ワーカーズ613号(2020/12/1)
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コロナ危機で奪われる「仕事・住居・命」
新型コロナ感染の収束が見込めない中、働く者を取り巻く状況は悪化する一方である。
「働く機会」が奪われている。
厚生労働省は、新型コロナによる解雇・雇い止めにあった人数が、一月末から十一月六日までの期間で七万二四二人に達したと公表した。九月の完全失業率は三・〇%、失業者数も二百六万人で、前月より悪化している。
雇用形態では、パート・アルバイトなどの非正規労働者が、五月二五日から十月三十日までの間に、三万六九二人の職が失われた。また業種別では、製造業の一万二九七九人を筆頭に、小売業、宿泊業に続いて、労働者派遣事業が四千九四四人と上位を占めていることが注目される。
四月の緊急事態宣言の直後は宿泊業で解雇・雇い止めが急増したが、最近では製造業の割合がジワジワと増えている。
政府の通り一遍の「雇用調整助成金」特例措置や「持続化給付金」では持ちこたえられず、倒産・事業縮小・廃業が相次ぎ、働く者が職を奪われているのだ。それだけではない。
「居住の場」まで奪われている。
とりわけ深刻なのが派遣労働者の雇い止めに伴い、社員寮から退去させられ、ネットカフェを転々としながら、職探しもままならず、ホームレス化の危機に瀕しているケースが後を絶たないことだ。
支援団体の電話・メール相談には、寮を追い出されたり、家賃を払えず退去を迫られて、心身ともに追い詰められる若者の悲鳴が寄せられているという。
さらに、こうした困窮者をターゲットにした「貧困ビジネス」が悪質な手口で収奪している事例が報告されているが、それらは氷山の一角にすぎない。
「命」までが奪われている。
警察庁の調査によれば、十月の自殺者は二千一五三人で、前年同月比三九・九%像、六一四人増であった。うち男性は千三〇二人、女性はハ五一人で、女性の割合が増えている。ここ数年、低下傾向にあった自殺者数は、七月から急増に転じた。
職を奪われ、わずかな貯金も底を尽き、家賃も払えず、精神的にも疲弊し、自らの命を断つほどに追い詰められているのだ。
人間として当たり前の「働くこと」「住むこと」「生きること」これら最低限の権利が奪われている現実を直視しなければならない。
その一方で、空前の「株高」が富裕層や巨大企業を富ませている。その中には貧困ビジネスで儲けている輩や、GoToや給付金の委託で利権を欲しいままにしているIT企業もあることを忘れてはならない。
働く者は今こそ大同団結して、働く権利、住む権利、命を守る権利を掲げて、この不条理な社会との闘いに立ち上がろう!(冬彦)
ダウ史上初の3万ドル突破 経済苦の庶民しり目に 金融資産家に富はさらに集中 ウォールストリートを打倒せよ?
米国での株価高騰が目覚ましい。いくら新型コロナ・ワクチン開発が成功しそうだとして、また、混迷の大統領選挙の終点が見えたからと言ってこれは「異常」だ。もちろん「根拠なき」株高は今に始まったことではない、「異常」が常態化して久しい。かつて経済の全盛期といってよい米国の六十年代~八十年代初めまで、それでも米国ダウ平均株価はほぼ千ドルで推移してきた。金ドル兌換停止とその後の金融グローバル化、つまり過剰貨幣資本の世界的移動の自由化によってすべての景色は変わった。
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前世紀の八十年代中盤から右肩上がりとなった株価は、二千年には一万ドル。トランプの就任時二千十七年には約二万ドル。それからわずか四年で三万ドルに達した。しかも、コロナ禍も重なり世紀の大不況のさなかに悠々と三万ドルだ。つまり起点を前世紀八十年あたりに取れば、四十年弱で三十倍の株価上昇であり、加速をつけてさえいる。大富豪たちは笑いが止まらないはずだ。金融資産は彼らが自分の手に集積させているからだ。金融資産の大量所有者とそれを所持できない、賃労働に頼る人々との格差はいやでも拡大する。自明なことが再び三度繰り返される。
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原理は簡単だ。前任者イエレンFRB議長とは違い現任のパウエルは愚かで政治圧力にも弱いときている。トランプに脅されつつ金利を下げクレジットの大判振る舞いをした。理由は大統領選挙のため停滞する経済を支えなければならないからだ。さらに追い打ちをかけたコロナ恐慌への対応だ。・・
建前は「コロナ禍に窮した庶民を救うため」「大量失業を防止するため」だとされるが、このような金融政策は大富豪であればあるほど致富に有利に働く。金融資産が膨張するので黙っていても富みが増える。それは信用拡大で「架空資本が膨張しただけであり虚構の富である」ということで切り捨ててはいけない。それはとても一面的な考えであり、金融資産家の現実的致富に免罪を与えるだけのものだ。
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資本収益(利潤など)に根差した金融資産(株式・社債など)ばかりではなく、大衆の個人所得から多くが奪われる。住宅賃料など不動産収益などは序の口、さらには住宅ローン支払い、車のローン支払い、奨学金のローン支払い・・これらのものが証券化されて金融商品となり、それらが組み合わされたファンドが資産家により買い集められる。大衆のなけなしの収入が富裕者に流れ込む仕組みが拡大する。量的質的金融大緩和政策とは、一皮むけば大衆収奪の道具であり、大衆的な債権の集積の道であるのだから。ついでながらMMTもそれを知らない。
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米国ウォール街につながる富裕階級への怨嗟の声は絶えることはない。大衆は直感的に金融資産家を収奪者として感じている。トランプの「岩盤支持」にはウォール街やそれに連なり富と権力をむさぼるエスタブリッシュメントへの憎悪が広がっているからだ。トランプは彼らを偽善的に叩き人気を博した。いまや労働者市民が彼らを打倒しなければならない。(阿部文明)
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引き出そう、若者の力!――拡げたい政治対話の機会――
菅内閣の支持率が高止まりしている。とりわけ若者からの支持を集めている。
