ワーカーズ648号 2023/11/1
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イスラエルは、ガザ侵攻をやめろ! イスラエルは日頃からのパレスチナへの空爆や入植をやめろ!
今回のイスラエルによるガザ地区への攻撃は、直接的にはハマスがイスラエルにロケット弾を撃ち込んだことへの反撃と言われています。
しかし、日頃からイスラエルによるパレスチナへの空爆や入植が続いているのです。今回のケース、明らかにイスラエルが悪いです。
もともとパレスチナ人が住む地に、1948年イスラエルは建国しました。そのためパレスチナ人は、暴力的に故郷を追われ難民となってガザやヨルダン川西岸地区や周辺国に散らばりました。イスラエルの占領地域からの撤退を内容とする1993年のオスロ合意後も、パレスチナでは、イスラエルの侵攻や入植が続き、多くの民間人が殺害されました。
ガザは、2007年からイスラエルによる完全封鎖が続いています。壁やフェンスで囲まれ、「天井のない監獄」状態です。電気は1日4時間しか通らず飲料水の97%が汚染されいます。適切な医療を受けられず亡くなる人も多いです。
つまりイスラエルは、日頃からパレスチナへの侵攻や入植を繰り返し行なってきました。 ガザ地区は地中海沿岸に細長く横たわり、長さ約40キロ、幅6~12キロ、面積365平方キロのエリアに約220万人が暮らしています。外務省のパレスチナ自治区の基礎データでは、ガザ地区の面積は福岡市よりやや小さいです。ガザ地区の人口密度は1平方キロあたり6018人で、東京都全体の6425人に匹敵します。こんな人工密集地に空爆をすれば多くの人が亡くなってしまいます。
イスラエル軍は現地時間の10月23日朝、この24時間でガザ地区で320か所以上の標的を空爆したと発表しました。一連の空爆でガザ地区では多数の死傷者が出ていて、ガザ地区の保健当局によりますと子ども182人を含む436人が死亡したということです。
10月7日以降のイスラエルとハマスとの一連の衝突では、イスラエル側で少なくとも1400人が死亡し外国人を含む220人以上が人質にとられている一方、ガザ地区では5087人が死亡し、双方の死者は6400人を超えています。
イスラエル軍がガザ地区に激しい空爆を続け、北部の住民に対し南部への退避を通告する中OCHA=国連人道問題調整事務所は、ガザ地区全体の人口の6割以上にあたる、およそ140万人がこれまでに住まいを追われたとしています。OCHAの10月22日の発表によりますと、140万人のうち、58万人近くが150か所の国連の学校に、10万人あまりが病院や教会などに避難しているということです。
また、多くの人が集まる中、避難所の環境が劣悪な状態になっていると指摘しています。
この記事を書いているのは10月24日なので、本誌が読者の皆さんに届く頃には、イスラエルによるガザ地区への地上戦が始まっているかもしれません。そんなことは絶対にさせてはいけません。
イスラエルは、ガザ地区への侵攻をやめろ。 (河野)
大増税と企業への大盤振る舞い――岸田政権の経済政策――
物価高に賃金が追いつかず、庶民の生活が苦しい状況が続いている。
そんな中で行われたメディア各社の内閣支持率調査が軒並み低下している。10月22日の衆参の補選は、自民の1勝1敗に終わった。
焦った岸田首相、解散風をもてあそぶ余裕も消え、物価高への対策づくりに躍起だ。
その岸田政権が実際に力を入れているのは、軍事費の増額や一部大企業への補助金の大盤振る舞い、それに首相自身の再選戦略だ。
そんな岸田政権に対し、連合のように政権に接近することで存在価値を保持するのではなく、正面から大企業優遇政治と対決する姿勢を貫きたい。
………………
◆迫る増税・負担増ラッシュ
最近の物価高に苦しむ庶民生活をよそに、岸田政権は様々な増税へのレールを敷いてきた。
すでにGDP比でほぼ倍増させた軍事費では、27年度の時点で1・1~1・2兆円の増税がほぼ決まっている。が、その分を含めて、28年度以降毎年必要になる3・8兆円程度の財源が、まだ決まっていない。これらは年内にも新たな増税や借金、それに歳出改革という名の国民負担として現実の問題となる。
〝子育て予算倍増〟も同じだ。必要になる毎年3・4~3・7兆円もの財源を、歳出改革や確保済み財源、それに医療保険からの支援金でまかなうとされているが、これも年末までに決めるという。
さらには〝サラリーマン増税〟も現実味を帯びる。これは政府税制調査会の答申(6月30日)に含まれていたもので、労働者の退職金や通勤手当に関わる増税案だ。
その答申では、現在の退職金課税の控除額を減らすことによる増税と、通勤手当を課税対象にする増税案だ。世間では〝サラリーマン増税〟だとして批判が拡がっている。10月22日投票の参院徳島・高知選挙区の補選で街頭演説(10月14日)をした岸田首相が〝増税メガネ〟とヤジも飛ばされた。
政府税調の答申がすぐ実行されるわけではないが、現実味を増す大増税の気配を察する庶民感覚からの批判が拡がっていることが背景にある。
◆支持率低下に慌てた首相
内閣支持率が軒並み最低レベルとなったことで焦った岸田首相、とたんに減税をぶち上げた。曰く、〝税収増を国民に還元する〟。岸田首相は急遽、10月中の総合経済対策づくりに減税案を加えるように、閣僚に指示したという。
とはいえ、22年度の税収の上振れ分の6兆円の最終的な余剰金は2・6兆円。半分は国債の返済、もう半分は防衛費増にあてる予定で、減税に回す財源にはならない。23年度の税収見込みも、それほど余剰金は出ない見込みだという。しかも、国債増発による借金財政は、底が抜けた状況にある。
防衛増税と子育て増税。そこに具体的な当てもなく〝税収増を還元する〟として減税をぶち上げたわけだ。増税と減税。相反する経済対策の同時展開。これらは内閣支持率対策、すなわち選挙対策であり、自身の再戦戦略だと受け止められて当然のことだ。
◆企業補助金の大分振る舞い
今年4月、大阪高裁で生活保護引き下げ取消訴訟の控訴審判決が出され、高裁は減額処分の取り消しを違法とした地裁判決をひっくり返した。国はデフレによる08~11年までの「生活扶助」を平均6・5%引き下げる「デフレ調整」で、総額670億円を削減していた。
政府は厳しい算定率の〝デフレ調整〟で、生活保護者に容赦のない扶助費削減を押し付けてきた。他方では、円安などで利益を貯め込んでいる大企業に対し、惜しげも無く巨額の補助金を大盤振る舞いしている。
たとえば10月中にとりまとめる経済対策で見込んでいる、半導体工場など国内投資への政府による合計3・4兆円の巨額の補助金だ。すでに21~22年度で約2兆円を補助しているから、併せて5・4兆円もの巨額の補助金だ。
まず注目を集めたのは、台湾積体電路製造(TSMC)への補助金だ。これまで第一工場にも4760億円を補助しているが、新しい第二工場にも9000億円の補助金を支給するという。
またTSMCと提携してきたソニーに対しては、最先端半導体でもないのに従来型のイメージセンサーの新工場建設に、総投資額8000億円の所、7000億円の補助金を出すという。
その他では、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行という日本のトップ企業が出資する、回路幅2ナノメートルの最先端半導体を量産する予定のラピダス(北海道千歳市)への補助が際立っている。これまでの3300億円に、今年度も5900億円を補助するという。
そのラピダスは、量産開始まで5兆円の投資を予定しているというが、その内、22~27年の研究開発段階で2兆円が見込まれ、その全てを政府の補助金でまかなうという。トヨタなど9社は計73億円の出資、1社あたり9億円でしかないし、今後の追加出資も決まっていないという。
ちなみに、米国の補助率は5~15%、独は最大50%だという。日本はといえば、すでに好業績を上げている企業であってもリスクは引き受けずに済み、国が丸抱えする形だ。
政府は、慎ましく暮らす生活保護費を4年間で670億円を削減した。その100倍レベルもの補助金を〝経済安保〟という国策の下、好業績の企業に注入することに少しの躊躇もない。
◆政府の補助金は、全て企業へ
