ワーカーズ649号 (2023/12/1)
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ガザ地区大虐殺を即時停止せよ! 〝米国=正義の担い手〟の信用失墜は不可避
イスラエルはパレスチナの抵抗組織=ハマスによる武力急襲に逆上し、ガザ地区への無差別焦土作戦を進めている。とりわけ病院への攻撃は許しがたいものだ。患者や医療スタッフや避難者が、なすすべもなく殺されている。国連機関なども〝死地〟〝地獄〟などと最大限の警句を発している。
ガザ地区は周囲を隔離壁と海に囲まれ、住民は逃げ場がない。水も電気も止められ、檻の中の無防備な住民は、壁の外と内から無差別攻撃に晒されている。イスラエルは「標的はハマスだ」としているが、実態はジェノサイド(=集団殺戮)という他はない。
イスラエルや米国は、今回のガザ侵攻の起点を10月7日のハマスによるイスラエルへの急襲と人質奪取に置いている。が、現実はそんなものではなく、永年のイスラエルによるパレスチナ自治区への浸食や、日常的な迫害こそが真因であることは、世界が知っている。
イスラエルはヨルダン川西岸でも東エルサレムでも、二国家共存へのオスロ合意を無視し、占領地への〝入植〟を続けてきた。それは《入植》などという牧歌的なものではない。パレスチナ住民の居住地区や生活空間を力で強奪し、住民を隔離壁で囲い込むものだ。パレスチナ住民は、家や土地を奪われ、銃で撃たれて殺されても、抗議さえ許されない。
イスラエルの一連の強行策は、米国がこれまで巨額(20兆円を超える)の援助で、中東における〝軍事モンスター〟として育成してきた結果だ。核保有さえ容認してきた。米国は、そんなイスラエルを、10・7の当初から〝自衛権〟を根拠として擁護し、〝ジェノサイド〟を見過ごしている。
そんな米国。ウクライナでは〝民主主義の擁護者〟〝正義の担い手〟として振る舞ってきた。が、今回のイ軍によるガザ侵攻と大虐殺に加担することで、その欺瞞的な立ち位置は、世界中から見透かされている。そもそもイスラエルによる西岸地区や東エルサレムでの強引な土地の簒奪は、〝力による現状変更〟ではないとでもいうのだろうか。10・18の国連決議では、米国だけが拒否権を行使して戦闘の中断を拒否。イスラエルの《ジェノサイド》に〝お墨付き〟を与えた。まさしく米国の〝二重基準〟こそ糾弾されるべきものだ。
米国や英国を始め、大規模なデモによるイスラエルや米国への反発が世界で拡がっている。日本でも11月10日に東京の渋谷で即時停戦を訴える大規模なデモが行われ、東京を始め各地でも戦闘の停止を求める声が拡がっている。覇権国家と独裁政権の《二項対立》の図式から脱却し、全世界の人々の連帯した力で、国家間紛争や暴力の支配からの脱却をめざしたい。(11/24 廣)
イスラエルはガザ虐殺をやめよ! G7諸国政府のダブルスタンダードは許さない!
イスラエルが現在行っているのは、一方的なパレスチナ人の大量虐殺でありジェノサイド(大量の民族虐殺)です。遠い国のことと看過してはいけません。イスラエルの蛮行を断じて許してはなりません。「どっちもどっち」という日本のマスメディアの論調は犯罪に加担することになります。
◇ ◆ ◇ ◆
即時停戦に反対している米国政府は非難されるべきです、米国はイスラエルに年間約40億ドルの軍事援助をしています。さらにバイデン政権は今回140億ドルの追加支援策を議会に要求する気なのです。これは米国が共謀関係にあることを示しています。
イスラエルと米国は理解しなければなりません、武力と恐怖によって世界を支配することは出来ないのです。ナチスのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)が、人類に対する犯罪であったように、ユダヤ人によるバレスチナ人の大量無差別虐殺も人類に対する犯罪です。世界中の人々が(ロンドンでは30万人のデモ)強く反対しています。「殺人をやめろ!即時停戦を!」と。グローバルサウスを中心に世界中の政府も人々の声に押されて「即時停戦」を強く求めています。しかし米国とイスラエルは「cease-fire(停戦)」に反対し「pause(一時休戦)」をせいぜい認めるのみです。彼らはパレスチナ人の殺戮を継続する意思を変えていません。
◇ ◆ ◇ ◆
アラブ諸国とイスラム教の諸国(OIC)57カ国が、パレスチナ自治区ガザへのイスラエル軍の攻撃を「戦争犯罪」と非難した上で「野蛮で残忍、非人道的な虐殺」を直ちにやめるよう求める共同声明(11/11)を出しました。その中ではイスラエルがガザ攻撃を正当化しようとする「自衛権行使」といった論理を「拒絶する」と表明しています。
ところが常々「人権外交」を口にしながらそれを行動で明確に出来ない米国やG7の諸政府に私たちは深く失望しています。彼らの偽善をあらためて非難するものです。集会やデモ・スタンディングで日本政府への圧力をさらに強めてゆきましょう。(B)
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急ピッチで進む戦争態勢づくり
軍備増強や、米国と一体となった対中包囲網づくりに邁進する日本。昨年末の安保三文書の改訂や今年1月の日米安全保障協議委員会(=2プラス2)を機に、そうした動きがより活発になっている。
この2ヶ月ぐらいだけ見ても、アジア・太平洋レベルで、また東シナ海や南シナ海をめぐる中国とのつばぜり合いなど、新冷戦ともいわれる緊張関係が高まっている様子が見て取れる。
ここでは、関連する直近の動きを概括することで、日本の軍事態勢の現在位置と今後の対抗運動のあり方を考える材料としたい。
…………………………………………
《宇宙軍拡》
●9月25日、米宇宙軍トップ、サルツマン作戦部長が日本国内に司令部を置く「在日米宇宙軍」の創設を検討していると明らかにした。
○昨年11月にはハワイにインド太平洋宇宙軍を創設。12月には在韓米宇宙軍の運用を開始。
○23年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)共同声明で宇宙領域での協力強化を盛り込んでいた。
○日本は、20年に宇宙作戦隊を新設、22年には上部組織の宇宙作戦群を発足させた。
