ワーカーズ591号  2019/2/1    案内へ戻る

 通常国会の開会と安倍政権を根底から揺るがす難問の数々

 1月28日から通常国会が召集され、会期末は6月26日。第25回参議院議員通常選挙は7月4日に公示、そして7月21日に投票の予定である。ここに来て通常国会冒頭で解散説が浮上している。それはなぜか。今、安倍政権を根底から揺るがす数々の難問が吹き出し、そのどれ一つをとってみても簡単には片付けられないものばかりだからである。

 まず第一の問題は、経済統計の基本となる賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」偽造である。五百人以上事業所の全数調査を抽出に切り替えた不正は、04年から行われ、その結果、雇用保険の失業給付・労災保険等が過少支給となった被害者は、延べ約二0二四万人、必要となる追加給付の総額は約八百億円の巨額に達する。

 安倍政権は、既に閣議決定していた三十一年度国家予算案を訂正し、一般会計総額を実に六億五千万円も増額する。まさに政権を根底から揺るがす前代未聞の一大事件である。

 第二の問題は、ルモンド紙「仏捜査当局が東京五輪招致に絡む贈収賄容疑で、JOCの竹田会長に対する本格捜査を開始」の報道である。この贈収賄疑惑は三年前の五月にも一度ニュースになる。仏捜査当局はディアク国際陸上競技連盟前会長子息の会社銀行口座に日本の五輪招致委員会から二億二千三百万円の送金を突止め、その狙いは国際オリンピック委員会の委員の買収にあるとした。当時、竹田会長は国会に呼ばれたのだが「正当なコンサルティング料を支払っただけ」と疑惑を否定。週刊誌ではディアク氏子息の会社はペーパーカンパニーで交渉した電通が問題となったが、第三者委員会の調査で不正はないとされた。今回、緊急の記者会見で竹田会長は不正はないと言うばかり。取材に集まった記者からの質疑を一切取らなかったため、かえって疑惑は一層深まったと言われる始末。

 第三の問題は、アベノミクス成長戦略の目玉である原発輸出戦略の頓挫である。結果、日立は英原発建設計画を凍結し、今期に三千億円の減損損失を計上する。無反省な世耕経産相は、日立は原発建設計画を凍結したものの、政府としては引き続き原発輸出の政策を進めると繰り返す。そして最後の決定的な問題は、北方領土問題での安倍政権の大失敗がある。これまでの数十年間、小中学校の教科書で北方領土は日本固有の領土であり、何としてでも返還を達成さねばならぬ、と言い続けてきたのに、実際はこのお粗末なのである。

 そもそも本来であれば、安倍総理は閣議決定において、これまでの四島返還から二島返還へと立場を変えたのだ、との認識を日本国民に周知しなければならなかった。その他にも今でも森友・加計学園問題の追及はエンドレス状況。まさに安倍政権は満身創痍である。
 今通常国会では、これらの問題について野党から鋭い批判が集中するのは必至だ。今度こそ国会では安倍政権を火だるまにし、断固打倒していかなければならない。(直)


 またも一線を越えた軍事優先政治――軍拡路線を突き進む安倍政権にノーを!――

 安倍政権のもとで、またしても専守防衛という建前を脱ぎ捨てる一歩を踏み出した。敵基地攻撃兵器の保有となる長距離巡航ミサイルの導入や護衛艦「いずも」の空母化などだ。

 特に多方面で軍事力拡張を進める中国を仮想敵とする軍事的対抗路線への傾斜が目立つ。

 あの無謀な侵略戦争への反省もどこへやら、周辺国との軍事的対峙に突き進む安倍政権の暴走にはノーを突きつける他はない。

◆敵基地攻撃兵器

 1月28日から始る通常国会。毎月勤労統計の不正問題での攻防が注目されているが、通常国会に提出された新年度予算案には、敵基地攻撃を可能とする兵器の導入のための予算も計上されている。スタンド・オフミサイル=巡航ミサイルの取得費や「いずも」型護衛艦の空母化に向けた調査研究費などだ。これらは、昨年末に安倍内閣が閣議決定した新防衛計画の大綱(=防衛大綱)にも明記されていたものだ。

 これらの敵基地攻撃能力の保有については、歴代自民党政権が、北朝鮮のミサイルの脅威を煽り立てて、その対抗策として必要性が叫ばれていたもので、それが政府としての配備方針となり予算化されたものだ。

 しかし、長距離弾道ミサイルや戦略爆撃機・攻撃型空母などは、歴代自民党政権も「攻撃型兵器であり専守防衛の立場からはその保有は許されない」としてきたもの。それを実質的に保有するということは、これまでの歴代政権が掲げていた専守防衛という原則から逸脱するものだ。

 政府は、空母化にしても戦闘機を常時搭載しなければそれは〝防御型〟空母であって、〝攻撃型〟空母とはならない、そもそも多用途の〝護衛艦〟であって空母ではない、あるいは巡航ミサイルについても、離島防衛を目的としたものであれば、これも〝防御型〟ミサイルだ、などと笑止千万な詭弁と強弁に終始している。が、それは運用しだい。常時搭載に切り替える事はいつでも可能だし、敵からの攻撃範囲外から北朝鮮や中国の内陸部を攻撃することも可能だ。

 今回の大綱への明記・予算化は、専守防衛という建前をまた一歩踏み越えるものだ。かつて進めてきた偵察衛星の保有や宇宙空間の軍事利用を可能としたこと、さらには集団的自衛権行使に道を開いたことなど、歴代自民党政権が推し進めてきた軍事優先政策による破滅への一里塚だという以外にない。

◆膨張する軍事費

 軍拡路線を象徴する新型兵器の導入に前のめりの安倍政権だが、それを支える軍事予算の膨張も目立つ。

 この通常国会に提案された新年度の軍事予算は5兆2574億円、安倍政権になってから6年連続で増加して5000億円も増えている。また今後5年間では27兆円4700億円程度を「目途」とし、今後増える可能性も残している。防衛費の増加が既定路線、聖域化しているのが実態だ。

