

 安倍首相による残業規制も口先だけのものに終わるだろう。、残業代ゼロ法案をごり押しする一方で労働時間規制・残業規制をやるという矛盾した政策が実現するのを期待する方が無理なのだ。

◆神話の見直し

 アベノミクスへの期待をなんとかつなぎ止めようとする安倍首相だが、それも出発点から空回りは避けられない代物でしかなかった。

○アベノミクスに理念があるとすれば、それは日本資本主義の成長神話、GDP神話でしかない。戦後の一時期、追い付き追い越せで驚異的な成長を遂げてきた日本だが、グローバリゼーションの進展のなかで世界での位置関係ががらりと変わってしまった。国内経済が成熟化するとともに後発国の追い上げで今ではその位置が逆転してしまっている。

 そこで日本が選択したのが、〝夢よもう一度〟というコスト競争による再度の成長への挑戦だった。工場は海外に移転し、国内ではリストラという雇用破壊と賃金破壊で国内市場を狭め、海外生産や輸出で稼ぐ多国籍企業だけが肥え太るという産業構造をつくりだしてしまった。思い起こしてほしい。低成長のなかでも企業が最高益を得ていた時、それはリストラで雇用と賃金をカットしてきたことで得てきたもので、トリクルダウンとは正反対のものだったのだ。その企業は利益をため込むだけでますます海外市場への依存を深めるばかり、これでは失われた20年が30年になるだけだろう。アベノミクスは、そうした企業の自転車操業を後押しするだけ、無理やり円安を誘導して多国籍企業を肥え太らせ、格差と貧困をこれまでになく拡げただけだった。

 アベノミクスには先見性や理念など少しも含まれていない。ただ安倍首相の政治的な野心の実現のために、目先の大盤振る舞いと対症療法で高度成長型の成長神話を引きずっているだけだ。先行きがどうなろうと、目先の野望が実現すればいい、後は野となれ山となれ、だ。

 戦後体制からの脱却などの政治的野望優先の安倍政治は別にしても、GDP信仰など経済成長を追い求める姿勢を問い直し、経済活動の目的をはじめ、土台から変える事こそ問われているのではないだろうか。企業利潤至上主義と成長神話から脱却し、持続可能な循環型で日本の身の丈にあった経済に転換することこそ求められているのだ。目標とする価値観も、〝幸福度指数〟ではないが、働き方と生活の満足度を直接の目的とする協働型経済に転換すべきなのだ。GDPは多少縮小するかもしれないが、それにも増す生活の豊かさと満足度が得られるだろう。そのためにも労働者が力をつけ、その力でそうした転換を主導すべきなのだ。その一環としても、連帯型賃金としての同一労働同一賃金など均等待遇の実現は不可欠のものだ。

 目先の毛針は目もくれず、労働者の連帯した闘いで均等待遇の実現をめざしていきたい。(廣)

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 三六協定再検討でお茶を濁すのではなく、なぜ労働時間短縮を図らないのか!。

安倍晋三首相は3月25日、首相官邸で開かれた1億総活躍国民会議で、「長時間労働は仕事と子育ての両立を困難にし、少子化や女性の活躍を阻む原因となっている」と指摘。労基法の改正に関し「36協定の時間外労働規制のあり方について再検討を行う」と表明し、長時間労働を是正するため、労働基準法の改正を目指す考えを示した。

具体的には、時間外労働が100時間を超えた企業に対する労働基準監督署の立ち入り調査基準を、80時間に引き下げることなどを実施する。また公正取引委員会や中小企業庁と連携し、親会社と取引先の慣行など長時間労働を強いられていると疑われる独占禁止法違反事例などの取り締まりも強化する。等、36協定により健康に望ましくない長時間労働を設定した事業者に対し、指導を強化すると言う。

36協定は、労基法が定める労働時間(1日8時間、週40時間)を超(こ)えて働かせるために、企業と従業員側(労組等)が結ぶ協定で、協定を結べば1日8時間、週40時間を超えて働かせる残業や休日出勤ができると言うもので、長時間労働を法的に許すものになっている。

 36協定は、労働者を低賃金と長時間労働で搾取し、利潤を得ようとする企業にとっては、労基法が定める労働時間(1日8時間、週40時間)では不足であり、そうした企業側の長時間労働を求める意志と、低賃金では生活が成り立たない労働者が残業代で補おうとした背景の下に制定されたものだが、時間外・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外・休日労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべきものとして締結されなければならいものであった。

 締結にあたっては「時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的事由」「業務の区分を細分化することにより当該必要のある業務の範囲を明確にしなければならない」のが原則。

 従業員側(労組等)が残業の「具体的事由」や「業務の範囲」に気をくばり、団結力による監視を行えば際限のない長時間労働はある程度防げるのだが、近年、労組の組織率は18%を切っているし、労組がないところでは企業が指名した労働者が36協定に署名している例もあり、企業側の言いなりで、際限のない長時間労働を法的に認め、強いられているのが現状である。

 36協定は、今や、労基法が定める労働時間を骨抜きにする協定になっている。

 数十時間や100時間超の残業による長時間労働が強いられているのは、適切な人員配置(定員不足化)を行わないで、生産性を上げようとする、企業側の人件費削減による利益追求が背景にあり、適切な人員配置と違反者への罰則など、残業を行わせないための政策こそ求められている。

 憲法九条があるのに戦争法である安保法制や自衛隊法があり、原子力規制委員会は4月20日、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)が新規制基準を満たすと認める審査書を正式決定し、東京電力福島第一原発事故後の法改正で定められた原発の運転期間を40年とする原則を形骸化し、「極めて例外的」とされていた60年までの運転延長が相次ぐ可能性が定着化されようとしている。

 市民や働く人々を守ろうとする法的基準が次々と都合よく書き換えられていく事を許してはならない。

 三六協定の再検討も「100時間を超えた企業に対する労働基準監督署の立ち入り調査基準を、80時間に引き下げることなどを実施する。」と言うが、何十年も前に決めた労働時間(1日8時間、週40時間)をそのままにし、厳格な罰則もなく長時間労働を見過ごしてきた中では、長時間労働はなくならないだろう。

 私企業の利潤追求を無くし、社会的公平な分配が行われるならば、今の日本の経済力で1日4時間、週20時間ぐらいの労働時間でも充分生活を維持することができるのであり、余裕のある労働生活の中で、個々人の自由時間を趣味やボランティア参加などで社会的貢献が成される社会を目指すべきである。(光)


