ワーカーズ597号 2019/8/1
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参院選 改憲勢力は後退 だが安倍軍拡との闘いは続く
自公政権打倒 生活再建・消費税廃止・食べられる最低賃金を!!
今回の参院選において、改憲発議議席である参議院議席の三分の二を、自・公、維新は維持できなかった。この意義はもちろん大きい。(三分の二に当たる百六十四議席には及ばず、百六十議席にとどまった。)とはいえ、安倍首相は国民民主党に秋波をおくり切り崩しを狙っている。そればかりではなく菅幹事長は「辺野古基地建設すすめる」と断言。従来どおりの日米軍事同盟強化、海外派兵を推進しており海自のホルムズ海峡派遣をも検討している。少しの油断もならない。
自公与党は、今回も過半数の議席を得た。とはいえ、盤石ではない。野党共闘も一定の成果があり、特に政府の安全保障政策と対立する沖縄、秋田、さらに新潟、岩手や宮城で統一候補が自民党を制した。長期にわたる保守地盤の弱体化は、けっして止まっていないのだ。「自民党は今回の参院選比例区で、前回二〇一六年年と同じ十九議席を獲得したにもかかわらず、得票数は二〇一一万票から大きく下げ、一八〇〇万票前後にとどまりそうだ。
棄権者も含めた全有権者に占める割合を示す比例区の絶対得票率も、第二次安倍政権下での国政選挙で過去最低の十七%を切る可能性もある。」(「朝日デジタル7/22」)比例区候補を大幅に増やしても減少を食い止められなかったのだ。
安倍首相にまつわる森友=加計学園の疑惑、度重なる大臣たちの暴言や失言、目減りする年金(食えない年金)、消えたPkO日報や政府統計の改ざん・・これだけのスキャンダルを伴った内閣はかつて存在しなかっただろう。このうち一つでも政権は倒れただろう。
しかし、この安倍自民党政権も地盤沈下はとめられない。大衆の闘いをさらに拡大してゆこう。
また、社民党が政党要件を守った。「法人税・所得税の累進課税で消費税廃止」「辺野古基地反対」「奨学金地獄救済」等を掲げた新党「れいわ新選組」は若者中心にネットで話題となり約四億円超の寄付を集め十人が立候補、障がい者候補が二議席を獲得した。米国の民主党左派、英国労働党、スペインのポデモス等に倣った「左派ポピュリズム」と言われている、注視するひつようがある。(阿部文明)
安倍政権を幕引きに追い込もう!――安倍首相退陣への闘いは最終コーナー!――
参院選の結果は議席上は与野党ほぼ現状維持、安倍政権打倒の闘いは今後に持ち越された。この2年の内に必ずやってくる次期衆院選まで安倍政権と闘う主体づくりを進め、安倍反動政治をなんとしても幕引きに追い込んでいきたい。
◆終わりの始まり!
選挙結果は、自公の与党で参院過半数(123)を維持する145議席を獲得した。が、維新の会を含めた改憲勢力の議席は160議席(与党系無所属3を含む)で、3分の2の議席(164)確保には4議席届かなかった。
安倍首相は、今度の参院選挙対策に万全を期し、後半国会では与野党対決法案は出さず、国会での野党の出番を奪ってきた。また4月から5月にかけて天皇代替わりイベントを繰り広げて国民の祝賀意識を煽ってきた。その後はG20での外交劇場で自身の活躍を振りまくなど、内閣支持率の底上げを図ってきた。
にもかかわらず、参院での単独過半数の確保や改憲勢力での3分の2議席獲得の失敗など、安倍一強政治の地盤も緩み始めたともいえる。安倍政権にとって〝終わりの始まり〟だといえる。
対する野党は、旧民進党勢力が47議席から53議席に微増。野党統一候補として立候補した野党系無所属議員(7)を含めて野党が85議席を獲得した。
今回、改選9議席に対して17人当選させた立憲民主党、改選前の24議席から32議席に議席増を果たした。が、自民党の獲得議席の57議席と比べても、また、3年前の参院選で民進党が32議席を獲得したことを考えても、今回は17議席、国民とあわせても23議席しか獲得できなかった。無所属候補の当選を考慮してもとても喜べる成果だとはいいがたい。
今回の選挙では、自民・公明の与党と維新などの改憲勢力が、解散前に確保していた3分の2超の議席を引き続き確保するのかどうかが大きな注目を集めたが、結果はそれに届かなかった。
その他に注目されたのは、社民党が2%の得票率を確保して政党要件を確保したこと、それに新たに旗揚げした《れいわ新撰組》が2議席獲得した〝れいわ旋風〟などだった。付け加えれば、投票率が過去二番目の低さだったことも様々な面から注目されている。
◆〝あがき〟か〝捨て身〟か?
安倍政権は改選過半数を確保し、とりあえず信任されたことになる。が、安倍政権支持理由で「他よりよさそう」が一貫して第1位であることで明らかな様に、安倍自民党への積極的な支持、評価とはとてもいえない。景気・物価・雇用など、経済の現状維持をとりあえずよしとするもの以上ではなく、消極的選択の結果だということだろう。
他方で、改憲勢力が3分の2の議席を失ったことの意味は大きい。各党の議席だけを算術的に考えれば、少なくとも今後3年間は改憲発議は不可能になったからだ。
しかし、安倍首相は、選挙戦では憲法を議論する党か、それとも議論さえしない党か、という選択枝を振りまいてきた。あわせて、当初めざしていた東京オリンピックの年までの改憲は《スケジュールありき》ではないと棚上げにしてはいるが、この選挙後も、自らの自民党総裁
、および首相任期である21年秋までの「改憲四項目」という自民党案での改憲の実現をアピールしている。
狙いは野党の取り込みだ。具体的には、国民民主党の議員を念頭に、国民民主党内の改憲派議員の人たちと協力していきたい、と他党内部に手を突っ込む発言もしている。秋波を送られた国民民主党は憲法改正論議自体は否定しておらず、安倍改憲策動に利用される可能性は高い。
仮にそうはならない場合でも、改憲が強行されるケースもある。野党議員の一本釣りは、平常時の採決ではかなり難しいが、衆院解散・総選挙などで、政界再編、あるいは野党再編などの場面をつくることで可能になる場合もある。とりわけ国民民主党の中には、現状でさえ改憲賛成派が結構いるし、それに議員の地位を最優先とする議員も多いからだ。
ただし、安倍首相による改憲への意欲への言及については、現実的な改憲実現を見据えたものではなく、求心力維持のためにあえて改憲へのこだわりを押し出しているという意味合いもある。
実際、与党のなかでも安倍改憲に積極的ではない議員も結構いるし、公明党は自民党案による改憲そのものに積極的ではない。しかも、今回の参院選では自民党の単独過半数も失ってしまっているから、公明党の抵抗を無力化するのは選挙前とは違って簡単ではないからだ。
とはいえ、ときの首相、安倍一強と言われてきた安倍首相による改憲の正面突破がなくなったとも言い切れない。トランプ大統領ではないが、捨て身の中央突破で強引な改憲への手順を強行しないとも限らない。
私たちとしては、草の根からの安倍改憲阻止の行動を拡げ、安倍改憲を葬り去る必要がある。
◆安倍政権の幕引きへ!
