ワーカーズ589号  2018/12/1    案内へ戻る

 〈新在留資格〉賃金底上げの共同闘争が出発点 低コスト・使い捨て労働力づくりは許さない!

 安倍内閣は、いまの臨時国会で入管法改正案を強引に成立させようとしている。外国人労働者の受け入れを単純労働にまで広げ、25年までに外国人労働者を50万人超増やす新しい在留資格を、来年4月に導入するためだ。

 その〝特定技能〟という新しい在留制度。業種や人数、それに処遇など重要事項を省令に先送りする、移民政策への転換かどうかも曖昧なままだ。

 そもそも新制度の土台となる現行で27万人従事している技能実習制度では、職場を変えられない、パワハラに晒されるなど無権利状態に置かれ、半数以上が月給10万円以下、最低賃金にも及ばない低賃金(時給300円も!)や1日15時間もの長時間労働を強いられているケースもあったという。あまりの過酷さに失踪した実習生が今年前半だけで4000人を越え、不法在留・就労者増加の温床にもなっている。結局、多くの外国人労働者は、低コストな切り捨て可能な補完労働力として扱われ、雇用の調整弁とされているのが実情だ。

 ここ日本でも、それでなくとも多くの領域で格差や分断が深刻化している。

 逮捕された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の報酬が年20億円、5年で100億円だったという。他企業でも経営者報酬の巨額化が進んでいる。アベノミクスによる円安もあって大企業は利益を溜め込み、内部留保は400兆円にも膨らんだ。賃金は抑制されているのに、だ。

安倍内閣は法人税を減額し、一律20%に抑えられている金融利益への増税も棚上げする一方、庶民には消費増税を押しつけている。もはや搾取・収奪と言わずにいられないほどだ。新しい在留資格は、新たな格差、分断をもたらすだけだ。

 業界や政府は〝労働力不足〟を煽っているが、それはまやかしだ。人手不足が深刻な建設や介護、それに宿泊、外食、農業など対象14業種も、賃金水準が低すぎるから人手が集まらないだけだ。納得できる賃金さえ確保できれば働きたい就労予備軍はいっぱいいる。賃金など処遇の引き上げこそ、新しい労働力を生むのだ。

 政府は、経済成長のためにも新しい在留資格が必要だとしているが、実態は、業界の求めに応じて低コストで切り捨て可能な労働力を増やすだけだ。それは日本の正社員にとっても賃金引き下げ圧力になる。

 外国人労働者は無論のこと、日本全体で賃上げを含めた権利と労働条件の引き上げと、そのための内外労働者の共同闘争を拡げていきたい。(廣)


 「外国人労働者受け入れ拡大」への基本的視点

●はじめに

 安倍政権は外国人労働者の受け入れを大幅に拡大する「入管法改正案」を閣議決定し、国会に提出し、与野党の論戦が開始されました。本来ならこの問題は、一昨年秋からの「働き方改革」会議と並行して、外国人の雇用や生活に関わる関係業界、労働団体、行政関係者、市民団体を交えて議論を積み重ねるべきでした。

 そもそも経団連など経済界は以前から「労働力人口減少時代に外国人労働力の活用は不可欠」との立場でしたから、外国人労働者の受け入れ拡大はいずれ時間の問題であることは明らかでした。しかしシリア難民問題などヨーロッパの政治的危機を見て、働き方改革の論議からこの問題をすっぽりとオミットしてしまい、幅広い議論を避けたまま、時を過ごした安倍政権の責任は大きいといわなければなりません。

 結局「労働力不足」の深刻化に直面する建設・水産加工・大規模農業・介護・零細縫製業など「関係業界」からの訴えに足元から突き上げられ、バタバタと「骨太方針」に明記し、拙速な法案策定と国会提出に至ったものです。与党内からも「準備不足」との声があがり、審議入り後早くも、法務大臣の答弁が二転三転する、厚生労働省の資料の誤りが発覚する、などの欠陥が露呈しています。

 問題は、この法案が「雇用する側」(事業主)「管理する側」(入管当局)の意向が優先され、「雇用される側」(外国人労働者)「生活する側」(外国人家族)の権利が後回しにされていることです。私たちは「移住者の権利と尊厳が保障される統合政策」の基本的立場から、具体的な問題点について安倍政権のいいかげんな政策を追及し、対抗政策を掲げて闘うことが求められます。

●「入管法改正案」と「骨太方針」の問題点

 この問題を議論するためには、実際に労働現場や地域社会で外国人労働者や家族と連帯して活動している人々の声を参考にする必要があります。「入管法改正案」のベースになっている「骨太方針」の問題点について「移住者と連帯する全国ネットワーク」は、その機関誌「エムネット200号」(2018・10)で特集を組んでいます。今回はその中から、問題提起としての記事「日本社会は分水嶺を迎えている‐骨太の方針がもたらすものは?‐」(公益社団法人 自由人権協会 理事 旗手明)を紹介しつつ、基本的な視点について考えてみたいと思います。

 同記事は「骨太方針」について、以下のような七つの課題を提起していますので引用させていただきます(小見出は筆者による)。

①包括的・長期的な外国人政策の欠如
 同方針が、正面から外国人労働者受入れに向き合おうとする姿勢は評価できる。しかし、あくまで当面の労働力不足への対応にとどまり、包括的な外国人労働者政策が提示していないなど、中長期的視野での全体像が描かれていない。

②受入れコントロールの手段は?
 また、国内労働市場との軋轢をできるだけ避けるための、外国人労働者受入れを量的にコントロールする手段が組み入れられていない。世界各国のこれまでの政策を参考にすれば、国内労働者では充足されないことを確認する「労働市場テスト」、総量や職種・地域別の受入れ人数を規制するクオータ制、また外国人雇用率、外国人雇用税など、いろいろな手段が考えられる。こうした手段がないと、アクセルだけでブレーキがない状態になる。

