ワーカーズ634号 (2022/9/1)  案内へ戻る

 安倍元総理の国葬反対!
 自民党はカルト旧統一教会との関係を切れ!


 政府は8月26日の閣議で、安倍晋三元総理の国葬に2022年度予算の一般予備費から2億4940万円を支出すると決めました。警備費用などは、35億円ぐらいかかるようです。

 国葬には、法的根拠がないので実施すれば違法です。

安倍元総理の「国葬」中止求め 大学教授や作家など署名呼びかけ

 参議院選挙の応援演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理の国葬まで1か月余りとなる中、大学教授や作家などが、国葬の実施が憲法で保障する思想の自由に反するとして、中止を求める署名活動を始めると発表しました。署名活動を始めるのは、東京大学の上野千鶴子名誉教授や、作家の落合恵子氏、東海大学の永山茂樹教授、高千穂大学の五野井郁夫教授など17人です。

 17人は、9月27日に行われる安倍元総理大臣の国葬が法の下の平等や思想、良心の自由などを保障する憲法に反するなどとして、インターネット上で中止を求める署名活動を行うと。

旧統一教会は霊感商法や合同結婚式が社会問題に

 旧統一教会とはどんな団体か、フランスの経済紙「レゼコー」は襲撃事件後、欧米では「カルト宗教」と認識されていると報じました。上越教育大の塚田穂高准教授(宗教社会学)は「活動の基軸はあくまで宗教的理念と実践。その活動の中において多くの問題を抱え、人権侵害や違法行為を積み重ねてきた宗教団体だ。他の宗教一般と同列には扱えない」と話します。

 旧統一教会は教祖の故・文鮮明氏が1954年、韓国で創設し、間もなく日本でも布教活動が行われ、1959年には日本の旧統一教会ができました。ホームページによると、教義は文氏が考案した「統一原理」と呼ぶ思想・理論によって、理想の家庭や世界平和を実現する指針を与えると。

 宗教学者の島薗進氏は「ある時期までは、『異端のキリスト教』という枠内にあったと思うが、1970~1980年代にかけ、非キリスト教化し、同時期に霊感商法に傾いていった」と。島薗氏によると、新興宗教の中では比較的若い人の入信が多く、高学歴の者も少なくなかったと。「現代文明への失望感が背後にあった。また、離婚が増え始め、家族的な道徳基盤を求める人の流れもあっただろう」

 多くの信者を獲得したが、1980年代には、先祖供養などを名目につぼや宝石といった高価な品を訪問販売する「霊感商法」や巨額の献金が社会問題になりました。歌手の桜田淳子氏が1992年に信者であることを明かし、教団が配偶者を推薦する合同結婚式に参加したことも話題になりました。この合同結婚式は信者の「婚姻の自由を侵害する」として違法と判断された判決も出ています。

 2000年には、旧統一教会系の企業が米国の通信社UPIを買収したこともニュースになり、この企業は米保守系日刊紙ワシントン・タイムズも所有しています。

理念の近さで「右派政治家と互いに利用」

 旧統一教会が拡大していく過程で見過ごせないのが、政治との関係です。特に旧統一教会の実質的な政治部門として機能してきたのが、保守系政治団体「国際勝共連合」(勝共連合)だとされる。

 勝共連合は1968年、文氏が韓国と日本で設立しました。目的は反共運動。時代は東西冷戦が激しさを増し、米国はベトナム戦争を泥沼化させていました。共産主義の脅威が今より切迫して語られていました。初代名誉会長には、右翼の大物で戦後政界のフィクサーと言われ、日本船舶振興会(現日本財団)の会長を務めた笹川良一氏を迎えました。岸信介元首相を名誉実行委員長とする集会も開かれたと。

 塚田氏は「勝共連合の設立経緯から岸信介や福田赳夫といった理念的に近い保守政治家と結び付いていった」との認識を示します。その上で、「今は改憲や家族観、反ジェンダーフリーなどで考えが合致する政治家との距離が近い。団体にとっては理念の実現や運動が守られることへの期待があるのだろう。一方で、政治家は選挙などで支援が得られる。右派政治家と団体がお互いに利用し合う関係になっている」と。

第2次安倍政権でさらに接近

 問題となっている安倍氏との関係はどうなのか。

 「各地の紛争の解決に努力してきた韓鶴子総裁をはじめ皆さまに敬意を表します」。昨年9月、旧統一教会の友好団体「天宙平和連合(UPF)」が開いた大規模集会「シンクタンク2022 希望前進大会」に、安倍元総理がビデオメッセージを寄せました。

 鈴木エイトさんによると、安倍氏と旧統一教会との関係の深まりは、2012年総理に返り咲いて以降になり、憲法改正と長期政権を目指す安倍氏や自民党にとって、「組織票に加え、秘書や選挙の運動員などの人員を提供してくれる旧統一教会は有用な存在だった」。

 9月24日発売の週刊文春は、岸田文雄総理大臣の熊本の後援会長が、旧統一教会系団体の会議の議長だったと報じました。また、第2次岸田内閣では政務三役(大臣、副大臣、政務官)78人中旧統一教会との関連ありは35人もいます。
 カルト教団である統一教会との関係を切れない自民党政権、みんなの力で退陣させましょう。(河野)


 戦後最悪の安倍政権 ――安倍《最長政権》を振り返る――

 安倍元首相の死後、国論を二分した安倍政権に対し、〝安倍元首相の意志を継ぐ〟など、「神聖化」の押しつけが始まっている。9月27日には内閣の一存での国葬が設定されている。

 銃撃事件から二ヶ月になろうかという今、冷静に安倍政権の功罪について振り返ってみたい。………………

◆最悪の政権

 私は、安倍政権を性格づける言い方として、周囲の人に〝最低の政権〟ではないが〝最悪の政権〟だと言ってきた。なぜ〝最悪の政権〟なのか。それは、安倍元首相が《戦後レジームからの脱却》を掲げ、あの戦争への反省から再出発したはずの戦後日本を、再び戦前体制へと逆戻りさせる政治を貫いた、と受け止めているからだ。

 要するに「保守・反動」だ。今ではあまり使われなくなった言葉だが、《戦後レジームからの脱却》という旗印は、戦前の国家・国権至上主義体制の復権を目論むものだった。安倍元首相は《日本を取り戻す!》という選挙スローガンも掲げていた。本心は《〝戦前の〟日本を取り戻す!》ところにあったのだろう。

 同じような戦前回帰を意図したスローガンを掲げた政権は、以前にもあった。安倍元首相にとって母方の祖父に当たる岸信介元首相だ。《唱和の妖怪》とも称された岸元首相も、国粋団体や右翼の巨魁と結託したり、表の政治以外にも様々な場面で暗躍した。その岸政権も、日本の独立を果たすとして日米安保条約の改定を実現させた。が、これも、自立した平和国家の実現とはほど遠い、日米軍事同盟に依拠した戦争もできる〝普通の国家〟化の一里塚としてだった。

