ワーカーズ565号(2016/12/1)
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自衛隊の南スーダン派兵の動機は支配層の権益拡大だ
自衛隊の実戦軍隊化、日本製兵器のデモンストレーション、中国への対抗ねらう安倍政権
「駆けつけ警護」など武器使用権限を拡大する形で、自衛隊の南スーダン派兵の継続が強行された。政府は、自衛隊を世界の平和維持・構築のためにさらに活用するためだと主張している。
しかし私たちは、武器使用の拡大を伴う今回の南スーダン派兵も、そもそも最初に南スーダン派兵を行った民主党政権の決定も、南スーダンの平和のためだなどという話しはいかさまに過ぎないと断言する。南スーダン派兵の本当の狙いは、アフリカにおける日本の立場や発言力の向上に置かれていることは明らかだ。特にいま、アフリカでは中国の存在感が高まっているが、それへの露骨な対抗意識がみなぎっている。またいま日本は、安倍政権の下で、アベノミクスの重要な一環として武器・兵器の生産や海外輸出に力を入れている。ところが、日本の兵器は実戦ではまだ試されていない。だから日本の兵器を実際の戦場に持ち込み、使いたい。そのことで武器市場で日本製兵器をアピールしたいという軍需産業、死の商人たちの思惑もある。
また、日本の支配層・とりわけ外務省の悲願である、国連の中での地位上昇、国連常任理事国入りという野望も透けて見える。アフリカの諸国は、国連の中では多くの票を持っており、そこへ向けてのアピールを意図していることは明らかだ。
要するに、南スーダンでの自衛隊の任務拡大、武器使用の容認は、アフリカにおける平和の維持・構築への貢献などを意図してのことではさらさらなく、日本の財界・大企業・が、世界に張り巡らせようとしている自らの利権や権益の網の目を防衛し、それを更に拡大させるためのものだ。その事を通して、政治的な立場を強固にしようとねらう政治家や官僚たちの欲得のためだ。
そんなことのために日本の自衛隊員、若者の命を犠牲にせよという安倍首相、自公の政治家、官僚たちは、本当に恐ろしい連中であると言わなければならない。だからこそ、私たちは、何としてもその暴走を押しとどめていかなければならない。自衛隊員が他国の人々を殺傷してしまう前に、自衛隊員に死傷者が出る前に、自衛隊を南スーダンから徹底させる闘いと、戦争法の廃止を求める闘いを強化しよう。
そして同時に、南スーダンでの内戦激化や住民虐殺の危険性の高まりを回避し、抑えるために、政府と独立して奮闘しているNGOやジャーナリストを始めとする人々の様々な活動への精神的物質的支援を最大限に強めよう。(阿部治正)
収奪者から収奪せよ!――移民や外国?いや敵は世界で一%の収奪者だ――
米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した。そのトランプ現象は米国のものだけではない。グローバル化の波が世界を覆い、その揺る戻しといえる大きなうねりが世界中で起こっている。
グローバル化の負の側面を盾にとった排外主義、その対抗策としての国家の復権へという声もある。が、労働者は、現代のグローバル化とそれがもたらした巨大な歪みに対し、第三のアプローチをめざす場面だ。
◆グローバル化の揺り戻し
トランプ氏は、選挙戦中から国境の壁の構築や移民排斥などを掲げ、グローバル化で置き去りにされた白人ブルーカラーをはじめとした低・中間層の怒りを掘り起こして大統領選を勝ち抜いた。ただし、既得権層への怒りを集めたとはいえ、トランプ新大統領がそれらの問題を解決し、投票した怒れる低・中層労働者が満足する時代を築けるかと言えば、それはノーだろう。
トランプ氏が選挙戦中に打ち出した対応や政策をざっとみれば、以下のようなものだ。
不法移民の強制送還、インフラ投資の拡大、法人減税、医療保険制度の縮小、金融規制の緩和、TPP離脱、石炭産業・シェールガス産業支援、温暖化対策を取りまとめたパリ協定からの離脱などだ。
これらは経済的には上げ潮=リフレ政策といえるが、財政赤字やドル高をもたら恐れがあり、政治的には孤立主義、拝外主義的なものだ。それに政権人事は右翼排外主義者とウォール街出身のエスタブリッシュメント、それに身内を集めたものになりそうで、低・中間層の利益代表者など排除されている。これらを考えれば、トランプ政権になっても、問題が解決するどころか、新たな問題が噴出せざるを得ないだろう。
選挙戦が終わった今、トランプ氏の勝利は、エスタブリッシュメントへの怒りを背景とした低・中間層の反乱だという見方があふれている。確かにその通りだろう。そうした事情は米国に限ったことではない。右派ではイギリスの英国独立党、フランスの国民戦線、ドイツの「ドイツのための選択肢」、左派ではイタリアの「五つ星運動」、スペインの「ポデモス」、ギリシャの「シリザ」などだ。米国でも、トランプ氏の排外主義だけではなく、左派のサンダース旋風も巻き起こった。歪みを膨らませながら拡がるグローバル化に対し、その反動でこれら欧米での左右両派の新興勢力が台頭しているわけだ。
事情は、日本でも同じだ。そもそも、これまで政権の座にまで到達できなかった超タカ派、右翼の安倍政権が生まれている。それに呼応する様に、移民排斥ではなく嫌韓や嫌中など煽る在特会、橋下維新の会や日本会議などの国家主義的な勢力も幅をきかせている。他方では共産党が議席を増やし、シールズなど若者の政治参加の機運も出てきた。
要は、これまでのグローバル化を進めてきた既成勢力への怒りと闘いが、国境を越えた大きなうねりと鳴って噴出し、左右いずれかの勢力の伸張となって現れてきている、という図式なのだ。
◆見捨てられた者の反乱
グローバリゼーションは、91年の冷戦構造崩壊と同年の中国のWTO加盟、93年のEU発足などによって何度目かの地球規模の大きなうねりとなった。情報化革命や金融資本全盛時代を背景とした今回のグローバル化は、かつてのシルクロード時代や大航海時代などを凌ぐ、大多数の人々に影響を与えるかつてない規模で世界を席巻してきた。
そのグローバル化で何が起こったのか。
国境を越えてモノやカネが大規模に移動し、さらなる利益を求めてモノの取引を越えた投機での利益追求が世界を覆っている。交易高やGDPの拡大より投機マネーの取引量が数倍にも増えているという、暴走としか思えない異常な情況にある。
そのグローバル化の中、先進国の多国籍資本は、生き残りと利益の拡大をめざして海外に生産拠点を移しただけでなく、コスト競争のため国内労働者の雇用と賃金を破壊し、移民の流入も加わった賃金引き下げ競争を展開しているのだ。巨大多国籍企業は、利益をため込み、マネー資本主義の席巻で富裕層はますます富を集中した。
取り残されたのが、先進国の労働者階級だ。米国や日本の労働者の賃金は、この20年間でほとんど上がっていない。労働者の雇用は不安定になり、世界で若者の失業率が高止まりしている。
とはいえ、資本・企業を中心プレーヤーとする資本主義世界では、利益・利潤を求めて国境を越えて市場が拡大するのは不可避のことだ。しかも拡大された市場経済は、後発国・新興国の経済成長やそこでの労働者の所得レベルをしだいに引き上げてきたことも事実だ。
そうした結果を雄弁に物語っているのが、「象の鼻」というグラフだ。このグラフを見ると一目瞭然、グローバル化が進んだ1988年から08年までの20年間で、その結果がはっきりと出ている。後発国と先進国の富裕層の所得が7倍前後増えているのに対し、先進国の中・低所得層はまったくと言っていいほど増えていない。取り残されたのは製造業などが海外移転した事によるブルーカラー層を低・中所得層だということがわかる。これは欧米だけではなく、終身雇用や年功賃金が切り崩され、非正規化が進んだ日本でも同じ事情にある。
現に先進国での貧困も増えている。米国の貧困率は18%、日本は16%で、先進国では最も高い。経済大国でこそ、貧困化が深刻化しているのだ。西欧では、若者の失業率が突出して高くなっており、ギリシャやスペインでは、15歳から24歳の若者の半数が失業しているのが実情だ。
これらの結果が、世界での最富裕者62人が世界人口の半分を占める下層の36億人の合計と同じ富を所有し、上位1%が所有する富が他の99%の人たちの合計よりも多いという、とてつもない格差となって現れているのだ。
