ワーカーズ660号 (2024/11/1)    案内へ戻る

  自公両党は七十三減らし二百十五議席となり、過半数の二百三十三議席を割り込んだ

 十月二十八日未明、衆院選での小選挙区と比例代表の全議席が確定した。その内訳は自民党百九十一、立憲民主党が百四十八、日本維新の会三十八、国民民主党が二十八、公明党二十四、れいわ新選組九、共産党八、参政党三、社民党一、諸派三、無所属十二である。

 自公両党は公示前二百八十八から七十三減らし二百十五議席となり、定数四百六十五の過半数(二百三十三)を大きく割り込んだ。すなわち自民は六十五議席減らす大敗で公明も八議席の減である。そして特記すべきは、公明党は石井党首らを落としたのである。

 自公両党にとっては茫然自失の予想外の大敗北であるが、それは必然の展開であろう。

 大きく状況を見れば、第二次安倍内閣発足後の日本政治はもり・かけ・さくらの重大犯罪が表面化したのに自民党議員の犯罪は何一つ立件されず、事実隠蔽・公文書の改ざん等のやり放題であった。安倍氏暗殺は旧統一協会との深い癒着が浮き彫りになったが、自民党はその関係を充分には解明していない。まさに安倍政治への審判が問われていたのだ。

 今回の衆院選挙では「政治と金」が焦点となり、自民党は裏金を理由に非公認候補を認めたが公認候補と同額の二千万円を支給していた。さらに公明党はその非公認候補に対して推薦を出した。これにより公明党の堕落は誰の目にも明らかになり、大阪でも大きく支持を落とした。だから無反省で無恥の自公両党が過半数を割り込むのは必然である。

 残念ながら裏金に無責任な態度に終始した安倍派五人衆ら悪質候補を全員落選させることはできなかった。たが破廉恥な松野、高木、下村、丸川は落せた。しかし旧統一教会と深くつながる厚顔無恥で被害者気取りの萩生田、世耕を落とせなかったのは残念である。

 今回、立憲とれいわと国民民主が躍進したが、野田党首にはどんな期待も出来ない。なぜなら消費増税の裏切り者であり、政権を安倍へと禅譲した張本人であり、安倍国葬時に弔辞を読んだ人物だからである。野田と共闘した小沢一郎の今回の判断は糾弾に値する。

 れいわは消費税の廃止と積極財政と被災地復興を訴えた限りで三倍増は理解できる。しかし野田は穏健保守に支持を広げる、と心底から自民党との二大政党制を追求する人物であり、そのために松下政経塾で育成された人材であり、その意味では日本における反共主義の先兵である、松下が育成した反共主義者の連合会長の同志であるのは必然である。

 国民民主はまさに自民党そのものであるから、本質的には「ゆ党」である。その他、参政党の伸長も日本保守党も自民党支持層が誕生させたものであり、期待はできない。

 また共産党の暴露は今回有効なものだったが、除名・除籍騒動やセクハラ事件により一部地方組織を壊滅させた。そして極めつけは今回の選挙で安保体制反対や軍事費削減を掲げなかったこともあり、これらへの失望から従来からの党支持者の一部が離れていったのである。

 今後の首班指名や政権の連合形態に関して、また自民党内の石破おろしについては、今のところ、一切不明だが、私たちはこの数十年間、自公両党の労働者民衆の生活を困窮させてきた政治責任を、今後とも鋭く追及姿勢を明確にしておきたい。(直木)


 衆議院選挙  企業優先政治の自民党を追い詰めよう!

 衆議院選挙の終盤情勢が判明してきた。自民一強政治から、与野党伯仲、あるいは与党の過半数割れも現実味を帯びてきた。

 自民劣勢の最大の要因の一つが、自民党の裏金政治だった。が、自民党は、清廉な政治を期待・評価されて長く政権の座にあったのではない。政官業が結託した利権政治だったことが、長期政権の支えになっていた。その構造は、今でも根強いものがある。

 利権政治からの脱却は、単なる与野党接近や連立政権の組み替え等ではなく、労働者・生活者優先の政治への抜本的な転換によってこそ可能になる。

◆豹変を繰り返す石破首相

 裏金問題などで揺れる党内事情で首相の座を手にした石破首相。かつての発言や総裁選での主張は、施政方針演説や解散後の選挙戦に至って様変わりした。旧統一教会問題や裏金政治からの脱却も中途半端なものに終始している。それにアジア版NATO創設や、日米地位協定の改定なども総選挙では封印してしまった。さらには〝アベノミクス〟の見直し、や金融資産課税の強化、選択的夫婦別姓制度なども封印、主要政策での〝豹変〟はあきれるばかりだ。

 今回の衆議院選挙での、裏金問題による非公認候補への2千万円の資金提供など、政権の座の死守のための、なりふり構わずの姿勢も露骨だ。

◆与野党伯仲か?――衆議院選挙の趨勢

 そうしたなか、衆議院選挙の終盤情勢もいくつか報道されている。朝日新聞の情勢調査では、自民党が50前後の議席減、公明党も7議席ほど減らし、与党の公認あわせても過半数の233議席割れの可能性が出ている。対する立憲民主党は40人程度の議席増の〝躍進〟だという。そうなれば、与野党の政権交代、あるいは連立の組み替えなど、政界は大揺れとなる。

 最大の争点となったのは、政治と金、いわゆる自民党の裏金政治への審判だった。その結果、与野党伯仲という政治構造が生まれるが、別の角度から見ると、保守・リベラル対決というよりも、多党化を土台とした保守二党政治への変化、だともいえる。野田代表となったことで、立憲自体が、リベラルから中道・保守へのシフトが鮮明となり、保守対リベラルではなく、二大保守勢力を中心とした多党制への移行、ともみえる。

 確かに、野田立憲代表が言うように、自民党の裏金政治や利権政治を糺すためには、政権交代こそ最大の政治改革となる側面はある。今回の衆議院選挙で、仮に自民党が何事もなかったかのように勝てば、裏金・利権政治は続くことにお墨付きを与えたことになる。逆に、自民党を政権の座から引きづり落とすことで、政官財の利権政治にダメージを与えることもできる。