○こうした経緯もあり、準天頂衛星での日米協力など、敵基地攻撃に不可欠な標的の正確な位置情報の取得や、スタンド・オフ・ミサイルの誘導システムの強化での日米協力も進んでいる。
《軍備再編》
●10月6日 沖縄防衛局、米空軍の無人偵察機の嘉手納基地での運用を地元自治体に説明
○海上自衛隊鹿屋航空基地に一時配備していた米空軍の無人偵察機(MQ9=滞空時間32時間、航続距離8500キロ)8機が嘉手納基地に移駐し、11月から運用を始めると説明した。
○嘉手納基地では、常駐していたF15戦闘機が減らされ、世界各地からF22やF16などがローテーション配備だとして順次暫定配備されるようになっていた。理由は、米空軍の「ACE」(機敏な戦力展開)という戦略に沿ったものであり、また、嘉手納基地が「中国の長射程ミサイルの多数配備で、基地の危険性が著しく増した」からだという。
《南西シフト――戦争の日常化》
●日米共同訓練で、沖縄に初めて陸自のオスプレイが飛来。
○10月14日から31日まで最大級の日米軍事共同訓練(レゾリュート・ドラゴン)が北海道や九州に加え、沖縄でも行われた。
○その訓練で沖縄の民間空港である新石垣空港で19日と24日、沖縄県が自粛を求めていた陸自のオスプレイが初めて離着陸などの訓練が行われた。
○石垣島では今年6月に、北朝鮮の軍事偵察衛星の発射を警戒することを名目に、自治体の公共インフラの港湾施設に地対空誘導弾PACー3部隊も一時配備され、いまでも配備されたままだ。むしろ人目に付く場所での配備自体が、一つの目的になっている。また、米軍の掃海艦なども島にやってきていた。
《準同盟国》
●10月末、空自の戦闘機によるオーストラリアへのローテーション配備の検討を防衛省が始めた、との報道があった。早ければ、来年度にも段階的に始めるという。
○具体的には、空自の戦闘機F35・F15・F2を、豪州の空軍基地に年間数ヶ月程度、数機ずつ派遣・配備する。ローテーション配備の目的は《訓練》だとしているが、これは《常駐》への引き上げを見込んだもので、実質的に戦闘機の海外配備に乗り出すことになる。
○こうした戦闘機の運用構想は、昨年末の安保三文書のひとつ、国家防衛戦略に盛り込まれたもので、豪州への攻撃に集団的自衛権を行使して反撃することも想定したものだ。これは集団的自衛権の行使の範囲を米国以外に拡げるもので、軍事力の行使を際限なく拡大するものでもある。
○すでに昨年10月、日豪の安全保障上の緊急事態に際し「相互に協議し、対応措置を検討する」という共同宣言に著名している。
●11月3日、岸田首相が訪比、比大統領と《円滑化協定》の締結に向けて正式交渉入りで合意。
○《円滑化協定》は、両国の共同訓練などで入国手続きなどを簡略化するもので、両国関係を《準同盟国》化するもの。豪州、英国に続いて3カ国目となる。
○あわせて、日本が〝同志国〟に防衛装備品などを無償提供するための「政府安全保障能力強化支援(OSA)」でも、フィリピンに初適用することに合意。手始めに、沿岸監視レーダーをフィリピン軍に供与するという。
○ただ、中国との間で南シナ海での領土紛争を抱えるフィリピンと準同盟国関係を築けば、中比の領土紛争に巻きこまれるリスクは大きくなる。
●11月7日、日英の外務・防衛担当閣僚会合(2+2)を開催。日英共同訓練の拡大などで合意。
○両国は共同訓練の手続き簡略化を定めた「円滑化協定(RAA)」を10月に発効させていた。
○この協定を初適用し、この11月15~26日、群馬県の陸自相馬演習場などで島嶼防衛を想定した4回目の実動訓練を実施している。
《日米韓共同訓練》
●10月22日、日米韓3カ国初の共同空中軍事演習が行われ、日韓の中間線上で米軍のB52爆撃機・F16戦闘機、韓国軍のF15K戦闘機、空自のF2戦闘機が参加した。
○日米、米韓の共同軍事演習はこれまでも実施されたが、三カ国の合同軍事演習が公表されたことは、これまでに無かった。
○また11月12日には、日米韓3カ国の防衛相会談で、3カ国による複数年間の共同訓練計画を年内に作ることで合意している。「来年1月からは訓練計画に従って、より体系的、効率的に実施する」事で合意したという。
《武器輸出=防衛産業育成》
●11月8日、自民党と公明党の間で、武器輸出を制限している政府の「防衛装備移転三原則」の運用指針見直しに向けた、実務者協議を再開する。
○運用指針の改定方針は、昨年末の安保関連3文書に盛り込まれていた。年内に一定の結論を出すことをめざすという。
○焦点の一つは、日本と英国・イタリアと共同開発するF2戦闘機の後継機を、日本から第3国に直接輸出できるようにすることだ。政府も、輸出解禁を容認している。
○輸出解禁を共同開発全般に拡げたい自民党と、次期戦闘機に限定したい公明党との議論だが、自民党への追随を繰り返してきた公明党の妥協が濃厚だ。
○また「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限って輸出を認める現行ルールの見直しも焦点だ。5類型の範囲内で殺傷能力のある武器輸出を解禁する姿勢の与党の中間報告も出されているし、ウクライナを念頭に「防空」も追加することや、5類型自体の撤廃も視野に入れる自民党の意向は強いという。公明党も押し切られる可能性は高い。
●11月6日、三菱重工業の中間決算説明会で、上半期の航空・防衛・宇宙事業の受注高が対前年比5倍の9994億円になったと発表。
○川崎重工業も23年度の防衛事業の受注高の見通しが前年度2000億円増の4600億円になるという。
○NECも防衛・航空・宇宙事業の上半期受注高が前年比で40%増えたという。
○防衛省は、海外と比べて低かった防衛産業の利益率を、従来の8%程度から最大15%に引き上げた。
○上記のいずれも、兵器の世界シェアの拡大と、日本版〝軍産複合体〟の形成に繋がるものといえる。
《戦時態勢づくり》
●11月10日から20日、陸海空自衛隊が参加する最大の統合演習を、米軍も参加して実施した。
○この統合演習で、初めて民間空港が使用された。昨年12月の安保関連3文書が位置づけた「公共インフラの利用」を加速させるものだった。
○11月13日、九州の大分空港に福岡県の空自築城基地に所属するF2戦闘機4機が次々と着陸した。築城基地が攻撃を受けて使用できなくなったとの想定だ。他にも奄美、徳之島、岡山空港でも実施した。それらはみな空自基地が併設されていない民間空港だ。いずれも「台湾有事」を想定した訓練だと位置づけられている。