現在のナショナリズムや排外主義、その逆バージョンともいえる左翼勢力の伸張は、グローバリにズムがもたらしたこうした負の結果に抗する、二つの別々の方向での表れなのである。
◆法人・投機規制と増税
資本主義世界のグローバル化は、メインプレーヤーの企業や資本の要求であり、不可避的にそうした勢力の主導で、その利益に沿って拡がらざるを得ない。いま、その弊害を除去するものとして対置されているのが、国境の壁や国家の規制力だ。とはいえ、国家に頼るのも限界がある。国家間対立や競争で破綻国家も生まれてきた。「国家の限界」もすでに経験してきたことだ。ここでは、グローバル化の弊害を除去するのは国境を越えた労働者の共同闘争にこそある、このことを再確認したい。
法人減税を取り上げてみよう
トランプ氏も、選挙戦では法人減税を主張していた。海外に逃げ出す資本・企業を国内に止めておくためだという。が、法人減税はいま世界中がやっていることだ。それを拡げていけば、世界中で法人税ゼロの時代がやってくるだけだ。
租税回避地についても同じだ。各国がそれぞれ企業・マネーを呼び込もうとする競争が世界各地で低税率を拡げ、結局はそれぞれの国で消費税などの大衆増税で国家財政を賄うことになってしまう。
労働者が要求すべきは、法人税増税であり、金融取引への課税強化であり、租税回避地の一掃である。一部に自国での課税強化の動きもあるが、企業・資本に頼った国益優先の国家に頼っていたのでは、こんな事は永久に不可能だ。国境に壁をつくるのではなく、国境を越えて、世界各地の労働者が連携した共同闘争で、企業や投資家が貯め込むお金をはき出させることだ。自国だけが法人税を下げれば資本が流入して雇用が生まれ、所得も上がる、などということは幻想に過ぎない。
かつて、労働者がバラバラでいるかぎりは、あるいは個々の事業所・企業内での闘いだけに止まっていれば、結局は労働者個々人の利益が確保できなかったことを教訓とし、労働者が企業の壁を越えて団結してきた歴史を思い起こしたい。同じ事は、グローバル化でも当てはまるのだ。法人税や金融取引税、それに租税回避地についてもいえるのだ。
とにもかくにも、グローバル化でマネーを独り占めにしている企業や投資家に対する規制と課税を強化すること、そのことで確保した賃金や税金で自分たち労働者大衆の暮らしを改善する闘いこそ必要なのだ。
◆収奪者から収奪しよう!
今回のトランプ現象などに現れた世界的な動きは、かつて19世紀のはじめの英国で拡がったラッダイド運動を思い起こさせる。産業革命によって機械工業への転換が始まった時期に起こった出来事だ。
当時は手工業的・職人的な働き方をしていた労働者が、機械の導入に歩調を合わせたかの様に職を追いやられ失業者が続出していたことに対し、機械そのものが労働者を失業に追いやる元凶だと見なし、あちこちで機械の打ち壊し騒動が拡がったことをいう。
機械の導入は、それまでの職人的労働者がはじめて目にする事態だったから、機械自体の能力とその利用のされ方とを勘違いしたもので、いまでは歴史的な誤りだと評価されているものだ。が、そのラッダイド運動、その後の労働者の闘いの飛躍へとつながる一大画期となった、という経緯がある。
現代の私たちが見ている光景は、産業の流出や移民などが雇用を奪っていることで、苦境の原因がグローバル化そのものにあると勘違いした結果の事態なのだ。国境を越えたカネやモノやヒトの移動そのものが自分たちの苦境の原因だと勘違いし、グローバル化を止めればそれが改善される、と受け止めているのだ。
グローバル化の進展のなかで、市場が拡大する以上に投機目的の投資が増え続け、マネー資本主義の世界も拡がっている。その結果、富の集中や格差の拡大などでグローバル化の歪みも広く認識されてきた。グローバル化は避けられない傾向であること、そのなか富の集中と格差の拡大が進んでいること、こうしたグローバル化の二面性をふまえた対抗策を見つけることが、私たちの闘いを前進させることができる。グローバル化で富を独占している1%の収奪者から収奪するのだ。
むろん、いま生起している事態がすべてグローバル化の結果だけに帰すわけにもいかない。とりわけ日本では、戦後の日本的な労使関係の閉塞情況による面も大きい。そうした観点も含めて、排外主義ではなく、労働者自身による国境越えた共同闘争で、今後の道を切り開いていきたい。いま世界で起こっている大変動は、私たちにとって、その一歩を踏み出すためのターニングポイントに遭遇していることを教えているのだ。(廣)
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GDP年率換算2・2%も 外需頼みで中身無し 7⇒9月期経済
7月⇒9月期の経済成長率が発表されました。
「内閣府が14日発表した2016年7~9月期の国内総生産(GDP)の1次速報は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前期(4~6月期)より0・5%増え、3四半期連続のプラスとなった。この状態が1年続いた場合の年率に換算すると2・2%増となる。」(朝日新聞)。
これで今年に入って3期連続で「プラス成長」となりました。しかし中身が停滞していることには変わりがないのです。
「個人消費や設備投資はほぼ横ばいだったが、輸出が前期より2・0%増加した。アジア地域でのスマートフォンの生産が堅調で、関連部品などが増えた。GDPでは、輸出に含まれる訪日外国人客の消費の拡大も数値を押し上げた。
GDPの6割を占める個人消費は前期比で0・1%増えた。増加は3期連続。台風が相次いだ影響でアルコールを含む飲料が不振だったが、新型スマートフォンなど携帯電話関係が好調だった。 企業の設備投資も0・0%で横ばい。円高による業績の悪化で、企業の投資姿勢は慎重なままだ。住宅投資は2・3%増で、日本銀行による金融緩和で下がっている住宅ローン金利が後押しし、2期連続のプラスとなった。」(同)
あらかたの内容は上記のとおりです。内閣府ですら「事実上横ばいで、力強さはない」としています。
輸出関連と外国人による購買が、寄与度0・3%でかろうじてプラス以外は、肝心の個人消費・設備投資が「寄与度ゼロ」という元気なさです。住宅建設もディベロッパーによる投資が低金利で伸びたが売れない在庫も膨らんでおりミニバブルとの推測も以前から指摘されています。これもむしろ不安要因です。
「ロイター11月15日」では「ハードル高いGDP600兆円」としています。安倍政権はのびないGDP「対策」として統計計算を変更しましたーー見え透いたことをやるものです。。例えば研究開発費を次期統計に設備投資に入れるのですが、「GDP統計を作成する内閣府では、改訂によりGDP全体が名目値で20兆円程度上乗せされるとはいえ、成長率自体はほとんど変わらないとみている」らしいのです。
ということで安倍首相の公約「2020年ごろをメドに名目GDPを600兆円に拡大させるハードルは、相当に高いとみられる。」というよりほぼ不可能でしょう。
さらにトランプ政権の登場に関連してエコノミストの引用で「国内供給過剰状態が強まっており、輸出ドライブがかかりやすいことを意味している」と指摘。米新政権が日本の内需の弱さに懸念を表明し、もう一段の内需振興策を求めてくる可能性があるとしてきしています。日本企業は設備投資に動けそうにないとも。
さらにもう1点。「(トランプ氏が)保護貿易主義を掲げ、輸入関税引き上げの可能性や、米国内の法人減税15%への引き下げなどが実行されれば、日本企業にとって米国への輸出環境は厳しさを増し、日本企業の投資は日本国内から米国内へ向かう流れが強まる」という指摘があります。
安倍首相の肝いりであるAI(人工知能)やIOT(物のインターネット)だが、これもロイターアンケートでは「今後のIОT、AI活用について「検討していない」と回答した企業は4割を占めた。」と。先行き不安な世界経済ーー需要不足の上に金融市場の不安定化ーーのなかでは、設備投資の拡大という「経済の主エンジン」がかからないのです。そんな今回の結果でした。(リュウ)
トランプを支持した白人ブルーカラー層とは?