 ただし、政官財の利権構造は、そうした政権の枠組みが変わっただけでは、解消できない。利権構造自体の再編・組み替えも進むからだ。

 だから、単なる政権交代にとどまることなく、大企業優先政治から労働者・庶民優先の政治への転換という内実を獲得する事こそ、めざすべき課題となる。

◆自民党は利権政治――裏金はその結果

 自民党政治の〝政治とカネ〟問題は、自民党を政権の座から引きづり落とすだけでは解消できない。業界ぐるみの政財官という利権構造が消えるわけではないからだ。

 一例を挙げれば、電力や都市ガス料金などへの補助金や、ガソリン補助金だ。これらは二酸化炭素の排出規制やエネルギー価格の上昇への対策としての補助金だとされていた。

 が、現実にはこれらの補助金は、負担が増えた家計への助成ではなく、電力・都市ガス会社や石油・ガソリン元売り会社、いわゆる業界大手への補助金だった。その上で、業界大手は自らの利益を確保した上で、残りの幾ばくかを末端価格引き下げへと廻した。それも大手事業所や大手トラック業者ほど厚く還元した。例えばガソリン補助金は7兆円!。べらぼうな金額だ。

 このガソリン補助金は、トラック業界などの圧力で導入され、補助金という直接的な利益もそうした業界が享受した。車など保有していない、電力もさほど使用していない高齢者世帯や貧困世帯には、間接的にわずかな恩恵しか届かない補助金でしかなかった。

 原発でも同じだ。自公政権は、原発の最大限の活用への転換を強行し、再稼働や建て替えも進めるという。

 その原発、災害対応やテロ対策で膨らんだ建設費用などで発電単価が高まり、再生可能江ベルギーなどとの競合で不利になっている。その原発新増設で膨らむ建設コストを、電力料金に上乗せして消費者から回収するという、とんでもないシステムも導入するという。

 同じ事はその他の業界団体にも当てはまる。診療報酬で利害関係がある開業医が主体の日本医師会などが絡む医療保険制度、農協や土地改良区など利権が絡む農政、それに防衛費の倍増や次期戦闘機の輸出で潤う防衛産業などだ。

 たとえば「防衛力抜本的強化に関する有識者会議」だ。委員構成が経団連名誉会長や軍需産業の三菱重工会長などが委員になっている。まったくのお手盛りの御用会議そのものだ。その見返りが、企業献金やパーティ券購入など、露骨な業界べったり政治なのだ。

 さらには、軍事優先の〝経済安保〟が騒がれているが、その象徴として、政府による最先端半導体の量産をめざす〝ラピダス〟への補助金がある。量産までに総額5兆円の資金を見込んでいるが、民間出資企業は8社で73億円。23年度の純利益が5兆円のトヨタでも、たった10億円に過ぎない。政府の支援金はすでに9200億円で、今後も追加出資を見込んでいる。政府は中国が国有企業を支援していることを常に批判してきたが、ラピダスはまるでその中国の国有企業以上の国策会社並だ。

 大企業支援には膨大な補助金を投入するのに対し、たとえば訪問介護費の2%強の削減など、ただでさえ低報酬でヘルパー不足が言われているのにさらに削減するなど、あり得ない冷遇ぶりだ。

◆政権交代は最大の政治改革!?

 上記のような自民党政治=利権政治構造、それらを背景とした裏金政治に対して、野田立憲民主党は、政権交代こそ、最大の政治改革だ、というスローガンを掲げている。
 確かに、自民党政権の裏金問題は、自民党の姑息な改善策だけでは、決して改善されないだろう。自民党政治に深く根ざしている、利権政治に由来しているからだ。仮に、今回の総選挙で、自民党の勝利を許してしまえば、そうした利権政治は、また延々と再生産されることになる。
 だから投票という有権者の集団行動による与野党伯仲、あるいは連立組み替えや政権交代という局面転換で、有権者の政治への関心が高まる。そうした局面打開を何回も繰り返すことで、有権者全体の主権者意識・政治意識も高まり、またその活性化に繋がる。
 ただし、立憲民主党が躍進し、与野党接近、あるいは与野党逆転で政権交代となったところで、それが直接、労働者・庶民中心の政治への転換につながるかどうかは、別問題だ。
 野田立憲代表は、代表選挙時から〝穏健保守派を取り込む〟〝穏健保守派にシフトする〟と述べていた。要するに、外交安保政策などを中心として、自民党政権を継承するとの立場を打ち出していたわけだ。その結果として躍進した立憲民主党政治は、当然のこととして自民党政治の継承という性格が色濃くなる。それは、野田立憲民主党自体が中道保守化した結果でもあるからで、逆に言えば、中道保守化の波が立憲民主党を飲み込んだ、という結果になるからだ。それでは、日本の政治の抜本的な改革など実現できるはずもない。

◆大企業中心政治からの大転換

 大企業中心政治から、労働者や働く庶民の立場を優先した政治への大転換が必要なのだ。

 失われた30年とも言われる現状の日本。賃金は上がらず、生活水準は低位に張り付き、円安などで相対的経済力も低下し、GDPでも世界第2位の経済大国から、今では中国やドイツに追いつかれ、近くインドにも抜かれて第5位に低下、その後も順次下がっていくと見込まれている。

 賃金が上がらない最大の理由は、終身雇用と年功賃金システムの上での非正規労働者の増大にある。正規雇用者の半額程度の年収やそれ以下で働かされる非正規雇用者が、全雇用者の3分の1以上、4割近くまで増やされた。その結果、賃金=国内需要=国内市場が縮小し、人口の再生産さえ維持できない国にされてしまったわけだ。要するに、国内のコストダウン=構造的貧困化だ。

 こうした状況を抜本的に改善するためには、人口構成で最大の比重を占める賃金労働者の生活改善が欠かせない。それには賃上げや雇用システムの抜本的改革が不可欠だ。

 たとえば同一労働=同一賃金、あるいは、労働時間に全て比例する処遇制度づくりだ。具体的には、1日4時間労働に就く労働者の処遇は、正規の8時間労働のちょうど半分の賃金で、一時金や退職金も全て正規労働者の半分を支給する。要するに、労働時間に比例する処遇制度への転換などだ。違いは、働く時間だけで、オランダなどで一時普及していた雇用・処遇制度だ。

 そのためには、国政や選挙以前の、賃上げの闘いや雇用システムの抜本的改造など、具体的な将来的ビジョンと労働者自身による大衆的な闘いが不可欠だ。そうした普段の闘いを土台とした政権交代こそ必要なのだ。

 立憲民主党のような、中道や保守へのシフトなどではなく、労働者階級の要求を前面に押し出した、労働者派の闘いの前進こそ追及していきたい。2024/10/25記(廣)案内へ戻る


  自国防衛 “自衛権” とは何なのか!

