ワーカーズ662号 (2025/1/1)  案内へ戻る

  さらなるジェンダー平等を目指して

 「男は仕事、女は家庭」家父長的、性的役割の分担はまだまだ私たちの意識に深く入り込んでいます。

 以前は、体育や家庭など男女別々に学習していましたが、一九九〇年代以降ジェンダー平等の考えから男女一緒に学習するようになりました。

 また、統計を見ると、日本では無償労働時間が女性は男性の五倍強あります。スウェーデンは一・三倍なので日本の女性が子育て、家事などの時間が多いことがわかります。

 また、物価の高騰と人手不足が深刻化する中、「年収の壁」が社会問題となっています。

 結婚と同時に退職した女性は、子どもが幼稚園や小学校に入学すると、働き始める方も多くいます。子どもの帰宅時間に合わせて働く非正規の短時間労働を選んだり、住民税や所得税支払いの対象にならない一〇三万以下の収入を選んだりしてパートナーの扶養範囲内で働くことを選ぶ方が多いようです。しかし、扶養の範囲内で働くことが本当にお得なのでしょうか?仕事量に見合った賃金が支給されているのでしょうか?そして将来の年金積立は十分にできるでしょうか?

 また結婚をして退職しないで、産休・育休をとり子育てしていく中で、子どもが社会の中で育っていける体制(保育所や幼稚園の数や放課後児童館など)体制が十分整っているでしょうか? また長時間労働で疲れ果て、子どもと向き合える時間は十分に取れているでしょうか?

最近育休をとる男性が増えてきました。それも今までのジェンダー平等の運動を粘り続けてきた成果だと思います。しかし、現状はまだまだ女性差別を感じますし、住みづらい世の中です。男女賃金格差を解消し、最低賃金を引き上げ、さまざまな生き方がある中で、「配偶者」に限定した控除は名称を廃止し、扶養控除一本にして欲しいと思います。

 ジェンダー平等の運動をすすめていくことで、「男らしさ」「女らしさ」から解放され、自分らしく生きることにつながり暮らしやすい社会が実現すると信じています。(宮城 弥生)


  闘う足場づくりが必要だ――ポピュリズム型政治の拡散を考える――

 昨年は世界で重要な選挙が多く行われた年だったと、これも多くのメディアが伝えていた。

 日本でも同じように注目された選挙が続いた年でもあった。

 新しい現象を伴ったり、驚くような結果をもたらした選挙も多く、まさに選挙戦の舞台は変わりつつあるとの実感をもたらせた年でもあった。

 そうした経緯を振り返りながら、新しい闘いの足場づくりを展望してみたい。

◆〝選挙の年〟

 国内では、7月の都知事選、秋の総選挙、それに兵庫県の出直し選挙などだ。

 海外を見渡せば、4月の韓国総選挙での与党惨敗、6月のインド総選挙でのモディ政権の単独過半数割れ、同月の欧州議会選挙やフランス国民議会選挙での右派政党の躍進、7月の英国の総選挙での政権交代、そして11月の米国大統領選挙でのトランプ再登場だ。

 それぞれの選挙で問われた課題は多様で、結果もそれぞれだが、各国で共通するのは、格差拡大などを背景とする既存の政治への批判の拡がり、新興政治勢力のイメージ刷新による伸張、などだ。

 それぞれの攻防戦の様相も様変わりしている。端的に言えば、左右対決型・保守対リベラル型から、国際協調と自国最優先政治の是非へと対立軸が変わったこと、また、選挙戦の舞台が既存メディアからSNS中心へと移行したこと、だろうか。

 日本では、まず夏の都知事選で、政党のバックがない新人候補が、野党共闘系候補を上回る得票を得た。秋の総選挙では、自民党の裏金政治が指弾され、「手取り増」を掲げた国民民主が4倍増の議席を得た。付け加えれば、兵庫の出直し知事選では、県議会の全会一致で知事の立場を追われた候補が再選を果たす、という前代未聞の結果をもたらした。

 海外では、とりわけ欧州議会選挙やEU各国の議会選挙で、極右団体を出自とする自国優先主義の右派ポピュリスト政党の伸張が目立った。

 そして米国だ。激戦が伝えられていた選挙結果は、またしても〝隠れトランプ派〟の存在も加え、大統領選と上・下院選の3つの選挙で、トランプ率いる共和党の完全勝利だった。