 他方では、社会保障支出の高齢化にともなう自然増が本来6000億円見込まれているところ、今年も1200億円削減されて4800億円増に押さえ込まれている。秋に見込まれる消費増税の緩和策として新たに計上された分を除けば、既存のサービスが1200億円も削られているのだ。

 当初予算だけではない。安倍政権では、本来当初予算に計上すべきものを補正予算に廻すことで、当初予算の増え方を少なく見せるという手法を多用してきた。特に17年度の補正予算では、弾道ミサイル攻撃への対応(622億円)や米軍の陸上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入費など、2300億円の巨額な防衛関連予算が計上されている。

 安倍政権下の軍事費膨張の現実は、建前としての対外協調路線を棚上げにして対外強硬路線=軍事優先外交への傾斜を象徴しているのだ。

◆戦争が可能な国家へ

 先に触れた「いずも」型護衛艦の空母化は、実質的には昨年決まったものだ。その内容は、固定翼艦載機を発着できるように甲板を改修すること、その上で、短距離離陸、垂直着陸可能な攻撃機(STOVL機)F35Bを艦載する、というもので、その先には、本格的な運用可能な三つの空母艦隊の保有を見据えたものになっている。

 「いずも」は、見た目で空母そっくりの全通甲板を持つヘリコプター搭載護衛艦として建造されたものだったが、建造当初から空母化や空母保有を見据えた、そのための目慣らしの役割を背負った艦艇でもあった。今回それを具体的な取得・配備計画に引き上げ、さらに予算措置をするまでに到ったもわけだ。これは、安倍政権が、いくら離島防衛を目的とするものだ、と強弁しても、遠洋から艦載機で敵地を攻撃できる、明らかな攻撃用兵器だ。当然、日本が保有する兵器は防衛目的のものに限る、という従来の専守防衛路線を逸脱したものだ。

 遠く離れたところから敵地に打ち込むスタンド・オフミサイル=巡航ミサイルの保有についても同じだ。

 安倍政権では以前から北朝鮮を念頭に、敵基地攻撃能力の保有が欠かせないとしてきたが、実際は敵基地への先制攻撃も可能で、先制攻撃能力を隠すような敵基地〝反撃〟能力だ、といった言葉のごまかし策も弄してきたが、これも建前としての専守防衛路線を逸脱していることは明らかだろう。

 その巡航ミサイルで政府は「離島防衛で使用できる」と説明しているが、実際は「いずも」を空母化して艦載したF35B戦闘機に搭載すれば、日本から遠く離れた東シナ海や南シナ海,あるいは日本海から発艦すれば、北朝鮮は及ばず中国の内陸部まで射程圏内に入る。むしろ対中国用に開発保有する意図が見え見えの代物なのだ。

 安倍政権下で専守防衛を掲げる日本も、再び現実に戦争ができる攻撃力を持つ〝普通の国家〟に脱皮しつつあるのが現実なのだ。

◆隣国とは対峙!?

 現実に敵基地攻撃能力の保有を明記した防衛大綱では、サイバー・宇宙・電子戦での統合運用、いわゆるハイブリッドな防衛体制づくりを強調している。これは近年明らかになっている中国による宇宙・サイバー・電子戦での急速な体制整備を念頭に置いたものだ。北朝鮮の脅威が棚上げされているいま、これまで以上に中国の軍事的脅威を前面に押し出した、いわゆる「対中シフト」そのものになっている。

 日本の対中シフトは、別の面からも窺うことができる。

 政府は沖縄の辺野古新基地の埋立工事を強行しているが、その辺野古基地。当面は米海兵隊の普天間基地の代替基地として米海兵隊が使用することになっているが、将来的には自衛隊も使用することを見込んでいるのだ。米国は海兵隊の前線配備にこだわっておらず、いずれ沖縄から撤退する。その後を自衛隊が使用することを見込んでいるわけだ。

 現に以前、防衛省で米軍のキャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンに自衛隊が常駐することが検討され、また今度の新防衛大綱でも「訓練施設や訓練区域を含む自衛隊施設及び米軍施設・区域について、共同使用に係る協力や、強靱性の向上のための取組を推進する。」との文言も盛り込まれている。安倍政権でもいずれ沖縄の各地の基地での米軍と自衛隊の共同使用を拡げていく計画があるわけだ。辺野古になんとしても基地を作りたいという政権の姿勢は、いずれそこに自衛隊部隊を展開させたいとの思惑にもとずいているのだ。

 さらに先日明らかになった鹿児島県の馬毛島の買収についても、同じ事がいえる。現時点では米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)場として利用するとしているが、そこでも南西諸島有事を見込んだ自衛隊による物資の集積基地、さらには「いずも」艦載機によるFCLPも含めた共同利用を見込んでいるのだ。

 その他、いま普天間を含めて沖縄本島以西の先島諸島で自衛隊基地の新設・拡大が進んでいる。これらすべて、軍事力増強を進める中国を念頭に置いたものだ。かつて軍国主義日本が侵略した中国、いま長期にわたる経済成長で、世界第二位の経済・軍事大国となった中国。その中国に軍事的な対峙の構えを前面に押し出す安倍政権。そんな軍事的対決路線で果たして隣国との良好な関係づくりがうまくいくとでも思っているのだろうか。

◆止めよう軍事優先政治!