これまで見たように、政府の補助金は、なぜか、個々の労働者・生活者に直接届ける、というものではなく、全て企業への補助金であることにその性格が象徴されている。制度の管理上の面もあるが、逆に企業のさじ加減の余地や企業による不正を招きかねないやり方でもある。
ガソリン補助金や電気・ガス補助金も同じだ。補助金は全て石油元売り会社や電気・ガス会社に給付される。その石油元売り会社にすでに補助金6兆円、電気・ガス会社には3兆円、計9兆円以上が給付されている。
ガソリン補助金は、車両を大量に稼働する運送会社や、より高排気量の車の保有者に多くの補助金が投入される。電気・ガス高対策も同じだ。企業でも個人でも、大規模需要者ほど、補助金の恩恵が受けられるわけだ。
逆に、原則、自家用車を持てない生活保護者には、直接の還元・恩恵はない。要するに、逆進性をはらむ補助金なのだ。6兆円対670億円、100倍だ。ここにも政策のゆがみが象徴的に現れている。
付け加えれば、コロナ禍での雇用調整助成金。これも労働者への直接的な助成金ではなく、解雇せず休業手当を支払った企業への補助金だった。
ガソリン補助金や電気・ガス代への補助金も、確かに個々の被雇用者や生活者への間接的な助成になっている面もある。が他方では、ガソリン消費の節約や電気・ガス節約などへの動機付けを薄めるものでもあり、省エネ指向にも逆行している。なによりも、石油元売りや電力・ガス会社への需要維持による、企業収益へのテコ入れの性格が色濃い助成制度と言う他はない。
◆企業利益優先の《連合》
政府による半導体企業などへの補助金。それらはあくまで企業への助成であって、その結果企業の業績が改善し、顧客や従業員にも還元されるのなら、まだ理解も出来る。が、『ワーカーズ』2月1日号や10月1日号でも見てきたように、企業利益は株主や経営者に手厚く配分され、内部留保として企業内に溜め込まれるばかりだ。労働者は実質賃金の目減りから抜け出せず、最近の物価高でも苦しんでいる。
これでは、政府の企業支援は、企業収益と労働者の生活改善という好循環にはほど遠く、結局は、企業や富裕層を潤すだけの結果に終わっている。こうした現実を、労働者・生活者は、怒りを持って受け止める他はない。
労働組合の最大のナショナルセンターといわれる日本労働組合総連合会(連合)は、今年の春闘でも物価上昇を補填する賃上げも獲得できず、実質賃下げを余儀なくされている。要するに、連合は企業が容認する賃上げレベルを突破する力も気概も、持ち合わせていないのだ。
その芳野「連合」は、5月のメーデーへの招待に続き、10月5日の連合大会にも首相を招待した。岸田首相の形ばかりの賃上げ提唱に依存するばかりで、前述のような岸田政権の企業優先政治への批判的視点や対決姿勢はまったく見えない。
岸田政権の大企業優先政治と対決すると同時に、連合の解体とまっとうな労働組合としての再組織化が不可欠だ。(廣)
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旧統一教会解散請求だけで事は終わるのか
旧統一教会への解散命令請求は、衆院解散戦略の一環
十月十三日、宗教法人法に基づき文科省は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。これまで約一年にわたり、かつ七回の質問権行使などを通じて文科省が証拠を集めた結果、「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあると判断したからだ。岸田首相が昨年十月の参院予算委員会で宗教法人の解散命令を裁判所に請求する要件に「民法の不法行為も入りうる」という法解釈を披露し、民法上の違法行為でも「組織性、悪質性、継続性」の三要件を満たせば解散命令を請求できるという政府見解を示したことが、今まさに現実になったのだ。
政治評論家の本澤二郎氏の解散命令請求への見解は以下のとおりで、私も同意する。
「岸田首相にとっては、旧統一教会への解散命令請求は、自身の衆院解散戦略の一環なのでしょう。解散・総選挙が年内にもあると言われている中で、教団と自民党がズブズブの関係だというイメージを選挙前に払拭し、少しでも支持率を上げたい。そのためのアリバイづくりという政治パフォーマンスの側面があることは否めません。解散命令の決定までには今後、何年もかかるとみられている。請求を出したことで、この問題にケリをつけたように見せかけ、長期の裁判の間に国民が忘れるのを待つ意図が感じられます」
この説明のように、この日、六本木の高級ステーキハウスでの会食に向かう前に岸田総理は新聞記者の取材に応じ、「自民党の国会議員の多くが社会的に問題のある旧統一教会、関連団体と接点を有していたことが明らかになったことについては、国民の皆さまに政治の信頼を傷つけたということで改めておわびを申し上げたい」と実に神妙な顔をつくろいつつ、「自民党として、旧統一教会との関係遮断を徹底したい」と強調したのである。
自民党の国会議員と旧統一教会は本当に関係を断ち切れるのか?
また同日、旧統一教会との親密な関係が疑われながら、これまで説明を拒んできた細田衆院議長も会見を開いた。そして体調不良で議長を辞任すると表明した。質疑応答では、かねてから指摘されてきた旧統一教会との関係や週刊誌で報じられた女性記者らへのセクハラ疑惑についての質問が出たのだが、細田議長は頑として何一つとして認めなかった。
安倍元首相が殺されたことと旧統一教会の問題は「全く関係がない」。旧統一教会の票の差配には「私は一切関わっていない」。さらに「いろんな噂があるとは聞いた」「実質は何もない」「特別な関係はない」、と破廉恥にも細田議長は全否定して見せたのである。
旧統一教会関連の会合に分かっているだけでも八回出席した細田議長は、二〇一九年には旧統一教会系の天宙平和連合(UPF)が名古屋市内で開いた国際会議で「韓鶴子総裁の提唱によって実現したこの国際会議の場はたいへん意義深い」「今日の盛会、そして会議の内容を安倍総理にさっそく報告したいと考えております」などと旧統一教会を喜ばす祝辞を述べておきながら映像まで残っているのに、まだリップサービスだったととぼける。
同じく旧統一教会と昵懇だったとされる自民党の萩生田政調会長も、解散命令請求の決定を受けて、「当該宗教法人と関係を断ち、適切な政治活動を心がける。今後もコンプライアンスに努める」と発表した。まさにこれは蛙の面に小便のふてぶてしさではないか。
その他にも大物の下村博文氏、山際大志郎氏、そして山谷えり子の面々がいる。
実際の所、これまで旧統一教会から秘書を派遣されたり、選挙で支援を受けてきた自民党議員は沢山いたし、無報酬でフル稼働してくれる旧統一教会の信者なくして選挙を戦えない議員もいる。だから彼らと関係を断ち切ることができないことは明かなのである。
そもそもこんな形だけの解散命令請求でお茶を濁して、世間を渡ってゆけるほど世間は甘くはない。しかも旧統一教会も自民党の裏切りと考えるのは間違いがないことである。
旧統一教会の反撃とはどのようなものか
十月十六日、高額献金問題などを巡り文部科学省から解散命令請求が出されたことを受けて、旧統一教会は東京・松濤の本部で記者会見を開き、「残念で遺憾だ」との見解を発表した。岡村法務局長は冒頭、「政府や社会に教会の真実の姿をお伝えできなかったことについては反省もしている」と弁明したものの、被害者らへの反省や謝罪の言葉はなかった。そして福本修也弁護士は文科省の対応について「具体的に何条に違反しているから解散命令を請求するという土台すらなく話にならない」と批判。福本氏は解散命令請求はいわば死刑求刑とし、殺人罪を定める刑法百九十九条のように、どの条文に違反するかを明示するのが当然だとの論を展開した。だがこのような法解釈論では敗訴は決定的だろう。
記者との質疑応答では、一部の記者の質問に福本弁護士が苛立った。解散命令請求を許した法務や顧問弁護士の責任について問われると、「無意味な質問で答える必要はありません」とばっさり。最後まで闘うかどうか聞かれた質問については「この事件では和解なんてありえません」とせせら笑うような態度である。一体何のための会見だったのか。