③業界まかせ、日本語能力保障は?
 「業種別受入れ方針」では、必要とされる日本語能力や技能水準などが、業種ごとに関係省庁と業界団体に任せられる。その結果、受入れ基準がバラバラとなり、業界事情を優先した無原則な受入れとなることが心配される。しかも、技能実習(3年)修了者には試験が免除されるので、日本語能力や技能水準が確保されない。その結果、制度の改善が検証できていない技能実習制度との組合せで、問題拡大のおそれも強い。

④悪質な紹介業者の防止は?
 「悪質な紹介業者の介在を防止する」としているが、募集・採用でマッチング機能を持つのは民間業者であり、その具体的な規制方法は明らかにされていない。韓国の雇用許可制度のように募集・採用ルートを政府間に限定するなどしない限り、制度的な保障とはならず、悪質な業者の排除をうたっても、絵に描いた餅となる可能性が高い。

⑤法務省が司令塔では不安
 受入れ環境整備について、「法務省が司令塔的役割を果たす」点にも疑問がある。法務省という外国人の出入国及び在留管理に当たる機関が、いわゆる社会統合政策も担うことは、外国人に心理的な抵抗を生じさせ、政策効果をあげられないことが十分に予想される。したがって、法務省外に新たな機関を設置するか、当面、内閣府に担当させるなど、再検討が必要だ。

⑥在留管理強化で息苦しい社会に
 このほか、「在留管理体制を強化」するとしているが、2001年の9・11米国同時多発テロ以降に実施された様々な出入国及び在留管理強化策により、すでに外国人に対する管理は徹底されている。これらに加えて、在留管理情報と外国人雇用状況届出情報との突号、マイナンバーの活用が実施されるならば、外国人労働者は、その雇用、収入、居住状況など、全般にわたりさらに徹底した管理下に置かれることになる。これでは、すでに在留する外国人労働者も含めて、極めて息苦しい社会となってしまうのではないか。

⑦自治体まかせ、国の責任は?
 その反面、「移民政策ではない」とするため社会統合政策が希薄ではないか。7月に関係閣僚会議で提案された「総合対応策(案)」は2006年に策定された『生活者としての外国人』に関する対応策を引き継いでおり、さほど画期的なものではない。基本的に、自治体や民間の取組みを支援するスタンスであり、社会統合政策における国の責任が明確化されていない。例えば、仕事や社会生活、また自らの権利保護のために不可欠な日本語能力について、国の責任においてその習得を支援するとともに、日本社会への適応上、不適合となる恐れがあるレベルの場合には、日本語習得の義務化も考えられる。これらは、社会的分断を生まないための重要な施策であり、国が責任を持つべきである。

 以上、具体的な課題について引用しました(小見出は筆者による)が、私たちもこうした論点を十分に共有した上で、法案の内容や論戦の経過を見ていく必要があると思います。

●移住者の権利と尊厳が保障される統合政策を!

 同記事でも指摘していますが、ドイツでは「滞在法」の中に外国人の統合に関する章を設け、「統合講習に参加する権利」及び「義務」を定めるとともに、「統合プログラム」の開発にあたっては行政機関に加えて、宗教団体、労使団体、関係社会団体など参加の条文もあるそうです。さらに同記事では、「人権面でのインフラを整備するため、外国人人権基本法、人種差別撤廃法、国内人権機関の設立なども実現させなければならない。」と提言しています。

 おりしも12月の国連総会では、SDGSに沿った移住に関わる国際的な規範として「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」の採択に向けて議論される方向と言われます。

 こうした国際的な議論も視野に、各地の技能実習生や留学生の直面する具体的な諸問題を共有し、諸外国の先進事例を参考に、「移住者の権利と尊厳が保障される統合政策」の確立に向け闘っていきましょう!(松本誠也)案内へ戻る


 人権蹂躙・労働基準法以下の労働現状を無視した、安倍内閣の入管法「改正」案

 外国人材の受け入れ拡大に向けた入管法改正案について、衆議院法務委員会で与党は、野党の反対を無視し、半ば強引に審議入りし、ろくな議論もなしに、法案を通そうとしています。 

 外国人労働者の人間性を無視し、「労働力」としてしか見ていない法改正

 この法案は、人手不足を解消する為に、財界や数多くの業界からの外国人労働者の受け入れ拡大の要請に基づき、新たに特定技能Ⅰ号、同2号という新たな資格を設けて、14業種にわたって単純労働の分野に外国人労働者を受け入れようとするものだが、国会審議が始まる前から、「拙速だ」「移民制度だ」「人権への配慮を欠く」など野党のみならず与党内部からも批判を浴びていた。

 特定技能の2号の方は、在留期間を更新・延長し、場合によっては永住することも可能だが、Ⅰ号の方は、日本語が話せ特定の技能にある程度習熟しているなどを条件に就労を認めるというもので、在留期間は5年間に限定され、この期間中に妻・子供など家族を帯同することを禁じている。つまり、在留は「労働力」としてのみ認めて、人間としての権利は認めず、働いたらとっとと帰れという、極めて差別的な内容になっている。

 また、家族の帯同拒否や5年の期限にこだわるのは、安倍首相や山下法相が「移民制度の導入ではない」と弁明しているように、日本の遅れた難民政策【=日本政府は1980年代に国連難民条約を批准したにもかかわらず、(先進諸国は、おしなべて1万人から2万人の難民を受け入れているが、我が日本の法務省は、昨年に万人近い難民申請があったにもかかわらず、たったの20人しか難民として認定していない)日本の法務省出入国管理局は未だに難民の受け入れを拒み続けており、出入国管理および難民認定法(入管難民法)で、今、国連人権委員会などから最も改善勧告を受けているのは日本の難民鎖国政策なのである。=】や外国人の移住や難民の入国に反対する民族排外主義者に配慮し、外国人労働者と日本人労働者とを分断する為にも、こうした差別的な地位を強いることを果たそうとしているのだ。

 横行する労働基準法無視の劣悪な労働条件、賃金の不払い・長時間労働・セクハラ・パラハラ等々、差別的な労働環境の是正を!

