ワーカーズ623号(2021/10/1)     案内へ戻る

 自民党総裁選とこれからの展望

 ◯ 残された課題

 九月五日、菅首相は自民党総裁選に出馬しないと表明しました。安倍政権と菅政権が次々と倒れたのは、直接的にはコロナ禍の蔓延が止められなかったからです。しかし、同時にそれまでの自公政治の悪弊が積み上げられてきた結果です。コロナ禍がくしくも彼らの政治の膿を暴き出したのです。

 長年の保健所体制の縮小削減は、公衆衛生の拠点を弱体化させました。さらに病床の確保が要請されている中で病床削減・医師削減の法律を一部野党の賛成で成立させるなど、弱者・国民を無視した政策の連続でした。臨時の病院開設こそが求められるのに、政府が打ち出した方針はなんと「入院制限」や「自宅療養」でした。結果はご存じのように感染症の爆発的拡大で、重症にもかかわらず入院できずに、自宅で死亡する痛ましい事例が続発しました。

 他方では感染対策と真逆のGoTo関連キャンペーンに固執し、オリパラも国民の声を無視して強行しました。この背後には業界利権と政治の深くい繫がりがあります(GOTO関連だけでも2.7兆円)。

 まさに破綻し批判を受けたのはこのような政治です。

 ◯ 自民党総裁選

 岸田文雄氏 河野太郎氏 高市早苗氏 野田聖子氏が出馬表明をしました。長年「脱原発派」とされた河野氏は、結局は再稼働を容認し、原発推進勢力に妥協し、必要とされている原発利権構造との決別の勇気も決断力もないことを自ら語った形です。岸田氏はコロナ後について「成長と分配の好循環による新しい日本型の資本主義を目指す」と説き、格差是正に力を入れると強調しました。

 今後予想されることとして、財源確保のために消費税とその税率上昇により税制はますます逆累進性を強めることでしょう。低所得者からも容赦なくむしり取り、他方で法人税減税分を補わせるというひどさです。医療保険制度・福祉行政は劣化しつつあり社会的再分配的機能はますます低下しています。

 他方では、政府・防衛省は、軍事費は特別扱いで史上最高額となり、また福島の悲劇ののちも経済産業省・電事連や原子力村の圧力で、原発政策に国費を湯水のように注ぎ込み危険で無用な原発再稼働と核燃サイクルの再興をもくろんでいます。

 ○ これから

立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の野党四党は八日午前、市民連合と会談し、「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」に合意しました。文面では、自民党の各候補者の政策に比較して、幾分でも庶民目線であり、憲法にのっとり、女性やLGBTの人権を尊重し平和外交努力を唱え、消費税減税や格差是正に目配りしエネルギー政策も考えているようです。自公政権を終わらせる一つのステップだと思います。

 イギリスでは、気候変動に危機感を感じて若者達が立ち上がりました。十八歳の若者が総選挙で自分の意見をしっかりと持ち投票できるように、野党と市民連合のつながりを分断することなくその中でもおかしいことはおかしいと言える環境作りをすすめていきたいと思います。(宮城 弥生)


 問われているのは私たち〝有権者〟・・・ 〝主権者〟から遊離する安倍・菅自公政権

 自民党の新総裁が決まった(決まる)。その新総裁=新首相の下で近く総選挙が行われる。

 総裁選では4人の候補者が様々な姿勢や政策を掲げているが、それはただ語ってるだけ。今後の実行姿勢が問われることになる。と同時に、これまで安倍・菅(スガ)自公政権をつくってきた私たち〝主権者〟もまた、問われている。(九・二四)

◆裸の王様?の無様な退陣

 昨年9月に発足した管政権は、6割超えという高い支持率での発足だった。

 その管政権、昨年9月の発足直後に解散総選挙に打って出れば、圧勝は確実な情況だった。が、菅首相は、政権の実績を積み重ねつつ東京オリ・パラの成功を背に解散総選挙で勝利し、今年秋の自民党総裁で無投票での再選というシナリオに固執したことが、まさかの退陣に繋がった。コロナ感染の第5波の到来でオリ・パラが原則無観客となり、菅首相の思惑は、無残にも崩壊した。

 その第5波。自宅療養という名の〝入院拒否〟〝自宅放置〟(一時10万人以上)で、死者が続出し(250人とも)、文字どうりの医療崩壊が現出したからだった。厚労省は、その死者を把握していないという無責任さだ。自宅療養のひとり一人がどんなに苦しく、不安だったことだろう。

 その管政権、1年間の在任で何をやったのか、見るべき成果はほとんど無いまま幕引きを迎えた。

 記憶に残るのは、政権発足直後の日本学術会議メンバーの6人の任命拒否、コロナ禍の中での〝Go To トラベル〟の強行、ワクチン接種でも場当たりさが際だった。そしてオリ・パラの開催強行とコロナ感染爆発と医療崩壊という現実だった。

 最後にやったのは、自己保身目的の政権延命の悪あがきだった。それも総裁選での岸田候補による自民党役員任期の制限案に対抗して二階幹事長切りに打って出たまでは機敏な対抗馬潰しだと自賛した、のもつかの間。自民党4役の改選では、誰も引き受け手を見いだせず、内閣改造も頓挫。万策尽きての政権投げ出しとなった。

 当たり前だろう。支持率30%割れで自民党の議席が大幅に減れば、たとえ政権は維持できたとしても首相の辞任は不可避、わずか1ヶ月の新役員、新閣僚など、引き受け手がいるはずもない。

◆奢る政権は久しからず

 管政権の1年間は何だったのだろう。見るべき成果は何も見えない。

 安倍政権の継承を掲げて発足した管政権。外交では、自民党内も含めて対中包囲網づくりでの米国追従だけが目立つ。アフガン撤退では大使館員が率先して国外退避し、アフガン人スタッフの国外退避は一人だけ。先の大戦での在留邦人置き去りの関東軍の先逃げを思い起こさせるものになった。大使館員がカブールに残ってアフガン人の国外退避を実現した欧州各国と比べても、惨めな現実だった。

 北方領土、拉致問題でも、政権の重要課題だとしながら、取り組むそぶりもなかった。

 内政でも、政治の基本姿勢は「自助・共助・公助」という順番の新自由主義。沖縄普天間基地では、なにがあっても埋め立て強行、聞く耳持たずだ。コロナ対策とオリ・パラ実施を除いて、唯一の看板だった個人情報の一元的国家管理をめざすデジタル庁も箱物をつくっただけ。

 〝継承〟を掲げた安倍前政権からの積み残しも、手つかずのままだ。政治の私物化――モリ・カケ。強権政治――官僚人事、河井案里議員てこ入れでによる批判潰し。公文書改ざんという民主主義の土台の破壊、嘘つき政治の常態化等など。2月には菅首相長男の東北新社がらみの総務省接待事案も発覚した。

 安倍前首相は「責任を痛感している」だけで「責任をとる」とは言わなかった。「3S」という《説明しない》《説得しない》《責任をとらない》だ。菅首相も「私がもし総裁になったら、責任を持って対応していきたい」と繰り返していたが、実際の態度は安倍前首相と同じ。

 安倍前首相は、野党による臨時国会開催要求拒絶の憲法無視も厭わなかった。菅首相も、野党による国会召集を拒み続け、結局国会を開催しないままの政権放り投げだ。

 結局、選挙で勝ち続けた政権や権力者は何をやっても許される、野党や国民はただ黙って政権に従っていればいい、という傲慢な態度が露骨だった。まさしく「国民をなめたような対応してきた」(自民党議員)のだ。

 そんな〝主権者をなめた政権〟は、政権の座から放り投げられるべきだが、現実はといえば、有権者は自民党を勝たせ続け、安倍一強政治を容認して長期政権の驕りをもたらしたわけだ。

◆主権者から遊離する〝一強政治〟

 そんな安倍前政権とそれを継承した管政権。小選挙区制度や内閣人事局による官僚支配によって続いた9年間におよぶ官邸主導政治は、〝政高党低〟〝行政・執行権優位〟の政治をもたらした。いいかえれば、国会=立法府の形骸化、行政権優位の政治、有権者無視の政治、政権の有権者からの遊離をもたらした。

 政権の意思決定は、首相と首相を取り巻く官邸官僚という官邸チームに集中し、官邸への権力集中を招いた。〝官邸官僚〟は流行語にもなり、首相や官邸への〝忖度〟も流行語になった。