 中曽根政権も同じような政権だった。中曽根元首相は、安倍政権と同じような「戦後政治の総決算」という旗印の下、〝大統領的な首相〟を目指すなど、強力な国家リーダーが率いる国家体制をめざした。

 両者とも、民主主義という当事者主権、要するに国の主権者は国民ひとり一人にあるという民主主義国家の〝建前としての大前提〟を矮小化し、主権は《国民》にではなく《国家》にこそある、という立場からのものだ。

 それでも両者は、水面下ではいざ知らず、基本的な議会制民主政治のあからさまな蹂躙にまでは踏み込まなかった。

 安倍元首相は、戦後民主主義の根源とも言える戦争放棄や専守防衛体制の露骨な否定や、憲法条項や国家・政府の私物化など、あの戦争への反省など蔑視するかのような《逆流》《反動》に邁進してきた。あの戦争への反省姿勢の取りやめ、安保法制での解釈改憲、憲法条項を無視する臨時国会召集義務の拒絶、挙げ句の果ては露骨な公文書の破棄・改ざん等々だ。

 安倍元首相は、選挙に勝った自分は何をやっても許されるという、憲法や法律より、自分が上位だと振る舞った。《法治国家》を否定し、まさに《人治国家》化を推し進めたのだ。これらは憲法体制と民主政治の最低限のレッドラインを超えた悪辣なものだった。

 ちなみに、私が《最低の政権》と思うのは、政権発足直後の参院選に敗北し、元芸者の女性に「これで愛人にならないかと、指3本立てた」でスキャンダルに見舞われ、たった二ヶ月後に総辞職に追い込まれた宇野宗佑政権だ。

◆安倍政権の実績?

 岸田首相が《国葬》をするに値すると判断した安倍政権の実績・遺産とは何か。

 安倍元首相の《国葬》を一方的に決めた岸田首相は、安倍元首相の功績として、憲政史上最長の政権だったこと、日本経済を再生させたこと、日米同盟を基軸とした外交で米国の重要な同盟国としての地位を獲得したこと、などを理由として挙げている。

 しかし本当にそうなのか。むしろ安倍元首相が自身の内閣の重要課題に掲げたほとんどが失敗、あるいは成果なしに終わっているのが現実だ。

 以下、安倍元首相が掲げた政策課題をざっと振り返ってみる。

 イ)《戦後レジームからの脱却》

 憲法改定に関して、安倍元首相は《改憲4項目》を打ち出したが、首相のかけ声での憲法改正を忌避する声も多く、実現していない。

 安倍元首相は、第一次政権を発足させた直後、憲法改定に向けた橋頭堡のごとく、強引に教育基本法改定を実現させ、また、改憲の手続き法である国民投票法も成立させた。

 が、その強引な手法が反発を受けたり、従軍慰安婦問題などで、米国から歴史修正主義だと批判され、最後は本人の健康問題で退陣(政権放り出し)を余儀なくされた。

 第二次政権が発足すると、表向きはアベノミクスという経済・生活重視の姿勢を前面に押し出した。が、選挙が終わるたびに、国家改造にのめり込み、本来違憲とされてきた集団的自衛権の行使に道を開いた。15年の安保法制の強引な制定で、明文解決ではなく〝解釈改憲〟で軍事優先体制への道を突き進んだのだ。

 その解釈改憲でも満足できず、自身の政治遺産とすべく明文改憲としての〝改憲4項目〟を自民党として掲げるまでにいたった。それでも、憲法遵守義務を負う行政権のトップが主導する憲法改定には世論も批判的で、ついに明文改憲にまでは到達できなかった、という経緯をたどる。

 ロ)経済成長――アベノミクス

 《戦後レジームからの脱却》を実現させるために、まずは政権浮揚の思惑から有権者受けする、景気や生活を支える経済成長を目指したアベノミクス。財政出動、金融緩和、成長戦略という《三本の矢》を掲げたが、やったことは企業が一番活動しやすくするという法人税減税と大衆酷税の性格を持つ消費税引き上げだった。成長戦略は、ほとんど空振りで、経済規模では世界に占める比重は下がり続けている。

 しかし、大企業にやさしいアベノミクスで、結果的に多国籍企業や大企業の内部留保は膨らみ続けている。他方では、賃金は低下傾向から抜け出せないまま、ありもしない〝トリクル・ダウン〟という〝疑似餌〟にまんまと振り回された9年間だった。

 ハ)安倍政権下での経済の推移

 そんなアベノミクスの実績はどうだったか。第二次政権発足時の2012年と退陣時の2020年の経済指標がある。
   (表――1 挿入)
(表)アベノミクスの始まりと終わり――経済指標
       (朝日新聞 2020.8.29他より作成)
            2012年     2020年

  実質GDP     498兆円     485兆円
  潜在成長率      0・8%      0・9%
  日経平均株価   10230円    23208円
  為替相場     85円36銭   106円31銭
  実質賃金指数    104・5      99・9
  有効求人倍率    0・83倍     1・11倍
  完全失業率      4・3%      2・8%
  企業の内部留保 304・5兆円   484・4兆円
  国債残高      705兆円     947兆円

 この指標を見れば、アベノミクスの実態が浮かび上がる。円安で輸出企業を中心に企業利益は膨らみ、日銀の株買い(EFT)もあって確かに株価は上がった。雇用指数も改善したように見えるが、多くが非正規労働者の増加であり、団塊世代のリタイアで労働力人口そのものが減少した中での数値改善でしかない。

 他方で、日本の財政赤字は過去最大の1000兆円に迫り、世界でも最悪のものになってしまった。また、企業の内部留保も積み上がり、報酬が1億円を超える経営者が激増し、金融所得課税の優遇で富裕層が増加している。大量の株を持つことができる人は確かにアベノミクスの恩恵にあずかっているわけだ。他方では、相対的貧困率が高くなって、格差が意図的、傾向的に拡大されている現実がある。

 これがアベノミクスの到達点なのであり、アベノミクスが何のための、誰のためのものだったかが一目瞭然だ。

 ニ)外交

 安倍元首相の功績とされる《外交》でも同じだ。

 第一次政権で米国から歴史修正主義だと批判されたことを受け、第二次政権では何としてでも米国政権に食い込みたいとの思いから、就任前のトランプにわざわざ彼のフロリダの住居まで訪ねていったことも、その一つの現れだった。西欧の指導者が、トランプの排外主義に不信感と軽蔑心を抱いているとき、トランプとゴルフをしたり、関係を深めたわけだ。