 今、川内原発と伊方原発を止めなければならない

 静岡に住む住民として今回の熊本地震はまさに人ごとではない。明日は我が身である。

 勉強不足の私にとって、地震解説の中で出てきた「前震」とか「本震」などと言う言葉は初めて聞いた。また、「中央構造線」という活断層の事も初めて知った。
 この活断層の地震に関しては、2014年に起きた長野県・白馬村地震(この地震はM6.7)が静岡にとって大きな意味を持っていたという。こちらは「糸魚川-静岡構造線」(これは知っていました)という、やはり長大な活断層群で地震が起きたもの

 私も今回の熊本地震に関して心配になり、ネットを通じて色々な学者の人たちの解説を調べた。その中で、島村英紀さん(武蔵野学院大学特任教授)の報告を紹介したい。

 こんな危険な地震が多発し拡散傾向(「今後どんな連鎖反応を起こしていくのかまったく予測できない」と気象庁も発表している)にある事、また原発事故が起こるかもしれない、当然原発は止めるべきだと、私たち素人にもわかる。

 ところが、川内原発も伊方原発も止めようとしない安倍政権。被災者救援こそが政府の最優先課題と言いながらTPP関連法案の審議を国会でのんびりやっている安倍政権。熊本支援の物資輸送にオスプレイを飛ばす安倍政権。まったく話にならない。

 最近、福島からの避難者たちが結成した「『避難の権利』を求める全国避難者の会」の人たちの訴えを聞いたが、「除染が進まず、まだまだ被爆被害が心配される地域に平気で帰還政策を進めている。原発事故・子ども被害者支援法を昨年8月に改定し『新たに避難する状況にない』との避難者切り捨て政策も進んでいます」と涙ながらの報告だった。

 「全国避難者の会」のチラシに「私たちひとりひとりの復興と、大切な子どもたちの未来のため、あきらめることなく、つながりあって、前に進んでまいりましょう」と書かれていた。今、私たちにはこの言葉の実践が問われている。(英)

 --「中央構造線」で初めて体験した巨大地震--

 以下は、島村英紀さんのHP「 http://shima3.fc2web.com/ 【最新のトピックス】」より転載したものです。

 阿蘇山の「連動噴火」は起こるか、連鎖が起こっていった熊本、阿蘇、大分の次にあるのは愛媛県、ここには中央構造線のすぐ近くに伊方原発がある、熊本から南西に中央構造線をたどると鹿児島県、ここは川内原発からそう遠くはない。

★「阪神・淡路」と同じ最大級の直下型地震

 4月14日の夜、熊本市で震度7の地震が起きた。マグニチュード(M)は6.5であった。震度7は、1949年に新たに気象庁が導入して以来、3回しか記録されたことはない。今回のものは2011年に起きた東日本大震災(地震の名前としては東北地方太平洋沖地震)以来5年ぶりで4回目になる。

 ちなみに、震度7とは、日本の震度階では最高レベルだ。つまり「青天井」でどんな大きな揺れでも震度7なのである。

 4月16日までは、熊本で起きたM6.5の地震は「本震」と言われた。本震と余震は「布田川(ふたがわ)断層」と「日奈久(ひなぐ)断層」の2つの活断層が起こしたと報じられた。

 だが、16日になってから、さらに大きな地震が起きた。Mは7.3。この大きさは内陸直下型地震としては最大級で、たとえば阪神・淡路大震災を引き起こして6400名以上の犠牲者を生んだ兵庫県南部地震と同じ地震の規模である。

 気象庁は、16日になって、このM7.3の地震を「本震」とし、前に起きたM6.5の地震と、16日のM7.3の地震の前までに起きた余震を、すべて「前震」とする、と発表した。つまり後から大きな地震が起きたので、それを「本震」としたのである。

 だが、前震だとしても、それらを前震として認識できなかったことは明らかで、その後、もっと大きな地震が襲って来ることは予想できなかったことになる。

 さらに、その後16日には、熊本の2つの活断層から北東に離れた阿蘇山の近くでM6に近い大きな地震が2回起き、さらに北東の大分県中部でも震度5弱を記録した地震が起きた。これらは、熊本で起きている地震の余震域の外で起きた地震で、明らかに熊本の地震の余震ではない。新しい地震活動が始まったと言うべきであろう。

★定義や認定があいまいな活断層

 そもそも、布田川断層と日奈久断層の2つの活断層は「中央構造線」という活断層群の一部なのである。

 中央構造線は長野県に始まって名古屋の南を通り、紀伊半島を横断し、四国の北部を通り、九州に入って横断する活断層群である。詳しく調べられているところでは布田川断層と日奈久断層のように、場所ごとに別の名前がついている。

 活断層は一般に、枝分かれしたり、途切れたりするのが普通だ。活断層の長さや枝分かれをどう認定するかは学者によって異なる。

 このため、たとえば原子力発電所を作る前に「活断層の長さ」から「その場所で起きる最大の地震」を決めることが行われているが、「活断層の長さ」には学者による任意性が大きく、この手法には強い疑問が出されている。

 また、活断層はその定義が「地震を起こす地震断層が浅くて地表に見えているもの」というものだから、首都圏や大阪、名古屋など、川が土砂を運んできたり、海の近くだったりして堆積層が厚いところでは、「活断層はない」ことになっている。

 このため、阿蘇山の近くのように厚い火山噴出物をかぶっているところでも、やはり活断層は見えない。

 これに反して、詳しく調べられているところでは布田川断層と日奈久断層のように、場所ごとに別の名前がついているが、全体としては中央構造線は日本で最長の活断層なのである。長さは1000キロを超える。

 この中央構造線は地質学的には地震を繰り返して起こしてきたことが分かっており、その結果として、たとえばその南北で別の岩が接しているなど、この活断層の南北で山脈や川筋が食い違っている。これはこの活断層に沿って繰り返して起きてきた地震の結果である。

★「中央構造線」で初めて体験した巨大地震

 この大断層の西端に近い熊本で起こった4月14日の地震は、日本人が中央構造線で初めて体験して被害を生じた地震だった。

 つまり、この長大な活断層が起こした地震を日本人が体験して史実として書き留めた例はなかった。日本人が住み着いたのは約1万年前、記録を残しているのはせいぜい1000~2000年ほどなので、この大断層が地震を繰り返してきた時間の長さに比べて、あまりに短い間でしかないのだ。

