ワーカーズ620号 (2021/7/1)     案内へ戻る

 コロナ禍でオリンピックやるて 正気?
 いまからでも遅くはない 東京オリンピックを中止せよ!

 
 東京オリンピックをめぐり、焦点となっていた国内の観客は6月21日、大会組織委員会やIOC=国際オリンピック委員会など5者による会談で、全会場の上限を収容定員の50%以内で1万人を原則とすることが決まりました。 

 これについて菅総理大臣は、自民党の役員会で「東京大会の観客上限数については臨機応変に柔軟に対応していきたい」と述べ、新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえ、柔軟に対応する考えを示しました。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)は判で押したように開催に意欲を見せましたが、医療の専門家は“抜け穴”の存在を重大指摘。開幕までに選手の感染者が増加した場合は「中止」の判断を下す必要があるとの考えを示しました。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長(72)は、6月2日の衆議院厚生労働委員会で、「今の状況で(五輪を)やるっていうのは普通はないわけですよね。このパンデミックで、そういう状況の中でやるということであれば、五輪の開催規模をできるだけ小さくして管理の体制をできるだけ強化するというのが、五輪を主催する人の義務だと思います」と発言しました。その後尾身会長は、「無観客が望ましい」とトーンダウンしましたが、組織委など主催者サイドは有観客での開催を決めました。橋本会長は「多くの方の協力があって、医療体制に支障のないというところまで来ている。ワクチン接種も進んでいるので、現在のところ極力、医療に支障をきたさないところまで体制は整ってきた」と安全性を強調しました。

 しかし、すでに海外では“頼みの綱”であるワクチンが完璧ではないことが浮き彫りになっています。全米陸上競技連盟の東京五輪予選では、ワクチンを接種した選手と関係者の2人がコロナに感染したことが報じられました。さらに、ウガンダ選手団2名、その他の国4名が新型コロナに感染していることが明らかになりました。

 ナビタスクリニックの理事長で感染症に詳しい久住英二医師は「ワクチンで感染を100%防ぐことはできない。これからインド株が増えてくると、米ファイザー社のワクチンを2回打ち終わってから2週間以上たっている方でも、感染予防効果は約79%(通常は約95%)というデータがスコットランドから出ている。ちなみに、英アストラゼネカ社のワクチンは約60%(同約76%)。例えば英国やEU(欧州連合)から来たアスリートが英アストラゼネカ社のワクチンを打っている場合は、感染者がそれなりに交ざってくる可能性が高い」と重大指摘しました。

 こんな状況で、オリンピックを強行開催して新型コロナ、特に変異型のデルタ株が一気に拡大するということになりかねません。そうなると、確実に医療崩壊です。声を大にして言います。命が大事!オリンピックは中止するべきです。 (河野) 


 五輪強行が直撃する医療労働者の疲弊

●パンデミック下の五輪モデル?

 信じられないような言説がまかり通っている。「パンデミック下でのオリンピックの開催というモデルを日本が初めてつくることができるのではないか」と述べたのは平井卓也デジタル改革担当相である。

 橋本聖子組織委会長に至っては「世界共通の課題を東京五輪が乗り越える姿、レガシーを見せることが東京大会の使命」「スポーツの力で世界を一つにすることが五輪の価値であると確信している。安心してお越しください。アスリートの皆さんの健康は組織委員会が必ず守り抜きます」と述べた。

 「守り抜きます」だって?医療現場のどこを見たら、そんなことが言えるのか?空虚なプロパガンダ以外の何物でもない。

●ワクチン効果は開会式に間に合わない

 菅首相は「七月中に高齢者のワクチン接種を達成する」として、総務省を通じて自治体を締め上げ、自衛隊の医官まで動員して「総力戦」を演出している。

 しかし公衆衛生学の見地から冷静に考察したら、ワクチン接種の効果が出始めるのは、二回目の接種の数週間後、早くても八月の中下旬である。高齢者に限っても五輪開会式にはとても間に合わない。五輪期間中に、感染が拡大するだろうことは、多くの専門家が警告しているところである。

●感染拡大の表面化は閉会式の後

 またウィルス検査には二週間余りのウィンドウピアリオッド(感染していても陰性にでる空白期間)があるので、期間中に感染しても、検査結果が陽性となり表面化するのは、閉会式の後である。

 それまではマスコミを通じて「感染は抑えられている」と見せかけの「安心安全」を宣伝することはできるかもしれない。だがその一ヶ月後に迫るパラリンピックはどうするのか?

●医療現場の疲弊

 プロパガンダと強権発動でパンデミックは乗り越えられないことを、なぜ理解できないのか?肝心の公衆衛生と治療体制の需要性を、これほど軽視する政治を見たことがない!

 重症病床は逼迫状態で、入院待機中に自宅で容体急変し、手遅れになるケースが後を絶たない。治療にあたる医療労働者は、過労死ラインを超えている。こんな状況を他人事のように放置したまま、手前勝手な美辞麗句で五輪が強行されていくことには、心底から抗議せざるを得ないのだ。(夏彦)


 米国の中国敵視政策は半ば政治的欺瞞である 狡猾で危険なバイデン政治 

■何のために米国は戻ってきたのか?

バイデン米国大統領は、六月のG7で次のように述べた。「私たちは競争状態にある。中国が相手というわけではなく、世界中の専制主義者や専制主義政府を相手に、急速に変化する二十一世紀において、民主主義が対抗できるのかという競争だ」と。もちろん「中国が標的」であることは誰もが知っている。しかも「民主主義」などという崇高な理念とは無関係の醜悪な覇権争いを中国に突き付けたと言える。そして「米国は戻ってきた」と。

超大国である米国は、国際社会での復権を目指している、その第一手が、中国叩きである。前任のトランプによる中国叩きの延長だが、トランプが国内支持狙いの世論操作(オバマ=民主党批判)に重点があったが、現在のバイデン外交は国内世論対策(後で述べる)であると同時に、中国との利害対立(ないしは不安)を持つ諸国を米国に引き込みを謀る国際的な求心力形成のためであろう。(当論考は新任のバイデン政治に焦点を当て、中国・習近平政権についてはいずれ別稿を当てたい。)

■「中国の脅威」というリフレインの中身

バイデン政権がとる反中国の政治的ポーズは、つねに欺瞞的である。もちろん、軍備力、経済力、国際的影響力、最先端技術から宇宙開発まで・・中国にリードを許しかねない米国や他の先進諸国の危機感の反映だ。

中国軍事力の「脅威」は、それが存在するのだが、米国の軍事力や地球規模での軍事作戦展開力に比較すれば、中国のそれは子供並みだと言える。「公式発表」でドル換算表示という限界があるが、米国の軍事費に比較すれば「脅威の」中国は三分の一程度の規模となる。GDP比でも中国の軍事費は三十年間二%を超えたことが無い。対する米国はベトナム戦争・イラク戦争・アフガン戦争などで増大するばかりではなく「平時」でもGDP比三%を切ったことが無い。中国のGDPは知られているように米国を急追しているが現時点でも米国の三分の二程度。当分の間総合力で米軍に追いつくことはない。大陸間弾道弾でも、弾頭数では米国の十五分の一程度だ。

そのうえ、米国の戦艦や英国の空母が台湾海峡や近海に迫ったが、中国の戦艦がカリフォルニアに接近したり、ドーバー海峡を威圧的に航行することはない。これは出来ないのではなく、中国は旧ソ連の経済の疲弊そして体制の崩壊から教訓を得たものなのだ。旧ソ連は米国と同等かそれ以上の軍事力獲得という消耗戦に陥って崩壊したのであるから。米ソ冷戦時代のような軍拡の消耗戦を避けて、人民解放軍を事実上解体し(兵員の大幅削減)近代的精鋭軍隊に変貌させるのが習近平の軍政改革だ。基本としては接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略というもので、近海での米軍らの空母などの作戦を抑止することなど。主力はミサイルで、開発製造が低価格なので非対称戦略と言われる。

別に論じる必要があるが、つまり、「中国の軍事脅威」なるものは意図的にかなり誇張されたものだ。これまでのところ皮肉なことに中国は市場経済と資本力そして科学技術をもってして世界を席巻しょうとしている。