また解散命令請求についての審理は、東京地裁で非公開手続きで行われる。この点に関し、福本弁護士は「憲法にも関わる法律問題です。公にしてほしい。適宜、主張や反論は開示していきたい」と話した。実際、自民党内には、旧統一教会はまだ知られていない自民党議員との関係を次々と暴露するのではないかと怯える声も聞こえてくる。それだけ蜜月の日々だったということでもあり、関係する議員が百余名を超えるとまで言われてように、ほとんど自民党は総汚染としているといってよいような状況だったのである。
しかも実際に解散命令が出るかどうか、決定まで何年かかるかも分からない。実際、過去の例でいえば、一方で前例となるオウム真理教の場合は幹部がこぞって逮捕されていたこともあり、約七カ月で解散命令請求が確定したが、他方で霊視商法の明覚寺は、刑事事件で有罪になっていたにもかかわらず、結審に至るには約三年もかかったのだ。
このように旧統一教会への解散命令請求は、刑法上の違反ではなく民法上の不法行為を根拠としていることに対して、旧統一教会側は時間稼ぎの徹底抗戦の構えなのである。
旧統一教会を取材し続けてきた、ジャーナリストの鈴木エイト氏の見解
これに対して旧統一教会を取材し続けてきた、ジャーナリストの鈴木エイト氏の見解は、「岸田首相が旧統一教会への解散命令請求に踏み込んだことは評価します。教団の規制や被害者救済は絶対に必要です。一方で、これだけの深刻な問題がなぜ何十年も放置され、多大な被害を生んできたのかということを考えると、自民党との関係を抜きには語れないでしょう。ところが、自民党内の調査は不十分で、政治家がどう関与してきたかが解明されていません。衆院議長に就任して形式的に党派を離脱したことや、亡くなったことを理由に細田氏や安倍氏を調査の対象外とした時点で、及び腰でした。岸田首相は旧統一教会の問題に関して、総理大臣としては解散命令請求を出すという大きな仕事をしましたが、自民党総裁としては何もできていない。今回の解散請求と自民党と教団の癒着は別問題であり、岸田首相が本気で教団との関係を断ち切るというのなら、安倍氏に関する調査を含め、徹底して関係を清算する努力をすべきでしょう」と傾聴すべきものである。
臨時国会の焦点になる財産保全法
臨時国会にはすでに立憲民主党が特別措置法案、対抗する日本維新の会が宗教法人法改正案を提出。一方、教団と半世紀超も癒着してきた自民執行部は「財産権を定めた憲法に抵触する恐れがある」と頬かむりだった。それが一転し、与党として独自法案を提出する方向で調整することになった。一体なぜなのか。その理由はあまりにも明らかである。
それは、発足二年となった岸田政権への「中間評価」との位置付けだった衆参ダブル補選が「増税メガネ」への嫌悪感の飛散により、岸田自民党は一勝一敗で事実上敗北したからである。それでも来秋の党総裁選において無風再選をまだ諦めていない岸田首相にとって新たな人気取りのため、今度は野党の手柄の横取りを狙ったのだということであろう。
実際、補選から一夜明けた二十三日、自民内で急浮上したのが旧統一教会の財産保全に向けた法整備である。東京地裁に解散命令請求を申し立てられている旧統一教会は、命令の確定によって宗教法人の財産を裁判所が選任する「清算人」が管理することから、この間に本拠地の韓国などに移す財産隠しを疑われているのである。
ここで各党の財産保全法を一瞥しておく。立憲案は二年の時限立法、維新案は恒久法と違いはあるが、審理中は財産を保全するという大筋は同じ。しかし自民党案はザル法だ。
「宗教法人が財産を移動する際には国への報告を求め、賠償のための財産が損なわれる恐れがあると判断した場合は、裁判所に保全請求する案が検討され」るというものである。
自民党が及び腰になる理由
実際、創価学会が支持母体の公明党と連立する岸田政権にとって、宗教は鬼門なのだ。
「宗教法人にとって憲法とも言える宗教法人法の改正には、宗教界の猛反発が予想されます。オウム真理教による一連の事件発生後の改正をめぐっても、創価学会をはじめとする激しい抵抗があり、一筋縄ではいかなかった。会期の短い臨時国会で宗教法人法に手を入れるのは無理筋。旧統一教会にターゲットを絞った特措法をまとめるのが定石」である。
臨時国会での財産保全法の焦点は、立憲民主党や日本維新の会が旧統一教会が被害者の賠償に充てるべき資金の隠匿や散逸を防ぐ財産保全の議員立法を提出する方針に対して、自民党はどのようなものとなるかは不確定的である。この一点においても、旧統一教会との関係を断絶する気が本当にあるかも疑わしいといえるのである。
解散命令請求で事が終わるものでは決しない。自民党が今後どのように旧統一教会に対応していくのか、また今後の選挙で支援を受けることは本当にないのか。有権者は厳しく監視し続ける必要があると考える。 (直木)
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杉田水脈議員のような差別主義者を庇護する 自民党の体質こそ重大問題
■コリアンやアイヌに対する人権侵害事件と排外主義
杉田水脈議員はアイヌ民族に対する差別的な投稿を行い、札幌法務局から「人権侵犯の事実があった」とすでに9月に認定されました。彼女は2016年に国連での会議について、写真とともに「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」などとブログに投稿しました。
さらに、杉田水脈議員による、自身のブログへの投稿で人種差別を受けたとして、大阪府の在日コリアンの女性ら3人が法務省に救済を申し立てた問題で、同省が杉田氏の投稿3件を「人権侵犯」と認定したことが10月に報道されました。また、同じ趣旨の投稿がフェイスブックやツイッターにもされ、同省はこの3件を人権侵犯と認定し、杉田氏に人権を尊重するよう啓発したと説明したということでした。国会議員が「人権の啓発を受ける」とは前代未聞です。
その後、彼女はこの投稿を一応削除しました。しかし、このような行動は多くの批判を引き起こしてきたのは当然です。
■安倍氏らに誘われて自民党入り
杉田水脈議員は「みんなの党」から「日本維新の会」へ鞍替えしています。そして、2017年の衆議院選挙では自由民主党から立候補し、再び国政に戻りました。この経緯をたどれば杉田水脈議員が自由民主党に入党した理由は、彼女自身の政治的価値観、そして安倍晋三氏などからの支持と勧誘によるものです。ウィキペディアによれば『日本軍による慰安婦の強制連行はなかった』などの杉田議員の発言が安倍元首相に気に入られ、杉田氏とは縁もゆかりもない安倍元首相のお膝元である比例中国ブロックで出馬。比例名簿の上位に据えられ、”特別枠”で当選を重ねてきた、と指摘されています。
安倍晋三元総理は杉田水脈議員を重用しており、桜井よしこ氏によれば、「安倍さんが『杉田さんはすばらしい』と言うので、萩生田(光一・現自民党幹事長)さんとかが一生懸命お誘いした」とのことです。
「類は友を呼ぶ」とよく言ったものですね。安倍派の一部に入り込んだ形のようです。しかし、杉田水脈議員のような、極端な差別主義者を容認どころか重宝しちやほやしてきた自由民主党という政党こそが一層問題です。
岸田総裁は、議員辞職相当の杉田水脈議員を自由民主党の「環境部会長代理」に就任させました。部会長代理は、その部会をまとめる部会長に次ぐポジションで、自民党内で環境問題などについて議論する部署のナンバー2となります。この人事は、杉田氏が札幌法務局から人権侵害を指摘された直後に行われましたが、国民感情を大いに逆なでする人事と言わざるを得ません。岸田首相の人権感覚が問われる人事です。
■新自由主義もしくは選民・選良思想
杉田水脈議員は2018年7月に「こどもを作らないLGBTには生産性がないから税金の無駄」と雑誌上で主張したことがあります。彼女の思想の背景にあるのは「生産性のない人間」が生きることを否定するという発想であり、障害者や認知症患者を始めとする社会のマイノリティーの人権を踏みにじるものです。
「生産性のない人間」だからダメと言う考えは、神奈川の障がい者施設で十九人が、元職員によって惨殺されましたが、その犯人が語る「不幸な人」「家族の負担」ゆえに「死」をという犯罪の正当化と類似しています。しかし「社会にとってのお荷物」と言う場合、その社会の中身が極めて狭苦しく理解されています。つまり企業のような特殊な価値観で成り立つ「社会」のことです。たしかに新自由主義が施設職員個人やまで蔓延していることを意味します。