◆伸張する右派ポピュリズム政治

 これら全部取り上げることは出来ないが、ここではEU議会選挙や西欧各国の議会選挙、米大統領選、国内での都知事選、衆院選挙、兵庫知事選で見られた特徴などを考えてみたい。

 EU議会選挙では、極右団体を出自とした右派ポピュリズム政党の伸長が目立った。EU議会選挙では、保守派、中道派やリベラル派と渡り合える議席を獲得し、国内で第一党になった右派政党もある。かつては異端児として排撃されてきたが、ネオ・ナチなど極右色を排して〝デモクラシー政党化〟を装った結果、受け入れられてきたとされる。

 EU域内ではこれまでも右派政党の伸長も経験済みだ。22年9月にあったイタリア総選挙。極右政党を源流とする「イタリアの同胞」が第一党になり、メローニ党首を首班とする政権が生まれた。

 23年11月、オランダの右派政党、ウィルデルス(=ウィルダース)党首の自由党(PVV)が第一党になり、昨年7月には、オランダ自由党が主導する連立政権が誕生した。

 EU議会選挙で、今年3月のドイツの州選挙区で、右派政党=ドイツのための選択肢(AfD)が初めて州レベルで第一党になり、国内全体でも第二の勢力となった。

 今年6月のフランスでのEU議会選挙で、右派政党の国民連合(RN)が30議席を獲得し、マクロン連合にダブルスコアの差をつけ大勝。マクロン大統領は、事態の打開を掛けて、フランス国民議会の解散に打って出ざるを得なかった。が、決選投票では第三党に後退したが、第一回投票では、国民連合が第一党の議席を確保した。

 EU議会などで、なぜ右派ポピュリズム政党が伸張したのか。

 右派政党は、EU議会選挙では、自国の経済政策などの決定権が、EU官僚などに奪われているとする〝経済ナショナリズム〟を押し出している。また各国の議会選挙では、以前はネオ・ナチ=反ユダヤ主義で共和制反対の立場だった。が後に、〝脱・ネオナチ=脱・悪魔化〟を進め、〝普通の政党化〟を進めた。反ユダヤ主義から、政教一致の反デモクラシー的存在であるイスラム移民への排斥運動への転換、あるいは「自国民の福祉が移民に乗っ取られる」という〝福祉排外主義〟への転換などで、生活に苦しむ自国民の支持を集めるようになった。

 米国大統領選でのトランプのMAGA運動(=米国を再び偉大に)も、同じような構図、物語を拡げてきた。ディープ・ステート(=闇の政府)はともかくとして、要するに、一部の既存エリート層だけが政治や富を独占し、国内製造業の空洞化で寂れたラストベルト地帯に取り残された労働者(多くは白人)などは、政治から無視され、忘れ去られている。そうした人々にもう一度光をあてることで、偉大な米国を取り戻す、というものだ。

 結果は見ての通り、米議会への襲撃事件や機密文書の持ち出し事件、それに不倫疑惑の口止め料事件で有罪判決を受けたトランプ候補。そんなものはどうでもいい、ただ〝トランプの物語〟に同調することで、過去の栄光を取り戻せる、という〝忘れられた人々の物語〟を煽った末の勝利だった。

◆欧州・米国、そして日本

 日本ではどうか。

 都知事選での石丸伸二候補。現職で当選した小池百合子候補についで野党共闘に乗った蓮舫候補を上回る2位となった選挙結果。その特徴は、SNSを活用した選挙戦術が功を奏したとされる。

 陣営でも意図な選挙戦術だったとしているが、スマホを手にした聴衆がSNSに動画を投稿し、それを見た有権者が石丸候補の遊説地に駆けつけ、またSNSに発信する、その相乗効果が日を追って拡大していった結果だとされる。

 実際、新聞やテレビなどマスコミ4媒体を差し置いて、インターネット広告費が2021年から首位を占めるようになっている。そうした情報化社会の中、これまで、若者は「新聞を読まない」、選挙には「行かない」とされてきた。が、今回は、スマホを手にした若者が〝石丸フィーバー〟を拡げた主体として登場したわけだ。