■戻るのが遅すぎたかも、米国

また、バイデンにより今回G7で強調された「アフリカ諸国は中国の債務奴隷化する恐れがある」「自由経済圏でのアフリカ投資の拡大で対抗しよう」という提案も半ば欺瞞だということである。中国が、先輩である欧米諸国の真似をしてアフリカから収奪的投資をしていないのではなく、欧米先進諸国は自分自身の過去の植民地主義や奴隷売買やアフリカ差別という歴史があり、それが現在につながっていることを勝手に「忘れる」ことは許されなということだ。トランプは大統領時代にアフリカ諸国を「くそったれ国家」と呼んだのは記憶に新しい事例だ。

欧米白人諸国が主導する世界銀行による資金援助はどうなのか?なぜ機能してこなかったのか?アフリカ諸国は、欧米諸国の蹂躙を忘れてはいないのである。そのうえ世銀の内政干渉や出資条件の厳しさなど魅力が乏しいから、中国資金をあてにせざるを得なかっただけである。英国フィナンシャル・タイムズは「もう遅い」と書いた。一帯一路には百二十ヵ国以上が加盟しているしG7のイタリアや、EU二十七ヵ国の内の半分以上、そして日本も準加盟国だ。      

もっとも欧米諸国が罪滅ぼしのために無条件でアフリカ諸国の教育・福利厚生の無償援助をするのであれば、大賛成だが。

そのほか、ウイグル族抑圧問題、香港の民衆弾圧問題、などなど総じてG7諸国の中国批判は、多くの真実が含まれていても勝手な自己正当化と結びついており半ば欺瞞であることは指摘しておきたい。

■危ういバイデンの政治手法

最後に内政状況を考えてみよう。米国のバイデン政権は大型の投資計画が目白押しだ。アメリカ上院は六月八日に「米国イノベーション・競争法」を可決したが、同法は先端技術の研究開発などに(約二十七兆円)を拠出する。子育て支援や教育への拠出やその他にも合計で六百兆円規模の計画を掲げている。グリーンニューディール計画ももちろん花を添えている(六月十八日東洋経済オンライン等参照)。その財源確保のためにはトランプの法人税減税をチャラにして企業増税を目指す。かくして巨大投資で労働者庶民から企業家まで潤う、とバイデンは大風呂敷を広げている。

この政治的に大きく困難な計画を実行に移すために「中国脅威」をカードに共和党支持勢力を納得させようと彼は考えている。なぜなら米国は民主党から共和党まで今や「反中国一色」だからだ。日本での「中国脅威論」はほぼほぼ軍事的脅威論であるが、米国は科学技術や教育といった広範囲なものを含む。要はバイデンの国内政治も「反中国」で世論をまとめ上げようということだ。老獪政治家らしいいやらしさ(ある種のポピュリズム)で、彼は突き進もうとしているのだ。

バイデンの矮小な政治によって、言うまでもなく米国内での貧富の格差や人種対立、世界的な気候危機やそれが焙りだす南北格差の亀裂がなくなるわけでもない。せいぜいそれらを一時期覆い隠すものでしかない。さらに重要なことは中国敵視による新たな軍事緊張が、軍産複合体(軍需産業)を利するばかりに止まらず、国家間対立や局地戦の重圧となり例えば日本では「土地利用規制法」の成立を許したり、自衛隊新基地の建設が推進されたり、憲法九条改悪への野望などを通じ民主主義の新たな脅威となりつつある。(アベフミアキ)案内へ戻る


 矢面に立たされる日本――米中〝新冷戦〟の暗雲――

 バイデン大統領がめざす民主国家と専制国家の対決。G7首脳会議やロシアのプーチン大統領との会談で、その構図が鮮明に浮かび上がってきた。

 安倍政権以降、日本は北朝鮮危機を緩衝材料にしてきたが、ここに来ていよいよ本命の中国と直接向き合う場面の到来だ。

 米中対決では、政治的・軍事的関係だけでなく、5Gや高性能半導体問題など、経済安全保障もかかわるが、それは別として、米中〝新冷戦〟の危うさについて考えてみたい。

◆バイデンの舞台設定

 バイデン大統領は3月3日、国家安全保障戦略(暫定版)で中国を「唯一の競争相手」とし、3月25日の記者会見で「民主主義国家と専制主義国家の有用性をめぐる闘い」と表現した。米中競争を民主国家対専制国家との〝体制間対決〟だと規定したわけだ。

 米中対決に際し、バイデン大統領は同盟国との連携を重視し、とりわけ日本との同盟関係を活用する姿勢を打ち出している。「自由で開かれたインド太平洋」《=FOIP》という共通認識での日米豪印による《QUAD4カ国(日米豪印)》の連携づくりも進めた。またバイデン大統領は、6月11日からのG7首脳会議でも、民主主義国と専制主義国の競争という枠組みでの対中封じ込めで足並みをそろえた。

 さらに最優先の対中封じ込めのために、もう一つの専制主義国家ロシアとの関係を、現状維持に棚上げした。G7サミット直後の米ロ首脳会談では、ちょっと前の3月にはプーチン大統領を「人殺し」と罵ったにもかかわらず、「予見可能で安定した関係」だけの合意しか求めず、現状固定で折り合った。

◆〝最前線国家〟を強いられる日本

 そんな中で、日本はバイデン大統領による対中包囲網での特別な存在、米中バトルの「最前線国家」の位置に立たされようとしている。

 米国は対中封じ込めの態勢づくりに励んでいるが、《QUAD》での豪・印は軍事的に当てにならない。また、南シナ海に英国は空母を派遣、フランスは原子力潜水艦、ドイツはフリゲート艦を派遣。日米などと共同訓練など実施するなどしている。が、それは政治的な牽制に止まるもので、台湾有事に直結するものではない。

 そんななかで、日本は米国にとって特別な国に仕立て上げられようとしている。日本は世界3位の経済大国であり、中国の周辺国では、米軍と一体化を深めている軍事強国でもある。近年は集団的自衛権の行使など、米軍を補完する戦力の増強を推し進めてきた。

 その上、日本列島の地理的存在は、中国から見ればまさに中国の外洋進出を阻む〝不沈空母〟さながらだ。九州から伸びる南西諸島に、対中国との交戦も想定した基地づくりも進んでいる。

 実際、台湾海峡だけの軍事プレゼンスを比べれば、現時点で中国優位という判断がされている。なので、「米国の対中戦略は日本なしには成り立たない。」(米国ランド研究所ジャフリー・ホーナン研究員)という分析が米国内でも語られる。

 いま日本の菅政権は、日米首脳会談やG7サミット、それに茂木外相は《FOIP》での連携に向けて、せっせと外遊しているが、実際に台湾海峡有事の事態が勃発したときに、米国は日本に何を求めてくるのか、それに日本はどう答えるのか、深刻な場面に遭遇する。

 仮に、武力衝突という事態になれば、米軍基地を多く抱える日本は中国の標的になる。中国は米国本土や西欧はまず攻撃しない。逆に、日本は米国の代わりに中国の攻撃の矢面に立たされる。こうした台湾有事の意味(日本が最前線になる)は、菅政権にどこまで共有されているのだろうか。

◆台湾有事という悪夢

 台湾では「自分は中国人ではなく、台湾人」との認識が増えて圧倒的になっている。1996年の台湾総統選での直接選挙の導入時に25%程度だったものが、20年6月には67%と過去最高になった。逆に「私は中国人」と答えた人は過去最低の2・4%に止まった。香港の民主化要求と中国による弾圧なども影響したといわれている。

 当事者による自己決定権を前提にすれば、台湾の強引な中国への編入はすべきではないし、中国は台湾に圧力をかけるべきではない。逆効果になっていることを中国は知るべきだ。

 ただし米中対立の深刻化は、米国の姿勢も大きく関わっている。

 16年12月には、トランプ大統領は蔡英文総統と電話会談し、17年12月には、米国国家安全保障戦略で中国を「競争国」と位置づけ、翌18年8月には台湾との防衛関係強化を盛り込んだ「国防権限法」にトランプ大統領が著名している。米国は米中国交回復で「一つの中国」を認めているのに、だ。対する習近平総書記は、「一つの中国」という立場から、19年1月に台湾に「平和的統一」を迫る演説をしている。