1 北朝鮮のロシアへの兵力派遣

 北朝鮮がウクライナ侵攻を続けるロシアへの兵力の派遣に踏み切り、ウクライナや韓国に続いて米国が、ロシア内に北朝鮮軍がいることを確認した。

 韓国国家戦略研究院の文聖默(ムン・ソンモク)氏は、「北朝鮮の関与は、この紛争に多くの国が参加することへの扉を開き、より多くの国を引き込む恐れがある」と指摘し、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は21日、北朝鮮がロシアと共に戦うために部隊を派遣することは、紛争の「重大なエスカレーションになる」日本国内の世論も「北朝鮮軍の能力向上は日本や韓国にもゆゆしき脅威」「東アジアの安全保障にも深刻な脅威」と述べるなど戦争拡大への懸念を高めている。

 ロシアはウクライナ侵攻で深刻な兵員不足に陥っているとされ、米紙は9月、ロシア軍の戦死者が最大20万人、負傷者が40万人にのぼるとの推計を報じた。侵攻から2年半以上がたち、前線の兵士不足が顕在化し契約兵集めの窓口となる州などでは、相次いで契約一時金を増額している。モスクワ市も今年7月、一時金を昨年春の約10倍にあたる190万ルーブルに増額し、国からの一時金や給与を加えると1年目は520万ルーブル(約800万円)になると宣伝し、ロシアの平均月収の約60倍に相当するが、集まらない現状があり、国内契約兵だけでは足りず、これまでもネパールやインドなどで勧誘してきた事情がある。

 一方、エネルギー・食糧難などで苦しむ北朝鮮にとってはロシアへの弾薬提供や兵士の派遣は、見返りを得られるかもしれないチャンスであり、その期待が北朝鮮を動かしたと専門家らは指摘する。韓国の情報機関は、北朝鮮が決めた派遣の規模は約1万2千人に達すると指摘。不人気な動員政策に頼れないプーチン政権にとって、北朝鮮の兵力が大きな助けになるのは間違いない。

 ロシアと北朝鮮は昨年来、急速に協力関係を深め、北朝鮮はロシアに砲弾を供給。ロシアは食料やエネルギー支援のほか、軍事協力を行っている。6月に結んだ新条約には、有事の際の相互の軍事援助が盛り込まれた。

 こうした軍事協力によって派遣された北朝鮮兵は「(北朝鮮兵)部隊がすぐに前線に現れる可能性はないだろう」とウクライナで軍事関連情報を発信している「ディフェンス・エクスプレス」編集者のヴァレリー・リャビフ氏は、北朝鮮兵の部隊について、「ロシアとウクライナの国境の一部の守備につくことが考えられる。それにより、ロシア部隊は他の場所で戦うことができる」と話し、ウクライナ軍が越境作戦を展開するロシア南西部クルスク州に北朝鮮兵を投入し、ロシア兵をウクライナ東部の戦線に集中させることで、ウクライナへの攻勢を強める狙いだ。

2 「自衛権」とは戦争を正当化する理由だ!

 ●国際法で許される自衛権

 国際法上(国連憲章第2条4項)原則として国家による武力行使は禁じられているが、(国連憲章第51条)よって「自国」や「自国と関係が深い国」が武力攻撃を受けた場合に限り、反撃する権利(自衛権)が認められている。

 自衛権には、自国に関する「個別的自衛権=武力攻撃を受けた国が、自力で反撃する権利と関係国に関すると「集団的自衛権=自国が武力攻撃を受けていなくても、同盟国など密接な関係にある国が攻撃を受けたとき、自国への攻撃とみなして共に反撃する権利」がある。

 集団的自衛権の行使は、各国の判断に委ねられることになっており、義務では無いのだが、集団的自衛権は複数の国が集まり、有事の際は互いに助け合うという協力関係を構築しておくことで、他国からの侵略のハードルを上げるとされ、“戦争の抑止力”として機能するとされる。

 集団的自衛権のデメリットとしては、同盟関係にある国が攻撃を受けた場合、支援要請があると、戦地に自国の軍を派遣し関係国の戦争に巻き込まれるリスクが上昇する。
 ロシアと北朝鮮の軍事協力もこうしたものであり、国際法問題ないとロシア政府は言っている。

 NATOもこうした理由で結成されており、最近では、ウクライナへ侵攻したロシアに対する警戒感の高まりを背景に、ロシアに近接するスウェーデンとフィンランドの2か国がNATOへの加盟を申請した。
 
 ●自衛権で無視される憲法

 日本国憲法第9条は、【戦争の放棄】【戦力の不保持】【交戦権の否認】を規定しているが、「個別的自衛権」の立場から自衛隊という【戦力】を持ち集団的自衛権の解釈では「国際法上は権利を有するが、憲法上行使はできない」と日米安全保障条約を締結したのが日本における立場だった。

 しかし、2014年、日本を取り巻く安全保障環境の悪化を理由に、安倍内閣は従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。2015年、「安全保障関連法」が成立し、日本でも①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと

③必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの3要件を満たす場合に限り、集団的自衛権の行使ができるとした。

 日本はアメリカと日米安全保障条約を結んでいるので、アメリカの要請があれば自衛隊派遣支援ができ、海外派遣も可能で、憲法第9条【戦争の放棄】【戦力の不保持】【交戦権の否認】を規定しているにもかかわらず“戦争”ができる国となっているのだ。

 ●戦争開始理由は「自国の防衛・自衛権行使」

 かつて日本が中国を侵略し、第2次世界大戦に突入したのも「自国の利権=利益を占有する権利」を維持守るためだった。

 イスラエルの入植地確保や領地拡大に反発したパレスチナの人々の反抗に、パレスチナの人々をガザ地区やヨルダン西岸地域に押しとどめて、ガザ地区を支配するハマス壊滅攻撃を行い、ヨルダン内でパレスチナに影響を持ち対イスラエルではハマスと共同抵抗するヒズボラへの攻撃やパレスチナ支援をするイランにまでもミサイル攻撃をして、国連決議を無視してまで、戦線を拡大しているのもイスラエルの「自衛権行使」「自国防衛」である。