ただし政治家としての杉田水脈議員の思想は、排外主義などとも結びつくことで選民・選良思想だというべきでしょう。選民思想とは、特定の集団が神や歴史によって選ばれているという思想であり侵略イデオロギーに容易に転化します。選良思想とは、国家や社会を運営するにあたって、優れた能力や資質を持つ少数の人々(選良)に権力を集中させるべきだという思想です。これもまた国内での階級差別や「障がい者」の抑圧へと向かう可能性があります。
歴史上、このような例はいくつか見られます。例えば、古代ユダヤの選民思想は、ユダヤ教徒が神によって選ばれた民であり、イスラエルという国家を建国する使命を負っていると主張するものでした。現代においても、例えば、アメリカ合衆国においては、白人が神によって選ばれた選良であるという思想が、白人至上主義の根底にあると考えられています。
選民思想と選良思想が結びつくと、特定の集団が優越し、他者を排除する強固な思想につながる可能性があります。まさに杉田水脈議員のこのような思想は、危険このうえないものがあります。
■歴史修正主義と観念保守主義
新しい歴史教科書をつくる会は、1997年に結成された日本の反動団体です。従来の歴史教科書を「自虐史観」だと切り捨て、新しい歴史教科書を主張。杉田水脈議員は、2013年に同会に入会し、理事などを務めています。杉田議員は、同会の主張を公然と支持しており、2019年の衆議院議員選挙では、同会の教科書を採用する学校を増やすための政策を掲げました。同会の教科書において、日本の植民地支配を肯定する記述や日本の軍国主義を美化する記述を拡大しました。
杉田水脈議員の思想性からすれば、この戦前戦後の歴史歪曲は不可避な行動です。同時にまた戦前保守派の家族主義をさらに矮小化した社会観、特に男女差別撤廃に対する嫌悪や保育や学童保育への否定的視点も彼女の特質です。
しかし、同議員は物議をかもす「自民のトンデモ議員」と言うことではありません。自民党安倍派に感化され「激励された」と言うばかりではなく、愚劣な二世議員だらけの自民党を席巻し今後の日本を危険な道に追い込む恐れすらあります。旧統一教会問題で暴露されましたが自民党は反社会的なカルトの「家庭」「家族」教義をも受け入れて政治をゆがめてきたように、自民党の思想的危うさは深まっているからです。(阿部文明)
読書室 『同盟は家臣ではない』孫崎 享著 青灯社 千九百八十円 二〇二三年八月刊
〇本書は、外交官として各任地で諜報活動に従事し、その後外務省の岡崎久彦国政情報局長の下で分析課長として活躍した孫崎氏の著作である。岡崎氏は孫崎氏の能力を一貫して擁護してきたが、対米従属を批判してきた孫崎氏は結局のところ、防衛大学へと配置替えとなってしまった。このように孫崎氏は日本の安全保障の歴史と政策に詳しい人物だ。その人物が「これまでの日本外交・安全保障政策は『米国を喜ばすためだった』」と、一言で言い切ったことに本書の価値がある。また「米国が日本を守る」は幻想、米国の「核の傘はない」等々の、本書で論議されている論点や主張は、すべて部外秘や機密文書指定されていた外交文書、キーパーソンの証言などで裏打ちされているものばかりなのである〇
孫崎氏は、本書の第一章において重要なのは、安全保障を考える時の視点が大切だと力説する。現状認識は必須だが、それ以上に重要なものは問題意識や価値観でそれを見るかだとする。孫崎氏は、当該国の悪を見はするものの、「その悪はその国の歴史の流れで変化するのであり、軍事的対決は無用の悲劇を双方に出す」とのハト派の立場に立つ。
孫崎氏のこの立場は、まさに日本国憲法が擁護する立場であろう。孫崎氏が外務省を結局は追われることになった理由も対米従属に反対する対米自立の姿勢にあったのである。
孫崎氏の護憲の観点から見れば、そもそも「憲法違反」の自衛隊の前身となる「警察予備隊」が国会での討議なしの「政令」で実現されたことの問題点はすぐに気づくのである。
さらにその自衛隊を専守防衛から敵基地攻撃能力を持つ「軍隊」へと名実ともに変貌させ、五兆円から八兆円近い「異次元の軍拡」を実現する「安保関連三文書」は、これまた改憲手続きなしに、ただ一片の「閣議決定」だけで決定し、強行されているのである。
日本国民の実に多くの人々が「有事にはアメリカが守ってくれる」と信じている。しかし孫崎氏は、安保外交史を解説することでそれが「神話」に過ぎないことを示すのである。
米国が日本を防衛するのは米国議会が承認した時だけなのだが、その日米安保条約を疑いもせず、「自分自身で考える権利」を放棄し米国に追従するだけの日本。日本国政府や国民は、台湾有事が勃発するなどと同盟国・米国に乗せられて、その実は米国の対中強硬策に巻き込まれる「最悪の事態」の危険性を真剣に考えたことがあるのだろうか。
ウクライナ戦争を前にして自立心の強いマクロン仏大統領は、「米国の同盟国であることは米国の家臣になることではない」と喝破した。本書の題名は、マクロンの言葉の引用である。このマクロンの一言に、孫崎氏の思いも集約されているといえる。
孫崎氏の考える日本独自の安全保障については、終章において十二の原則を示して解説する。現実を見ることができる、そして「米国を恐れ」ない読者の熟読を期待する。
さて本書において特記されていることがある。それは安倍晋三元総理の暗殺事件に関してのものである。情報の取り扱いに慎重な孫崎氏は、勿論根拠なき夢想を書きつけはしない。誰にでも確かめられる確定的な事実しか示していない。ここが最重要なことである。
暗殺前の安倍晋三元総理はプーチンの発言をしばしば擁護していたこと、またそれに対してろ昨年の六月には「勇ましさに潜む『自立』と『反米』 安倍元総理の危うい立ち位置」(エコノミスト・オンライン)との「不思議な記事」が公表されていたこと、さらに日刊ゲンダイに掲載された孫崎氏が書いた記事を引用し、山上被告と安倍元総理との位置関係では山上被告は安倍元総理の後方にあり、検視した福島教授の説明のように安倍元総理を狙撃したのは前方ないし右からとの説明とは食い違いがあるとし、「山上被告以外に犯人がいる可能性があるにもかかわらず、なぜ当局は解明する努力をしないのであろうか。私はいろいろと推測しているが、ここでは事実を記述することに徹したい」と孫崎氏は書くのみだったが、本書で岸田政権での安倍元総理への憤りを持っていたとも書いている。
私が思うに、孫崎氏はこの事実を出版物として残したかったのではないだろうか。
とにかく本書は、立民等の護憲派がロシアのウクライナ侵攻の前に崩れ去ったことはなぜかを知る意味でも必読書と言えるのではないか。読者に一読を薦めたい。 (直木)
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橋川文三『黄禍物語』を読んで
●帝国主義と人種差別
第一次世界大戦は、一般的に「植民地争奪の帝国主義戦争」と評価されている。しかし橋川文三は、そこに「人種主義」の要素があったことを重視し、西欧中心の「黄禍論」について問題提起した。
●黄禍論の源流
橋川は欧州の白人社会における歴史認識に古代から「アジア人の侵略」の記憶が影響していると指摘する。
古代ギリシャを侵略したペルシャ帝国、アッチラ率いるフン族によるハンガリー侵略、その影響で始まった東ゴート族の大移動、イスラム率いるアラブ人による地中海支配とフランク王国のトゥール・ポアチエの闘い、モンゴルによるモスクワ公国の属国化(タタールの軛)、オスマン帝国による東・南欧侵略、等々等々。
これらの歴史記憶が、黄禍論に物語的に装飾していて、根深いものにしていると言う。
●十九世紀に現実問題に
黄禍論が単なる「歴史記憶」から「現実問題」として欧州で政治的な力を持ち始めたのは、十九世紀後半に中国がイギリスの植民地化に強く抵抗したこと(孫文の運動など)、日本が明治維新後「富国強兵」を開始したこと、この動向に「近い将来、日本と中国が同盟して欧州を攻めてくるのではないか」と懸念を抱いたことに始まる。
実際、ドイツ皇帝は「黄禍論」に基づいて、ロシア皇帝に「日本・中国と闘うべし」という書簡と「版画」を送った。大天使ミカエル率いる欧州の民衆が武装して、大仏に率いられるアジア人の侵略軍と闘う図である!