安倍政権へのそれなりの信任に終わった参院選結果。とはいえ、改憲勢力で3分の2の議席獲得に失敗したことに加え、今後の政権運営の行方は平坦にとは行かない。決着を参院選挙後に先送りしてきた日米経済交渉の行方、2ヶ月後に迫った消費税増税による消費や景気への影響、それにホルムズ海峡での有志連合形成の動き、緊張を深める日韓関係の推移、年金をはじめとした社会保障改革の行方、改憲策動の展開、衆院解散と総選挙への思惑等々だ。
私たちとしても、最終コーナーにさしかかりつつある安倍政権を退陣に追い込む闘いをこれまで以上に拡げていきたい。とりわけ重要なのは、政府の政策の是非以前の問題として、賃金や雇用をはじめとして、日常的な《現地・現場での闘い》と、それを担う主体形成と当事者を中心とした闘いの前進・拡大が課題だろう。
例えば最低賃金引き上げの闘い、同一労働・同一賃金の実現、年功賃金や企業内組合と一体化した〝日本的終身雇用〟ではない、労働者の連帯を土台とした解雇規制による雇用保障などだ。
そのためには、選挙時のプロパガンダや〝一時の旋風〟に依存しない、地道で着実な闘いの前進をめざしたい。
労働者の闘いを象徴する春闘=賃金闘争についても同じだ。
経団連は加盟大手114社の定期昇給とベアの合計で昨年より339円少ない8200円、率で2・43%だと公表した。連合の調査では、中小も含む5405組合の回答結果は、対前年比63円増の5997円、率で2・07%だと発表した。
両者の調査でも、定期昇給が2%程度あることから、ベアは実質ほとんどゼロで、物価上昇分にも満たないとみられる。安倍政権がテコ入れし、雇用情勢も〝好調〟が振りまかれる中、賃上げの闘いはほとんど成果を上げられなかったことになる。
賃上げは政府の政策によって左右できない。労働者自身の連帯した闘いで勝ち取るべき課題のはずだ。選挙時の一票の投票とは別に、自分たち自身の努力と闘いによって勝ち取るべき課題は多い。それらの独自な闘いを拡げていく必要がある。
そうした闘いを押し拡げ私たちの陣形を整備しながら、次回の総選挙で安倍政権を幕引きに追い込むべく、今から反転攻勢に打って出たい。(廣)
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参院選結果・日韓関係・歴史認識
●韓国マスコミの関心
参議院選挙の結果は、安倍首相率いる与党が過半数を維持したものの、「改憲勢力」は発議要件の「3分の2」を割りこみました。この結果について韓国のマスコミは強い関心を示しています。
MBCテレビは「憲法改正を目標に掲げる安倍政権にとっては、改憲ラインを超えられず、半分の勝利だ」と伝える一方「韓国のバッシングは続くとみられ、両国間の葛藤は収まらないだろう」と報じています。朝鮮日報は「安倍1強体制が維持され、韓国への経済報復措置が強化されるとの分析もある」と述べています(日本テレビのネット配信より)。
●慰安婦・徴用工の歴史
第二次安倍政権は発足当初から、「憲法9条の改定」を掲げてきましたが、その支持基盤である日本会議などの右派勢力は、「村山・河野談話の撤回」を求め、慰安婦問題や徴用工問題さらには植民地支配について「歴史修正主義」を唱えてきました。慰安婦・徴用工をめぐる日韓関係の悪化の一因は、これら歴史修正主義に支えられた安倍政権の歴史認識に対する警戒感や反発にあると言っても過言ではありません。
こうした時だからこそ、私たちは日韓・日朝関係について、改めて学び直す必要があると思います。慰安婦・徴用工問題のもとになる歴史的事実は、日本帝国主義による植民地支配、すなわち1910年の日韓併合から1945年の解放までの「日帝35年」の後期に起きたことです。
●朝鮮植民地支配の歴史
歴史的には、日韓併合から朝鮮人民の「義兵闘争」を弾圧した「武断統治」を「前期」、「三・一独立宣言」の民衆蜂起をきっかけにした「文化政治」を「中期」とすれば、日中戦争勃発からアジア太平洋戦争にかけて「総力戦体制」のもとで朝鮮を「兵站基地化」した「後期」に起きたのが、朝鮮労働者の徴用工化と朝鮮女性の慰安婦化でした。私達は、慰安婦・徴用工問題を日帝の植民地支配の歴史の中で、きちんと認識する必要があります。
●日韓条約と民主化闘争
次に問題となるのが、それら植民地支配に対する補償が1965年の日韓条約でどのように「清算」されたかということです。この交渉の過程で日本政府側は「日本は植民地において工業や学校を建設し近代化に寄与した」と正当化し、韓国側は「農民の土地を収奪し自立的産業を抑圧し損害を与えた」と反論しました。結局は韓国朴政権の軍事開発独裁に対する、日本財界の経済援助によって、問題はすりかえられてしまいました。その後の韓国の民主化闘争の進展によって、このときの日韓条約のあり方が改めて問われているという歴史的経緯をよく認識する必要があります。
●停滞史観と民衆史観
「植民地支配は朝鮮の近代化に寄与する恩恵だった」という日本の支配階級の認識は、明治政府の征韓論以来、日清・日露戦争を通じて、根深いものがあります。朝鮮史研究者の梶村秀樹は「朝鮮社会停滞論」は日本側の偏見であり、日本も朝鮮も商品経済やマニュファクチュアが同じ様に発達し、自力で近代化を遂げる潜在的な力はあったことを力説し、それを民衆史の中に見出すことに力を注ぎました。私達は梶村秀樹の民衆発展史の視点に学びつつ、改めて近現代における日朝関係史を見直す必要があります。
●皇国史観と古代日朝史
また戦前の歴史教育において、古事記・日本書紀の「任那日本府」や「神功皇后の三韓征伐」の記述が、植民地支配を正当化する「皇国史観」として幅をきかせました。戦後、こうした皇国史観は否定されたはずでしたが、近年の復古主義者によって、またぞろ形を変えて復活されようとしています。特に高句麗・新羅・百済・伽耶の分国時代における「倭国の侵攻」の歴史を、どう捉えていくかは、考古学や文献資料批判を基礎に、学問的な課題となっています。
●歴史修正主義の克服
改憲への執念を燃やす安倍政権の根底にある「復古主義」「歴史修正主義」と闘うためにも、前近代・近現代を通して日朝・日韓関係史を学び直すことが、今こそ求められていると思います。(松本誠也)
《れいわ新選組》はどこへ向かう
◆旋風!