アメリカ大統領選挙で、移民や女性に対する暴言を繰り返したトランプが当選したことが物議をかもしています。世論調査機関の分析では、ヒラリー・クリントンを支持したのは、女性やヒスパニック系移民、黒人などであり、ドナルド・トランプを支持したのは白人ブルーカラー層であったと言われます。アメリカの「白人ブルーカラー層」は、どうしてあのような「暴言王」トランプを支持したのでしょうか?日本に住む私達は、なかなか実感がつかめませんが、日本でも観る事のできるテレビドラマや映画から、探ってみたいと思います。
ダルジール刑事
これはアメリカではなくイギリスのテレビドラマですが、同じ「アングロサクソンのブルーカラー」という共通した要素があると思い紹介します。
イギリスでは「シャーロックホームズ」や「ミスマープル」をはじめ、推理小説がたくさん書かれており、映画やテレビドラマにもなっています。その中で異色なのが「刑事ダルジール」です。他の推理ものでは探偵や刑事は、だいたいジェントルマン出身が多いなか、ダルジールは「労働者階級出身」だという設定が人気を呼んでいるのです。
事件のストーリーは他の推理物と大して変わらないのですが、面白いのがダルジールのふるまいです。例えば、名門大学に入学した息子と食事する場面。やたらナイフとフォークをガチャガチャさせ「下品な」食べ方をし、「卑猥な」ジョークを連発し、息子が眉をしかめたりします。ところが、その「下品な」ダルジールが、事件を取り巻く「ジェントルマン」連中の中から、犯人を割り出してゆくところが痛快です。
「あいつらジェントルマン」への反発と、「俺たち労働者階級」の誇り・・・。これがドラマを貫くテーマなのです。イギリスの労働者にはうけるのでしょう。
ジョンライドンの言葉
ジェントルマン階級へ怒りと嘲笑の矛先を向けているうちは良いのですが、この矛先が他に向うと、一転「差別意識」に変わってしまうところが怖いです。
イギリスの有名なパンクロックグループ「セックス・ピストルズ」のボーカリストであるジョンライドンが、こんな言葉を吐いています。「労働者階級ほど差別的な集団は無いんでね。」「連中は自分より下の人間を見つけて差別することで自己満足するのさ。」
ジョンライドン自身、ロンドンの貧しい労働者地区の出身で、労働者アパートには風呂もなく、ブリキのたらいにお湯を入れて体を洗って育ったそうです。そんな生い立ちから、彼は労働者階級の「きれいごとでない」現実をいやというほど見聞きしてきたから、こんな発言ができるのでしょう。
マルクスも「労働者階級は闘えない時は非人間的であり、闘うことで人間性を回復できるのだ」と述べていましたよね。
グラン・トリノの老労働者
さて、アメリカに目を移してみましょう。クリント・イーストウッドが監督をつとめ、自ら主演した映画「グラン・トリノ」。
このグラン・トリノは、アメリカの大手自動車企業であるGM(ジェネラル・モーターズ)の最高級車のことです。カーマニアなら憧れの車種でしょう。このGMでまさに「白人ブルーカラー」として働き、退職した老労働者をクリント・イーストウッドが演じています。
彼はとにかく、ありとあらゆる移民に対して差別意識をあからさまにします。退職後に住む一軒家の近所に、インドシナ戦争の難民として移住してきたモン族の家族がいます。彼はアジア人が大嫌いで、せっかくモン族の人々が作ってくれた家庭料理も食べようとしません。そんな彼が、ひょんなことから、モン族の少年に仕事を教えることになり、ストーリーは意外な展開を始めます。
彼はモン族の少年に「仕事を覚えて男らしくならないと、彼女に逃げられてしまうぞ」と、イタリア人の床屋に連れていったり、ポーランド人の仕事斡旋人に会わせたりします。その度に、彼は「おい、イタリアーノ(イタリア野郎)!」「おい、ポーリッシュ(ポーランド野郎)!」と、差別的な言葉で呼ぶのです。
自分も移民(オールドカマー)だったくせに、あとから来た移民(ニューカマー)であるイタリア人、ポーランド人、アイルランド人(こちらはオールドカマーだがもともとブリテン島で差別されていた!)、スパニッシュ系に対して、ありとあらゆる差別感情、蔑視感情をぶつけるのです。
とはいえ、お互いに差別的な呼び方をしつつも、彼らは職人としてのプライドを持ち、仕事を介して、それなりに友情と信頼関係を作っているのですが・・・。
やがて、「差別的な白人」であったはずのこの老労働者が、モン族の少年とつきあううち、いつの間にか彼らの味方になり、最後は彼らのために命を投げ出す・・という、クリント・イーストウッドならではの感動的な映画です。
さて、このように、日本に住む私達の感覚ではなかなか理解しにくい、英米流「白人ブルーカラー層」気質。ちなみにカナダの白人ブルーカラー層の気質は、むしろ多様性を重んじる傾向が強く、やや趣が異なるように思われます。つまり、あくまで様々な「歴史や環境」によって形成されてきたものであって、「白人ブルーカラー」一般の本質とは考えない方が良いと私は思います。ということは逆説的に言えば、「歴史や環境」によっては、他の国のブルーカラー層だって、排外主義に煽られたら大変な事になるということです。一方、階級的な連帯によって助け合いの精神が発揮される潜在的可能性も秘めているということです。やはり普段の努力が大切です。(松本誠也)
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北方領土の共同統治案について---アイヌ史の視点もふまえて
プーチン・安倍会談を前に
十二月中旬にロシアのプーチン大統領が来日し、安倍首相との会談が予定され、この席で「北方領土問題の進展があるのか?」注目されています。「アメリカ大統領選挙でトランプが勝利した影響であまり期待はできないのではないか?」という見方も出ています。
「北方領土」問題をめぐっては、「北方四島(歯舞・色丹・国後・択捉)は日本固有の領土」とする日本政府の公式見解を前提とした「四島一括返還論」から、「二島(歯舞・色丹)返還論」(鈴木宗男など)や「全千島返還論」(日本共産党)まで、様々な主張がなされています。これに対してロシアは「第二次世界大戦の結果、ソ連(ロシア)の領土になった」との立場だと言われます。
「共同統治案」の意図は?
そんな中で「北方領土に共同統治案」という見出しの記事(十月十七日付『日本経済新聞』)が注目を引きます。「最終的な帰属の扱いで対立する国後・択捉両党などでともに主権を行使する手法で、双方が従来の主張を維持したまま歩み寄れる可能性があるとみている。」「複数の日ロ関係者が明らかにした。」と報じています。事前に新聞にリークすることで世論の反応を見るための「アドバルーン」の一つと言えそうです。
具体的には「まず元島民を中心に日本人の往来や居住を自由にし、北方領土に常駐する日本の行政官がこれを管理する方式の採用が考えられる。」(日経記事)とされます。しかし現実には困難な問題があるとの指摘もされています。
「ただ島内の日本人の経済活動や、警察権、裁判管轄権をどう扱うかなど詰める点は多い。それぞれ自国の法律を自国民に適用するか、共同立法地域にするかも決める必要がある。共同統治地域を米国が日本防衛の義務を負う日米安全保障条約の対象とするのかも課題だ。首脳間で基本方針の合意に至っても、実現に向けた事務レベル交渉や立法化の作業は数年かかるとの見方が多い。」(日経記事)
それでも、この「共同統治案」は、日ロ両国の国民とりわけ平和を望む労働者・市民にとって、検討する価値は大いにあるのではないでしょうか?