 その意味では、2014年に起きた長野県・白馬村の地震と似ている。この地震はM6.7。こちらは「糸魚川-静岡構造線」という、やはり長大な活断層群で起きて、日本人がはじめて大きな被害を受けた地震だった。この地震は神城(かみしろ)断層という糸魚川-静岡構造線の一部の活断層が起こした。なお、気象庁はこの地震には名前をつけなかったので、長野県北部地震とも呼ばれている。

 ところで、このような長大な活断層群では、日本列島全体がいくつかのプレートに押されることによって、それぞれの小部分ごとに地震を起こすエネルギーが溜まっていっている。そして、岩が耐えられる限界を超えると地震が起きる。つまり地震が起きることによって、溜まっていたエネルギーが解放されるのである。

 そして、ある部分で地震が起きたことは、同じような理由でエネルギーが溜まっているその隣の部分にとって「留め金が外れた」ことを意味する。つまり、地震が起きた部分の隣で、地震が起きやすくなるのである。

 今回、中央構造線のうちの熊本の部分で地震が起き、2日後に阿蘇に、そして大分に、と地震が広がっていったのは、この理由なのではないかと考えられる。

 もちろん、「隣の部分」に、まだ十分の地震エネルギーが溜まっていなかったら、この連鎖は起きない。残念ながら、いまの地球物理学では、地下にどのくらいの地震エネルギーが溜まっているかは分からない。

 ところで、心配なのは、連鎖が起こっていった熊本、阿蘇、大分の次にあるのは愛媛なのである。ここには、中央構造線のすぐ近くに伊方原発がある。また、逆に熊本から南西に中央構造線をたどると鹿児島県に入る。ここは川内原発からそう遠くはない。

 地球物理学者としては、「連鎖の次」を恐れているのである。

★相前後して起こる火山噴火と大地震

 4月16日、阿蘇の近くで大きめの地震が起きた同じ日に、阿蘇は1ヶ月ぶりに噴火した。ただし、大きな噴火ではなかった。

 地震と火山は両方とも地下でプレートがらみ、あるいはその結果としての活断層がらみで起きる現象だから、なにかがつながっているのに違いないのだが、残念ながら現在の地球物理学では、地震と火山がどうつながっているかはわかっていない。

 地震は活断層に地震エネルギーが溜まっていき、その岩が耐えることが出来る限界を超えると起きるという、いわば直接的な関係である。

 これに対して、火山の場合にはマグマが地下で作られる。だが、そのマグマがそのまま上がってきて噴火するわけではなくて、上がってくるときにいくつかの「マグマ溜り」を作りながら上がってくる。そして、いちばん上にあるマグマ溜りのなかで圧力が高まってマグマが地表に噴出するのが噴火なのである。つまり火山噴火は間接的な関係なのである。

 しかし、世界的に見ても火山噴火と大地震が相前後して起きた例は多い。たとえば、1707年に巨大地震である宝永地震が起きた49日後に、富士山の宝永噴火があった。他方、噴火が地震よりも先だった例もある。 案内へもどる


 コラムの窓・・・ 深読み?「広島宣言」

 G7首脳会議(伊勢志摩サミット)が近づいています。4月中に外務大臣会合(広島市)、農業大臣会合(新潟市)、情報通信大臣会合(高松市)が終了し、5月には教育大臣会合(倉敷市)、環境大臣会合(富山市)、科学技術大臣会合(つくば市)、財務大臣・中央銀行総裁会議(仙台市)、そして首脳会議が開催されます。さらに9月には、保険大臣会合(神戸市)と交通大臣会合(軽井沢町)が予定されています。

 G7はカナダと米・英・仏・独・伊・EU、そして日本。欧米先進国+日本という構成ですが、これらの国が現在世界秩序を形成しています。4月11日に「核軍縮及び不拡散に関するG7外相ヒロシマ宣言」が発表されましたが、毎日新聞は「核廃絶に直結する『核兵器の非人道性』という文言が見送られ、核保有国と非保有国の溝も浮き彫りになった」と報じています。

 神戸で開催された伊勢志摩サミット反対集会において、小倉利丸氏(ピープルズプラン研究所共同代表)は宣言の「我々は、国際社会の安定を推進する形で、全ての人にとりより安全な世界を追求し、核兵器のない世界に向けた環境を醸成するとのコミットメントを確認する。この任務は、シリアやウクライナ、そしてとりわけ北朝鮮による度重なる挑発行為・・・」というくだりを引用し、次のように解説しました。まず〝安定〟とはG7にとっての安定であり、「既存の覇権構造が揺らぐことのないような条件のもとでのみ、核兵器の廃絶を準備する」という意味である、シリアやウクライナに強い影響力を持つロシアへの牽制、そして北朝鮮に対する警告であると。

 宣言は原発について、「我々は、原子力の平和的利用にコミットし、引き続きIAEAと協力し、最高水準の不拡散、原子力安全及び各セキュリティを推進していく」と述べ、核の〝平和利用〟による資本と国家の経済的政治的利益の結びつきの強さを示しています。G7は核兵器不拡散条約(NPT)の3本柱(不拡散、軍縮及び原子力の平和利用)への強いコミットメントを強調していますが、〝平和利用〟が核拡散につながり、NPT未加盟国の核開発も止められない、今では「非国家主体への大量破壊兵器の拡散」まで招こうとしているのです。

 さて、オバマ米大統領が広島を訪れるかどうかが関心を呼んでいますが、それで何かが変わるとは思えません。日本政府が「米国の核の傘から離脱し、原発からも撤退する」とでも宣言し、その実行に取りかかるなら核なき世界へと一歩前進と言えなくもないのですが、やってることは日米韓による北朝鮮への軍事的脅迫です。巷間、中国や北の脅威を言い立てる人が多いが、脅威の正体は案外我が身のうちあったりするのです。 (晴)


 「エイジの沖縄通信」(NO.27)・・・在沖米軍最大の嘉手納基地ゲート前でも抗議行動始まる!