今回の参院選では、山本太郎代表率いる《れいわ新選組》が、ちょっとした旋風を巻き起こしている。比例区で2名が当選、また比例区得票率で4・55%を獲得した。政党要件を失うことも危惧された社民党の二倍以上の得票で、政党助成法などによる政党要件も確保した。非議員となった山本代表は、次期衆院選に自身が立候補することとあわせて100人規模の候補を立て、政局に影響力を持つ強力な政党をめざす姿勢を鮮明にしている。
山本代表は、国民民主党に合流した小沢一郎グループと別れてこの4月に新しい政治グループを立ち上げた。単なる一タレント議員としてどこかの政党にくっついて生き残る選択枝を捨て去り、この先2年のどこかでおこなわれる総選挙を見据え、そのために目先の参院選でなんとか橋頭堡を築くという捨て身の闘いに打って出たわけだ。〝保身〟のためにも、一段ステージアップした存在に脱皮する事で独自な政治的一極の形成をめざす、というわけだ。その挑戦が見事に奏功し、次期総選挙まで中央政治の舞台で台風の目になる可能性を手にしたことになる。そうした新興勢力の形成をめざす決断力と突破力に対しては、声援を送りたい。
◆左派ポピュリズム?
その《れいわ》の旗印・選挙公約は、奨学金チャラや政府補償の1500円最低賃金、それに一次産業での戸別所得補償や公務員増など、いま西欧でも拡がっている〝大きな政府〟による〝反緊縮政策〟が柱だ。それに立候補者は、障害者やシングルマザーなど、それぞれの困難や課題を背負った当事者で、社会的弱者の共感を呼び寄せる人たちだった。
これまでも山本代表自身、中東の戦地イラクでの米軍による虐殺などを国会で舌鋒鋭く追及するなど、日米安保容認の立憲民主党などが躊躇するような切り込みを見せた。パフォーマンスだとはいえ、そうしたラジカルな政治姿勢も持ち合わせている。
しかし選挙戦では、とりあえず公約を〝公言〟しただけ、それを実現する具体的な橋頭堡を築いていけるか、まだ未知数だ。
それに、《れいわ新選組》という政治団体のネーミングに見られる様に、象徴天皇制や元号を容認もしくは棚上げしたような、天皇代替わりの一時のブームに便乗した無節操な政治センスも垣間見える。政治団体名は単なる識別記号という意味合いもあるが、私としては「れいわ」や「新選組」はとても賛同できない。それに2013年の園遊会で、天皇に直接手紙を手渡すというパフォーマンスも見せたこともある。天皇の政治利用という批判も浴びたし、何より天皇の権威への幻想を煽る行為でもあった。
それに、消費税廃止や奨学金チャラなど、大衆受けを狙ったポピュリズムの面もある。いま欧米で拡がりを見せているポピュリズムは、「既存の政党政治からこぼれ落ち、疎外されてきた人々を、ひとつの政治勢力としてまとめ上げる政治手法」だという意味合いもあるという(山本 圭氏)。その中でも〝左派ポピュリズム〟は、格差社会が拡大する中、既得権層に対抗する勢力をまとめ上げ、民主的な再分配を要求すべし、というのが基本的な立脚点だ。政党としては、シリザ(ギリシャ)、ポデモス(スペイン)、政治家としてはコービン(英国労働党)、メランション(フランス)、オカシオコルテス(米国)などだ。《れいわ》も反緊縮政治や米国の大統領候補者だった〝サンダース旋風〟など、左派ポピュリズムの新興勢力を後追いしてるのだろう。
日本の政治潮流のなかで見れば、《れいわ》の選挙公約である最低賃金1500円や〝奨学金チャラ〟にしても、かつて渡辺治氏や二宮厚美氏らが提唱した「新福祉国家構想」の継承でもあり、後追いとも見て取れる。ただし、《れいわ》のその選挙公約は、〝緊急八策〟とのことで、今後どう変化するかが気がかりだ。
◆共同戦線?