 石丸候補の躍進には、確かにメディアとしてのSNSや動画の効果に注目が集まっているが、それ以上に、その政治スタイル、情報発信スタイルが注目されている。要するに、既存の定番パターンを意図的に破壊している、といものだ。

 石丸氏は、かつての市長時代も含めて、政治家とメディアの〝予定調和的なやりとり〟を「その質問自体がナンセンス」などと否定する。時には「恥を知れ恥を!」など攻撃的な言辞を辞さず、そうしたなれあい関係を意図して破壊することで注目を集めてきた。実際、石丸氏は、既存の〝政治屋〟と自身を想定する本物の改革者としての〝政治家〟との違いに言及する。

 確かに、既存の予定調和的メディアや自己保身に勤しむ政治家のケースに飽き足りない人々や不信感を持つ人々にとって、そうしたやりとり自体が刺激的で、新しいリーダー像を想起させる。新しい〝改革派リーダー〟を発見した聴衆は、それを広めたいとSNSで発信し、聴衆が増えた次の演説会場などの場面で、自身の行動が成果に直結したと実感できる。それらが相乗効果として波及した結果、一種の〝ムーブメント〟(=推し活?)となって現れた、と見る識者もいる。

 こうした石丸氏の政治スタイル、振る舞い方は、24年7月の連立政権で与党となったオランダ自由党のウィルデルス党首に重なるものがうかがえる。ウィルデルス党首も、閣僚や議員に対して「臆病者」「田舎者」といった非難を浴びせ、既存の政治家を「自己利益追及に専念する存在(=政治屋)」とみなすところなど(水島治郎『ポピュリズムとは何か』)、石丸氏の「恥を知れ恥を!」等の発言や〝政治屋〟批判に通ずるところもある。

◆背景は格差社会、閉塞社会

 なぜ、世界でグローバリズムへの反感や移民排斥などを掲げる右派ポピュリズム政党が伸長するのか。要因は様々考えられるが、共通するのは、各国庶民の生活苦と一部のエリート層が富と権力を独占する格差社会への不満や怒りだろう。

 「忘れられたラストベルト」に象徴されるような、主要産業が衰退した地域での職場の消失、低賃金職場の拡大、プライドの消失……。これは一部の特権層への所得の偏りを背景とした、既得権者に対する反乱という意味で、2011年に若者が中心としてニューヨークのウォール街で座り込みをした〝オキュパイ運動〟に相通ずるものだった。

 〝オキュパイ運動〟は、1対99の闘い、すなわち上位1%の富裕層が所有する資産が増加し続けている状況下で、その他99%の立場からの、若者を中心とした格差社会を糾弾する社会運動だった。向かうべき道は違えども、強いられた苦境からの脱出という、背景では共通するものだ。

 ただし、両者は現状への不満は同じでも、事実認識と打開策で分岐する。

 「トランプの物語=MAGA」でいえば、それは第一次大戦後から90年代まで続いた〝唯一の超大国〟の時代を前提としたものだった。その米国一極構造が崩れる局面で起こったのが、「1対99」に象徴される格差社会の進行だった。世界の多極化傾向の現実を見れば、「トランプの物語=MAGA」も、「ない物ねだり」だろう。

 対する「1対99」は、多極化を前提としても、システム転換で解決可能なものだ。ただし、そのためには、政官業利権に切り込む巨大な変革エネルギーが必要だ。

◆大事なのは闘いの足場づくり

 〝トランプの物語〟が席巻する米国。が、他面では別の顔も見せる。

 一昨年は、全米自動車労組(UAW)による1ヶ月以上のストライキで賃上げ闘争を闘い、物価高を受けて4年間で25%の賃上げを獲得した。

 昨年秋には、航空機大手のボーイングで、7週間の長期ストライキによって4年間で38%の大幅な賃上げを獲得した。そのボーイングは、主力機の不具合で何機も墜落事故を起こし、経営が危機の場面もあった。が、そのときの経営者も含め、歴代の経営者は何十億円もの経営者報酬やそれ以上の退職報酬を手にしていた、という強欲経営者の会社だ。

 昨年末には、米アマゾンの配送センターで働く全米運輸労組の労働者が、12月19日から賃上げを求めてストライキを決行した。

 米国でも、労組組織率は年々低下傾向にあるが、それでも闘うべき場面では、敢然と長期ストを決行し、賃上げを獲得してきた。自分たち自身が闘わなければ、自分たちの境遇も改善しないことを知っているからだ。必要であれば、長期ストも辞せず、という米国労組から学ぶことも多い。