○その米国政権への抱きつき戦略でトランプと話ができるということだけで、外交の国際舞台でそれなりに存在感を示せたということなのだろう。

○唯一の成果ともいえるのが、自由で開かれたインド太平洋戦略(=FOIP)だ。これは対中国封じ込めの思惑で安倍元首相が提唱したもので、その使い勝手を認めて米国政権も受け入れたものだった。とはいえ、これも安倍政権の功績というより、これまで単独ですべてに対応できた米国の圧倒的な軍事力による覇権が失われた結果だといえる。

 ホ)北方領土

 安倍元首相が政権の大きな課題に挙げ、自身のレガシー(=政治的遺産)にしようとした北方領土返還も頓挫した。

 安倍首相は、ロシアのプーチン大統領との個人的関係を深めることで返還を実現しようと、経済協力や27回にもおよぶ首脳会談を行った。さらに18年11月のシンガポールでの首脳会談で、最後のチャンスだとして、それまでの4島一括返還を棚上げして2島返還に転換した。が、最後はプーチン大統領に軽くあしらわれ、20年7月のロシア憲法の改定で「領土の割譲禁止」が盛り込まれるに至り、頓挫してしまった。

 ヘ)拉致問題解決――対話と圧力

 安倍元首相が内閣を改造するたびに「拉致問題の解決は安倍内閣の最重要課題」だとしてきた北朝鮮の拉致問題はどうだったか。

 拉致問題の本格的な解決のためには、植民地時代を含めた過去の清算、平和条約交渉との同時解決が不可欠だ。02年9月の小泉首相訪朝でもそれらとセットではじめて拉致家族5人を連れ帰ることができた。

 が、家族会と支援団体《救う会》の一部、安倍元首相などの対北朝鮮強硬派は、それが容認できない。《対話と圧力》という対朝スタンスに関しては、オバマ政権やトランプ政権が対話に傾いても、常に《圧力》優先の姿勢をプッシュしていたのが実情だった。

 そんな態度で金政権が日本の要求を受け入れるはずもない。それも承知の安倍元首相にとっては、北朝鮮と金体制は打倒の対象でしかない。仮にそれができなくとも、拉致事件や対外緊張を演出する〝瀬戸際政策〟など、金政権への批判は、安倍元首相や極右勢力にとって都合が良い反共宣伝の欠かせない〝外交カード〟として利用してきたのが実情だった。

◆安倍政権の負の遺産

 安倍政権が憲政史上最長政権になったことが、即、多くの実績を上げたからでは無いことは明らかだ。では逆に、安倍最長政権の負の遺産はどういうものだったのだろうか。

 安倍政権の罪については、これまでもことあるごとに指摘してきたので、ここでは箇条書き程度に止めておく。

 ・改憲による《戦争ができる普通の国家づくり》
 ・国家機密法(=特定秘密保護法)、共謀罪など、戦前回帰も含む国家中心主義
 ・モリ・カケ・桜での身内びいきの腐敗政治、公文書の廃棄・改ざん――政権の私物化
 ・安倍一強政治の確立で〝法治国家〟から〝人治国家〟へ
 ・利益を貯め込む大企業や増大する富裕層、対する賃金低迷と相対的貧困率の増加など格差拡大
 ・自由で開かれたインド太平洋――対中国封じ込め――新冷戦体制づくりへの主導的加担
 等など。

 最悪の政権だと言ったが、それはあくまで私たちの見方であって、むろん、安倍政権を評価する人たちもいる。それは株価上昇や利益増加でほくそ笑む企業の経営層や富裕層、それに戦前回帰や軍事優先を煽る右翼・保守派だ。

日本では若者の自民党や安倍政権支持層が多いと言われる。が、それは就職氷河期の若者などロスト・ジェネレーション世代より少しはましな、非正規でも自営業でも、条件を問わなければなんとか就業できるという、就業状況による。それに、自己責任論など新自由主義的な世論誘導のせいで、不満や怒りが政権批判に向かわないという政治風潮の結果でもある。

 これらは、日本では左派勢力の陣営が弱体化している現状の反映でもある。西欧や米国などではジェネレーションレフトとして若者の左傾化が目立つのとは対照的だ。

◆反転攻勢へ

 安倍政権は《最悪の政権》であったことを振り返ってきた。

 そんな中、安倍元首相への襲撃事件で、思わぬ自民党政権の〝暗部〟も露出した。旧統一教会との癒着だ。

 自民党はこれまでも、国粋団体のフィクサーや裏社会と通じ、あるいは統一教会や日本会議、神社本庁など、宗教団体との癒着もかねてから指摘されてきた。その他、産業界も関連する体制派の情報・教育ネットワークとも繋がっている。それが今回の銃撃事件を機に、統一教会と自民党、中でも安倍派とのズブズブの癒着関係が日々暴かれている。安倍政権が最悪の政権だというのは、これらも含めてのことだが、そうした実態が、必ずしも有権者や住民に十分伝わっていなかったのが現実だ。

 安倍政権に対する評価はもともと大きく分かれていたが、現時点での統一教会をめぐる癒着構造が露わになったことで、安倍元首相の国葬への賛否も大きく分かれている。むしろ批判意見が多いようだ。これは。市民・有権者が政治的健全性を保持している証左だろう。

 安倍元首相の国葬は、安倍政権の階級的・歴史的役割や負の遺産を覆い隠し、逆に、その神聖化を押しつけるものであって、その中止を突きつけていく必要がある。

 書店では安倍礼賛本が平積みになっているが(人集りはなし)、安倍政権の神聖化と礼賛の押しつけに反対し、安倍政治と対決できる対抗戦略と陣形を形成していきたい。(廣)案内へ戻る


  旧統一教会の教義の核心部分とは何か

 今回から旧統一教会に関する連載を何回か連載したいと考えている。

 まずは旧統一教会問題を考える上での前提となる教義の核心部分を解説する。

 勿論、旧統一教会は、教義はキリスト教の教典でもある新旧約聖書に基づくとしている。本当だろうか。以下の十の箇条書きを読み、読者にはその当否の判断をお願いしたい。

 ①アダムとエバがサタン(蛇)の誘惑によって犯した原罪とは、神の赦しを得ないで姦淫したことであり、それが人類の不幸の源泉である。

 ②アダムとエバの堕落以来の人類の歴史は、神とサタンの闘いとして展開しており、歴史上の大きな出来事であるルネサンス、宗教改革、世界大戦などのや歴史上の大きな思想・文化の諸潮流をこの観点から位置づけられる。

 ③天皇を含めて全ての人間は堕落人間であり、再臨のメシアによる「祝福」(=神公認のカップルになること)を受け原罪が清算されない限り、死後は地獄に行くしかない。皇室の祖先も含めて全ての人間は霊界では地獄にいるのである。