 こうした安倍政権の発足以降の軍事優先政治は、トランプによる軍事費増加の要求(で強いられている面もあるが、それを追い風にもしている。トランプ大統領は、地球規模での米軍の展開に関して、当該国の負担増を声高に求めているからだ。米軍の海外基地への当該国の負担増や各国の軍事費のGDP比2%への増額要求や〝バイ・アメリカン〟などだ。

 現在日本の防衛費はGDP比で1%ほどだが、これを2%にすれば10兆円を越える軍事予算になる。現時点で2%にすることは財政破綻に繋がるので不可能だ。が、安倍首相の下で年々増加し続ける防衛予算、今後同じペースで増え続ければ、近い将来2%規模に膨らむことはないとはいえないのだ。単純計算で毎年5%づつ増やすだけで15年ほどで2%規模になってしまう。現に安倍首相は、昨年10月29日の代表質問への答弁で、「数十年先の,未来の礎となる防衛力のあるべき姿を追求していく」と明言しているのだ。そうした軍拡を進めていけば、当然他の予算は削られ、軍事優先国家の色合いがますます深まる以外にない。

 軍拡路線をひたすら突き進む安倍政権。それを阻止するのは、まずイージス・アショア建設地である秋田市や山口県阿武町の反対運動、鹿児島西之表市での馬毛島への訓練基地移設反対運動、それに沖縄の辺野古基地建設反対運動など、各地の反基地闘争の拡大と連携だろう。その上で本土での反軍拡の世論形成、そして4月の統一地方選と衆院の補欠選挙、そして7月の参院選挙での闘いにつなげていきたい。

 今年は3年に一度の参院選がある政治決戦の年だ。米中間の覇権争いも含めて、安倍政権の軍事優先政治の増長を許さない、広範な闘いを巻き起こしていきたい。(廣)案内へ戻る

 
 「入管法改正」4月に法施行へ --求められる移住労働者との多面的な連帯

●単なる「労働力」では済まされない

 昨年12月7日、外国人労働者の受入れを大幅に拡大する「入管法改正案」が国会で強行成立し、今年4月の法施行へ向け、各省庁は「政省令」の作成に着手しています。第1の問題はこの法律が移住労働者を単なる「労働力」とのみとらえ「生活者」としての存在を切り捨てていること、第2の問題はしたがって移住労働者は単なる「労働力」ではなく居住・結婚・出産・子育て・医療・言語習得など「生活者」としての多面的な社会的支援と切り離せないこと、第3の問題はこれらすべての課題に「在留資格」「出入国管理」という壁がつきまとう、ということです。

●国内の「出稼ぎ者」と比較して考える

 このことは、国内の出稼ぎ労働者に置き換えて考えてみればすぐ分かることです。地方の農村・漁村から季節的に出稼ぎに来る労働者は、その限りでは雇用主にとっては単なる「労働力」かもしれません。寄宿舎と賃金さえ支給しておけば、出稼ぎ労働者は日常の衣食住をまかない、繁忙期間が終われば、故郷の家族のもとに帰って行きます。例えば出稼ぎ労働者がケガや病気になったり、妊娠・出産することになれば、雇用者は「故郷に帰っていいよ」「実家に帰って出産しなさい」と言って済ませることもできるかもしれません。

●職場結婚したとたん様々な不安が

 しかし、移住労働者の場合は、そういうわけにはいきません。例えば東南アジアから働きに来た若い男女の労働者が、職場恋愛で結婚する場合はどうでしょうか?まず一緒に住む住居を見つけなければなりません。妊娠・出産に当たって仕事を休まなければなりません。会社をクビになるのではないか?強制帰国させられるのではないか?そうなったら出国費用の借金はどうなるか?国内の出稼ぎ者が「子どもが生れるから故郷に帰る」ようなわけにはいきません。こうした不安からSNSで移住者仲間に救いを求めても良い方法が見付からず、めぐりめぐって地域のユニオンに駆け込み相談・・・。

●すべてにわたって「在留資格」「入管」の壁

 国内の労働者なら当たり前の「生活者」としての諸権利が、すべてにわたって「在留資格」と「出入国管理」の壁で隔てられているのです。これらの「壁」を制度的に乗り越えようとしても、もともと「言語の壁」があり、並大抵のことでは乗り越えられません。「日本人と同等の報酬を保障する」と安倍首相は実に安易な答弁をしていますが、きちんとしたセーフティーネットも準備せず、民間に丸投げして済ませるような無責任な法改正には、労働者としてみんな大いに怒りの声を上げるべきことでしょう。

●「労働」「女性」「子ども」など多面的連帯を

 移住労働者との連帯は、その労働者の置かれている状況に応じて、多面的なものにならざるを得ません。全国各地で移住労働者と連帯する活動をしているグループが全国的に集まって「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)を形成し、毎年持ちまわりで「フォーラム」や「ワークショップ」を開催しています。そこでは「労働」「技能実習」「移住女性・貧困」「入管・難民・収容」「地域社会」「子ども・若者」「医療・福祉・社会保障」「人種差別・ヘイトスピーチ」といった各テーマで分科会が設定され、それぞれの課題について報告や討論が行われ、それらを踏まえた全体討論をもとに、「政策提言」が練り上げられ、秋には総務省や法務省、厚生労働省などへの「対省庁交渉」が行われます。議員会館では衆参両院の国会議員を集めたレクチャー(院内集会)も行われています。(各分科会については移住連の『エムネット(2018年10月号)』を読むことをお勧めします。

●地域自治体での闘い

 4月の法施行を前に、各省庁では具体的な「政省令」作成に着手していますが、その内容の多くは、移住者支援を自治体や業界団体に丸投げするものにされようとしています。そのため、各地域での闘いが重要な位置を占めることになります。業界団体が行うとされる各種の業務について、国の出先機関が責任を持って指導監督するよう、地方厚生局や労働局、法務局などに対して交渉する必要があります。自治体には「多文化共生政策」が策定されていますが、それも多くは外郭団体の「国際交流協会」などに丸投げしている実態があります。3月の自治体予算議会に向け地方議員へのレクチャーを通じ、地方議会で具体的に問題点を糾すよう働きかける必要があります。