 現在日本で働く外国人労働者は125万人と言われるが、現行の入管法は、大学教授や医師などの高度な専門技能を有するもの以外の外国人就労を認めていないので、その多くは留学生(限定付きで週28時間以内)のアルバイトや技能実習生(建前上、先進技術を学んで母国でそれを生かすことを目的とする)である。

 実際は技能習得などはそっちのけで、安上がり・使い捨ての単純労働力として活用され、研修生だから労働者ではないとして、労働基準法を無視した劣悪な労働条件が横行し、賃金の不払い・長時間労働・セクハラ・パラハラ等蔓延し、昨年1年間で7000人余の実習生が失踪し、労災によって死亡した外国人労働者が2008年から去年までの10年間に125人に上っている(厚生労働省発表だが「遺族が制度を知らなかったり言葉の壁があったりして申請せず、労災と認定されないケースも多いのではないか。等、実態はこの数以上との指摘あり)。

 政府=法務省は実習生が失踪した原因の大半は「より高い賃金を求めて」等と実習生側に責任があるかのような調査結果で法案説明を行い、後で訂正したが、横行する安上がり・使い捨ての悪徳企業や現行法の不備に目をつぶり、外国人労働者を使い捨ての「労働力」としてしか見ていないのである。

 資本=企業の安上がりな雇用要請を代弁し、人権蹂躙・外国人労働者を虐待する安倍政権に抗議し、難民行政の改善と安上がり・使い捨て・労働基準法無視の劣悪な労働条件の改善と外国人労働者に対等の賃金・労働条件・社会保障を!(真野)


 読書室 矢部宏治氏著『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』講談社現代新書

 この本は『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』に引き続く著作である。矢部氏の前著の解明によって、現在の日本と米国の間に存在する異様な従属関係の本質は今から約70年前、日本の独立直前に起こった朝鮮戦争の中で生まれた「米軍への主権なき軍事支援体制」、いわゆる「朝鮮戦争レジーム」にあることが徹底的に暴露されたのである。

 つまり戦後民主主義が導入されたと賞賛されてきた「戦後日本」の本当の姿とは、「朝鮮戦争がまだ終わっていないことを法的根拠」に米軍が「日本の国土と官僚組織」を旧安保条約と行政協定で法的に整備して「軍事利用し続ける準戦時体制」だったのである。

 今回の『知ってはいけない2』は、前著を受けてその異様な体制が70年経った今も「なぜ、まだ続いていのるか」という戦後日本の“最後の謎”に果敢に挑戦した著作である。

 その謎を解くための最大のカギが今から60年前、現在の安倍晋三総理の祖父である岸信介首相が行った「安保改定」と当時の藤山外務大臣と米国との間で結ばれた「三つの密約」の中に隠されていた。その真相を矢部氏は実に論理的かつ詳細に分析している。

 本書は、このままでは本家本元で消滅しつつある「朝鮮戦争レジーム」が韓半島で北朝鮮と米国が平和条約を締結し完全消滅する中で、日本列島にだけ異様な対米関係が半永久的に残されてしまうとの矢部氏の危機感から、私たちには「ポスト戦後日本」の行方を正しく選択する大きな歴史的責任があるとの立場から議論となる様に書かれたものである。

謎解きに関わる本書の目次の紹介

 第1章日本は「記憶をなくした国」である─外務省・最重要文書は、改ざんされていた
 第2章外務省のトップは、何もわかっていない─三つの密約とその「美しき構造」…
 第3章CIAの金は、ロッキード社が配る─「自民党」という密約がある
 第4章辺野古ができても、普天間は返ってこない─軍事主権の喪失と「帝国の方程式」
 第5章米軍は、どんな取り決めも守らない─国連憲章に隠された「ウラの条項」とは?
 終章外務省・最重要文書は、なぜ改ざんされたのか
 あとがき──歴史の法則は繰り返す

 本書の第1章は実に驚くべき事が書かれている。まさに本書の肝である。それは何と米国との密約を全くコントロールできていない呆れた外務省の暴露がなされていることだ。

 それはなぜか。矢部氏はこのような状態になったのは、過去半世紀以上に渉って外務省がそうした無数の秘密の取り決めについて、その存在や効力を否定し続け、体系的な記録や保管、分析、継承という作業をほとんどしてこなかったことに基因すると喝破する。

 密約と言えども、米国は合意内容に反した場合は直ぐに訂正を求めてくるし、国のシステムとして外交文書は作成から30年経ったら国法で決まっているため情報公開される。ところが日本の場合は米国との「軍事上の密約については、永遠にその存在を否定してもよい。いくら国会でウソをついても、全く構わない」との原則が60年代末には確立したようだと矢部氏は書いている。勿論、この深刻な事実は確かめようもない不文律である。