 本来、主権者と直結しているはずの国会は首相や内閣の追認機関と化し、国権の最高機関としての国会の形骸化が進み、内閣による国会軽視、党軽視が極まった。安倍政権の意思決定は、官邸による意思決定→行政機関への指示→という順番で、党への説明は最後だったという。

 国権の最高機関としての国会の形骸化、無力化は際立っている。安倍前首相や菅首相は、「衆参いずれかの四分の一以上の要求があれば、内閣は臨時会の招集を決定しなければならない」という憲法第53条の規定すら無視している。これは、野党を無視する以上に、国会の権限を内閣が無視していることであって、日本の議会制民主主義がいかに人民主権主義とかけ離れ、有権者から遊離しているかの象徴なのだ。

 そんな安倍―管政権は、本来なら政界から一掃されて当然なのだ。

◆問われるのは企業優先政治と戦争国家づくり

 今回、自民党の総裁選挙に立候補した4人、コロナ対策や少子化対策、安全保障や社会保障などでそれぞれの政策を訴えてはいる。とはいえ、改憲や〝モリ・カケ・桜〟や原発など、〝持論〟を棚上げするかのような言動も目立っている。安倍前首相などに忖度したとしか思えないそんな態度では、説得力に欠けるというほかはない。

 しかも、その政策を支える財政支出でも競っているが、その原資についてはどの候補もまったくと言っていいほど言及していない。大風呂敷だけなら、中学生でも言えることだ(失礼)。

 この8月に22年度予算の概算要求が公表されているが、その総額は110兆円以上。すでに日本のGDPの2割が国家予算で占められている。その他、各党からも補正予算が不可欠だとの声も出ている。

 これまでの赤字財政を含めてGDPの3割にもなる国家セクターの肥大化は、自民党が嫌う中国の『社会主義』の後追いと見まごうばかりだ。

 財政肥大化で分水嶺となるのは、それを誰が負担するのか、だ。歴代自民党政権が段階的に実施してきた法人税減税と一貫して継続してきた不労所得としての金融所得税での低率課税の維持。それを埋めるべく何度も引き上げられてきた低所得者に負担感が大きい大衆課税としての消費増税。大企業や富裕層優遇の税制か、それとも消費税に頼らない働く庶民にやさしい税制への転換なのか、が問われているのだ。

 本紙発行日の10月1日には、すでに新総裁が選出されているはずだ。が、自民党総裁が替わっても有権者無視、大企業優先政治や戦争国家づくりの自民党政治が変わるわけではない。

 安倍首相と菅首相による長期政権の旗印は、アベノミクスによる企業・富裕者優遇政治と国家中心主義・戦争国家づくりだった。総裁候補の4人は、その安倍・菅政権を閣僚や党役員として支えてきた張本人だ。改革・改革と叫んでいるが、そんな連中に普通の労働者、庶民に寄り添った政治など期待できるはずもない。

 地域や職場など足もとからの闘いを積み上げることで、来たるべき総選挙では自民党政権を政権の座から放り出したい。(廣) 案内へ戻る


 武力対決一直線を止めよう いま必要なのは米軍基地撤去と緊張緩和外交だ

 南西諸島=琉球弧(九州から台湾の間にある沖縄本島などを含む島嶼群)ではここ数年、陸上自衛隊のミサイル部隊の配備計画が進んでいます。特に奄美大島、宮古島、石垣島の3島。奄美大島は中国を意識した「南西諸島有事」の拠点になりつつあります。

■民間巻き込み作戦訓練

 「中国の脅威」を念頭に、この夏に日米合同の軍事訓練が行われました。九月には約10万人を動員する過去最大規模の自衛隊演習が開始され十一月まで続く。陸自ばかりではなく、あらゆる自衛隊の部隊が関与すると言われる。総力を「対中国」に動員しようとするあまりに異様な演習だ。そのうち約1万2000人の隊員と約3900台の車両を九州の演習場に集結、民間のフェリーなど輸送機関も巻き込みながら、全国の自衛隊では有事即応体制の構築が目指されています。在日米軍や民間も巻き込んだ戦後史上最大級の軍事演習が続きます。

■島嶼(しょ)戦争計画に島民の逃げ場なし

 奄美大島、宮古島ではミサイルやミサイル部隊が地元民の反対にあいつつも配備強行。石垣島では住民の反対でかろうじて阻止されていますが、来年のミサイル部隊配備を狙っています。

 ミサイル発射台を搭載した車両は、戦争が開始されれば当然島全体に展開する。容易に標的になる「自衛隊基地」から島全体に散開する計画だ。「敵」との攻防となれば島中が戦禍に覆われるのは不可避です。映画監督・三上知恵さんは指摘する~「奄美も、全住民を島外に退避させうる具体策はまったくない。もっと言えば、沖縄県にしても、島外避難については〈国との調整〉〈在沖米軍との連携〉という文言があるだけ。危険になった島から脱出する〈国民保護〉についての計画はないに等しい」と怒る。

■際限のない危機論--「尖閣有事」から「台湾有事」介入まで

 このように安倍前政権以来、「中国の脅威」「尖閣が危ない」として南西諸島の軍事化(自衛隊南西シフト)が開始されましたが、スガ・バイデン会談(今年四月)が「台湾海峡の安全」について論及すると、防衛相や麻生財務相らは「台湾危機は〈存立危機事態〉だとの見解を明らかにしました。

 つまり「台湾海峡危機」発生は日本の安全の危機であり、「集団的自衛権」を発動できる要件になると。仮に台湾と中国との間に軍事的紛争があれば「首相は自衛隊に対し、防衛出動を命令できる」と主張した。さらに高市氏がそれを公然と掲げて現在(九月二十五日)、総裁→首相を目指している。あげくに、米国が検討していると言われる中距離ミサイル沖縄配備を、高市氏は「むしろ積極的にお願いしたい話だ」と。「平和外交」は彼女の辞書には無いようです。

■いま必要なのは米軍基地撤去と緊張緩和外交だ

 沖縄辺野古基地建設が「軟弱地盤問題」により座礁するなか、政府は依然として普天間返還は「辺野古基地と交換条件」との「日米合意」遵守する姿勢です。これではいつまでも普天間基地周辺住民の危険は取り除かれていません。さらには上記したように南西諸島を軍拡最前線としています。

 こうした中で、米国政府は中東から太平洋~インド洋に軍事をシフトさせています。06年に安倍晋三首相が米国の軍事関与を担保するために提案したQUAD(クアッド・米豪日印)が、二年前に正式に活動を開始。さらには今年九月「AUKUS」(オーカス・米英豪)の軍事同盟が形成され、最初の仕事として原子力潜水艦をオーストラリアに提供すると。インド洋と南シナ海や東シナ海の軍事緊張は高まるばかりです。「オーカス」に対して、インドネシア外務省は「この地域で軍拡競争と軍事力の誇示が続くことを非常に懸念している」とする声明を出しました。

 「対テロ戦争」の進展が困難になった米国は、新たな戦場=軍需拡大の市場の獲得と、中国との代理戦争を実行できる同盟国を物色しているのです。ASEAN諸国や韓国が米国と一定の距離をとる中、米国は自らが中国との直接対戦を回避しつつ、日本やオーストラリアの「軍事活用」にますます動いています。このような策謀に乗ることは愚かなことです。
 次期首相が自民党の誰になるか、あるいは野党から出るのか、今は不明ですが、やるべきことは明確です。アジアの平和のためには、米国の戦略から手を切り、そして米国と手を結ぶ安部・麻生ら日本国内の反動派や軍拡勢力を暴露し孤立化させることです。今の日本の政治が抱える問題は「コロナ」だけではないのです。(アベフミアキ)


 共産党の「グリーン・リカバリー」で 気候危機を回避できるか?

