ワーカーズ582号(2018/5/1)
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腐敗堕落の安倍政権を 労働者の大衆行動で打倒しよう!
政府主導の「働き方改革」は全企業のブラック化だ
均等労働と実質時短をかちとろう、ストライキの復権を!
◆「裁量労働制」「残業代タダ」法で長時間労働と搾取の強化を狙っている
労働分配率は、12年の69・2%から16年の64・7%に下がっています。他方で企業の内部留保は16年度で406兆円にも膨れあがり、5年間で102兆円も増えてます。こんな事態は、ストライキなど闘いで突破するほかに正道はありません。企業と政権は、さらに「働き方改革」と称して、「法案の資料」をねつ造までしてさらなる収奪の制度を手中にすべく搾取の強化を策しています。いま国会で審議されている〝働き方改革法案〟、中身は、残業時間の罰則付き上限規制や裁量制労働時間の適用範囲拡大、それに高プロ法案(=残業代ゼロ法案)などが抱き合わせにされたもの。絶対に阻止しましょう。
◆モリカケ問題は、戦後民主主義制度の機能停止を象徴
戦後の議会制民主主義制度がなんと脆弱で欺瞞的なものになってしまっていることを示しました。官邸と官僚は、国民にも議会にも秘密裏に反動的な政治の実行を策していたのです。森友学園は地元議員による告発がなければ、安倍政権や軍国的・復古的日本を称賛する初等教育機関に成長していたでしょう。安倍政権はそれを待望し画策しまた官僚にも圧力をかけたのです。また、加計獣医学部は、安倍首相の「腹心の友」を利用しつつ細菌・化学兵器研究の将来的拠点作りの可能性が高いでしょう。「日本を取り戻す」「戦後体制の転換」を目指す危険なはかり事でした。森友学園はとん挫しましたが、加計獣医学部は開校を許してしまいました。長期の監視が必要です。
◆相次ぐ政府・自民党からのセクハラ(擁護)発言に見る権力者たちの腐敗
日本における人権状況、女性の権利状況は年々悪化しています。しかも、それを扇動するかの人物が――切りがないので名前を枚挙しませんが――、政府閣僚・官僚や国会議員であることは深刻な事態です。抗議し、抵抗し人権を守り拡大するために闘いましょう。
◆安倍政権の外交無策は「北朝鮮問題」に象徴
「世界を俯瞰する外交」を掲げた安倍首相ですが、外交はことごとく失敗したと結論付けられます。象徴的なのは「北朝鮮政策」です。中朝の脅威を過度に煽り米国に軍事圧力をし「支援」し戦争も辞さない対応をつづけました。しかし、安倍政権の外交は、在日・西太平洋の米軍を利用する軍事的な中朝包囲網戦略でしたが、事態は米韓・中朝がことごとく妥協と和平を望みそれぞれの首脳会談が設定されました。かくして安倍首相のみ拉致問題、半島非核化、東アジアの和平(朝鮮戦争の終結と平和条約)等に何ら寄与せず、むしろ逆行するばかりです。とはいえ、米韓、米朝対話実現も、核兵器の削減やいわんや廃止ではないのです。過大な幻想を持つことは出来ません。地球規模での核の削減と廃止こそが我々の進む道です。
◆自衛隊・防衛省の危険な秘密主義と日米軍事同盟の強化
「動的日米防衛協力」という文書を一部隠ぺいしかつ改ざんまでして、国民の目から隠していました。内容は日米基地共同使用、共同訓練、共同作戦、南西諸島軍事基地化・・軍事大国化――米軍と一体化しながら――を鮮明に示しています。安倍首相にとって東アジア和平などは眼中になく、辺野古基地をはじめ奄美・宮古・石垣島などへの基地建設と強化をすすめており戦争準備に余念がありません。安倍政権をさらに追い込みましょう。(文)
北朝鮮の最近の動きと米朝会談の今後の行方
昨年末以来、米国と厳しい緊張関係にあった北朝鮮の動きが急である。平昌オリンピックでの南北融和ムードの拡大以降、3月5日に韓国の鄭義溶国家安保室長たちが平壌において金正恩から手厚くもてなされて、その翌日の夜には南北合意が発表された。他方で北朝鮮と対するトランプは、この合意に対して「北朝鮮の非核化が前進したようだが、あんまり希望を持つな、希望は持てない」と発言して、早々と南北融和ムードを牽制した。
さらに3月8日には鄭義溶特使が訪米してホワイトハウスでトランプ大統領、ペンス副大統領、マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官に南北合意の内容を報告した。そこで確認された南北合意により、4月末に文在寅韓国大統領が北朝鮮の金正恩委員長と板門店で会談することが決まった。韓国は米国と相談なしには何事も決められないのである。
こうして米韓共同合同軍事演習が縮小され、南北融和ムードが基となって北朝鮮問題も話し合いで解決するとの希望的観測が拡大していった。だが同時にアメリカでも人事に注目される動きがあった。3月13日にトランプがティラーソン国務長官を解任して、ポンぺオCIA長官を就任させた。アフリカ訪問中のティラーソンには何の事前通知もなかった。さらにトランプは3月23日にマクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官を解任して、ボルトン元米国国連大使を後任にすると発表したのである。
かくしてトランプは南北融和ムードにたっぷりと水をかけた。すると3月25日から28日の間、北朝鮮の金正恩が電撃的に北京を訪問して、習近平と会談を行った。この会談中、金正恩は習近平の言ったことを一言も聞き逃さないようにと必死にメモを取りながら聞いていたという。この動きを「世に倦む日日」の田中宏和氏は、「金正恩は中国の核の下に入った」と評価している。私も金正恩が中国に庇護を求めたものだと考えている。
また米朝首脳会談準備でアメリカ側の指揮を取るポンぺオが4月上旬に北朝鮮を極秘に訪問して、金委員長と会談を持ったことが報じられた。このことから北朝鮮側が米朝首脳会談の実現に真剣に取り組んでいることが分かる。そして韓国も北朝鮮との戦争状態を終結して平和条約を結ぶ方向で動いている。ここで重要なのは中国と米国の意向だ。あの朝鮮戦争では中国と米国がそれぞれ北朝鮮、韓国に味方をして多くの犠牲を払ったからだ。
ポンぺオの北朝鮮訪問から約1週間後、アメリカ政府高官たちは北朝鮮政府の高官たちが金正恩は非核化の可能性について交渉したいと望んでいると発言した。これは米朝首脳会談を前にして米朝両政府の間に新たなチャンネルが出来たこと、トランプ政権は北朝鮮政府が首脳会談実現に向けて本気だとの確信を持ったとの兆候を示すものである。
4月17日、トランプは自身が所有するリゾートであるアー・ア・ラゴでの安倍総理との会談の途中、「私たちは極めて高いレヴェルでの直接交渉を行っている、(それは)北朝鮮との間で極めて高いレヴェルでの交渉だ」と述べて、「北朝鮮は交渉を継続し、離脱していない。韓国は北朝鮮と交渉を行っており、戦争状態を終わらせるために首脳会談を行う計画を持っている。私はそれらが上手くいくように祈っている」とも発言している。
またトランプは朝鮮戦争を正式に終わらせるための南北首脳会談の計画について「祝福があるように」と述べた。安倍総理との2日間の首脳会談において北朝鮮との急速な事態の進展に対するこのトランプの肯定的な評価は、安倍総理を大いに驚愕させたであろう。
さらに中国と韓国は直接交渉と平和条約締結の方向で動いている。北朝鮮もこの方向で進んでいる。一方、日本は「交渉のための交渉はしない」として経済制裁など圧力を強化して北朝鮮の屈服を追求してきた。だが米国の北朝鮮との交渉は圧力一本槍ではない。米国は硬軟二つを使い分けて、米国に有利な政治状況を切り開こうとしてきたのである。
日本は北朝鮮に対する圧力強化一辺倒の嫌われ役であり、加えて米国は日本との二国間経済交渉で日本の対米黒字を削減せんとする。だが安倍総理は唯々諾々と呑むだけの惨めな存在でしかない。これを隠すためだけに日本では安倍総理の訪米の成果が声高に語られている現実がある。安倍総理の官房機密費に汚染されいてない海外メディアは「安倍首相はトランプから見捨てられた」と日米首脳会談を酷評しているのである。これが真実!