 今、辺野古新基地建設の工事は止まっている。しかし、沖縄県民の闘いは止まるどころか、拡大している。

 在沖米軍の中で米軍が最重要基地としているのが極東最大の空軍基地「嘉手納飛行場」である。その嘉手納基地ゲート前でも、米軍に対する抗議行動が始まった。

 以下は、「チョイさんの沖縄日記」からの紹介。

 『先週から、辺野古新基地建設に反対する県民の怒りを「海外で最大のアメリカ空軍基地」・嘉手納でも示そうと、毎週金曜日に嘉手納基地ゲート前で抗議行動が始まっている。

午前7時半頃、嘉手納基地に着いた。もう70名近い人たちが抗議行動を始めている。出入りする米兵たちの車両の前に立ち、「沖縄から出て行け!」と訴える。アメリカが最も重要な基地と位置づける嘉手納での抗議行動は、とりわけ効果的なはずだ。元海兵隊員のダグラス・ラミスさんも、米兵たちに英語で訴えている』

 2012年10月のオスプレイ12機配備強行に反対する普天間基地ゲート封鎖行動以来、3年以上も毎日続いている普天間基地の野嵩・大山ゲート前での抗議行動、もう9年目を迎えている高江のオスプレイパッド建設阻止の闘い、そして2年になる辺野古新基地建設反対のキャンプ・シュワブゲート前での毎日24時間の抗議行動。そして、とうとう嘉手納基地でも抗議行動が始まったのである。

 沖縄県民の怒りは、辺野古新基地建設反対だけではなく、沖縄から全ての米軍基地を追い出す運動となってきている。(富田 英司)

★海外で最大の米空軍嘉手納基地とは

 沖縄市、嘉手納町、北谷町の3市町にまたがる東アジア最大の米空軍の拠点。面積は約20平方キロ(東京国際・羽田空港の1.3倍・東京ドームの約425倍)で、約4000メートルの2本の滑走路がある。F15戦闘機を主力に約100機が常駐するほか、国内外の米軍基地から外来機(米国や米国州や豪や韓国、岩国や厚木などから)も飛来し、訓練する。早朝、夜間を含めて戦闘機の離着陸は年間約7万回とされる。その戦闘機の騒音は100デシベル以上で想像を絶する。

 米国に帰還する戦闘機は、なんと早朝3時や4時に騒音を轟かせて嘉手納を離陸していく。住民はその騒音でとても寝ていられない。また、学校での卒業式や入学式の途中で戦闘機の騒音が鳴り響き、挨拶が聞こえないことも度々である。

 沖縄戦で日本陸軍の沖縄中飛行場として建設された飛行場であったが、米軍の沖縄本島最初の上陸地点となり、米軍に占領され嘉手納飛行場となった。

 1950年(昭和25年)の朝鮮戦争の勃発によって米軍は嘉手納飛行場を「極東最大の空軍基地」として重要視し、逐年整備拡張され、1967年には4000メートル級の2本の滑走路を完成させ、実に嘉手納町面積の約82%にのぼる膨大な面積が同飛行場や嘉手納弾薬庫地区として接収され、住民は残された約18%のわずかな土地での生活を余儀なくされている。

 1959年6月30日、米軍嘉手納基地から離陸した米軍のジェット戦闘機が、沖縄県石川市(当時)に墜落。民家をなぎ倒した後、宮森小学校舎に激突、炎上した。児童11人と住民6人が死亡し、200人以上が負傷した。

 また、1968年11月19日、B-52戦略爆撃機が離陸に失敗し墜落爆発炎上した。この事故を契機にB-52部隊常駐に対する住民の反対運動が高まり、1970年10月6日をもってこのB-52部隊は撤去された。

 これ以外にも、他機の墜落事故や着陸失敗事故等などが今日まで続いているのが、米軍嘉手納基地である。 案内へもどる


 FATCAとは何か―米国が「パナマ文書」を「流失」させた背景

 現在、パナマのモサック・フォンセカという法律事務所から「流失」した21万社の世界中の富豪、富裕層(フランスは千人だと判明。日本人も数百人)の資産避難の行動が、公になった事で世界にセンセーショナルな反響が引き起された。

 この「流失」は、まず南ドイツ新聞(オプス・デイの牙城)から、BBCとガーディアン紙に持ち込まれたという事だが、この「流失」経路自体が極めていかがわしいものだ。

 実際、庶民が酷税に喘いでいる中にあって、富裕層が自らの資産・預金をタックス・ヘイブンに移して「脱法」的な脱税行為をしていた事は、世界的な憤激を巻き起こしている。

 この文書は「パナマ文書」と呼ばれ、ここに名前が上がった事でアイスランドでは政治的な失脚者も出たり、イギリスでもキャメロン首相が自らの弁護に必死になっているようだ。そしてプーチンの友達や習近平らも名前が上がっているなど、世界的にもこの脱税問題は拡大する一方である。

 他方で米国からは、未だ只一人の名前も出ていない。そのため米国ではまったく白けきった反応があるという。当然の事だろう。中南米や南米は米国の裏庭と呼ばれており、その地域にも、又米国内にも数多くのダックス・ヘイブンがあるからだ。

 では「流失」した理由は一体何か。私が見る所、ここにこそその核心がある。しかし「パナマ文書」を非難する記事も、これらの文書がなぜ「流失」したかについての核心は、書いてはいないようである。更に言えばこの書かない事についても裏があるのだ。

 この問題の核心を考えるためには、用意周到な準備の下にタックス・ヘイブンの世界に対して突き付けた米国のFATCAとは、一体何かを我々はよく知る必要がある。しかし国際金融界にとって決定的に重要な略語であるにもかかわらず、殆どの日本人はこのFATCAの略語と意味を全く知らないだろう。手頃な物として高校生用の受験参考書である2015年9月10日初版第1刷の『用語集 政治・経済 新訂第2版』(清水書院発行)を調べると、その本には何とFATCAの項目そのものがないのである。

 そこでウィキペディアで、FATCAを検索すると未だに書き込みが完了していない。この書き込みには「外国口座税務コンプライアンス法 外国口座税務コンプライアンス法(Foreign Account Tax Compliance Act;FATCA略称ファトカ)は、2010年に成立し2013年に施行されたアメリカ合衆国(米国)の法律である」とあるのみである。