 米国はトランプ時代から台湾の高官を招くなど、「一つの中国」という米中関係の基本的な枠組みを蔑ろにする姿勢を示してきた。バイデン大統領も大統領就任式に台湾大使にあたる「駐米代表者」を招くなど、トランプ路線を踏襲している。

 これらつばぜり合いの経緯もあって、中国では米国が中台統一の妨げになっているという危機感が拡がり、台湾の防空識別圏への中国軍機が侵入を繰り返すなど、台湾に対する軍事的圧力を強める事態となっている。米中双方とも、対立をエスカレートさせるような行為を積み重さねてきたのだ。

◆待てなかった習近平

 習近平政権は、〝中華民族の偉大な復興〟を隠さなくなっている。かつて鄧小平は、韜光養晦(とうこうようかい)として慎重に振る舞うように戒めてきた。言葉の意味としては「力や能力を隠し、時期を待つ姿勢」だという。確かに習近平政権になってからも、慎重な姿勢が見えていた時期もあった。

 が、習近平が通常の5年2期という国家主席の任期を撤廃して終身国家主席への道を開き、さらに中国共産党党総書記の任期を延長して3期15年、さらには終身指導者として中国の最高権力者としての地位を保持する姿勢を見せ始めてから、膨張政策と大国意識を隠さなくなった。大義名分として語られているのが、「中台統一」という新中国建国以来の〝国家的悲願〟だ。

 習近平は、中国の夢として、「中華民族の偉大な復興」を掲げている。新中国建国100年を迎える2049年には、米国と比肩する大国として、太平洋を米国と中国で分かち合うという「大国関係」を米国との間で結ぶことを公言している。

 要するに、習近平総書記は、鄧小平の韜光養晦(とうこうようかい)を守れなかったのだ。鄧小平自身も、要するに時期を待て、というものでしかなかったが、習近平は、現実の問題として時期を待てなかった。明確な時系列的な実現時期をくぎったこと自体が、現実的な危機を呼び込む事態を招き寄せているわけだ。

 中国と台湾は経済規模でも軍事力でも圧倒的な差がついている。中国は長期的には中台平和的統一が可能だとの立場で、台湾に武力侵攻する可能性は低い。それでも、中台統一という目標に年限を切り、それに終身指導者という野望とリンクさせれば、台湾有事はゼロではなくなる。

◆新冷戦〟では解決しない

 米中〝新冷戦〟という新局面が浮上したまさにそのとき、米軍司令官が、台湾有事の現実的な可能性に言及した。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)の3月9日の議会証言だ。「台湾に対する中国の脅威は今後6年以内に明らかになるだろう。」と、中国による台湾への武力侵攻の可能性を示唆する発言を行ったのだ。

 これには、最近、逆の発言が出されている。この6月17日、米国制服組トップの統合参謀本部のミリー議長が上院歳出委員会で「中国が台湾全体を掌握する軍事作戦を遂行するだけの本当の能力を持つまでには、まだ道のりは長い」「その意図や動機もない」と述べ、中国による台湾の武力統一が「近い将来起きる可能性は低い」としている。

 デービッドソン司令官の発言の根拠ははっきりしないが、6年後というのは習近平総書記の3期目15年の任期が切れる年だ。功に焦った習近平が、3期目の任期切れまでに台湾への武力侵攻を決断する、という趣旨のようだ。それを米軍トップがあえて否定したのは、台湾海峡有事の危機を中和したいとの米軍の思惑があったからと受け止めるべきだろう。

 ともあれ、バイデン大統領の思惑である〝新冷戦〟では、問題はなにも解決しない。中国はすでに世界2位の経済大国であり軍事大国化しているからだ。2020年の最新の推計(4月26日、ストックホルム国際平和研究所)では中国の軍事費は2520億ドルだ。米国は世界の軍事費の4割を占める7780億ドル、日本491億ドルで、軍事予算では日本の約5倍、米国の3分の1だ。サイバーや宇宙空間ではすでに米中は互角だという。

 米国主導で中国に対する経済制裁が行われているが、中国でも対抗策として反中国への制裁法を制定した。制裁などで対立を煽るだけでは、中国の米国への服従などまず見込めない。北朝鮮やイランでさえ帰順しなかった。

◆バイデン外交の国内事情

 バイデン政権は、政権発足以降、矢継ぎ早に対中競争、対中包囲網づくりに突き進んでいるが、反面では、バイデン外交は国内対策の側面もある。来秋には早くも中間選挙があり、現在伯仲している上院、下院選挙もある。米国国内でのバイデン大統領の基盤は、盤石とはほど遠い。

 しかも、トランプは敗北したとは言え、未だにトランプ信者は多い。当選時には無いと思われていた二期目への野心も公言しているバイデン大統領にとって、中間選挙の勝利と二期目に向けた国内政治基盤の立て直しは大きな課題だ。大統領選挙でトランプ大統領から「スリーピー・ジョー(寝ぼけたジョー)」発言を浴びせられていたバイデン大統領にとって、「強い米国」を訴えなければ、米国ファーストを掲げるトランプの逆襲を呼び起こさないとも限らない。

 それに対中危機感を煽って各国の軍事費増を迫ることで、米国の軍需産業も潤うことになる。日本にも軍事費のGDP比1%から2%への倍増を求める声も強い。

 とは言っても、覇権国家からの転落はなんとしても拒否する、という世界戦略は、米国の民主・共和両党も同じスタンスだ。だから国内政治という事情が優先されるわけでもない。

 習近平の「偉大な指導者」とバイデン政権の「唯一の覇権国家」という野望にもとづく戦略のぶつかり合いは、理性的なものではあり得ないし、緊張と危機を増幅させる危険極まりないものという以外にない。あの核戦略専門家ダニエル・エルズバーグも「優秀な人々がとてつのない愚かな判断をしてしまう」と、意思決定局面では強硬論が通りやすい現実を指摘している。

◆労働者・市民の自立的スタンス

 日本は、「自由で開かれたインド太平洋」《=FOIP》や《QUAD4カ国(日米豪印)》連携には前のめりだ。G7などは米国の対中封じ込めに追随し、対中制裁にも踏み込んだ。が、日本はG7で唯一、制裁に加わっていない。人権問題での制裁を科す法律がないからだと説明しているが、より大きな理由は経済面での対中依存度の高さにある。報復される可能性も高く、そうなれば打撃も大きいからだ。

 菅首相は、いまのところバイデンの対中包囲網づくりに単純に追走している。しかし、日米が置かれたギャップが顕在化するとき、米国からの要求と中国による牽制と対抗策の狭間で、果たして菅首相は日本独自のスタンスをとり続けられるのか。

 あの日中戦争の反省も中途半端なままで、いままた台湾海峡有事やその場面での対中軍事衝突など起こしていいはずがない。国家間の覇権争いや勢力争いに加担することを拒絶するためにも、労働者・市民の自立したスタンスが求められている。(廣)


 中国――苦難と屈辱の歴史と新たな野望

 米国が危機感を募らせる中国の台頭は、一朝一夕で生じたものではない。

 中国にとっては、清朝前期までは世界的大国だったとの思いがある。15世紀初頭の鄭和艦隊のアフリカ東海岸に至る大航海をあげるまでもなく、中世では中国は世界的な大国だった。それが清朝後半のアヘン戦争以降、西欧帝国主義国による侵略と被植民地化によって、寄ってたかって食い物にされてきた歴史がある。その後、侵略からの解放と国民党との内戦をくぐり抜けて、中国共産党による新国家建設へと変遷を遂げることになる。

 当初の新生中国にとって、新国家のアイデンティティ(自己同一性・自己認識)は、日本の侵略からの解放、労働者・農民国家の樹立だった。その後、〝大躍進〟や〝文化大革命〟などの混乱もあったが、やがて経済大国化とナショナリズムの台頭へと変遷した。習近平政権がいう「中国の特色ある社会主義」というアイデンティティは全くのお題目。経済大国化と「中華民族の偉大な復興」というナショナリズムが実質的なアイデンティティであり、中国共産党による統治の正統性の根拠にもなっている。