とはいえ、選挙公約や候補者選択を含めた《れいわ》の選挙戦術は、少数勢力が中央政界に打って出る場合の典型的なひとつの手法でもある。今回の旋風が今後どう展開するか、《れいわ》の闘いがどういう軌跡を描いていくのか、すべて今後の展開如何に掛かっている。今後、国会ばかりでなく、戦略的な橋頭堡を築いていくための現地・現場での闘いを構築できるか、あるいはそうした人たちと連携できるかどうか、が問われるだろう。
選挙で一時、旋風を巻き起こした実例として、新自由クラブ、日本新党、大阪維新の会、希望の党などがあり、それらの党はそれぞれ奮闘したあげくに多くが挫折していった。いま残っているのは維新の会しかないが、それも保守補完勢力としての地域政党に収斂しつつあるのが現実だ。
それに選挙時の旋風という現象は、一時のブームという面もある。立憲民主党も、前回の総選挙時には希望の党から排除された面々が、〝枝野立て〟という一時の熱狂のなかで復活した経緯もある。朝日新聞の世論調査によると、その時の支持率17%という高い数字は、今回の参院選前の5月には5%まで下落している。旋風や風頼みの政治は民意が離れるのも早く、脆いものだということも忘れるわけにはいかない。
それはともかく、私たちの《アソシエーション社会の実現》という立場は、大きな政府論や反緊縮の積極財政とは逆で、国家や政府の役割の削減と協同原理による相互協力社会をめざしているので、方向性としては違う面もある。とはいえ、《れいわ》は現体制と政府には徹底的に反対というスタンスなので、その点では同じ方向を向いて闘っていけるだろう。将来はともかく、とりあえず左派的な政策を掲げて旋風を巻き起こし、既成政党に割り込んだ《れいわ「新選組」》の今後の奮闘に注目していきたい。(廣)
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読書室 植草 一秀氏著『25%の人が政治を私物化する国』 詩想社新書 2019年7月刊
○本書は、植草氏が2019政治決戦に向けて書いた日本の未来を切り拓くための提案書である。そしてその内容は氏がこれまで書き続けてきた諸本のエッセンスになっている○
まずはプロローグに書かれている植草氏の問題意識を紹介してみよう。アベノミクスが成功したと安倍首相が話し、マスコミも「経済がよくなった」と宣伝しているが、就業労働者に占める正規労働者の比率は確実に、そして急速に低下している。労働者にとって何よりも重要な経済指標である実質賃金の動きである。この名目賃金の変化からインフレ率を引いたものが実質賃金だが、2012年12月の第二次安倍内閣の誕生からこの6年半の間に何と5%も減ってしまったのである。
さらに安倍内閣はデフレからの脱却を目指してインフレ誘導をしてきたが、成果は上がっていない。こうした経済政策の失敗の中、安倍内閣は実質賃金の上昇を見せかけるために統計数値の改竄までする三流以下の国に転落してしまった。実際、マスコミが宣伝する景気回復の「実感」がないのではなく、景気回復した「事実」そのものがないからだ。
植草氏は安倍内閣が推し進めている政治を「戦争と弱肉強食」という政策路線と喝破する。そして植草氏はこの政治体制に換えて誰もが笑顔で生きていける社会を実現するとの目標を提示したのである。それが植草氏が主張する日本政治刷新のガーベラ革命である。
このように「希望・前進・限りなく挑戦」の花言葉を持つ色とりどりのガーベラを象徴として日本政治の刷新を植草氏はガーベラ革命と呼び、その5つの心得として①情報を鵜呑みにしないこと②権利を粗末にしないこと③政党任せにしないこと④政治刷新の戦術として目標を絞り込むこと⑤決して諦めないことを上げているのである。
それでは本書の構成を詳しく知るために、目次を紹介してみよう。
プロローグ 国家的「改ざん」が横行するこの国の異様さ
第1章 あなたもすでに騙されている
メディアによる情報操作の実態
1%による99%の支配を可能にする5つの道具
第2章「私物化された政治」を止める5つの改革
アベノミクスの正体
3つの政治哲学から望ましい社会像を考える
「よい小さな政府」と「悪い小さな政府」を区別する
歪んだ所得分配を変える~最低賃金全国一律1500円の実現
税制の抜本的な改革~消費税の廃止は実現可能だ
利権創出のための「民営化」をやめる~独占形態で暴利を得る人々の排除
不公正なTPPプラス交渉をやめる~売国的自由貿易協定からの離脱
利権政治温床の財政構造を変える~プログラム支出基軸の予算編成に
第3章 日本を蝕む5つの深層構造
米国による支配という戦後日本の基本構造
利権集団に支配された日本の情報空間をいかに変えるか
政治を変えるには教育革命が必要だ
政治の実権を握る官僚機構を改革する
刑事司法の近代化
政党ではなく政策の下に主権者が結集することで政治は変わる
あとがき
このように第1章では、国民が情報操作されやすい日本特有のメディア事情を具体的に明らかにし、今回も露骨だった選挙結果を左右する情報操作はいかに行われるかの手口を暴露している。そしてこの構造は町内会にも見られる日本政治の利権化構造と喝破した。
紙面の関係で多くは語れないが、第2章と第3章、とくに第3章は日本を蝕む5つの深層構造を極めてコンパクトに纏めており、流石に植草氏の能力の高さには感服する。
ここでは全面的な展開は出来ないが、日本の最根底には米国による支配という戦後日本の基本構造あり、その構造に乗っかっている人々がいるとの事実を植草氏は指摘する。つまり日本社会の中枢にいながら、政治家から官僚、財界人、芸能人は勿論、学者などに至るまで、その地位と権力を利用して自己利益のみを追求する人々が日本にはいるのである。
まさに『今だけ、金だけ、自分だけ』の三だけ主義者、平気で国を私物化する人々が跋扈する、このような日本社会を現出させているのは、選挙に対する国民の関心の低さである。これまでの衆議院議員総選挙の投票率を見ても、戦後これまで60%から70%半ばまであった投票率は、前回、前々回の総選挙では50%前半へと急落、戦後1位、2位の低さを記録している。この投票率の急低迷こそが、昨今の「政治の利権化」を増長させているのだ。今回の2019年政治決戦の参議院選挙の投票率も48、8%であった。
国会では自公が7割の議席を確保しているが、そもそも有権者の半分しか選挙には行っておらず、さらにその半分しか自公には投票していない。実は誰よりも熱心に選挙に参加しているこの25%の人々こそ、国の巨大な財政資金にかかわる利権を持ち、政治の利権化構造の基盤を担う人たちであり、利権創出でしかない「民営化」の実態から、「日本」を外資に売り払う貿易交渉の現状、歪んだ所得分配、税制の矛盾、利権を生む予算編成の問題などを説き、いかに現在の政治が一部の人たちのためだけに行われてきたかを植草氏は明らかにした。ここに特記する。まさに読者に必読の展開がなされているからである。
要するにGDPの4分の1という巨額を差配している、この現実の日本政治をどうすれば私たち大多数の有権者の手元に政治を取り戻すことができるのか。この問に対して植草氏は、それは消費税廃止、最低賃金全国一律1500円への引き上げなど、日本政治を刷新する5つの改革、つまり第2章でそれらの具体的詳論を提示しているのである。
ここで今話題となった吉本興業の闇営業問題から発覚した問題に対する、植草氏の痛烈な問題指摘を最新の植草ブログから、この機会に皆様へ是非とも突きつけておきたい。
安倍内閣は卑劣なメディアコントロールを強化し、政権を批判する発言者の大半を地上波から排除しつつ、同時に大手芸能プロダクションとの癒着を強めて、テレビメディアにおける言論を操作している。テレビの情報番組に大手芸能プロダクションに所属するタレントが多数出演している。民間メディアは資本の論理を優先して政治権力との癒着を強めている。政治権力は財政資金をメディアや芸能プロダクションに投下して、金の力で公共電波を私物化しているのである。