 ウィキペディアは、誰が書いているかも記事に対する責任も分からない大変問題のあるサイトである。ここにもFATCAについてわざとかどうかは分からないが、間違った事が書かれている。又は書いた時点では予定で正しかった事も現時点での訂正はないのだ。

 確かに当初は、FATCAの発効時期は2013年1月であった。ところがそれが2014年1月に延期されて、さらに又同年7月まで延期されてしまったのである。

 つまり米財務省や内国歳入省がFATCA実施システムの構築に時間がかかったのも事実ではあろうが、何と言ってもFATCAの実施にあたって罰則規定があったのに対してが当該関係機関の強い抵抗があったからこそ、2回も延期された事が真実だったろう。

 こうしてFATCAの発効によって「米国外の銀行、証券会社、保険会社は元より、ヘッジファンドなどの資産運用会社も、顧客の口座の残高が5万ドルを超える場合には、その口座の最終受益者が米国の市民か居住者法人であるかを常に確認し、そうであった場合には、米国の内国債入庁に口座の詳細を報告する義務を負う事」になった。又「口座の最終受益者が米国の市民、居住者、法人でない場合でも、その資産が米国の有価証券やそれに関わる金融商品であった場合には、同じ義務を負う事」になってしまった。

 注目すべきは、これを守らなかった場合の罰則の厳しさである。「拒否する外国の金融機関には、罰則として、米国の証券への投資に対する利息、配当及びその譲渡対価に対して、一律30%の源泉徴収税が課される」さらに「FATCAを拒否する金融機関が証券の売買に1回でも介在してしまうと、それ以後の売買にはすべて30パーセントの源泉徴収税が課される事」になったのである。

 つまりFATCAの拒否は、即国際金融市場からの退場となる。こうしてFATCAは、スイス等の銀行の秘密のみならず、世界的に脱税を取り締まる根本的な規制となった。

 この実施により、英シティやスイス、ケイマン諸島そして今話題のパナマなどを経由しての従来のような国際的な脱税は、ほとんど不可能になったのだ。しかし日本はこうした事をまるで認識していないかのように振る舞っている。今回のパナマ文書の発覚についても、菅官房長官は調査する必要がないと突っぱねている。一体それは何故なのか。

 これについては日本人には余り自覚がないようだが、日本は世界から見ればマネーロンダリングやテロ資金の規制に弱い国だとの認識があり、様々な外圧の中で徐々に規制を強化してきた事が背景にあるようだ。この問題は、日本には現時点で解決不能だからだ。

 2014年6月27日、つまりFATCA施行の、まさに3日前にマネー・ロンダリングやテロ資金を監視するOECD傘下の国際機関「金融活動作業部会(FATF)」は、日本のテロ資金及びマネー・ロンダリング対策の不備を糾弾していたのである。

 日本のアングラ・マネーとは、端的にいえば第1に在日闇資金問題・パチンコ業界の闇資金等 第2にヤクザ闇資金問題 第3に左翼過激派の闇資金がある。その他にタブー中のタブーが天皇マネーで、長年スイスにあるといわれてきた。勿論、創価学会の闇資金もこの中に含まれる。そこで2チャンネルでは、創価マネーが炙り出されたと大騒ぎだ。

 本澤二郎の「日本の風景」(2333)でも(2016年4月23日)「創価学会が『パナマ文書』に登場!」と紹介している。これで創価学会は、国会で追及される事になろう。日本は宗教団体に対して教育機関・医療機関と共に税金を免除する特別待遇を付与している。それをよい事に、長年後ろめたい巨額の闇資金を租税回避地・タックス・ヘイブンに流し込んでいた。しかも創価学会は政権与党議席3分の2議席確保の担保勢力である。黙認できない破廉恥行為ではないか。さらに日本のマスコミ界に隠然たる影響力を持つあの電通の名前も上っている。電通はこの事実を打ち消すのに必死である。

 又自民党と一緒になって「特定秘密保護法」強行に走った公明党だったが、理由の一つにその隠し預金を、秘密にするための行動でもあったのかと疑うに充分である。それを「パナマ文書」は明らかに暴いたのだ。そして又公共放送のNHKである。このリストに載っている事が判明した。国民から強引に法律の力でかき集め職員に高額の報酬を与えるNHKに対して、視聴料金を支払っている市民は余りにも哀れ過ぎるのではないか。

 問題を日本にのみ限定してもこの大問題の数々である。最近EUで活発なイスラム勢力のテロための資金源は何処にあるかとたどれば、当然にもこれらタックス・ヘイブンからの資金の流れにあるのではないかとの予想がつくのは当然の展開となるのである。

 こうして今世界は、一方で強化されるFATCAによるタックス・ヘイブンの国際金融規制の強化する勢力と、他方でその規制を破壊しようとする勢力との闘争が激化している。そしてこの大状況の変容とテロ資金の流れについては、『世界の支配構造が崩壊する』(ビジネス社)に詳説されている。

 米国は、富裕層の脱税を許さない一方、他方で国際協調でアングラ・マネーの投機によるリーマン・ショック等の再来を防ぎ世界の金融を安定させたいのだ。そのための「パナマ文書」のリークであったろう。これに対立する見方は、後で参考に引用しておきたい。

 そもそもタックス・ヘイブンが巨大になったのは、米ソ冷戦構造があったためである。端的には軍資金というなのアングラ・マネーであった。その後、国際金融資本の隠し場所になっていった。FATCAに反対する勢力は、旧米ソ冷戦ならぬ新米ロ冷戦を作り出したいのだ。タックス・ヘイブンを再生させるには、それが何よりも必要だからである。

 しかしロシアはこれに乗らないし、ドイツもまたロシアに協調している。そして最近中国が覇権を追求し始め中東が激動の渦中にあり、北朝鮮は数々のミサイルを発射している。その資金源は何処にあるかと言えば、従来のタックス・ヘイブンが崩壊している中で米国と対決する中国や「イスラム世界」と、また唯一世界的に「孤立」している北朝鮮がフランスやドイツの投資先として注目され、従来に替わる新たなタックス・ヘイブンとして急浮上を遂げている事に基因する。