●移民排斥を扇動
黄禍論の被害者は、日系移民や中国系移民に対するアメリカ合衆国の排斥運動(労働が奪われる!)による差別を受けた移民労働者であった。
それらは、帝国主義戦争(日露戦争、第一次大戦・シベリア出兵、満州事変、アジア太平洋戦争)と結び着いて「人種差別戦争」の要素があった、と橋川は指摘する。
●黄禍論の矛盾
黄禍論は、実際には日本と中国を標的にしたもので、様々な矛盾を孕んでいた。
まず黄禍論に対する中国と日本の対応が違った。中国は黄禍論をバネに欧州白人社会を「白禍論」で全面対決を挑んだ。これに対して日本は「日本人種は決して白色人種に劣っていない」「むしろアジア地域の盟主・リーダーだ!」と、黄禍論に一部迎合した。その一方でアジア地域には「大アジア主義」を鼓吹して日本はアジアを白色人種の植民地支配から解放するというプロパガンダに黄禍論を利用した。
欧州も社会ダービニズムを利用して「科学」を装い白色人種優越論を展開した。それはナチスのユダヤ人迫害に利用されたが、今日その非科学的内容は暴露されている。
また欧州では「モンゴルの侵略の再来!」とあおったが、そもそもモンゴル帝国は、中国などアジアをも侵略している。黄禍とモンゴルの侵略は歴史的には一緒くたにはできない。
●黄禍論も白禍論も同罪
にもかかわらず人種差別は、今日まで帝国主義戦争や移民労働者排斥を正当化するプロパガンダに利用されている。
ただ「黄禍論」も「白禍論」も「ユーラシア大陸」の「欧州帝国」とかつての「中華帝国」の勢力争いの物語であって、アフリカ大陸や南アメリカ先住民は視野の外であった。
その流れは、今日のロシアの「ネオユーラシア主義」なるグロテスクなイデオロギー(ウクライナはロシアの属国)につながっている!
ウクライナを支援する西欧も「ネオユーラシア」を標榜するロシアも、是々非々を装う中国も、所詮グローバルサウスの民衆から見たら「南を収奪してきたユーラシア大陸のコップの中の争い」にしか見えないのだ。その意味では同罪なのだ!
●グローバルサウスの眼
グローバルサウスの民衆も、ウクライナ民衆の闘いに共感や同情を抱いてはいるはずだ。
その足を引っ張っているのが「黄禍論」と「白禍論」の二つの狭量な「ユーラシア人種優位論」の歴史記憶なのではないだろうか?
●高校歴史教育では?
日本の高校歴史では、黄禍論はあまり教えていない。それは黄禍論が「鬼畜米英」や「大アジア主義」に利用され、満州事変やアジア太平洋戦争を正当化する要素があるためと言われる。しかし今日、新たな視点(グローバルサウスの視点)で、高校歴史教育に慎重に入れる検討を始めるべきではないだろうか? (冬彦)
なんでも紹介 オンブズな日々
9月23・24日、全国市民オンブズマン30回大会「DXってなんだ? 退化する情報公開」が仙台で開催されました。第1回が仙台、そして10回と30回、三度目の仙台市での開催でした。文字通り、仙台の弁護士さんたちが先頭になって広めてきた活動でした。30回大会を記念して座談会「市民オンブズマンと情報公開の30年」があり、そういうこともあったと懐かしくなりました。
官官接待や北海道警察の裏金問題、内部告発から発覚した不正に対する怒りがさらに運動を活発化したことなど、当時を振り返る話で会場も盛り上がりました。官官接待では、地方自治体への情報公開請求によって全国の自治体で慣例として行われていることが明らかになりました。公費(食糧費)の不正支出は全国で年間300億円にも上り、それを捻出するためにカラ出張などの帳簿操作が行われていたことが明らかになりました。
兵庫県におけるオンブズマン活動もこの官官接待(職員による公費での飲食)の告発、裁判闘争から始まっています。私が参加している市民オンブズ西宮の結成は2001年6月、武庫川ダム建設計画や立体交差による阪急甲陽線一部地下化問題、住民基本台帳ネットワークシステムの稼働などが課題となっていました。武庫川ダム建設と甲陽線地下化は、多くの市民団体の力で撤回となりました。武庫川はダムではなく、総合治水対策が取り組まれています。
また、住基ネットでは全国で違憲訴訟が取り組まれ、住基カードは普及することなく消え去りました。そのリベンジで登場したのが、マイナカードという〝国内パスポート〟です。任意のはずなのに、保険証を廃止して強制しようとしています。
西宮市に対する取り組みとしては、市職員自治振興会補助金不正流用や市議会政務活動費(政務調査費)違法支出に対する追及などがありました。どちらも返還請求の住民監査請求・住民訴訟によって成果をあげてきました。自治振興会訴訟では約8000万円返還の判決となり、最終的に自治振興会(職員互助会的組織)は西宮市に5億円近い金額を返還しました。
政活費訴訟では、数度の裁判を経て使い放題だった状態は大きく改善され、交付額も月額15万円(年額180万円は非正規の方の年収に匹敵します)から12万円へと減額となりました。領収書等のネット公開も勝ち取り、情報公開度ランキングも中核市で6位となっています。ちなみに、兵庫県議会は都道府県で1位、号泣議員の件をきっかけに公開が進んだ結果です。
DXってなんだ?