吉本興業に国民資金を投下しているのが2013年に設立された官民ファンド「海外需要開拓支援機構」=「クールジャパン機構」である。吉本興業は本年4月にNTTと共同で教育分野を中心としたコンテンツを配信する事業を開始し、クールジャパン機構が段階的に最大100億円を出資する予定になっている。『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)https://amzn.to/2WUhbEKでは、このようなことを言っている。吉本が教育事業に参画することは吉本の勝手だが、そこに政府が100億円もの資金を投下する必要性は皆無である。だからそれは国家の資金を私物化している構図でしかない。
クールジャパン機構は官民ファンドと言われるが、2017年4月時点で出資金は民間資金が107億円、政府資金が586億円である。このクールジャパン機構は本年3月末時点で179億円もの損失を出している。政府が利権関係者に国民資金を注いで大損を出している。この事実は利権関係者がまさに政府を食いものにしている構図なのである。
霞ヶ関官庁は国民資金でこうした出向先を創設し、国民資金を癒着企業に投下し、国民資金で放蕩生活を送っているのだ。日本の財政改革最大の課題は、財政支出の透明化だ。すべての利権支出を切るべきだ。政府の政策支出50兆円の2割をカットすれば、年間10兆円の資金を捻出できる。この10兆円を社会保障、育児支援、学費補助に回す方がはるかに国民の利益に沿うことは明らかである。
吉本興業は大崎洋会長と岡本昭彦社長が独裁体制を敷いている。この吉本興業に重大なパワハラ行為、雇用契約に関する不正、反社会勢力との関わりという重大な三つの問題が今現在、急浮上している。吉本興業は在京大手メディアの出資を受けており、大手メディアの関連企業になっている。大手企業は上場企業であり、適正なコンプライアンス体制の確立を要請されており、その要請は当然のことながら関連会社にも及ぶことになる。
安倍内閣は吉本興業と抜き差しならぬ関係を有しているが、このような問題が存在する中で国民資金を一企業に不当に投入することは許されない。今話題の吉本興業問題こそは、単なる一私企業の問題ではなく、安倍政治の本質的問題を象徴する事案なのである。
皆様には今後とも役立つ武器となる一書である。是非精読をお薦めしたい。(直木)
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書籍紹介 『古代日本と朝鮮半島の交流史』(西谷正著・同成社刊)
●はじめに
著者の西谷正氏は「日朝間の関係史は、古代国家形成以前の何万年も前の旧石器器時代以来現代まで、悠久の展開を示してきた。その間には、たとえば古代の分裂国家時代における軍事介入、中世の混乱期における倭寇、近世初期における秀吉の朝鮮侵略、さらに近代の帝国主義による朝鮮の植民地化など、不幸な出来事が少なからずあったことは事実である。しかし、統一国家時代である奈良時代や江戸時代には、新羅や朝鮮(李朝)の王朝との間で、基本的には平和で友好的な交流史が進展した。」と述べています。
そして「そのうち、本書では古代に限って、しかも筆者の専門である考古学の立場から考えることにした。ここで取り扱う古代とは、日本と朝鮮における最初の人類文化にあたる旧石器時代から、国家が確立した日本の奈良時代と朝鮮の統一新羅・渤海時代までの原始・古代の時代を指す。」と説明します。その中から、教科書では馴染みの薄い「先史時代」の記述を、いくつかピックアップしてみましょう。
●旧石器時代
「剥片尖頭器(はくへんせんとうき)」という打製石器が、朝鮮半島の南部から日本列島の九州・山陰に、海峡をまたいで分布することが、戦後の発掘調査によって、明るみになりました。韓国の学会では「スンベチルゲ」と呼ばれます。出土地層の年代分析から、これらは朝鮮半島から日本列島に伝播したことが明らかになっています。
この時期は「後期旧石器時代」で、3万数千年前にさかのぼります。ビュルム氷期と呼ばれ、現在より平均気温が7度も低い寒冷な気候でした。陸地には厚い氷床が形成され、海水面は現在より最大で百メートルほど低くなり、半島と列島の間の海峡も狭く、部分的には陸橋でつながっていたとも言われます。
人類は、ナウマン象やオオツノ鹿などの大型動物を、大集団の協働で狩猟し、移動する生活を送っていました。大型動物は寒冷化に対応して徐々に南下し、それを追って人類も半島から列島に南下してきたと考えられています。
●縄文土器と櫛目文土器
今から1万3千年前になると、気候が温暖化し氷床は溶けて海水面は上昇し、現在のような地形になりました。ウサギやイノシシなどの小動物、魚介類、ドングリやクリなど多様で豊富な食糧環境の中で、定住生活が始まりました。
食材を「煮炊き」するために、土器が作製されるようになり、日本列島では「縄文土器」が、朝鮮半島では「櫛目文土器」が、それぞれ発達します。ところが時代が下ると、朝鮮半島の南岸地域でも「縄文土器」が出土し、その反対に九州北部でも「櫛目文土器」が出土するようになります。このことは、朝鮮半島と日本列島との間で、人々がお互いに海を渡って行き来していたことを示しています。
●黒曜石の広域流通
「黒曜石」という石器材料も、海峡を挟んで広域流通しています。黒曜石というのはガラス質で、叩き割ることによって鋭利な打製石器になる貴重な石材です。小動物を狩猟するための「鏃」(ヤジリ)や、獲物の皮を剥ぐための「スクレイパー」などに利用します。
九州では佐賀県の「腰岳」という限られた場所で産出するのですが、これらが九州一円から朝鮮半島南部にかけて出土します。原石もあれば半製品・製品もあります。このことは、朝鮮半島と日本列島の人々が「腰岳産」黒曜石の利用価値を知っていて、計画的に広域流通を行っていたことを示します。
●結合式釣り針
漁労に使う「結合式釣針」という特徴的なタイプの釣針も、朝鮮半島南部と九州島との双方に良く似たものが見られます。これは「軸部」と「針部」を別々の素材で作製し、結合してひとつの「釣針」として使うものです。
九州島の結合式釣針は、軸部が鹿角製で、針部は猪牙製か鹿角製のものですが、朝鮮半島南部の結合式釣針は、軸部は石製で、針部は猪牙製と見られます。ところが、これら双方の特徴的な釣針が、対馬海峡を挟んだ沿岸各地で、相互に出土するのです。このことは、対馬海峡を挟んだ沿岸諸地域で、「環対馬漁労文化圏」が形成されていたことを示しています。
●水田稲作の伝来から未来へ
こうして3万数千年にわたる旧石器時代、縄文・櫛目文時代における朝鮮半島と日本列島の交流と「環対馬文化圏」が土台となって、やがて「水田稲作伝来」つまり「弥生時代」に、さらに「古墳時代」へとつながっていくのです。
西谷氏は「あとがき」で「私たちが毎日かならず食べるご飯は、2千数百年前に朝鮮南部から伝来した稲作技術に始まり、現在に至っている。そして、そのご飯を盛る茶碗は、4百年余り前に豊臣秀吉による文禄・慶長の役の折、連行されてきた陶磁器製作技術者による製陶の歴史に始まるのである。私たちが毎日身にまとう衣服は、百年前の文明開化以来の洋服である。つまり、身なりは西洋風であっても、生活のもっとも基本となる食生活は朝鮮風なのである。このこと一つとっても、日本列島と朝鮮半島の関係の歴史は奥深いのである。」と述べています。(松本誠也)
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コラムの窓・・・マイナンバーカード、新手の普及策に御用心!