 米国と対立しているロシアは、当然の事ながらロシア国営テレビRTR「ヴェスティニデーリ」で、パナマ文書は、米国の「オフショア市場独占戦略」だと解説している。

 報道では、情報をリークした国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)を米国の首都ワシントンの本拠をおく米政府の国策機関であるとして問題視した。さらに詳しく見れば、ICIJに資金を提供している主要な組織は「USAID(合衆国国際開発庁)」やジョージ・ソロスの「オープン・ソサエティー」、又「フリーダム・ハウス」などである。つまりこれらの組織は米国務省やCIAなどと連動している機関である事、そして又ICIJは独立した団体ではなく、米国の非営利の調査報道団体「センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)」に属するプロジェクトの名称なのである。

 さらにこのCPI自体が、国際的なジャーナリストのチームを組織し、「越境犯罪、汚職や権力の説明責任」などの問題に焦点を当てるため、1996年に結成された米国のNPO=OCCRP(The Organized Crime and Corruption Reporting Project)(組織犯罪と汚職報告プロジェクト)の下部組織なのである。

 現在、60カ国以上から160人の会員ジャーナリストが在籍し、国際的な犯罪に関わる様々な調査を行っている。そしてアサンジが始めたウィキリークスによると、OCCRPは、「ソロス財団」とUSAID(米国国際開発庁)の資金で運営されている。早い話がOCCRPの調査、捜査結果は、常にアメリカの利益になるようになっている。今回米国は、「パナマ文書」を「流失」させた事で、数0兆ドルの利益を期待しているという。

 つまりICIJは、この「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」という部門に属しており、親組織であるCPIの理念を実現する現場の調査プロジェクトなのである。

 端的にはいえば、ICIJが米国の国策機関の一つである事は間違いない所だろう。

 それにしても何という素人の目眩ましの手口だろう。又何とも手の込んだ重層構造にしたものだろう。本当に驚かされる。そしてこの点に米政府の国家戦略上の目的がある事は、間違いない所だろう。

 確かに詐欺師とは、正義の仮面を被って被害者に近づいてくる。今回の「パナマ文書」のデータも広く一般に公開されているわけでもなく、分析を進めたICIJの手によって充分念入りに取捨選択された情報が公開されているに過ぎない。その証拠に、租税回避地としてパナマを使っている件数がもっとも多いはずの米国の情報は異常に少ない。ましてや、米政治家の情報は皆無だからである。

 したがってこうした事を根拠に、ロシアの報道機関で展開されている見解は以下である。
         ※  ※

 オフショアは既に長年にわたって「合法」であり、米国の一流企業例えば「アップル」「グーグル」「マイクロソフト」「GE」「GM」なども使っている。ロシア企業も例外ではない。ロシア政府はオフショアの利用を歓迎していないが、禁止はしていない。禁止すれば、(オフショアを使う)外国企業は有利になり、(使えない)ロシア企業は不利になり、結果としてロシア企業の競争力がなくなるからだ。そういう理由で、「オフショアを禁止する」のであれば、全世界が同時に行わなければならない。

 オフショアは一般的に、小国や島であり、米国がある特定のオフショアをつぶそうと思えば、いつでもつぶせる。ドイツは、オフショアだったキプロスを、超短期間でつぶしてしまった。

 米国は、自国領の中にオフショアを作っている(ネバダ州、ワイオミング州、デラウェア州、サウスダコタ州)つまり米国は、米国国内のオフショアに、世界の資金を呼び込む計画なのだ。

 米国以外のオフショアの秘密を突如暴露し、その一方で、「私たち(米国)にお金を預ければ、安心ですよ」とささやく。パナマ文書は大騒ぎになっているが、真の大物はアンタッチャブルである。

 これは、「米国のオフショアを使ってくれれば、安全ですよ」という事なのだ。
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 このようにロシアは、米国には①世界のオフショア資金を米国国内に移動させる②世界から集まった資金を米国が完全に監視、監督する の二つの狙いがあると解説する。つまり「パナマ文書」の「流失」は、米政府が特定の目標を実現するために行った現実性が極めて高い。真の敵は、慎重に相手の手の内を見極めている。ロシアは知っているのだ。

 ここまで詳しく解説してきたように、「パナマ文書」は米政府の国策機関であるICIJが入手し分析を進めて、その一部を公開した文書である。したがってこれは決してスクープでも何でもなく、ある目的を持った行動である。

 ではその目的とは一体何であろうか? 北朝鮮の金正恩体制の壊滅のために資金源を絶つ事も狙いの一つにはあると考えるが、「パナマ文書」の一部公表で、租税逃れへの各国首脳・関係者の関与が明らかになった。それが元でアイスランドの首相は辞任し、イギリスのキャメロン首相も辞任を余儀なくされそうな厳しい立場に立たされている。

 そのもっとも大きな目的は、英シティ・スイス・ケイマン諸島・パナマ等の従来のタックス・ヘブンを潰して、米国に超富裕層の資金を集中させる事だ。そしてネバダ州、ワイオミング州、サウスダコタ州、デラウェア州の4州は既に租税回避地として機能させているが、それらを世界最大の租税回避地として強化する事にある。

 そのためには、歴史的に超富裕層の資金の集中しているロンドンを先に潰す必要があった。それは、英国のシティを潰す事が狙いなのだ。それが、英首相の税金逃れの資金運用の実態を公表した理由であろうと識者も語っているのである。

 ところでタックス・ヘイブンに集中している超富裕層の資産は、概算では21兆ドル程度ではないかと見られている。因みにニューヨーク証券取引所の株価の時価総額が16・7兆ドル、日本の東京証券取引所は3・5兆ドル、そして全世界のGDPの総額は45兆ドルだから、その額がいかに大きいのかが分かる。日本円ではおおよそ2400兆円ほどだ。日本政府の国家予算が96兆円程度だから、その25倍だ。まさに天文学的な金額ではないだろうか。この巨大な資金が投機資金やテロ資金等になり、全世界に知られざる暗流の如く流れていたのである。

 さてここで結論のために、再びFATCAの話に立ち戻らなければならない。米国は、自国がタックス・ヘイブンになるための枠組み作りを数年前から開始していた。

 2007年、スイスの国際的な金融グループUBSがアメリカ人富裕層の口座を国外の租税回避地に隠蔽している事が判明した。米政府はアメリカ人の口座の全面的な開示を求め、同様の隠蔽を行っていたクレディスイスを含む80もの金融機関に50億ドルもの罰金を課した。

 こうした事件が契機となり、2010年には「外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)」が制定され、2013年から施行予定とされた。実際には2014年7月からの施行とはなった。