 ただし、中国をそうした野望に向けて走らせた責任は、米国にもある。ちょっと思い起こせば、二つの屈辱だ。

 一つは、95~96年の台湾海峡ミサイル危機だ。このときは、米国は二つの空母艦隊を派遣しただけで、中国の台湾近海でのミサイル発射訓練を封じ込めた経緯があり、中国は大きな挫折を味わった。

 もう一つは、バルカン半島のコソボ紛争時の中国大使館への米軍による誤爆事件で、1999年5月のことだった。ユーゴスラビアの中国大使館が、米軍機による爆撃で破壊され、29人もの死傷者が出た事件だった。このときは米国は誤爆だったとして中国に謝罪したが、現実は意図的な爆撃だと疑わざるを得ないものだった。

 とはいえ、当時の中国はまだ後進国。米国の強弁に逆らうことなど不可能で、事実上泣き寝入り、米国に屈服せざるを得なかった。

 この他、イラク戦争など多くの契機も含め、中国は苦難と屈辱の歴史を抱え込みながら、経済と軍事両面での大国化を追い求めてきた。いまでは経済でも軍事でも米国を追い上げる世界第2位の大国だ。その大国意識が習近平政権で具体的態度や行動として表に出てきたのが,いまの中国の姿なのだ。そうした中国をつくってきたのは、帝国主義時代の欧米列強であり、冷戦後、唯一の覇権国家となった米国の傲慢な振る舞いでもある。(廣)案内へ戻る


 世界にインフレの影…日本は実質的スタグフレーション

■世界的なインフレの圧力

世界的にインフレが進行しつつある。たとえば米国では消費者物価指数が前年同月比で四%、五月は五%上昇した。これは、物資の流通の停滞(コロナパンデミックによる)ばかりではなく、他方では米中を中心に、消費需要の回復が見込まれているからである。つまり需給バランスから一つはきている。

 しかし、それだけではインフレにはならない。忘れてはいけないのが、まさに「金余り」的な政策が積み上げてきた信用拡大と貨幣市中散布の存在だ。マネーストック(マネーサプライ)の増大は歴史的な水準だと言われる。そうでなくとも過剰貨幣資本が、実体経済ではなく金融市場に滞留して債権類・架空資本の上昇(金利の低下)を支えて来たことはよく知られていることだ。その一部が実態経済に勢いを増しつつ流入しているとみられる。

さらに考慮すべき微妙な問題点がある。コロナ恐慌対策としての金融財政出動をあるていどは「手じまい」(テーパリング)する方向へと先進国金融当局が動き出している。金融当局は、当然インフレ警戒感(&財政再建(笑))からそのような方向性を少しずつ取りつつある。日銀すら株式市場の積極介入を見合わせているらしい。日銀のETF(上場投資信託)買いが五月はゼロだという。皮肉なことだが「金融拡大の手じまい」が短期的にはインフレ加速の要因になりうるのだ。米国FRBのパウエルはその理由で、テーパリングに慎重だ。

 金融市場を今まで支えてきた国家的支援が削減されとなると、どうなるのか?金融市場から実在経済に過剰貨幣が流れ込む圧力が強まってくる。「景気回復」が期待されるとなればなおさらだ。アルケゴスの破綻やビットコインの暴落はその金融市場収縮の端緒なのかもしれないとささやかれる理由だ。かくして、金融市場に積みあがっていた貨幣の去就が注目される。

■インフレの本質と大衆への副作用

 インフレとは単に「需給のアンバランス」から生じる物価騰貴の問題ではない。本質的には過剰の貨幣が、商品流通に浸透する過程で発生する(流通手段としての貨幣の「過剰」が解消する過程である)。貨幣の「価値」の下落に起因する全般的な物価上昇だ。金融市場から実体経済に一定の資金が移動するだけで、貨幣価値下落としてのインフレは進行しうる状態だ。

 インフレは、経済力のない庶民にとっては、苦痛の一言だ。もともと豊かではない庶民の購買力はそぎ取られる。物価騰貴は市場支配力のある企業から、支配力のない企業や最後は個人へと波及する。資本からすれば美味しい「追加収奪」の好機だ。庶民の生活防衛には賃上げや生活補償、社会的保護を訴え、闘う真剣な大衆行動が今こそ必要だ。

■不況・停滞とインフレの同時進行は杞憂か?

最後に、日本が、米国ほど「インフレではない」という、さほど慰めにならない現実についても触れておきたい。去年は歴史的な経済の落ち込み(二〇二〇年度はGDPマイナス四・六%)があったが、しかし、日本では消費者物価はごくごく少し下がったのみ、二十一年はまだ半年を残すが、経済の停滞の中でも微弱ではあるが消費者物価(総合指数)は上昇に転じている。「日本の消費者物価指数の推移 ―世界経済のネタ帳」参照。

これは、貨幣価値の下落に基づく物価上昇をインフレであると考える労働価値説からすれば、去年から今年にかけてはある種のスタグフレーションであったと判断できる。つまり、本来ならば世紀の大恐慌(日本のGDPの縮小は、実はコロナ前の二〇一九年年十~十二月期から開始されていた)のさなか大幅な商品価格のダウンがあるべきところでも、見かけの価格はほとんど下がらないどころかわずかに上昇さえしているのだ。見かけの物価上昇がほとんど無かったからと言え「貨幣の価値の下落」は強まっており、「隠れインフレ」と言うべき事態だ。庶民の収入は時短や失業、閉店などで大きくそがれてきた。それに合わせるようにパッケージや箱が小さくなるが価格は変わらない、シュリンクフレーションはすでに広がっている。

景気の下降はそのうち底を打つ。そして、海外からの輸入インフレも加勢して、大衆の生活は「不況・停滞」という収入の減少と、本格的インフレの顕在化という追加収奪の十字砲火を受ける恐れがある。闘いの準備は一刻の猶予もならない。(アベフミアキ)


 ミャンマー  スーチー幻想と決別を 軍事的対決以外には国軍支配を削ぐことは不可

■軍事的対決深まるミャンマー

 ミャンマーにおける階級闘争のフェイズは変化した。群衆による平和的抗議デモからむき出しの軍事対決へと。市民軍、民族武装勢力とミャンマー国軍との軍事対決が拡大している。「国民統合(一)政府(NUG)が市民防衛軍(PDF)を創設し、軍部に対して戦争を予告した中で、地域の武装団体や武装した市民の反撃水準も強まって軍警側の被害も大きくなっている。」と「中央日報」が報じた。さらに六月九日(現地時間)、現地メディア「イラワジ」によると、最近カヤ州デモソで市民抵抗軍カレンニー国民防衛軍(KNDF)と軍警の銃撃戦が起こり、鎮圧兵が少なくとも八〇人死亡した。・・KNDF側は七名が負傷したと発表した。「この日午後5時までに八〇人以上の軍人が死亡したことが確認され、軍は報復措置としてジェット機やヘリコプターを動員してこの地域を空襲している」と伝えた等々。

■国軍によるむき出しの暴力支配

 戦況は詳細が不明であり、ミャンマー全土については具体的なことは分からない。しかし、基本的な状況はますます明確になってきたともいえる。権力と経済力を事実上独占している国軍支配層は、国民に対して、その優越的地位を一ミリも譲り渡す気はないということだ。彼らにとって妥協は不必要であり、抵抗する市民に情け容赦ない弾圧を加え、国軍の絶対的支配継続の意思を明確に示した。その厚い壁に対してますます市民側が(民族武装勢力とともに)意欲的に軍事的な対応を組織していることが示されている。

逆らう地域の村を燃やし、支援物資もすべて破壊し、人々を苦しめ続けるミャンマー国軍。逆らわなくとも国民は、見せしめとして放置されている。国連開発計画は、二〇二二年までに人口の四十八・二%に相当する二千六百万人が貧困に陥り、一日一ドル以下で暮らすことになると予測している。「六月八日、国境なき医師団(MSF)はミャンマー南部にあるダウェイの地域当局から、全ての活動を停止する要請を受けました。MSFが活動できなくなれば、HIVや結核の患者さんは治療を受けられません。ミャンマーで軍が権力を奪取してから四カ月。多くの病院や診療所が閉鎖に追い込まれ、人びとの健康が脅かされています。」(国境なき医師団日本)