 労働者が実際に対峙しているのは、株主や経営者優先の経済構造だったり、労使一体の職場支配だったりする。ただそうした強大な相手との闘いは、気が遠くなるほど遠大な課題で、はじめから諦めてしまいがちだ。が、現実は、そうした巨大な眼前の相手・対象との日常的な攻防を推し進めていくこと抜きに、数年に一回の選挙だけで具体的な成果を獲得することは困難だ。

 一例だけ挙げる。

 昨今、教職員の長時間労働や精神疾患などによる休職者増などが問題視され、採用試験受験者数も年々減少しているという。それだけ過酷な職場環境を象徴する実例にされている。

 その学校現場では、教員の労組参加率が継続的に減少している。23年度では対前年比1・5ポイント減の27・7%、48年連続で低下したという。なお、全産業(24年7月)では、推定組織率は前年比0.2ポイント減の16.1%でしかない(24年12月、厚労省発表)。

 これでは日常的には無防備で労働者同士の相談すら成り立たないのが実情だ。現場では、不満や改善の声も上げられない、というのが多くの職場の実情だろう。

 そんな日常の土台の上にあって、選挙戦という一時のイベントであっても、盛り上がりそれ自体は歓迎すべきものだが、それだけでは観客民主主義の域を出ない。手っ取り早く新しい改革派リーダーやエリート指導者を待望するだけでは、空中戦に終わってしまう。

 生身の、身の回りの仲間などと日常的に相談しながら自分たち自身が主役のリアルな共同行動や闘いを拡げて、局面打開を目ざしていきたい。(廣)案内へ戻る


  新自由主義=グローバリズムか、それとも、貿易戦争=ブロック化なのか?

 諸国間の貿易摩擦が関税競争や為替操作となり、ついには経済ブロック化となった歴史が過去にあります。為政者たちは、目先の人気のために「自国産業を守れ」「安い製品を阻止する」と主張しました。過去の事例として、戦争に至った例は、1930年代のスムート=ホーリー関税法による影響と、それに続く国際関係の緊張が挙げられます。

 トランプ次期政権下で打ち出された関税爆上げ計画が生み出す経済戦争は、この歴史的な教訓を思い出させます。協同社会(アソシエーション)を目指す私たちの立場から、グローバリズムとブロッキズムについて考えてみましょう。

■関税障壁と経済ブロック化の歴史

 スムート=ホーリー関税法の影響についてまず述べます。1930年にアメリカで施行されたこの法律は、約20,000品目の輸入品に対し高率の関税を課しました。背景には世界的大不況の到来があったのです。この法律により、アメリカの平均関税率は約40%から50%に引き上げられました。特に農産物に対する関税が大幅に引き上げられました。安い商品の流入から「農民を守る」という立て付けでした。

 しかし、その影響は、多くの国が報復関税を課し、アメリカの輸出入は大幅に減少しました。これにより、世界貿易が停滞し、大恐慌をさらに深刻化させる結果となりました。世界貿易が30%以上縮小し、各国の経済が収縮。各国は自国の経済を保護するため、植民地や友好国を中心とした軍事的・経済的ブロックを形成。さらには、第二次世界大戦へとなだれ込んだことは広く知られていることです。

■先が読めない貿易軋轢、労働者市民は独自の立場を

 トランプ次期政権は、政権発足と同時に中国に10%追加関税とメキシコとカナダは一律25%の関税をかけると発表しました。「麻薬対策」を名分にしたこの政策は怒りをもって各国に受け取られました。しかし、米国の狙いの中心は、米中経済対立であり、ひいては米中覇権争いの新たなステージと見るべきでしょう。

 簡単に言えば、中国は経済的にはグローバリストであり、安い工業商品(過剰生産商品)を輸出して富を築くことに専心しています。が、米国(さらには欧州や日本は)は、大量の安い製品の流入により、関連産業が振るわないということになります。こうした、経済摩擦は、歴史的にはどの国でも発生してきました。日本が貿易輸出国としてピークであった1980年代は、米国が敵対視したのは日本です。