4月20日、朝鮮労働党の中央委員会総会が開かれ、金正恩は「核開発と運搬攻撃手段の開発がすべて行われ核の兵器化の完結が証明された状況で、いかなる核実験も中長距離、大陸間弾道ミサイルの発射実験も必要なくなり、北部の核実験場も使命を終えた」と述べて、核実験と大陸間弾道ミサイルの発射実験を4月21日から中止し核実験場を廃棄するとの自分の考えを表明した。だがこれはあくまで国内対策の向けの「勝利発言」である。
だが確認できるように核保有の立場に変わりはなく、核やICBMの実験を再開する余地も残した。そして満場一致で採択された決定は「朝鮮半島と世界の平和と安定を守るために周辺国や国際社会との緊密な連携と対話を積極的に行う」とする文言も盛り込まれ、国際社会と協調する姿勢をアピールし、更に北朝鮮は今回の決定を5年前に金正恩が中央委員会総会で打ち出した核開発と経済の立て直しを並行して進める「並進路線」の「勝利宣言」と位置づけ、今後は経済の立て直しに全力を挙げる方針を強調したもののである。
つまり決定は「臨界前核実験と地下核実験、核兵器の小型化や運搬手段の開発を次々と進め、核の兵器化を実現した」と主張した上で「わが国に対する核の脅威や核の挑発がない限り核兵器を絶対に使わず、いかなる場合にも核兵器と核技術を移転しない」とする以上ではなく、核保有を廃棄するでもない。北朝鮮は過去にも核開発計画の放棄や弾道ミサイルの発射凍結を表明しながら再開した経緯があり、今回も確かにその余地を残している。
このように北朝鮮の「非核化」は米国の求める非核化とは大きく異なる。米国は北朝鮮の核兵器に対する姿勢として、その廃絶が「最終的、不可逆的、検証可能なものであるべし」としている。これがトランプの、今日の米国政府の立場である。そしてそれは北朝鮮の金正恩には受け入れ難いものであり、まさに最後通牒にも等しいものなのである。
つまり米国の非核化の提起は現状の北朝鮮に対する最後通牒である。これが本当の核心である。実際に最後通牒を突きつけられた金正恩が何時までこの立場を守り通せるであろうか。ここで今日本人に分かり易い歴史的なアナロジーを紹介しておけば、金正恩体制の真実の姿は太平洋戦争開戦直前の日本の姿そのものである。
米国は1941年5月から始まった日米交渉の場において、日本に対して「中国から手を引け、日本軍の中国への侵略軍を全部撤退させろ、さらに日本の企業や民間の日本人も中国から引き上げて日本に帰れ」と要求した。これがハル・ノートのハル四原則と呼ばれていたものである。当時の日本にとっては、この米国の要求は無理難題であった。
そして日本は対米開戦までの約6カ月厳しい交渉を続けた。その間の緊迫した交渉と今の北朝鮮と米国との交渉はまさに同じものだ。金正恩はトランプのポンぺオとボルトンの人事を知り、トランプの本気度を認識してまさに愕然としたことであろう。要するにトランプは韓国の鄭義溶特使と仲の良いマクマスターを北朝鮮爆撃をさせない方に動く人物だと認識して首を切り、ボルトンをムーニー摘発係に抜擢したとの副島説を支持する。勿論、4月訪米の安倍総理は、最初からこの厳しい交渉ではほとんど蚊帳の外にいたのである。
この間、トランプ大統領は諸国に鉄鋼とアルミの製品の輸入に対して関税をかけることを発表した。鉄鋼に関しては25%、アルミは10%等々。米国政府も保護貿易に舵を切った。それにヨーロッパが強く反発する。カナダ等も反発する。つまり各国の米国への鉄鋼やアルミ製品の輸出が打撃を受けるからだ。これでトランプと喧嘩になり、大統領直属の委員会である国家経済会議の自由貿易論者であるコーン議長は辞めてしまった。
米国にとって保護貿易主義で高関税をかけて狙う相手は中国である。中国はそれに反発してWTOに提訴しつつ報復として米国に関税をかけると発表したが、日本も韓国も形だけ反対すると言っているだけ、自由貿易主義を守れと言うだけで何らの対抗策もない。
このようにトランプはただ北朝鮮と闘うだけでなく、米国内のヒラリー派や中国・ロシア・中東でも闘っている。しかし着実に北朝鮮は追いつめられつつあると私は考える。
追いつめられた金正恩は金体制の保証や経済制裁の解除などの見返りを必死に引き出そうと、今後開催される米朝会談の主導権を握ろうと様々な手を打って来ると予想せざるを得ない。だが最後通牒を突きつけられている金正恩は実に苦しい立場にいるに違いない。また必死であることも間違いないことである。次にはどんな奇手が飛び出すであろうか。
私には北朝鮮で隔絶した生活を送る「金王朝」の3代目金正恩の姿とイタリア名画の『山猫』・『副王家の一族』の主人公である貴族の姿とがだぶって仕方がない。イタリアの貴族たちは時代の波に激しく抗いながらも、時代に合わせて自らを換えていく必要に迫られつつ用意周到に自らの保身と安泰を追求して、時代に取り残されることなく生き延びてきたのであるし、今後とも生き延びるであろう。この強かさが貴族の真骨頂である。果たして金正恩にこのイタリア貴族の強かさとずる賢さがあるであろうか。これが問題である。
一方の金正恩は追いつめられつつあり必死なのだが、他方のトランプは余裕がある。なぜなら何時でも交渉の席を立つとトランプが今から宣言しているからだ。その意味においてまさに予断を許さない更に一段と厳しい展開がこの5月から6月にかけてあるだろう。今後とも北朝鮮情勢からは目が離せない。 (直木)
《朝鮮半島問題》まずは朝鮮半島の安定化を!――危機から交渉へ――
相互の挑発や〝売り言葉に買い言葉〟が飛び交った状況が一転し、朝鮮半島をめぐる情況は様変わりした。南北朝鮮の首脳会談が開かれ、その後は米朝首脳会談だという。
一連の首脳外交がうまく進展し、休戦協定から平和協定に改定することが出来れば、朝鮮半島に残った冷戦構造は劇的に終結する。そんな可能性を秘めた首脳会談だが、行き詰まったり失敗すれば、朝鮮半島危機が再来する。
今回の一連の首脳会談がどんなかたちで着地しても、新たな火種を抱えたものにしかならないだろう。とりあえずは半島の安定化は重要だし、超大国による軍事力にものを言わせた武力行使も避けなければならない。その先の、核抑止論などを一掃した善隣友好関係づくりは、東アジア各国の労働者階級と民衆の共同作業ではじめて実現できる課題なのだろう。
◆安定化かそれとも?