■スーチー政権とは何であったのか

 二月クーデターの首謀者ミン・アウン・フライン司令官は「軍の目的は、複数政党制の民主主義に基づく連邦国家の実現」だと、千人近い自国民を虐殺した後でかくも涼しげに香港メディアに語った。「真の支配者」軍にとっては一連の行動はクーデターではなく、せいぜい「人事異動」なのであろう。著名なスーチーは外資の呼び込みに必要であったが、スーチーは「不正」を行い働きも「好ましくな」かったので、首のすげ替えをやろうということだ。かくして、「民主化の時代」あるいは「スーチー国家顧問」の政権というものが民主主義制度とかけはなれ、国軍支配の実態を隠しその意味で虚構に飾られた存在であったかをいやがうえにも知らしめられた。国軍の語る「複数政党制」とか「選挙」とは人形劇の芝居小屋程度の投げ与えられた子供だましの小道具なのである。ミャンマー国民の多数はこれを理解し、拒否するために戦いを準備している。

■国軍の専横支配に反撃を

 スーチー幻想と決別し、国軍と決定的に闘うほかは国軍支配を過去のものにすることは不可能であり、一ミリの譲歩も分け与えられることはない。ミャンマー国民はこれが現実以外の何物でもないことを理解し、抗戦・反撃の体制をつくりつつある。市民防衛軍(PDF)の訓練動画などは数十万回も視聴されたともいう。学校再開に応じない市民も多く、国民統合政府(NUG)は、ネットなどを通じで独自の授業を行おうとしているとの話もある。

国民統合政府(NUG)と市民防衛軍(PDF)が推進しようとする、武力的成功と社会的統治の拡大がどのように進むかに注目し支援したい。六月、国連総会でミャンマーへの武器流入阻止呼び掛ける決議採択された。国際的に国軍を利する「援助」や投資を控える動きはようやく動き出した。
ミャンマーの闘いは明らかに長期的な抵抗戦となるだろうし、即効性がなくともこうした国際市民の各国政府への圧力は必要なことだ。

■日本政府の許しがたい対応

 政府や関与企業への圧力をさらに強めることはこの日本でもできる。六月衆参両院でミャンマーでのクーデターを非難し、「民主的な政治体制の早期回復などを求める決議」が賛成多数で可決された。しかしながら非難はしてもこれは国軍の語る「複数政党制の選挙実現」を追認する欺瞞になりかねない中途半端なものだ。案の定、それを受けた加藤官房長官の発言は糾弾に値するヒドイものだ。継続中のODA=政府開発援助などへの対応について「ミャンマー側の対応を見ながら、暴力の即時停止やミャンマー国内での対話の開始がどう実現されるのかなどを勘案しながら、引き続き総合的に検討する」とは!

要は、非難決議はしても「国軍制裁はやりたくない」という本音が露呈した。日本の経済支援や投資の完全な即時中止、国軍に連なる人脈への制裁など、日本政府・企業ができることはまだまだあるはずなのに。日本政府の対応は腰砕けであり、銭金(投資資金)の視点でしかミャンマーの動きを見ていない。(アベフミアキ)


 ビットコインが法定通貨に エルサルバドル貧困の救済策?
 基礎技術のブロックチェーンは経済の透明性・統合性に利用可能



■米ドルが法定通貨のエクアドル

コーヒーの輸出が低迷したエルサルバドルは、米国等の移民から送金されるドルが国内消費の源泉となっている。

ブケレ大統領は「ビットコインは六千八百億ドルの時価総額をもつ。もし、この一%でもエルサルバドルに投資されれば、我が国のGDPは二十五%も増加する」とツイートしている。国民の七割は銀行口座がないとも。

中米の途上国であるエルサルバドルからすれば、米国経済圏の下請けとして蹂躙され、労働力の補給と調整弁として風下に立たされ続けてきた現状を大きく変えたいとの意図とも見える。

さらに海外(米国)からの送金に「ビットコインを使用することで、(高額手数料を廉価にし)百万人を超える低所得世帯が受け取る金額が毎年、数十億ドル増加する」と述べた。海外からの送金額は同国の輸出額に匹敵する。さらにビットコインのマイニングには環境や電力に配慮して地熱発電の活用を謳う。

■社会経済実験だが貧困対策の名に値しない

 貨幣を「法定」するとは日銀券のようなそれ自身無価値なものを国家の強制力で通用させること。そもそも、暗号通貨は「プルーフオブワーク」と、分散型管理台帳によって「通貨」となり自律的に流通過程で運動するのであるから、今さら「法定通貨」で強制する必要はないはず。それを法定してあえて国民に広く使わせるということになる。

しかし、その問題性をいくつか指摘しておかなければならない。最大の問題は「ビットコイン」だということである。この暗号通貨が設計上投機的であり、すでにそのさなかにあり、通貨としては不安定である。ビットコインは変動が大きく、暗号通貨の中で最も庶民の貨幣にふさわしくなさそうなものだ。

ブケレ大統領の主たる目論見はビットコインのマイニング(採掘)を国の新たな産業にして国富を増やそうとするものではないかと推測できるが、真剣な社会改革や貧困対策につながるものとは考えにくい。結局、同大統領は投機的なビットコインの値上がり益を期待している可能性がある。

また、国内ではドルも法定通貨として自由にビットコインと交換できるという。この二元的貨幣体系はどのように動くのか絡むのか?米国金融機関に奪われてきた高額送金手数料がエルサルバドル国民に還付される(もちろん小さなことではないが)、ということ以外に肝心の「貧困対策」は見えてこない。同大統領は「ビットコインを押し付けて、結局国民のドルが欲しいだけだ」という批判もある。

■暗号通貨技術は、アソシエィトした人々の経済の意識的統御に利用できるであろうか?

前回も述べたが、現在の暗号通貨は、貨幣が不必要になれば全く使い物にならない。かつての金本位制下での金貨幣が歴史的意義を喪失して、使い物にならなくなったとしても、悪趣味だと言われることを顧みなければ潰して「金の茶室」や「金の便器」を造ってもよいだろう。しかし、ビットコインは貨幣であることをやめたら、ゴミ箱すら作れはしない。

 他方、ブロックチェーンを土台とする分散型台帳システムなどの基礎技術を未来社会に活用することは可能であるばかりか、大いに本来の意義を発揮する可能性を秘める。

このシステムの時系列性、体系性、普遍性、公開性はいまのところ他に類例を見ない。この技術がもたらす現実を知ったならば「市場の優越性」などは寝言になる。「当事者しか知りえない情報」「この船の空(あき)を誰が知るだろうか、ゆえに市場と価格の存在は必要不可避だ」(ハイエク)、が覆される。経済が巨大な市場取引にすがることは無用となる。

後で述べる統合された経済と別に、個人レベルの「物のやり取り」は主たる経済的意義としてではなく、互酬性としてのつまり感謝や想いを託する物のやり取りに代わるだろう。

 莫大な電気を吸い込むだと?それはブロックチェーンが「貨幣」を演じているからである。莫大な電力を吸い込む「マイニング」「プルーフオブワーク」は、貨幣ビットコイン(暗号通貨)体系固有のものである。

 アソシエィトした人々にとってブロックチェーンは、諸協同体を支える経済の基礎技術となりうる。社会的欲求を需要に転換し記録するばかりではなく、社会的有用労働の集約と行使、それによって成り立つ生産活動や物流や教育医療活動を、時系列をもって体系的に公開し、ゆえに経済統御に導く有力な道具である。「労働の経済学」を衆目監視で実現する。不正の介在を排除しつつ、制御さえ適切であれば個々人からなる社会は総需要を総労働(個々人の固有性と全体性を把握しつつ)に配分し、無駄をなくし労働を節約し管理労働を最小限に縮小することにもつながると思われる。