 そのため密約や引き継ぎにも一定のルールがなく、結果としてある内閣が結んだ密約が次の内閣には全く引き継がれないという、近代国家として全く信じられない状況が起こる。ここで矢部氏は、兄である岸信介総理が結んだ密約[実際にサインしたのは藤山愛一郎氏]を「よくは知らん」といった弟の佐藤総理の発言を引用している。また自分自身が当時の沖縄への核の再持ち込み密約を結びながら、当時の秘書だった若泉氏への、「愛知[揆一・外務大臣]にも言わんから破ったっていいんだ。一切、[誰にも]言わん」「要するに君、これは腹だよ」との仰天発言を矢部氏は紹介した。即ち密約とは、米国の理解では国家間での機密事項だとの認識に対して、日本の総理の理解では全くの腹 芸な のであ る。

 勿論、密約とは腹芸ではない。こうして全てのボタンの掛け違いが始まった。そして実際の経緯から核密約を巡る最重要文書の改竄を矢部氏は発見する。実際、たった四頁の「大平・ライシャワー会談」の「極秘」報告書は、文書鑑定を依頼する事で発覚したのである。

 その解明は見事としか言えない展開である。この解明に矢部氏は16頁も割いている。

 この重要文書等の改竄により、外務省が米軍に具体的に翻弄される様は第2章のテーマである。まさに読者には驚きの連続。そして“最大の病根”が日米合同委員会なのである。

第3章のCIAの金は、ロッキード社が配る─「自民党」という密約がある

 第1章からの展開には、「一事が万事」を象徴する具体的な呆れた事実の暴露が続く。紙面の関係で触れられないことが残念であるが、第3章には是非とも一言しておこう。

 第3章では岸の政治哲学が論じられ、矢部氏は「政治資金は、濾過器を通ったきれいなものをうけとらなければならない」「問題が起きたときには、その濾過器が事件になるので、受け取った政治家はきれいな水を飲んでいるのだから、掛かり合いにならない」との発言を紹介する。この岸の政治哲学に翻弄されたのが、岸の「親友」藤山愛一郎氏だった。

 安保改定交渉を仕切ったのは、藤山氏でこの交渉過程の中で三つの密約を結んだ。即ち事前協議密約・「基地権密約」・「朝鮮戦争・自由出撃密約」の三つである。この密約の解明には第2章が割かれ、歴代の外務大臣、特に東郷文彦氏らの失態が論じられている。

 密約にサインしたのは藤山氏である。つまり岸は自分の手は一切汚さず、藤山という濾過器を使って密約の問題を処理した。そしてこの藤山氏を差し置き首席全権として渡米し、調印式では岸が署名して米国側は国務長官が署名した。

 六月二三日、未来の首相候補との口説き文句で内閣に誘われ2年にわたる苦労をしてきた藤山氏が閣議に参加するため息せき切ってきたのに、閣議は散会し当然ながら労いの言葉もなかった。まさに岸の冷血は藤山氏には耐え難く、その後藤山派は独立していった。

矢部氏は穢い仕事は「親友」にやらせ上手くいったら濾過器として捨て去り、自分はきれいな水を当然の如く飲むという岸のやり方を、安保改定後の日本社会において巨大な「情報の断絶」を生み、日本外交上の大混乱を引き起こした原因だと指摘したのであった。

 密約にサインしたのは藤山氏、外務省から選抜された6名のスタッフも次々と海外勤務になり、藤山氏を政界から追い出す形になれば、密約は米国の解釈主導となる他はない。

 岸は米国に高く評価されたが、それは彼の反共主義と米国の核戦略を良く理解していた点にある。こうして彼がCIAから巨額の「秘密資金」と「選挙についてのアドバイス」を受け続けることになった。2006年に、この事実は米国国務省も認めており、既に歴史的事実としては確定している。しかし秘密の「岸ファイル」はいまだ公開はなされていない。なぜなら岸が米国に果たした役割が大きく、公開した場合現代の日本政治に与える影響は大きいとの理由があるからである。つまり安倍総理の在任中は無理なのである。

 90年代に田中金脈を暴いた立花氏の担当編集者として仕事していた矢部氏は、当時の1958年から1960年代の自民党政権[岸・池田・佐藤政権]にはCIAからずっと資金提供がされていたとのニューヨーク・タイムズの大スクープにはショックを受けた。失脚した田中総理は「日本のエスタブリッシュメント」との繋がりがなかったから、自分で金を集めるしかなかったと言われてきた。しかし今考えれば「日本のエスタブリッシュメント」とはCIAのことだと矢部氏は理解した。何という苦々しい真実であろうか。

 そして岸が「絶対にやってはいけなかったこと」とは、先の三つの密約である。まさに今必要なのは、これらの密約がその後の日本社会にどのような混乱をもたらしたかについての、正確な歴史認識とその具体的な分析だと矢部氏は指摘する。その具体的な追求に第4章と第5章の2章を割いている。実に読者にはワクワク・ドキドキとした展開である。

 本書こそ、これらについての正確な歴史認識とその具体的な分析をした著作なのである。

 是非、読者の皆様の一読をお薦めしたい。(直)案内へ戻る


 『イギリスの工場・日本の工場』(上・下)  ロナルド・ドーア  ちくま学芸文庫

◆知日派による比較労働論

 11月13日、新聞の片隅にロナルド・ドーアの死亡を知らせる記事が掲載された。ちょっと古い人にとっては感慨深いものもある。そのロナルド・ドーア。欧米の労使システムを考える上で、多数の示唆に富む本を残した。その一冊が本書だ。

 実はだいぶ前、かつて著者の『働くということ』という新書本の紹介記事を本紙で書いた。そのときも、本当は本書を紹介したかったのだが、急いで読み返すのができなくて、代わりに『働くということ』という新刊本を紹介したのだった。

 当時の日本では、日本の国鉄分割民営化の闘いなどに関心が集まっていたし、私としては、それと比較してポーランドの連帯労組やイギリスの炭鉱ストライキなど、欧米の労働システムに関心が向かった。いろんな本を読んだのだが、本書を読んで、欧米の労働システムの成り立ちがよくイメージすることができた記憶がある。