○これらは、やがて九州地方を始め、全国の民間空港が〝台湾有事〟に際して軍事利用されることを示唆している。
《専守防衛から攻撃型国家へ》
●11月13日朝、海自最大のヘリ搭載護衛艦「かが」が、海自呉基地を出港し、試験航海を始めた。日本近海で速力などの性能試験を実施したという。
○「《かが」は全通甲板を有した「いずも型」ヘリ搭載護衛艦の2番艦で、全長248メートル、全幅38メートル、最大排水量19950トン。第1次改修で艦首が4角形になり、第2次改修が終われば、短距離発艦、垂直着陸が可能な海自仕様のF35Bを艦載する文字どうり《空母》となる。1番艦「いずも」も改修途中だ。
○日本はこれまで「専守防衛」を掲げ、もっぱら攻撃用に使用する兵器は保有しないとしてきた。長距離弾道ミサイル、戦略爆撃機、航空母艦などだ。
○しかし現実は《いずも》《かが》は空母化し、巡航ミサイル・トマホーク、改良型12式誘導弾、極超音速誘導弾など、敵基地攻撃に使用される攻撃兵器を次々と導入予定だ。専守防衛は有名無実化している。
《総括》
○これらのいずれも昨年末の安保三文書に基づく、日米およびその他の〝同志国(?)〟による対中封じ込め戦略から発したものだ。
○具体的には、米国の対中包囲戦略とそれに一体化する日本の軍事戦略の画期となる日米共同作戦計画に基づくもの。
○日本の対米一辺倒ともいえる軍事強国路線は、米国追随であると同時に、日本の軍事大国化路線の唯一の可能な方策でもある。
○こうした日本の軍事路線は、台湾危機など米中覇権争いに巻きこまれるリスクもある。が、むしろ〝アジアの盟主〟の座をめざす日本の軍事大国化志向を土台に、それに主体的、積極的に加担するものといえる。(廣)
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大企業の繁栄と 労働者の窮乏化
■「強欲インフレ」が世界を席巻した
イザベラ・ウエーバーは、2019年に出版された著書『不平等の代償The Price of Inequality』の中で、「強欲インフレ」の概念を提唱しました。ウエーバーは、現代のインフレは、コスト上昇よりも、企業の利益追求による価格引き上げによって引き起こされていると主張しています。
ウエーバーは、企業の利益率は、近年、世界的に上昇傾向にあることを指摘しています。また、企業は、競争力を維持するために、価格を下げるのではなく、利益率を維持するために、価格を引き上げていると主張しています。
ウエーバーの「強欲インフレ」の概念は、近年、欧米で注目を集めています。欧米では、原油や穀物などの原材料価格の上昇や、ウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰など、インフレを押し上げる要因が存在しています。しかし、それ以上に、企業がコスト上昇を口実にして、「高利潤」を目指して価格を引き上げているのではないかということです。
■独占価格と価格高騰の波及過程
基本的な話しを申し上げます。寡占市場や独占市場では、企業の競争相手が少ないため、価格を比較的自由に設定することができます。しかし、独占のあおりを受けた他の企業が、価格を一切上げられないということはないのです。ここが重要です。投機的な過剰貨幣資本が、実は独占価格を「実現」するばかりではなく、波及的に独占資本を先頭にして非独占の値上げ(コスト補填的な)の連鎖が続くことができます。つまり、支配的企業から徐々に中小、そして労働者の賃上げが闘われることになります。このような、段階的・波及的に広がるものこそインフレであるし、その過程自身が過剰貨幣資本の「流通への吸収過程」であり同時に「貨幣価値の下落過程」なのです。かつて久留間鮫造が『恐慌論』で指摘したもので、独占から非独占、そして遅れて最後に少しの賃金上昇と。この波及過程の時間差と上昇格差が搾取のメカニズムであることは容易に理解できます。
強欲インフレは、なるほど市場支配的企業によるインフレに隠れた独占価格(独占的超過利潤)実現と、そもそもインフレの背後にある過剰貨幣資本のなせる業と言うべきなのだと思います。
■労働者を蝕む「追加収奪」
少し具体的な話しをしましよう。財務省の「法人企業統計」によると、2023年4―6月期の全産業(金融・保険業を除く)の営業利益はインフレのさ中に16兆4,661億円(対前年比11%増)過去最高を更新しました。
つまり、大企業は資材や原料の値上げをはるかに超えた価格引き上げを実現し(一種の独占価格)、まさにイザベラ・ウエーバーの指摘する「強欲インフレ」を実現しているのです。
市場支配力のある企業ほど率先して「独占プレミアム」を乗せた価格改定を実現してきました。上場企業「最高益」の実態はこのような意味でのインフレ利得です。
言うまでもなくインフレは特に大企業にとって消費者からの追加収奪となっているのです。「9月の実質賃金2.4%減、18カ月連続マイナス-物価高に追いつかず」(Bloomberg)と言うのが日本の現実です。
「最新の厚労省による発表(9/8)では、名目賃金が1・3%上昇、物価上昇が3・9%で、実質賃金は2・5%の減少だった。」(「ワーカーズ」647号)。さらに「よく買う品8%上昇」(「日経」11/25)とあるように労働者、低所得者の生活は急速に悪化しています。
このように「インフレ効果」はてき面に企業利益に貢献し、他方、労働者は実質所得を喪失したのでしたと、あらためて言えるでしょう。「史上空前の企業増益」は労働者やその他の消費者からの追加収奪として実現できたのだと。
◇ ◆ ◇ ◆
ちなみに、労働者の搾取は生産現場だけではなく、上に見たように?大企業のインフレ利得、さらに?租税と言う国家による搾取、そして自動車ローンやマイホームローンと言った?金融搾取が追加収奪としてなけなしの賃金や年金を蝕むのです。
■大企業の繁栄と労働者の窮乏化を止めるために
労働者ばかりではなく、年金生活者やそのほかの庶民・生活弱者に広くインフレ苦が広がっています。このような中で、とりあえずとれる生活苦緩和政策は「消費税減税」ないしは廃止なのです。物価を抑え、実質所得の確実な上昇をもたらすことができます。ところが、このような減税措置について岸田政権は検討すらしてきていません。これは、政府や大資本と労働者や生活弱者との現在のもっとも鋭い対抗軸なのです。しかし、立憲民主党が早々に戦線離脱し運動は大きな打撃をうけました。