 ロシアがウクライナに侵攻したのもロシア側に立つロシア支持者を守るためと称して、ロシアの「「利権」を守るためであった。

 ●戦争を正当化する「自衛権」そのものを問う必要がある

 それぞれの「利権」に格差が生じ対立が発生している現代資本主義社会では争いは避けられない。集団的自衛権で戦争を抑止するというが対立がある以上、それぞれの安全保障条約締結によってグループ化した協力体のあいだで争いは起こり、最終的には世界を二分する世界大戦は避けられなくなるだろう。

 個々の「利権」にとらわれず戦争のない世界を目指すなら、格差を助長し利潤追求を図る現代資本主義制度とその国家を変革してゆかなければならない。

 そして、対立を防ぐ「利権」についての公平な判断ができるルールを国際的に作っていかねばならない。

 労働者市民による強固な国際連帯と資本主義制度の変革を図ってゆこう!(光)案内へ戻る


  ≪なんでも紹介≫ レプリコンワクチン定期接種開始の狂騒曲

日本看護倫理学会の緊急声明

 新型コロナワクチン接種については、日本各地でも数多くの副作用や健康被害が報告されている。厚生労働省の疾病・障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会 新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第一部会)の資料によると、予防接種の健康被害救済制度を使ったコロナワクチン接種による健康被害の申告は、本年6月段階で一万千三百五件に達し、この七割近くの七千四百五十八件を実際に健康被害と認定したのである。

 さらに本年8月7日、日本学術会議の協力学術研究団体ではないが、日本看護倫理学会は緊急声明は、「新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために」と題され、医療関係者が当然ながらに感じるレプリコンワクチンの「安全性および倫理性」に関する懸念を率直に表明したものであった。

声明の核心

 この声明で五点指摘された内でも特に重要なものは、①このワクチンが開発国の米国や先行治験国のベトナムで認可されていない点、②接種者からのシェディング(感染)疑惑が払拭されていない点、③将来の安全性に関しての担保がない点、の指摘である。

 詳説すれば、①日本での認可から約8カ月になるが、開発国の米国や大規模な治験を行ったベトナムなど海外では今も承認国が出ていない。この状況は海外で承認が取り消された薬剤を日本で使い続け、多くの健康被害をもたらした薬害事件を想起させる。②レプリコンワクチン自体が自己複製mRNAであるため、接種者から非接種者に感染(シェディング)するのではないかとの懸念がある。それは接種を望まない人にワクチン成分が取り込まれてしまうという倫理上の問題がある。③遺伝子操作型mRNAワクチンは、人体の細胞内の遺伝機構を利用し抗原タンパク質を生み出す技術であり、人間の遺伝情報や遺伝機構に及ぼす影響、特に後世への影響についての懸念が強く存在する。(最近の研究によると)ヒトの遺伝情報に影響しないという言説は根拠を失いつつある、というものだ。

 また緊急声明では、従来のmRNAワクチンは実験段階でも接種段階でも重篤な副作用があることについて、接種の際に十分な説明が行われなかったと指摘する。したがってコロナワクチンの接種は、インフォームド・コンセント(十分な説明を受け納得した上での同意)を基盤とする医療のあり方を揺るがしかねない事態になっていると強調したのだ。

 そして緊急声明は「われわれは、安全かつ倫理的に適切なワクチンの開発と普及を強く支持するものではありますが、そのいずれも担保されていない現段階において拙速にレプリコンワクチンを導入することには深刻な懸念を表明します」と結ばれているのである。

レプリコンワクチンの定期接種の開始が迫る中での急展開

 レプリコンワクチンの定期接種の開始が迫る中で開始されたこの前哨戦は、9月に入ると急展開の様相を呈し始める。まずは9月18日に衝撃が走る。それは製薬会社・明治製菓ファルマの現役社員たちが書いた『私たちは売りたくない! 危ないワクチン販売を命じられた製薬会社現役社員の慟哭』という書籍が発売されたことだ。この本は即日完売となり、しばらくするとアマゾンの本の総合ランキングで1位になるなど大きな反響を呼ぶ。

 内容は、明治製菓ファルマの26歳の男性営業社員が新型コロナワクチンを接種した3日後に死亡し、その後救済制度で認定されたことでこのワクチンに対する問題意識を突き詰めていく中、現役研究職員たち自身が今回自ら製造するレプリコンワクチンの安全性等に大疑念を持つに至り、このワクチンを社命で販売する苦悩などが赤裸々に語られている。

 実際のところ、レプリコンワクチンを販売する側である製薬会社の社員達すら「売りたくない」との表明した内部告発本を刊行することに、私たちは衝撃を受けたのである。

 9月20日、武見大臣は記者会見の際、記者から『私たちは売りたくない!』が出版されてたことで、「武見大臣は新型コロナワクチン接種体制について見直すなどお考えはありますでしょうか」との質問がなされ、これに対して武見大臣は、「ご指摘の書籍は、私は承知していませんが、明治製菓ファルマのレプリコンワクチンであるコスタイベ筋注用については、…で薬事承認について了承されたことを踏まえ、薬事承認を行っています。…今後とも科学的な知見の収集に努めるとともに、専門家に評価いただき、ワクチンの安全性の評価を適切に行い、新たな知見が得られた場合には速やかに医療機関等に情報提供するなどの対応をしっかり行って参りたいと考えています」と形式的な答弁したのである。

明治製菓ファルマ社長の記者会見とその後のスラップ訴訟と注意喚起広告

 9月25日、こうした状況に危機感を感じた明治製菓ファルマの小林ワンマン社長は、レプリコンワクチン(コスタイベ)に対して非科学的主張を繰り返す専門家には「厳正に対処」するとし、法的措置も辞さないとの警告を発した。そしてまずは「まずは誤解があれば解きたいというスタンス」を持った書面を日本看護倫理学会に送付するとした。

 この書面に対して10月7日、日本看護倫理学会は、「緊急声明に関するご報告」を発表した。その内容は、「9月27日には明治製菓ファルマ株式会社より要請書が送付されており、国民の命と健康を守る同じ立場として、建設的な対話を通じた対応策を理事会で審議中です」「引き続き、学会として状況に応じた適切な対応に努めてまいりますので、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます」というものだった。当然の回答だ。