菅政権は支持率の高止まりを背に、強権政治への道を着実に進んでいる。若者の力を引き出し、足下からの包囲網を拡げ、菅強権政治と対峙していきたい。
◆下がらない菅内閣の支持率
菅内閣が発足して2ヶ月半が経過した。その後の高い支持率は、政権発足後に改めて打ち出したスマホ料金の引き下げなどが、庶民の生活感覚をくみ取る姿勢だと評価されたからか。
10月に入って発覚した日本学術会議での任命拒否や説明拒否で、菅内閣の強権体質が浮き彫りになった。とはいえ、支持率が下がった世論調査もあった一方、ほとんど変わらなかった調査結果もあった。
たとえば、毎日新聞では11月調査での支持率は57%で、9月調査よりマイナス9%、朝日新聞では9月に65%だった支持率が10月で12%マイナスの53%、11月ではプラス3%の56%だった。
他方、読売新聞は10月で67%だったものが11月には69%で2ポイント上昇、NHKでは11月に56%と先月より1%上がっている。多くのメディアで内閣支持率は5~6割台を維持しているのだ。しかも、学術会議問題だけを見ても朝日新聞では、政府の対応は「妥当だ」が31%、「妥当ではない」が36%、毎日新聞では「問題ない」との解答が44%、「問題だ」が37%で、双方が拮抗しているいるのが実情だ。
学術会議問題で、任命拒否や説明拒否など菅政権の強権的、硬直的な姿勢への批判も拡がっている中、それなりの支持率を保っているわけだ。現に、保守派からは「勝負あった!」として、学術会議問題は政権への打撃にならないという願望を伝えている。多くの人は、エリート集団でもある学術会議への菅政権による介入を、独占的な民間会社にスマホ料金の引き下げを迫るのと同じような感覚で受け止めているのだろうか。
◆拡がる強権政治
菅政権の強権化指向は、学術会議問題での批判が拡がる中でも、修正されないばかりでなく、一層拡がる様相を見せている。相次いで問題となっている東京大学や筑波大学での異様な学長選びも、その一例だ。
東大総長選びでは、教職員の予備選でトップになった教授が、選考委員会によって教員による意向投票にかけられる正式の推薦名簿から外される、という異例の事態となった。筑波大学では、教職員の意向投票で1位になった候補者を差し置いて、現学長が継続して学長を続けることになった。これまでの一期6年という学長任期制限が取り払われ、何年でも学長を続けられるように改訂された結果のことで、同大の教員有志らでつくる「筑波大学の学長選考を考える会」から、選考プロセスの正当性を問う声が出ているという。
これらの事例は、いずれも当該の教職員の意向を無視した力が働いた結果の事例であり、国立大学への政権による介入圧力が強まっていることの反映でもある。
人事権や人事への介入を通して上意下達の強権政治を確立しようとする菅政権による強権的手法は、安倍内閣による露骨な内閣法制局長官人事を引き継いでいるものだ。それまでの慣行を破って、集団的自衛権の行使を容認する外務省官僚を強引に長官に就任させた事案だ。首のすげ替えによる上意下達手法が安倍政権の特徴的な官僚統制となり、それがそのまま菅内閣に引き継がれている。その手法が、学術会議から国立大学へと拡大され、やがてはNHKや民放の報道そのものへの介入にまで拡大されるのでは、という危惧を招く事態になっているのだ。
◆〝若者〟の意識風景
安倍内閣から菅内閣にかわっても、強権政治が修正されないばかりでなく、それが一層拡大されようとしている。背景に、選挙での獲得議席数に直結する内閣支持率や自民党への支持率が高止まりしている現実がある。多少、あるいは一時的に内閣支持率が落ちても、少したてば回復する、こんな経緯を何回も体験してきた政権や与党。野党やメディアなどによる政権追及に対して、撤回せず、説明せずでノラリクラリ、あるいは開き直ってきた。いずれは内閣支持率も復調するとみているからだ。
その自民党や内閣支持率、はっきりとした傾向が見て取れる。それは20代、30代、40代の若者や子育て世代の与党や菅政権への高い支持率だ。
例えば朝日新聞の11月世論調査では、菅内閣への支持率が29才以下で65%、不支持率が7%、30~39才でそれぞれ58%、15%、40~49才で60%、15%、50~59才で59%、19%、60~69才で52%、26%、70才以上で48%、28%だ。年代でこんな開きがある世論調査は、安倍政権以前にはなかった傾向だ。
そんな若者の意識情況を垣間見える記事がいくつか目にとまったので、今回はそれを紹介していきたい。
まず紹介するのが、朝日新聞に掲載された11月2日付の投書(無職Kさん、84才)である。その投書は要旨、次のように書かれている。
――「男子大学生の発言に衝撃を受けました(本紙GLOBE10月4日)。選挙に行くとき『候補者の主張を調べはします。でも、距離を感じてしまうので、多数派から支持を得ている人に投票するようにしています』。さらに『もし来月から独裁的な政権になるって言われたとしても、今はそういう時代なんだと受け入れてしまう、そんな自分がいるんです』とも。……『多数派に投票』は、戦後一貫して多数決が『民主主義の原理』とされ『多数=真理』という認識になっているのでしょう。
……『独裁政権容認』とも言える発言は、学校で理不尽な校則をも守らされ続けた結果『従う方が平和』『誰かが決める社会の方が安住できる』という思いになったのでしょうか。学生の意見を特異だとは考えず多くの人が早急に検討すべきです。独裁への道に歯止めをかけるためにも。」――と結ばれている。
私もこの投書に共感し、そして若者との対話の重要性も共有する。この投書の元になった記事は、朝日新聞の別刷りの10月4日付の『GLOBE(234号)―2面』の「民主主義と私 若者の感覚は、支持されそうな人に1票入れます」というGLOBE編集部、玉川透氏の記事だ。ここからも少し紹介したい。
(以下引用)――東京都知事選を翌日に控えた7月4日の昼下がり。私は、ある学生団体が主催するオンライン討論イベントに招かれた。テーマは民主主義。日本政府のコロナ対応をどう思う? 都知事選、どんな視点で投票する? 若者たちと意見を交わすうち、都内の大学に通う4年生の男子学生(23)の発言に、メモを取る手がとまった。
「ぼくは選挙に行くとき、候補者の主張を調べはします。でも、距離を感じてしまうので、多数派から支持を得ている人に投票するようにしています」――。
え、どういうこと?