さらに、上記してきたように労働者や無産大衆にとって大衆的窮乏化は相対的だけではなく絶対的にも深刻化しているのです。これが先進国日本の実態であり、国家や資本の体制の根本的変革がなくしてこの事態を解決する道が無い事を示しています。(阿部文明)
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読書室 『[新版]中東戦争全史』山崎雅弘著 朝日文庫 二千十六年刊 千七十八円
〇戦史・紛争史として高く評価されている山崎氏の中東問題に関する文庫本である。この新版は、全九章だった二千一年刊行の旧版に新に二章を付け加えた四百ページを越えた分量でパレスチナ問題を考える上での基礎知識を私たちに指し示す、実に貴重な本である〇
本書の方法と視点
一般的には、戦争や紛争は「A国対B国」「C民族対D民族」「E教徒対D教徒」との対立図式で理解されることが多い。中東戦争も「イスラエル対パレスチナ」「ユダヤ人対アラブ人」「ユダヤ教対イスラム教」の対立で説明されてきた。しかし終わりがない中東戦争の歴史、とくに二十一世紀に入ってからの中東の対立は、このような理解ではうまく説明のつかない部分が残ってしまうものとなってきた、と山崎氏は語るのである。
なぜなら例えば「A国対B国」の場合、それぞれの内部にいる「反A集団」と「反B集団」の間での意見対立はあまり議論されていない。一見対立しているかに見える「A国内の反A集団」と「B国内の反B集団」が、実は「対立関係の常態化・恒久化」によって共に利益を得るという、一般的な理解では見落とされがちな側面を見る必要があるからだ。
具体的に指摘すれば、「イスラエルのネタニヤフ政権」と「パレスチナのハマス」は、形式的には敵対しており、理念の面でも決して相容れないとの意味では「敵同士」である。と同時に「双方の対立関係が常態化・恒久化」することで、それぞれの国内での権力基盤をさらに盤石にできるという「利害の一致」が何時しか生まれることもあるのである。
既成事実となりつつある「パレスチナ国家」の独立
四度にわたる大規模な戦争が闘われた後、千九百八十八年十二月の国連総会でイスラエルに対するテロを仕掛けてきたアラファトは「パレスチナの独立しイスラエル国家の承認、テロという手段の放棄」を宣言した。これ以降、パレスチナを独立国として承認する国家が増え始め、二千十六年一月には、何とバチカンがパレスチナを国家として承認する包括協定が発効したと発表した。確かにG七では承認されていないものの、EU内にもスウェーデン等、パレスチナを国家として承認している国家もある状況である。
このように国際社会の中では「パレスチナ国家」の承認は既成事実となっており、イスラエルのネタニヤフ政権が頑なにこの事実を認めないのは、彼の支持基盤すら危うくしているといえる。事実、イスラエルの中にもパレスチナ国家の否定ではなく、むしろその独立を承認した上でパレスチナ国家との共存を追求することが、イスラエルにとっても「最善」とはいえないまでも「次善の策」だとする政治家が現われてきたのである。
大物としては、第一次中東戦争で軍人としてアラブ勢力を叩きのめした英雄の「武闘派」であるイツハク・ラビンとアリエル・シャロンを上げることができる。アラファトと握手した労働党党首のラビンは共存を望まない反対派に暗殺された。最右翼のリクード党の党首であったシャロンは、脱党して新な政党の党首となり実際に共存を追求しかけたのだが、脳卒中で死んだ。そして彼こそは、ガザ地区等の分離壁を建設とユダヤ人入植地の既成事実化を推し進めた最強硬派の張本人であった。そのシャロンがガザ地区からのイスラエル軍の撤退を決断した。彼にはパレスチナ国家否定の強硬策はもう限界だとの認識があったのだ。リクード党のネタニヤフ政権の時代認識は、 完全にずれてしまっているのである。
この中東での共存関係の構築に反対する勢力がハマスであり、ヒズボラであり、「イスラム国」なのである。これらの組織にはイスラエルやCIAの影が付きまとっている。
今回のハマスの侵攻の謎
十月七日に開始されたハマスのイスラエル侵攻であるが、私には数々の謎が浮かぶ。
まず第一の謎は、なぜイスラエルのモサドはこの侵攻を事前に察知できなかったという重たい事実である。実際には、ハマスとモサドにはそれぞれの諜報員がお互いに深く忍びこんでいるのだから、事前に察知できないことなど、そもそもあり得ない話なのである。
第二の謎は、イスラエルとガザ地区の国境線警備が為されていなかった事実である。普段なら鳥の越境にすら過剰なまでの警備体制がしかれているとされているからである。
第三の謎は、ハマスのロケット弾は従来は手作りであったことが知られている。彼我には圧倒的な戦力差があった。しかし今回の侵攻ではハマスは米軍と同じ武器を使っていた。報道ではこれらの武器はウクライナの闇の武器市場から入手したものと言われているが、それが事実なら、なぜCIA等がこれら米軍の武器の流れを黙認していたのだろうか。
第四の謎は、ハマスのテロに対しては、イスラエルは常に倍返しどころでない激しい攻撃をガザ地区に行ってきた。ではハマスは今回のジェノサイドのようなイスラエルの反撃を事前に予想しなかったのであろうか。想定外だったとはあり得ないことである。
第五の謎は、なぜネタニヤフ政権が支持率三十%台だった時に仕掛けたのかである。この侵攻によってネタニヤフ政権は支持率を回復したばかりか、挙国一致内閣を成立させ、国内の反ネタニヤフ勢力の弾圧に大義名分を与え、正当化できるようになったのである。
イスラエルがガザ地区に執着する理由には、ガス田の存在と第二スエズ運河の建設が絡んでいるとの情報がある。だからイスラエルは、今回ガザ地区住民を一掃したいのである。
私たちは、ハマスがガザ地区を実効支配しているとの報道をまずは真剣に精査する必要があるのではないだろうか。そのためにも本書の熟読が必要だ。一読を薦めたい。(直木)
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『移民国家アメリカの歴史』を読んで