●統一地方選・参院選の重要テーマに

したがって、これらは4月の統一地方自治体議員選挙における重要テーマとして掲げてゆくべき課題でもあります。さらに実際に4月の法施行の状況と問題点を検証し、6月の参議院選挙の政策課題として、安部政権に突きつけていく必要があるでしょう。(松本誠也)案内へ戻る


 読書室  倉橋 正直氏著『阿片帝国・日本』共栄書房 2008年8月刊行

 関連する動画の紹介―このブログを読みに来た皆様はぜひご覧下さい。
東条英機と関東軍と満州統治とアヘン売買の密接な関係【調査報告 日本軍と阿片】
アドレス https://youtu.be/lt7Hih8vpwU?t=180

 薬物汚染が全世界的に蔓延している。日本もその例外ではない。水際である税関の現場では日夜摘発が続き、持ち込む為の悪知恵の数々は私たちを驚愕させる。さらに取り締まり手を逃れて密輸された違法薬物の被害は実際に無視できないまでに立ち至っている。

 しかし多くの日本人は、薬物汚染問題では日本は単に被害者の立場にあると考えているかのようだ。確かに現在に限定して考えれば、日本は被害者であると言えるかも知れない。だが明治から戦前までの時期を視野に入れて考えると、その様相は一変して日本は違法薬物については、実に世界に冠たる恐るべき加害者であったということが真実なのである。

 即ち明治以来、日本は麻薬生産国であって、阿片・モルヒネ・ヘロインなどの毒物を大量に、かつ長期間にわたって中国や朝鮮を始めとするアジア諸国に密輸していた。事実、世界から監視されていた国家であった。この為、日本は世界で孤立していったのである。

 それが日本が国際連盟を脱退する理由ともなった。このことは当時の多くの日本人にとっても驚天動地の事実である。その結果、中国では一千万人、アジア諸国民も計り知れない害毒を被った。このことはあの「悪名高き」東京裁判でも問題にされたことがある。

 そもそも東京裁判で東条英機や板垣征四郎の二人が国際法違反の阿片犯罪で告発され、有罪になったことを、今どれだけの日本人が認識しているだろうか。まさに隠蔽である。

 しかし中国等で日本軍の軍命を受け日本帝国の阿片政策を実行した当事者の里見甫は、米軍の形式的な尋問の後、米軍の要請により刑事側の証人として出廷し、東条らの罪状を包み隠さずに証言し無罪放免された。そして又彼に続き笹川良一も児玉誉士夫も岸信介もA級戦犯の絞首刑が実行された翌日に、巣鴨プリズンから無罪放免されたのであった。

 米軍は中国等から日本に避難・隠匿した貴重財貨の引き渡しを条件に彼らと取引し、罪を問わずに放免した。かくして米軍は日本の国家的犯罪の隠蔽に協力してきたのである。

 この時以来、戦後日本国家はこの恥ずべき犯罪行為を真摯に反省するどころか、今に至るまでひたすら隠蔽し続けてきた。その証拠にほとんどの日本人は、この事実を知らない。又戦前の日本への回帰を願う自己中の右翼勢力も、ほとんど知らないかのようである。

 しかし日本人が忘れても被害を受けたアジア諸国の人々は忘れはしない。例えば覚醒剤の生産や日本への密輸を止めよと北朝鮮を非難した時、「私たちは、昔貴国がやった行為をマネしているだけにすぎない」と反発されたら、私たちは何と反論すべきだろうか。

 まさに無知は力である。反動の右翼勢力には真実を知った上で猛省が必要だと考える。

 ここで取り上げる本書は、倉橋氏の日本阿片政策に関する三部作、『日本の阿片戦略 隠された国家犯罪』、『日本の阿片王 二反長音蔵とその時代』に続く総決算の著作である。実に二反長を「にたんちょう」との読み方を確定させたのも倉橋氏の功績である。
「からゆきさん」と阿片政策が倉橋氏の研究テーマだ。では本書の目次を紹介する。

 はじめに
 第1章 阿片を用いた日本の中国侵略
 1日本の阿片政策をめぐって/2国内のケシ栽培/3日本は世界第一の麻薬生産国/4モルヒネの三つの使途/5領事裁判権を悪用したモルヒネ類の密売/6植民地・外地における日本の阿片政策/7国際条約違反の国家的犯罪/8阿片問題ほど国際条約をふみにじった例はない/9戦時中の阿片の不足とその打開策/まとめ
 第2章 祇園坊の阿片密売レポート
 1祇園坊レポートとは/2『大正年代阿片密売事件始末』―祇園坊レポートの本文/3補論―在留日本人の多くがモルヒネを密売
 第3章 満州国における阿片政策―謎の阿片特効薬・東光剤
 はじめに/初期(一九三三~三七年)の治療活動/2阿片政策の変換(一九三八~四三年)/3東光剤の登場/4就労計画の深化/5東光剤に対する疑問/まとめ
 第4章 阿片専売制の深い闇―後藤新平の阿片政策
 1後藤新平と阿片専売制―渡辺利夫氏の文に触発される/2医者によるモルヒネ中毒の治療の例/3麻薬中毒者救護会の解散/4満州国の麻薬専売制は低所得者向け/5台湾でも即時禁止できた/6阿片専売制に対する評価/7「謎の阿片特効薬・東光剤」再論
 第5章 モルヒネ密売を告発した日本人―阿片禁止の運動家・菊地酉治
 (小見出し 省略)
 第6章 大連におけるベンゾイリン不正輸出事件
 あとがき
 注

 そもそも阿片は、江戸時代中期から栽培されていた。阿片は津軽と呼ばれた。その後、日中戦争期には和歌山県・大阪府等でも栽培され、その最盛期には学校を休校し児童を労働力として動員するまでになっていた。当時はこれを「ケシ休み」と呼び、まさに国策の殖産産業だったのである。