子育て、年金、働き方……各候補の主張は「自分ごと」に感じられない。でも、選挙に行かなきゃ大人じゃない。あやふやな自分の1票が影響を与えないよう、大多数の支持する「安パイ」に入れよう。そう考えたという。
――そもそも、政治に期待した記憶があまりない。彼はそう言った。「子供の頃にあった東日本大震災での政府の対応や、社会の無力感を見たからかもしれません」
そして、こう告白した。「政治は時代によって変わって当然、もし来月から独裁的な政権になるって言われたとしても、今はそういう時代なんだと受け入れてしまう、そんな自分がいるんです」
最近の若いのは……。そうぼやきたくなる人もいるだろう。だが、あえて弁護すれば、彼は大学院進学を志す真面目な学生であり、勇気を出して「本音」を明かしてくれたと思う。
――駒沢大学教授の山崎望(46)は、2017年後期のゼミで森友・加計学園の問題を議論した。安倍政権を肯定する意見がゼミ生25人の7割を占めた。
「何政権でも、民主主義国家としてよくないのでは? 私が水を向けると、彼らは言うんです。『そもそも、総理大臣に反対意見を言うのは、どうなのか』って」
……「理屈ではなく感覚です。安定に浸っていたい、多数派からはじかれて少数派になりたくない。そんな恐怖が少数派は罪という考えまで至るのではないでしょうか」
……逆に、政権を批判する野党やジャーナリスト、活動家には関わりたくない――(以上、引用終わり)。(玉川透 GLOBE編集部)
いま若者同士の会話では、政治の話をすると「意識高い系」と茶化され、壁を作られてしまうという。なんともお寒い風景が見られるばかり、ではあるが、投書したK氏が言うように、私たちは、もっともっと若者と政治を語り合う必要がある。
◆対話による問題意識の共有
現代の若者をひとくくりにはできない。が、こうした意見や感覚が多いのだろう。それに苦情を言えば、いつの時代も変わらぬ高齢者の繰り言、と捉えられても仕方がない。逆に若者から見れば、〝戦後日本を担ってきた団塊世代〟やその次の世代に対して、強烈な忌避感を持っているともいわれている。20、30、40代の若者・壮年層から見れば、団塊世代やその下の世代は、高度経済成長の果実の恩恵に浴し、終身雇用や医療・年金などの社会保障で手厚い給付を受けつつ、現在進行中の段階的な社会保障の縮小から逃げ切った世代ではないかと見られている面もあるからだ。そんな世代間対立に陥ることを避け、前向きな対話を重ねていくことが求められている時代なのだろう。
そんな場面で参考になる記事もある。11月16日付の朝日新聞の学術会議の任命拒否を扱った「学生118人議論白熱」という記事である。この記事は、鹿児島大学の「日本国憲法」の授業で10月22日に行われたオンライン授業の模様を紹介する記事だ。少し紹介したい。
このオンライン授業は、以下のような段階を踏んで進められた。まず事前に図書館の文献を借り新聞各社の社説を読み、学生がどう考えたか予習する、それを予習する前の段階の意見と併せて答えたものをいくつかの円グラフにしたものを見ながら討論を行い、その討論を受けた後の意見も集約している。
最初の円グラフは、予習前に問題を知っていたか。「知っていた」が54%で「知らなかった」は46%だったという。この問題が発覚したのが10月1日だったので、新聞やテレビで大きく報道されていた約20日の期間があったにもかかわらず、「知らなかった」学生が46%もいたことにまず驚いた。想像するに、ニュースは、たぶんスマホの画面でしか見ておらず、見たとしても他の興味ある話題を見ただけで、学術会議のニュースはスルーしていた、ということだろうか。
授業は、次に3~4人のグループに分かれて議論が始まった。任命しなかったのが「適切」とした学生からは、「日本学術会議法には首相に任免権があるとあるので適切」「学術会議の会員でなくとも研究は自由にできるから、憲法の『学問の自由』には反しない。」「学術会議には10億円の予算が使われているのだから、政府は監督すべきだ。」といった意見が出たという。
一方、「適切ではない」側は、こう主張した。「首相の任免は学術会議法を読むと、首相の推薦に『基づいて』任命するという文言で、形式的なものだとわかる。」政府自身が過去に『形式的だ』と国会で答弁している「会員の任免は研究業績で決められている。それを任命しないのは『学問の自由』に反する」「国の予算が出ているから監督を正当化していいなら、国立大学は政府の言いなりになる」
またあるグループは、「学術会議法の『基づいて』は、憲法の『天皇は国会の指名に基づいて総理大臣を任命する』にもある。だが、天皇が首相の任命を拒否したことはない」と話した。これに反論が出た。「間接的でも選挙されている首相と、選挙で選ばれていない天皇とは同じではない。」
学術会議に対しても「学術会議は軍事研究を否定する声明を出しているけれど、それが軍事研究を肯定する人の『学問の自由』を切り捨てている」との発言もあったという。
学術会議以外への影響という懸念についても発言があった。「首相が自分の見解に反対する人の任命を拒否すると、学術会議は政府に否定的な勧告をできなくなる。学問だけでなく、『表現の自由』にも反している」
最後に渡邊准教授は「学問の正しさは地動説の例からわかるとおり、多数決では決められない。民主的に選ばれたはずの首相もできないことがある」と解説した、という。
◆強権政治は許さない!