千島・樺太史とアイヌ史の視点
そもそも、「北方四島」を含む「千島列島(クリル列島)」も「樺太島(サハリン島)」も中世から近世の歴史を顧みれば、江戸幕府にも帝政ロシアにも属さず、どちらの「領土」でもありませんでした。この地域には、「千島アイヌ」(クリルアイヌ)や「樺太アイヌ」(樺太アイヌ語で「エンチウ」)が、それぞれ独自の文化を持ち、鉄器も伴う高い漁業生産力を基礎に、交易民としてシベリア・沿海州や本州島との間で活発に交易活動を営んできました。北海道島においても、もともとアイヌが交易民としてシベリア・沿海州や本州島との交易に当っていました。
やがて幕末から近代にかけて、樺太も千島もロシアと日本との間で、双方の帝国主義的な覇権争いの対象として、ある時は「ロシアの領土」にある時は「日本の領土」にされ、そのたびにアイヌは幾度も強制移住をさせられてきたのです。
帝国主義の覇権争い
一八五四年の「日露和親条約」と一八六七年の「仮規則」で「樺太島」については「日本人とロシア人の雑居地」とされ、樺太アイヌは引き続きロシアの業者(セメノフ・デンビー商会等)や和人の業者(伊達家・栖原家)との経済的関係を持ち続けました。
一方「千島列島」については、北千島(ウルップ島から東)はロシア領、南千島(択捉島より西)は日本領とされました。
一八七五年に「樺太・千島交換条約」が結ばれると、樺太島はすべてロシア領とされ、これに伴い樺太アイヌの多くは北海道に強制的に移住させられました。その過程で、無理な労働で健康を損なったことや、ちょうどこのころ北海道に蔓延した伝染病の影響を受け、たくさんの樺太アイヌが亡くなったのです。
他方、千島列島はすべて日本領とされ、これに伴いそれまでロシア人との関係が深かった北千島のアイヌも、強制的に移住させられました。
一九〇五年、日露戦争後の「日露講和条約」で、南樺太は日本の領土となり、樺太アイヌは故郷に帰還していきました。
太平洋戦争が終結すると、樺太も千島もソ連軍に占領され、ソ連の領土となりました。これに伴い日本人の「引き揚げ」と共に、樺太アイヌも北海道への再度の移住を強いられました。
共同統治と自由往来を!
このように「北方四島」に限らず千島列島も樺太島も、帝国主義的な覇権争いにより、ある時は「ロシア領」、ある時は「日本領」とされた歴史、もともとこの地域は交易民として樺太アイヌや千島アイヌ、そしてロシアや和人の商人が自由に往来していた歴史を顧みるなら、この地域の「共同統治」と「自由な往来」「自由な移住」こそが、あるべき姿ではないでしょうか?「固有の領土」という観念に固執するのではなく、「国境」の概念を相対化し、EUをお手本として、「自由な往来のしくみ」をつくることが、平和をめざす私達の目標ではないでしょうか?(松本誠也)
読書室 『クリントン・キャッシュ』―外国政府と企業がクリントン夫妻を『大金持ち』にした手法と理由―
P・シュバイツァー著2016年2月10日 メディアコミュニケーション刊
トランプとヒラリーが闘った米国大統領選挙に決定的な影響を与えた暴露本
この本の原著は、2015年5月の刊行されて以来、保守系・リベラル系を問わず、主要なニュース媒体に取り上げられ、ニューヨーク・タイムズでは忽ちベスト・セラー・リストの第2位に躍り出た。そしてこの1年間に千件のブック・レビューが寄せられたのだ。
本書の内容とはヒラリーとその夫のビル・クリントン(元大統領)がこの10年間で築いた莫大な富の、背後に潜む存在と不正な取引の実態を、緻密な調査を世界各国で行いつつ、膨大な出典に基づいて検証したものである。
著者のピーター・シュバイツァーは、ジョージ・W・ブッシュ大統領の元スピーチ・ライティング・コンサルタントであり、また著書『スロー・ゼム・オール・アウト』『強奪』の中でワシントンの政治家たちが権力を背景に私腹を肥やしている実態を告発し、ドキュメンタリー番組『60ミニッツ』や、ニューヨーク・タイムズ紙などの主要メディアで活躍する米国のベストセラー作家である。さらに政・官・財の癒着や税金の無駄遣い、政府の汚職、違法行為なども明らかにする政府アカウンタビリティ研究所(GAI)の共同創設者兼会長も務める硬骨漢でもある。
この本での暴露は当然のことながら立候補表明をしたばかりのヒラリー陣営を直撃した。彼女の陣営はでっち上げだと主張こそしたものの、訴訟社会米国にあって未だ裁判を起こせないで推移している点に、本書の暴露内容の真実性が「見え隠れ」している。
昨年12月のクリントン・ネット・ワークと揶揄されるCNNで行われた全米世論調査でも、「ヒラリーは信頼できる人物か」の質問に対して、「信頼できる」は30%、「信頼できない」は59%であった。しかし本当はこんな綺麗事の質問では間尺に合わない。まさに膨大な私的アドレスのヒラリー・メール(これらの主なものは出版されている)とリビア・ベンガジ事件で明らかになったように、ヒラリーの本質は犯罪者だったのである。
では本書の構成を紹介する。
まえがき
第一章 グローバルな「リンカーン・ベッドルーム」
第二章 事業譲渡
第三章 ヒラリーによる「リセット」
第四章 インドの核
第五章 クリントン・モザイク(Ⅰ)
第六章 クリントン・モザイク(Ⅱ)
第七章 演壇の経済学
第八章 軍閥の経済学
第九章 熱帯雨林の大富豪
第一0章 クリントン流・災害資本主義
第一一章 「汚職」のボーダーライン
謝辞
先にヒラリー陣営はこの本での暴露を事実無根・虚偽と証明できないので裁判を諦めているようだが、その逆にシュバイツァーは各メディアからの取材を受ける度に、本書の内容以上に詳細な資料を提供して、着実にヒラリーの「罪の検証」を重ねてきたのである。
2016年6月5日、バーニー・サンダースはこのクリントン財団スキャンダルについてCNNのインタビューに答えた。クリントンのメール問題など彼女のスキャンダルは一切不問にして、それまで政策論争のみで闘ってきたが、クリントン財団の利益相反スキャンダルについて看過できないと考えたようで、次のように述べた。「国務長官のイスに座りながら、夫の財団が外国政府から何百万ドルもの寄付を受け取っていた。しかも我々とは価値観を共有しない独裁政権ばかりだ。サウジでは市民的自由が侵害がされ、女性や同性愛者は抑圧されている。イエス。これは問題だ・・・」と。しかし時既に遅かった。
そして2016年7月には、「クリントン・キャッシュ」というドキュメンタリー映画が公開された。さすがは焦眉の政治問題でただちに政治映画を作り上げる米国だ。この問題の映画は、ヒラリーが国務長官だった時期に、夫のビル・クリントンが運営するクリントン財団の収賄や資金洗浄などの犯罪行為や、諸々の利益相反行為を暴露するものであり、ピーター・シュヴァイツァー氏同名の著作を映画化したもので、そこで暴露されたのは、以下のような内容であった。340頁の本より映画の方が印象的でヒラリーに破壊的だ。
○アメリカのウラン鉱山を所有するカナダ企業をロシアの国営原子力企業ロスアトムが買収した問題。買収が成立すればアメリカのウランの20%をロシアが保有するので、アメリカの国家安全保障上の問題であった。しかしロシアのロスアトム社がクリントン財団に235万ドルを寄付すると、ヒラリー・クリントン国務長官はこの買収案件を承認。買収成立後に同社からビル・クリントン元大統領に対して講演料50万ドルが振り込まれた。