 ④死んだ人の魂は、霊となって子孫たちに働きかけており、各人の背後では、(歴史上の偉人たちを含む)神に近い先祖の霊と(歴史上の名だたる悪人を含む)サタンに近い先祖の霊がせめぎ合っていると見る。

 ⑤神とサタンの世界史的な闘いにおいて、神側とサタン側にそれぞれエデンの園を再現する形でアダム国家、エバ国家、天使長国家がある。第二次大戦以降、神側のアダム国家は韓国、エバ国家は日本、天使長国家はアメリカである。

 ⑥韓国は世界を支配するアダム国、日本は韓国に従属するエバ国である。ゆえにアダム国家になる予定だった韓国を植民地化し、韓国の文化を破壊した罪深いエバ国家日本をアダム国家韓国の植民地にすること、天皇を自分(文鮮明)にひれ伏させることが必要である。日本は自分の持つものすべてを韓国に惜しみなく与えなくてはならない。だからその罪を清算するために日本人は、韓国に徹底して奉仕しなければいけないのである。

 ⑦エバは、一人前になる前の幼いアダムを育てる責任を負うように、もともとサタン側だった日本は、神とメシアに対して大きな負債を負っている。だから再臨のメシアである文教祖夫妻の韓国やアメリカなどでの「闘い」を日本は物心両面で支えねばならない。

 ⑧イエス・キリストは、本来地上に神の王国を作らねばならなかったが、ユダヤ人が受け入れなかったので、彼の使命は未完成に終わる。イエスの十字架は、神の敗北である。

 ⑨歴史の最後に再臨のメシアが韓国に現れ、地上を支配するサタンの勢力を打ち破り、韓国は世界に君臨し、地上に神の国を完成するのである。

 ⑩全ての人類は、再臨のメシアによって原罪を清算され、罪のない子孫を生み増やさねばならない。

 以上のように旧統一教会の教義は、原罪を「性」と結び付けて理解し、再臨のメシアが韓国に降臨して神の国が完成するとしていることに特徴がある。だから旧統一教会は、純潔を重視しメシアによって「祝福」されたカップルの合同結婚式を行うことになる。

 だが公式のキリスト教の教義から判断すると、イエスの十字架の死の意義を否定した上、生きている人間(非西欧人である文鮮明教祖)をメシアとして崇め、勝手に“原罪清算”の儀式として、合同結婚式なるものを実行する、とんでもない邪教ということになる。

 旧統一教会は一九五0年代前半から韓国で布教を始め、ミッション系の大学である梨花女子大(韓国のお茶大)の教授や学生から多くの入信者が出たこともあって、教祖や幹部たちと女性たちの間で淫らな行為が行われているとの噂が広まり、それが「淫教のメシア」という悪評につながった。今でもその痕跡とおぼしき血分けの秘事は行われている。

 また旧統一教会の教義は、世界史を神とサタンの闘いの歴史と見ており、神側の勝利によって、地上の神の国を実現しようとしているのだから、旧統一教会が「現実の政治」に強い関心を持ち、関わろうとするのは当然のことであろう。

 現代の国際政治で、サタン側を代表するのは共産主義の諸国であり、神側を代表するのは自由主義諸国である。旧統一教会が、共産主義を理論的に克服することを目指す「勝共理論」を構築し、それを実践する国際勝共連合を創設し、広く保守系の政治団体や言論・財界人を巻き込んでいこうと活動することには、以上のような教義上の要請がある。

 現在、日本のマスコミは霊感商法や高額献金といった金銭絡みの問題で、日本にだけ多額の献金を求められることに対しての批判が連日のようになされている。だが、これまた旧統一教会の教義上からの要請と理解することが重要である。

 具体的には高額の献金をして、必要な人材を、海外宣教や事業展開のために派遣することだ。一般の日本人には、過去の韓国の植民地支配に対する日本人の罪の意識を利用した理不尽なものにしか考えられないが、信者たちにはそれが自分たちの救いだけでなく、日本という国家全体のサタンの支配からの霊的解放につながると信じている。だから高額の献金をするよう求めるし、ある程度の財産を持っている信者はそれに応じるのである。

 旧統一教会と自民党との深い関係の分析については、次回の記事としたい。(直木)案内へ戻る


  バイオマス発電――自然エネの拡大と住民との調和はあるのか?

 先月「輸入バイオマス発電についての学習講演+シンポジウム」に参加しました。

 学習講師はバイオマスの専門家、泊みゆきさん。

 また宮城県石巻市や角田市、仙台新港バイオマス建設に反対する住民・若者、そして仙台新港石炭火力PSその後の反対運動などの報告ありました。バイオマス発電&計画は地元住民から厳しい批判が挙がっています。

 「自然エネルギー」ならば何でも良い・・ではない。とはいえ適切に拡大利用すべきなのは言うまでもありません。温暖化と気候危機が迫り、化石燃料の劇的削減が求められており、自然エネはどうしても飛躍してほしい。エネルギー危機も発生しているなか市民はどう考えてゆくべきなのか?

■バイオマス利用は自然保護と一体で

 木々は大気中のCO2を吸収=蓄積し成長するので、後に燃焼させてCO2を発生させてもある種の「循環」が成り立つ。しかし、燃焼は一瞬、木々の再生は数十年以上かかる。燃焼時に放出されるものと同等の量のCO2を吸収する森林がよみがえるという要件が前提だが、その検証は世界的に存在しない(森林減少が現実化している)。つまりカーボンニュートラルのためには、何といっても森林保護にしくはない。自然森林はCO2を蓄えつつ成長しいずれ腐敗するが、CO2は大気中に放出されるだけでなく同時に土壌にも堆積される。森林は地球にとって(酸素供給源であるばかりでなく)大切な炭素の貯蔵庫(カーボン・シンク)だ、この理解が大切。

■輸入バイオマスはグリーンウオッシュ(緑の偽計)だ

 日本などは木質ペレットを製造するために、廃材や間伐材ではなく多数の木を(伐採し)丸ごとベトナムや北米から輸入する。これでは温暖化を加速させるだけです。木々の燃焼時に発生する熱量あたりのCO2排出量は、石炭よりも木質バイオマスの方が多い。木質ペレットの加工・輸送もCO2排出量として加算されるべきとすれば、さらにカーボンニュートラルから大きく逸脱する。日本のFIT認定の八割が「輸入バイオマス」であり、だから問題なのです。

参照:ウィリアム・ムーマウ 元IPCC報告執筆者からのビデオメッセージ「バイオマスエネルギーがカーボンニュートラ ルではない10の理由」 https://www.eubioenergy.com/.../bioenergy-is-not-carbon.../ https://biomassinfo.jp/ngo

■バイオマスは地産地消で

 このように、原料が安い・地価が安い・FIT制度もあり電気が高く売れて儲かる・・こんな市場原理や利潤追求は自然保護や気候危機対策とは相いれないことが今や明確化してきたように思われます。泊さんのお話では、本来のバイオマスは地域の廃棄物や副産物(間伐材など)を熱利用中心にする地産地消型であるべき。気候危機促進の輸入バイオマス発電はFITから外すべきと。(そうすればH.I.Sや住友商事、レノバなどの企業は即刻撤退するでしょう)。太陽・風力にしても規制基準を厳格にして「悪徳企業」は退場してもらいましょう。

■自然エネの拡大と住民との調和はあるのか?