記事では授業後の意見の変わり方についても記述されている。
それによれば、授業後のアンケートでは任命拒否は「適切ではない」が68%と伸びたが、「適切」も31%を占めた。「適切」から「適切ではない」にかわったのは全体の21%だったという。中には「……萎縮効果まで考えていなかった」「どちらの立場もなるほどという点が見つかった。」などという意見もあった。ただし、「首相は理由を説明をすべきだ」という意見は、どちらの立場の学生にも多かったという。
准教授は最後に、「学生の半数が問題を知らなかった段階から、調べて議論する段階へ、生の問題で不確かな情報をうのみにせず、自分で吟味して考える大切さを知って欲しい。」と締めくくっている。
これらの発言の中にある「国の予算が出ている」すべての団体は政府の指揮命令系統に従属する、という考え方は、先に取り上げた国立大学法人の学長選びなどにも拡がっているのが現実であり、それに学術会議への統制圧力も続いている。
たとえば学術会議に対する井上科学技術担当相の発言だ。11月17日の参院内閣委員会で学術会議と軍民共用の件で話し合っている事実に言及した。要するに、これまで軍事研究を拒絶してきた学術会議に対し、軍民デュアルユース(軍民両用研究)へ転換を迫る圧力だ。世界では軍民両用が常識だ、との学術会議への自民党と菅内閣と財界によるに攻撃や圧力が高まっているのだ。戦前に学術が戦争への協力を強要されたことへの反省は、どこにもない。
安倍政権以来の政権による自治団体などへの圧力は、すでに他にも拡大している。愛知トリエンナーレへの補助金不支給や、自治体による公共施設の貸し出し制限、新聞・テレビなどメディアへの圧力などなど。今回の学術会議に対する圧力は、こうした政権による統制強化という流れの中に位置づけられるものでもある。
強権政治は許さない!菅政権の強権的な統治スタイルへの糾弾と追求の闘いを拡げていきたい。(廣)
読書室 マルチェロ・ムスト著『アナザー・マルクス』 堀之内出版 2018年11月刊
○ソ連崩壊後、全世界で急速に影響力を喪失した「マルクス主義」ではあったが、リーマンショックによる世界経済の混乱低迷の中で、新マルクス全集「新MEGA」の刊行が進められたこと等を背景として、従来のソ連公認のイデオロギーであった「マルクス主義」とは異なる、本来のマルクスの思想を見直す「マルクス・リバイバル」が起きている。本書は、積極的にこの流れの一環として出版されたカール・マルクスの最新の伝記である○
本書の著者は、「マルクス・リバイバル」の流れを担うイタリアのマルクス研究者、マルチェロ・ムストであり、本書にはムストの日本の読者へ向け「日本語版序文」が書き下ろされている。彼は、2018年12月21日に来日し、翌日には法政大学市ヶ谷キャンパスで開催された「マルクス生誕200年記念国際シンポジウム」に参加した。そして翌年の1月19日には立教大学池袋キャンパスにおいて『アナザー・マルクス』についての講演会を開催した。つまり自分の書いたマルクスの伝記についての講演をしたのである。
彼が今どのくらい注目されているかがよく分かる訪日の日程ではないだろうか。
その意味では、2018年5月5日に行われた「マルクスを読もう! マルチェロ・ムスト×ウォーラーステインとの対話記事(note.com/horipub/n/n3e4b6b5ecdeb)も紹介しておこう。この対談も実に示唆に富むものだ。この機会に皆様、ぜひともお読み下さい。
さてマルクスの伝記と言えば、F・メーリング、E・H・カー、D・マクレラン等の著書が古典として有名である。ではムストの本はどのようなものか。以下に目次を紹介する。
日本語版序文
はじめに
マルクス・リバイバル/ 新しい思索に向けて/マルクスの著作の年表
Ⅰ. 子供の頃、青年時代、そして大学での勉学
聖職者になりそこねて/トリーアの学校にて、そしてボンでの法学徒として/敵の腕の中へ/ベルリンの青年ヘーゲル派として
Ⅱ. 経済学との出会い
十九世紀の首都・パリ/古典派経済学と疎外された労働/草稿と抜粋ノート/一八四四年の草稿/哲学から革命の実践へ
Ⅲ.恐慌を待ちわびて
.経済学研究の継続/孤独な亡命生活の中で/一八五〇年から五三年にかけての研究ノート/共産主義者の裁判とプライベートでの苦難/恐慌についての『ニューヨーク・トリビューン』紙への寄稿
Ⅳ.『経済学批判要綱』の頃
一八五七年の金融恐慌と革命の時/歴史と社会的個人/ロンドンで貧苦にあえぐ/方法を求めて/『要綱』を書きながら/ブルジョワ社会との戦い
ⅴ.カール・フォークトとの論争
『フォークト君』/貧困・病気との戦い/「経済学」を待たせる一方…/ジャーナリスト活動と国際政治
Ⅵ.『資本論』--未完の批判
剰余価値の諸理論に対する批判的分析/三巻本の執筆/第一巻の完成/決定版を追究して
Ⅶ.国際労働者協会の創立
うってつけの人材/組織の発展と成長/相互主義者の敗北
Ⅷ.一八七一年:パリの革命
アイルランドの自由のための闘争/フランス=プロイセン戦争への反対/パリ・コミューンによる権力の獲得/ロンドン大会における政治的転換
Ⅸ.バクーニンとの対立
インターナショナルの危機/マルクス対バクーニン/二つの対立する革命論
Ⅹ.人生の煩わしさと新しい研究の地平
「闘争!」/メイトランド・パーク・ロードの部屋/人類学と数学の狭間で/世界市民
ⅩⅠ.国際政治とロシア論争
農村共同体の未来について/共産主義社会に至るためには資本主義を必ず経過しなければならないのか?/別の道を進む可能性
ⅩⅡ.オールド・ニックの苦しみ
ヨーロッパで普及し始めた『資本論』/人生の回転木馬/妻の死と歴史学への回帰
ⅩⅢ.モールの最後の旅
アルジェとアラブ世界の考察/公国の共和主義者/「それがマルクス主義であるならば、私はマルクス主義者ではない」
エピローグ―最後の数週間
訳者あとがき
参考文献・注釈
以上、本書のすべての章立てとその小見出しを紹介した。なんと505頁の大著である。参考文献・注釈はその内の110頁を占めており、注釈の総数は何と1199である。
ムスト自身の紹介によれば、本書はマルクスの初期著作・『資本論』の形成・第一インターナショナルでの政治行動・最晩年での研究、の四つの時期に焦点を絞り、多様な議論を促すことを目的にしている。当然のことながら、単なるマルクス絶賛本ではない。