○サウジアラビアへの武器売買の案件。クリントン財団がサウジアラビアから一千万ドルの寄付を受け取り、ボーイング社からも寄付を受けとると、ヒラリー・クリントン国務長官はボーイング社のF―15を含む総額290億ドルの最新型戦闘機をサウジに売却。
○ヒラリー・クリントン国務長官在任中、20カ国に総額1650億ドルの武器売買取引を成立させた。武器輸出の商談成立の前後に、軍事産業からクリントン財団への寄付が行われてきた。オバマ政権は、アメリカ史上もっとも大量の武器を輸出した政権となった。
○通信機器メーカーのエリクソンはビル・クリントンへ講演料75万ドルを払うと、イランへの経済制裁中も影響を受けず、イラン国内で業務を続けた。等々
これらの一連の行為はれっきとした収賄であり、ヒラリーは犯罪者である。周知の通りアサド政権を支援するロシアとアサド政権を打倒しようとISを秘かに支援している疑いがあるトルコとサウジは対立関係にあるが、ヒラリーはそんなことはお構いなしに、カネさえ貰えれば双方の言いなりになるという無節操ぶり。まさに死の商人となって中東の紛争に油を注いできた。こんな人物がいけしゃーしゃーと大統領候補となる! ワシントン政治の腐敗・堕落はここに極まる。
グローバリズムの旗手ヒラリーが大統領になれば戦争が始まると直観した白人の労働者民衆のポピュリズムが台頭する。この潮目の変化を安倍政権も日本共産党も見逃した。トランプはその時「私は低学歴の人たちが好きだ」と発言した。2016年5月に「大統領はトランプに決まり」と発言したのは、副島隆彦氏をもって嚆矢とする。大胆不敵な彼は7月10日に『トランプ大統領と米国の真実』を刊行し、さらに『Lock Her Up! ヒラリーを逮捕、投獄せよ!』(2016年10月20日刊)を発刊してヒラリーを激しく糾弾したのである。
実際、国務長官として恥さらしなのに、況んや大統領候補など笑止といわざるを得ない。このような犯罪行為に手を染めた人物が厚顔無恥に大統領選に出ても、トランプ候補には勝てないだろうとは、この映画の上映当時から米国では大きな話題となっていた。
まさにこれでもかこれでもかの暴露がこの本には満載である。したがってここでは端的な実例を一つ上げることでご勘弁をお願いしたい。
第七章から要約する。ほとんどの元大統領は、任期満了から時間が経つにつれて講演の依頼が少なくなっていくものだ。ビルの場合はその反対である。
ホワイトハウスを出る際、ヒラリーは「私達は無一文だ」といったが、その後ヒラリーが上院議員になるとビルは講演旅行に出た。そして2001年に彼は39回の海外講演と20回の国内講演を行い、それに続く7年の間にクリントン夫妻は一億九百万ドルの講演料を稼いだ。それでも時間が経過する中でビルの講演収入は減っていったが、2009年ヒラリーが国務長官になるとビルの海外講演は劇的に増え、25万ドル以上の講演料を確保した絶好調の3年間は、ヒラリーが上院にいた間のことだった。実際に50万ドルかそれ以上を稼ぎ出した13回の講演の内、妻が国務長官でなかった時期に行われたものは2回だけだった。勿論この高額な講演料は名前を変えた賄賂である。とりわけ対中戦略を軸に展開していたのはヒラリーであり、ヒラリーは中国に国を売ったのではないかとの疑惑を持たれている。
ここに示したのは単なる一例に過ぎないが、この本の充実した内容の一斑をしっかり伝えるものだろう。最後にある謝辞の中で、調査プロジェクトはカナダの納税記録からウクライナの貿易記録まで閲覧するなど、並外れた量の詳細なリサーチを必要としたと述べている。彼らの犯罪の証拠は、章ごとに詳細に付けられた注の中に明らかにされている。
経済アナリストの藤原直哉氏が述べたように、まさに情報公開がワシントン政治を崩壊させたということができる。そして日本人の理解を超えたトランプの政治的核心はリバータリアニズムである。彼は、ワシントンをドブ掠いしたいと本当に考えているのである。
もし貴方が今でもトランプが大統領選挙に勝利したことに驚いているとしたら、2015年にこの本が出版され、またこの本を元にしたドキュメント映画が、2016年の7月に上映されていたことを決して忘れないでいただきたい。
安倍政権も日本共産党もこの本と映画には全く注目していなかった。今でも語らない。日本との関係が深い米国政治の分析ができない
ようでは、それだけでリーダー失格である。自分たちがいかにワシントン政治のソフトパワーに毒されていたかを、謙虚に反省する必要があるのではないだろうか。そのためにも本書の精読が求められている。
(直木)
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トランプ政権の日米安保見直し「それを日本の対米自立のきっかけにすればいいんだ」安倍首相ーー警戒を強めよう
「トランプ不安、日本の「改憲」後押し」という記事が「ロイター十一月十四日」に掲載されている。この記事の論旨は特に意外なものではないが、日本にとって日米安保体制の「再編」ないしは「見直し」を口にしてきた次期大統領トランプであるがゆえに、日本の反動派をいたく刺激し「改憲」の動きも絡まり大きな焦点になるのは当然だ。そのせめぎあいが始まっている。
日米安保条約のみならず、TPPがすぐれて安全保障の問題であることは、去年の米国議会での演説などで安倍首相も再三強調してきた。トランプ勝利でTPPが米国で挫折しようとしているいまでも、安倍政権はあきらめていないようだ。それどころか日本が率先推進する決意らしい。菅官房長官は「TPPが対米従属だと主張してきた野党が、今や日本のTPP主導を批判するのはおかしい」と批判を一蹴し、日本の国会批准で米国にプレッシャーをかけてTPP成立のチャンスを狙っている(もはや無意味な試みに終わるだろうが。)。この執拗さが教えていることは、TPP批准が対中国包囲網構築を世界戦略としている安倍政権としては外せない重要な布石だからだ。
本題に入るが、トランプが選挙戦でとりわけ日本(さらに韓国と中国)に厳しい矛先を向けてきた。極東より米軍を引き上げるかの論調もあり、日米同盟の「見直し」の内容が様々に憶測されている。トランプ当選を予想しなかった日本政府などは慌てて外交戦略が固まる前に、トランプ本人や政策スタッフに取り入ろうとしている。
同時に「産経新聞十一月十一日」によれば「安倍首相は周囲にこうも語る。今後、トランプ氏が在日米軍の駐留経費負担増を日本に強く求めるなど、日米同盟のあり方の根本的な見直しを迫られる可能性もあるが、首相ははっきりと指摘する。『そうなれば、それを日本の対米自立のきっかけにすればいいんだ』」と。
かくのごとく日本の対米自立化はすなわち独自の軍事大国ーー戦前の日本のようにーーの再興となるチャンスと安倍首相は捉えている。具体的にイメージすれば、米軍が撤退した後にその基地や施設に自衛隊(国防軍?)が置き換わるということである。まさに安倍首相の「戦後政治の転換」「(戦前の)日本を取り戻す」ということになるし、そのための日本国憲法の改正、という流れが強められることになる。こんなことを許してはならない。明らかに安倍政権はーーTPPが挫折しようがーートランプ政権の登場を奇貨として捉えようと策をめぐらせている。
トランプ大統領で日米関係が急速に変わるのか、微調整から始まるのかは別として日本の反動派勢力の政治がまさにこのような方向で進みつつある(おそらくトランプは日本の軍事的自立化に理解を示し支援することになるだろう。これはまさに「自主防衛の強化」=軍事拡張路線だ。)。