 迫りくる気候危機に対応するには化石燃料使用の縮小、自然エネの飛躍的拡大が必要です。しかし、上記のように輸入バイオ・メガソーラー・メガ風車団地による森林破壊は本末転倒であり、まさにグリーンウオッシュ。止めるべきです。七月には関西電力による蔵王山ろくでのメガ風力発電計画も住民の不振が高まりとん挫。

 他方では屋根置きソーラーの普及や断熱改築推進制度などを拡充(全額補助とか)すれば何も巨大開発である必要はない。新築戸建てに設置義務化するなどで推し進めるべきだ。自然エネを活かす道はメガ開発の真逆にありそうです。電気・熱を必要とする人たちが近場で、地産地消しこの分散型の特色で環境負荷を下げながら経済社会を運営する必要があるようです。いよいよ脱成長も真剣に考えましょう。

 また、コバルト採掘、リチュウム採掘などの乱獲問題も直視しなければなりません。(阿部文明)


  書籍紹介   満州国の歴史を学ぶ本

●九月十八日は満州事変の日

九月十八日は「満洲事変勃発の日」だ。しかし今日、国民のどれだけの人がその歴史を記憶しているだろうか?

十二月八日が「真珠湾攻撃の日」であることは、国民の多くが知っているのと比べて、満州事変や満州国の歴史は、なぜかあまり広く認識されていないようである。

だが今年は、いささか事情が異なるようだ。

●岸信介と満州国

なぜなら他でもない安倍晋三元首相の銃撃事件を機に、統一教会や勝共連合と自民党とりわけ岸・安倍一族とのつながりに関心が集まり、その岸信介は「革新官僚」として満州国で采配を振るい、また暗躍もした歴史が思い起こされるからである。

戦前の岸信介は満州国の経営の中心にいて、軍閥や大陸浪人など「裏社会」とのつながりを駆使して、様々な画策を行なっていたことが指摘されている。

戦後は「A級戦犯」の訴追を逃れ、満洲時代の人脈をもとにアメリカや韓国の諜報組織ともつながり保守派の中心に居座ったのである。

●「国葬」で問われること

九月下旬に予定されている国葬を前に、改めて岸・安倍一族に連なる「革新官僚」が満洲で何を行なってきたのか?その後の日中戦争や太平洋戦争に、どのようにつながり、敗戦後の占領政策を経て、どのように形を変えて今日に至っているのか?その歴史を再認識することが求められている。

そこで満州国の歴史を学ぶために、いくつかの本を紹介したい。

●「満州国」

まず基本的な知識を得るために役立つのが川村湊「満州国」(現代書館)である。日露戦争から満州事変に至る日本・中国・ロシアのせめぎ合いの経緯、満州国建国に始まる政治経済体制、関東軍・満鉄官僚・新興財閥、開拓移民、ソ連軍侵攻と満州国崩壊に至る経過について、分かりやすく叙述されている。

●「満州事変から日中戦争まで」

岩波新書シリーズ日本近現代史5として刊行された加藤陽子「満州事変から日中戦争まで」は、当時の国際情勢を視野に入れて、日本の外務省・軍部、ソ連、イギリス、アメリカなどの外交方針や軍事戦略の攻防を、克明に検証している。

●「帝国の計画とファシズム」

革新官僚に焦点を当てて満洲経営の特質と、それが日本の政治体制に与えた影響を解明しているのがジャニス・ミムラ「帝国の計画とファシズム」(人文書院)である。満州事変から満州国の統制経済、太平洋戦争とその敗北まで、岸信介を筆頭とした革新官僚が果たした役割を明らかにした力作である。

この革新官僚の主導した政治経済体制は、戦後も形を変えて引き継がれてきた。戦後の保守政治体制構築の裏で、岸信介等が統一教会や勝共連合にテコ入れしてきた手法は、彼らが満洲で画策してきたことの延長線上にあるとも言えることが、この本からはうかがえるのである。(夏彦)案内へ戻る


  「エイジの読書室/第2回」 ★『誰が永山則夫を殺したのか/死刑執行命令書の真実』(中) 
  著者・坂本俊夫(幻冬舎アウトロー文庫。2014年12月5日初版発行)

 前号では、1990年(永山が41歳)4月17日最高裁第3小法廷で安岡満彦裁判長が「本件上告をする」と主文を宣言して直ちに閉廷した事を書きました。

 著者の坂本敏夫氏は、「1990年のこの最高裁第3小法廷での上告棄却は、日本文芸家協会入会騒動が最高裁の判断を急がせたのでないかという懸念を私は持っている。判決を導く膨大になるはずの理由が朗読されることなく、主文だけで閉廷した理由はなんだったのか?と、問いたくなる。最高裁は判決公判を急ぐ余り、判決理由をまともに書かないまま判決に臨んだのではないか、との疑いがある。無期懲役の判決を差し戻しまでした最高裁の対応にしては実に不可解である。この日の最高裁判所の対応は余りにも軽い。命を奪う極刑を確定させる重大なかつ厳粛な判断を示す姿勢とは到底言いがたい。これこそ、三審制を保障する司法の根幹を揺るがす暴挙であり、憲法違反の疑いさえあると私は考えている。」との厳しい指摘をしている。

 永山則夫は死刑囚であるが、作家として数々の著作を世に出して世界にその名を知られていた。「アムネスティ・インターナショナル」「子記載人権擁護団体」「ドイツ作家同盟」などが、それぞれの国にある日本大使館を通じて日本政府に恩赦要請の書簡を送るなどしていた。

 その時代の永山則夫の活躍について、「わが国でも永山氏は逮捕時からすでに有名人だった。4つの殺人事件の詳細が逮捕と同時に報道されていた。さらに、被告になり裁判がはじまり永山氏の生い立ちなどが明らかにされるにしたがって、『極悪人・永山則夫』」から『気の毒な少年事件被告人・永山則夫』という同情が大きくなっていく。裁判経過に弁護士、学者、人権活動家などは大変な興味を持ち、永山則夫個人と永山の作品についての論説、解説、文学評論、哲学的評論などが多数出回った。やがてそれが、死刑制度の存続論議にもつながっていった。」と当時の様子を述べている。