南北朝鮮の首脳会談が4月27日に行われる。併せて米朝首脳会談も6月に予定されている。
「 米国が過去に体験したことのない最大の苦痛を与える」「超強硬対応措置」、「北朝鮮の完全破壊」「小さなロケットマン」…………。これまでの金正恩委員長の大言壮語、トランプ大統領による子供じみた返答を聞かされてきた情況が一転し、北朝鮮の非核化や休戦協定の平和協定への切り替えなどいくつもの可能性がとりさだされている。私たちは、朝鮮半島危機に対して、交渉で解決すべきだし、軍事衝突など絶対にあってはならないと考える。
これまでの米国や日本の立場は、北朝鮮が核兵器と弾道ミサイルの開発・保有を放棄し、非核化せよ、というものだ。しかし、米軍が日本海や東シナ海の制海権や制空権を握り、通常兵器や核兵器で北朝鮮を焦土に帰すことが可能な軍事力を保有し続け、他方で北朝鮮にはそれらを放棄することを受け入れさせるというのは、あまりに一方的な支配・服従の押しつけというものだろう。
北朝鮮の核保有は基本的に防衛的なもの、金体制の防衛が目的だ。米国などへの先制攻撃は、まずあり得ない。反撃され、北朝鮮が焦土と化すからだ。それだけ圧倒的な軍事力の格差がある。
北朝鮮のそうした立ち位置は、イラクでフセイン体制が米国の軍事侵攻で瓦解させられたことで、さらに深まった。攻撃させないために、生き残るために米国本土攻撃も可能な核ミサイルを持つ。これが国内的にも対外的にも、金正恩体制保持のための大前提だ。
そんな北朝鮮、これまで取ってきた軍事超大国の米国に軍事力で対抗するという立場も、私たちとしては支持しないし、できるはずもない。労働者や民衆の武器は、連帯した大衆的な行動によって政府や国家に迫るものであって、北朝鮮の態度は、私たちのこうした姿勢と相容れないからだ。
今回の首脳会談の焦点は〝非核化〟だが、〝北朝鮮の非核化〟か、それとも〝朝鮮半島の非核化〟かで、双方の思惑はずれている。米国や日本は、北朝鮮が一方的に非核化を受け入れることを迫っている。が、北朝鮮の要求は金体制の承認が第一であって、その保証となる休戦協定の平和協定への切り替えなどが加わる。
こうした北朝鮮にとって核兵器と大陸間弾道ミサイル保有は、北朝鮮の体制の生き残りをかけた数十年にわたる延命策だったわけだ、簡単に放棄はしないだろう。
他方、米国にとっては、これまでの核拡散の阻止という核兵器を巡る米国中心の世界秩序の維持のためという事情から、自国本土への核兵器による現実的な脅威の除去という、差し迫った危機対処に変わってきている。
それにトランプ政権の現状を反映して、中間選挙や自身の再選戦略のための政治的成果の演出という政局がらみの課題にもなっている。
首脳会談の着地点は、現時点では不透明だという以外にない。
◆金正恩の戦略と掛け
今回の米朝会談に向けた北朝鮮の思惑はどんなものだろう。
日米などをはじめとした経済制裁の効果があった、とする考え方を安倍首相などが表明している。確かに経済制裁の効果はあったとみられる。
しかし北朝鮮はかつての様な計画経済の下での国家による配給制の社会ではない。いまでは9割の人が配給を受けず、闇市場も含めた非公式な市場型経済の社会で暮らしている。自力更生を迫られた企業も人々も副業を持ち、才覚のある人は個人商店を経営したり高利貸しになったりするという。経済制裁の影響は大きくとも、配給品が滞って国民生活が成り立たなくなるという事態にはなっていない。
むしろ北朝鮮が交渉路線に転換したのは、北朝鮮が獲得してきた軍事的到達点のレベル自体にある。すなわち、北朝鮮が核保有国となったこと、それに米国本土まで届く弾道ミサイルの保有が目前に迫っていたからだ。米国に対して北朝鮮の脅威が現実のものになった結果として、米国による先制的な軍事攻撃の可能性もまた高まり、北朝鮮としてもなんとしても米国の攻撃を避けたい事情もある。
米国民にとって、北朝鮮の核開発が米本土への現実的な脅威にならない限り、韓国や日本、それに20万人以上ともいわれる在韓米国人に大きな被害が出る北朝鮮への軍事攻撃を支持することはない。が、米国本土が攻撃される可能性が高まれば、軍事攻撃を支持するかもしれないのだ。北朝鮮にとっては、それだけ米国による軍事攻撃の切迫性が高まったわけだ。他方では、北朝鮮が米国へ到達可能な核兵器を手にしたことで、米国との本格的な交渉が可能になった側面もある。
北朝鮮が非核化の姿勢を打ち出したと報道されているが、まだはっきりした内容は見えていない。北朝鮮としては段階的な非核化によって、金正恩体制の承認とその保全に資する経済援助を引き出したいのが本音だが、そのためには核保有国としての地位を武器にするしかない。その交渉カードを最初から放棄したのでは、北朝鮮にとって交渉にならない。
他方、米国としては段階的な非核化とかで核攻撃能力を保持されたままでは、これまでの繰り返しで失敗となる。米朝首脳会談の失敗となれば、再び米国による先制攻撃の可能性が高まる。今回の交渉が、戦略なき交渉だと指摘される所以でもある。
◆圧力一辺倒の無力
日本でも、北朝鮮を異常な国だとして小馬鹿にした見方もある。たしかに、強大な米国や周辺国に対して、子供じみた強がりや無謀な瀬戸際政策を繰り拡げるのは、大人に認めてもらいたい悪ガキの様な態度ともいえなくもない。が、北朝鮮をそんなに小馬鹿にしてもいられない私たちの歴史もある。現に、戦前の日本は、「八紘一宇」だとか、「鬼畜米英」「進め一億火の玉だ」「聖戦だ 己れ殺して 国生かせ」だとか、世界から見れば異常な国家の号令に踊らされていた時代もあったのだ。
武力を背景に強大な相手国と敵対しようとすれば、政権や国家としての自己正当化と国策への国民統合のために、自国本位の独りよがりな態度を打ち出すことはよくあることだ。現在の北朝鮮も同じだ。
北朝鮮は戦前の日本と似通っている。当時の日本でも、米国と戦争するのは無謀だという冷静な意見もあった。にもかかわらず戦争に突き進んだのが、戦前の日本だった。時の大国に軍事力で対抗する、そんな国は国内的には強権化・独裁化する以外にないのだ。戦前の日本も軍部や特高が幅をきかす軍国主義の警察国家だった。