われわれはトランプによる日米安保の見直しにどんな幻想も抱くことはできない。安倍政権の推し進める改憲の野望を阻止し、米軍基地撤去、軍事拡大反対、自衛隊による米軍基地代替え利用も許さない立場を貫こう。(六郎)
トランプ相場に沸くウオール街=米株式相場 「反ウオール街」?トランプ政治のデマ的本領全開に
ニューヨークダウ平均が19000ドルを突破した。記録的な大台ということである。
理由は、トランプ氏の政治未知数や排外的指向性を除けばーー当選以来過激な主張を控えていることもありーー、実際の経済政策は大資産家向けの政策のオンパレードであるからだ。金融界はあれほどの罵声をトランプ氏から浴びせられたことをもはや気にするそぶりもない。
「選挙運動中にトランプ氏は時に、金融業界人を貪欲な犯罪者のように描いて見せた。にもかかわらず、金融業界は選挙後数日内に、トランプ政権への期待を露にした。金融規制緩和やインフラ投資拡大、上位1%の富裕層の減税など、トランプ氏が約束した政策への期待が高まった。・・選挙運動中はウォール街を批判していたトランプ氏だが、投票日後の週末前には既に、ゴールドマン・サックス・グループ出身のスティーブン・ムニューチン氏らが移行チームに顔をそろえていた。」バンカーたちは「私が話す相手は誰もが幸せそうだ」という。(ここまでブルームバーグ「トランプ氏にあざ笑われたバンカー、次期政権の政策ににんまり」より)
まだ輪郭しか存在しないが、「トランプショック」手のひらを返したような「トランプ大相場」の出現は、法人税を中核とする大減税と、民間資本活用を含む四兆ドル政府投資がその柱をなしている。その上上記にあるように「ウオール街」の代表的人物がトランプ陣営の政権移行チームに参画している。ドット・フランク法(金融企業と金融取引に一定の制限を加えた法律)の廃止を含めた規制緩和が確実視されウオール街はまさに復権を果たそうとしている。白人ブルーカラーの利益などは紙屑のように捨てられた。すでにトランプ政治のデマ的本領が全開と言ったところだ。
トランプノミクスは彼が「尊敬している」というレーガノミックスによく似ている。つまり大減税と投資の拡大だ。(レーガンは国家投資を当時のソ連との軍拡競争に費やしてきたが) この両輪で経済を再生しようというわけだ。その具体的過程はまだ不明だし、ましてや結末を深読みすることはできないが、当面は大減税と歳出拡大による需要の喚起に期待が集まり一万九千ドル台の株式大台乗せとなったと見られている。
米国連邦準備制度理事会は、12月に金利の再切り上げーー1年ぶりのーーをすると見られており、その流れと相まって円をはじめ各国通貨安=ドル高となっている。つまりドルの米国回帰が生じており、新興国などは通貨安、株安、資金不足の不安が発生している。「参照=トランプ版米国第一主義、その犠牲者は新興国市場」(ウオールストリートジャーナル)。
日本の株式場合は、米国株につられ、あるいはドル高=円安で輸出ドライブがかかるといった一方的思惑で株価が上昇している。とはいえ、米日共に、経済の根幹に明るい兆しが出ているというわけではなく、金融資本や投資家が思惑につられて、「みんなが進むからリスクオン(買い)だ」とイワシの群れのようにうごめいているにすぎない。ドル高・円安は日本の資産の目減りを意味するものであり、グローバルに展開している資産家たちにとっても企業にとっても実は長期的にマイナスだし、とりわけ一般国民は原油をはじめとする輸入インフレのためにますます消費力を奪われ、需要減退を引き起こすのである。インフレは庶民にとって追加的収奪以外の何物でもない。日本の輸出企業にとっても、輸入インフレが一巡すれば原材料と燃料費の値上げにより、「インフレ利得」は長続きしない。トランプ旋風の後のトランプ相場の動きには注意は必要だが、ウオール街の盛り上がりなどは資本主義経済の現在の困難を何ら解決するのではなく、あらたに試みられる闇夜の跳躍に過ぎない。。(竜)
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コラムの窓・・・「政活費という罠!」
兵庫県議会に端を発した政務活動費不正支出の実態は、多くの市民にとって吃驚仰天だったでしょう。犯罪というほかない事件も含め、その発覚は今も止まるところを知りません。政務調査・活動費の点検、告発を続けてきた私にとっては、こうした事実は驚くべきこともない既知のものでした。
富山市議会における大量辞職と補欠選挙、その後も辞職者が出る泥沼の事態は収束の気配もありません。市議補選の投票率は過去最低の約27%、それでも10人辞職で公認候補を出せなかったのに引き続き自民党系が過半数という結果でした。いい加減な議員を選んでしまったこと、腐敗まみれの議会を放置してきたことの、これは主権者たる市民の責任ではないでしょうか。
近年、地方議会などあってもなくても同じといった風潮が強まっており、政活費についてもなくせばいいという否定的な意見が多いようです。こうしたうしろ向きの姿勢は、むしろ腐敗し堕落した議員に安住できるありがたい環境を提供するだけ。監視と批判なくして、議会の改革もより良い行政もありません。
市民の意識を超える議会や行政は実現できないし、何かやってくれそうな人物に行政のかじ取りを任せてしまったら痛いしっぺ返しを食らうだけです。例えばアベノミクスで期待をつなぐ安倍自公政権のように、大企業や株転がしなどの大金持ちに利益を与え、庶民にもこぼれ落ちると約束は空約束でした。橋下徹氏による大阪維新もまた、もっぱら公務員たたきと民営化によるうっぷん晴らしに終始しました。
結局のところ、ひとつひとつの事柄を粘り強くあるべき姿に向かわせる以外に道はないのです。そこで政活費をどうするかですが、今あるのは「使途基準」とか「手引き」とかいわれるもので、ガソリンや電話代は2分の1だとか3分の1だとかいった按分、身内に政活費で事務所家賃や人件費を払ってもいいとかいけないとか、実にちまちまとした〝基準〟です。こんなだから、議員が頭を悩ませるのはあれに使ってもいいかこれはダメかであり、およそ〝調査研究に資する〟ものにはなりようがありません。
議員報酬は労働者的賃金ではないとされ、多くの議員は平均的市民をはるかに超える年収を約束されています。それなのに、議員になったら書籍や新聞、デジカメやパソコンを税金で買えるようになるのです。事務所用と自宅用、さらに移動用のパソコンに政活費支出を認めろ、と言ったりするのです。
議員は口を開けば選挙にカネがかかると言いますが、それはカネをかけた選挙をやっているということにすぎません。それに、選挙時のポスターや宣伝カーの費用等は選挙公費支出で過大な額が与えられるのだから、議員活動はすべて報酬で行うのが筋でしょう。
ということで結論はおのずと明らか、政活費の支出は調査研究のみに限ればばいいのです。そうなれば、議員さんたちもしっかりした調査や研究を企画するでしょう。そう確信的に言い切りたいのですが、その前に惰性だけで議員を職としてやっている連中の一掃を! (晴)
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「エイジの沖縄通信」(NO.33) 第2次普天間爆音訴訟判決、米軍追従司法!オスプレイ被害も認めず!