倉橋氏は、「お百姓さん達の良い田畑は食糧増産に、私達は荒地で罌粟の栽培を引き受けませう」(中部日本新聞)との記事を本書で紹介している。

 日本がモルヒネの国産化に成功したのは第一次世界大戦の時。それ以降、約二十年の短期間に日本はモルヒネ類の世界一の生産国に上り詰めた。一九三五年の国際連盟の統計によると日本のモルヒネ生産額は世界第四位で全世界の四割弱、コカインは第一位で全世界の三割弱を占めるまでになっていた。一九三三年、日本は国連を脱退したのだがなぜか統計資料は送っていたのである。

 なぜこんなにも阿片等を生産していたのか。それは国際条約に違反して中国に密輸していたからである。当然ながら日本は世界各国から顰蹙を買い、厳しく非難されていた。国際連盟には阿片諮問委員会が設置され、蒋介石らから日本は非難の対象になっていた。

 まさしく当時の日本の認識は、大東亜共栄圏の確立の鍵は阿片政策であったのである。
 この国家的犯罪を私たちは学校で一切教えられることなく育った。まさに真実を知らずにいたのが辛いの一言である。本書の第1章は、この日本帝国の阿片政策を総論的にまとめたものである。

 本書の全体の結論を私の考えで、大胆に六点にまとめて見れば、以下のようになる。
 ①日本は台湾領有以来、半世紀にわたって、東アジア的規模で阿片政策を展開した。
 ②阿片吸煙の習慣がない日本・朝鮮は、阿片の供給地とされた。和歌山と大阪が生産地。
 ③台湾・関東州・満州では、阿片専売制で阿片中毒者に売りつけ多大な利益を得た。
 ④中国では、領事裁判権を悪用して在留日本人を使い密売させ、不当利得を得た。
 ⑤一九一二年のハーグ阿片条約等、日本は戦前四つの阿片国際条約に違反し隠蔽した。
 ⑥国際条約を調印・批准しながら遵法せず、密売を続けて日中戦争等の戦争資金とした。

 当然のことながら国際条約に違反した阿片犯罪は、東京裁判でも問題とされたが米軍が追及の手を弱めた為、日本人の間にはほとんどその記憶すら止まってはいないのである。

 昨年末、『國破れて マッカーサー』の西鋭夫氏から『「最終判決・東京裁判」日本人に隠され続けた大東亜戦争の真実』を作成したのでご購入をお勧めしたいとの手紙が私の家に届いた。だが私はこれまで日本の阿片政策の関連書を数多く読んできたから、今回は購入を見送る。勿論、現時点でこの西鋭夫氏の取組みには敬意を表したいと私は考える。

 西氏がフーヴァー研究所の地下倉庫の中から見つけ出した、敗戦直後からGHQが押収した公文書、『(極秘)近時支那阿片問題及阿片政策』等は貴重な資料である。又関東軍参謀であった田中隆吉陸軍少将の、満州国において膨大な「アヘン密売」の横行と満州国における財政の内実を暴露した証言を発掘して、商業ベースで販売を開始したことは注目すべきだ。

 日本は自虐史観に陥るなと大言壮語する右翼勢力は、今こそ歴史の真実の重さを知れ!

 これらの開示により、隠蔽されてきた里見甫・笹川良一・児玉誉士夫・岸信介の所業は万死に値する悪行であったことが、日本人の間で決定的且つ明白に暴露されるであろう。安倍総理は祖父の国家的犯罪を知り、一体どのような態度を取るのであろうか。

 本書では残念ながら東京軍事裁判のことはほとんど書かれてはいないが、かっての日本帝国の阿片政策を知る上で、お薦めしたい一冊である。
 ぜひ皆様の一読を期待したい。(直木)案内へ戻る


 「エイジの沖縄通信」(NO58)

(1)工事を止めるのが当たり前でしょう!

 1月末、各報道機関は「政府は軟弱地盤の存在を認め、軟弱地盤の改良工事に向けた設計変更に着手して、年内に沖縄県に変更を申請する方針を決めた」と報じた。

 ところが、防衛省は軟弱地盤の改良工事の設計変更を申請するといいながら、一方では辺野古側の②工区の埋立に向けて赤土条例に基づく事業行為通知書を県に提出し、3月25日から②工区へ新たな土砂投入を開始するという。

 こんな事、ちょつと変でしょう!

 早くからこの土砂問題を追求してきた、沖縄在住の元土木技術者の北上田毅さんは、国民を欺く政府のやり方を次のように批判する。
 「あそこ(大浦湾)は超軟弱地盤です。工事が頓挫するのは前々から分かりきっていることだった。客観的な数値が出ているわけだから、いつかは認めざるを得ない。それなのに国はずっと逃げてきたんだ。」

 さらに、今後の事についても次のように指摘する。

 「今回のような海底深い軟弱地盤の地盤改良工事は技術的にも限界に近く、莫大な費用が必要になるだろう。また、もしなんとか技術的に可能だとしても、あの豊かな自然環境の大浦湾は致命的に破壊される。知事が承認しない意向を示しているのは、決してまず反対ありきという政治的なものではなく、公有水面埋立法の承認の要件に合致しないからというものだ。 

 しかし、設計概要変更申請が承認される目処は全くない。大浦湾の工事の展望が立たない以上、辺野古側での埋立工事を続けることは許されない。辺野古側の工事が中途半端に進んで、地盤改良工事の設計概要変更申請が不承認となって工事が頓挫した場合、防衛局は、その責任をどうとるつもりなのか。」

 まったくその通りである。

 これまで多くの地質関係者から「大浦湾の地盤がもろく、マヨネーズ並み」との指摘があり、調査船も何度も海底調査をしてきて従来の工法では無理だと解っていたはずだ。

 とするならば、辺野古湾に土砂投入をする前にこの基地建設の最大重要ポイントである大浦湾の大幅な設計変更をまず申請して、承認をもらうのがスジではないか。

 工事の変更内容を提示して基地建設工事の全体像を明らかにしないで、どんどん勝手に海に土砂投入するのは、許されない!