マイナンバー違憲訴訟(個人番号利用差止等請求事件)が全国で争そわれており、トップバッターの神奈川訴訟(横浜地裁)は9月26日に判決となっています。そもそも国家による強制的付番そのものが大問題であり、12桁の生涯不変の番号で紐付けることによって、国家(例えば捜査機関)はいつでもどのような個人情報でも自由に集めることができるし、制度そのものの欠陥(情報漏洩を防ぐことは不可能)も看過できません。
免許証や健康保険証にはそれぞれ番号がついていますが、免許証の情報が漏れても病歴が漏れるということはありません。しかし、12桁の番号であれこれの情報を集めれば、人物像を作り出すことができます。そのとき、〝わたしはわたし〟と言ったところで、番号がなければ証明も出来なくなるでしょう。
個人番号(マイナンバー)カードの取得率は13・4%(6月13日時点)で、一向に増えません。カードを持つ必要性がないのに紛失や盗難の恐れがあるのだから、増えるわけがありません。総務省は6月28日、「地方公務員等のマイナンバーカードの一斉取得の推進について」という依頼信を地方職員共済組合等に発しています。これには申請・取得状況の紹介が付随しており、その報告を期日を指定して求めています。
神戸市はすでに職員のカード取得率の調査を始めています。これを「神戸新聞」(6月15日)が報じています。「取得の有無について職員から申告してもらう予定だが、目的はあくまで実態把握。取得を強制するような意図はない」と白々しい発言をしています
こうした公務員向けの攻撃がどれほどうまくいくのか疑問ですが、もっと手っ取り早い方策として、マイナンバーカードを健康保険証として利用しようという計画があります。すでに2021年3月本格実施に向けて動き出しており、当面はマイナンバーカードでも受診できるというものですが、普及が進めば健康保険証を廃止するつもりなのでしょう。
いつどこで何をしていたか、すべてを把握されることが何を意味するか明らかです。すでに監視カメラ網が生活のすみずみまで張りめぐらされ、ひとたび犯罪(誰にとっての?)が発生したら、関係者は丸裸にされて世間に晒される。警察と報道機関が一体となって犯罪者狩りをする、目の前で起こっている恐るべき現実です。これにマイナンバーが加わったらどうなるのか、想像してみてください。
国は「2022年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保持していることを想定」し、「国家公務員や地方公務員等に本年度中にマイナンバーカードの取得を推進」し、「マイナンバーカードの健康保険証利用に対応できるよう、2022年度中におおむね全ての医療機関等での導入を目指す」そうです。
これは悪い冗談。国・総務省は持たないことの不利益と持つことの利点を私たちの目の前に提示してみせているのです。今や何にでもポイントがついてくるようになっていますが、マイナンバーカードには自治体ポイント活用というのがあるよです。くれぐれも、ポイントに釣られてカードを持たないように。 (晴)
参院選兵庫選挙区から 自・公・維から維・公・自へ
参院選兵庫選挙区、今回も改憲勢力が3議席独占で終わった。3年で様変わりしたのは維新が午後8時の時点で早々と当確がついた一方で、自民が立民と最後まで議席を争い、日付けが変わる前にかろうじて当選を決めた。
そして、野党は再び共倒れに終わった。前回は民進と共産、今回は立民と共産、共産が辞退していたら2番手で当選しただろう。そんな風な声があちこちから聞こえてくるが、国政選挙は政党にとって最もとは言わないが重要な闘いであり、辞退しないことを非難するのは筋違いだろう。
選挙協力は一方的であってはならない。自・公を見ていたら分かるように、互いに利益となるように行わないと続かない。最も、自・公はもはや骨絡みとなっており、手段と目的が絡み合って分かちがたくなってしまっている。もはや同じ目的、つまり与党であり続けることでしか、党存在の意味がなくなっているようだ。
さて、それではどのような方策があったのか。半ば結果論ではあるが、大阪と兵庫で候補を譲り合う、大阪は共産に、兵庫は立民に一本化すべきであった。そうすれば両方で自民を落とせた。なにより、大阪の辰巳孝太郎議員は活躍していたから、その落選は惜しむべきことだった。
そんなことを空想しながら、全体結果に落胆し、社民党が政党要件を守ったことに安堵した。危惧を抱くのはN国が政党要件を獲得したこと、この党は単にNHKを敵視するだけではなく、危ない偏見と排外を煽ることで支持を広げようとするだろう。春の党一地方選で西宮にもN国の市議が登場した。議会ではまだ音なしのようだが、油断はできない。 (折口晴夫)
兵庫選挙区選挙結果(定数3)
清水貴之 維現 573427票
高橋光男 公新 503790票
加田裕之 自新 466161票
安田真理 立新 434846票
金田峰生 共新 166183票
原 博義 N国新 54152票
何でも紹介・・・「りゅうりぇんれんの物語」
劉連仁 中国のひと
くやみごとがあって
知り合いの家に赴くところを
日本軍に攫われた
山東省の草泊という村で
昭和十九年 九月 或る朝のこと
りゅうりぇんれんが攫われた
六尺もある偉丈夫が
鍬を持たせたらこのあたり一番の百姓が
為すすべもなく攫われた
山東省の男どもは過酷に使っても持ちがいい
このあたり一帯が
「華人労務者移入方針」のための
日本軍の狩場であることなどはつゆ知らずに
手あたりしだい ばったでも?まえるように
道々とらえ 数珠につなぎ
高密県に着く頃は八十人を超していた
顔みしりの百姓が何人もいて
手に縄をかけられたまま
沈んだ顔を寄せ合っている
「飛行場を作るために連れて行くっていうが」
「一、二ヶ月すれば帰すっていうが」
「青島だとさ」
「青島?」
「信じられない」
「信じられるものか」
不信の声は波紋のようにひろがり
連れて行かれたまま帰ってこなかった人間の噂が
ようやく繁くなった虫の声にまぎれ