その日本はいま、安倍首相を先頭に〝戦後レジームからの脱却〟という戦前回帰の道を歩んでいる。北朝鮮を笑って小馬鹿にできる場面ではないのだ。
問題は過去の歴史だけの話に止まっていない。現在の安倍政権の中でも、かつての戦前と同じように、武力には武力で、といった軍事優先・軍事整合性での対応が露骨だ。たとえば、いまでは世界第二位で、米国に匹敵する経済力を持つに至った中国に対して、安倍政権は、軍事的敵視政策への傾斜を強めている。善隣友好関係づくりは、「中華民族の再興」を掲げる中国の習近平政権も同じだが、安倍政権では不可能だ、ということだろう。
こうした善隣友好関係づくりという課題は、日中両国の労働者階級をはじめとした広範な人々が担うべき歴史的使命なのだろう。
いまはどうだろうか。
北朝鮮への態度で見れば、日本は、敵視、排除、圧力一辺倒に偏りすぎてきたという以外にない。
圧力はうまくいけば屈服や従順を引き出すが、そうでなければ、対立を深め疎遠になるだけで、能動的な働きかけは不可能になる。現に日本としては北朝鮮と直接のコンタクトはとれず、米国の陰で圧力を煽っていただけだった。韓国の文在寅大統領や米国のトランプ大統領が交渉に踏み出した場面では、 自国だけでは何事もできず、米国や韓国の政策転換を追認するだけだった。
日本としては核問題の他、拉致問題という懸案を抱えていただけに、自主的な北朝鮮政策と独自なコンタクトが欠かせなかったはずだ。が、何のチャンネルもないまま、アプローチの余地もなかったわけだ。本来であれば、小泉首相ではないが、安倍首相自ら北朝鮮に乗り込んででも、拉致被害者を日本に連れ帰ることもできたはずだ。米国頼みの圧力一辺倒路線では、そうした行動は取れるはずもない。
◆善隣友好関係づくりへ
なのはともあれ、戦争前夜のような軍事的緊張が切迫した状態が緩和され、朝鮮半島が38度線を挟んだ休戦状態から、南北・米朝関係が安定した平時の状態に到達すれば、私たちとしてもとりあえず歓迎したいところだ。多数の犠牲者を生む戦争を回避できるだけではない。戦時体制や準戦時体制の中では、労働者の国境を越えた連帯行動を拡げることは困難だからだ。朝鮮半島情勢の安定化によって、東アジアの労働者階級は、自分たちの利益と将来の目標のために連携することが可能になる。これは冷戦構造が残った極東アジアにおいては、歴史的な局面打開となり得る。
私たちとしては、極東アジアの安定のために、北朝鮮の非核化はむろんのこと、韓国の米軍基地の撤収と軍事力による威嚇の放棄を要求していく必要がある。それは東アジアの善隣友好関係づくりの土台の整備でもある。
ただそれだけではまだ足りない。今回の朝鮮危機の直接の原因となった核軍縮、核不拡散の問題だ。それには核軍縮の棚上げというNPT体制の欠陥の是正が不可欠であり、それが大前提だ。米国をはじめとした核保有国による核の独占という特権に依存した秩序維持を根本から打破していく必要がある。
現に核不拡散条約に違反し、核保有する国は増えている。北朝鮮もそうだが、イスラエルやインド、パキスタンもすでに核保有国になっている。さらに中東ではイランが核保有の可能性を手にしたままで、対抗するかのように、サウジアラビアも核保有の思惑をちらつかせている。
なぜこんな事態になったかといえば、単純なことだ。米国などによる核独占を認めたNPT体制には核保有国の〝核軍縮なき核独占〟という致命的欠陥がある。だから核拡散の阻止だけを絶対視する主張は、説得力がまるで無いのだ。現にトランプ大統領は、核戦力の見直しで、核兵器の役割の拡大を発表している。ロシアも含め、核保有国は核軍縮に背を向け、核兵器体系の増強すら公言してやまないのが現実だ。唯一の被爆国たる日本の歴代政権も、米国の核の傘に依存し、米国の核戦略の強化を後押ししているのが実情だ。なんたる有様だ、という以外にない。
根本的な善隣友好関係づくりは、やはり労働者階級の連携の力で実現するしかないのだ!(廣)
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読書室 牛久保 秀樹氏・村上 剛志氏『日本の労働を世界に問う ILO条約を活かす道』
岩波ブックレット898
ILO(国際労働機関)を活用して問題を解決できることを知っていますか? 実践活動をもとにILOの基礎知識を紹介する
このブックレットは岩波書店から出版されたもので、2014年5月に63頁の簡便なものです。そして今国会で重要議案の一つだと評価される「働き方改革」法案をどのように評価するかについての必読書でもあります。
そして日本では余り論議されていない国際的な視点を明らかにしている点で、実に貴重なものです。ここで取り上げるのもそのためです。
ブックレットの構成は、以下の通りです。
はじめに
第一章 ILOとは何だろうか
第二章 日本はILOとどう関わっているのか
第三章 日本の労働者はILO条約をどのように活用してきたか
第四章 日本に国際基準を確立するために
おわりに ディーセントワークの時代へ
1919年6月28日に署名されたベルサイユ条約は、「結社の自由、労働生活条件、8時間労働制、週休制、児童労働の禁止、同一労働同一賃金の原則、労働監督制度の確立」を宣言しました。そして国際的な条約や勧告を採択することを目的とした国際労働機関を設置することを定めて作られたのが、ここで取り上げるILO(国際労働機関)です。
このように国際的に権威がある機関ではあるものの、日本の労働者には余りも周知されていない存在がILO(国際労働機関)です。勿論、それには理由があります。
その理由とは、ILO条約は全部で189ありますが、その内日本が批准しているのはたったの49条約、未批准は140にものぼっています。OECD諸国の平均批准率は73ですから、日本の消極的姿勢は誰の目にも明確と言えます。つまり実に75%を批准していないのです。日本は明確に労働後進国なのですが、皆様にその自覚はあるのでしょうか。