 著者は比較社会学者で、本書は、日本とイギリスの労働システムを比較することで両国の労働システムの違いを実証的に説明することを目的にしている。そのために、日本の「日立製作所」の二つの工場とイギリスの「イングリッシュ・エレクトリック社」(EE社)の二つの工場という、4つの工場の綿密な調査と従業員からの詳細な聞き取りを実施している。

◆異なる労働システム

 本書の構成を簡略化して記すと、まず、両国で調査した4工場の概略とそれぞれの工場での労働者の構成や採用・訓練方式の違い、次に賃金や労組の成り立ちが比較・分析され、その要約がなされる。次に両国の雇用システムの比較やどちらのシステムがより普遍性をもつのか、どちらのシステムに収斂していくのか探るものになっている。最後は、当時、高成長していた日本の労働システムが成立した諸源泉やその歴史的評価が示される、という構成になっている。

 両国の特徴や違いについて、イメージしやすい部分を簡単に紹介したい。

 まず雇用――。日立では基本的に終身雇用で、会社は個々の労働者の生涯にわたる会社への貢献を期待して雇用する。EE社では労働者の移動率が高く、会社は個々の業務を遂行できる個々の労働者の技能を雇用する。

 賃金――。日立は属人給の年功賃金が基本で臨時工と明確に区別されており、賃金交渉は個々の企業ごとにおこなわれる。EE社では賃金は時給を基礎とした同一労働=同一賃金で、交渉は企業ごとにではなく全国的、地域的に同じ業種ごとに行われる。

 したがって、労働組合も、日立では企業ごとにまるごと組織される企業別組合だが、EE社では一つの会社でも機械工や溶接工の様に、技能・職能ごとにいくつもの職能別組合が存在する。日立では、同じ日立社員という利害集団・帰属意識が形成されるが、EE社では社員意識が薄く、利害集団・帰属意識は同じ技能を持つ地域内や全国レベルでの職能集団となる。

 これらの労働システムの違いは様々な要因が考えられるが、なかでも長い年月を経て形成されたイギリスの労使システムに対し、日本では産業社会が出来てから組合が整備されたこと、労働者の闘いと組織が確立するよりも先に、敗戦による連合国主導の民主化で労働基準法などの労働法制などが整備されたこと、などが考えられるという。いはば「後発効果」だ。

◆同一労働=同一賃金

 安倍政権が掲げる働き方改革で、安倍首相は、高度プロフェッショナル度の導入や一旦は取り下げられた裁量労働制の対象拡大など、企業・経営者側の意向を強引に推し進めようとしている。それがあまりに経営者寄りなので、人気取りもあって「同一労働=同一賃金」の実現も進めるとしている。しかしその「同一労働=同一賃金」、本来の、というか、欧米で広く賃金制度の基礎とされているものと似て非なるものでしかない。

 本来の同一労働=同一賃金とは、基本賃金本体の同一のことだ。しかし政府が実現するとしている同一労働=同一賃金は、各種手当てなど賃金に付随するものの同一でしかなく、賃金本体は、根拠がはっきりしていれば差別してもかまわない、というものでしかない。

 例えば、同一労働=同一賃金について、8月30日に、具体的なルールを定めるガイドライン(指針)の原案を示した。が、正社員と非正社員で違いを認めないものとして、通勤手当や皆勤手当など各種手当、それに食堂や休憩室の利用などをあげただけだ。基本給については(職業経験や能力、業績や成果、勤続年数などの差に応じて支給)、賞与については(業績などへの貢献度に応じて支給する場合、貢献度に応じて支給)などと、基本的な差別を認めたものに終始している。

 その賃金は、いわゆる日本的労使関係、すなわち新卒一括雇用を起点とした終身雇用、年功賃金、企業別組合というトライアングルの一環であって、現実は他の二つと密接に絡み合っている。だからまやかしではない本来の同一労働=同一賃金を実現するというのであれば、終身雇用や企業別組合という日本的雇用システムそのものを根本から変えていくものになる、はずだ。

◆時代性と普遍性

 日本の労組は戦後の一時期を除いて、「賃金制度」をめぐる闘争での敗北の連続だった。60年前後に総評の議長だった太田薫が推し進めた春闘は、反面で、労働者の団結を強化する連帯型賃金制度を放棄した、賃上げの獲得額重視の闘争方式だった。それは、「クソがついた千円札でも千円は千円」という太田語録がよく語っている。こうしたベースアップ重視の春闘方式によって、経営者サイドにとって属人的管理がしやすい能力主義賃金などに徐々に変質させられた、という経緯がある。当然の結果として、しだいに賃金に対する労働者の関与が排除されてきた。今では、成果給だとか年俸制という査定給が中心になり、労働者側の発言権・決定権はゼロに等しい。経営側の一方的な賃金決定方式に甘んじているのが実情だ。

 来年の春闘で連合は、ベア率よりも月額賃金の実額をより重視する方針を打ち出すという。そのほうが大手と中小の賃金格差を縮められる、と強弁している。が、実際は、ベースアップ要求と獲得額の差に注目が集まるのを、すなわち連合の無力さに注目が集まるのを避けるためだとしかいいようがない。

 それでなくとも春闘での名目的な旗印でしかなくなっているベース・アップさえ要求として掲げられなくなっているのが実情なのだ。現にここ数年、安倍首相による〝官制春闘〟にお株を奪われたまま、毎年の賃上げ要求も半分ほどの獲得実績しか残せていないのだ。

 本書でも示唆を与えられているように、私たちがめざすべきものは、賃金については連帯型賃金としての同一労働=同一賃金、それに連帯型の組合組織としての企業横断型の産業別労働組合だろう。