 こうした政府の姿勢について、東京新聞のデスクメモは「北上田さんたちが辺野古の工事を巡り、防衛省に問題追及する交渉の場に取材に行くといつも驚かされる。どんなずさんな工事をしても役人はきちんと説明せず開き直った態度を取ることだ。それは年々ひどくなっている。基地建設のためになりふり構わぬ姿がここにもある」と指摘している。

(2)直木賞の「宝島」の紹介

 話題の本「宝島」を購入して読み始めました。

 ちょうど東京新聞のコラム「大波小波」に批評が載っていたので紹介します。

 「今回の直木賞候補作は、物語の本質に迫った森見登美彦『熱帯』を除けば、今村翔吾の伝奇小説『童の神』、垣根涼介の歴史小説『信長の原理』、深緑野分のミステリー『ベルリンは晴れているか』と、それぞれにアクチュアル(現実的)なテーマに切り込んでいた。その中から、沖縄問題を取り上げた大作『宝島』が直木賞に選ばれた意味は大きい。・・・『宝島』が傑作なのは間違いないが、今回の直木賞は、現政権の沖縄政策に対する文学界からの異議申し立ての役割も果たしていたように思える。」と述べています。(富田英司)


  コラムの窓・・・ ゴーンの役割

 日産関連労働者をリストラ地獄に突き落とし、自らは独裁的地位を得て栄華を極めたカルロス・ゴーンが日産に捨てられました。それは、彼が与えられた役割を果たし終えたことを示しているのでしょう。私はむしろ、彼がどれほど利益を私物化しようとその役割を終えるまではそうした行為は容認され続けたであろうことを、見ずにはおれません。

 そのカルロス・ゴーンが容疑者となり、今は別の役割を果たしつつあるのは大いなる皮肉です。日本的刑事司法の異常、このことは夙に国際機関から指摘されてきたことですが、この国はそんな批判はどこ吹く風と受け流してきました。それは、昨年末の国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退でも明らかなように、都合が悪くなれば〝けつをまくる〟子どものような行いです。頭を隠せば見なくて済むけど、何も変わらないようなものです。

 さて問題の容疑者の長期勾留、〝人質司法〟は裁判官の推定無罪という意識の欠如によるものです。実際のそれを行うのは捜査機関ですが、その行為に合法的担保を与えるのは裁判所であり、逮捕・家宅捜索は(現行犯逮捕を除き)令状なしにはできないのです。それは捜査機関の暴走を抑止するためのものであるのに、まるで〝推定有罪〟のごとく捜査機関の言いなりになっているのが裁判所の実態です。

 例えば、「2012年泉大津市で起きたコンビニ強盗事件。当時21歳だったSUN‐DUYさんは1万円を盗んだという無実の罪で302日間も勾留されました。コンビニのドアに残された指紋が決定的な証拠とされましたが、裁判のなかで、犯行当日のものではないことが証明されました」(1月20日「赤旗日曜版」)

 この事件は昨年5月、NHK「逆・転・人・生 えん罪・奇跡の逆転無罪判決」で取り上げられ、被告の母親がコンビニの映像から事件以前につけられたことを突き止め、文字通り〝奇跡的無罪判決〟を勝ち取ったと報じられていました。

 ここで問題は、①警察の杜撰な捜査、②監視カメラによる冤罪の危険性、③裁判所の安易な保釈拒否です。①被告はコンビニの常連なので指紋が付く可能性があること、当日だけでなく過去の映像も調べれば容易に犯人でないことはわかったのです。②今やいたる所に張り巡らされた監視カメラ、その映像の一片を切り取られることの危険性を、〝安全・安心〟と引き換えることはできません。③裁判官は捜査に協力するのではなく、被疑者の人権を守る義務があること忘れています。

比較の問題ではありませんが、もっと酷いのが靖国神社に対する抗議行動を「建造物侵入」とされ、香港の男女2名が昨年12月12日から勾留され続けている事件です。こちらはネットからの情報ですが、男性が「南京大虐殺を忘れるな 日本の虐殺の責任を追及する」と書かれた横断幕を掲げ、女性がそれをビデオ撮影していたというものです。この行為のどこが違法なのか理解に苦しむものですが、「正当な理由なく靖国神社の敷地内に侵入した」建造物侵入の罪で起訴されてしまいました。

 国際人権(自由権)規約委員会から日本は多くの改善を求められています。死刑制度、代用監獄、取調べ、難民、入管収容、技能実習制度、「慰安婦」問題等、数え切れない改善勧告が突きつけられ続けています。そのなかには「規約上の権利の確保と法律家に対する国際人権教育」があり、日本の裁判官には人権感覚が欠如している、だから人権教育が必要だというものです。

 とまあそういうことで、国際的有名人を不用意にも長期勾留したことで、日本の刑事司法の前近代性を世界中に知らしめた、年明けの珍事を見せてもらいました。 (晴)案内へ戻る


 読者からの手紙・・・今度は政治的紛争がスリランカに訪れた

 インド洋に浮かぶ珊瑚礁の島国モルディブの選挙で独裁者ヤミーン(アブドラ・ヤミーン)を選挙で破って、島民の多数の支持を受けて新大統領が生まれた事。これは、ことモルディブという小さな島国の「事件」だけではすまず、現在の地球上に展開している、新帝国主義の主導権争いと緊密に結びついている事を述べましたが、今回、同じような争いが私の在住するスリランカに降ってわきました。