 しかし10月8日、余裕のない明治ホールディングス傘下の明治製菓ファルマは、新型コロナウイルスの変異型対応ワクチン「コスタイベ筋注用」について記者会見を開き、コスタイベは「レプリコン」と呼ばれるmRNAを改良したワクチンで、国の定期接種の対象で安全だ。ゆえに批判を繰り返す団体・個人を名誉毀損で提訴すると発表したのである。

 小林社長は「コスタイベを導入した医療機関に対して誹謗中傷や脅迫が寄せられている。ワクチンの供給に支障が出ている」と指摘し、「医療従事者は客観的データに基づいて話すべきだ。誤った認識がこれ以上流布するのを防ぐため、訴訟はやむを得ないと判断した」と話し、同社はコスタイベについて、これまで実施した海外や国内での臨床試験(治験)で有効性が確認されたとしている。だがこれらの臨床試験や治験の結果に真の信頼性があるのであれば、そもそも日本看護倫理学会等からの疑念など生じようがないのである。

 この記者会見は、ワクチンを開発した米バイオ企業アークトゥルス・セラピューティクスとワクチンの販売で提携するオーストラリアのCSLグループとともに開いた。この点に彼の自信のなさ、数=「類は友を呼ぶ」で圧倒しようとの姿勢が見て取れる。実際、米国が開発者利権を易々と放棄しているのはなぜなのか。ここにこそ真の問題が潜むのだ。

 さらに10月16日、明治製菓ファルマは、驚くべき行動に打って出る。それはその日の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞、産経新聞などの朝刊に注意喚起広告を掲載したのである。何という呆れた散財ではないだろうか。提訴の次はこれなのだから。

 この間の明治製菓ファルマの動きを、おそらく提訴されているだろう、免疫学の専門家である井上正康東京理科大学名誉教授は「訴訟になったら明治製菓ファルマは藪蛇の状態になる」と冷静に予想する。これはまさに暴挙であり、「天に唾する」行為ではないか。

前言を翻して焦りから自滅の道を選ぶ

 9月25日の時点では、小林社長は「レプリコンワクチンに『シェディング』(=ワクチン接種者から非接種者への感染)の懸念があるなどとして緊急声明を発出した日本看護倫理学会を名指しし、「学会による懸念表明のためインパクトがある」との認識を示したものの、声明の内容には誤解に基づく記述や非科学的な内容が散見されると指摘した。そして「(日本看護倫理学会に)正確な情報が入っていないのではないかということで、我々としては科学的根拠に基づくデータや論文にこのように書かれているということを示して、修正いただけないかとの書面を出す予定」だと述べた。疑問や論点整理の要望が出た場合も、「情報提供する用意がある」と言い、「まずは誤解があれば解きたいというスタンスで臨む」また「同学会以外にも医師が代表を務める団体がSNS上でコスタイベの誤った情報を配信している事例を把握しているとし、科学的根拠に基づくデータなどを示した書面を送付する方針」とも話していて、余裕綽々の姿勢を内外に示したはずだった。

 だが実際には、7月25日送付済みのmRNAワクチン中止を求める国民連合の公開質問状や対話の呼びかけに対し、一切回答していないのである。明治製菓ファルマ社は、記者会見での姑息な印象操作を止め、疑念を記す人々を「非科学」と断罪し訴訟を選ぶ前に、この未知のワクチンへの国民の懸念に誠実に対応すべきなのはあまりにも明白である。

 だが今回、まさに問答無用の強行突破を狙ったスラップ訴訟に踏み切ったのだ。これは医学者でもなく単なるワンマンでしかない小林社長の選択した、実に大きな戦略的な判断ミスである。彼は裁判の過程で自らの首を自分で絞めていくことになっていくだろう。

 実際の裁判では明治製菓ファルマが自社では碌な臨床試験をしていないこと、ベトナムでの治験では死亡者が出ていることが具体的に暴露されることになる。しかも現役研究者に痛烈な内部告発本を突き付けられ右往左往でボロボロの明治製菓ファルマ。それもこれも昨年末から粘り強く続けられてきた明治製菓製造の菓子類不買運動の成果である。

 私たちは、今後とも明治製菓ファルマがレプリコンワクチン製造を断念するまで、執拗に製品ボイコットを続けることで勝利しようではないか。 (直木)案内へ戻る


  読書案内  「インボイスは廃止一択 消費税の嘘がよくわかる本」  著者 犬飼淳 発行 皓星社  定価2200円 2024年6月6日発行
    
 著者の犬飼さんは、日本のジャーナリストで、2018年から国会答弁を中心に政治に関する論考を発表しています。2021年から「犬飼淳のニュースレター」を開始し「大手メディアが報じない読み応えのある検証記事」を配信しています。  

 2023年10月1日、インボイス制度が開始されました。インボイス制度により、年収1000万円以下のフリーランス、個人事業主、零細企業の収入を大幅に減少させています。そして、消費者にとっても、商品を買うときに値上げという影響が出ています。     

 インボイス制度とは、税率を変更しない消費税の増税です。 税率を変更しないため増税が見えずらいですが、インボイス制度の導入により、事業者か消費者のだれかが必ず、増税分を負うことになります。 

 現在、取引先からインボイスを求められたり、経理担当者から「経費の領収書はインボイスをもらってきて」と言われている方も多いと思います。 

 なぜこれまでの領収書や請求書でなく「インボイス」を求めるのかといえば、それが事業者にとって金券的価値を持つからです。逆に言えば、金券となるインボイスを手に入れられない場合、消費税の納税額が増えてしまうのです。     

 インボイス導入前までは、年商1000万円超の課税事業者は、請求書があれば、売上にかかった消費税から仕入れにかかった消費税を差し引くことができました。これを「仕入税額控除」と呼びます。  

例 売上 5500万円(うち、消費税500万円) 仕入れ 1100万円(うち、消費税100万円) 売上にかかった消費税500万円―仕入れにかかった消費税100万円=納税額400万円  

 インボイス制度のもとでは、登録番号のついたインボイス(=適格請求書)でなければ仕入税額控除ができないため、上記の例でいえば、マイナス100万円ができなくなります。すると、消費税の納税額が400万円から500万円にはね上がってしまうのです。  これが、増税と言われるところです。  