 この法律は、米国の市民権を持つ全ての人々に、保有する金融資産を「米歳入庁(IRS)」に報告する事を厳格に義務づけると共に、米国内のみならず海外の銀行も、米国民の口座は全て「米歳入庁」に報告しなければならないとする法律だ。もし米国民が国外のタックス・ヘブンに秘密口座を持っている事が発覚すると巨額の罰金が課せられる。

 その後2015年9月には、「香港上海銀行(HBSC)」のスイス支店から夥しい数の秘密口座がリークされるという事件があった。その総額はおおよそ1200億ドル(14兆3千億円)で、口座の保有者には多くの著名人が含まれていた。

 これまでスイスの銀行では口座所有者の秘密が保持されたため、本国で租税の支払いを回避したい富裕層の理想的なタックス・ヘイブンとされてきた。だが「外国口座税務コンプライアンス法」の制定後、「HBSC」の事件なども手伝って、スイスの銀行はその伝統となっていた守秘義務を維持できなくなり、現在では最も透明性の高い金融機関になってしまっている。

 私も天皇マネーが出て来るか否かに大いに関心があるし、その発覚を期待するものだ。

 そして2012年、OECD(経済協力開発機構)は米国の「外国口座税務コンプライアンス法」にならい、「共有報告基準」を成立させた。これはタックス・ヘイブンの出現を防止するため、各国が銀行口座、投資信託、投資などの情報をオープンにして共有するための協定である。

 これまで理想的なタックス・ヘイブンとして見られていたシンガポールや香港を含め、97カ国が調印した。勿論日本も調印している。ところが米国、バーレーン、ナウル、バヌアツの4カ国だけが調印しなかった。つまり米国はこの協定に入っていないのである。

 この身勝手さをどの様に表すべきか。米国は「外国口座税務コンプライアンス法」を楯にして、他の国々の金融機関に口座内容などの情報をすべて開示するように求めるが、米国自らは、国内の金融機関の情報は他の国に対して一切公表しないという事なのである。

 要は米国は国内に租税回避のための秘密口座を持っていたとしても、これを他の政府に開示する義務はない事を意味している。要は米国内のタックス・ヘイブンは全く問題にしないという事なのである。何という二重規範なのであろうか、驚かされるのは我々だ。

 これは米国内にタックス・ヘイブンを作ると、国内外から集まる富裕層の資産は米国内で投資・運用されるため、米経済の成長に役立ち、反対に米国人の資産が海外のタックス・ヘイブンに流れると、海外で運用されるため米経済にはプラスにならないからだ。

 つまりOECDが成立させた「共有報告基準」に米国が調印を拒否した事は、米政府が国内のタックス・ヘイブンを維持し、そこに集中する世界の富裕層の資産を米政府自らが他の国の政府の追求から守る事を宣言しているようなものである。

 世界の富裕層は「モサック・フォンセカ」でペーパーカンパニーを設立して実態を隠し、架空の法人名でパナマをはじめ世界のタックス・ヘイブンのオフショア金融センターで資金を運用している。

「パナマ文書」のリークでペーパーカンパニーの本当の所有者がだれであるのか分かってしまうため、米政府やOECD諸国が「外国口座税務コンプライアンス法」や「共有報告基準」を適用してオフショア金融センターの銀行に口座の開示を迫ると、実際の資金の運用者の名前が明らかになり、本国の租税の徴収対象になってしまう。

 これを回避するためには、ペーパーカンパニーと銀行口座の所有者の本当の名前が公表されるリスクが絶対にない地域に、富裕層は資金を早急に移動させる必要がある。そうした地域こそが米国内の先に紹介した4つの州なのである。これから世界の富裕層の巨額の資産は、一気に米国へと移動すると見られている。

 これらの資産を米国国内に引き寄せるためにこそ、ICIJのような国策機関が「パナマ文書」の内容を選択的に公開した理由であると見て間違いないと私は判断する。

 ではなぜ世界の富裕層の資金を米国をタックス・ヘイブン化して集中させなければならないのだろうか? その理由は、米政府はこれから米経済が深刻な不況に突入する事を予見しており、それに備えるためである。急激に景気が減速している中国などの新興国に比べ、米経済は堅調に成長しているとの報道が目立つ。しかし米国の実体経済の状況は、これとはまったく正反対である。ここに「パナマ文書」を今回「流失」させた真の理由があると私は考えている。

 そしてこの事件を「金持ちたちはずるい」「賃金労働者である自分たちは賃金をしっかり把握されて節税をする事すらできないで税金をしっかり取られているのに、払う余裕がありそうな金持ちたちが税金の支払いを逃れるとはけしからん」という、労働者民衆の怒りを巻き起こしてまでも、自国の国益を追求する米国の意図と狙いをしっかりと注意深く見ておく必要がある。

 今回の「パナマ文書」の「流失」を最も喜んでいるのは、各国の財務官僚だ。それは、「これで税金として取り立てるために、金持ちたちの資産の海外逃避を抑える事が出来る」し、労働者民衆の燃えたぎる怒りを背景として、脱税の取り締まりを強化できるからだ。

 我々は闘いに勝ち抜いてゆくためにも、敵の手の内の意図と狙いとをしっかりと見極める眼力を持つ事とが必要なのである。

 4月25日の「しんぶん赤旗」は、参院決算委員会で共産党の大門議員が「日本企業が英領ケイマン諸島につくった子会社の99%が、事業実態のないペーパーカンパニーだ」としてタックス・ヘイブンを利用した「税逃れの実態を告発し、抜本的な課税強化を求め」た事を報道した。

 共産党が「パナマ文書」を取り上げる事はよい。しかし「パナマ文書」の「流失」した背景には何が隠されているかの全面的認識がなければ、国税庁の走狗としてピエロを演じる事にしかならない事を共産党はよくよく考えるべきではないだろうか。 (直木) 案内へもどる


 保育労働者は訴える「仕事が多すぎる!」 (ワーカーズブログより転載)