第一部は、特に初期マルクスを持ち上げる異端的或いは「修正主義的」マルクス主義者と「成熟したマルクス」にフォーカスを当てる正統的共産主義者の双方に共有されていた謬見を取り上げる。そもそも初期と晩期に齟齬があるなど文献学的に見て根拠がない。本書では初期マルクスの卓見や晩期との理論的な断絶を強弁・強調することなく、マルクスの草創期・苦闘期として理解するものである。この部分での注釈数は144である。
第二部は、マルクスの経済学批判についての既存の研究を、様々な形で拡充する試みである。ほとんどの研究は、『経哲草稿』から『経済学批判要綱』そして『資本論』第一巻へと、マルクスの理論的発展を飛び飛びに扱っている。本書では近年公開された主要な草稿の研究によりつつ、マルクスの思想形成過程について、より充実した説明を試みる。これに伴いこの部分の注釈数は479である。実に細かな論証がこの数からも推察される。
第三部は、一八六四年から一八七二年の間における、マルクスの政治活動に光を当てる。第一インター存続へのマルクスの貢献は疑いないが、彼の「創造物」ではない。実際、マルクスは労働者の政治闘争に直接関わる中で様々な刺激を受け、自らの考えを発展させ、時に修正している。特に共産制社会の構想を持ったことで資本主義批判を徹底させた。この部分の注釈数は193である。政治活動家としてのマルクスの実像がここにある。
最後の第四部は、最晩年の草稿を調べることで、マルクスは知的好奇心を喪失し活動をやめたという通説を払拭したい。本当は、研究を続けていたどころではなく、この間に生じた政治的対立や理論問題等、資本主義システムの批判に必要と考えたものを徹底的に追究していた。要するに今までのマルクス像に収まりきらない新たな分野にも手を出していたのである。その論証のためにこの部分につけられた注釈数は370である。
つまり本書は、ソ連流のマルクス像とはひと味違う新たなマルクス像、アナザー・マルクスを提示したものである。晩年のマルクスの徹底的な研究は、初期のマルクスが抱いてきた単一の世界史像ではなく、それぞれの国・地域の状況に応じた発展に関してより開放的な発想を育み、社会発展の多様な現実性の道を考慮するようになっていったのである。
「新しいぶどう酒は新しい革袋に入れよ」との名言がある。私たちはマルクスの生涯に学ぶため、自らの気持ちを改め教祖然とした「マルクス」にではなく、現実の中で格闘し続けたマルクスの生涯を新たな観点から大きく俯瞰する必要があるのではないだろうか。
最後に耳寄りな話を紹介しておく。読書室でも取り上げた斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』はベストセラーになっているが、来年の1月から「100分de名著」番組で4回の「カール・マルクス『資本論』」を斎藤幸平氏を講師で放送する。乞う、ご期待!(直)
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コラムの窓 ・・・郵政20条裁判・格差是正へ一歩前進!
郵政労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)裁判の最高裁判決が10月15日あり、訴えを起こした非正規労働者の主張の多くが認められました。その報告集会が11月20日、大阪で開催されました。それは「最高裁判決報告集会」とあり、勝利報告集会とはなってませんでした。垂れ幕にも「格差是正一歩前進」となっていました。
そこに何があったのでしょう。最高裁で取り上げられた正規職との格差はすべて是正となったのですが、基本給・賞与・退職金という最も賃金格差が大きいものが課題として残ったのです。地裁・高裁段階で敗訴となっている夏期年末手当、外務業務手当、業務精通手当、早出勤務等手当は上告が受理されなかったのです。これらは〝有為人材確保〟という呪文によって区別(差別)があって当然というわけです。
私が郵便配達を始めたころは職場も牧歌的でしたが、国鉄が民営化され、クロネコが小包を圧迫しだしたころから長期非正規労働者が増え、配達が遅い労働者に圧力がかかりだしました。その後、権利の全逓が当局に屈服(今では押しも押されもしない御用組合)し、現在の民営日本郵政下で最大の非正規職場となったのです。
私の妻も団地配達専門の4時間勤務の非正規(団地ママさん配達)で20年ほど働いたのですが、賞与はなく、寸志が夏冬あわせて5万円ほどでした。途中から6時間勤務となって社会保険加入となりましたが、退職金はありませんでした。それでいて、年賀の時期は正規職と同じように長時間で休みもない仕事をしていました。
今は正規職でも転居を伴わない範囲の人事異動がある新一般職が導入され、昇任や昇格もない低賃金労働者が増えています。非正規の期間雇用社員もスペシャリスト、エキスパート、月給制、時給制、更にアルバイトと職場は徹底的に分断されているようです。
しかし、郵便配達は経験がものをいうので、正規だろうと非正規だろうと長く勤めている方が仕事ができる(よく知っている)ので、違いは試験に受かって採用されたかどうかくらいです。実際、「難しい試験を受けて採用された」から違いがって当然という考えは正規職のなかには昔からありました。
原告の方から、判決後に職場で「手当が減る」などと嫌味を言われたという発言がありました。まったく、同じ職場で同じ仕事をしているという連帯感もない、分断のなせる業とはいえ、悲しくなります。一方で正規職が不安を募らせるのにも理由があり、裁判で争点となった住宅手当をなくしていくことで格差もなくす、つまり下方修正することで裁判結果を無にする方策がとられています。
さて、この裁判を闘ったのは郵政産業ユニオンの組合員でした。裁判には勝ったけれど、実際の処遇改善はこれから。とりわけ、基本給・賞与・退職金は今後の労働組合の闘いにかかっています。先行する20条裁判もこの壁に押し返されていますが、ユニオンは150人余の原告で集団訴訟も進めています。
月7万円の〝定額給付〟で社会福祉をなくすという東洋大学教授にしてパソナグループ取締役会長である竹中平蔵氏のベーシックインカム論が話題となっています。その彼が「首を切れない社員など怖くて雇えない」と言ったとか、言わなかったとか。今は些細な違いをみつけて格差を設けることが正当とされる社会ですが、そんなしんどい社会は御免こうむりたいものです。 (晴)
「エイジの沖縄通信」(NO75)・・・「マヨ基地」を知っていますか?