今年の全国大会のスローガンはDX(デジタルトランスフォーメーション)を問うものでした。それで、「自治体デジタル・トランスインフォーメーション(DX)推進計画」って本当になにか。①自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる。②デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく、ということのようです。
現実はどうでしょう。デジタルを振り回すことで、むしろ混乱がもたらされています。それは、マイナ保険証の混乱で破綻に瀕する皆保険制度をみればわかる通りです。アメとムチによるマイナカード普及策、これは個人情報を収集・活用しようというものであり、〝住民の利便性向上〟とは無縁です。利便性というなら、廃止されようとしている紙の保険証が最も便利です。
むしろ問題は、行政・政府の、立法・政治家の情報が隠され、これを司法・裁判所がお墨付きを与えていることです。闇に隠されている不都合な情報がデジタルで公開されるなら、どれほど政治的汚濁(悪事)が正されることか。全国大会では、進まない自治体デジタル情報公開制度(退化する情報公開)を取り上げています。
自治体における情報公開制度の重要性はあまり知られていませんが、行政や議会のチェックには欠かせない制度です。西宮でも委員会はまだですが、市議会本会議は傍聴できなくてもネットで録画を見ることができます。政務活動費支出もネットでチェックできるようになっており、コピーでの公開だったときは5000枚の情報公開に5万円かかりました。
いまでもコピーの公開は1枚10円ですが、CDーRなら未使用のものと交換できます。もっと進んでいる自治体では、メールで公開も行われています。行政文書としてあるものは、行政施策の計画過程なども知ることが出来ます。一方で自治体も隠したい情報はあれこれ理由、例えば会議録の公開が「率直な意見の交換、意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れ」何ていうこじつけで非公開としたりしています。
現状について、大会は次のような評価を行っています。「情報公開の分野のDX化の動きは、極めて鈍い」として、「情報公開制度のDX化により、行政情報の開示がメールや電子申請によって容易に行え、デジタル情報として安価にメールで開示されるようになると、市民の間での情報の共有化が進み、情報公開制度が政治参加や行政監視のための新たな局面を切り拓いていくことが期待できる」と結んでいます。
マイナ保険証分科会でマイナ漬け!
マイナひも付けで間違い続出、窓口で顔認証できない、暗証番号わからない、何割負担かでも間違い、まさにマイナ保険証は前途多難といったところです。それを数字で示すと、実際のマイナ保険証の利用は約734万件(8月)にすぎません。そこで考え出されたのが、マイナ保険証「一度使って」キャンペーン。これほど情けない現状で、紙の保険証をなくすというのは自殺行為です。
ひも付け間違いは同姓同名などで起きているようですが、それは漢字の読み仮名に問題があります。分科会の講師は今田さんでしたが、読みは「こんた」が正しいが「こんだ」と名乗っているそうです。しかし、普通には「いまだ」と読むでしょう。
これをどうするか、6月に可決されたマイナ束ね法案に『戸籍等の記載事項への氏名の振り仮名』の追加」がありました。これで読みを間違うことはなくなるというわけですが、いっそ戸籍など廃止したらいいのではと思うのは私だけでしょうか。
政府がめざしているのはSociety5・0(経団連による)の医療版(医療DX)というものらしいのですが、要は医療機関から医療情報を集めて「匿名加工医療情報」(ビッグデータ?)を提供する。それによって、医療を標準化するということか。内閣府科学技術・イノベーション推進局は次のようにな分析を行ってます。
「医療デジタルツインの市場は、2021年時点のグローバルで約3兆円、国内で2000億円程度と推計される。グローバル市場では、今後5年間で年率30%越えの市場成長が見込まれる」
*デジタルツインとは「現実世界(物理空間)の情報をデジタル化し、仮想空間(デジタル空間)上に再現したモデル」だそうです。
これに乗り遅れるな、「2033年時点で数千億円の国内市場を創出する。国内で成長した日本の事業者は、海外主要市場においても競争力を獲得する」という皮算用のようです。何のことはない、マイナ保険証で医療情報を集めて儲けよう、個人のプライバシーなんか気にしていたら競争に勝てない、利用すればいいという発想です。
分科会担当の清水勉弁護士は、まとめとして「マイナ保険証がないと医療を受けられないという仕組み、これまでの健康保険証が使えない」ことが問題だと指摘しました。カードは申請主義、「持たない」(申請しない)ことが最善策なのです。
また、カードの有効期限は18歳以上は10年、未満は5年、期限が来たら申請しなければならない。さらに、電子証明書の有効期限は5年、更新を忘れたらマイナ保険は使えなくなる。紛失したら再発行料1000円、その間は使えない。実に不都合なことだらけ、医療機関で顔認証できなければ途方に暮れる。万事休す・・・
仙台市博物館敷地内にある魯迅像!
オンブズマンの全国大会は国内各地で開催されるので、私も北は函館から南は別府まで旅行する機会を得て、大いに〝見聞〟を広めてきました。今回、会場の仙台弁護士会館が青葉通り沿いにあり、その先に広瀬川がありました。橋を渡って右岸に仙台博物館がありました。残念ながら休館中だったのですが、その庭園(山の上に仙台城址がある)に魯迅像と碑、さらにに盧溝橋事件30周年記念「日中不再戦の植樹」もあり、碑の題字は郭沫若氏が揮ごうしたとありました。ちなみに、ウィキペディアには下記のような解説が記載されています。
《魯迅は、1904年(明治37年)9月から1906年(明治39年)3月までの約1年半しか仙台にいなかったが、仙台市や東北大学では、様々な面で魯迅を通じた交流を中国と行っている。中国人にとっては、東北大学・片平キャンパスにある(旧)仙台医専の「階段教室」がよく知られており、1998年(平成10年)11月29日には江沢民・中国共産党中央委員会総書記も訪問している。訪問した中国人は、魯迅がいつも座っていたとされる同教室の中央帯、前から3番目の右端近くでの記念撮影をしている。その他、同キャンパス内に「魯迅先生像」(1992年10月19日設置)、仙台城三の丸の仙台市博物館敷地内に「魯迅の碑」(1960年12月設置)と「魯迅像」(2001年設置)がある。また、「魯迅旧居」が片平キャンパス正門近くにあったが、2019年5月に解体され石碑のみが残る》 (折口晴夫)
第30回全国市民オンブズマン仙台大会 2023 大会宣言
2023年9月23日から24日にかけて、全国市民オンブズマン仙台大会を開催した。30回の節目を迎えた大会で、私たちは「DXって何だ? 退化する情報公開」というメインテーマを掲げ、総務省が進める自治体DX推進計画の一方で、情報公開制度がどのように扱われているかを調査した。ところが、多くの自治体では情報公開の利便性は限定的で、かえって自治体情報のデジタル化を契機として、利用者にコストを付加する自治体も現れた。こうした動きは情報公開請求に受益者負担の発想をもちこむものであり、民主主義のために必要不可欠な情報公開の理念に逆行する。
また、今回調査した権利濫用条項は、自治体によって基準や手続が整備されていない実情も明らかになった。これが情報公開における受益者負担の発想とつながるとき、情報公開そのものが否定されるおそれを指摘した。
一方で、市民に対する情報公開がもっとも遅れている政務活動費について、今年も全国で不正支出が相次いだ。「情報が公開されない公金支出に腐敗あり」という事実は、私たちの発足当時から30回の大会を経ても真実でありつづけている。私たちはあらためて政務活動費の使途について監視を続けていかなければならないことを確認した。
さらに、今大会では、マイナ保険証の問題点について議論した。長年培われた地域医療の実情を無視した、実情に合わない不便なデジタル化の強制という時代錯誤の政策が、地域医療の崩壊と、住民に大混乱をもたらしていることが報告された。
30回を記念する今大会の座談会で、情報公開によって得られた事実をもとに議論をすること、仲間と一緒に楽しんで活動することが市民オンブズマンの核であることを確認した。そのうえで、情報公開制度の真のデジタル化が、市民によるデータベースの構築を促し、これを市民による行政監視の大きな武器とする将来への展望をもち、以下のとおり宣言する。
記
1 市民が使いやすい情報公開制度のデジタル化を進めさせること
2 権利としての情報公開を実現させるため、情報公開請求に対する受益者負担の導入を監視すること
3 情報公開請求の権利濫用が「濫用」されることがないよう、監視を続けること
4 現行の健康保険証を維持することを前提に、マイナ保険証一本化の見直しを求めること
5 市民オンブズマン活動で培った知識・経験・情熱を次世代や地域に広げていくこと
以上
*大量の公文書公開請求に対する公開期間の延長、〝権利濫用〟と判断した場合の公開拒否等の規定が設けられようとしている。
9月末のマイナンバーカード普及率
有効申請受付数(10月1日時点累計) 98,269,874 約78.4%
交付枚数(10月1日時点累計) 96,319,099 約76.8%
保有枚数(9月30日時点) 90,915,526 約72.5%
*最後の数字が実際に機能している保有者数ですが、交付を受けた(持っている)だけの数字です。ひも付けしていないとか、大切にしまっているとか、持っているだけで何も機能していない場合もあでしょう。
コラムの窓・・・新閣僚たちのたわ言!