ついでながら個々人の発揮する固有な労働の記録は、分配での一次的な基準となりうるが、これは言うまでもなく「ブルジョア的権利」ではない。(アベフミアキ)案内へ戻る


 読書室 古村治彦氏著『悪魔のサイバー戦争を始めるバイデン政権』2021年5月刊

○ 昨年の米国大統領選挙において広汎に行われた驚くべき不正選挙の実態とその後の混乱の中で最高裁による控訴棄却で暴露された腐敗、アメリカ帝国の統治の内実を暴露した『裏切られたトランブ革命』の著者の副島隆彦氏は、本書の著者・古村氏の師匠筋に当たる。本書はこのような混乱の中で成立したバイデン政権に関する数少ない書籍でたいへん貴重な本である。古村氏による的確な分析は、まさに読み応えある内容となっている ○

 バイデンは米国大統領に就任して以来、中国やロシアを脅し、屈服させようと策動中だ。

 まず3月18日にアラスカ州アンカレッジで開催されたアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官と楊 潔篪(よう けつち)中国共産党外交担当政治局員と王毅外交担当国務委員兼外交部長(外相)による外交トップ会談は、久しぶりに両国の激しい非難の応酬合戦となったのであった。

 一方のブリンケンは「ルールに基づいた秩序に取り替わるのは勝者が独り占めする世界であり、遙かに暴力的で不安定な世界であろう。米国は新疆、香港、台湾、米国に対するサイバー攻撃、同盟国に対する経済的強圧など、中国の行動に対する我々の深い懸念について話し合うだろう」と中国を高圧的に、また口を極めて非難・難詰した。

 他方の楊 潔篪(よう けつち)は「米国の人権は最低水準だ。米国では黒人が虐殺されている。米国が世界で民主主義を押し広めるのを止めるべきだ。米国にいる多くの人が米国の民主主義をほとんど信頼していない」とやり返した。中国もこれまた米国に激しく反撃したのである。

 またロシアに対しては、3月10日にウクライナ南部のオデッサへNATO加盟国の軍艦4隻を入港させ、3月14日には2機のC―174輸送機でトルコからウクライナへ空輸、4月に入ると1週間の間に少なくとも3度、物資を空輸したと伝えられている。

 さらに5月3日から14日まで軍事演習「トロイの足跡21」を黒海周辺の国々、ブルガリア、ジョージア、モンテネグロ、北マケドニア、そしてルーマニアで実施、その演習にはアメリカの海軍特殊部隊、陸軍、空軍、イギリス軍、ドイツ軍、スペイン軍、ウクライナ軍の5カ国の軍隊が参加した。交渉前に相手を脅すのは、米国の常套手段である。

 こうしたアメリカの軍事的な恫喝に対し、ロシアに噛みつこうとする外国勢力の歯をへし折るとプーチン大統領は警告、セルゲイ・ショイグ国防大臣は5月31日、ロシア西部地域の軍事的な緊張に対処するため、新たに20戦闘単位を組織すると発表した。そして経済面では、アメリカが基軸通貨であるドルを発行する権利を使い他国を攻撃しているとプーチンは非難、ロシア政府はドル離れをさらに進める意思を明確にしたのである。

 6月16日には、ウラジミル・プーチン露大統領とジョー・バイデン米大統領はスイスのジュネーブで会談するが、その直前の6月11日にアメリカ海軍は駆逐艦ラブーンを黒海へ入れた。それに続き、14日にはイギリス海軍の駆逐艦ディフェンダーとオランダのフリゲート艦エバーツェンも黒海入りした。まさにプーチンの認識は正確である。

 なぜバイデン政権はこのような対中ロ強硬策に出るのか。古村氏の端的な指摘によれば、その理由は極めてシンプルかつ明確である。すなわちバイデンはお飾りに過ぎず、この政権は実質的にはヒラリー政権であるからだ。だからこそ4年遅れで世界全体が戦争に向かっているのであり、本書はそのバイデン政権の内実を徹底的に分析しているのである。

 トランプ政権での4年間は、予想された世界大戦も起きず、アメリカが外国に兵隊を出すということもなかった。トランプ大統領は「アイソレイショニズム」を掲げ、アメリカ軍が関わる大きな戦争は起きなかった。トランプは公約を守った。そのトランプ大統領を追い出してみたら、今度は戦争がやってくる。それに日本が巻き込まれるということを、トランプを非難していた人々は予測していただろうか。真実は実に重いものなのである。

 さてここで本書の各章の構成を紹介しておこう。

 まえがき
 第1章 バイデン政権は4年越しで成立した「ヒラリー政権」である
 第2章 ヒラリーとは距離がある「第3次オバマ政権」の人々は「リセット」を目指す
 第3章 民主党、共和党の既成2大政党内部はエスタブリッシュメント対急進派(ポピュリズム)に分裂
 第4章 トランプがアメリカの分断を生み出したのではない、アメリカの分断がトランプを生み出したのだ
 あとがき

 本書の第1章と第2章では、バイデン政権の主な面子が顔写真付きで分析されている。

 第1章ではバイデン政権で外交、国家安全保障分野を担う人物たちを取り上げ、その人物たちの多くはヒラリー・クリントンとの関係が深いヒラリー派であること、そしてこの人物たちがビッグ・テックと呼ばれる情報産業の超巨大企業とアメリカ政府・アメリカ軍との関係の橋渡し役をしていることを中心に解明されている。まさに癒着そのものだ。

 第2章では、バイデン政権の中でヒラリーと距離がある人物たちが解明されている。新型コロナウイルスと気候変動への対応を契機として、EUとともにアメリカ国内を「リセット」する動きについて詳説している。これらの分析は私たちには実に参考になる。

 第3章では、アメリカの2大政党、共和党と民主党について分析している。具体的には、それぞれの党の内部にエスタブリッシュメント派とそれに対抗するポピュリズム派が存在おり、両党の内部で彼らがどのように対立しているかについて詳説されている。

 第4章ではアメリカ全体の分裂について取り上げている。アメリカの著名な知識人たちの業績をもとに、アメリカ国内の分裂について考察する。ここは古村氏の独壇場である。

 あとがきでは、アメリカの民主政治体制と資本主義に対する不信感の増大とその危険性、さらにこれからの日本の取るべき行動について古村氏の答えを提示している。

 ここで古村氏の見解を紹介しておこう。アメリカは中露との対決姿勢を鮮明にし衝突も辞さない構えであり、それに中国の周辺に存在する日本を含む同盟諸国を巻き込もうとしている。なぜならアメリカ単独ではもはや中国と対峙する力は持っていないからである。

 この状況において日本はどう行動すべきか。選択肢はほぼない。なぜなら日本はアメリカの属国であって、アメリカの命令通りに行動しなければならないからだ。アメリカが中国封じ込めに周辺の同盟諸国を動員するとなれば、日本は中国との直接的な衝突の先兵として使われる。米軍が中国軍と直接接触するということは大変なことで、それは最終段階のことである。その前の段階として日本とインドがまず接触(衝突)させられるのだ。

 現在、アメリカが行おうとしているのは、バック・パッシング(責任転嫁)だ。日本という属国でありながら、世界第3位の経済力を誇る、使い勝手の良い国である日本に、中国との直接的な衝突は任せるという態度だ。あのミアシャイマーも「脅威を受けた側の国は、ほとんどの場合、バランシング(直接均衡)よりもバック・パッシングを好む。戦費の支払いを逃れることが出来るからである」と書いている。アメリカは、日本にその負担を強いることで、自分たちに火の粉がかからないように巧妙に立ち回っているのである。

 アメリカが負担を押しつけるなら、日本はアメリカに服従する姿勢を派手に見せながら裏で中国と?がっておくべきだ。「面従腹背」が最良だ、これが古村氏の見解である。

 本書において古村氏が読者に伝えたいことを端的に纏めれば、バイデン政権は米国が中国とロシアに対して戦争を仕掛ける準備を行うことであり、その戦争は旧来のミサイルとか戦闘機を使った戦争ではなく、この間の技術革新の成果として宇宙空間とサイバー空間での戦争、サイバー戦争(サイバー・ウォーフェア)をするということになるだろう。

 具体的には、インターネットを使った偽情報拡散、敵国政府機関のコンピュータをハッキングしての情報窃取、民間やインフラの機能不全や機能停止を引き起こす不正操作などが行われる。またドローンによる偵察、監視、爆撃はすでに行われているのである。