皆さんも知っているように、9月に就任した菅首相は口では「沖縄に寄り添う」と言いながら、米軍普天間飛行場返還には辺野古移設が「唯一の解決策」を繰り返し、前安倍政権から引き続き思考停止状態である。
政府は沖縄の民意をまったく無視し、国民の税金9千3百億円をゆみずの如く投入し、12年以上の工期を見込んでの辺野古新基地建設予定だが、土木の専門家からは震度1の地震で崩壊する危険性があると指摘されている。
こんな状況の中で、辺野古工事に批判的な地元の若者らはこれを「マヨ基地」と呼び始めたという。マヨ基地の「マヨ」とはマヨネーズのこと。辺野古新基地建設で海底の軟弱地盤がマヨネーズ並みと言われているので、それをやゆしてネーミングしたのだ。
この言葉を広めたのは、名護市に住むユーチューバーの多嘉山侑三さん(36歳)。
多嘉山さんは、基地をはじめ時事問題を独自の視点で解説した番組「うちなーありんくりん(「沖縄あれこれ」という意味)TV」を製作し配信している。
約1年前に作ったのがミュージックビデオ(MV)「マヨ基地」で、美(ちゅ)ら海を背に、仲間の女性ユーチューバーと踊りながらラップ調で訴えかける。
「マヨ基地! 迷う基地! マヨネーズの上に基地を作る 多くの民の声を無視して権力かざして土砂投入・・・」と唄い、さらに「民主主義も法も犯して寄り添う先には利権たち・・・」と続く。
東京で多嘉山侑三さんの講演「辺野古・うそ・ほんと」を聞いた若者は、次のような感想を述べている。
「10年間東京で暮らし、沖縄に帰って5年だそうだ。先の名護市長選で、稲嶺さんが負けたことに危機感をだき、ユーチューバーで沖縄のことを発信したのがはじまりだという。2月現在で「ありんくりん」の登録者3100人、再生回数155000回もあるそうだ。今度の講演も、水道橋交差点で中継をし、通りゆく人に見てもらい、質問もうけるという演出もあった。ITおんちの私には、率直にすごいな~と思った。
辺野古新基地問題とはなにか、なぜ沖縄に米軍基地があるのか、普天間基地問題とはなにか、県民の民意とは何か、軟弱地盤とは・・・等々、本当に基本的な問いかけで分かり易く、クイズ形式で話が進められた。多嘉山さんは、この沖縄の問題を一部の人だけでなく多くの人に知ってもらいたいと、ユーチューブで発信しているという。
司会の平良さんとの対談もあり、いつもの集会のパターンとは一味も二味も違う、斬新なものであった。」
沖縄から、また頼もしい若者たちの出現である。(富田英司)
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「10・25袴田巌さんの無罪判決を求める集い」から
1966年の殺人事件発生・逮捕から、一貫して無実を訴え続けて54年、いまだ死刑囚のままの袴田巌さん(84歳)。2014年3月、静岡地裁が再審開始と、身柄釈放などを決定したが、2018年6月東京高裁がこれを取り消したため、現在は最高裁で特別抗告審中。
①袴田さん登場、そしてクラウドファンディングのこと
清水での6月定例の「無罪判決を求める集会」が、今年はコロナ感染対応のため、10月25日(日)に延期された。当日は数年ぶりに、袴田さんがボクサーのようにさっそうと会場に登場。冒頭、マイクで「闘いは勝たなきゃいかん」「ライト級・・・フェザー級・・・」などと話し続ける弟を、傍らで秀子さんは見守り続け、やがてやんわりと「もういいね、ありがとう」と言いマイクを替わった。
秀子さんによると、今朝は「東京へ行く」と言うので、行こうと家を出て静岡で途中下車して会場に来たとのこと。傍らの巌さんに「これから東京へ行こうね」と優しく言った後、「皆さんから沢山の寄付を頂き、本当に感謝します。これからも出来るまで闘ってゆきます」と固い決意を述べ、会場を後にした。
今年8月18日「再審開始(裁判のやり直し)」を目標に、インターネットでの募金・カンパ、クラウドファンディングを開始し、わずか12日間で、1千万円を突破。10月16日に1千8百万円近くを集め終了した。今まであまり接点の無かった20~40代の若い人が多いこと、また1500人を超す人が「この再審裁判を支えたい」との想いで、見返りを求めず寄付を寄せてくれたことが大きな特徴だという。今後は、最高裁に立ち向かう弁護団を支援し、さらに闘ってゆく。
②桜井昌司さんの訴え
この日、弁護士さん、ゲストのお話に加え、布川事件で再審無罪を勝ち取った桜井昌司さんも、病身を押して駆けつけて下さった。繰り返される冤罪事件に「捜査過失罪を作れ!」と気炎を上げた。今年3月、仲間や家族らと『冤罪犠牲者の会』を結成し、冤罪事件を担当した捜査員や裁判官を処罰する制度、警察による証拠隠しなどを防ぐ「証拠管理所」の設置、国会に「冤罪原因調査委員会」を作ることなどを目指す方針を掲げ活動している。
③袴田さん見守り隊のこと
この日、私にとって一番印象に残ったのは、巌さんの住む浜松で活動する「見守り隊」のお話だった。身柄釈放後3年目の2017年、階段から転落して怪我をして以降、必ず外出には彼らが同行するようになつた。巌さんは、長い拘留中の記憶から男性への警戒心が強く、10人ほどの隊員はほとんどが女性とのこと。
外出(巌さん曰く「パトロール」)は、ほぼ毎日、雨、風、台風、暑さ寒さに関わりなく続いている。長い時間の日もあれば、短時間の日もあり、たまに行かない日もある。1日平均4~5時間、汗をかきながら歩く。