内閣改造で浮上、その思惑も外れ内閣支持率は低空飛行。10月22日の衆参補選でも敗北感深く、翌23日の臨時国会所信表明演説は「焦る首相解散戦略見えず」(神戸新聞)、「信頼と共感遠い道のり」(朝日新聞社説)、「場当たり対応は通用せず」(毎日新聞社説)、「経済政策の軸足が見えない」(読売新聞社説)等々、批判的評価は当然とはいえ、随分の言われようです。ちなみに、産経新聞は「安全保障をもっと語れ 所得減税の必然性がみえぬ」(主張)でした。
さて、岸田自公政権の新閣僚は何を語るのか、神戸新聞の「閣僚に聞く」から拾って紹介します。あれもこれも憂慮すべき事態に直面していますが、まずはマイナ保険証から。既視感のあるのは当然、医師会のボスだった武見太郎の息子・武見敬三厚生労働相、「利用促進は喫緊の課題だ。自ら先頭に立ち、医療関係者らと連携し、国民に一度は使ってもらえるよう、様々な取り組みを行う」と決意を語っています。ならば、どのような取り組みを行うのかお手並みを拝見といったところです。
東電放射能汚染水垂れ流しが難関の土屋品子復興相、こちらは2世議員。例によって例のごとく、「科学的根拠に基づいて正確な情報を国内外に分かりやすく発信する。またイベントや海外でのトップセールスを通じ、『三陸・常磐もの』と呼ばれる水産物や地域の魅力を発信する」と、オウム返し発言。さらに、「若い世代に放射線の知識や復興の状況を知ってもらう必要がある。復興庁が行っている高校生向けの出前授業などを活用したい。若い人がしっかりした知識を持つことが風評被害対策になる」と言う。これまもう陰謀のたぐいです。
課題山積の小泉竜司法相、死刑執行のハンコを押す役割に関して「個々の事案の関係記録を十分精査し、刑の執行停止や再審事由の有無などを慎重に検討し、その是非を判断すべきだと考える」と微妙は発言です。その一方で、再審制度については「ただちに手当てが必要な不備があるとは認識していない。制度の在り方は、様々な角度から慎重に検討すべきだ」と、うしろ向きの発言をしています。
技能実習制度見直しについてはどうか。「専門的、技術的分野の外国人はわが国の経済活性化に資するため、積極的に受け入れていく。技能実習は国際貢献を看板に掲げる一方、実態は労働力確保で乖離しているとの批判があり、これを解消していく。外国人の人権への配慮も必要になる」と言うのですが、現状は必要な人材より圧倒的に劣悪な労働現場の低賃金労働力を必要としているのです。人権への配慮〝も〟必要なんて空語です。
もうひとり、取り上げなければならないのが木原稔防衛相です。衆院長崎4区補欠選挙の自民党候補の集会で演説し「しっかり応援していただくことが自衛隊ならびにそのご家族のご苦労に報いることになる」と支持を訴え、自衛隊の政治利用と取られかねない発言として批判されているタカ派の防衛相。次のように、発言も強気一辺倒です。
「防衛力の抜本的強化により、日米同盟の抑止力や対処力を一層向上させ、我が国に対する武力攻撃の可能性を低下させることが出来る」
中国の軍事力強化に対して「南西地域の防衛体制の強化は喫緊の課題だ」などと危機を煽り、オースティン米国防長官との会談で巡航ミサイル「トマホーク」の1年前倒し輸入を確認しています。
とまあこんな具合で、この国の前途は依然として暗いというほかありません。岸田さんの話題は暗いに決まっているのに、取り上げてしまってすみません。 (晴)
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「清水三保の化学工場での高濃度のPFAS汚染」明らかになる
★中日新聞のスクープにビックリ
「ワーカーズ」10月号でPFAS記事「静岡でもPFAS汚染問題起こる」を書いて、静岡市清水区三保でのPFAS汚染の問題を報告した。
ところが、10月4日(水)地元の中日新聞が突如として「清水区の米国系工場従業員/血液から高濃度PFAS/08~10年指標の最大418倍」という見出しで詳しく報道する。
「発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)をかつて使用していた静岡市清水区三保の工場で2008~10年の間、1部の従業員の血液から健康リスクに関する米国の学術機関の指標値の最大418倍に上るPFASが検出されたことが、工場の運営会社に出資していた米デュポン社側から米環境保護局(EPA)に送られた文書からわかった」と書いている。
さらに、「この文書は、PFASを巡る米国での訴訟を通じて同国のロバート・ビロット弁護士がデュポン社側から入手した。」と書かれている。
このロバート・ビロット弁護士とは、アメリカのPFAS汚染会社と20年間も闘った弁護士さんで、アメリカ映画「ダーク・ウォーターズ」の原作本「毒の水」を書いた人である。
★「元従業員の証言」・・・素手で扱っていた
その後、中日新聞のスクープに驚いた他の新聞社も独自取材を開始した。
その中で、静岡新聞に「元従業員が証言『PFAS素手で扱った』と書かれていた記事があったので、その内容を紹介する。
「化学工場元従業員の男性(76)によると、高卒後の1965年~勤務していたのは現在の三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場。男性によると、1965年~77年の約12年間、ビニール手袋を付けず、素手でステンレス製のスコップを握りPFASを『素手で扱っていた』と証言した。男性は2年ほど前に舌がんと診断され闘病中だが原因は不明。一方、工場を当時運営していた会社は1980年代初頭に、出資する米国の法人から安全性についての健康上の懸念を指摘されていたことが新たに分かった。」
男性は「現在まで会社から危険性は告げられていない」と話す。しかし、米国でPFASの健康被害を追究してきたロバート・ビロット弁護士によると、米政府から入手したデュポン社の文書では、2008~10年に清水工場の従業員24人に対して血液検査が行われ、米国で健康リスクがあるとされる指標の3~418倍となる、血漿(けっしょう)1ミリリットル当たりPFOAを69~8370ナノグラムを検出したと言う。
★ロバート・ビロット弁護士からの提供内容
ビロット弁護士は、血液検査から約30年前の1981年9月15日、デュポン社側から三井フロロケミカル清水工場(当時)の工場長に宛てた文書も静岡新聞社に提供した。
同文書によると、PFOAを口から吸い込んだネズミの先天性欠損が見つかったため、デュポン社が米国で全ての妊婦をPFOAの暴露の可能性がある仕事から外したとして同工場に健康上の懸念を指摘し、12検体ほどの従業員の血液を米国に送るよう要請していたことが明らかになった。
発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)を使用していた静岡市清水区三保の化学工場従業員の血液から高濃度のPFASが検出された問題で、敷地外の側溝からも2002年、現在の国の目標値を上回るPFASが検出されていたとみられることが16日までに分かった。専門家は「市が行う地下水などの調査で検出される蓋然(がいぜん)性は高い」とする。
★徹底した健康診断と徹底した水質検査が必要
以上のように、ロバート・ビロット弁護士が静岡新聞社に提供したデュポン社側の資料から問題点が色々と明らかになった。
今取り組む最大の課題は健康診断だと思う。現在の従業員だけではなく、過去清水工場に勤務した全社員らも対象にして、また希望する周辺住民も対象にして健康相談を実施すべきだと考える。また、工場周辺の水質検査もが重要だと言える。健康診断や水質検査等の専門家の意見を参考にして、早急に取り組んでほしい。(富田英司)
読者からの手紙・・・破壊と殺人、戦争と対立の歴史を断ち切れーー「自衛権」は正当な権利なのか?!