 そのため、米国では宇宙軍、サイバー軍が組織され、ビッグ・テックと呼ばれる情報技術分野の超巨大企業とアメリカ政府、特に国防総省は結びつきを強め、「新・軍産複合体」作りが進められていることを、我々はゆめゆめ忘れるべきではないということである。

 これらの衝撃的な事実は、本書においてそれぞれ証拠付きで明らかにされている。

 そしてそのキーパーソンがミッシェル・フロノイ元国防次官であり、このフロノイとバイデンの側近で元国務長官アントニー・ブリンケン国務長官の両者がともにウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の出身であること、またその他にもダヴォス会議(世界経済フォーラム)で進められている「グレイト・リセット」とバイデン政権の関係、アメリカ国内におけるポピュリズムの勃興、アメリカ国内の分裂について幅広く分析を行っている。
 バイデン政権や今後の米国の動向に関心がある読者には、是非一読を薦めたい。(直木)


 川柳  作 ジョージ石井

国難を逃げて国会夏休み
休んでも歳費たっぷり議員さん
中止の字総理の辞書に見つからぬ
ワクチンの旗だけ総理振り回し
支援金まだかと酒が顔を出し
国民の安全オウム繰り返し
再選に向け競わせる接種率
デジタル庁内部発言すぐに漏れ
黙食に蕎麦すする音よく響く
財産はないが生きたい明日がある
近未来首にワクチン証明書

被害者の声が届いた石綿禍(課題「届」) 
五輪中止総理にあったロバの耳(「届」) 
責任の転嫁は総理お手の物(「嫁」)
重宝と実習生の汗涙(「宝」) 
核の傘非核を言えぬ被爆国(「傘」) 
フクシマを忘れ原発再稼働(「罪」)
便利さに心を盗み取るGAFA(「大きい」) 
三密に三猿棲んで大都会(「大きい」) 
てんこ盛り青菜主食のダイエット(「青」)
友の愚痴頷きだけで受け留める(「やんわり」) 
断捨離に終の棲家はワンルーム(「転居」)案内へ戻る


 何でも紹介 ゲノム編集のトマトは安全なの? コロナワクチン接種はどうする?

 最近、スーパーに行くと、トマトの種類が豊富だなあと感じていました。産地別ではなく、見るからに色・形・大きさが異なっています。既に、ゲノム編集のトマトが商品として並んでいるのでしょうか。実は、私が共同購入しているグループからゲノム編集を危惧する、農林水産大臣宛の「種苗への遺伝子操作の表示を求める署名」の依頼があったからです。

 その文面を紹介します。

ゲノム編集のトマトの栽培や販売が認められたが、このトマトには、種苗にも食品にも表示の必要がないこと。このままでは知らないうちに栽培したり、食卓に登場することになりかねない。遺伝子組み換えやゲノム編集などで遺伝子を操作された作物や家畜、魚などは環境や食の安全に悪い影響をもたらす可能性がある。現在、食用の遺伝子組み換え作物は国内で栽培されていない。しかし、ゲノム編集作物の栽培が進めば、遺伝子組み換え作物の栽培も進み、食卓にやってくる可能性がある。

遺伝子組み換え食品については極めて不十分ながら表示義務がある。しかし、遺伝子組み換え作物の種子や苗には表示義務はない。ゲノム編集された種子や苗にも表示義務はない。国内でゲノム編集作物が栽培されようとしている今、生産者が種苗の選択をするためには表示は絶対に必要になる。私たちは、遺伝子操作作物を栽培したくない生産者、遺伝子操作原料を使いたくない業者、遺伝子操作食品を食べたくない消費者の選択の権利を求める。

【要望事項】 種苗法第59条の第6項「その他農林水産省令で定める事項」に、現在定められている「使用農薬の履歴」とともに、「育種における遺伝子操作の有無」を追加することを要望する。

 遺伝子組み換え作物には、害虫を寄せ付けず、雑草を生えにくくするなど、大資本生産者の利益優先の意図がみえみえです。周辺の住民の健康被害での訴えは、アメリカでは既に起こっています。ゲノム編集のトマトには、消費者の健康志向を利用し血圧を下げる、血糖値を下げるなど、商品に付加価値を付け市場に出ています。健康サプリが人気商品になるように、安全性の是非を問わない消費者には、ゲノム編集のトマトも同系列のものとして扱われることでしょう。自然の摂理を無視した栽培方法は、環境破壊はもちろん、人体への影響も危ぶまれます。

 ゲノム編集の研究は作物だけでなく、既に、中国では双子の女の子が生まれています。両親が希望する優秀で美しい遺伝子を持った子どもで、携わった研究者は発表した会場で、生命倫理に反すると中国政府に逮捕されました。また、人への臓器移植に利用するために、人間とサルのゲノム編集した生物を誕生させた報告もあります。人間が生き延びるため、社会での評価を得るために、遺伝子を操作し、人類史上にない生物を生み出してしまう、科学の有り様が問われています。

 ところで、今、競争するように実施されている新型コロナワクチン接種ですが、遺伝子組み換えの技術が利用されています。そもそも、欧米と比べ日本を含めたアジアでは、死亡率がはるかに低いこと。インフルエンザよりも死亡率が低い感染症は、ワクチンで予防する必要があるのかと、ウィルスの専門家、元朝日新聞論説員・岡田幹治氏などが疑問を発信しています。そして、ワクチンの効果や副反応が正確明らかにされず、政府は時間を優先させて、従来の治験や安全性の試験まで大幅に省いています。今回のDNAなワクチン、RNAワクチンの遺伝子ワクチンは未だかつて人類に使われたことがありません。

 ウィルス学の専門家・本間真二郎博士の警告を聞いてみましょう。

「人工的な遺伝子を体に入れることになりますので、一番危惧されるのは人間の遺伝子に影響を与えるかもしれない点です。遺伝子は体の設計図です。人間は人間の遺伝子(設計図)を持っているから人間です。人間の遺伝子が変わってしまうということは人間でなくなるということです。今までのワクチンはせいぜい副反応が出るとか、アレルギーが出るといった問題でしたが、今回のワクチンは問題が発生した時にはレベルが違う可能性があります」

 厚労省発表のワクチン接種による健康被害は、6月9日現在で、接種後の死亡が196人、死亡を含む副作用は1万676人で、1日100人が被害をうけています。しかし、専門家部会による見解は「情報不足等によりワクチンと症状名(死因)との因果関係は評価できない」と、評価不能と結論づけています。そして、現時点で重大な懸念は認められないので、接種は進めていくと、暴走は止まりません。

 本間真二郎氏は、同調圧力の強い日本では、人と違う行動をとることは難しい。だから、自己軸をしっかり持とうと呼びかけています。自己軸と他者軸があって、他者は自分以外のすべてのもの、他人も動物も環境もウィルスもすべて他者です。他者軸の対策ばかりにとらわれず、自己軸の対策で自分の内なる免疫力を上げ、自己治癒力で対処することの必要性を提起。コロナウィルスを寄せ付けない体づくりこそ大切です。

 最近、「一人になる」医師・小笠原登とハンセン秒強制隔離政策と題した映画を、観ました。まさに、今、問題になっている同調圧力を跳ね除け、ハンセン病患者と共に生きた記録は、群れるな、ひとりになれと、教えてくれます。私も、介護職場で、ワクチン接種拒否を表明しました。自信を持って行動出来る情報を手に入れ、後押ししてもらっているなあと、思うこの頃です。(折口恵子)


 コラムの窓・・・ワクチンは万能か、危うい遺伝子操作!