 「保育園落ちた日本死ね!!!」と、一人の母親の書いたブログ記事が大きな反響を呼び政治問題化した待機児童問題。今まで新聞やテレビ等のメディアがこの問題を取り上げて指摘がなされてきたにもかかわらず、ネットの匿名サイトに掲載されたブログ記事の方が世論に影響を与えた事に驚いた。年を重ねている私はネット社会には疎いが、ネット社会の凄さと共に怖さも感じてしまう。その後、世論に押されて慌てた政府はこれでは夏の参院選に勝てないと緊急提言をまとめたが、目玉は都市部の「小規模保育所」の定員枠を緩和する等の規制緩和策を盛り込んだお粗末なもので、根本的な解決策になっていない。

 保育所などの認可施設は、保育ニーズの増加や認可施設の種類の拡大もあって08年から約5900ヶ所増え、15年には約2万9千ヶ所。保育所で働く保育士も08年から約4万人増えて13年には40万9千人になったというが、この増え方では保育施設の増加に追いつかず、保育所の空きがあるのに入れないという保育士不足が全国に広がっている。

政府は17年度までに新たに9万人の保育士確保が必要としているが、保育士の資格を持っていても保育士として働いていない「潜在保育士」が全国に68万人もいるのに働きたくない理由として待遇の悪さがある。民間保育所の保育士の賃金は平均月額21万9千円で(非常勤保育士の私の賃金はこれより少ない)全職種の平均月額より約11万円低いのだ。

 しかし、現場で働く者としては仕事量があまりにも多いことを訴えたい。仕事量にあった賃金にしてもらいたい。保護者達の労働時間が年々長時間になっているので、そのニーズに合わせて朝7時から夜7時まで開園し私達は早番遅番の勤務や土曜日勤務もある。アレルギーの子どもの対応を謝れば命に関わるし、発達の遅れなど特別な配慮を必要な子どもいたり、様々な家庭状況で保護者対応に一番気を使い、気に入らないことがあると苦情になってしまう。書類や保育の準備などの仕事が終わらないので、毎日サービス残業をしたり持ち帰って仕事をすることもある。

一緒に働く正規保育士はもっと苛酷で、保育をしながらいろいろな研修のまとめをする為に早番勤務をしてもサービス残業をして毎日遅くまで仕事をしているし、若い正規保育士は、小学校に提出する書類をつくる為に(個人情報は持ち帰れない)3月は休みの日も仕事に来ていた。年長児は卒園式を迎えても保育園の籍は31日まであるということで卒園しても登園し、春休みのない保育園なので新年度準備ができなく、31日は子どもたちが帰ってから下駄箱やロッカーの名札を変えたり荷物を移動したりして夜8時になってしまった。(友人の保育園では片付けに夜11時までかかったという)一晩明けた1日には、新しいクラスで転園してきた子どもたちもいたりしてバタバタしていたが、後日、ある保育園でバタバタしていた1日にアレルギーの子どもが誤食をしてしまったという事を聞き、ゆとりがないときに事故はおきると思った。保育士は身も心もくたくたに疲れ切っている。

 そして、私の友人が働いている保育園では、4月に新年度がスタートする時点で保育士が2人足りなく(就職が決まっていたのに辞退した)パート保育士をつないでやりくりをしているが今は病気で休むことができないという。また、私が以前働いていた保育園でも昨年度の途中で保育士が2人も心の病で休んでしまい、管理職も現場に入ってパート保育士でなんとか乗り切ったいう。こうした保育士不足が日常茶飯事になっているのが現状でいつ誰が倒れても不思議ではない。保育労働者は毎日献身的に働いている。(葉月)


 色鉛筆・・・「人権作文」

 かつて、色鉛筆の原稿には、私の娘たちの成長ぶりを書いたものだった。その娘たちもそれぞれが仕事を持ち、自分の生活を築いている。今、我が家には近くに住む孫たちが頻繁にやって来る。中学3年になる孫娘は、春休みに人権作文の課題をもって、私にあれこれ相談をしてきた。

 どうやら、作文のテーマは自分で決めたらしいが、「ハンセン病」の患者たちが隔離されてきた事実を明らかにするらしい。私は、今も裁判で争われている社会的な問題を選んだ孫娘に、少しは私たちの日々の行動が影響しているのかも・・・と正直、嬉しかった。

 私たちが最寄りの駅頭でビラ配布をする時、少し恥ずかしながらも、しっかりアピールし手伝ってくれる孫娘は、社交的で明るい性格だ。しかし、小学6年頃から、不登校になり、中学になっても長期間休む日々が続いていた。月2回の教育相談を受けながら、本人の気持ちを最優先させ、まわりの者は見守るしかなかった。

 転機が見え出したのは、この半年間で、どうやら同学年で不登校をしているのが自分だけでは無いことに気づいたらしい。仲間がいることが励みになったのか、教室がダメな場合は保健室の登校でもいいという方法も知り、仲間で連絡を取り合いながら通える日が増えていった。

 そして新学期、中学3年という学年の重みを自覚し、次は高校という目標が出来たらしい。年間30日は休めるが、それを超えると公立高校の受験資格は無くなると、学校から説明があり、私に伝えてきた。私が思うに、これは孫娘のそれでも頑張るという宣言なのか、休みそうになったら助けてというサインなのか、どちらにしても私は大いに頼りにされているのかもしれない。

 人権作文は、ライ予防法が成立したのが1907年、廃止されたのが1996年、それでも患者のほとんどが生まれ故郷に帰れない、その現実に目を向けていた。私は、1週間前ほどに、たまたま近くのホールで「あん」という映画を観てきた。ハンセン病療養施設に住む70代後半の老女が、どら焼の店を手伝うという話だった。老女を演じる樹木希林が、小豆を生き物のように扱い声掛けをしながら、手間暇かけて3時間、おいしい「あん」を作るシーンは、素材を大切にする昔の人の声を聴くようだった。心寄せる女子中学生も登場し、忘れかけている何かを教えてくれる、いい映画だった。

 というわけで、私と孫娘との関係は、これからも距離を置きながら見守っていくことかなと、思っている。原稿を書き終えた翌日4月26日の朝刊に、ハンセン病患者の裁判が隔離法廷で行われたことを、最高裁は「差別的で違法」と認めた、とあった。患者への謝罪は、すでに熊本地裁の賠償責任を認めた2001年5月の判決で、政府、国会は終え、その翌週に補償金支給法が成立した。それなのに、その15年後になって謝罪はするが違憲性を認めないとする最高裁の姿勢に、司法は人権の尊さを学ぶべきと思った。(恵)

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