「街中で市民から声援を受け、手を上げて応えている姿は、自由を謳歌しているように見えるが、本心は今も何かに追い立てられて、歩かざるを得ない日々だと思う」と見守り隊の女性は言う。「6年前に一般社会に戻ったとはいえ、心はまだ獄中のまま」だと秀子さんも言う。その獄中での「明日殺される(処刑される)」という恐怖心が、心の底まで染みついていて取れることが無い。だから忘れよう忘れようという気持ちが強く「事件はありゃせん」と巌さんは言う。「パトロールしないと負けちゃうんだ」が口癖なのだという。
街中でジュースを買ったり、道順もまともである一方、植え込みに500円玉を投げ入れ、お参りの仕草をするなど、明らかにおかしな行動も見える。
死刑確定から40年、獄中から無実を叫び続ける、叫んでも叫んでも届かない苛酷で途方も無く長い年月を闘い、やがて人格を壊されてしまった。真実を、無実を訴え続けた巌さんの思いを共有しながら、心から解放される日を待ち望むという、見守り隊の人の静かな訴えに心を打たれた。
★11月11日、もと裁判官の熊本典道さん(83)が亡くなった。事件当時、静岡地裁の公判を担当し、袴田さんが無実であることを確信していたものの、他の2人の裁判官の考えを覆すことができず、心ならずも死刑判決を書いてしまった。半年後それを悔やみ、裁判官を退官。「無実の人に死刑判決を下した」と、自らを責め続ける苛酷な日々の後、2007年に最高裁に再審を求める上申書を提出した。袴田さんが無罪を勝ち取る日を心待ちしていた人の、ご冥福を祈る。(澄)
川柳 作 ジョージ石井
家飲みのワインラベルで旅気分
褒章へ赤鉢巻のボランティア
豊かさを測る心のリトマス紙(題「豊」)
断捨離が運んでくれた豊かな(「豊」)
大切な命色分けする差別(「大切」)
トランプの赤ネクタイがほらを吹く(「毎度お馴染み」)
夕飯の残りを食べる朝と夕(「毎度お馴染み」)
核を持つ国がアピールする非核(「ちぐはぐ」)
差別ない世へ大坂のマスク文字(「尖る」)
曖昧さ測る心のリトマス紙(「濁す」)
おとぼけも本音を隠す潤滑油(「濁す」)
トランプの厚顔無恥が反り返る(「恥」)
生き恥をさらしたような折れた傘(「恥」)
三密と三猿併せ持つ都会(「都」)
不都合の争点逸らす菅総理(「都」)
燃え盛るトランプに要る火消し役(「消防車」)
行き場ない男同士は馬
デジタル化マイナンバーがお供する
GoToの笑みへ三波の倍返し
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大阪市廃止・分割=トコーソー反対多数で否決!
11月1日行われた大阪市廃止・分割=トコーソーの住民投票、反対多数で否決されました。維新・公明の目論見は、破綻しました。
賛成675829票、反対692996票、投票率62.35%、その差は、わずかに17167票でした。2015年5月17日の前回の住民投票は、賛成694844票、反対705585票、投票率66.83%、その差10741票でした。
NHKが投票を終えた方への出口調査によりますと、年代別に「賛成」と「反対」、どちらに投票したかをみてみます。
▼10代と20代は、「賛成」と「反対」が並んでいます。
▼30代は、「賛成」がおよそ60%、「反対」がおよそ40%となっています。
▼40代は、「賛成」が50%台半ば、「反対」が40%台半ばとなっています。
▼50代は、「賛成」と「反対」がきっ抗しています。
▼60代と70歳以上は、それぞれ「賛成」が40%台前半、「反対」が50%台後半となっています。
これらをみて、10・20歳代が賛成、反対が半々とは、意外でした。若者が多く大阪市廃止・分割=トコーソーに反対しました。
それにしても今回の住民投票は、崖っぷちからの大勝利です。それは、アンケート調査をみてもわかります。
ABCテレビのアンケートをみていきます。9月19・20日 賛成49.1%反対35.3%未定15.6%、ここでは13.8%も賛成が上回っていました。9月26・27日賛成47.8%反対36.8%未定15.4%、10月3・4日賛成45.3%%反対40.2%未定14.5%、10月10・11日賛成45.4%反対42.3%未定12.3%、10月17・18日賛成47.9%反対40.4%未定11.7%。これまでは、賛成が上回っていました。
ところが、10月23~25日賛成43.3%反対43.6%未定13.1%、10月30・31日賛成45%反対46.6%未定8.4%、と終盤は僅かながら反対が賛成を上回るようになりました。
これは、大阪市廃止・分割=トコーソーの内容が、市民に知られるようになってきたからだと思います。大阪市廃止・分割=トコーソーの反対派は、政党では自民、共産、立憲民主、社民、れいわ、などですがそれ以外にも多くの市民が独自に行動していました。まさに、みんなの力で大阪市廃止・分割=トコーソーを否決に追い込んだと思います。2020年11月1日は、記念すべき日で、記憶に留めておきます。
一方敗れた維新は、東徹参議院議員が3回目の住民投票を目指す旨発言、また吉村大阪府知事や松井大阪市長は、広域一元化や総合区を条例化すると発言しました。広域一元化条例とは、大阪市の権限・財源(430の事務、約2000億円)を大阪府に移行しようとしています。
この内容こそ、住民投票で否決されたものです。
住民投票勝利は喜ぶことですが、今後も維新による大阪府政・大阪市政の動きを注視します。 (河野)
軍拡競争・戦争を止めるには、平和を願う国境を越えた運動をつくりだそう!