 コロナワクチン接種をめぐる右往左往に既視感を覚えるのは、私だけではないでしょう。菅義偉首相は1日100万人と言い、新聞には「一分でもはやく」などという見出しの報道が行われ、不安と期待、ストレスと疲労困憊、これらは感染リスクを高めるのではないかと危惧するほどです。

 こうした事態は、ワクチン接種が最後の切り札、唯一の救いとして登場している(そう思わされている)ことによって必然的に起きる混乱であり、トイレットペーパーやマスクと同じ混乱となったのは、必然といえるでしょう。一方で接種は任意なのに、例によって社会的強制が働き、拒否できなくなりつつあります。こうして、コロナウイルスとは何でありどう対処すべきかがなおざりにされ、目の前の対処に右往左往しているのです。

 感染症対策は社会防衛が目的であり、1948年の予防接種法制定時には国民の義務とされました。これが1994年に改正によって義務接種から勧奨接種となったのですが、これは副反応に対する国の責任回避、親の判断(自己責任)に委ねられたのです。2003年には副反応の健康被害に対して救済給付金が支払われるようになり、2013年にはHPV(子宮頸がん)ワクチンで副反応が拡大し勧奨が中止となりました。

 ワクチン開発は基礎研究、動物実験、臨床試験を経て承認されるのですが、新型コロナウイルスワクチンはこれらの過程が同時並行で行われています。まして遺伝子組み換え技術で作られたワクチンは、将来的な影響が不確定な〝人体実験〟のようなものとなります。

 さらに、こうしたワクチン開発が新々型コロナウイルス誕生の危険性を増幅、ウイルスの生き残り戦略に影響を及ぼすとも指摘されています。いずれにしても、ワクチン接種は人間の遺伝子操作であり、遺伝物質が生殖細胞に移行すれば人間の遺伝子改造に繋がる、と警鐘が鳴らされています。

 病める現代社会が作り出した感染症、ウイルスや細菌といった微生物敵視政策(清潔社会)、抗菌グッズや除菌剤の販売促進、保険所を減らすなど公衆衛生の軽視、これらが人々の持つ病原微生物への抵抗力を奪ってきたのです。ワクチン接種に一定の効果があるようですが、それを最後の切り札にするのは間違いです。

 未知のウイルスを呼び覚まさないように地球環境や生物多様性を保護。微生物敵視(抗菌グッズの氾濫)からの転換。そして、私たちが本来持っている免疫の力で対処。例えば、夏に向かって水分や塩分補給にスポーツドリンクを飲むことが多くなりますが、人工甘味料(スクラロース等)は感染を防ぐ免疫に悪影響を及ぼす可能性があり、食生活での対処も有効のようです。

 ワクチン接種のリスクを負うのは個人であり、遺伝子操作ということを考慮したとき、子どもへの接種は避けるべきではないかと思います。感染を極端に恐れて外出や交流を断つのも、かえって健康を害する原因になるでしょう。子どもへの極端な行動抑制は健全な発達を阻害します。

 正しく恐れるという言葉がありますが、これとても何が正しいかが不確かであり、むしろ恐れすぎることの危険性を私は危惧します。何か強い力に身を預けてしまうなら、過去に悲惨な歴史が示すように、この社会を危険な道へと向かわせるでしょう。 (晴)案内へ戻る


  東京オリンピックを中止せよ!
 やるべきはオリンピックではなくコロナ対策!


いくら菅首相が「安心安全」を繰り返しても、国民の不安は解消されていない。

 朝日新聞が19日、20日に実施した全国世論調査によると、東京五輪・パラリンピック開催で新型コロナウイルスの感染拡大に不安を「感じる」は83%にも上った。

 同時期の共同通信の世論調査でも五輪開催による感染再拡大への不安を聞いたところ、「ある程度」を含め「不安を感じている」の回答は計86.7%である。

 皆さんもご存知のように、IOCのバッハ会長は「緊急事態宣言とオリンピックは関係ない」と、またコーツ調整委員長も「新型コロナウイルスの状況にかかわらずオリンピックは開催するだろう」との声を上げている。

 これに対して、デーブ・スペクター氏は「ゴジラが東京に来てもやります、などと言えば、少しは笑えたのに。IOCは何を言ってもダメ。こんなに笑顔のない五輪は初めてだ」との皮肉を投げつけた。

 東京五輪・パラリンピック大会開幕まで1カ月となった6月23日(水)、東京でも都庁前で五輪中止のデモがあり「国民がコロナで苦しむ中、これ以上の犠牲者を増やしてはいけない。環境や人権を踏みにじる五輪を中止しましょう」などと訴えた。

 私の住む静岡でも、オリンピック開催に反対する「コロナ下の『聖火』『オリ・パラ』反対!実行委員会しずおか」が結成され、聖火リレーが静岡に到着する23日に、静岡の青葉公園で五輪反対の横断幕やプラカードを掲げて街頭宣伝を行い、青葉通りを「オリンピックを中止せよ」との声を上げてデモ行進をした。

 市民に配布したチラシの中に、第2次世界大戦時の日本で『米軍と戦う』ために学校で行われた竹やり訓練になぞらえて『竹やり五輪』の写真も載せた。

 今、コロナ感染に対する最大の解決策であるかのようにワクチン接種が全国で進められているが、ワクチンは本当に安全なのか?イギリス株やインド株等々の変異株が次々にあらわれていているが本当に効果はあるのか?厚労省は5月21日までファイザー製ワクチンを接種した約600万人のうち85人が死亡したと発表している。厚労省は「重大な懸念は認められず」と述べているが、今後さらにきちんと情報を公表していく責任がある。
 このままでは7月・8月の東京オリ・パラに突入していく訳だが、「オリンピックを中止せよ」の声を上げ続けていこう!(英)


 色鉛筆・・・膝関節炎を患って

 先月、6月号の色鉛筆の記事を読んで、思わず私も同じと、声を上げそうになりました。私は、熱は出ないものの、通勤中に突然、左足の違和感に気付きました。それでも、これぐらいならと歩行を続けていくうちに、痛みは足を引きづるまでになり、電車の乗り降りでさえ、不安を覚えました。職場までは、何とか辿り着きましたが、これでは仕事は無理と判断し休みを取り、病院で診察を受けました。

 医師は、いとも簡単にレントゲンを見て、骨は異常ないが膝の軟骨がすり減っているので、その痛みからくる関節炎と診断。年相応の症状で、治療は電気治療と湿布、痛み止めの薬の服用ぐらいしかないこと。そして、早い効果を期待するなら、ヒアルロン酸の注射があると説明。私は注射は拒否し、体操などのリハビリを要望したが、病院には対応設備が無く、医師が体操を教えてくれました。筋肉を取り戻す体操を続けることと、体重を減らすことが、今の私の課題となりました。5月に受けた職場での健康診断にも、生活習慣病を意識した体質改善策をするようにと、指導を受けたばかりでした。今度こそ、本気になって自身の体に向き合うことになりました。

ところで、膝の痛みは職場でも数人が患っていたらしく、同僚から私への労いの言葉がありました。介護の職場なので、どうしても腰や膝への負担が避けられず、誰もがその種の疾患に無縁ではないことを、教えられました。また、加齢を伴う疾患なので、近所の人に話すと大概の人が膝の痛みと付き合いながら、日々、過ごされているようでした。治療のことも、あれこれ試行錯誤をしながら、自分に合ったやり方を見つけるたくましさを感じました。新聞折込の膝痛対処のサプリメント、昼間のテレビでの老化予防の健康食品などのコマーシャル、やはり、需要のあることなんだと実感しました。

私は数年前、貴重な本と出会いました。毎年、春に、海外留学生の支援のための古本市が「神戸学生青年センター」で行われ、そこで入手したものです。タイトルは「百歳まで歩くー正しく歩けば寿命は延びるー」で、理学療法士の著者が、筋肉にまつわる働きの種類・分類・役割など基本の知識を伝えてくれます。若い世代が、颯爽と歩く姿は軽やかで華やかさがありますが、中高年層では、無理せず自分に合った歩き方をと、呼びかけます。

 長寿の双子で有名だったきんさん、ぎんさんは百歳を過ぎても歩けたのは、「正しい歩き方」が身につく習慣があったから。常日頃の歩き方、椅子の座り方を変えるだけでも長寿体質の筋肉は作れる、これからでも遅くないと励ましてくれる。遅筋を鍛えるという、まさに高齢者に適したスローペースで対応すれば、必ず体は反応してくれる。今度こそ真剣に受け止め、私は自宅の近くにある池の周りを歩くように心掛けています。百歳までは無理かもしれませんが自分の足で歩くことの大切さを自覚し、地域の活動を続けるためにも健康維持に務めたい。(恵)

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