■気候危機と「マルクス主義者」

 「先進国」とされる諸国において、気候危機対策は年々主要なテーマとなってきている。各国政府は、次々と大胆な政策や、従前の計画の前倒しを行っている(ガソリン車廃止とか)。その点では日本は二歩も三歩も出遅れた。国連からは気候危機の影響をもろに受ける四番目のリスクの高い国と指摘されている(『世界気候リスク指標2021』)のに。

 いや、政府ばかりではない。企業の面従腹背は当然として(環境を顧みない資本の利潤追求の姿勢こそが、温暖化の元凶であることは言うまでもない)、一般の市民の意識も、野党も、ある意味では「左派」とか「社会主義派」とか「反体制派」とか言われてきた人々の動きも鈍かったのである。「環境問題」「地球温暖化」は知っていても「気候危機」まで踏み込めなかった。私自身、これを正直に認めなければならない。

 科学万能と生産力主義である多くのマルクス主義者は、資本主義が生み出す科学技術の目覚ましい発展への幻想に取りつかれてきた。彼らは、気候危機や環境破壊・資源枯渇問題について資本主義に原因があることを理解しつつも、「解決策もまた資本主義の生産力の一層の発展と、その足かせとしての〈所有の私的性格の廃止〉にある」と考えた。つまり「解決はより一層高い生産力=社会主義の中にある」と妄信してきた。他にも気候温暖化論などは「原発推進派の陰謀」と切り捨てる者もいた。

 グレタ・トゥーンベリさんの国際的運動やその経済学的・社会学的応答として昨年出版された斎藤幸平著「人新世の資本論」は、日本の「怠惰なマルクス主義者」に覚醒を迫ったと言ってよい。

■共産党の立場の明らかな後退

 さて、野党である共産党も昨年四月にようやく気候危機対策を提起した。志位委員長は以下のように語った。

 「マルクスの『資本論』は、(気候危機)解決の根本的道筋、手がかりを示している」。

マルクスは「人間の生産活動、経済活動を、自然と人間との〈物質代謝〉のなかに位置づけ」た。ところが資本主義は「人間により食料および衣料の形態で消費された

土地成分の土地への回帰を、したがって持続的な土地豊度の永久的自然条件を攪乱(かくらん)する」(『資本論』第一部第四篇第一三章「機械と大工業」)と。

 かくして志位氏はこの時点で次のように締めくくった。「資本主義的生産の利潤第一主義は、物質代謝を攪乱し、その前提である自然条件を破壊する。その攪乱・破壊は、現在では、地球規模での気候変動まで引き起こし、人類の生存条件を破壊しかねないところまできている」。「未来社会――社会主義・共産主義社会は、この攪乱・破壊を規制し、人間と自然との交流――物質代謝を、合理的に、最小の力の支出で、人間性にもっともふさわしい条件のもとで進めることを可能にする」。

 また、気候危機は待ったなしであり即実行が必要だとして「資本主義に特有な利潤第一主義を、かなりの程度まで規制、抑制する」政策がとられるしかない、と志位氏は語っていた。(ここまでの引用「改定綱領学習講座(3)志位委員長の講義2020/4」)

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 ところがわずか一年半後にこの少しでも筋の通った提起が引っ込められてしまう。

 「脱炭素社会の実現は生活水準の低下や経済の停滞をもたらすものではない。新しい雇用を創出し、地域経済を活性化し、〈持続可能な成長〉に道を開く大きな可能性を持っています。経済を立て直す上でも〈グリーン・リカバリー〉(緑の復興)が世界的課題です」(気候危機を打開する日本共産党の2030戦略2021/9/1)。

 おいおい話が違うではないのか?「資本主義の強い規制」や資本主義の根本転換→社会主義はどこへ行ったのだ?

 今までのような利潤追求第一主義の経済のままで、経済成長を維持しながら、「グリーン・リカバリーで気候危機を打開」なんて言ってもよいのだろうか?グリーン・リカバリーは欧米諸国の、政府や主要政党が掲げるグリーン・ニューディール(緑の経済成長)の事だ。米国のオバマやバイデンもその立場だ。資本主義や市場経済を転換どころかそのままにして、むしろ活用しつつ税制や政策誘導による「転換」を「システムチェンジ」などと言えるのか?共産党の気候危機に対する立場の後退は明白だ。

■明日香教授の「気候ケインズ主義」に乗り換えた共産党

 私は、高名な明日香 壽川 (あすか じゅせん)教授の講演を何度か聞いた。かれは、市民運動と連帯し行動し提案する熱心な学者である。

 しかし、彼は斎藤幸平の言うところ「気候ケインズ主義」者であり、そのことを隠すこともない。政府や野党に精緻な資料からなる「エネルギー転換」政策を売り込む仕事も熱心にしている。

 共産党が九月一日に発表した「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」を読めば、明日香教授の研究に依拠しているのはすぐわかる。基本とする数字や資料や政策の組み立てが、明日香氏が指導する「未来のためのエネルギー転換研究グループ レポート2030=『原発ゼロ・エネルギー転換戦略~日本経済再生のためのエネルギー民主主義の確立へ』」や明日香壽川著『グリーン・ニューディール』とほとんど変わらない(事実、共産党は政策の論拠として何度も引き合いに出している)。
だから共産党の気候対策はもちろん「グリーン・リカバリー」「緑の復興」「緑の成長」路線だ。つまり、市場・資本・利潤・成長はそのままだ。資本論まで引用し資本主義を批判した志位共産党委員長だが、これでは換骨堕胎というものだ。

 曰く、二酸化炭素削減目標を大幅に引き上げ、大量排出の六つの産業を転換し、原発と石炭火力は全廃し、自然エネを倍増させる・・・再エネ産業の拡大と省エネ住宅などテコ入れや転換を促進する「緑の」市場の拡大等で雇用と成長は守れる「企業にとって利益を生み出し、将来性のある投資」だ(共産党同上)云々と。

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 資本主義を餌付けして飼いならし善導する、それは可能か?明日香教授講演会場からも、市場経済のままで経済成長を続けていては「二酸化炭素の爆発的増大は止められない」と批判も出た。一般庶民の感覚の方が明日香氏や共産党よりラジカルだ。

 明日香教授は講演で聴衆に向かって力説した「気候正義などは要らない」「市場原理・経済の合理性で雇用を守り経済成長させつつ二酸化炭素を目標値まで大幅削減できるのだ」と。これは産業の大再編計画(システムチェンジ)であるが、少しでも社会主義や共産主義に繋がる社会変革ではない。これは現在の「気候危機」に対する共産党の立場である。

 共産党の政策(事実上の明日香アジェンダ)は政府より数字的に大きな目標を掲げているが、「危機打開」プログラムは中途半端につまみ食いされ気候危機を止められるものにはならないし、「人間らしく働ける雇用のルールの確立や貧困、格差の是正と一体に進めて」(赤旗社説)行くことは「利潤」「市場原理」のままではハナから無理だろう。

■「グリーン・リカバリー」の不都合な真実

 誤解無いように改めて確認したい。現在、ドイツなど欧州で先行実施されている「グリーン・ニューディール(リカバリー)」「緑の成長」は、(やらないより)実施されることにより環境負荷の低減になることは明らかだ。省エネ住宅を拡大し、自然エネを電源の大半まで拡大し、石炭火力やガソリン車を全廃するだけでも大いに違うだろう。しかし、革新的ではあるが、本当に危機回避になるのか?気候危機は猛威を振るい乾燥や洪水・熱波等の災害による難民の増大やグローバルサウス(発展途上国)への矛盾の押し付けは現実に止まるのか?

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 国連IPCC「1.5度特別報告書」は、2030年までに大気中への温室効果ガス(その大半はCO2)の排出を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロを達成求めている。

 目標とされている肝心の二酸化炭素の「2050年実質ゼロ」に先進国が「グリーン・ニューディール」計画によって、仮に到達しても、世界規模で温暖化停止とはならない。一部の途上国がそれに賛同していないからだ。産業革命以後大気中二酸化炭素は約130PPM増大したが、その大半は先進国に責任があるとされており、とすれば先進国はよりラジカルな目標設定が必要だ。つまり、先進国の「緑の成長」派の目標数値ですらそもそも不十分なのである。だから、グレタさんらはもっと大きな削減数値目標(NDC)を自国政府に求めている。ゆえに、それは「気候正義」と言われる。

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 各国の二酸化炭素排出量は、産業連関がグローバル化した現代では、発展途上国に転嫁されているケースが多いので分かりづらい。しかし、世界の大気中の二酸化炭素濃度推移(図)を素直にみれば、右肩上がりの上昇をやめる気配はない。

 統計には美辞麗句もごまかしも通用しない。世界の経済成長(3~4%)は徐々に低下しつつあるが、二酸化炭素増大の趨勢は低下どころか加速しつつある。ある試算では50年までに世界の実態経済規模(GDPではなく物質の消費量)は、「省エネ」や「効率化」にもかかわらずこのままではさらに17%は増大すると推計されている。現実問題として二酸化炭素排出だけが急速に低下することはありえない。