 この時の「検察」の様子を坂本氏は次のように指摘している。

 「法秩序の維持を看板に掲げる『検察』にとつて、死刑確定者の死刑執行こそが最も強烈なアピールになる。さまざまな事情があって世間の注目が集まっている永山をはじめとする有名死刑囚、冤罪の疑いがある死刑囚、度々再審請求が出されている死刑囚など、死刑の執行が難しい死刑囚についてこそ、検察は死刑執行に激しい意欲を燃やすのである。その永山に白羽の矢が立ったのは、この機会を逃したら死刑執行するチャンスはないという、世間を大きく揺るがす大事件が関西で起こったのである。」

 この大事件とは、「1997年2月10日午後4時頃、神戸市播磨区の路上で小学生の女児2人がハンマーで殴られ1人が重傷を負った。その後、第2、第3の事件に発展し、2人の尊い命が奪われることになる。捜査は難航した。犯人が14歳の中学生とは考えられなかったからかも知れない。少年Aが逮捕されたのは6月28日だった。14歳の少年による神戸連続児童殺傷事件・通称『サカキバラ事件』である。」この事件が、永山則夫に大きな影響を与えることになる。

 それは「少年の重大事件が起こると少年法が改正され、見せしめのための死刑執行が行われる事がある。『これは来るぞ』と刑務官たちの間では永山則夫の死刑執行が話題になったと言う。永山のことをよく知らない転勤族である幹部職員は肯定派が大勢を占め、勤務年数の長い現場の刑務官たちは『永山は殺さないだろう。いや殺してはいけない』との意見が多かったと言う。当時、東京拘置所に留置されていた死刑確定者は30人余り、永山則夫より古い死刑確定者を除いても順番通りだったら数年先まで死刑の執行は行われないはずだった。」と思われていた。

 しかし「少年Aが逮捕されると永山則夫の現況を照会する電話が法務省からたびたびあり、ついて死刑確定者現況照会が文書で届いた。有名死刑囚の死刑執行について拘置所の意見をいかに報告するか、ということについて会議が開かれていく・・・そして、首席など死刑執行に深く関わる幹部の頭の中には暴れ狂う永山則夫があるはずだ。その永山の死刑をいかに執行するか。もはや思考はそこまで行っていた。そして結論は、※心身とも健康。※再審請求の新たな動きなし。※親族請求との音信なし。※辞退した身元引受人の後任の選任について動きなし。以上、刑の執行ができない特段の事情なしとして報告された。」

 その後の刑務所内の異例の死刑執行準備の様子を読んで私は驚いた。

 「7月中旬になると、幹部刑務官たちの間では近日中に永山則夫の死刑執行があるという認識になっていた。一方、永山は一心不乱にノートに執筆を続けていた。7月28日、法務大臣の死刑執行命令が東京高検検事長に下された。東京拘置所にも連絡が『命により通知する。8月1日に貴所在監中の死刑確定者・永山則夫と同じく神田英樹両名の死刑を執行されたい』以上。しかし、その時に永山則夫に女性の面会人が来たとの驚くべき報告が入る。5年ぶりの一般人の面会だった。実はこのとき、永山則夫は死刑を執行されるのでないかと覚悟を決めてノートの執筆にあたっていた。・・・とにかく永山は特別な囚人だった。永山にとって自分を取り巻く微妙な変化を察知し、分析し、我が身に何が迫ってきているかを知ることは容易だったのだ。ノートに、たくさんの印税を得て、被害者家族、遺児に賠償する。さらにペルーの子どもたちをたすける事。さらに、処刑後のことを何度も書き加えた。※自分は徹底的に抵抗すること。※無残な遺体になるかも知れないこと。拘置所は朝食に薬物を混入させて摂取させる等の方法で身体のコントロールを利かなくさせるかもしれないこと。※遺体は解剖して死因を突き止めること。そして、末梢又は削除されそうな内容のことはストレートにかくと同時に様々な記述の方法(暗号やパズルなど)で何ページにもわたって書き込んでいた。」と言う。

 永山則夫の死刑執行は間近に迫っていた。<次号に続く>(富田英司)

   著者/坂本敏夫さんの紹介
   1947年熊本県生まれ。元刑務官。ノンフィクション作家。
   1967年大阪刑務所に採用される。以後、神戸刑務所、長野
   刑務所、東京拘置所、甲府刑務所などに勤め、1994年広島
   拘置所総務部長を最後に退官。
   著書に「死刑執行人の記録」「刑務所のすべて」「など。
   「相棒」「踊る捜査線」「モリのアサガオ」をはじめ、多数の 映画・テレビドラマを監修。


  何でも紹介 「次世代に伝えたい音楽と絵画とお話と ギフト」

 5月の初め、知人からコンサートのチケットをもらい友人と出かけた。主催は3・11支援活動から始まった「さくらの架け橋会」で、視覚障害者支援活動シリーズとして音楽会の開催・ダンデム自転車の普及・立体ピックトの設置・被災地慰問コンサートなどの活動を行い今年十年を迎え、歩んできた経験を次の世代に伝えることが大事だと思い、今回のコンサートを計画したという。そのコンサートの出演者の素晴らしい技術と感性に感動したので紹介をしたい。

 オープニングは、かっぽれの音楽が流れると櫻川ぴん助さん(江戸芸かっぽれ豊年斎五代目家元)が法被姿で登場し、背筋がピッと伸びて手足を動かす姿はとてもかっこよく七十四歳とは思えない動きで、さすが家元の踊りだった。

 第一部 「津軽三味線の誕生 仁太坊とマンの物語」

 極貧の中、視覚障害者が生き抜く為の道具であった津軽三味線を日本の文化にまでし親に見捨てられた視覚障害の子ども達を個性豊かな指導で立派な津軽三味線奏者に育て上げた「仁太坊とマン」の夫婦の物語。イラストの画像に合わせて「民謡デゥオ・はごろも」(坂越達明さん/滝波俚花さん)のお二人が津軽三味線を弾きながら語っていくのだが、力強い津軽三味線は迫力がありながらも心に染みわたり、仁太坊とマンを一心同体になって語りかけられ涙が出てしまった。また津軽三味線を間近に聞いたのは初めてで、音色には様々な表情があり見事な手さばきの技術力にも圧倒された。津軽三味線は視覚障害者が生き抜く為の道具だったということも知った。

 第二部 「日本からの贈り物 国褒めの歌」

 森谷明子さん(日本画家)が絵画の画像に合わせてお話を始めると、視覚障害のユニット「ツナこうじ」(細川泰典さん・フルート/服部こうじさん・ギター)が絵画に合わせて奏でる美しい音色は別世界にいるような心持になり、お二人が日々修練を重ねてきた音色が心にしみわたった。