●白人移民国家の虚像
アメリカ合衆国と言えば「自由の国」「移民国家」という美しい国民国家のイメージが、折に触れ強調される。
反面、近年の「ブラックライブズマター」に象徴されるように、アフリカ系市民に対する差別事件が繰り返されている。
またトランプ前大統領によるメキシコ系移民のシャットアウトも、記憶に新しい。
貴堂嘉之は『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書)で「自由な移民国家」の虚像を剥いでいく。
●アジア系移民の排斥
ニューヨークの自由の女神の隣にあるエリス島は、ヨーロッパ系移民の受け入れ窓口として有名である。
それと対象的なのは、サンフランシスコのエンジェル島における、中国系移民に対する劣悪な施設であり、彼らを長期拘留してきた歴史であることは、あまり知られていない。貴堂は「移民史における東西非対称」を暴露する。
この流れは、中国系移民を「帰化不可能移民」と位置付け、やがて「排日移民法」にもつながっていく。
●奴隷国家から移民国家へ
英領植民地の「建国神話」として、一六二〇年にピルグリムファーザーズが信仰の地を求めてやってきた物語が有名である。
しかし実際には、それ以前の一六〇七年に、ジョージタウンに、黒人奴隷をタバコ栽培のために連れて来たのが始まりであるある。
実はアメリカ合衆国は、長い間奴隷国家として形成され、南北戦争と奴隷解放を機に、労働力不足を補うため、ヨーロッパ系移民が増加したのが歴史の実態であった。
貴堂はヨーロッパ系移民を「旧移民」「アイルランド系移民」「東欧・南欧系」の段階を追って叙述する。
●選別移民の帝国主義
こうして「自由な移民国家」の虚像を剥いだ先には「差別選別の移民帝国主義」の歴史像が浮かび上がってくる。ヨーロッパ系移民についても、障害者やセクシュアリティによる差別や隔離が行われた。(冬彦)
沖縄通信 「争うよりも愛しなさい~沖縄の反戦バトン」
沖縄で11月23日に1万人規模の県民大会が開催される。
原稿の締切の関係でこの県民大会の報告をすることが出来ないので、この大集会を取り組むこれまでの沖縄の運動の様子を報告したい。
この1万人集会を知り組むことになったのは、9月24日に沖縄市で開催された「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」(キックオフ集会)の大成功が基盤になっている。
9月24日の「キックオフ集会」の運営の中心を担ったのは若い世代であった。平和運動が盛んな沖縄でも、これまでの反戦運動の担い手はシニア世代が中心であり、世代間の断絶が課題となっていた。
9月24日の「キックオフ集会」に参加した私は驚いた。
集会の司会を務めた若い女性は、「昨年4月、南西諸島で進む陸自ミサイル部隊の配備に反対する写真展に若者が全く参加していないことに危機感を覚えた。そこで沖縄戦を経験した高齢の参加者から『子どもや孫たちにつらい思いはさせたくない』と声をかけられ、『シニアと若者のパイプ役になろう』と決めた」と発言。
集会で若者代表として挨拶した男性は「島が戦場になるということは、私自身を失うということです。一人一人が沖縄の島々を身近な生活や守りたい物、大切にしたい物に置き換えたとき、この運動に参加する意義はきっとあると思う。沖縄の島々に陸上自衛隊のミサイル部隊の配備などが進む。ミサイルがあれば逆に標的になりうるとの危機感から会の運動に賛同した」と発言。
しかし、この「キックオフ集会」を開催するまで、若い世代と百戦錬磨のシニア世代が実行委員会の席で喧々諤々の討論が続いたという。若い女性からは「お願いがあります。もう少し若い人たちも参加しやすい言葉を使っていただけないでしょうか?反対とか抗議といった否定的な言葉は、若い人たちの心には響きません。私たちは決して、沖縄の現状に関心がないわけではなく、皆さんについていけないだけなのです」といい、提案した言葉が「争うよりも愛しなさい」だった。それに対して拍手が起こった一方、「そんな生っちょろい言葉では、抗議にならない。インパクトがない」等々の賛否両論の議論を重ねて、彼女の提案「争うよりも愛しなさい」が第一スローガンに選ばれたと言う。
なお、「11月23日県民平和大集会~対話による信頼こそ平和への道」のチラシには、「熾烈な戦争を経験したが、私は幸せになるためにこの世に生をうけた。人生の残り時間がわずかしか残っていない。なぜ戦争前夜になるのか。子や孫のために平和の島でなくてはならない。自分を愛するように平和の島でなくてはならない。自分を愛するように、隣の人も愛しなさいという言葉は、おたがい腹をわって話し合うことです」(ある戦争体験者のことば90代)。「わたしたちは戦争を知らない世代です。でも戦争の怖さを知っています。わたしたちは戦場に行きたくない、殺されたくない、殺したくもない。地域の伝統行事、豊かな自然、人びとが賑わう街を大切にしたい。幸せに生きたい。だから戦争につながる動きにNOを言います。(ある若者のことば20代)。
私たち本土の運動も長く社会運動を続けてきた私たち年配者が、若い人たちにどう活動継続をはかっていくのかが?大きな課題となっていると思う。その点で、沖縄の皆さんの運動から学ぶ必要があるとの思いを強くしている。(富田英司)
11/23沖縄県民平和大集会開催される
「全国連帯! 沖縄から発信しよう!11・23県民平和大集会」(主催・沖縄を再び戦場にさせない県民の会)が11/23日、那覇市の奥武山公園陸上競技場で開かれた。
約1万人(主催者発表)の参加者が「沖縄を戦場にするな」などと訴え、武力ではなく外交を柱にした対話で問題解決を図るよう政府に求める宣言を拍手で採択した。
集会宣言では、安保関連3文書を閣議決定した政府が自衛隊基地を相次いで建設し、最大規模の日米軍事演習を行うことで戦前を彷彿(ほうふつ)させる光景が広がり、かつてない軍事的緊張が島々を覆っていると批判。
「戦争の道を暴走する政府の動きを止めるために、思想信条を超え老若男女が手を取り合って団結すること。全国と全世界と団結して戦争を止めよう」と訴えた。(I)
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コラムの窓・・・ようやくの水俣訪問!