 これは単に欧米流やイギリス流の労働システムを日本に移植する、という話ではない。なにより、労働者が企業の壁を越えて団結し、その力を背景に経営側に向き合わなければ、処遇の改善などを実現できない、という現実の反省の上にたっての将来展望だ。個々の企業に従属した生き方・働き方では、結局経営側にフリーハンドを与えることにならざるを得ないからだ。

 ところで、本書が書かれた時代はかなり〝昔〟だ。イギリスで出版されたのが1973年で、調査=聞き取りをしたのは69年だ。英語版で出版されたのは78年、日本語版は87年の出版だ。文庫本化されたのは93年のことで、私が読んだのも文庫版だった。出版から大分経っているが、まだネットで購入できるので紹介することにしたわけだ。

 日本の労働システムは高度成長の終焉以降、大きく変貌してきた。が、大企業の正社員を中心に、いまだ一括採用・終身雇用、年功賃金、企業別組合という「日本的労使関係」は、実質的に維持されている。だから日本の労働システムの特殊性や独自性を判別するための普遍性があり、本書の研究が意味をなさなくなったわけではない。組合に関心を持つ人、なかでも労組活動家には是非手にとってほしい一冊だ。

 最後に、本書では日本の労働者・組合の課題について多くの示唆を与えてくれるが、なかでも次の様な指摘は、単に労働問題に止まらず他の政治課題などについても当てはまる、普遍的な真実を示唆してくれるものだろう。「イギリスでは、労働者の権利や「経営権の制限、同一労働同一賃金」などの原則が確立したのは粘り強い闘争の結果であって、国による法制化が先にあったわけではない。法制化の後もそれを維持したのは法的制裁だけではなくストライキであった。」(下巻246ページ)(廣)案内へ戻る


 コラムの窓・・・政治的災害、または災害的政治!

 流行語大賞にどんな言葉が選ばれるのか、この年の瀬らしい話題は世相を反映するものとして見るべきものがあるように思います。そのなかで、私がなるほどと思う言葉は「高プロ(高度プロフェッショナル制度)」「ご飯論争」「首相案件」「#MeToo」など、これらは安倍自公政権がらみの流行語です。なかでも、質問をはぐらかす国会答弁が繰り返されているのを〝ご飯論争〟「(パンは食べましたが)ご飯は食べませんでした」と名付けたのは秀逸でした。

 また、「奈良判定」や「悪質タックル」に見られるスポーツ界の澱は、東京五輪を頂点とした勝利至上主義によってもたらされたものです。この界隈には有象無象の〝小天皇〟が君臨し、判定を歪め反則を強いる。それを可能にするのが暴力であり、巧妙に作り上げられた支配隷属関係です。

 安倍一強支配が続くなかで、官僚や政治家のなかでも同じような力学が働いているのでしょう。このことは流行語ならぬ重大事件を見てもよくわかるのですが、例えば「4・27南北首脳会談」はどうだったでしょうか。大日本帝国による朝鮮植民地支配、その影響と戦後世界体制、東西冷戦による朝鮮戦争と南北分断。その軍事境界線を南北の両主脳が越える映像は、南北統一を待ち望む人々だけではなく、〝朝鮮危機〟が遠のいたことに多くの人々がホッとしたことでしょう。

 その後、6月12日にはシンガポールで米朝首脳会談が開催され、朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の休戦から終結へと向かうことになりました。紆余曲折はあるでしょうが、この道をふさぐことはできないでしょう。ところが、安倍首相や河野外相はこれが気に食わないようで、制裁と軍事的圧力を強めようとしています。10月30日の韓国大法院による徴用工裁判判決でも、〝嫌韓〟を煽るばかりで、謝罪と補償を拒否しています。

 今やマスコミも知識人もすっかり愛国心に浸り、拉致解決がすべて、韓国政府は国家間の約束を守れと叫んでいます。しかし、これは歴史的事実を見ない恥かしい発言です。最近ではこれに北方領土問題が加わり、愛国大合唱が起こっています。

 少し角度を変えた重大ニュースとして、地震や台風等の天災をあげてみましょう。6月18日の大阪府北部地震、9月6日の北海道肝振東部地震、7月に広島を中心とした水害、9月4日に日本に上陸した台風21号、等と今年は災害の年となりました。その都度、多くの犠牲者が出て、住宅が失われました。そうしたなかでも、関西空港が水没し、ダム放水によって水害が増大し、北海道では北電によって全島停電・ブラックアウトになったのは人災と言えるのではないでしょうか。

 しいて言えば、こちらも政治がらみ。天災を防ぐことはできませんが、被害を少なくすること、生活再建を速やかに行うこと、住宅を保障することは国家の存在意義が問われる課題です。外には他国を敵視し、内には自己責任を押し付ける、任務を放棄して私欲に走る、そん政治がもう何年も続いてきました。こんなぬるま湯状態に慣れ親しんでいたら、いつかあなたも私も政治と災害によって住む家を失うかもしれません。 (晴)


 「エイジの沖縄通信」(NO56)・・・これでいいのか?安倍政権の軍拡路線!

 東京新聞のシリーズ「税を追う/歯止めなき防衛費」は大変参考になった。

 安倍政権が「無人偵察機グローバルホーク」や「地上配備型迎撃ミサイルシステム/イージス・アショア」等の米国兵器をまさに米国からの「いいなり値段」で購入している事等々の事実を知った。

 年内に策定する次期中期防衛力整備計画(中期防)は、2019年度からの5年間に購入する兵器の内容や総額を示すリスト。これについて、麻生財務相は「防衛費を増やしていかざるを得ない」と述べている。現在の中期防は総額の上限を23兆9700億円程度としているが、後年度負担と呼ばれる兵器ローンは5兆円を超えていると言う。

 軍拡路線をすすめる安倍政権。その実体を知る場所が沖縄である。(富田 英司)

1.辺野古工事は中止すべきだ!