ひそひそと語られる (略)
1944年夏、中国の農民だった劉連仁は強制連行され北海道の炭鉱で働かされるも、あまりの過酷さに翌年7月に脱走。戦争が終わったことも知らず、北海道の山野で13年間も逃げ回った実話にもとづいて、茨木のり子が書いた500行あまりの長編の詩。
日本政府は、戦争当時から今に至るまで、戦争被害者に対して一環して向き合おうとしない。
7月25日東京新聞の「本音のコラム」、三木義一青山学院大学長によると、今回の参院選で「(17人の世襲議員が立候補)11人が当選、うち7人が自民党だったそうだ」と言う。こんなにたくさんの世襲議員には、戦争の加害事実をこそ「世襲」して欲しいものだが、まるで無し。(澄)
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佐賀県立名護屋城博物館を見学して
書籍紹介した『古代日本と朝鮮半島の交流史』の著者である西谷正氏は、「佐賀県立名護屋城博物館」の初代館長でもあります。この博物館は秀吉の朝鮮侵略の拠点であった佐賀県の「名護屋城」跡地に隣接しています。秀吉はここから十数万人の兵を二度にわたって朝鮮に侵攻させ、朝鮮社会に甚大な被害をもたらしました。
この博物館は国内外で唯一「日本列島と朝鮮半島との交流史」をテーマに掲げているそうです。西谷氏は同書「あとがき」で「そこでは日本列島と朝鮮半島との間に、原始の旧石器時代から現代の第二次世界大戦終結期まで長期間にわたって展開した、悠久の関係史の過程で、文禄・慶長の役(壬申・丁酉倭乱)を実に不幸な出来事として捉え、その反省の上に立って、未来志向の平和で友好的な関係の構築を目指すという立場を明確にしている。」と紹介しています。
先日、私もこの博物館を訪れ、展示を見学しました。旧石器時代の剥片尖頭器、縄文土器と櫛目文土器、黒曜石の原石と鏃、結合式釣針、高句麗系・新羅系・百済系の瓦や陶器、白村江の敗戦と朝鮮式山城、遣唐使と新羅使・渤海使、日宋貿易と高麗青磁、元寇と三別抄の抵抗、文禄・慶長の役、朝鮮通信使、江華島事件、日韓併合、三一独立運動、解放と朝鮮戦争・・・と、コンパクトな展示ながら日朝史の要点がほぼ網羅されています。
またビデオコーナーでは「未来志向の日韓関係」に向けた韓国研究者のインタビューを聞き、いろいろと考えさせられます。博物館の屋外には、日韓のアーティストによる芸術的モニュメントが立ち並んでいます。「日韓交流センター」も併設され、地道な学問的・文化的交流が続いています。
九州を訪れた折には、ぜひ足を伸ばして同館に立ち寄られることをお勧めします。(松本誠也)
「エイジの沖縄通信」(NO64)・・・参院選の本土選挙と沖縄選挙
①参院選「本土選挙」について
今回の参院選の最大の問題点は、投票率が48.8%で戦後2番目に低く、選挙で投票に行く有権者が半分以上もいる事だ。
この「投票率の低さ」の諸原因について、「公示と同時に官邸が流した情報をマスコミが一律に『自公政権が過半数を獲得、改憲に必要な3分の2に迫る勢い』との報道。選挙前から結果が見えてしまって、国民が白けるのも無理はない。」との指摘もある。映画「新聞記者」が、官邸の情報コントロール問題を取り上げて話題となった。
このように今回の参院選は投票率が低下したので、自民党も絶対得票率を低下させ「比例票で約200万票も減少」させ、また公明党も「比例票で約100万票減少」させている。しかし、自民・公明は固い地盤「投票マシーン」は完成しており、いつものように機能して一定の投票数を獲得する。
対抗すべき、本土の革新政党は確かに自公に勝つために「1人区での統一候補」を推し進めた。確かに秋田選挙区のように「イージス・アショア配備」が焦点となり、野党が勝利した選挙区も幾つかあった。しかし、多くの「1人区」は「各党による積み重ねの活動がなく、結束が弱く内実が伴わない」選挙区が多かった。
「野党対立」の醜さがもろに出たのが静岡2人区選挙であった。立憲民主の徳川候補と国民民主の榛葉候補が1議席をめぐり激戦を繰り広げる中、「国民党幹部が演説で『自民の元大臣に票を回して』とお願いした。自民党の牧野候補を応援してきたスズキの鈴木修会長も支援に回り、企業・労組票を取りまとめた。改憲に軸足を移す今後の国会運営を考え『榛葉さんならくみしやすい』と官邸の思惑も働いた。公明票も榛葉さんに流れた」と地元新聞が報道した。
選挙結果は、自民・牧野氏585,271票/国民民主・榛葉氏445,866票/立憲民主・徳川氏301,895票であった。
②参院選「沖縄選挙」について
では、参院選沖縄選挙区はどうであったか?「オール沖縄・高良鉄美さん」が6万票以上差をつけて自民党候補に勝利した。午後8時の投票締め切りと同時に高良鉄美さんの当確がでた。
結果を数字で示すと以下のようになる。
★有権者数は1,163、784/総投票数は570,305/投票率は49%。
★高良鉄美さん298,831票/得票率は52.42%。
★安里繁信さん234,928票/得票率は41.19%。
このように沖縄の投票率も49%と低かった。3年前の2016年7月の参院選の投票率54.46%と比べてみると、投票率の低下が著しい。
この得票率の低下について沖縄の人は「有権者が1万人以上増加したが、投票者は5万5千人減少し、投票率は5%以上落ち込んだ。なぜか?ウソとごまかしに満ちた強権的な安倍政権にいくら選挙で民意を示しても無駄ではないかという不信感と無力感が広がっている。」と指摘。
しかし、同時に「そんな中でも県民の辺野古新基地NO!普天間閉鎖返還!の意思は揺らぐことがない。高良さんは公示後の選挙運動を名護市瀬嵩の浜からスタートさせ、一貫して新基地反対!埋め立てストップ!と沖縄の声を聞き届ける日本の政治の実現を訴え続けた。