11月17日(木)の第2次普天間爆音訴訟判決については、広く報道されている。
那覇地裁沖縄支部の藤倉徹也裁判長は、戦後71年間も米軍機の爆音を浴びている宜野湾周辺住民の願い「米軍機差し止め請求」を棄却した。
今回の第2次普天間爆音訴訟では、米軍普天間飛行場周辺の宜野湾市や北中城村や浦添市などの住民3417人が原告人となった。2002年の第1次訴訟の原告人は390人だったので、原告人は10倍近く増えたのだ。
その第1次訴訟でも、米軍機の飛行差し止めは認められず、原告人に約3億6900万円を支払うよう国に命じた判決が出ている。
①「第三者行為論」という逃げの判決
藤倉裁判長は「国は、普天間飛行場における米軍航空機の運航などを規制し、制限することのできる立場にない」として、他の基地爆音訴訟と同様な米軍の運用に日本の法支配が及ばないとする「第三者行為論」を今回も採用。
実際日本政府が米軍基地を提供しながら、基地被害に対し、当事者ではなく第三者であることを根拠にした責任逃れの主張であり、全国の基地爆音訴訟もすべてこの論理の判決である。
ところが一方では、原告の被害が受忍限度を超えていると認定し、過去分の損害賠償合計24億5826万円の支払いを国に命じた。
素人からみれば、まったく訳のわからない矛盾した判決内容だ。「米軍機には国の支配が及ばない」として請求を棄却し、一方では「違法な被害が漫然と放置されている」として損害賠償を認める内容である。
米軍に米軍機の飛行を止めろとはとても言えないが、基地の住民は被害を受けてかわいそうだから、金だけは出してやるかという事か。
この事について、弁護団の新垣勉団長は「違法な爆音の存在を認めながら、司法が是正する手段を持たないという不条理に怒りがある。当然控訴することになるだろう」と述べている。また、島田善次原告団長も「憲法が上か、安保が上かを問う訴訟だった」と述べ、本判決が日米安保条約を上位に、基本的人権を保障する憲法を下位に置いたことに怒り「失望した。納得出来ない。今後も飛行差し止めを求めて弁護団と力を合わせて闘っていく」と決意を述べている。
米軍基地を抱える住民が爆音訴訟を起こしたのは、1976年に横田基地と厚木基地の周辺住民が最初である。その後、嘉手納、普天間、岩国でも同様な訴えがなされている。なお、自衛隊の航空基地を抱える小松でも爆音訴訟がなされ、こうした基地騒音訴訟は40年も続いている。
さらに、今回の判決で許せないのがオスプレイによる具体的被害について「増大したと認めるに足りる証拠はない」とオスプレイの騒音と低周波被害をまったく無視したことだ。
②オスプレイの「騒音と低周波」被害について
2012年10月、沖縄すべての県市町村全部がオスプレイ配備に反対運動を展開しているなか、安倍政権はオスプレイを強行配備した。その後、沖縄各地でオスプレイの「騒音と低周波」の影響で心臓病でペースメイカーを抱えた人や保育園の園児が泣き出すなどの様々な被害が各地で起こっている。
米軍普天間飛行場に駐留するオスプレイは、毎朝伊江島や高江やその他の訓練場に出かけ飛行訓練を繰り返し、夜間普天間飛行場に戻ってくる。
地元の宜野湾市民は毎日オスプレイの騒音をまともに受け、次のように述べている。
「地響きのような音を聞いているうちに、頭痛と吐き気に襲われた。風邪でもないのに2回も嘔吐した」「飛行やエンジン調整音がひどく、学校の授業に支障が出た」「今日はたまらず市役所に電話した。最近はただでさえ夜間訓練がひどい」等など。
南進入路近くの公民館近くの民家の車の防犯ブザーが4~5回誤作動し、けたたましい音が鳴り響き、住民は「基地で何か事故でも起きたかと思った」と。防犯システムの会社関係者は「低周波音には特に反応しやすい。バイクはともかく、航空機で誤作動というのは初めて聞いた」と述べている。
オスプレイの訓練が一番激しい伊江島で異変が起こっている。
「酪農家で乳牛3頭が早産し、母牛2頭が死んだ。オスプレイの騒音や低周波が原因ではないか」と指摘。一般的に出産前の家畜は神経質になり、環境の変化に敏感という。
この酪農家は伊江島補助飛行場のフェンスから約600メートルの位置にあり、飛行場に大変近い。1週間の間にオスプレイが少なくとも100回以上の離着陸訓練をしていると言う。
また、海兵隊キャンプ・ハンセン近くの宜野座村松田でも、ニワトリに異変が起こっている。
「オスプレイが夜飛びと、必ず殻のないぶよぶよの卵が交じる。夜のうちに殻を作れないから」と。ニワトリはさらに音に敏感で「鶏舎内にいるニワトリがオスプレイが飛ぶと一斉に暴れ出す。お互いに、あるいはかごに体をぶつけ、血を流すものもいる。衝撃で、産んだばかりの卵が割れる」と言う。
この養鶏場からわずか2キロほどの地点に空軍ヘリが墜落。「オスプレイも元からいる米軍ヘリも、いつどこに落ちるか分からない、そんな物の下で、僕たちもニワトリも、いつまでもビクビクして暮らしてはいられない。立ち上がらなければ」と言う。
また、今問題になっている東村高江のオスプレイ・パッド建設のヤンバルの森でも、国の特別天然記念物ノグチゲラにも異変が起こっていると言う。
「オスプレイが飛来してからは、ひなは巣穴にこもり、鳴き声も出さない。親鳥も巣に姿を現さなかった」と言う。高江では、3~6月はノグチゲラなどの野鳥の繁殖期のため工事を中断している。この事について「工事を中断するのだからオスプレイの飛行も中断すべきだ」と指摘する。
本土では、このようなオスプレイの「騒音と低周波」被害のことがほとんど報道されていない。(富田 英司)
安倍政権の「働き方改革」の幻想を打ち破り、働く者の自主的運動を推し進めよう!
私たちの働き方をめぐる様々な問題(過労自殺や過労死、非正社員らの貧困、介護離職……。)が深刻になるなか、安倍政権は「働き方改革実現会議」を9月に立ち上げました。
実現会議が扱うテーマは、厚生労働省の審議会などで話し合われながら、労使の利害が対立してきたものが多いが、このままでは議論の先送りが続くとみて、政権は実現会議を舞台に議論を進め、年度内に改革の実行計画をまとめる方針だ。
● なぜ今、「働き方改革」なのか。
政府は6月に閣議決定した「ニッポン1億総活躍プラン」で、「名目GDP(国内総生産)600兆円」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」という三つの目標を掲げた。大規模な金融緩和と財政出動を柱とするアベノミクスの行き詰まりが指摘されるなか、少子高齢化による将来不安を減らして消費や投資の拡大につなげる狙いがある。
目標実現に向けて「働き方改革」を最も重要な手段の一つと位置づける。働き方を変えることで、子育て世代の男女や高齢者の就労を促す。効率よく仕事をすることで労働生産性を向上させ、賃上げにつなげる。そうすれば消費は拡大し、GDPは上昇。出生率も改善する――。政権はこんな「成長と分配の好循環」のシナリオを描いてはいるが、働く者の立場の向上と言うより、企業活動の活性化のためのアベノミクスの政策が主目的である以上、限定的にならざるをえないであろう。
● 「働き方改革は、社会問題であるだけでなく、経済問題」??