 サプライチェーンを地球規模で持つ米国の多国籍資本家たちは(失業・倒産を恐れる労働者や中小企業と異なり)関税戦争やブロック経済を望むはずもなく、トランプは取引の材料として脅しのために関税追加を打ち上げた、と見られています。しかし、トランプの政権が今後どのような「落としどころ」で満足するかは不明です。カナダもメキシコも激しく反発し「報復関税」を口にしています。しかし、ナショナリズムに与することは出来ません。

■二者択一ではありえない

 我々は、グローバリズムを支持することも敵対的関税政策も支持すべきではありません。トランプは「労働者雇用のため」や「麻薬対策」などと関税政策を正当化していますが、すでに述べてきたように、それはでたらめです。たしかに、新自由主義と同義であるグローバリズムこそ、この数十年間、労働者に低賃金と苦役とギグワークを押し付けてきた丁本人です。トランプ主義は、グローバル資本主義が引き起こしてきた格差拡大、貧困そしてリベラリズムの「行き過ぎ」に対する反動です。しかも、粗雑なウソで固められた反動です。

 世界の労働者市民の運動は、これらの二極対立に与すべきではなく、資本の支配と搾取に正面から反対すべきですし、そのような闘いに連帯する国際主義として発展させましょう。(阿部文明)


  韓国のクーデター未遂と 非常大権法の危うさ

 何と言う乱暴な「非常戒厳」でしょうか。特殊部隊が国会や中央選挙管理委員会などに派遣され、議員らの身柄を拘束し、ソウル近郊の軍施設「地下バンカー」に監禁する計画があったとされています。ゆえに、ユン大統領は内乱罪の疑いで捜査を受けており、弾劾も決議されました。

 ソウル市民たちの冷静で勇気ある行動が、国会議員による非常戒厳解除決議を実現させ、破局的内戦を阻止したと言えるでしょう。孤立を深め支持率は下落し、自暴自棄の果ての大統領の暴走であったのです。

■ユン大統領の「親日」はニセモノだ

 ユン大統領の失点と言うか悪政は多岐にわたります。韓国のユン・ソクヨル大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏や側近をめぐるスキャンダルが繰り返し報じられています。キム氏は、知人の会社の株価操作に関与した疑惑や、不法に高級ブランドバッグを受け取った疑惑が指摘されています。また、与党候補の公認に不当介入したとの疑惑も浮上しています。11月時点で支持率は過去最低の19%にまで低下しており、政権への逆風が強まっていました。

 しかし、耳目を引いたこのような問題は、氷山の一角です。

 韓国でもインフレや住宅価格の上昇が続いており、特に若年層や中低所得層が厳しい状況に置かれています。ユン政権の政策が富裕層優遇に偏っているとの批判が強まっていました。さらに許しがたいのは、彼の反労働者的な姿勢です。労働組合やストライキへの強硬姿勢が労働者層からの怒りを買っています。野党は、労働者の権利を軽視していると激しく反発し批判しています。

 日本では、ユン大統領は日韓関係改善を重視しているとして右派自民党らが評価する一方、韓国野党や国民は日本に対して「過去の歴史の修正」であり譲歩が過ぎると批判しています。慰安婦問題や佐渡金山問題に関連する徴用工問題など、日韓関係には植民地時代の歴史的な問題が横たわっています。このような歴史性をユン大統領は、ほとんど理解することはありません。特に徴用工問題の解決策として韓国側が独自の基金を設立し、日本企業の責任を追及しない姿勢が激しい反発を招いています。

 そのために、ユン大統領の政治行動は、日本の軍事右翼などの復権を促進してきたと言わざるを得ないのです。ユン氏の「親日」は偽物であり、過去の日本軍や軍国主義の蛮行を「許し」正当化し、日本人に再び歪んだ意識を抱かせる、最悪のものでした。

 同様に、日本のマスコミが無批判的に「ユン大統領は親日」などと評するのは、歴史理解を欠いたもので、日韓国民の溝を深くするだけのものです。

 さらに、ユン氏が対日関係「修復」を短兵急に推し進める背後には、ユン氏の対米従属と追随姿勢があります。野党や一部国民は、ユン政権が米国に過度に依存し、韓国の自主外交を弱めていると主張しています。氏の米韓同盟の強化が北朝鮮問題の解決に直結するはずもなく、稚拙な対決姿勢ばかりで外交などと言えるものが無いのです。