 10月26日、私のところへ出入りしている男性が興奮したように、私のところへやってきて、「首相が大統領に罷免されて、前の大統領が首相に選ばれた。」と早口に語りました。日頃政治の事など口にした事もない人だったので二重の驚きでした。三日後の29日にやっと配達された新聞で詳細がわかりました。前大統領と現大統領が顔を見合わせて、やったぞという微笑みを浮かべている一面の写真が印象的でした。

 首相ウィクラマシンハ(ラニル・ウィクラマシンハ)を罷免した現大統領シリセーナ(マイトリパーラ・シリセナ)は前の選挙の時にウィクラマシンハの党(UNP=統一国民党)には属さず、その党から支持を受けていながら今回新首相に抜擢したラジャパクシヤ(マヒンダ・ラージャパクサ)が大統領を務めていた(SLFP)党の党員のままでラジャパクシヤを破ったのでした。多くの人たちはUNP国民統一党とSLFPスリランカ自由党が選挙でどんな取引をしたのか訳がわからず、ともかく汚職まみれのラジャパクシヤより別の人間を選びたいという気持ちが働いた事は確かです。特にその選挙では、北部のタミール人の多いジャフナ地域ではラジャパクシヤの不人気は圧倒的なものでした。軍隊に散々虐待されたからです。

 スリランカ国民はシリセーナ新政権がラジャパクシヤ時代に行われていた虐殺・不正・腐敗・買収等々にどう取り組んでくれるのかを期待し、じっと待っていましたが、政権は口先だけ、何らの行動も起こさず、数々の委員会は開店休業状態でした。

数年たった今、やっとそのわけがわかったのです。ラジャパクシヤ前大統領と現大統領シリセーナとは裏で繋がっていたのです。ですから今日あるをおもん慮って、UNPとその指導者、今回形の上で罷免されたウィクラマシンハをUNP党員を呼び集め政府に参加させる看板とし、体勢を見ながら時を稼ぎ、名ばかりの腐敗調査委員会を機能させずに、ラジャパクシヤ党の汚職、暴力、国の公金を盗む党の行為を罰する事なく、SLFPの関係者は自由に政界を泳ぎまくっていたというわけです。

 もう一つ後になってわかった事は、この首相追い出し茶番劇の一月ほど前に、ラジャパクシヤ、シリセーナ両人の暗殺を謀ったという事で犯人(と言われる)男が逮捕されるという事件がありました。何の為にこの二人を殺すのか理解に苦しむ大勢の人達がいました。しかし、今回このクーデター(と呼び非難する人々もいます)に対する大統領側の理由のトップにこの事件があげられていて、この暗殺計画発覚によって、首相罷免を急いだ事があげられました。なるほど今日あるを見越したデッチ上げ事件だったと気づいたのです。大統領たちは首相在任中に暗殺事件犯人として縄をかけるわけにはいかない、追い出した後、どんな理由であれ首相側の政治的関係者達を一網打尽に出来ればこんなうまい話はないと踏んだのでしょう。

 モルディブのヤミーン大統領(元大統領マウムーン・アブドル・ガユームの異母弟)が行った例にならおうとしたのです。ヤミーンはインチキ選挙で大統領の座を奪うと、すぐさま反対派の大統領ナシード(モハメド・ナシード)をはじめとして司法関係者、閣僚、国会議員達を弾劾陰謀(弾劾は法律違反?)で勾留し、外国亡命に追いやり、側近達で自己の周囲を固めてしまいました。此処でも又、中国の「一帯一路」政策が背後にあった事もわかってしまいました。

 新帝国主義は開発途上国の貧困と民主主義的思想の発達の遅れにつけ込んで、自分たちの権益拡張の為に、札びらで、あるいは威嚇で政策を組み立てます。途上国の議員買収では、国内でその為に費やす額の10分の1あるいは100分の1でドルは威力を発揮します。
UNPの閣僚補佐官ラマナヤケは「中国がラジャパクシヤに数百万与えて議員・閣僚を大統領側に呼び寄せようとしている。これは単に議員を買収する為ばかりでなく、この国(スリランカ)全体を買い占める事を望んでいるのだ。」と語っています。

 コロンボのUNPでの集会では、数え切れないほど多数の人々が大通りで首相解任に抗議の声を上げました。大統領はすでに国会の建物に入り込んで事務を執り始めています。緊張が高まってきています。数からいえば首相側は遙かに大統領側をしのいでいますが、どのように今後これが発展していくのか、流血事件なしに解決する可能性も、まず第一に大統領に国会を開かせる事から手をつけるべきでしょう。(M)

 〈今度は政治的紛争がスリランカに訪れた〉続き

UNP(統一国民党)首相ウィクラマシンハ側は、大統領シリセーナ(シリセナ)が国会に諮らずに、突然首相を罷免し、新首相を勝手に指名し、しかもそれが前大統領ラジャパクシヤ(先の選挙では自分の対抗馬であった)である、と言う事は、少数の陰謀グループを除いては「なんだこれは!」と開いた口が塞がらなかった。

 先の国会では次回開会は11月14日と当のシリセーナが言っていたから14日に国会を開くべきだと当然主張する者は、UNPだけでなく他の野党JVP(民族解放戦線)TNA(タミール・ナドゥ)等を中心に多数を占めた。しかし自らの国会議員が少数である事を恐れたシリセーナラジャパクシヤ側は来年1月5日に総選挙をやる気構えだった。

時間を稼いで、その間に自派への転向議員を買収し、国民を欺くつもりだった。彼らはUNPは選挙で集票数が少ない事を怖がっていると嘲笑した。卑怯者がよくやる議論の裏返しである。

 議長(UNP)ジャスリーヤは14日に国会を開く事が憲法にのっとったやり方であると断を下した。シリセーナ・ラジャパクシヤ側は議長を買収する計画がうまくいくと考えていたから、強烈なパンチを食らった、結局14日国会再開は免れぬと知った彼らは、国会を選挙する格好で建物を新政権側が居座り、夜は電灯もないところで事務を開始し始めた。追い出されたウィリラマシンハ首相は近くのテンプル・トゥリーという建物をUNP本部としてそれと対抗した。