 先進国がよりラジカルに二酸化炭素削減をするためには、斎藤幸平が言うように成長を止めなければならない、いや経済成長から「脱成長」へとシステムチェンジが求められている。大切なことは「脱成長」は単なる「経済減速」ではない。利潤や賃金制度を廃止し市場経済を廃止しなければならない。気候危機はまさにこのような「システムチェンジ」を突き付けている。つまり、資本・企業中心で労働を疎外する経済から、人間中心の経済=協同体に奉仕する経済への転換でなければならない。共産党はこの肝心なことに踏み込もうとしないのだ。

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 また、市場任せの「緑の経済成長」路線は、現実には雇用を拡大どころか雇用すら守れない可能性がある。つまり、資本主義はいつものことだが、エネルギー転換・産業転換の際は大量の失業者を生み出す。先行する欧州電気自動車(EV)革命により、事実、大量解雇の恐れが問題化しつつある(ロイター9/9)。技能労働者のミスマッチも大量に発生しうる。労組も懸念を深め労働者の抗議活動も活発化してきた。「市場」「企業利潤」に手を付けないならば、レベルの低い緑の経済成長派の数値すらクリアできない可能性が高い。

 もちろん、リチウム電池の原料レアメタルの乱獲も憂慮すべき問題だ。資本は良いとこだけつまみ食いし、抜け道で大儲けを目指すだろう。市場の誘導つまり補助金・減税・カーボンプライシングなどで資本は恭順しないだろう。気候危機対策としては、当座だけの問題としても利潤や市場の強力な規制が避けられない。
(山崎昭一)  案内へ戻る


 杉田水脈真っ青――同性愛者は社会的に有利なので進化した という最新研究 

■同性愛者は「生産性が無い」?

 「新潮」2018年8月号に、自民党の杉田水脈衆議院議員が寄稿した記事。「生産性のない」LGBT(Q)、とくに同性愛への優遇が行き過ぎであるとして、LGBTへの税金の投入を控えるべきであると主張した。同性愛を敵視し意味がないと切り捨てるひとつの典型的思考類型だ。国会議員の、この時代錯誤の発言には多くの批判が巻き起こった。

 そればかりではなく、一部の宗教なども同性愛を「罪」として禁じてきた。「神の摂理に反する」「男女の自然の在り方ではない」等。

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 ところが動物界を観れば、同性愛が広く存在してきたことの方が「摂理」であり「自然法則」であることはすぐわかる。多くの(特に社会性の高い動物・・ボノボやイルカ)に見られる事象だ。特に不思議なものではない。そればかりか、部族社会など前近代化の社会でも同性愛カップルは存在したことが示されている。決して異常でもまれなるものでもない。 研究によれば性的少数者は全ての文化に存在する、そして異性愛者や両性愛者が人口に占める割合は時間とともに安定する(定まる)らしい。つまりこれは遺伝的な問題であり、進化的なレベルの考察がまずは大切だ。

 子供を産めないことは生物進化(自然淘汰)上不利であることはだれしも考える。ところが同性愛的行動が社会性の高い動物や人間では遺伝的に組み込まれているとすれば、同性愛などの遺伝的資質の獲得は、社会的文脈(社会的進化)の中でのみ理解可能だろう。

 とはいえ、人間において同性愛が具体的にどのように社会的「利益」「優位」があり、それが遺伝として(伝統や文化だけでなく)人類に組み込まれ一定の比率で生存するのかはまだ議論のあるところである。

■性の人類的進化としてのLGBTQ

 イルカの若者たちによる同性愛は、年齢的なものであることがすでに指摘され、その後の成熟した異性との関係の「準備行動」として進化したと解釈される。

 ボノボはチンパンジーから二百万年前に「枝分かれ」した。彼らの社会は同性愛と言うより「性の氾濫」として表現される。この社会で「性」は、潤滑剤として頻繁に利用される。チンパンジーとボノボは姿がよく似ているが、社会の性格は大いに違う。前者の集団では、喧嘩や抗争が多発するし、子殺しなども起きる。また、外部集団との殺戮の戦争も起きる。ところが後者のボノボは、内部的にも外部的にも抗争が極端に少ない。また、オスの位階制(αオスを頂点とする順位)が存在せず、メスが社会的に優位を占めているという。平和な社会集団だ。これを実現しているのが「性の氾濫」だと考えられている。

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 では、人間社会での同性愛はどんな意味があるのだろうか。進化としてDNAに取り入れられたならある種の「利益」(社会全体としての)があるのは確かだろう。だが、上でも述べたが、定説と言われるものはまだない。最近目にした研究の結論は次のようなものである。

 「同性愛的な魅力のある人は社会的流動性・統合・同性同士のつながりといった多くの利益を得られるため、人類において同性愛や同性愛的魅力が進化した」(同性愛は人類にとって社会的な「競争優位性」があったから進化してきた- GIGAZINE)。

 同性愛がとくに欧州キリスト教社会で迫害の歴史をたどってきたことを考えると、これは矛盾するように聞こえるが、あくまで人類進化の数百万年のスケールの話だ。

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 進化とは「気まぐれ」だと言われる。たとえ話だが、一部の爬虫類で保温のために羽毛が生えた。彼らの中の一部が「手」に生えた羽毛で滑空しそののち数千キロも大空を飛ぶようになった。鳥の登場である。保温のための羽毛が全く別の機能(飛行能力)をもたらせた典型例だ。

 それと同じように「性」が繁殖に由来していることは杉田水脈に教えをいただかなくとも誰でも知っている。しかし問題は、この「性」が新たな進化を遂げつつ全く別な社会的意義を獲得しているということなのだ。

 イルカやボノボの例でもそれは知られるが、人間のそれとは同じではない。人間がそれらしくあるのはまた別の意味を持つのだろう。人間は思い上がりを捨ててもっと自分を知るべきだ。LGBTQの存在は人類史を新たな側面から照らし出していると言っても大げさではない。宗教や保守的な偏見から自立しつつ理解を深めよう。(アベフミアキ) 案内へ戻る


 読書室 堤 未果氏著『デジタル・ファシズム:日本の資産と主権が消える』NHK出版新書2021年8月

 ○ 現在、コロナ禍の裏でデジタル改革という恐るべき「売国ビジネス」が進んでいるのを読者はご存じだろうか? グーグル、アップル、フェイスブック、マイクロソフト、またバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの米中巨大テック資本が、行政、金融、教育の、日本の“心臓部"を狙っている。デジタル庁創設、5Gでつなぐスーパーシティ、スマホに振り込まれるキャッシュレス給与、グーグル等と連携したオンライン教育、マイナンバーへの各種情報の一元管理等……。今こそ、私たちにはあまり知らされずに急速に展開されつつある「日本デジタル化計画」の全貌をしっかりと知るべき時なのである ○

 2021年9月1日、内閣にデジタル庁が設置された。その所掌事務は、①内閣補助事務で、デジタル社会の形成のための施策に関する基本的な方針に関する企画立案・総合調整であり、②具体的な分担管理事務は、デジタル社会の形成に関する重点計画の作成及び推進、個人を識別する番号に関する総合的・基本的な政策の企画立案等、マイナンバー・マイナンバーカード・法人番号の利用に関すること並びに情報提供ネットワークシステムの設置及び管理、情報通信技術を利用した本人確認に関する総合的・基本的な政策の企画立案等、商業登記電子証明(情報通信技術を利用した本人確認の観点から行うもの)、電子署名、公的個人認証(検証者に関すること)、電子委任状に関する事務、データの標準化、外部連携機能、公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)に係る総合的・基本的な政策の企画立案等、国・地方公共団体・準公共部門の民間事業者の情報システムの整備・管理に関する基本的な方針の作成及び推進、国が行う情報システムの整備・管理に関する事業の統括監理、予算の一括計上及び当該事業の全部または一部を自ら執行すること、実に詳細で広汎にわたるが、問題は私たちがそれをよく認識していないことである。

 しかも特筆すべきは、デジタル庁組織の巨大な権力にある。それは、デジタル庁の長及び主任の大臣は内閣総理大臣であり、内閣総理大臣を助け、デジタル庁の事務を統括するデジタル大臣を置き、内閣補助事務を円滑に遂行するため、関係行政機関の長に対する勧告権等を規定している。また副大臣一人及び大臣政務官一人に加え、デジタル大臣に進言等を行い、かつ、庁務を整理し、各部局等の事務を監督する内閣任免の特別職として、デジタル監を置く。そしてさらに全国務大臣等を議員とする、デジタル社会の形成のための施策の実施の推進等を司どるデジタル社会推進会議を設置するというのである。