■非常大権法の危うさと危険性を暴露

 韓国憲法は第77条で、大統領は戦時などの国家非常事態に戒厳令を宣布することができると定めています。ユン大統領は軍の統制がより広範囲になる非常戒厳を宣布したのです。この法の目的は、戦争や大規模な災害など、国家の安全が極度に脅かされる非常事態において、社会秩序を回復し、国家の安全を確保すると。行政や司法の機能が著しく混乱している場合に、軍が介入して秩序を回復するために発令されます。これにより、令状なしの逮捕や集会の禁止が可能になります。つまり言論や集会の自由などが厳しく制限されます。国会が在籍議員の過半数の賛成で戒厳令の解除を要求すれば、大統領は解除しなければならないとの規定もあります。

 ところが、今回のユン大統領の「非常戒厳」は、災害でも戦争でもなく、それどころか政権運営が遅々として進まない(身内の犯罪への批判や、少数与党の無力感、支持率の超低迷といった)現状を前にして、野党議員や民衆を強権で抑え込もうとしたのです!国会から議員を引きずり出し、戒厳令解除を「実力阻止」しようとしたこと自体がすでに韓国憲法の重大な違反なのです。

■維新馬場氏らの暴論

 このような市民的自由や政治的権利を拘束する非常大権法が、なんと安易に執行されたのか。対岸の火事として、このことこそ問題にされるべきです。しかし、一部を除いて日本のマスコミはユン大統領の暴走について寛容すぎます。

 社民党の福島瑞穂党首は4日未明、韓国の状況について、X(旧ツイッター)に「自民党などが導入しようとしている緊急事態条項はまさにこういうものを招く危険性がある」と書き込んだのは当然です。

 一方で、馬場伸幸議員(日本維新の会の前代表)がXで、韓国の非常事態宣言を引き合いに「韓国で起こることは日本でも起きる可能性があるということを自覚しないといけない。憲法改正で緊急事態条項を整備すべきだ」と改憲議論を促進する発言をしています。

 語るに落ちるというものです。あまりに粗雑な理屈です。まさに大権法が人為的に権力者によって暴走させられたのですが、馬場氏はユン氏のこの非常大権行使が正当だとの立場に立つのですから許されません。

 韓国では国会が市民とともに迅速に介入し戒厳令を解除したのは正しい対応でしたが、この出来事は非常大権の危うさを示す生きた事例となりました。日本にひきつければ、危険な大権法なくしても、災害法、テロ対策としての原発の廃炉、などで対応すべきことが明確になったというべきです。

■反動勢力に悪用された「非常大権」、歴史的な事例

※韓国:全斗煥政権時の非常戒厳令(1980年)。光州蜂起の際、全斗煥大統領は戒厳令を発令して軍事力で民主化運動を弾圧しました。

※ドイツ:ヴァイマル憲法下の非常事態条項(1933年)。「民主的だ」とされたワイマール憲法ですが、ヒトラーはこの48条条項を利用して全権委任法を成立させ、独裁体制を確立しました。これは非常大権が権力者によって乱用された典型例です。

※フィリピン:マルコス政権の戒厳令(1972年)。彼の政権は、特に1972年から1981年までの戒厳令期間中に、反対派の弾圧や人権侵害が行われました。自己都合の権力亡者です。

 日本の憲法改正に関する議論で特に注目されているのは、緊急事態条項の導入です。この法は「国家の安全や秩序を維持」するために、政府が一時的に個人の自由や権利を制限する措置を取ることができるようになります。自公勢力が後退しても、維新や国民民主が跋扈しており、依然として権力志向の政治勢力がうごめいています。油断はできません。(阿部文明)案内へ戻る


  時限爆弾ビットコインにのめり込む米国

 ビットコインの総供給量はシステムの設計に基づき2100万枚に制限されており、残りの推定約150万枚が今後マイニング(採掘)される予定です。「残りわずかです」「お急ぎください」と言うことかどうかは知りませんが、1ビットコイン10万ドルに達したと報じられています。暗号資産の追い風は、トランプ次期政権でイーロンマスクらの推進するテクノロジーへの規制緩和や、国際通貨ドル支配の是正に対する一つの政策対応があると考えられています。(トランプ陣営は、ドル支配を「負担」だと捉えています)