11月24日朝日新聞声欄に、『学術研究の「デュアル」、あり方は』と題して、『井上信治・科学技術担当相が日本学術会議側に、研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」(軍民両用)について検討するよう伝えた』と言う記事と「朝日教育会議」での東京理科大特任副学長・宇宙飛行士の向井千秋さんが基調講演した、『同大のスペース・コロニー研究センターは、宇宙での長期滞在技術の研究を災害対策や食糧問題といった地上社会の課題にも役立てると言う』記事をみて『学術研究の「デュアル」』についてそのあり方や方向性を持っていかに臨むべきかと内田(農業)さんが『声』をあげていた。
科学研究の応用については『前者は軍事研究、後者は地球の課題解決のための研究。どちらが真の科学研究のあり方なのかを考えさせられた。安全保障や中国の台頭への危機感があるというのもわかるが、「人類共通の敵がたくさんあるなか、人同士が対立している時間はありません」と言う向井さんの言葉にうなずいたのは私だけではないだろう。地球の存続さえ危ぶまれる今、対立や分断ではなく地球市民として課題解決しなければならない。』と。
平和を願い人類の将来に夢を持つものとしてはこうした「デュアルユース」(軍民両用)に反対する『声』に賛同し、共に、「デュアルユース」(軍民両用)推進政策に反対する!。 ★☆☆☆★
自衛隊の海外派遣や「防衛」のためと称した敵基地攻撃論など他国との戦争ができる体制に向けて突き進んでいるが、最近では、「日本学術会議」参加メンバーの選任についての介入に見られるように、菅自・公政権は、教育や科学技術の応用について、政権の意のままにコントロールしようという動きもある。
それは、自民党政権が目指してきた、「戦争ができる」国作り、自衛隊の育成と増強・防衛費の肥大化、戦争を放棄した「平和憲法」の改憲など政治的意図に基づくもので、産業と軍事を結合し、そこに利益を見いだそうとする企業・資本の要望でもある。
今日世界の国々で“他国の脅威”をあげ、軍事強化とその産業の育成を正当化理由にしているが、戦争による問題の解決は相互の破壊と殺戮であり、たとえ勝者となったとしても支配と隷属という対立は続き、争いごとの解決にはならない。
私たちは人間の未来のために、こうした破壊と殺戮の軍事的解決を望むのではなく、別の道を進むべきであり、その為には軍事に頼ろうとする勢力とも闘わなくてはならない。
他国の軍事的脅威には、軍事的増強で対抗するのではなく、「自国主義」を推し進め、軍事強化を進めるその国の政策に反対する(他国の)労働者市民と交流を深め通じることによる国際的な運動を作り出し、互いの国の軍事的強化・軍事的政策をやめさせることてある。
平和を望む全ての労働者・市民が、国を超えて、連帯し・団結することこそ今求められている。(光)
色鉛筆・・・被災者が救われない「復興災害」
11月21日、阪神・淡路大震災から25年(9440日)を経て、復興の現状と課題について考える報告会に参加しました。報告は、最初に「兵庫県震災復興研究センター」の事務局長を務める出口俊一さんからあり、冒頭に「復興災害」と指摘される巨大再開発事業の実態に迫っていきました。
事業は、神戸市新長田駅南地区再開発で、44棟の再開発ビル計画が順次策定され、現在41棟まで完成しています。すべての事業が完成するのは、当初の計画から10年遅れの2023年度になる予定。その上、神戸市が所有する23棟の商業用床の内、売却済みは42%に留まり、未売却は賃貸で利用されています。そのため、300億円の赤字が見込まれています。
震災前は、商店街で賑わい、ケミカルシューズ生産の工場や店舗が立ち並ぶ、下町を代表する活気ある街でした。ケミカルシューズに携わる労働者は外国人労働者が20%を占め、底辺での生活を余儀なくされていたのが予想されます。しかし、街並みが商店街や長屋・併用住宅が多くしめ、自ずと住民との密接なコミュニティが生まれ住みやすい街だったことでしょう。たとえ、林立するビルで建物は立派になっても、元の住民が帰ってこれないなら、何のための再開発だったのか? と、復興災害の意味を確信しました。
次に、神戸市のまちづくりを長年研究してきた京都府立大学の元学長の広原盛明さんの報告がありました。国内で神戸市が、唯一「戦争復興」を成し遂げたことを誇りに思う、神戸が好きだ、と述べ、神戸市の住宅審議会にも所属されていたそうです。しかし、長田区の不法建築地帯での汚染水が流出する出来事で、市に改善指導を求めたところ、審議会から外された経験があると神戸市の姿勢を批判されました。
この再開発事業については、「人口が増え続け、景気が上向く高度成長が続いていれば成功したかもしれない。身の丈に合わない、大がかりな再開発がシャッター街につながっている」と、開発事業の在り方を厳しく問われ、行政(コンサルタントも含む)主導の事業を批判しました。そして、神戸市の他の街に大学が移転する件を踏まえ、長田地区にこそ大学が必要で、若者が地域を活性化してくれることに間違いない、と強調されました。
最後に、自治体が被災者向けに賃貸で提供した借り上げ復興社宅で、退去を迫られている81歳の高齢女性の紹介がありました。訴訟の弁護を担当している吉田維一弁護士は、室内でも歩行器が手放せない深刻な生活であること。最高裁の上告棄却を受け、強制退去を迫る神戸市に行政の責任を問い続け、移転先が見つかるよう日々、交渉を求める出口事務局長のエピソードも紹介。
吉田弁護士は、ホームレスにするようなことがあってはならないと訴え、参加者にも支援を求めました。住民が主人公のまちづくりこそが、地元を活性化することを、確認できた報告会でした。(恵)
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