 そして「月から見た地球」の絵画を見ながら「月から地球を眺めたならば あなたは何を思うだろう 青く青くただ青く かがやく地球のうるわしさ そしてそこに住まう七十億の人々のこと 肌の色が違っても 信じている神様が違っても その人たちのことで 涙が流れるのは何故だろう どの国も どの国も 本当に姿は 尊く気高く麗しい この本をめくりながら ぐるりと地球をひとめぐり 青く青くただ青く 輝く地球の平安を 祈らずにはいられない」と語りかけた。青い地球を見ていると世界中の人々が愛おしく思え、二月にウクライナとロシアの戦争が始まり多くの命が失われていた頃だったので、殺し合う戦争はやめて月から青い地球を見てほしいと思った。

 それから「日本」の絵画は、優しい色使いで神に支える巫女が描かれ「さくらさくら」の音色を聞きながら「敷島の 日本の国は 言霊のたすくる国ぞ 世界の平和を祈り捧ぐ」と。この詩は万葉集柿本人麻呂の歌を参考にしたもので、言霊(ことだま)とは言葉には魂が宿っていて言葉によって幸せがもたらされるいう日本の古くからの考えだという。言霊という言葉を知らなかったが、言葉によって幸せがもたらされるというのは現代においても通じるものがあると思った。ウクライナもロシアこれ以上戦争を続けるのではなく、武器を置いて何度も話し合って戦争のない日々を取り戻すことを願いたい。

「言霊」という言葉に惹かれ、森谷さんが 駐日各国大使館の協力を得て創作され、世界の国々を紹介する詩画集「日本からの贈り物 国褒めの歌」を買い求めた。『日本の「言霊」の概念から、すべての国々を寿ぎ褒めたたえる言霊の力によって、全世界を平和に導こうという問いかけ、月から地球を俯瞰するページから始まり、巻一では、日本から順番に、日が昇る順に世界三十七か国を紹介。詩の最後にはその国の言語で、平和祈願の文言が添えられている。特に注目すべきは、本書中で、イスラエル、パレスチナ、それぞれの素晴らしさを等しく褒めたたえ、絵と詩で表現し、並べて掲載している点。現実ではありえない姿を、「言霊」「形霊」を通して引き出し、未来のひな型にしようという試み』(牧羊舎の紹介より)。ページをめくっていくとモンゴルの大草原、ブルガリアのバラの谷等々絵を見ているだけで心が癒され、森谷さんが平和と幸福を祈らずにいられない思いが伝わってきた本だった。

 コンサートはまさにギフトだったので友人と余韻にしたりながら帰った。(美)案内へ戻る


   沖縄を再び戦場にするな! 沖縄と仙台をつなぐオンライン集会に参加して

 沖縄(石垣島、宮古島、沖縄島)と仙台をつなぐオンライン集会――琉球弧の軍事化に抗する市民の会~Part3~ノーモア沖縄戦--参加しました。

 報告者■山里節子さん(石垣島)★清水早子さん(宮古島)★山城博治さん(沖縄島)。

 琉球弧=馬毛島、奄美大島、沖永良部島、沖縄本島、久米島、宮古島、石垣島、与那国島・・。誰もが知るように自然豊かで、本来平和な島々です。しかし、報告は、自衛隊の基地建設(計画)が強引かつ急速に進んでいることを浮き彫りにしています。

■沖縄を再び戦場にするな

 本土復帰五十年を迎えた沖縄は、先の大戦で「本土決戦の捨て石」とされ、国内で唯一住民を巻き込んだ地上戦で、県民の四人に一人が亡くなった。ところが諸島を含めて再び軍事要塞の島となりつつあります。報告者の皆さんは、自ら基地建設やミサイルの搬入阻止のために日々体を張って、地べたに座り込み抵抗を続けています。「島言葉には〈戦争〉という言葉はない」(山里さん)というのに、戦争は外から政府と軍隊が持ち込む、というかつての悪夢が迫っているのです。

■南西諸島で基地「日米共同使用」計画

 今年一月の日米「防衛相・外相会談(2+2)」では「日本の南西諸島を含めた地域における自衛隊の態勢強化の取組を含め、日米の施設の共同使用を増加させる」と。つまり、台湾有事への介入を想定した対中国戦争作戦に、沖縄等南西諸島が共同作戦のための重要な前線基地として想定されているのです。琉球弧を再び戦場として想定するこの戦略は到底受け入れられません。

 菅前首相去年四月に「台湾(海峡)への関与」をバイデン大統領に約束しました。折しも米国による中国へのあからさまな挑発がエスカレートし、日本国内でも敵基地攻撃能力(「反撃能力」に改称?)確保や軍事予算の倍増が国会審議もなく当然視され、「台湾有事は日本の有事」という危険な雰囲気作りが進んでいます。ロシアのウクライナ侵略も「軍事増強やむなし」との世論作りに利用されました。

■「ノーモア沖縄戦 命(ぬち)どぅ宝の会」設立と活動

 報告者でもある山城博治さんらが、今年春に危機感から立ち上げた会です。多くの方の参加・賛同を求めています。私も四月から会員で、メルマガが届きます。個人加盟だけではなく、鹿児島・愛媛など各地方の会との連帯もあります。今後、全国でのシンポジュウムをはじめ、台湾識者との平和交流や、来年は大陸に出向いて中国政府に「日米政府が戦争を計画しているが、南西諸島の住民は誰一人として中国と戦う意思はなく平和を願っている」と伝えまた「中国も無謀な軍事緊張を造らないように」とくぎを刺し、保革を超えた幅広い運動を造りたいとの山城さんのお話でした。

■島しょ戦争の影と沖縄知事選

 中・日米軍事紛争の暗雲が垂れ込める中で沖縄知事選(九月十一日投票)が闘われています。しかしながら南西諸島の軍事基地化とその日米共同使用の元での軍事計画について議論は盛り上がってはいません。それどころか現職の玉城デニー知事もそれに触れることはないと。

 「ノーモア 沖縄戦」は、玉城知事にこの問題を取り上げるように要請文を出しています。

 「沖縄を戦争に巻き込む南西諸島の軍備強化、ミサイル要塞化にはっきりと反対を表明」すること「どこの国の軍隊であろうと、いかなる正義を名目とする戦争であろうと、この島を戦場にすることは沖縄のリーダーとして許すわけにはいかない」という決意をはっきりと内外に示していただきたいと。さらに「日米共同作戦計画の具体的内容を明らかに」するよう求めています。(阿部文明)

 【ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会⇒お問い合わせまたは参加賛同希望者は
 FAX:0980-55-2245:
:Eメール:info@nomore-okinawasen.org】案内へ戻る


  コラムの窓・・・アベ的政治と選挙制度の関係は?