パレスチナ問題の概要
パレスチナ問題は、民族的・宗教的に異なるユダヤ人とアラブ人(パレスチナ人)がパレスチナの地をめぐって争っている問題だ。
1948年にこの地域で水がある地域にアメリカやヨーロッパの支援を得てイスラエル国が建国され、水の少ない地域に追いやられた先住アラブ人との間で、幾多の戦争経てアラブ人は「屋根のない監獄」と称されたガザ地区、ヨルダン川西岸地区においやられ、その上イスラエルによる一層の入植地の拡大によっていまも解決のきざしが見えていない「世界で最も解決が難しい紛争」ともいわれている。
パレスチナ問題の発端は2000年以上前から起こっているのであり、アジア、ヨーロッパ、北アフリカを結ぶ重要な場所で 当時、パレスチナの地にはユダヤ人とアラブ人が共存していた。 しかし、ユダヤ人国家はローマ帝国によって滅ぼされ、ユダヤ教のユダヤ人たちはここに住んでいられなくなって多くのユダヤ人が流浪の民となった。ユダヤ人はヨーロッパなどに渡り、差別や迫害を受けながらもコミュニティをつくって暮らしてきた。
その後、キリスト教がこの地で生まれるが、ペルシャやイスラム帝国がこの地域を占拠し、この7世紀ごろからはアラブ人もこの地に入ってくるようになり彼らはイスラム教徒になっている。
この地域はいろいろな国、民族、宗教が移り変わって、エルサレムという場所はユダヤ教、キリスト教、イスラム教と3宗教の聖地ともなっており、こうした宗教対立がイスラエル、パレスチナ問題の出発点と見なされてもいるが、アジア、ヨーロッパ、北アフリカを結ぶ重要な場所でもあることから近年水・石油などの資源利得も絡み国際的な紛争地域となっている。
国際的な人道支援と戦争放棄の声を高めよう。
今行われている紛争はガザ地区を支配しているイスラム原理主義組織ハマスによるイスラエルへ越境攻撃と人質拉致事件が端を発しているが、アメリカの支援を得て経済力も勝るイスラエルによる報復攻撃によって多くの死傷者を生んでいるのはガザ地区に住むパレスチナ人である。
人道支援を求め即時停戦を呼びかける国際世論の高まりは高まりつつあるが、国連による幾多の停戦決議案は紛争当事者をそれぞれ支援するアメリカ・ロシヤ・中国などの常任理事国の拒否権によって否決され続けて、国連内部で分裂・対立状態が続いている状況であり、紛争解決の道筋は一向に見えてきていない。国際的な人道支援と戦争放棄の声をより一層高めてゆかねばならない。
「自衛権」は正当な権利なのか?!
アメリカは今回のイスラエルとハマスの紛争でガザ地域への攻撃をイスラエルの「自衛権」の行使として容認し、その攻撃を正当化しているが、パレスチナ側も又、イスラエルの入植地域の拡大や経済封鎖など問題視しその為の「自衛権」行使を正当化している。
国際法上「自衛権」は認められているが「自衛権」を行使するための経緯や背景にはそれぞれの身勝手な解釈が行われており、どちらが正しいのかは勝者や歴史的な判断に委ねられており、定義はされていない。
パレスチナ問題は長い歴史過程の中で起こっている問題なので「自衛権」を持ってその闘いを正当化することはできないし不可能だろう。ただ歴史的経過をより深く吟味し、国際的人道主義による破壊と殺人、戦争と対立の歴史を断ち切る勇気ある決断を持つことが大事だと思う。
振り返って我が日本国を見れば、憲法で「戦争放棄」を謳う数少ない国家だが、この「戦争放棄」が「自衛権」をたてに揺らいで「防衛力」強化にひた走っている。
「自衛権」とは自国の判断であり、戦争遂行の言い訳にすぎないものと理解し、「自衛権」に頼らず国際的な相互理解の形成と人間らしい暮らしを保障し合う国際的な連帯を作り上げていこう。 (M)
色鉛筆・・・もう私も、黙っちゃおれない!
その日は2023年10月10日、神戸地裁で「優生保護法被害国賠訴訟」第2回の口頭弁論が行われました。
兵庫では、既に第1次、2次が高裁で勝利判決をえたものの、国が最高裁へ上訴してしまいました。第3次訴訟となる今裁判では、2人の聴覚に障がいのある60代の女性が名乗りを上げました。実名では無いですが、裁判所での原告としての陳述は、勇気のいることです。
はじめに、原告のBさんが意見陳述され、長女を帝王切開により出産する際に、何の説明もなく不妊手術を強制されたことの悔しさを、全力で訴えられました。原告Aさんと同様、Bさんも当時の聾学校で口話教育を推進するなかで育ち、家族とのコミニュケーションも困難を抱えていたそうです。
聾学校はどうして手話を使うことを咎めたのでしょう。聴こえる人に合わせるために自身を犠牲にする、そんな生き方を強いられてきた社会だからです。そして、優生思想は今も続いています。Bさんは、裁判長を前にして、日頃は作業所に通い、そこで作っている商品の紹介をして購入を呼びかけるなど、明るい性格を見せてくれました。きっと、仲間や支援者の支えが彼女を法廷に立たせた、ということでしょう。
弁護士2人の意見陳述も、国の責任を検めて確認できる素晴らしいものでした。民法724条の20年の除斥期間を理由に損害賠償請求権を消滅とする国の主張は、各地の高裁で優生保護法の被害に適用することは、「著しく正義・公平の理念に反する」との判決が出ました。原告たちは「耳が聞こえない」ことだけの被害に留まらず、情報を知ること、その情報が正しいか、間違っているかの判断さえも困難な中で生きていることが強調されました。今からでも遅くない、国は原告に向き合い責任を認めるべきです。
2019年4月24日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立しました。この法律は、国が強制不妊手術等を受けた方々に、お詫びとしての一時金を支払うという法律です。一時金は一律320万円、申請期間は法成立後5年以内の2024年4月24日です。厚労省提出の資料では、障害等を理由とする不妊手術と人口中絶手術の件数は、83965人です。しかし、全国申請数は1239件で認定数が1049件。兵庫申請数は22件で認定数が19件に留まっています。
申請方式ではなく、国や県が積極的に調査を開始し当事者に伝える努力をすべきです。「優生保護法による被害者とともに歩む会」は兵庫県に対し調査の取り組みの要請をしています。最高裁に対しての「公正な判決を求める」署名は、100万筆を目指しています。多様性を認める社会を目指し、誰もが安心して暮らせるよう輪を拡げていきましょう。 (恵)
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