 11月25日の東京新聞を読んで驚いた。

 辺野古工事の警備費が3年間で260億円、1日で計算すると毎日2000万円の警備費を使っていたという。

 現地の辺野古ゲート前に行けば分かるが、辺野古ゲート前に青い服を着た警備員(ガードマン)がずらりと並び立っている。1日中、交代しながら立っている。

 報道されて知っていると思いますが、辺野古ゲート前では座り込み抗議を続ける人達を機動隊員が強制的に排除し一定時間柵の檻の中に閉じ込める。大浦湾などの海上では、海上保安庁職員が抗議するカヌーを転覆させるなどの危険な暴力排除を繰り返している。

 それだけでなく、実は沖縄防衛局は民間警備会社と警備業務を契約し、辺野古ゲート前の警備員(ガードマン)や海上では民間警備艇を配置している。

 東京新聞は次のように報告している。

 「新基地建設が本格化した2014年以降、海上保安庁の警備に加え、民間の警備艇が24時間態勢で監視している。海上警備の予算は15~17年度で計161億円。シュワブ・ゲート前での陸上警備予算を合わせると、3年間の総額は260億円になる。これは1日で計算すると2000万円の警備費となる」と言う。

 「地元の人達は『1日の人件費が1人9万円で積算されており、あぜんとした。国策だったら何でもありなのか』と。『本土の人は、辺野古は沖縄だけの問題と思ってるかもしれないが、自分たちの税金が無駄に使われているわけさ。国民一人一人にしわ寄せが来ているよ』と述べている。

 新基地建設予定の大浦湾の海底は「マヨネーズ状態」になっており、建設専門家は「この場所での基地建設は無理だ」と述べている。もし建設可能として、このまま辺野古新基地の建設を進めれば、一体どのくらいの建設費(税金)が必要になるのか?建設にいったい何年かかるのか?誰も分かっていない。

 これ以上の建設費(税金)を無駄にしないためにも、辺野古新基地建設工事はすぐに中止すべきである。

2.石垣島・宮古島の「陸上自衛隊基地」強行建設!

 政府・防衛省は辺野古の新基地建設だけでなく、南西諸島の与那国島に16年3月に陸自の沿岸監視隊を配備した。そして現在、石垣島・宮古島・奄美大島に陸上自衛隊基地(ミサイル部隊、等)建設を強引に進めている。

 沖縄戦の悲惨な経験をした島の住民は、また戦争に巻き込まれてしまうのではないか?と考え、自衛隊基地建設に反対する運動を続けている。

①石垣島の陸自基地建設で地権者に無断伐採!アセス逃れ!

 石垣島の陸自基地建設の予定地でとんでもない事、いやとても許されない行為が行われたと言う。防衛省から建設測量を委託された業者が、建設に反対する地権者の農園に無断で立ち入り、木を伐採したり栽培作物を勝手に切り落としてしまったと言う。

 なぜ?こんな事が起こったのか。その理由について東京新聞は次のように報告している。

 『「防衛省が陸自駐屯地の着工を急いでいるのは来年4月以降にずれ込むと、沖縄県の環境影響評価(アセスメント)条例の対象になり、調査などで整備が遅れてしまうからだ。建設予定地の買収は済んでなく、反対する市民も多い。いわば見切り発進のように着工するのは、アセスから逃れることが狙いだ。」と指摘する。

 勝手に木を伐採された地権者や近くの果樹園経営者の人は、「防衛省はやっていることがはちゃめちゃ。既成事実を作って反対する人を諦めさせようという意図を感じる。」「ずるいことをするなと言いたい。民間事業者を指導していく立場の国が、率先してアセス逃れをするなんて、今後、どう指導していくというのか」とあきれる。』

 こうした政府の強行姿勢に怒りの声を上げる基地建設予定地の4区(於茂登・開南・川原・嵩田)の住民は基地建設予定地で抗議集会を開き、11月21日に沖縄防衛局が4地区住民(世帯数は約120世帯)を対象に実施する説明会に参加しないことを決定。
 当日、市健康福祉センターで開催された沖縄防衛局の4地区住民を対象にした説明会には、11人しか出席しなかったと言う。

②宮古島の陸自基地建設工事、急ピッチで進む!

 防衛省はこの南西諸島(与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島、等)の各陸自基地を統括する中心となる司令部を宮古島に配置することを決め、昨年から野原地区に司令部(強固な地下壕建物)建設を始めている。

 宮古島の陸自配備の様子を「琉球新報」(11月20日)は次のように報告している。

 『宮古島市ではゴルフ場だった「千代田カントリークラブ」跡地が警備隊の建設予定地に決まり、昨年11月に造成工事が始まってから1年となる。現場では隊舎建設などが急ピッチ進んでおり、本年度末に380人規模の「宮古警備隊(仮称)」が発足する予定。

 さらに地対艦、地対空ミサイルの各部隊も2019年度以降に順次編成される計画で、合わせて700~800人規模の部隊となる。 

 この警備隊建設地に隣接する野原部落会や千代田部落会は反対決議を採択したが、最近工事が進むにつれて、決議撤回の立場に転じているようだ。

 一方、今年1月に防衛省がミサイルを保管する弾薬庫や小銃の射撃訓練の配置先として市城辺の保良鉱山を選定した。そして、本年度内の用地取得をめざし、19年度予算概算要求に射撃場建設の関連経費約42億円を盛り込んでいる。