1970年代末、私が高校を卒業して社会人になったころ、石牟礼道子「苦界浄土」が出版され、水俣病患者さんたちの世界を世に知らしめました。私はその語りに誘い込まれ、社会というものを考えなければならなくなったのです。
加害企業チッソを追及する一株株主の取り組みに共感し、本当に一株購入したりしましたが、あまり熱心な支援者とはいえません。それでも、いつかは水俣を訪問したいと思いつつ年を重ねてしまいました。
その機会を与えてくれたのが、水俣フォーラム主催の「水俣・福岡展」開催の案内でした。大学生の孫娘が佐賀市で学んでいるところも一度行ってみたいと思っていたので、この機会に水俣まで行くことになりました。
水俣フォーラムは、水俣病を伝える展覧会を各地で開催しており、1996年の東京展以降、全国25会場で開催、14万人以上が来場しているとのことです。私もいつだったか、大阪あたりで開催されたときに出かけた記憶があります。
今回、11月6日に博多で開催されていた展覧会を私たち夫婦と孫娘の3人で見学、円形の衝立の内部に水俣病の犠牲者の遺影が地域ごとに展示されていたのを見て、チッソの罪深さを再確認しました。
この日は佐賀市内の孫娘にアパートに泊まり、翌朝、吉野ケ里遺跡によって実に「古代ロマン」だと思ったが、弥生時代でも環濠集落で外敵に備え、階層分化による墳丘墓が登場する。それにしても、ここの住人たちはどこからやって来てどこへ去ったのか、考えこんでしまいました。
そんな寄り道をしつつ7日午後、水俣病センター相思社にたどり着き歴史考証館を見学、そこには、猫実験小屋の実物、チッソとの闘いで使用された旗や幟など、貴重な歴史的資料が残されていました。
翌日は相思社の方の案内で市内見学、水俣市はチッソの城下町とされていますが、もっとはっきり支配下にあるのだと思い知らされました。水俣駅前に構えるチッソ工場、門前には御用組合「JNC労働組合水俣支部」事務所があり、水俣病名を忌避し「メチル水銀中毒病」への変更を求める看板が駅近くにあったりしました。
水俣生まれを名乗れない、福島出身を隠さなければならない、そんな地名が無数にある、残念ながらこれがこの国の姿なのでしょう。だから、「水俣病」を変えたいという思いを無碍にすることはできないのですが、「水銀に関する水俣条約」が2013年に国連環境計画の外交会議で採択・署名され、17年に発効しています。
工場からの汚染だけではなく、蛍光灯や電池、体温計などの製品。さらに、金採掘に使用される水銀による環境汚染、水俣病の危険性なども指摘されています。しかし、チッソによる有機水銀垂れ流しは日本の高度成長期に必要な企業(オクタノールや塩化ビニルの原料となるアセトアルデヒドを供給)だったがゆえに、原因物質の究明を妨げ、漁獲禁止を回避して有機水銀による〝食中毒〟を蔓延させたものです。チッソは水俣病補償の重荷から逃れるために分社化(完全子会社JNC)し、儲けに走っています。
水俣病の全容は地域に在住した全住民の健康調査をしなければならないのですが、水俣市は老朽化を理由にチッソが工場排水を流した百間排水口もなくしてしまおうとしています。石牟礼道子さんや川本輝夫さんの存在も消されたようで、水俣市を覆う「水俣病」という影は見てはいけないように扱われている、との思いを持って水俣を離れました。(晴)
*さいわいにも、石牟礼道子夫妻旧宅に書店「カライモブックス」がオープンし、その存在を引き継いでいます。
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法で決められた“権利”とは何か?