『「働き方改革は、社会問題であるだけでなく、経済問題です」。首相は9月の実現会議の初会合でそう強調し、具体的な改革テーマを9項目示した。その方向性は大きく分けて、(1)働く人の能力を最大限に生かす(2)働きやすい環境をつくる――の二つだ。
(1)の狙いは、労働生産性を向上させて企業が稼ぐ力を高め、賃上げを後押しすること。(2)の狙いは、多様な働き方を選べるような労働環境を整備して、働く人を増やすことにある。
9項目の中には、(1)(2)の双方に関係するものもあるが、主に(1)に関する項目のうち最大のテーマが「同一労働同一賃金」。正社員と非正社員の賃金格差を今よりも縮めるための改革だ。』
● 安倍政権の「同一労働同一賃金」とその限界
「非正規(労働)という言葉をこの国から一掃する」。安倍晋三首相自らこう宣言し、働き方改革の重要テーマの一つに「同一労働同一賃金」が急浮上した。正社員と非正社員の待遇格差の是正を目指す改革だが、なぜ今、「同一労働同一賃金」なのか。
パートやアルバイト、派遣といった非正社員の比率は上昇傾向が続き、いまや働き手の4割近くを占める。正社員と同じような仕事を担う人も多いが、パート労働者の賃金水準はフルタイム労働者の6割弱にとどまるなど、欧州諸国と比べて格差は大きい。
バブル崩壊後の1990年代以降、企業は人件費を抑えるために非正社員の比率を高めた。正社員の職を望んでも得られなかった「不本意な非正規雇用」が若者を中心に増え、稼ぎ頭が非正社員という世帯も珍しくなくなった。旧民主党など野党が批判を強めるなか、安倍政権としても、非正社員の処遇改善を進める姿勢を打ち出す必要があった。経済の好循環をつくるには、非正社員の賃金水準を底上げし、消費拡大を促すことが欠かせないという事情もある。
正社員と非正社員の待遇差については、ガイドラインを年内にもつくり、その後、必要な法改正にも取り組む構えだが。合理的な待遇策を作るとは、待遇策を基本的に認め、差別化の定着・温存である。
● 政権の政策を利用して、働く者の自主的な運動を
消費や投資の減速は、企業の利益を拡大するために、今まで企業が勧めてきた非正規労働の拡大と低賃金化や長時間労働などによって持たされたものであるから、企業側の譲歩を引き出すためにはそれに見合う法人税の削減など説得策をしなければできないことであり、その為の財源は国民全体が負わなければならないというジレンマがあるから、政権は私たちの働き方をどう変えようとしているのか首相主導の改革が進むかどうかは注目を集めるところだが、私たちはこうした安倍政権の政策をタダ見ているだけではその限界内に留まるだけで、搾取され続けるでだけであろう。。
ここ数年、非正社員の待遇改善を目指す法改正は徐々に進んできた。たとえば、2013年4月に施行された改正労働契約法の20条。この条文は、有期雇用で働く人と正社員の労働条件に不合理な格差があってはならないと定める。これを武器に、格差是正を訴える人たちも出てきている。
こうした安倍政権の政策を利用して、働く者の自主的な運動を作り出していかなければならない。(真野)
色鉛筆・・・B型肝炎ワクチンは必要性も安全性もない!―コントロールしているのは製薬会社だ―
子どもの予防接種で10月から0歳児を対象にB型肝炎ワクチンが定期接種になったが、 の表を見ると日本小児科学会が推奨する予防接種の種類とスケジュールに驚く。今回定期接種になったB型肝炎ワクチンを生後2ヶ月から1歳までに3回接種すると、1歳になる前に5種類13回の定期接種になり任意接種を含めると15回以上接種することになる。1歳までの赤ちゃんにこんなにたくさん打っても大丈夫なのだろうか?さらに7歳までに定期接種だけで8種類20回以上というのも驚き、薬という異物を体に入れて体のどこかに異常が出てこないのだろうかと心配になる。1歳までの赤ちゃんに13回も接種を受けさせるのはとても大変なことで負担軽減策として、両腕や太ももなどに複数のワクチンを打つ「同時接種」を日本小児科学会が勧めているというのだからまたまた心配になる。将来の肝硬変・肝臓がんを予防する為に0歳児の赤ちゃんにB型肝炎ワクチンの接種が必要なのか疑問を感じ、あまりにも接種の回数が多くて安全なのか調べてみた。
私は以前、インフルエンザの集団接種の中止を求めて運動をした時に知った「ワクチントーク全国」の資料を取り寄せた。ワクチントークの運動は、親・医者・行政担当者・教師・予防接種被害者、その他だれでも参加でき、病気や予防接種について共に考え情報を交換し、必要があれば行動していこうと、1990年にスタートして地道に運動を続けている。取り寄せた資料の中に「臨床の現場からワクチンを考える」本間真二郎医師の報告を読んで頷いてしまった。「定期接種は、市町村が勧奨する(勧める)予防接種で公費負担なので一定期間無料で受けられ、任意接種は、個人が医療機関で任意に受けるもので有料となる。共に義務ではなく、受けるか受けないかは親(保護者)が決めてもよいことになっているが、ほとんどの人(99%)が正しい知識もないまま半強制的に受けている・・・なぜか?国、厚生労働省、市町村、保健所、専門家、医師、マスコミが一体になってワクチンの接種を強力に勧めているため、これらをコントロールしているのが製薬会社(ワクチンメーカー)である」やはり、製薬会社が儲けるためにあらゆる機関を巻き込んで予防接種を推進させているのだ。定期接種は自治体から必ずお金が入るのだから止められないわけだ。過去にインフルエンザ集団接種被害が起こってワクチンが売れなくなると、製薬会社は次から次へと新しいワクチンを開発したり輸入をしている。2010年から接種が開始された子宮頸がんワクチンも、子宮がんを予防するためには必須であるような説明をして接種が始まり、自治体や医師達に勧められて疑いもしないで接種すると、健康だった多くの少女たちが苛酷な副作用で今も苦しんでいる。予防接種は受けるのが当たり前だと思って娘に勧めた親としては悔やむにも悔やめなく、7月に国とワクチンメーカーの責任を問う集団訴訟を起こした。予防接種で副作用被害が起こっているのに今度はB型肝炎ワクチン定期接種にするとは、どうして同じ事を繰り返すのだろう?予防接種を勧める自治体や医師達は良心というものがないのだろうか?
そして、ワクチントーク全国の代表で母里啓子医師は「B型肝炎は、B型肝炎ウイルスの感染が原因で起こり、血液・体液中のウイルスが他人の血液・体液中に入らなければ、感染は成立しないのだから母親の抗体検査をして、ウイルスを持っていれば赤ちゃんに接種する。持たない母親から生まれた赤ちゃんへのワクチン接種は、現在の日本ではまったく不要である」と。感染が持続すると肝炎から肝硬変や肝臓がんへ進行していく恐れがあるから予防接種が必要だという説明は間違っていることがわかり、全ての赤ちゃんにワクチンを接種しなくても必要のある赤ちゃんだけ接種すればいいのだ。
また、ワクチントーク全国の事務局の古賀真子氏は「B型肝炎ワクチンの同時接種でも死亡例が発生している。新しいワクチンがふえれば同時接種もふえ副作用の発現率も増加するが、予防接種基本方針部会でも同時接種についての議論は深くなされていない」と。やはり、同時接種というのは安全ではなく、厚労省の部会のいい加減さもわかった。副作用被害がでないことを願いたい。
さらに古賀氏は「熊本の震災の影響でB型肝炎ワクチンの生産が間に合わず、子ども用が足りないので大人用を2分割して2名に使うか、2分割し残りは廃棄か、そのまま使ってしまう事が考えられ危険である」と。なんと恐ろしい実態!その実態を裏付けるような新聞記事があった。『予防接種ミス年々増加 15年度に6168件。最も多かったのは次の接種までに空けなければならない「接種間隔の間違い」で2991件。接種回数を誤る「不必要な接種」は925件、「期限切れワクチンの使用」は671件、「対象者の誤認」も487件あった』(11/2朝日新聞))回数が多いからミスが起きていることがはっきりわかる。B型肝炎ワクチンの接種は、必要性もなく安全性もなく、供給体制にも問題があることがわかり、このことを周りの人たちに広めていくのはなかなか手ごわいが地道にやっていこうと思う。(美)
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