 1ビットコインあたり10万ドルに達しましたが、そうすると推定時価総額は以下の通りです:約1.95兆ドル(約292.5兆円、1ドル=150円換算)。この時価総額は、ビットコインが現在の供給量約1,950万ビットコインに基づいて計算されています。

 つまり、現時点ですら総額では新興国などのGDPに匹敵するものとなっています。「仮想通貨」などともいわれるように、ビットコインなどの暗号通貨は何の裏付けもない、幻想にすぎないのでしょうか?暗号通貨には何も期待しないのですが、決して「仮想」ではないと私は考えます。だから問題なのです!

■バブル化していても、暗号通貨(資産)は労働の裏付けがある

 そもそも現在の「ドルや円やポンド」とは何者なのか?金銀貨幣のようなそれ自体として価値物ではありません。同時に金を裏付けとした銀行券のような信用貨幣として流通する過去はあっても、1971年以来ドルも兌換停止なので今や円・ドル・ポンドは金という価値実態と切り離されています。とりあえず円などは「国家による信用創造と強制通用力」によって成り立つ「信用通貨」と呼んでおきます(深入りしません)。つまりここで重要なのは、円が独立した価値物として流通手段や価値尺度機能を内在していないということです(だからインフレになります)。株券や国債や金融商品と言われるものも、所詮、信用制度の上に成り立った「現金請求権」にしかすぎないのです。ゆえに、会社が倒産する、国家が破産する、国際信用制度がリーマンショック時の様に解体に瀕するケースでは、紙切れであるという実態が明らかになるほかありません。

 では暗号通貨の場合はどこが違うのか?まず、ビットコインの「価値」ですが、これは経費と労力のかかるマイニング(採掘)作業があるという意味では、電力をはじめ多種労働の投下されたものであり、この際の莫大なコンピューター作業と投下労働は「ブロックチェーン」つまり「ビットコイン流通ネットワークの維持に貢献する」仕組みなのです。ならば、そのマイニングされたコインの「価値」は「有用」労働による裏付けがあるということになるでしょう(これをProof of Work労働の証明と言います)。

 それゆえにビットコインは「金」によく擬されます。しかも金のようなリスキーで困難な現送作業(金の輸送)もなく瞬時に低コストで決済が実現する。この機能において暗号通貨ほど便利で安心できるものはないとも言えなくもありません。

■管理通貨制度こそが経済の金融化を推進してきた

 注意したいことは、 ビットコインは、どんな権威権力(例えば国家)とか、金の蓄蔵でゆるぎない「銀行信用」を具備した往年のイングランド銀行のような後ろ盾もありません。それは通貨ネットワーク維持という「有用性」を運用する労働のたまものだと言っていいのでしょう、だから初めから国際的存在なのです。つまり金がそうであったように既存の国民経済・信用制度からは独立した存在なのです。「ネットワーク・セキュリティーが破られない限り」という条件付きですが。

 暗号通貨の利用拡大が続けば、中央銀行の意義は喪失し管理通貨制度(中央銀行による通貨発行権)の脅威になりうるでしょう。ゆえに、国際的通貨機構は、暗号通貨の拡大にたびたび懸念を表明しています。現在の資本主義の?栄は、1971年のアメリカ金ドル交換停止と共に開始されたことを忘れてはなりません。金を信用制度の基礎から外すことで開かれた繁栄なのです。インフレと金融資産のバブル化によってもたらせられたのです。その意味で「金の復権=金本位制」への回帰は事実上不可能なのです。

 であるとすれば、同様の理由で暗号通貨の国際通貨としての流通が拡大すれば、中央銀行の信用拡張と官製相場でバブル化した今の金融・経済に氷水をぶっかけることになり、バブル化した経済的「富」の収縮が急速に生じるでしょう。すなわち暗号資産の快進撃は、金融経済の危機の醸成でもあります。