その事実を象徴するのが、実にILO条約の1号条約である8時間労働制の未批准です。これが日本の驚くべき現実です。さらに「雇用と職業の面で、いかなる差別待遇も行われてはならない」とする111号条約、公務員の団結権等に関わる151号条約、また解雇規制のための158号条約、さらに「夜業に関する条約」である171号条約、そして「パート条約」である175号条約、以上の核心的な条約が日本では未批准なのです。
今国会ではデータ偽造でケチが付いた「働き方改革」法案が上程されていますが、そこで問題となっている裁量労働制や残業代ゼロなどはILO条約の批准がなされれば全て是正の対象となるものばかりです。私たち労働者がほとんどこの事実を知らないことが大問題なのです。そしてこれが戦後日本労働運動の負の遺産であることを強く認識しましょう。
こうした条約の批准が日本で成されれば、つまり労働規制の国際基準を確立することが出来て、現代日本の日本の過酷な労働環境が目に見えて改善されることは明らかです。
日本の労働組合が闘い取らなければならない目標は明らかです。まずは「働き方改革」に対しては、全世界的な基準でもあるディーセントワークの旗印、つまりそもそもILOが提唱した「人間としての尊厳、自由、均等、安全の面で、男女が生産的な好ましい仕事を得る社会を推進すること」の旗を高く掲げて闘う必要があります。日本の労働者に欠けている、この現実の過酷な労働を人間の尊厳を掲げてディーセントワークに換えていく視点を持つことは、労働組合のめざすべき日常活動の目標としても実に貴重な指摘です。
このブックレットはこうした運動を作り上げる労働組合の実践的な指針としても読めて、かつ手引きとなります。ぜひ皆様の一読を勧めたいと考えます。 (猪瀬)
書籍 「米軍(アメリカ)が恐れた男」瀬長亀次郎の生涯 佐古忠彦著 講談社発行1600円+税金
瀬長亀次郎(せなが かめじろう)さんの略歴です。
生年月日1907年6月10日、出生地 沖縄県豊見城市、没年月日 2001年10月5日
「政治家。沖縄県出身。1923年社会科学研究会での活動を理由に第七高等学校を放校処分。1947年沖縄人民党を結成,米占領政策への徹底した批判を展開した。1952年琉球政府立法院議員となるが,1954年人民党への弾圧を強化した米軍に逮捕され,2年間投獄。1956年那覇市長に当選,危機感を強めた米民政府は市の銀行預金を凍結し融資・補助を打ち切ったが,市民による自発的納税運動が起こった。根強い反米機運に直面した民政府の強権的法律改正により,翌年退陣を余儀なくされ,投獄を理由に10年近く被選挙権も剥奪される。1968年立法院議員に当選,1970年初の国政参加選挙で衆議院議員(人民党)となり,その後日本共産党から立候補して7期連続当選した。1990年健康を理由に引退」。
昨年、カメジローさんのドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」を観ました。映画監督は佐古忠彦さんで、この本の著者でもあります。佐古さんは、TBSのキャスターです。
戦後70年以上経っても、武器や爆弾の破片、米軍基地の問題が残されたままです。終戦直後沖縄に来た米兵について反戦地主の島袋善祐さんは、「これからは、民主主義です、もう戦争はありません。と偉い人は言う。でも、夜になれば、米兵が女を襲いに来るさね。へい、奥さん、姉さんと来るさ」島袋さんは、毎晩のように姿を現す米兵から、どうやって母や姉を守るか悩んでいました。「米軍はマングースと一緒だ」「良くするといって外から入ってきたが、結果は暴行するわ、ジェット機を落とすわ・・・マングースと一緒だ」と島袋さんは言います。マングースは、ハブやネズミを退治するために導入された外来種ですが、ハブ退治よりニワトリやアヒルなど鳥類の敵となり、国の天然記念物ヤンバルクイナまで食い荒らしました。
こうした戦後の中カメジローさんは、政治活動を始めます。女性が米兵に暴行されている、栄養失調で倒れる人が相次ぐ、これらについて米軍は、「そちらに油断があるんだろう」「いったい、戦争に負けたのは誰なのだ。生きておればそれでいいではないか」などと言っていました。植民地支配の状況にカメジローさんは、「戦争は終わったが、地獄は続いていた」「この連中は味方ではない」と言っています。
1947年7月20日、カメジローさんは沖縄人民党を設立します。平和と民主主義、自治と人間らしい暮らしを勝ち取ることを目指しました。
カメジローさんの演説は、聴衆の心をつかみました。「一握りの砂も」「1リットルの水も」「ぜーんぶ、私たちのものだ。地球の裏側から来たアメリカは、泥棒だ。だから、みんなで団結して負けないようにしよう」
そしてカメジローさんの今でも語り継がれている名演説、「この瀬長ひとりが叫んだならば、50メートル先まで聞こえます。ここに集まった人々が声をそろえて叫んだならば、全那覇市民にまで聞こえます。沖縄70万人民が声をそろえて叫んだならば、太平洋の荒波を越えてワシントン政府を動かすことができます」
1952年4月1日、カメジローさんと米軍の闘いの原点ともいえる出来事が起きました。「琉球政府創立式典」が行われ、琉球政府は体裁こそ住民の自治機関ですが実際は、米軍の指揮下にありました。式典の舞台には星条旗と並んで将官旗がはためいていました。カメジローさんは直前の立法院議員(現在の県議会議員)選挙でトップ当選を果たし、この式典に参加していました。式典の最後に宣誓が行われ他の議員が脱帽し直立不動の中、カメジローさんはただひとり立ち上がりませんでした。宣誓拒否です。カメジローさんは、戦時国際法に「占領された市民は、占領軍に忠誠を誓うことを強制されない」という条文があり、これを運用しました。
カメジローさんの那覇市長としての奮闘、国会議員として、佐藤栄作首相(当時)との国会質疑など、とても感動的です。
カメジローさんの闘いが、今の沖縄の辺野古新基地反対などの闘いにつながっていると思います。読者のみなさんにこの本をお勧めします。 (河野)
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憲法記念日に考える 「隠蔽・改ざん・捏造」の安倍首相に「改憲」を語る資格はあるのか?