 民衆は一斉に政治闘争に注目し始めた。田舎の若い衆はバスを仕立てて両者の睨み合いの現場へ集団で駆けつけた。後で聞くところによると、弁当・バス代総て「誰かさん」持ちだという。マスコミに写真を撮らせて、大統領支持派がこれだけ集まったと宣伝する事は容易である。

ラジャパクシヤ側は大手企業・大手商人・マスコミと繋がっているからよくこの手を使う。選挙が近づくとエセ社会主義の貧民救済組織が砂糖・塩・ジャガイモ・時にはミシン・障害者への車椅子まで分け与えられる、ただしSLFP(スリランカ自由党)の選挙運動に賭ける人達に優先的に。今回は新聞に、新政権は次の品目の値下げをするという、新聞2ページを使って、ガソリン・灯油・プロパンガス・その他食料品の数の名と割引%を載せた。毎日の必需品の購入に頭を痛めている庶民はこれに飛びつかないわけはない。 地方によっては家もなく、路上に寝起きしている家族が多数いるという。

北のジャフナではラジャパクシヤ政権の軍隊(国防大臣はラジャパクシヤの弟ゴダバヤ)は4万人のタミール人を殺したという。10万のタミール人口のうち25%が殺された事になる。白旗を掲げて投稿してきたプラバカラン軍隊を機関銃で一斉射撃で打ち倒す、イギリスチャネル4のフィルムが国連調査団に資料提供されている。当時の陸軍大将が虐殺はあったと証言している。

 今度の政権で風向きが変わった事を察した軍隊は、今まで軍隊の占拠していたジャフナの土地を元の持ち主に徐々に返還し始めた。一時はこの土地は一寸も返さないと強弁していたが。

 JVPがラジャパクシヤ政権の提出したP・T法を強化したC・T法を動議して反対し、議員111名で支持を受け、議長の憲法違反判断によって廃案になった事は、この風向きをタイミングよく利用した事の成果だったと考えられます。C・T法が国会で通過していたら、ウィクラマシンハ政権がたとえ成立しても、この国は大変な事態に陥った事でしょう。世界的にテロを口実とした警察・軍事力強化が進んでいる今日です。(M)

注】P・T法―テロ防止法、C・T法―テロ対策法。対策法は警察力の強化、盗聴の許容権の拡大、労使紛争の弾圧、裁判所を通することなく逮捕状なしでの容疑者拘留、裁判の長期延期化と、その間の拘留、拷問による自白の蔓延等を含む、恐ろしい法律です。案内へ戻る
 
 色鉛筆・・・「辺野古署名で感じたこと」

2月静岡市議会に向けて『日本政府に辺野古基地の建設中止を申し入れて下さい』という請願を出すため、今賛同署名をあつめている中で、様々な出会いがある。街頭では、政府による土砂投入強行への怒りもあってか、向こうから走り寄ってきて、私もぜひ!と協力的な人(圧倒的に女性だけれど)が多い。

そんな中30代とおぼしき女性が、「それじゃあ!あなた方はどこに基地を造ればいいと考えているんですか?」と問いかけてきた。それまでの反応の良さに甘えていた私にとって、思わぬ問いかけにしどろもどろになりながらも自分なりの説明をする。「そもそも本当に基地はどこかに造る必要があるのか?それは本当に辺野古でなくてはならないのか?」「この基地は普天間の移設ではなく、滑走路・軍港・弾薬庫などを備えた全く新しい基地であること」等々。幾つかのやり取りの後、彼女から「お話しできて良かったです。又お話したいと思います。」と言われたけれど、どれだけ彼女の疑問に答えられたのかは心許ない。

その他にも、「なぜ沖縄の人たちはあそこまで抵抗するのですか?」とか「私は沖縄の歴史も何も勉強していません。米軍基地が必要かどうかも分かりません。」という人にも出会った。

政府のやることは、埋立地にある軟弱地盤の存在を2年半以上も隠したり、土砂の割合を沖縄県の許可無くすり替えたり、建設予定地の周辺は航空法の高さ制限に抵触する建物だらけであることも隠していたり等々、信じがたい嘘、ごまかし、隠蔽のオンパレード。指摘されてもまともに答えずあげくに開き直る。そして土砂投入だけは、「粛々と」進めている。

県民投票で、辺野古NO!の民意が示されることを誰よりも知っていて誰よりも恐れているのが政府の側だろうと思う。だからこそ全体的に見て、根本的に無理、不可能な基地建設をあたかも「進んでいる」かに見せる必要があるための土砂投入なのだ。防衛局が「私人」であると主張するが、こんな卑劣な極悪非道の私人は見たことがない。どんなに言葉を並べても表現しきれない政府のこれらの不正を、出会った人たちにどう語りかけていくか悩んでいるのが今の私の現状だ。

沖縄に関する報道が本当に少ない。だから本土の私たちは、目前でかけがえのない海が埋め立てられる光景を見ることが無い。冬の海上の冷たい風にさらされるカヌーの人たちの寒さも、ゲート前での機動隊員の暴力による身体の痛みや、恐怖や悔し涙も見ることがない。それらに少しでも触れるために、月刊『世界』1月号の目取真俊氏の小説『闘魚』をお読み下さい。

 彼は辺野古での基地反対の闘いにずっと取り組み続けている作家だ。物語は84歳の女性カヨの目を通して、73年前の沖縄戦当時の体験と、今の辺野古での座り込みの現場とが語られている。戦争当時7歳だった弟の生き生きとした躍動感あふれる姿が、みずみずしい文体で描かれ、よりいっそう戦争当時に負わねばならなかったカヨの心の深い傷が胸に迫る。ぜひお読み下さい。本当にもう基地はいらない!(澄)

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