 インボイスは誰でも発行できるものではありません。

 税務署に申請をし、税務署長からもらったTからはじまる13桁の番号を記載したものだけがインボイスであり、その発行には、消費税の納税が生じる「課税事業者」になることが必須条件です。  

 年商1000万円以下のフリーランスや個人事業主といった免税事業者にとっては、インボイス発行事業者になることが、「消費税の増税」になります。 一方、免税事業者が課税事業者に転換せずインボイスを発行できない場合、彼らと取引のある課税事業者はその分の仕入税額控除ができなくなるため、「消費税の増税」を負うことになります。  

 もし課税事業者が増税分を背負いきれなければ、今度は、自社が販売するサービスやモノの値段を上げ、消費者に「消費税の増税」を押し付けることになります。  

 ただし、インボイス制度開始から最初の3年間(2026年9月30日まで)は、免税事業者からの課税仕入れの80%控除、その後の3年間(2029年9月30日まで)は50%控除できます。

 しかし、それ以降は何もありません。

「インホ゛イス制度を考えるフリーランスの会」による実態調査報告が今年4月にありました。 以下要点  

 集計期間2週間で7000人超が回答を寄せ、自由回答欄には4500人以上がコメントを残しています。

● 会社員を含む全回答者の9割超がインボイス制度にデメリットを感じており、 制度の見直しや中止を求める。
● 消費税の負担感について、インボイス登録事業者の6割が「負担軽減措置終了後の 目処が立たない」「負担が大きく、事業が成り立たなりたたなくなりそうだ」と回答。
● インボイス登録事業者の6割超が消費税や事務負担の費用を価格転嫁できず、「身を削って補填」。「借り入れ」して消費税を納税した事業者は、インボイス登録事業者の約1割にあたる200人超。
● 免税事業者の4割超が、制度開始後に重要な取引先から値引き・発注量の減少など、なんらかの不利益を被る。
● 全回答者の7割が今後の事業について 「見通しが悪く、不安」「廃業・転職を視野に入れている」とマイナスの見通しを訴える。
● 自由回答欄では、裏金問題を含む政府への怒りを訴える声が散見された他、 自死を含む「死」に関するコメントは29件確認された。  
 インボイス制度は、廃止一択です。 (河野)      案内へ戻る


  沖縄通信・・・日米共同統合演習「キーン・ソード25」とは!

 辺野古基地建設現場で座り込みに参加しながら、南西諸島における自衛隊基地建設が凄い勢いで進んでいる事を聴いていたが、宮古島の人から直接話を聞き大変驚いた。

「今、島は島民にとって住みにくい島になっています。アパートの空室はほとんど無く家賃は2倍程に高騰。賃金は低く観光客値段の物価高騰に苦しんでいます。島外から増え続ける来島者を迎えるためのインフラ整備、地下水不足、建築のためのインフラ整備、近い水不足、建築のための自然環境破壊、地下水汚染など島の環境破壊が心配されます。」

 このような南西諸島の状況の中、今月(10月)の23日~11月1日まで、沖縄・奄美を中心にした大規模な日米共同演習「キーン・ソード25」が始まった。軍事ジャーナリストの小西誠さんはこの「キーン・ソード25」について次のように述べている。

 『軍隊の演習は単なる訓練ではない。ウクライナ戦争も前年の両国国境でのロシアの演習から始まり、戦争へと発展した。戦史上でも実働演習が戦争へと繋がった例は多い。自衛隊は今秋、対中国戦争を想定した幾つもの演習を行っている。1つが「南西諸島有事」を想定する陸上自衛隊10万人動員(総人員の3分の2)で、9月から11月下旬まで九州の演習場を南西諸島に見立てて行っている。陸自大演習は、連動した全自衛隊と米軍の日米共同統合演習(キーン・ソード25)に引き継がれる。

 「キーン・ソード」は、2年に一度実働演習として行われる日米統合演習だが、従来の演習との大きな違いは、先島諸島~琉球諸島を中心に九州に広がる「台湾海峡有事」の演習としての性格を明確化したことだ。

 参加規模でも最大である。参加部隊は自衛隊に加え、インド太平洋軍~太平洋陸軍・艦隊・空軍・海兵隊・在日米軍ほか、同志国のオーストラリア軍及びカナダ軍まで参加。つまり、なし崩しの対中国「連合軍」である。参加部隊は自衛隊3万1千名、米軍約1万2千名、その他日米艦艇約40隻、航空機約370機。

 注視すべきは、演習になんと米陸軍が本格的に参入することだ。発表では対艦ミサイル・ハーマスによる演習は、「第12沿岸海兵連隊、米陸軍第17野戦砲旅団」などが参加。この対中国戦争とともに注目すべきは最近の米軍の動きである。24年9月、米海軍作戦部長は「米海軍の戦争遂行能力のための航海計画2024」を発表し、「27年までに中国と戦争になる可能性に備えるとともに、海軍の長期的な優位性を高めるという2つの戦略的目的に向かって推進する」と。この発表は米海軍の正式な運用計画である。』

 最後に小西さんは、「この日米中の激しい軍拡競争・実働演習を阻まない限り、戦火は台湾海峡を始め、どこからもでも起こりえる事態だ。私たちに求められているのは、沖縄~琉球列島の要塞化を押しとどめ、このような実働演習による『戦争の脅威』を許さないという世論を作り出すことではないか」と述べている。(富田英司)


  コラムの窓・・・袴田再審無罪判決傍聴記!