 このような施策で日本はどのように変わるのか。それを教える本書は実に貴重である。

 それでは本書の構成を紹介しよう。

プロローグ
第Ⅰ部 政府が狙われる
第1章 最高権力と利権の館「デジタル庁」
第2章 「スパーシティ」の主権は誰に?
第3章 デジタル政府に必要なたった一つのこと
第Ⅱ部 マネーが狙われる
第4章 本当は怖いスマホ決済
第5章 熾烈なデジタルマネー戦争
第6章 お金の主権を手放すな
第Ⅲ部 教育が狙われる
第7章 グーグルが教室に来る!?
第8章 オンライン教育というドル箱
第9章 教科書のない学校
エピローグ
参考文献

 このように堤氏は、「日本デジタル化計画」を三つの視点から、日本の未来が、すなわち政府が狙われる・ マネーが狙われる・教育が狙われる、と解明しているのである。

 まず政府が狙われるとの視点から紹介していこう。2021年5月12日、「デジタル庁設置法」と「デジタル社会形成基本法」など、合計63本の法案を束ねた「デジタル改革関連法案」が参議院本会議で可決されたが、当然にも事の重大性にもかかわらずコロナ禍での国会の論議はまったく充分ではなかった。実に悔やまれることではある。

 このデジタル庁創設には、注目に値する大きな特徴が三つあるのだ。

 一つ目は、先に見たように権限がとてつもなく大きいことだ。この官庁は内閣の直轄機関であり、その担当大臣は内閣総理大臣を直接補佐する立場となる。そして通常は閣議決定を通さないと出せない他の省庁への勧告も直接出せるほどの権限がその担当大臣に与えられるのだ。かくしてデジタル庁は内閣府より上位に位置する官庁となったのである。

 二つ目は、巨額の予算がつくことだ。年間予算は8千億円、菅総理はこれに一兆円上乗せした。今後、日本は脱炭素とデジタル化に力を注ぐことを国際公約したのである。

 三つ目は、民間企業とデジタル庁の間の「回転ドア」だ。この官庁の予定職員数は5百人、内百五十人の管理者・技術者を民間企業から迎え入れる。このことを平井担当大臣は人材不足を解決する妙案と考えているようだ。だがまさにこれは利益相反と同義であり、政府の内部情報が筒抜けとなる事態が出来するのは想像するに堅くない。このことの前では個人情報の安全な管理など、全くの夢物語となるの他はない。まさに一事が万事である。

 世界ではズームやキックトックによる情報漏洩や個人情報の収集が問題視されている中にあって、日本では歴代総務大臣の危機意識の欠落により、民間業者がやり放題である。

 スパーシティ法にもグレーゾーンがある。行政から「公共性」がなくなるのである。

 次にマネーが狙われるとの視点から見てみよう。韓国・中国と比較して日本は驚くほどの現金決済の国である。しかし韓国は世界一のキャッシュレス決済はカード地獄となり、中国では私生活が丸ごと監視され、当局は「信用スコア」で審査し当局に睨まれた個人はキャッシュレス決済ができなくなり、ほとんど生活が出来ないまで追い詰められている。このように今や中国は、まさに悲惨なまでの監視社会となっているのである。

 またキャッシュレス決済には様々な利権が絡んでもいる。さらにスマホに給与が振り込まれるとなると地方銀行は息の根を止められる問題も生じてくる。商店等も大打撃だ。

 東京オリンピックでの悪行が知れ渡った竹中平蔵氏の「ベーシックインカム」論も、今後日本をどのような社会に変えようとしているのかの視点から考えてゆかねばならない。

 最後に教育が狙われているの視点では衝撃を受ける。政府は「GIGAスクール構想」の名の下に四千六百億円を投入し、一方で全国の公立小中学校のインターネット通信環境を整備する予定であり、他方ではグーグルに全国の児童・生徒情報を集中するのである。

 先進国アメリカでは成績が低位部の生徒には軍隊のリクルーターが接触するのだ。ここでも教育行政は重大な問題意識を欠如させているといえる。また全教室にタブレットが導入されると、徐々に教育現場が変化していく。自分が考えるという教育の根本が忘れられ、時間の経過の中で子供は「タブレットがないと全部自分の頭で考えないといけない」というようになる。すなわち教育という名のパソコン操作術と全国画一のオンライン授業が導入され、配置される教員はそのオンライン授業の理解度等のチェックをするなどの補助的役割を担うまでになってしまいかねない。

 こうして公教育はデジタル化の中ですっかり破壊されてゆくのである。

 以上、簡単に本書の核心部を紹介した。本書の刊行をデジタル庁創設日に設定した堤氏の問題意識は、書名に鮮明である。ぜひとも皆様に本書の熟読を勧めたい。(直木) 案内へ戻る


 何でも紹介・・・「コロナ禍の医療現場」からの警鐘と提言日本の医療崩壊をくい止める 共著、本田宏・和田秀子 泉町書房刊

●医療崩壊の告発

 この本には、医療現場からの告発の生の声があふれている。私自身も医療従事者の一人であり、この本を読み始めてすぐに、ここに書かれていることは、自分たちが現場で体験してきた事と全く一緒であると気がついた。

 特に「日本の医療は、コロナ以前から起きていたの」という女性医師の訴えは、まさにその通りだと実感する。

 医師不足のもとで過酷な長時間労働の末、脳血管疾患や心筋梗塞による過労死、精神疾患による過労自死などが後を絶たない現実。疲弊し心身を蝕む、看護師たちの過酷な環境。血のついた汚物を洗浄する業務に就いていながら、危険手当も支給されない委託職員。

 そうした人々の事例ひとつひとつが、私が職場で遭遇してきた出来事と重なり合って、そのたびに憤りの気持ちが湧いてくるをのを禁じ得ない。

●現場医師の目

 共著者の一人、本田宏は外科医として長年埼玉県の公的病院に勤務する中で、医師の過酷な長時間労働、その背景にある国の医療費抑制策と医師数抑制策を、身をもって体験してきた。その体験をもとに、新自由主義的な医療政策を告発し、変革を求める市民運動を始めたという。

 もう一人の和田秀子は、ジャーナリストとして全国の医療機関を訪問し、過労自死した小児科医の遺族、公的病院の看護師、委託職員などに会い、現場の生の声を取材している。

●感染爆発の中で

この本が出版されたのは、今年の二月であるが、その後デルタ株を中心とした爆発的拡大により、感染者数はこの時点の十数倍にも達している。

 「野戦病院のような臨時入院施設の開設」を求める声は、各地の自治体の長、地方の医師会長、医療団体から上がっているのは当然のことだ。

●大増員と人材育成

 そのためには、医師、看護師、医療技術者の大増員が必要であることを忘れてはいけないと思う。

 しかも専門的知識技術を持つスタッフの大増員は、ワクチンの接種要員やオリパラの救護要員のような単純なわけにはいかない。

 まずコロナ重症病床の増員が中軸になり、そのためには最低でも数ヶ月の研修を要する。それも全くの初心者には無理なことで、呼吸器科の熟練したスタッフの配置移動を伴うことになる。

 そうなると呼吸器科の補充が必要になり、循環器、心臓外科、整形外科などすべての部門にわたる大増員、トレーニング、配置移動の一大プログラムを組まなければならないと思う。

 だが、いずれそうなることは、一年半も前から十分予測できていたはずである。国や自治体の医療行政のトップは、強力なリーダーシップを発揮する責務があったはずだ。

●切実な提言

 今となっては「遅きに失する」と言わざるをえないが、しかし「今からでも遅くない」と思い直して着手しなければならない。すでに起きてしまっている医療崩壊の現実を前に、医療機能の再構築をしなければならない。

 この本には、さまざまな立場からの「提言」が掲載されているが、それらは決して机上の空論として提出されたものではない、現場の苦闘の中から、最低限これだけは緊急にやるべきという、現実の必要に迫られた叫びとして受け取るべきである。心ある皆さんに、ぜひ読んでいただきたい。(夏彦)


 コラムの窓・・・ヒロポンと特攻!