五月三日は憲法記念日。
昨年の今頃、安倍首相は「憲法九条の一・二項は変えずに自衛隊の項目を加える」という改憲案を、保守系団体の集会に寄せたビデオメッセージで表明しました。
しかし、最近の国会状況はどうでしょうか?裁量労働制をめぐる厚生労働省のデータ「捏造」疑惑で「働き方改革法案」が立ち往生したあたりから、風向きが変わってきました。森友学園の土地売却をめぐっては、財務省の文書「改ざん」が明るみに出て、関係部署の職員の自殺や佐川長官の辞任で、内閣支持率は三割まで急落しました。さらに自衛隊海外派遣部隊の日誌が「隠蔽」されていたものが出てきて、「戦闘」や「武器携行」等の記述が暴露されました。加計学園をめぐる「首相案件」と記述された記録も明るみにでました。追い討ちをかけるように、財務次官の女性記者に対するセクハラ発言、自衛官の野党議員への罵声、不祥事の続発は今や「底なし」の様相を呈しています。
それでも安倍首相は退陣の気配すらありません。それは悲願の「改憲」を成就するまでは首相を辞められないからに他なりません。この間の不祥事の「ほとぼりが冷める」まで「低姿勢」で待とうというわけです。
しかし、私たちは良く考えなければなりません。この間の「隠蔽・改ざん・捏造」騒ぎと「改憲」への悲願とは、深く繋がっているということを。
まず、財務省の森友文書「改ざん」問題。安倍首相は「改憲」を進めるために、その支持勢力を作る必要にせまられていました。その一つが「日本会議」などの復古主義思想の勢力です。森友学園は「教育勅語」を園児に復唱される教育方針を前面に掲げ、公立学校にはできない復古主義教育の小学校を作ろうとしていました。安倍首相は夫人を通じて、こうした教育勅語礼賛の学校建設に援助をして、改憲の支持勢力にしようとし、そこから不正な土地値引き工作が始まったと捉えると合点がいきます。
また、改憲を同盟国のアメリカに支持してもらうために、集団的自衛権の合憲解釈を強引に行い、日米同盟を軍事的に進める安保法制を国会で通過させる必要がありました。そのために、PKO派遣部隊の日誌に「戦闘」と記述されていることを隠さなければならなくなり、防衛省の日誌「隠蔽」問題を引き起こしたわけです。
さらに「改憲」を経済界に応援してもらうために、財界が強く求めている「脱時間給制度」の導入や「裁量労働制」の拡大を国会に提出し、厚労省の労働時間調査を恣意的に加工して「裁量労働制の方が一般の労働者より平均労働時間が短い」データをでっちあげたのです。労働組合や野党の反対で廃案になると、再び「働き方改革法案」の中に無理やり入れ込んで、また同じデータを使い「捏造」疑惑を招いたのです。
このように、この間の財務省「改ざん」、防衛省「隠蔽」、厚労省「捏造」は、いずれも震源地は安倍首相の「改憲」へ向けての歪んだ「支持勢力拡大」工作から発していることを見抜く必要があるでしょう。
裏を返せば、そうでもしなければ、安倍首相の悲願である「改憲」は実現に近づいていかないというのが、事の本質だということでもあるでしょう。
憲法記念日に当って改めて、安倍首相の「改憲」の勇ましい掛け声と、「隠蔽・改ざん・捏造」の醜態とは、切っても切り離せない関係にあるということを、忘れないようにしましょう!(松本誠也)
タダ働きである高度プロフェッショナル制度 裁量労働制の拡大に反対! 同一価値労働同一賃金を!
安倍内閣は、今国会を「働き方改革国会」と名付けています。高度プロフェッショナル制度、いわゆる「残業代ゼロ制度」は、正式には特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)といい、労働者が労働時間ではなく仕事の成果で処遇される働き方として、何時間働こうが、あるいは働くまいが、会社が一定の賃金を支払うという内容です。 対象となる労働者は今のところ、高度専門職で一定の収入(年収1075万円以上)がある者のみとされています。この、いくら働いても残業代を払わなくてもいい高度プロフェッショナル制度には反対です。
裁量労働制の拡大については、安倍内閣は今国会での法案提出を見送りました。しかし、来年にも裁量労働制について法案化しようとしています。裁量労働制とは、「みなし労働時間」の一種です。例えば、みなし労働時間を9時間と決めれば、実際には12時間働いても1日の法定労働時間が8時間なので、本来なら4時間の残業代が払われるが、裁量労働制では1時間しか残業代が払われなくなります。まさに、「定額働かせ放題」です。
現在、裁量労働制を行っているのは、当該業務の遂行の手段および時間配分の決定などに関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務に限定されています。これを拡大しようとしています。
安倍内閣は、国会で一般労働者の労働時間の平均が9時間37分、裁量労働制の労働者は9時間16分と言って裁量労働制のほうが働く時間が短いと説明しました。しかし、これがうそであることが明らかになり、政府は発言を撤回、謝罪に追い込まれました。実際は、労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査結果では、1か月の平均の実労働時間でみると専門業務型裁量労働制で203・8時間、企画業務型裁量労働制で194・4時間、一般労働者で186・7時間です。裁量労働制の方が実労働時間が長いです。
JILPTの調査結果で裁量労働制をやっている労働者の自由記述では、「会社側が残業代を合法的に抑制するための単なるツールとなっている」「残業代が抑制されているだけ」「会社が違法残業を合法化する手段として導入している様に感じる」など、残業代を抑制することへの不満が出ています。
働いた分だけ残業代が払われるしくみでないと、労働時間が長くなり賃金も低く抑えられます。
こうした安倍内閣の目論見に対抗するため、「同一価値労働同一賃金」を対置します。郵便局では、東京地裁と大阪地裁で契約社員が、正社員と業務が同じなのに手当などに格差があると訴えた裁判で、格差是正の判決が出ています。
これらに対し郵便局の会社側は、正社員のうち約5千人の住居手当を今年10月から10年かけて(毎年10%ずつ削減)廃止されようとしています。この手当は正社員にだけ支給されていて、非正社員との待遇格差が正社員の待遇を下げて是正していくと。「同一価値労働同一賃金」の悪用です。
こうした状況を打破するには、結局は労働組合や個々の労働者が踏ん張っていくしかないと思います。ともに頑張りましょう。(河野)
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『同一労働同一賃金』は差別解消への一歩だが、完全なる差別解消にはならない。
安倍政権が掲げる「働き方改革」の柱である「同一労働同一賃金」は、安倍首相が「我が国から『非正規』という言葉を一掃することを目指す」と言っているように、正規労働者(正社員)と非正規労働者(パートや派遣)の待遇差をなくし、同じ仕事をしているのにもかかわらず雇用形態が異なり、その為に、給与をはじめとして福利厚生やキャリア形成などの待遇格差を無くすというもの。
仕事内容が同じかもしくは同等の労働者には同じ賃金を支払うべきだという考え方は、古くは1900年前後から、性別や人種などの区別なしに同じ賃金を支払うべきだと言う要求が(欧州諸国を中心に)叫ばれてきましたが、日本全体の非正規労働者数が2016年には2000万人を超え、労働者全体の37.5%となり、また、賃金を時給換算すると、非正規労働者の時給は正規労働者の時給の70%程度にとどまり、ボーナスや退職金といった各種制度や教育訓練などについても大きな格差が生じて、過労死ラインを超える超過勤務・長時間労働問題や高齢化社会の中での労働力の確保など格差拡大による労働意欲や生産力の減退が社会問題化しているという背景がある。
安倍政権が掲げる「同一労働同一賃金」は、ドイツやフランスに普及している同一労働同一賃金とは少し違っている。
ドイツやフランスでは人権保障に関する差別的取扱い禁止原則(人権保障にかかる差別禁止原則というのは、性別や人権、障害など個人の意思ではない事情で生じた差別、あるいは宗教や信条などを理由とした差別を禁じるもの。)の一つ(下位規)として位置づけられている。また、産業別労働協約により、勤める会社が違っても「職務ごと」に賃金が決まるという横断的賃金決定のしくみがあるので、結果として同一の賃金になるのにたいして、日本では労働条件を「企業ごと」に設定することが多く、「同一労働同一賃金」についても雇用形態の違いによる格差を解消するために同一賃金を支払うべきという考え方だから、交渉などによって、同じ賃金になったからといっても雇用形態の変更などが行われないことも起こりえるので、欧米の進んだ同一性より劣っていると言える。
「同一労働同一賃金」は労働者間にあらゆる格差と競争を設けて、賃金に差をつけ利潤をえようとする企業に対して、労働条件や生活を守る為の制度・要求なのだが、人類間の差別撤廃という大目標から言えばほんの一歩と言うべきものに過ぎない。
「仕事内容が同じかもしくは同等の労働者には同じ賃金を支払うべき」は「同じ仕事内容」に限定した話であり、社会はいろいろな「仕事内容」が総合的に混ぜ合わさったもので成り立っているから「仕事内容」の違いから格差は温存されるのである。
これからも、こうした温存された格差を利用して資本=企業は労働者を搾取・収奪し利益を得ようとするだろう。
「同一労働同一賃金」にとどまることなく、圧倒的大多数の労働者が格差を乗り越え連帯・団結する為の新しい要求・スローガンを導きだし、共に闘いましょう。(真野)
コラムの窓・・・国家とは何か、「ニッポン国VS泉南石綿村」を観て考える!