1975年当時の公共企業体等労働組合協議会(公労協)が行ったスト権スト(ストライキ権奪還ストライキ)は公共企業体(いわゆる三公社五現業)の職員には、公共企業体等労働関係法(昭和23年法律第257号、略称「公労法」)によってストライキが禁止されていたことから、ストライキ行使を法律で認めさせようとするためのストライキであった。
憲法は、労働者が集団となることで、使用者と対等な立場で交渉できるよう、次の労働三権を保障している(憲法28条)。
① 労働者が労働組合を結成する権利(団結権)② 労働者が使用者と団体交渉する権利(団体交渉権)③ 労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権(争議権)
団結権、団体交渉権および団体行動権を「労働三権」(労働基本権)と呼ぶ。
当時、民間労組にはこの「労働三権」によってストライキ権は認められていたが、公務員労働者にはスト権は認められておらず(今日でも認められていない)、公務員の労使紛争は=公共企業体仲裁委員会と公共企業体調停委員会(のちに公共企業体等労働委員会に一本化)を設置し、この機関による調停・裁定によって解決するものとなっていた。しかし、日本国政府は調停・裁定案を「財政の逼迫」等を理由に実施しないケースが相次、労使交渉が進まないケースが発生したことから、組合側は、1952年(昭和27年)に順法闘争(「一斉休暇」や「時間内職場集会」といった「順法スト」)の実施に踏み切り、実質的なストライキ戦術で交渉の進展を図ろうとし、その一方で違法となっていたスト権を法律でも認めるようストライキで迫ったのがスト権ストであった。
このスト権ストによって、“法”による(公務員の)ストライキなどの争議権の禁止より、“法”で決められているから“権利”としてできるのではなく、“法”以前にストライキをやる必要があること、もっと大切なものがあることを知らされたものだった。
公務員の争議権が禁止・制限される中で、当時郵政労働者(当時郵政事業は郵政公社で国家公務員が行っていた)であった私も「休暇闘争ー有給休暇を申請し認められなくても休んでしまうもの」でこの闘争に参加したが、法律の正当性や正義に反してストライキに参加することは勇気のいることで、処分覚悟の決意が伴うものだった。
このスト権スト参加で法とは何か?権利とは何か?考えさせられたものだった。差別・人権問題等、“法”で認められていなくてもやらなければならないことはいくらでもあり、法の限界や不備など上げればきりがないほど実際の生活と切り離された“法”や“権利”が制定されている。
公務員労働者の争議権剥奪は政府による“公共の福祉”を理由にした“権利”の制限であり、国家の利益を優先した“法”による縛りであることは明らかだ。総じて、“法”というものは国家の為にあり国家の支配者に優位なものとして制定される。沖縄の辺野古基地建設で県民や国民の反対意思を無視し、最高裁まで利用した建設推進判断はまさにその典型的なものだ。国際的には戦争擁護の「自衛権」行使に関するご都合主義的な解釈は真の“権利”とは何か?今問われているのではないだろうか!(光)
旧統一教会が百億円を国に委託との奇策とその狙い
旧統一教会が国に委託との奇策とは
十一月七日、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)日本教団の田中富広会長は記者会見で元信者らへの被害補償が必要になった場合の原資として、国側に六十億~百億円を供託すると表明するとともに、この供託金はすべて現金で用意するとしたのである。
私たちが注目すべきは、田中会長の「お詫びはするが謝罪はしない」との強弁である。
会長は会見冒頭で一連の騒動を詫びたものの、その法的責任は認めず「教団に過ちがあれば謝罪するが、現在は被害者、被害金額も不明確」だとし、「その状況で財産保全法案が議論されるんだったら私たちは供託を捧げますから『何かあったら、それで解決できますよ』という話」だと、今後焦点となる財産保全法案の立法の必要性を否定したのである。
まさに「この世は金が全て」の旧統一教会の面目躍如の破廉恥発言ではないか。
現行法上では宗教法人が国に供託することはできない。田中会長は「『作れ』という命令形ではありませんが、ご検討いただければ、対応する準備ができましたということをお伝えさせていただいた」と、国に対して制度設計をするよう求めたのである。
なぜ百億円なのか
この供託金の根拠は、全国統一教会被害対策弁護団が集団交渉で教団に請求する総額の約四十億円にある。田中会長は「教団として法的に有効と認めたのは八億円」としつつ、「六十億円あれば十分と考えるが、念のため最大百億円まで対応できる」と説明した。だが弁護団は潜在的な被害額を含めると千億円程度の可能性があるとしている。百億円は決して小さな額ではないが、旧統一教会の被害全体からすればスズメの涙というしかない。
同席した勅使河原教会改革推進本部長は「二〇〇九年のコンプライアンス宣言以降の献金について民事訴訟で和解した額は約五千五百万円で、〇九年以前から百分の一に減少している」「控訴審和解した献金も約二千万円で、〇九年以前から百分の一に減少している」として、「組織性、継続性、悪質性は何れもない」などと改めて強弁したのである。
しかも「二十二年事件以降はですね、教会改革推進本部を設置し、一回十万円以上の献金を受け取る時は(原資が)借金ではないことや、家族を困窮させることがないことを必ず申告していただき、受領証を発行している」と悪びれる様子もない。この発言は、逆の言い方をすれば、一回十万円に満たない献金であればやりたい放題だ。つまり信者からは自由にむしり放題だったとの旧統一教会内部の献金実態を思わず問わず語りで語った真実そのものだということである。勅使河原氏にはその自覚が果たしてあったのか否か。
これらの発言のおどろおどろしさに気づかないのは、まさに洗脳された者のみであろう。
彼らには事ここに至っても罪を犯したとの自覚なぞそもそも持ってはいないのである。
つまり「百億円の現ナマを用意したんだから、特例として認め、財産保全の議論はやめろ」が本当に言いたいことなのである。実際、当然ながら一時間半以上に及ぶ会見でも、いつ誰がどうやって国側に供託を申し入れるのか等の具体的な説明は一切ないのである。
その狙いは
田中会長の発言を再確認してみよう。彼は教団の資産総額についての明確な回答は避けながらも、「解散命令裁判が確定するまでは資金の海外移転は考えていない」と釈明した。そして「今国会で議論される財産保全措置法の必要性は全くない」と強調し、「それでも不安をお持ちの方のために特別供託金の提案」をさせていただくとしたのである。