最大の争点は辺野古新基地建設をめぐる是非だった。今年4月の衆院沖縄3区補選では、自公の候補者は辺野古埋め立て賛成を打ち出したが、知事になった玉城デニーさんを受けついだ屋良朝博さんに大敗した。辺野古に触れなくてもダメ、辺野古賛成でもダメとなって、今回の相手の安里候補は『県民投票の尊重』を口にしながら『右でもなく左でもない』中立の立場で経済を前に進めると主張し、無党派層や若者層の獲得を図ったが、敗北した。
県民の信念は固い。20年をこえる日米両政府との攻防を経て、辺野古新基地反対!は県民の思想の骨格になっている。簡単には壊せない。これで沖縄からは引き続き国会に、2人の参院議員、3人の衆院議員を擁することになった。」と述べている。
沖縄も本土と同じように選挙投票率は下がっているが、「辺野古新基地反対!」は県民の思想の骨格になっていると言う。その思想の骨格を作り上げたのは、故翁長知事の業績だと言える。「イデオロギーよりもアイデンティティーだ」の言葉で革新と保守の結合をめざし、政治的には自民に対抗する「オール沖縄」を造り上げたこと。そして、この「オール沖縄」が安部自民党と闘う基盤となり「投票マシーン」として機能している。
③「れいわ新選組」について
今度の参院選で、台風の目となり最大に注目を集めたのが山本太郎の新党「れいわ新選組」であった。「消費税廃止」「辺野古基地反対」「奨学金地獄救済」等を掲げ、約4億円の寄付を集め、10人の候補者を擁立した。
新橋駅前集会やは品川駅前を数千人で埋め尽くし、SNSやTwitterで若い人たちが集まる社会現象が起こった。この選挙で「れいわ新選組」は政党要件を満たす4.5%を獲得、障がい者候補が2議席を獲得した。「バリアフリー」と言われながら、国会にも地方議会にもほとんど実現していない現状に挑戦する2人の新国会議員を応援したい。
今回の選挙で、革新政党と言われた「各党」は後退傾向で右派的政党が伸張している。
「革新政党」の躍進に期待しているが、「各党」の選挙活動を通じて感じることは、演説もポスターやチラシもワンパターンで工夫が足りない。人(特に若者)を引きつける魅力がない。その事をしっかり検証する事を望む。
「れいわ新選組」については「左派ポビュリズム」との批評もあるが、今後も「れいわ新選組」の政治運動に注目していきたい。(富田 英司)
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色鉛筆・・・農薬「グリホサート」があぶない!「ポストハーベスト」から「プレハーベスト」へ
本日(7月24日)、やっと近畿地方に梅雨明け宣言が出ました。夏休みに入ってからも、晴れ間もありますが、曇りになったと思ったら雨が降り出したりで、夏の行事はどうなるのだろうと心配でした。ところで、7月号のワーカーズでビールにも農薬が・・・と、少し触れましたが、今回、ここで紹介しておきたいと思います。夏場のビールは欠かせないところですが、敢えて皆さんにご忠告を。
日本国内では、あまり報道されていませんが、世界中で農薬「グリホサート」による健康被害が問題となっています。この農薬は、モンサント社の除草剤ラウンドアップの主成分として使用され、使用中止に向けて市民運動が広がっています。遺伝子組み換え作物の大半は除草剤耐性作物で、その多くがラウンドアップ耐性です。そのため散布量が増え続け、世界で最も多く使用されている除草剤になりました。日本でも農地以外に公園や校庭、空き地や河川敷などで使用されているそうです。
2015年3月にWHO(世界保健機構)の専門家組織の国際がん研究機関が「グリホサート」を正式に発がん物質と認定したことが、市民運動が動き出したきっかけでした。その後、米国カリフォルニア州も発がん物質に認定し、農業以外の公園や家庭での使用禁止となりました。2018年8月10日、カリフォルニア州ではモンサント社を相手どって訴訟が起こり、末期がんの被害者が勝訴しました。2019年2月末時点で、「グリホサート」をめぐる訴訟は約1万1000件へと増加し、さらに増え続けているそうです。
気になる日本市場ではどうでしょうか。ラウンドアップの製造・販売はモンサント社から日産化学に移行し、「グリホサート」を主成分とした商品が登場しています。レインボー薬品の「ネコソギ」、大成農材の「サンフーロン」など多様な商品が、百円均一ショップ、スーパーやホームセンター、インターネットでも販売されています。そういえば、テレビのCMでも、似たような商品を見かけたことがありました。
収穫物の生産性を追い求めたために農薬の使用法も変わってきました。「ポストハーベスト」は、よく耳にした方も多いと思いますが、今、主流になっているのが「プレハーベスト」という手法です。これは、収穫の1~2週間前に農薬「ラウンドアップ」を散布し、実を一斉に乾燥させ一度に収穫できる、というものです。しかし、収穫直前に散布された農薬は残留率が高くなり、そのためか、日本では小麦の残留基準が5ppmから30ppmに緩和されています。なんと寛大なこと、まるで放射能体内被曝許容量基準を意図も簡単に緩めた姿勢に似ているように思います。
ビールの汚染は、米国の公益団体の検査でわかり、さまざまなメーカーから「グリホサート」が検出されたそうです。日本でもおなじみのハイネケン、パドワイザー、ギネスなどで、主にビールの原料の大麦が汚染していたようです。皆さんの食卓にあるビールの食品表示を見て下さい。原料が国産なのか、どんな添加物が入っているのか、関心を持つことが自分を守ることにつながるはずです。「グリホサート」が発がん性以外にも様々な健康被害を起こすとされ、脳神経系や妊娠、出産への影響が報告されています。店頭に並べられている除草剤に限らず、殺虫剤などにも本当に必要なのか? と呼びかけたいです。
紹介した情報は、「遺伝子組み換え食品いらないキャンペーンニュース・全国交流会報告」からのものです。私が共同購入している「あしの会」のお便りに掲載されていました。皆さん、これからが夏本番です。暑さに負けず、乗り越えましょう。(恵)
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