 1930年9月生まれ(90歳)の梅田和子さんは43年の大阪府立大手前高等女学校に入学し、45年1月、高槻市への疎開に伴いに府立茨木高等女学校に転校。学校におかれた大阪陸軍糧秣廠の支所で勤労奉仕をすることになり、その仕事は校内にあった「覚せい剤入りチョコレート」包装工場で与えられた〝任務〟は、「チョコレート工場では生徒がチョコレートを盗むので、それを監視して誰が何本盗んだかを教師に報告すること」でした。

 「上級生たちは梅田さんに与えられた〝密命〟を見抜いていたのか、梅田さんをその日のうちに屋上に呼び出し、15センチほどの棒状のチョコレートを何本も見せ、その中の1本を差し出し、『これを食べろ』と迫った。裕福な梅田さんの一家だったが、そのころの食糧難はひどく、長年食べたことのないチョコレートであった。ひとくち食べるとカッと体が熱くなり、何らかの薬物が入っていることは、子どもの梅田さんにもわかった。上級生は『これは特攻隊が最後に食べるもので、何か入っているみたいだ』と説明した」

 「チョコレートは今でいうチョコバーのようなもので、『菊の御紋』があった。それをハトロン紙のような紙に包んで箱に詰めた。工場には兵士が数人おり、チョコレートを運んできて、箱詰めされたチョコレートを運び出した。将校が工場を管理しており、朝の9時から午後3時までが勤労奉仕の時間だった」

 「覚せい剤を兵士に与えていたのは日本軍だけではない。ナチスドイツはもちろんのこと、連合軍側の米軍、英軍も使用していたといわれている。戦争という命を奪いを兵士にさせる時、国家権力は残酷なことをするということがよくわかる。麻薬も含めて米軍の薬物使用は、ベトナム戦争でもアフガン戦争でも同じことだった」

 *以上、「『ヒロポン』と『特攻』・女学生が包んだ『覚醒剤入りチョコレート』 梅田和子さんの戦争体験からの考察」より。

 本書の著者相可文代さんは梅田さんの証言の意義を、菊の紋があるヒロポン入りのチョコレートを包んだという証言によってその事実証明したことにある、と述べています。今でこそヒロポンは覚醒剤だと認識できますが、1940年代の日本はヒロポンに使われるメタンフェタミンが劇薬で副作用、中毒性があることを認識していなかったのです。

 なので、「疲れをとる」「眠気を覚ます」「兵隊の士気高揚」のメリット面にのみ強調され、1941年に大日本製薬メタンフェタミン製剤「ヒロポン」(覚醒剤)、武田長兵(武田薬品工業の創業家)はアンフェタミン製剤「セドリン」(覚醒剤)を海軍、陸軍に大量に納入しました。軍が率先して入手していた訳で、当然こられは第二次世界大戦中、膨大な量を投与あるいは常用していたようです。

 特攻隊員に菓子袋に入れて支給し、製品は「ヒロポン」の周りをチョコレートで包み『菊のご紋章』を付けて納入していたようです。「知らぬが仏」といいますが、当時の兵士は覚せい剤を服用して気持ちを奮い立たせたのでしょう。

 何という残酷な死! 尊い犠牲、英霊などと特攻を美化するのは間違いです。敗北が約束された戦争に若者たちを狩り立て、無意味な死を強制した連中を免罪する愚かな〝特攻美化〟は新たな戦争への道を開くことになるのではないでしょうか。 (晴) 案内へ戻る


 本の紹介 「武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか」著 武建一 発行所 旬報社

 著者である武建一さんは、全日本建設運輸連隊労働組合関西地区生コン支部(以下関生支部という)執行委員長です。

 まず労働組合を語る上で、関生支部は強い労働組合として有名です。関生支部への警察と大資本による弾圧事件についてみていきます。

 関生支部を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月でした。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。

 その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕しました。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。

 業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。

 1965年関生支部ができました。その時の考えとして関生支部は、「企業の枠を超え、同じ業界で働く労働者が同じ目線で資本と対峙しなければならない」「個別企業を相手にするだけでなく、その企業を動かしている背景資本への闘いを強化しなければならない」「個人加盟を原則とし、外に開かれた多数派を形成しなければならない」「要求、交渉、行動を統一しなければならない」としています。

 関生支部の強さは、産業別労働組合にあると思います。同じ業界ですが違う企業で働く労働者はライバルではなく仲間です。同じ労働組合の組合員として、団結して闘うことになります。だからこそ関生支部は、今まで例えば、「正月三が日以外にも休みがほしい。雨が降って仕事がなくなっても賃金を払ってほしい。トイレにもトイレットペーパーを置いてほしい。せめて仮眠時間をもう少しほしい」という要求を、闘いを通じて勝ち取ってきました。

 2018年の関生支部への警察や大資本による弾圧をみると、関生支部は直接の雇用関係のない企業にもストライキに協力するよう働きかけたことが、「業務妨害」とされました。企業内労働組合であれば、社外の人間が説得に訪れることは「業務妨害」に見えるのでしょう。しかし産業別労働組合は、業界全体の労働条件改善を求めて闘うことは当然です。関生支部は、京都の生コン会社で常用的な日々雇用労働者として働く従業員を正社員に雇用するよう求めたことが、「強要未遂」に問われて逮捕者が出ました。

 今回の警察や大資本による関生支部への弾圧は、彼ら側からの労働者への攻撃であり断固はねかえしていかなければなりません。と同時に、現在の停滞する労働運動の転換が必要です。(河野)


 「沖縄通信」・・・辺野古はジュゴンの故郷

 皆さん、沖縄のジュゴンはどうなったか?知っていますか?

 私が沖縄で生活をしていた頃は、毎年ジュゴンが辺野古沖に表れて辺野古周辺の海を泳ぐ姿をテレビや新聞で見ることができた。

 ところが、辺野古新基地工事が始まると警戒心の強いジュゴンはなかなか辺野古の海に姿を見せなくなった。

 環境省は沖縄県で実施した絶滅危惧種ジュゴンの昨年度の生息調査で、沖縄県北部の古宇利島や西表島の周辺など複数海域でも海草を食べた跡が確認したと発表。また、昨年8月から今年の1月にかけて八重山諸島と宮古諸島の複数海域でも海草を食べた跡が見つかっている。

 衝撃的な出来事は、2019年3月に古宇利島周辺を主な生息域にしていたジュゴン1頭が死んで発見された。また、辺野古周辺の海に時々姿を見せていた2頭を確認することができなくなった。

 ジュゴンを守る運動を続けている「SDCC」(ジュゴン保護キャンペーンセンター)は、「 沖縄ジュゴンをまもろう、辺野古の工事を止めよう!ジュゴンの鳴き声を公表せよ。土砂運搬船の夜間航行を停止せよ」の署名活動を取り組んでいる。ネット署名は外国からも多く寄せられて3万筆を超す勢いである。

 その署名の趣旨は次の様な内容である。

1.辺野古大浦湾の埋め立て工事を中止し、沖縄ジュゴンの調査を行うこと。
2.「ジュゴン絶滅論文」を執筆した環境監視等委員会の委員3名を解任すること。
3.ジュゴンの鳴音音響データを公開すること。

 特に、2.の委員3名の解任の問題は、埋め立て工事に関する環境保全を防衛省の下で議論する「環境監視等委員会」に所属する3名の学者を含む5名の学者が、「沖縄のジュゴンは2019年に絶滅した」との論文を英国の科学誌に投稿したことが明らかになった。

 しかし沖縄のジュゴンは生きている。環境省の調査でも、昨年6月古宇利島の海域で海草を食べた跡が確認されている。「沖縄ジュゴンは絶滅した」と考えている委員に、ジュゴン保全策を議論する資格はない。

 防衛省は大浦湾の埋め立てを始めるために、夏季にはサンゴが弱るため作業を行わないという沖縄県との約束も全く無視して、大浦湾のサンゴの「移植」を開始した。

 「移植」されたサンゴは毒性のある樹脂系の接着剤で岩場に貼り付けられている。「移植」先には別のサンゴが生息している。それぞれの種類に適した生育の条件があるところで、サンゴは育っていく。「移植」サンゴが死滅する可能性が高いばかりか、先住のサンゴの生存条件も脅かす。これは「移植」ではなく、まさに「破壊」である。
 辺野古大浦湾の埋め立てが、生物多様性に富む環境を破壊することが、ますます明らかになっている。