 2代目が放蕩し3代目が潰す・・・、というのは政治屋にも言えることなのか。安倍晋三さんが亡くなり、その政治家としての功罪(ほぼ罪です)が問われています。さて、安倍さんはハダカの王様だったのか、それとも狡猾な独裁者だったのか。とりあえず、大勲位と国葬はきつい冗談と言うほかありません。

 東京生まれながら縁ある山口県から衆院選に立候補、それはひとえに政治屋一家のお坊ちゃんとして国会議員になるために必要な〝地盤・看板・鞄〟の三バンを生まれながらにして持っていたから。労せず衆院議員となり、労せず総理大臣になり、お友達を優遇し政治の私物化。モリ・カケ・サクラはその一部にすぎません。

 2001年、NHK・ETV特集「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」への悪しき政治介入から始まったアベ政治を、「国葬」で終わらせてはならないでしょう。「国葬」実施で、悪しき自民党政治への批判を封じることはできません。

 さて、こうしたアベ的政治を可能にしているのは何によるのでしょうか。言ってしまえば、主権者としての自覚の欠如、有権者としての意思表示の希薄。結果によっては憲法9条が危ういといわれた先の参院選、投票率はかろうじて50%を超えたけれど、5000万人の有権者が棄権しているのです。
 衆院選の小選挙区比例代表制、参院選の選挙区と全国区、いずれも中途半端で分かりにくく、大量の〝死票〟が出ます。こうした仕組みは、〝地盤・看板・鞄〟にしがみ付く自民党議員の保身によるものではないでしょうか。1票の重さが問題となり、次の衆院選では〝10増10減〟の選挙区調整があるように、どこまでいっても公平な投票は実現できません。

 本当の公平にするには全国単一の比例区選挙しかないことは明らかであり、得票に合わせて議席を割り振れば〝死票〟はなくなります。また、先の参院選では選挙区で大量の候補者を立てた参政党とN党が議席を確保しましたが、1人区での野党候補調整は利害対立を解消するのは困難です。

 すべての政党が(小さな政党は例えば合同で)候補者名簿を作成し、2世3世は蹴飛ばし、性別等も公平に割り振る、そうして政策を競う、公開の討論会を行う、等々。選挙カーで名前を連呼するような旧来の選挙風景はなくなる。投票所に足を運ばない約半数の有権者にとっても、少しは近い選挙となるのではないでしょうか。

 と、ここまで考えて、改めて思うのはこの国に住まうすべての人々が選挙権を持っているわけではないという点です。国籍の壁が排除を正当化しており、そのことを当然とする多数派の意識があるのは残念です。また、主権者である私たちは受動的な存在ではないのに、この国の明日を誰かに託してしまえばよしとする風潮が支配的です。

 参院選の結果に戻れば、自民党の比例区得票は約1826万票、得票率は34・43%でした。これを全有権者比でみると約17%にすぎません。これで過半数の議席を確保しているのです。

 暑い夏、コロナも心配、豪雨も心配だけど、それ以上に自民党政治の害悪が心配、無関心でいたら今に〝国のために命を・・・〟なんてとんでもないこを言い出しそうです。とりあえず、〝アベ国葬〟がとことん惨めな結果になればいいのにと思いながら、秋の訪れを待ち望んでいます。 (晴) 


  川柳 2022/9 作 石井良司 (カッコ内は、課題句です。)

 票の壺すぐに抜けない議員の手
 初登院写真を撮れば夏休み
 袖の下覗く五輪のユニホーム
 スマホだめ固定電話のしたり顔
 孫と子にクーラー嫌い??られる  
 錆びついた頭を磨く好奇心(「頭」)
 AIの頭脳と競う聡太の手(「頭」)
 マニュアルに下げた頭にない誠意(「頭」)
 忠告を馬耳東風が掘る墓穴(「東」)
 骨太に軍事予算のでかい顔(「太い」)
 新調の作務衣が似合うリタイア後(「新調」)
 飽食の胃が持て余すフードロス(「あきれる」)
 票の壺蜜に群がる自民党(「自」)
 三年目コロナ労う大花火(「輝」)
 コロナ禍の傷心癒す大花火(「花火」)


  色鉛筆 ・・・『死刑制度なくしたい』

「死刑になりたかったから」という動機から、8月20日に15歳の少女による母娘傷害事件がまた起きてしまった。生きづらい苦しい「今」から解放されるため「死刑になる」ことを求める。加害被害双方に深い傷を残すだけで、解決にはほど遠い行ないだ。

8月14日の「東京新聞」に、40歳、車椅子ユーザーの伊是名夏子さんが、7月26日、19人の命が奪われた津久井やまゆり園の事件から6年後の死刑執行に寄せて『死刑制度なくしたい』との記事を書いている。少し長いが紹介したい。

「死刑制度がもたらす最悪の影響の1つは、死んだらすべてを終わらせることができる、という考えを正当化し、それをまん延させることです。死刑制度があるからこそ、日本では自ら命を絶つ人が相次ぐのではないでしょうか。(略)命を絶つことこそが最後の償いである、命の重さは決められるというふうに社会全体が考え、肯定しているからこそ、死を選ぶ人が後を絶たないのではないでしょうか。(略)死刑制度によって加害者の命を絶つことで問題は終わったと片づけてしまえば、事件が引き起こされる社会環境は改善されません。(略)

理由があれば命を絶つことが認められる社会は、死んだら苦しみから解放されると思わせたり失敗したら死で償うことがまっとうだと信じ込ませたりします。また、障害のある人には、生きていても意味がないというメッセージを送り続けま。(略)」

彼女の言葉ひとつひとつに気付かされる。死刑制度の問題はただ単に司法の中だけではなく、広く深く社会全般に影響を及ぼしているということを。やまゆり園で行われた残虐な行為と、その彼を死刑にした行為とを比べ、一方は死刑が当然、一方は正当であると言えるのか。命を奪うことにかわりはないと私は思う。

世界は着実に死刑廃止に向かっており、2020年末には、法律上・事実上の死刑廃止国は144カ国、世界の7割を超える国々が死刑のない社会を実現した。なぜ日本はいまだに死刑の執行を続けるのか?

報道のあり方も、むごい犯行の実態や、被害家族、遺族の悲しみが報じられる一方、死刑=「人殺し」の現場やそれらを担わされる人々の苦悩苦痛はほとんど公にされない。当然世論は、死刑肯定に傾き易くなるはずで、国も死刑支持の国民が多いのだと主張する。

死刑について国民が議論するためには、きちんとした情報公開が不可欠であり、さらには加害被害双方の当事者、家族への手厚い公的支援も不可欠だ。今はそれらが決定的に欠けている。死刑判決、その執行、方法、日時などすべての権限は国が持つ。その国たるや強者には手厚く、弱者に驚くほど冷酷だ。伊是名さんは主張する。

問題が起きた時、相互に話し合い再び問題が起こらないよう環境を変えていく必要があるとした上で「人は何があっても平等で、一緒に生きることを受け入れる社会であることを願います。」と。死刑制度を無くそう。(澄)

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