過日、大阪のシネ・ヌーヴォ九条で原一男監督の最新作を観ました。映画館の壁には原告の書き込みなどもあり、泉南という近さだけではなく現在進行形の生々しさを感じながら観たのですが、正視に耐えない病苦の姿と〝ニッポン国〟への怒りが映像から溢れ出ていました。
8年に及ぶ裁判、民主党政権さえ躊躇しつつも上告した非情、最後の画面には21名の遺影が写される悲惨、全てが国家権力による暴力を示しています。柚岡一禎という傑出した人物がアスベストに侵されゆく原告を支え、国家を追いつめその犯罪(資本の利益のために労働者とその家族や周辺住民をイケニエにした)を明らかにしたのです。
国家による権力行使は暴力という姿をとって私たちに対しますが、その究極の姿は合法的殺人、死刑というかたちで示されます。しかし、国家は姿を持ちません。それは果物がリンゴやミカンとして姿を現すように、国家は直接的には政治家や官僚、裁判官として、私たちに近いかたちでは警察官や機動隊の暴力としてその姿を誇示します。
国家権力を維持するために、そうしたむき出しの国家機構を支える人たちがいます。今風には〝原子力ムラの住人〟といったところの科学者たち、ハンセン氏病患者の隔離や旧優生保護法下の強制不妊手術を〝確信的に〟行なった医師たちもそうです。
さらに〝民衆〟の支持、支えも必要です。原発の地元の人々の多くは3・11後も再稼働を支持しています。資本主義下にあってはカネが人の意識まで縛り、自らを縛っている資本のくびきを頼みとしてしまっているのです。
泉南アスベスト訴訟は2014年10月9日の最高裁判決で原告の一部勝訴となりました。第1陣の2006年5月の提訴から8年余、最高裁は1958年5月26日から71年4月28日までの間、「国が規制権限を行使して石綿工場に局所排気装置の設計を義務付けなかったことが、国家賠償上の適用上、違法である」(厚労省「アスベスト(石綿)訴訟の和解手続きについて」)との判断を示しました。この期間を切ることによって、一部の原告が敗訴となったのです。
危険なアスベストを野放しにし、有機水銀の垂れ流しを隠し、放射能に危険はないと言い募る。柚岡一禎氏はこの巨大な壁に立ち向かい、時には弁護団と対立し、国家による犯罪を暴き出したのです。彼のように国家のくびきを軽やかに超える市民は少なくないのですが、なにものをも求めることなく地の塩として深く人々のなかに生き、死んでいくのだろうと思うのです。できることなら、その働きの一助となれればと私は思ったりするのですが。 (晴)
泉南アスベスト訴訟の経過(最高裁の統一判断として原告一部勝訴)
第1陣 2006年5月提訴 10年5月地裁一部勝訴 11年8月高裁敗訴
第2陣 2009年9月提訴 12年3月地裁一部勝訴 13年12月高裁一部勝訴
*第1陣患者数26名(うち死亡18名)第2陣患者数33名(うち死亡19名)
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「エイジの沖縄通信」(NO50)・・・辺野古工事は行き詰まる(大浦湾の活断層問題)
安倍政権は辺野古新基地建設がどんどん進んでいるような報告ばかり流している。
ところが、前々から地元の専門家が辺野古沖につながる大浦湾に「活断層」が存在する可能性があることを指摘してきた。
これまで大型調査船「ポセイドン」が大浦湾で何回も調査を繰り返していた。その「調査結果を公表せよ」と、反対派住民が防衛局及び政府にずっと要求していたが、防衛局は何も発表してこなかった。
ようやく政府は、2014年度に実施した2件の海上ボーリング調査の報告書をやっと公表した。その報告書を分析した結果、大変な問題が明らかになった。その問題点とは①「活断層」の存在と②「海底部の軟弱基盤」問題だ。
この事について、「チョイさんの沖縄日記」は次のように指摘している。
『①「活断層」の存在・・・その報告書では、「(これらの2つの断層は)活断層と断定されてはいないが、その疑いのある線構造と分類されている」と記載されており、政府は2年前から活断層の疑いがあると認識していたことが分かる。
防衛庁(当時)が、普天間代替施設に関する協議会(2002年)に提出した「推定地層断面図」には、大浦湾海底部の50m以上の落込みを「断層によると考えられる落込み」と記載されていた。加藤祐三琉球大学名誉教授は「この落込みは間違いなく活断層」と指摘しており、立石新潟大学名誉教授も「紛れもなく活断層である」と断言されている。名護市東部の陸上部には辺野古断層と楚久断層が走っているが、「名護・やんばるの地質」(名護博物館)では、これらの断層を「活構造」に分類しており、活断層研究会の「新編/日本の活断層」(東京大学出版会編)では、これらの断層を「陸上活断層/活断層の疑いのあるリニアメント(確実度Ⅲ)」と記載している。
活断層の上に、大量の弾薬や化学物質を扱う軍事施設を建設できないことはいうまでもない。直下地震や津波が発生すれば、その被害や環境破壊は想像を絶するものとなる。辺野古新基地建設の立地条件そのものが根底から問われているのだ。
②「海底部の軟弱基盤」問題・・・活断層の問題以外にもきわめて深刻な問題(大浦湾海底部の厚さ40mのマヨネーズのような軟弱地盤)が明らかになった。大浦湾最深部のケーソン護岸の基礎地盤が、「当初想定されていないほどの、非常に緩い、柔らかい」軟弱地盤であるというのである。たとえば、C-1護岸予定地のB-28地点では、水深30mの海底部が厚さ40mにわたって地盤の支持力を示すN値がほぼゼロであったという。大型構造物の基礎地盤とするには、N値は50以上が必要である。
さらに他の4地点でも、N値がゼロという試験結果が確認されている。ケーソン護岸の広範な基礎部分にこうした軟弱地盤が拡がっているのである。日本大学の鎌尾准教授(地盤工学)は、「マヨネーズ並の柔らかさ」の軟弱地盤を次のように指摘している。
「このような軟弱地盤の上に、大量の捨石を投下し、巨大なケーソン護岸を設置することは、きわめて大規模な地盤改良工事を行わない限り不可能である。それも、途方もない費用と時間、そして周辺部に深刻な環境破壊を与える」と警告している。』
なお、辺野古では4月23日(月)より「ゲート前連続6日間500人座り込み行動」が始まった。
現地から次のような報告が来た。