 最後に、「ジュゴン保護キャンペーンセンター」は沖縄ジュゴンを守り、玉城デニー知事の埋め立て設計変更不承認を支持する世論を大きくし、埋め立て工事の中止を実現するために、下記のような呼びかけをしている。(富田英司)

 ★岸信夫防衛大臣の国会事務所に、電話、FAX、ハガキなどで訴えて下さい。
 ★宛先/〒100-8981 東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第1議員会館1203号室
           Tel:03-3508-1203  Fax:03-3508-3237
 ★訴えの内容/「辺野古新基地建設工事を中止し、ジュゴンの調査をしてください」 案内へ戻る


 「読者からの手紙」・・・困窮の20代女性の叫び

 9月23日の東京新聞の1面記事を読んで考えさせられた。

 20代後半の女性が勤めていた番組制作会社は、10日間帰宅できないこともあるほどブラツクな職場だった。さらに父親が1人暮らしの自室や職場などに押しかけて暴力を振るうことも。仕事量がさらに増えたタイミングで急に出社できなくなり、退職。病院ではうつと診断された。

 家賃を払えず部屋を出た後は、派遣などで働きながら、ネットカフェや月決め賃貸マンションを転々とした。コロナ禍になるとその仕事も回ってこなくなり、収入が途絶えた。

 所持金が、1円玉1枚と505円分の電子マネー。飲まず食わずが3日間続き、靴には穴が開いていた。急に厳しくなった寒さが体にこたえ、夜は眠らず歩き回り、昼に駅前のベンチなどに座って仮眠した。

 困窮者支援の相談サイトにメールを送った。同時に相談メールを送った都の窓口からは「まず、電話を」と返信が来たが、携帯電話の料金未払いで通話出来なかった。その後、ふと相談サイトのメールを見ると、「一般社団法人・反貧困ネットワーク」の瀬戸大作さんから連絡があり、会うことが出来た。瀬戸さんの話を聞いていると、もう涙が止まらなくなったと言う。

 この女性を取材した記者は、記事の最後に次の様な問題を指摘している。

 「反貧困ネットを通じて、困窮した同世代の女性の悩みを聞くことが増えた。みんな非正規労働で働き、誰にも相談できず生きてきた。総務省の調査によると、労働者のうち非正規職員・従業員が占める割合は、今年7月現在で15歳~24歳が47.9%、25歳~34歳が22.3%。『今の若者はこれまで国が何かをしてくれたのか、という思いがある』と痛感する。自民党総裁選の喧噪が伝えられる中、次の日本のリーダーにこんな思いを託す。今日を生きるので精いっぱいの人が大勢いる現状に、まずは目を向けてほしい」と述べている。

 最後に、この記事のタイトルは「今日を生きるので精いっぱいの人、大勢いる現状にまず目を向けて」となっている。(団塊世代)


  読者からの手紙  内閣支持率の11ポイント上昇にあーあ!

 9月18日の毎日新聞の最新全国世論調査では、菅内閣の支持率は37%で、政権発足以降最低だった前回の26%から11ポイント上昇。不支持率は55%で前回(66%)より11ポイント下がった。これは、この間の総裁選挙のバカ騒ぎの成果である。

 またこの調査で次期衆院選の比例代表で投票したい政党を聞いたところ、自民党は35%で前回(24%)から11ポイント増えた。その他は、立憲民主党14%(同14%)▽日本維新の会7%(同8%)▽共産党6%(同6%)▽公明党5%(同4%)▽れいわ新選組2%(同2%)▽国民民主党2%(同2%)――などで、「まだ決めていない」は28%(同37%)だった。自民党の復調に比較しての野党の現状維持には絶望あるのみ。

 9月8日に四野党が共通政策を掲げることに合意したのにこのような結果であり、とくに菅内閣の支持率が最低だった前回の26%から11ポイント上昇には思わず、あーあという他はない。立憲や他の野党も自民党の支持率の半分以下のていたらくなのである。

 枝野氏等のやる気のなさ、一言で言えば政権を奪取するとの覇気のなさが、この支持率の低迷を唯一説明可能にするものであろう。有権者はしっかりと彼らを見ているのだ。

 そもそも立憲とは、かつての民主党と同様に与党でもなく野党でもないゆ党である。立憲を評価する時に注目すべきは、今言っていることではなく、今やっていることである。この間のテレビで、枝野氏は党の経済政策は今は江田憲司に全て任せていると言っていた。つまり総選挙では、自公は今井尚哉氏、立憲は江田憲司氏の(元経産官僚の)二人が「新自由主義からの転換」を競い合って、どちらが有権者をよく釣れるかの競争にするのだ。この写真を見よ!長妻氏ははぐれ鳥だ。枝野氏は立憲党内で今一体何をしているのか、どのような行動をしているのか。私たちには不明なことばかりである。

 確かに菅政権は対コロナ感染政策を誤った。ではしかし立憲等の野党に、自公に優位する政策があったのか。そんなものはない。むしろ菅政権のコロナでの失敗が自らに有利に働くとの読みと思い込みがあった。だが菅政権の自滅を待つなどは最低の戦略である。

 こんな野党が数合わせをして自公を破ぶれると考えるなどは全くの幻想である。何より彼らから政権を奪取するとの大志・大望がなければならない。これこそコロナ禍で呻吟する有権者が待ち望むものである。それが感じられないでは支持は上がらないのである。

 まず労働者の生活と命を守り抜くことを鮮明に打ち出して行動すべきである。まずは労働者への緊急生活支援金の給付と緊急医療体制の拡充である。消費減税も当然のことだ。

 ここ十数年にわたって保健所削減を追求してきた自公政権、このように感染症対策をないがしろにしてきた自公政権に国防を論じる資格などないことは明々白々である。彼らを徹底して打ち据えよ。そしてコロナの感染処分類をただちに2類から5類へと変更し、保健所主導体制ではなく、地域病院主導体制に切り替えて入院可能者を大幅に増員させてゆかねばならない。そのためには医系技官の利権支配の厚生労働省の大変革が必要である。

 このことと合わせて、コロナワクチン全能幻想やコロナワクチン接種証明書体制の創設や発行にも反対して闘っていかなければならない。これらは実に喫緊の課題である。

 さらに80年代、日教祖の現場で行政と果敢に闘われた予防接種強制排除の闘いに学びつつ、幼児及び児童生徒へのワクチン接種の動きに反対しなければならない。ワクチンの副反応に関しては情報公開と大衆的な論議が今こそ求められているといえる。(猪瀬)


 読者からの手紙・・・ コロナ禍の私の生き方

 こんにちは。毎月、下手な川柳を投稿している読者の石井です。私の唯一の趣味、生き甲斐か海外個人旅です。1993年、当時80歳だった父に、「冥土の土産にドイツに連れて行ってくれ」と懇願されました。英語のできない私でしたが、いやいや初めての海外旅行を体験。見るもの全てが異次元の世界で、すっかり旅にはまり、「旅病」になってしまいました。それ以来、貯金を取り崩し、今では年金を浮かせるくらいのケチな生活に徹し、毎年、海外旅行を続けています。

 昨年の1月、東カリブ海の小国セントルシアとセントビンセントを旅したのが最後で、コロナ禍で行けなくなりました。テレビ番組でIPS細胞の山中教授が、「コロナは2~3年、収まらない」との話。そこで昨年4月、膨大な旅アルバムを断捨離しようと思いつきました。ワーカーズ紙などに投稿した原稿を地域・シリーズごとに本にまとめ、アルバムから写真を取り入れる。取り入れたらアルバムを廃棄する作業をしてきました。この1年半で、「父と旅したヨーロッパ」や南米編、南部アフリカ篇など6冊の本を作成し、旅アルバムも半分以上、断捨離。「断捨離は過去と未来のせめぎ合い」「断捨離が運んでくれた豊かな日」

 昨年3月までは、個人旅をする体力を維持するために、プールと温泉センターに毎日のように通っていました。心臓病の持病を持つ私は、感染リスクを恐れ二つとも断念。運動不足で、一週間で5㎏も増えてしまいました。「巣篭りの肥満散歩が膝を責め」。そこで2013年のスペイン巡礼600㎞踏破の時に使ったウォーキングポールを発見。これを使い、午前中、速足で10㎞2時間歩くようにしました。その後、風呂で30分の腹筋運動。朝晩は久しく使っていなかった3㎏のダンベルで、20分の体操。ようやく10㎏の体重減と次の旅のために体調を維持できるようになりました。川沿いで見るカモやコサギ、アオサギ、カワセミも楽しみます。川柳も数句浮かぶ時もあります。