 裁判の傍聴、それも刑事事件の判決を傍聴することなど普通はないでしょう。私は1998年3月24日、一審無罪が高裁で覆され神戸地裁でのやり直し裁判で殺人事件とされた「甲山事件」の無罪判決を経験しています。

 私が住んでいる兵庫県西宮市の精神薄弱児の収容施設で74年3月17日に起きたこの事件、のちに事故だったことが明らかになっています。警察・検察は保母の沢崎悦子さんを犯人視し、最終的に大阪高裁で無罪が確定する99年9月29日まで、25年もかかっています。

 袴田姉弟の闘いははるかに長く、半世紀を超えて人生の大半をかける過酷なものでした。冤罪を覆し、無実を勝ち取ることがこれほど困難なのは、ひとえに再審法の不備と言わざるを得ません。今も獄に囚われている多くの冤罪犠牲者の自由を実現するためにも、再審法改正は待ったなしです。

 袴田再審判決には500人を超える傍聴希望が裁判所を取り囲むように並び、抽選に当たったのは宝くじに当たるような幸運でした。腕に抽選番号の紙を巻き、さらに傍聴席の番号を指定された紙を巻き、ようやく裁判所に入ったのですが、法廷には筆記具以外の荷物はもち込めない。さらに、身体検査まで行うという物々しさでした。

 そうした身体検査が終わって、さらに傍聴人を入れないで法廷撮影を行う間、ひどく待たされ、静岡地裁には悪い印象をもって指定された傍聴席に座りました。それでも、まさか有罪はありえないと思っていたので、判決の内容に少しは期待していました。

 國井恒志裁判長が無罪という主文を読み上げたとき、記者たちが一斉に席を立ち騒然となり、3件の捏造を指摘した時も同様で、その都度、交代の記者が席に着くありさまで、落ち着かない法廷内でした。その後、ようやく静かに判決文の読み上げる態勢ができました。

 國井裁判長はかなり早口で2時間弱、まるで体力勝負のように判決読み上げを続け、何度かマイボトルでのどを潤し、予備のマイボトルまで準備していたのだから、内容も含めて相当の決意で判決言い渡しに臨んだことがうかがえます。検察官の名前もあげて捏造を指摘したのだから、すごいことです。

 5点の衣類の捏造について、裁判長は一審の裁判が無罪になることを危惧した検察が仕組んだというわかりよい指摘をし、端切れも同様仕組むことができたとしています。自白についても黙秘権侵害、非人間的取り調べ、自白の強要など、その任意性を否定しました。

 こうした判決の内容はその後の報道や判決文の公表によって誰もが知るところとなっていますが、傍聴席で聞くことができて大げさではなく歴史的場面に立ち会えた気分でした。判決では、衣類の赤みが残るか残らないかについて、残らないに決まっていると言うのではなく、検察側の主張を事細かく検証し、私は聞いていて詳しすぎてよくわかからなかったのですが、すごく印象に残りました。

 このことは判決言い渡しのあと、袴田ひで子さんを証言席に招き、さらに聞こえにくいというので証言席の前に椅子を移動させ、判決の内容を分かりやすく伝えたのです。さらに、残念だけど裁判所が無罪を確定させることができない、検察が控訴するかもしれないと申し訳なさそうに説明を加えていました。

 ここで、判決があれほど衣類の赤みについてこだわってたのが、検察の控訴を断念させるためのものだったのか、と思い至ったのです。弁護団では、凶器のくり小刀では4人も殺せないのに・・・、といった不満は残ったようですが、とにかくよかったと安堵の思いで静岡を後にしました。

 その後、袴田巌さんは公の場に姿を見せるようになっていますが、あの判決の場に姿がなかったことに悔いが残ったのではないかと思います。そういえばあの日、判決を聞き終わって外に出たら、待機していた人々のなかに「狭山事件」の石川一雄さんが静かに座っている姿がありました。次は石川さんの番だと、強く思ったところです。そう、ついでに死刑廃止も。 (晴)案内へ戻る


  袴田巌さんの無罪判決日、感想あれこれ

 9月26日、朝6時台の新幹線で静岡へ。9時前には、静岡地裁前に到着。すでに、事前集会のための舞台は作られ、横断幕も用意されていました。9時30分の傍聴整理券の配布までの間、支援者の人たちと挨拶、集会は始まり地方からの参加者も集まりだしました。

 3列で並び傍聴整理券の配布を待っている間、隣の学校の窓から手を降る生徒たち。どうやら、休み時間らしいが、袴田さんの判決に関心があって当然と思う。500人を超える傍聴人、当たるのは奇跡に近い。発表までの間10時からはアピールがあり、足利事件の菅谷さんは元気な声で挨拶されました。私が驚いたのは、袴田さんを応援するボクサー仲間の結束です。次から次へと続いて袴田さんへの篤い思いを語ってくれました。

 抽選を終え、昼食は静岡市役所の食堂へ。丸太そのものを見せる構造の作りが、木の香りを出し落ち着かせてくれます。暑さをしのぎ、午後からの判決を待つ体力づくりの食事となりました。西宮市の食堂は経費削減のため廃止となってしまいました。静岡がうらやましい。

 午後1時15分過ぎに、袴田ひで子さんと弁護団を力強く裁判所に送り出し、私たちは外で判決を待ちます。2時判決後5分ぐらいで無罪の判決。自然とバンザーイの声が上り、皆が続きました。まさに感動の瞬間です。報道陣は裁判所の周りを囲み取材をし、私たちの所にも来て「無罪」と書いたタオルを持つ場面をカメラに収めて行きました。3つの捏造を認めた画期的な判決だったことが徐々に伝わってきました。

 2時半ごろ、静岡地検まで一列行進で「控訴をするな」の申し入れをしました。裁判が終わるまでの間、弁護士会館でお茶を買いに行ったら売り切れで、帰ろうとしたら石川一雄さん夫妻を見かけました。おふたりに「次は石川さんの番ですね」と声掛けをして出てきました。

 4時20分ごろ、笑顔満面のひで子さんに花束が送られ、改めての祝福を支援者と共有。その後、弁護団を中心に地検に控訴断念の申し入れをし、そして本日最後の行事となる弁護団記者会見が会場に溢れる支援者を集め行われました。長い1日でしたが無罪判決を勝ちとる瞬間を共有できた素晴らしい記念の日となりました。(折口恵子)


  袴田巌さんに完全無罪判決、でも闘いはこれから

10月14日静岡での無罪確定を祝う集会(主催・袴田巌さんの再審無罪を求める実行委員会)で、「長い闘いがございましたが、私の、やっと完全無罪が実りまして、闘いに出て参りました。」と巌さんがあいさつ。ひで子さんのはじけるような笑顔を中心に、会場が喜びに沸き返る中、穏やかな表情でこう挨拶する姿に、私は、なぜこんなにも時間がかかってしまったのかという怒りの気持ちがわいて仕方が無かった。