要するに財産保全措置法の必要性は全くなく、国会で議論される必要もないが核心だ。
実際、東京地裁で審理中の解散命令請求が確定すれば、税制優遇のある宗教法人格は剥奪され、千億円規模ともいわれる教団の財産は裁判所が選任する清算人に処分される。
当然のことながら財産処分を恐れた旧統一教会は韓国にある世界教団本部などに移転させることが重要になる。まずは野党側の財産保全措置法を阻止することに狙いがある。
一方で解散命令請求の対象である宗教法人の供託については「根拠法がなく、今のところ考えられない」(東京法務局)のが現状である。つまり彼らは、まったく現実味がないことを承知の上で、この百億円を国に委託する提案をしたということに尽きるのである。
旧統一教会という反日カルト集団は、今なお反省ゼロであり、組織防衛しか頭にない。宗教法解散命令と財産保全措置逃れに全力投球している。半世紀近くも統一教会と癒着してきた自民党は、旧統一教会の財産保全措置法の整備に極めて消極的である。旧統一教会は、この法整備を回避するために自民党とすり併せての折衷案として供託金を提案したとの未確認情報もある。とにかく自民党は国民民主党と共同提案で財産保全措置法を提出する。両党は、憲法が保障する「信教の自由」を隠れ蓑にして立法に否定的なのである。
だが旧統一教会の信仰は、「信教の自由」として守るに値するか否かの根本的で本質的な論議は避けているのである。まさにこの点にこそ、その核心があるのにも関わらずに。
今後の展開は
野党の提出法案に反発する旧統一教会は、自民党国会議員およそ五十人の事務所に文書を送り付け、「宗教活動の自由と財産権に対する侵害が著しい」「違憲違法な立法措置がなされないようにお願い申し上げる」などと訴えている。もし自民党の助力が実現すれば、百億円を除く教団の財産を自由にしてよいと認めることでもあるから、彼らも必死である。
このような努力にもかかわらず反日カルト集団は、内部からも崩壊しつつあるようだ。
旧統一教会世界本部は、日本の金づるが解散するのを決して容認しない。まさに瀕死の状態にある旧統一教会が「百億円供託」によってすがるのは、他ならぬ岸田政権である。
九月の内閣改造直後から木原防衛相、伊藤環境相、鈴木総務相、盛山文科相の旧統一教会との関わりが指摘されていたが、国会審議で松村国家公安委員長も祝電を数回送っていた。パパ活疑惑で文科政務官を更迭された自民の山田参院議員の後任に、これまた関りの深い本田参院議員を任命したのが岸田首相である。まさに岸田政権は彼らと一体である。
それもそのはずである。かつての岸田後援会筆頭最高顧問は、統一教会の関連団体「日韓トンネル推進熊本県民会議」の議長を務めた崇城大理事長の中山前学長だからだ。
また彼は、岸田首相が悲願の首相就任をめざした二十一年の総裁選で県内の党員・党友票の取り纏めに動いた「熊本岸田会」の会長でもある。岸田首相と教団の関係は実に強い。
一説には、自民党は集票マシンとして機能してきた旧統一教会を生かさず殺さず、宗教法人は解散しても、旧統一教会組織の解体は企図していないとまで公然と囁かれているのである。実際、教団票がなければ落選危機に直面する議員がゴロゴロといるからである。
私たちは、旧統一教会に汚染された岸田内閣の宗教法人解散命令請求と財産保全をめぐる自民党と旧統一教会のドタバタ劇をただ見るだけではなく、彼らに徹底的に引導を渡す闘いを組織すべきであると考えるものである。 (直木)
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色鉛筆・・・境界線って何だろう?
特別支援学校に働いて三十年が過ぎました。
今までに関わってきた生徒で視覚・聴覚・肢体に障害がある方は、外見でわかりやすいです。白杖や補聴器、車椅子などで街を歩いていても、色々な運動を通じて、卒業後、社会の中でも少しずつ過ごしやすくなってきました。
知的障害の方は、障害のことを認知するのに会話するまでわからなかったりします。軽度知的障害の方は、会話しても全くわからないことが多いです。今軽度知的障害の方が増加傾向にあります。小学校は普通学級で過ごして、学習についていけなかったり、集団に入っていけなかったりして、本人もよくわからないまま特別支援学級にふりわけられます。そのまま義務教育を終え、高校受験というハードルを飛び越えなければいけません。
基本的な生活を整えることを目標とする授業が多い支援学校、卒業後は福祉的労働(B型作業所)て゛工賃をもらい、施設利用料を支払いながら働くので、手元には五千円くらいの収入が残るだけです。二十歳になれば障害者年金がもらえます。
一般就労に向けて、職業訓練的な授業を毎日繰り返し、実際に企業で働く現場実習(約一ヶ月)卒業までに六回経験する高等学園。卒業し障害者枠で就職すると約十万円くらいの賃金がもらえます。もちろん療育手帳があれば二十歳になると障害者年金がもらえます。
幼少の頃から親も子も悩みながら、知能検査を受けて知的障害が認定されると、一般就労を目指す高等学園に入学を希望される方が多く、受験者数が定員を超えてしまい、倍率が高くなる傾向があります。その競争の中合格した生徒は、今まで人数の少ない特別支援学級にいて、いきなり集団の中に入るわけです。一般就労するためには、次の高いハードルがあります。コミニュケーション能力だったり、手先の器用さだったり、大変なことです。大抵はコミニュケーションすることの難しさから、行き場のない気持ちが調整できず、良くないこととわかっていながら、その時の気持ちが抑えられず、イライラしたり物を壊したり、本人が一番辛いと思います。私はこのような現状を減らしたいと思います。
まず、社会の土台がぐらついていると思います。教員の給料は、残業手当の出ない給特法です。実際には、勤務時間通りに仕事は終わらないので、長時間労働です。そして病気休暇の補充もされなく、さらに長時間労働になってしまいます。
また、知的障害を持つ方の卒業後の一般就労と福祉的就労の賃金があまりにも違うことです。一般就労を目指す高等学園目指して、進路を本人の意思とは違ったまま受験することです。賃金の格差をなくすことが、大切なことだと思います。
そして普通高校も含めて、子どもたちを振り分ける入試自体がなくなれば良いと思います。軽度知的の方も希望すれば普通高校に進学でき、教員の数を増やし、個別支援が必要なときは、相談て゛きる体制を持ち、軽度知的障害を持つ方が、境界線に悩まないような社会、それも個性の一つとして、認められる社会を目指して、私自身できることをしていきたいと想います。(宮城 弥生)
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