 夕食作りも共稼ぎだったのをきっかけに40年間、続けています。今はボケ防止に家事をさせてもらっています。「リタイアが妻より先で主夫になり」「退職後妻が上司で指示が飛ぶ」「夕食の残りを食べる朝と昼」「べた褒めで夫の料理上手くなる」。午後は見切り品探しに、スーパーを梯子。食費の節約になります。「減る遠出増える散歩とお買い物」「野菜高すぐ売り切れる見切り品」「今晩のメニューを決める見切り品」「老いの知恵もやし料理が主役の座」。熟れた果物は「見切り品熟れた味ほど老いに合う」。見切り品の材料から、インターネットで色々なレシピを見つけ、チャレンジしています。昨年夏、米国に住む娘と孫が里帰りした際は、毎日6品くらい作って、喜ばれました。「無添加がマヒした味の治療薬」「薄味も手間をかければプロの味」「血圧に一塩抜けと味噌醤油」

 買い物は人々の生活も見えてきます。「プラゴミの邪鬼が持たせるマイバッグ」「スーパーも地元野菜の汗を売る」「朝取りの野菜は露で格を上げ」「解凍の秋刀魚安値で袖を引く」「乱獲に激怒秋刀魚の意趣返し」。レジでは「足形の睨みに並ぶレジの列」「釣銭が脳トレになるお買い物」「秒針のように急かせるセルフレジ」「お買い物飢えたマスクがよく喋る」。テレワークが多くなったのか、若い男性も見かけます。「時変わり新米パパの前抱っこ」

 旅の途中、うっかりミスやボケが増えたのをきっかけに、4年前から川柳を始めました。「毎日が探し物して日が暮れる」。月1回の句会の他に、今では2つの川柳雑誌と新聞へ投稿。入選した句を中心に、ワーカーズ紙に投稿させてもらっています。かつて、ワーカーズ紙に旅日記を投稿をしていましたが、一読者からブルジョア的と批判を受け、投稿を断念した経過があります。私の川柳に「今のところ、悪い評判は聞いていない」との会員の方のコメント。川柳を理解しない方から「ふざけるな、やめろ」と言われるのではないかと、毎月、危惧して投稿しています。

 断捨離の本作り、川柳作り、毎日の新メニューを考える夕食作り、それに次の旅のための運動と、毎日があっという間に過ぎていきます。「また旅がしたくて今も一万歩」「コロナ後を待つ愛用の旅カバン」「家飲みのワインラベルで旅気分」「膀胱が選ぶ機内の通路席」。私にとってはコロナ禍が、生き方を変えるきっかけになりました。「趣味の時だけは正気で生きている」「暮らし方衣替えして生き直す」「葉桜のように余生を生き直す」「老いてなお大事にしたい好奇心」「照れるのは夫で老いのペアマスク」

 以上、日常生活から作った川柳で、私の近況を書き綴りました。皆さん、お元気で!(石井良司)


 川柳2021/10/1  作 ジョージ石井

 ボケ防止のために、川柳を学び始めて4年になります。川柳誌や句会、新聞に毎月、投句して2年半、佳作や秀句などに選ばれた句を中心にワーカーズへ投稿しています。

 プラの海地球に響くレクイエム
 脱炭素人類守る合言葉
 アフガンの救助が嘆く危機管理
 二学期に国会はまだ夏休み
 過去最多メダル百歳在宅死
 総裁選大風呂敷が踊ってる
 総裁選アベノマスクの猿ぐつわ
 総裁選アベのカラーが見え隠れ
 星条旗アフガンに散る似非平和
 卒業の記念に渡米する総理

 たわいない話題が繋ぐ家族の輪(課題「丸い」)
 断捨離の果てに残った真の友(「品定め」)
 幽明を臨死体験語る謎(「ミステリー」)
 三枚に捌けば見える泣き所(「急所」)
 痴話げんか妻の涙に白い旗(「急所」)
 特措法コロナ穴から顔を出す(「穴」)
 コロナ後を見据え余生の衣替え(「衣替え」)
 入管の死へ背を向ける法治国(「背」)
 テレワーク増えて背広がふて寝する(「背」)
 無為無策帳消し図る辞任劇(「見世物」)
 民意無視総裁選の猿芝居(「見世物」)
 ぬるま湯と目を開かせるパラ選手(「湯」)


 色鉛筆・・・コロナ禍の中で 感染者がでる

 8月の末、私が保育士で勤務している園で感染者が出てしまった。園内は密にならないように配慮したり、消毒の徹底、暑い園庭でもマスクの着用等をやってきたが、朝子どもを送りに来た母親から昼過ぎに「父親がPCR検査をしたら陽性でした」という電話が入った。コロナ対策として家族に発熱があったら休んでもらうことになっていたのだが、父親は微熱だったのでいいと思ったようだ。Aちゃんをすぐ迎えに来てもらいAちゃんが発熱したらすぐに連絡をくれるように頼んだ。父親は自宅療養になり家族とは別室にいると聞き、同僚たちと話をすると「これでは家族が感染してしまうよね」「陽性なら隔離するべきだね」「もし自分が感染者だったらホテルでもいいから」「濃厚接触者なら実家にも帰れないし親戚の家にも行けない」「行く所がないね」幼い子どもがいる同僚は「子どもを連れて行くしかない」等と自分に置き換えて考えた。

 そして、2日後Aちゃんは発熱してPCR検査を受け翌日陽性と判明し、そこから怒涛の日々が始まった。その日すぐに緊急メールを配信して感染防止のために子どものお迎えをお願いし、翌日は休園することになった。突然のことでお迎えに来た保護者は「いつからですか」「先生からですか」と不安げに聞いてきたりしたが、私たちは「ご迷惑をお掛けしてすみません」「個人情報でお答えできない」と伝え、園内の消毒を行った。

 またAちゃんが登園した2日間の事実確認のためにAちゃんを保育した保育士が(夏季休暇だった人も)呼ばれ、Aちゃんが一緒に遊んだ子どもや給食中のテーブルの座った場所などを事細かく聞かれた。次の日保健所に報告したが保健所は感染者が多く手が回らず課の方で濃厚接触者を決めてほしいと言われ、課からまた事実確認をさらに事細かく聞かれたようだ。

 濃厚接触者の判断に時間がかかり、保護者からは「介護の仕事をしているのでうちの子が濃厚接触者かどうか聞きたい」「同居の祖父母が明日ワクチン接種をするが子どもは濃厚接触者ですか」等と多数の電話が入った。やっと濃厚接触者の判断がされたのは夕方で6人の子どもと2人の保育士が2週間自宅待機になった。

 私は夏季休暇中だったので濃厚接触者にはならなかったが、自宅待機になった保育士は幼い子供も2週間保育園を休み大変だったようだ。

 その後、Aちゃんと同居している家族全員が感染した。感染者が出たということで園の生活も見直され、密を避けるために送迎は正門の所で行ったり、給食のテーブルにアクリル板を置いて黙食をし、午睡も別室にして間隔を開けて寝る等私たちの負担が増えたがこれで感染が防げるのか疑問を感じながら仕事をしている。

 さらに自宅待機の2週間、濃厚接触者には毎日電話連絡をして検温と健康状態を聞いて、Aちゃんが登園した2日間に勤務した職員は全員毎日検温をしてこれらのことを毎日課に報告したのだ。

毎日報告したり、濃厚接触者かどうかと何度も聞いて調べる等ものすごい労力と時間をかけていたが、それよりもオリ、パラピックのように毎日PCR検査をすれば簡単なことだ。検査をすれば調査や報告に労力と時間をかけたり、濃厚接触者は2週間も休まなくていいと思う。緊急事態宣言を発令して飲食店等に休業や時短要請をするよりもどこでも無料でPCR検査ができるようにすれば安心で、陽性が判明したら療養施設に入所して家庭内感染を防ぐべきだ。

 濃厚接触者が休んでいた2週間、もし濃厚接触者から感染者が出たらクラスター発生になるかもしれないし、今度は私も感染したり濃厚接触者になってしまうかもしれないと不安な日々だった。9月に入って朝晩涼しくなりやっと2週間が無事に終わり安堵した。いつになったらコロナから解放されるのだろうか。 終息することを願いたい(美)
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