とはいえ検察の控訴断念までの2週間、皆が力を合わせて連日、静岡地裁、東京高裁などへの要請行動、街頭宣伝、ビラまきなどに取り組み、ネット署名は5万2千を超えた。無論無罪確定は心の底から嬉しい。会場は、各地の支援者の皆さんを始め、弁護団、日本ボクシング協会など250人あまりで一杯だった。その中に第二次再審で、五点の衣類のDNA鑑定をし、袴田さんの物ではないと判定した本田克也教授(筑波大)の笑顔もあった。本田鑑定はその後、2014年の再審開始決定、巌さんの釈放へと道筋をつけてくれた。この日彼の「日本の裁判は本当に時代遅れ。」との発言が印象に残る。

1968年の最初の死刑判決から、再審開始の2023年までの間、数十人の裁判官たちは巌さんの訴えをことごとく棄却、有罪判決を支持してきた。それに対し、数人の裁判官や多くの弁護士、本田教授ら学者そして多くの支援者たちの粘り強い取り組みで勝ち取った無罪判決。何より一度もへこたれることなく、弱音・愚痴・恨み言を一切口にせず前向きに闘い続けるひで子さんの存在はとてつもなく大きい。弁護団も含め皆の大きな支えだった。

喜びの一方、忘れてはならないのは、検察、警察の姿勢だ。10月8日に検事総長は談話で、控訴はしないとしつつ「判決は到底承服できず控訴すべきだが云々」と述べている。10月21日に静岡県警本部長が、巌さんに面会し直接謝罪したが、今後は事件当時の記録、資料、関係者ら全てを検証し、それを明らかにした上で再びきちんと謝罪すべきだ。現状では到底誤りを認めたことにはなっていない。

検察、警察、裁判所の犯した過ちを今後きちんと検証すると同時に、事件当時マスコミが警察情報から一方的に犯人と決めつける報道をしたこと、疑うことなくそれを信じた人権感覚の欠けた私たち自身もまた責任を問われている。

逮捕から20日間近く、たった一人で拷問に耐え自白を拒否し続けたこと、警察、検察がグルになって証拠を隠し、捏造、裁判所が認めてしまっても、一貫して無実を訴え続けてきたこと、逮捕から48年、そのうち33年間は死刑の恐怖と隣り合わせだったこと・・・。今日、生きて私たちの前に立つ巌さんは、とてつもなく強く勇敢な精神の持ち主なのだと思う。そこから生還し、招いた結果を私たちの前に体全体で示してくれている。

再審法の改正実現は無論のこと、わたしたちはこの事件から学ぶべき事がたくさんある。学んでそして取り組むべき事が山ほどある。闘いはまだこれからだ。

 追記 * 巌さんとひで子さんのいわば国家権力との58年間もの闘い、その強さ、勇気に心から敬意を表したい。そして、日々巌さんに寄り添い続けている浜松の「見守り隊」に深く感謝したい。(澄)


  色鉛筆・・・もう待てない再審法改正!    石川一雄さんの再審開始実現を

 10月19日、神戸で「狭山再審を求める市民の会・こうべ」の総会と再審法改正の講演会がありました。講師は、日弁連で「再審法改正実現本部」本部長代行の鴨志田祐美弁護士が務められました。トレードマークのベレー帽は赤紫のようでした。袴田さんの判決日にもお見かけし、国内を巡る旅芸人と称される所以を身近で感じました。

 狭山差別事件は、1963年に発生。1977年に最高裁で無期懲役が確定。確定の21日後に第一次再審請求が出されています。その当時、私は東京のデモに参加し、「部落差別反対、石川さんは無罪だ」と抗議していた記憶があります。もう、石川さんは青年ではなく、杖を携える85歳の老人になっているのに、司法は何をしているのでしょうか。

 弁護士の鴨志田さんは、2002年40歳で司法試験に合格。当時、中学生になったばかりの息子さんが居るお母さんで会社員の経験もあったことが、今の弁護士活動にも活かされているのかなと思いました。

 今年9月26日、静岡地裁で袴田巌さんが再審無罪判決を勝ち取りました。無罪判決に至ったのは、再審によって新たな証拠が開示され、証拠となった5点の衣類のカラー写真による血痕に疑いを持った弁護団・支援者の執念が実ったと言えるでしょう。本来なら、証拠開示は全てが対象になるはずが、検察が判断し有利になるものを開示。検察が隠している証拠の開示勧告をやるか否かそれは裁判所の裁量となる、そんな再審格差が行われているのが実態です。

 鴨志田弁護士によると、既に2016年に格差是正のための法改正が必要という改正刑訴法が成立し、法施行後すみやかに再審請求審における証拠開示等の検討を行う、とされていました。

 ところが、8年が経過した今も「四者協議」の議論は進んでいないとのこと。申立てによる証拠開示ルールの無い現行再審法を、裁判所の職権ですべての記録、証拠を裁判所に送致する制度にすべきと、鴨志田さんの熱い思いに頷くばかりです。

 再審開始を遅らせる検察官抗告は必要か? そもそも、再審の公益は「有罪判決の維持」ではなく、「無辜の救済」という制度目的のために、裁判所の職権行使に協力すべきなのです。日本の再審法のルーツであるドイツ(職権主義)は、1964年に再審開始決定に対する検察官抗告を立法で禁止しているのです。日本国憲法施行前に制定され、75年続いた現行法には救済や人権などは考慮されていません。

 今、国会議員の350名(衆院解散前)が、再審法改正に向け超党派で議員連盟に加入しています。14道府県議会を含む404地方議会が、国会に対し、再審法改正を求める意見書を採択し、知事や市長区長など127首長が改正への賛同を表明しています。市民にももちろん賛同署名が出来ます。

 狭山事件再審請求審の現状は、2006年の第三次再審請求の提起から18年。いまだにひとつの証拠調べも、1人の証人調べも行われていない。他に類例を見ない審理の遅延を指摘さています。再審法の改正は、狭山再審開始を実現可能に導くチャンスです。現地調査、駅前座り込み行動、集会などの取り組みの他、今年から呼びかけ人を増やし運動の広がりに繋げて行く方向です。袴田巌さんに続いて石川一雄さんの無罪を勝ち取るために、皆さんも注目、支援をお願いします。
(ワーカーズ656号、色鉛筆にも再審法改正の記事あります。参考にして下さい)(恵)
 

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