「23日から『奇跡の1週間』の大行動が始まった。ゲート前には500名以上が結集、5時間にわたって工事車両の進入を阻止した。
最近は、ゲート前の座りこみも人数が減り気味だったが、今回の行動提起が成功したことにより、皆『工事は止められる』と自信を持ったことだろう。明日以降も頑張りたい。」(富田英司)
袴田さんに即刻再審開始そして無罪を。「巌に効く一番の薬は自由だ!」
2月2日に東京高裁での4年近い審議が終了し、3月末にも再審開始の可否の決定が出されると言われていたものの遅れている中、清水で3月31日「特別抗告阻止!緊急集会」があった。粋な帽子と蝶ネクタイ姿で颯爽と会場に入った袴田さんは、マイクに向かって淀み無く話続けるものの「ばい菌が・・・」など私たちには理解することが叶わない言葉があふれる。しばらくして姉の秀子さんが、笑顔でやんわりマイクを替わりその後二人は最前列に着席し、2時間あまりの集会の間そこを動かなかった。
続いて報告のためその目の前の壇上に立った小川秀世弁護士は「本人を目の前にして喋るのは初めてだ。」と照れて苦笑した。
4年前の2014年3月、静岡地裁は再審開始決定と死刑の執行停止、そして異例の釈放をした。
しかし心から願っていたはずの釈放後の袴田さんの心は、今も獄中の死刑囚のままだ。デッチ上げられた殺人罪で、日々死刑執行の恐怖と向き合わされた長く過酷な48年もの時間を、「彼の世界」に入り込こんで現実の全てを否定することで生き延びてきた。そうするより他に生き残るすべは無かった。巌さんは「事件なんて無かった」「死刑は廃止された」「自分は〇〇王だ」と言い、今も毎日雨の日も風の日も外出している。傍目には散歩でも彼にとっては「仕事」であり、そうして死刑執行の恐怖と戦っている。4年たった今も、秀子さんによると拘禁の症状から1~2割しか戻っていないと言う。「巌に効く一番の薬は自由だ!」と秀子さんが言うように、一刻も早い再審開始と無罪を勝ち取りたい。
先の静岡地裁の決定に、検察が即時抗告したため東京高裁で4年もの長い時間が審議に費やされた。検察推薦の鈴木廣一大阪医大教授は、DNA鑑定の検証実験に1年半以上も費やし、その結果はもとの本田鑑定に何ら誤りの無いことを証明したお粗末なもの。昨年9月、証人尋問を前に弁護団が本田教授の指示のもと検証実験を行い、わずか1日で検出が出来ている。素人が1日で出来たことを、1年半も時間稼ぎに費やしたとしたらこれだけでも重大な犯罪行為だ。
また今回2014年秋”静岡県警の倉庫で発見された”という、つまりは捜査機関が隠してきた取り調べの録音テープが開示され、トイレにも行かせない長時間の拷問同様の取り調べ、自白強要、捜査書類の偽造、法廷での警察官の偽証などが次々と明らかになった。
有罪の証拠とされた犯行時の5点の衣類の味噌漬け実験は、検証した検察側自身が短時間ででっち上げた衣類であることを証明してしまう「オウンゴール」(小川弁護士)をしている。
こうした東京高裁での4年の審議を経て、やっと3月末にも再審可否の決定が下されると言われていたが、連休前の今現在もまだ出されていない。
昨年と今年、福岡高裁で「松橋事件」「大崎事件」の2件が再審開始決定されたにもかかわらず、いずれも検察庁が最高裁に特別抗告したため再審の扉は遠のいた。訴えているのは、84才と90才の高齢者だ。
82才の袴田さんの場合も、もし検察が特別抗告すれば、再審が遅れるだけでなく、静岡地裁の決定がくつがえされ再収監の恐れさえある。袴田さんにとってそれは耐えがたい恐怖だ。英米などでは、こうした検察側の抗告・不服申し立ては認められていない。強い権力を持つ側が抗告を乱用することは許されない。巌さんを見れば、検察側こそが人の尊厳を踏みにじる魂の「殺人罪」を犯していることがよく分かる。
東京高裁の決定後、検察の特別抗告期間は5日間。この間高検前等で様々な阻止行動が取り組まれる。私たちも特別抗告を止めるために、東京高検・最高検に電話・FAXなどで要請をしよう。
〒100-8904東京都千代田区霞が関1-1-1/中央合同庁舎6号館/東京高等検察庁/03-3592-5611
日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会は、インターネット上で署名を集めるキャンペーン「検察はタオルを投げろ!」を始めた。(澄)
詳しくは緊急アクションサイトURL:https://chn.ge/2pSQ0wn
色鉛筆・・・東日本大震災から七年 がんばっている女川町
「女川は流されたのではない。新しい女川に生まれ変わるんだ。」と女川町の病院に横断幕が掲げられています。その横で新庁舎が建設中で、そして湾岸工事、道路復旧工事でトラックやダンプカーが行き交っています。女川駅から続く商店街その先には美しい海が見えます。住宅地は高台に建築中です。
震災が起きた翌年から、 震災で元気が無くなってしまった町で、町内の若者が集まり『女川復興の狼煙を上げよう』『千年に一度の町づくり』への夢と希望を託し、大震災の起こった翌年に女川町復幸祭は2012年の3月に初めて開催されました。
そして今年7回目を迎え、「復幸祭~濃い町に恋しに来い!」(同実行委員会主催)三月二十四日(土)と二十五日(日) に開催されました。
前日祭として『津波伝承 女川復幸男』も開催しました。「津波がきたら高台へ逃げる」という津波避難の基本を後世へ伝える「津波伝承 復幸男」が行われ、230名が参加。過去最長となる役場新庁舎横から白山神社までの約400㍍の坂道コースをかけ上がり、仙台育英高校3年の男子生徒が一番でした。
二十五日はアーティストによるライブステージや飲食・体験ブース、リサイクリエーションのブロック、海の杜水族館のペンギンパレードなども人気を博しました。約18000人訪れ、大盛況でした。
私は、海鮮丼をおいしく頂き、満足し、餅つきや色々なイベントを見学しました。
そして、この四月から女川町で働くことになりました。私自身も復興とともに歩んでいきたいです。
また女川といえば、原発のある町です。今は停止していますが、再稼働しないように願っていますし、再稼働反対運動も地道に続けていきたいと想います。(宮城 弥生)
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