 鉱山に隣接する保良部落会や七又部落会は建設に対し反対決議を採択しており、今も集落として反対の意思を示している。』案内へ戻る

 
  読者からの投稿・・・話にならない政府の入管法改正案

 今国会で「入管法改正案」が審議されているが、外国人労働者問題等を取り組んでいる労働運動関係者の話を聞く機会がありとても参考になった。政府・与党の改正案はまったく話にならないと思う。

 なぜ、まったく話にならないか?と言えば。根本的な問題をまったく無視しているからだ。今の日本社会の現状と将来の問題点を直視していない。

 この問題を機会に、諸富徹著「人口減少時代の都市」(中央公論新社刊)を読んでみた。

 諸富氏の問題意識は次の視点である。

 「日本の都市はいま、大きな岐路に立っている。戦後数十年、都市はずっと経済成長、人口増加、地価上昇という三条件の揃った右肩上がりの状況で成長してきた。しかし今後、こうした三条件は反転し、低成長、人口減少、地価下落という新たな三条件下で、私たちは生きていかねばならない」と。また、「筆者は過去数年間、人口減少に備えることの必要性を、自治体の首長や議会議員の方々に説く機会があったが、いずれも露骨に嫌な顔をされた経験がある」と述べている。

 諸富氏の指摘は、今の国会の状況をそのまま指摘しているように思われる。

 多くの有識者が指摘しているように、これからの日本社会は未曾有の「人口減少時代」を迎える。それに対してどうするか?答えは1つである。これからは外国の人に日本に来てもらい助けてもらうしかないのである。これが現実です。この事を素直に認めないから、将来に備え明確な方針を打ち出せないのである。

 政府・与党は「深刻な人手不足」を認めるから、5年間で34万人の受け入れを提案している。しかし、その受け入れ内容は従来から多くの労働運動関係者から問題だと指摘されてきた「技能実習生」「留学生」制度の拡大という小手先の「改善」しか提起出来ない。

 また、野党も「制度設計に不備が多い」と問題点をしっかり指摘しているが、将来の「共生社会」をどう築いていくのかの展望を語れない。
 国際的にも、先進国の人口減問題は深刻になっていく。そうした将来を見据えた根本的な政策(移民政策、等)を取っていかなければ、日本社会の衰退を止めることは出来ないと考える。(小林)


 表を読む・・・下がり続ける実質賃金

 企業の内部留保(企業が事業から得た利益のうち、配当や設備投資に回さずに手元に残している「貯蓄」のこと。行き場のない金余り現象といえる)が、金融・保険業を加えたベースでは前年度比10.2%増の507兆4454億円と、初めて500兆円を突破し、過去最高を更新し続ける中、アベノミクスによる政府主導の賃上げ要請が行われたが、この表に見られるように名目賃金は多少上がっているものの、物価上昇率に追いついておらず、実質賃金は下がり続け、安倍政権が過去最低記録を更新している。
 
 企業を儲からせ、そのおこぼれを分け与えようとするアベノミクスの実態は、格差拡大と相対的な貧困生活をもたらしている。案内へ戻る


 色鉛筆・・・居住権を無視した 借上復興住宅からの追い出し

 阪神・淡路大震災から23年が経過した現在、西宮市は被災した入居者を追い出す裁判を起こしています。入居者が西宮市に、20年間の入居期限があることを告げられたのが、なんと入居17年も経った2012年だったと言います。しかも、追い出される入居者のなかには、80歳を超える高齢の女性もいて弱者切り捨ては誰の目にも明らかです。災害はいつ起こってもおかしくない、本来の行政の役割を問い直す早急の課題と言えるでしょう。

 西宮市は条件によっては5年の延長は認めたものの、市の決定に従わない7世帯の入居者を裁判所に訴えました。高齢者を被告席に立たせることによる精神的な苦痛・不安を、考える予知は無かったのでしょうか? 12月に入ると、本人尋問が始まる予定です。予想される反対尋問での心無い質問に、どう対処されるのかと、心配はつのるばかりです。

 神戸市も同じように裁判を起こし、既に和解による退去が決定した入居者がいます。裁判では、様々な立場からの意見書が出され、地域医療に携わる医師からは健康面での配慮の必要性、居住環境を研究されている学会からは、環境の変化が悪影響となる根拠の実証など、説得力のあるものばかりです。なぜ裁判官に通じないのか、不思議でたまりません。

 「居住福祉社会」をめざし研究・実践されてきた早川和男さんは今年7月、87歳で他界されました。早川さんは病を押し、西宮市の被告に立つ住民のために意見書も書かれました。半世紀に及ぶ「住の公共性」への構想を少し紹介します。

 「居住福祉とは、主権者としての市民の安全と暮らしと幸福のために、まちや村や山里や海辺に根ざして生きてきた人々の生業を守る。住民が力を合わせてつくりあげてきた地域の伝統文化を外からの力で壊さず維持し発展させる。それらによって、その土地に住む人々の安全と暮らしを支え、いっそう豊かにする。森や農地や川や海辺を保全し、必要な住居の保障、コミュ二ティの維持、各種老人福祉施設、障がい者施設、公民館、幼稚園、保育所、公園、ちびっ子広場、緑陰、水面の保全などの生活環境施設を整備する。――要は日常の生活基盤の充実に力を注ぐことである。一言で言えば、それは基本的人権としての『居住の権利』を守ることである」―災害に負けない「居住福祉」より

 一審の判決は、来年春ごろと予想されていますが、私たちが市民として出来ることは何かを問い、今、動き出しています。まずは、「追い出し裁判」を一人でも多くの市民に知らせること。そして、政府が決めた法律や規則よりも住民の人権を優先させ、西宮市に和解に応じるよう、働きかけて行きたいと思います。(恵)

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