■トランプ政権の自己矛盾

 現状では国際通貨といえばドルです。このドルと言う国際通貨を持つ米国は、世界の富を「貿易の均衡」を図ることなく世界の富を購入してきたのです(米国はマイナス22.52兆ドルという巨額の負債を抱えた対外赤字国です)。こうして流れ出たドルは過剰貨幣資本として、世界規模で低金利とインフレでバブルの形成に「貢献」します。このドルの地位は、米国の世界支配の基盤であり同時にその成果です。経済力の世界シェアの縮小にもかかわらず、依然として40%程度の国際取引は米ドルです。ドル支配は米国の経済特権をもたらし軍事力とともに世界支配力(パクス・アメリカーナ)の源泉でもあります。

 さて、誰もが知るようにトランプのメインスローガンは「米国を再び偉大に」です。ところがトランプが自ら採用する実際の政策としては「ドル支配の縮小」であり「世界の警察をやめる」ことなのです。彼の代表的な高関税政策は「ドル支配の是正」であり、対外安全保障の肩代わりをやめる(ドルの流失を減らす)ことも同様です。

 こうして、冒頭に触れたように、ドル支配の縮小の代わりに、暗号通貨にテコ入れすることがトランプの総合政策に組み込まれているのです。トランプの大言壮語にもかかわらず、この陣営の政策それ自体は「帝国」から「並の国家」への移行なのです。

 話をビットコインに戻します。どんな経緯をたどろうが、世界の中央銀行や国際通貨機構の敵意に包囲されながら、「ドル支配の後退」と抱き合わせに暗号通貨の新たなブレイクスルーの道が開かれたということが重要です。

 とはいえ、私は、技術としてのブロックチェーンを除けば暗号通貨をもてはやすつもりは全くありません。われわれが暗号通貨に何か期待を寄せるものは一切ありません。歴史的には、資本主義や貨幣経済が生み出した鬼っ子(あるいは内生的な反逆者)であるということです。このような視角で国際通貨問題を凝視すべきです。(阿部文明)


  どこへ行く?シリア フランス植民地体制の解体を超えて

半世紀以上も続いたアサド独裁体制が打倒されました。実はこの体制は、植民地時代より継続された体制の終焉でもあるのです。

 フランスは植民地であったシリア支配(国民の7割がスンニ派)を維持するため、少数派の利用という典型的な分断統治政策を採用しました。少数派(アラウィ派、ドルーズ派、キリスト教徒など)を軍や行政に優遇採用しました。少数派が植民地政府の支配を支える中間層の役割を担うことで、スンニ派多数派を牽制するという支配構造をつくりフランスが去ってからも長年、シリア民衆間の分断構造を作り出しました。この植民地支配構造により、アラウィ派(シーア派の一派)は軍や行政に進出する機会を得ました。

 父アサドは、こうして、独立後のフランス植民地主義の遺構の中で頭角を現し、バアス党とともに「アラブ民族主義」「アラブ社会主義」「世俗主義」の旗手として台頭したのです。シリアはこの時代の旧ソ連の威光を求めてソ連に接近し、国家主導資本主義と土地革命を断行しました。しかし、それは中途半端なものでした。

■ハフェズ・アル=アサドの独裁とバアス党「社会主義」

 シリアの土地革命とは、ハフェズ・アル・アサド政権下で実施された大規模な土地改革を指します。この革命は、従来の大地主や外国資本による土地所有を打破し、小規模農民に土地を再分配することで、農村社会の構造を根本から変えようとするものでした。

 地主が保有できる土地の面積を制限し、それを超える土地は政府が没収し、無土地農民や小農民に分配されました。この過程で、小規模農業が拡大しました。この政策は、父アサドの政権基盤を強化しました。他方では、限定的ですが、集団農場化や協同組合化する動きもありました。これらは、父アサドによる、スンニ派大衆に対する融和的政策、つまり「アメ」を投げ与えたと言うことです。

 他方、企業や土地を奪われたことで、当然巻き起こったスンニ派資本家や大地主の反発に、父アサドは、弾圧と妥協(一定の資本の自由と大土地所有の容認)を繰り返したと言えます。

■シリア社会経済の根本矛盾

 土地改革も、農業技術の向上やインフラ整備が十分に行われなかったため、生産性の向上や生活改善にはつながりませんでした。バアス党の「国家統制的政策」に基づく国有企業は、官僚主義などの低い生産性と高い運営コストに悩まされていました。

 しかし、最も根本的な問題とは、長期の軍事独裁体制の弊害が著しいということです。シリアは、陸軍、海軍、空軍を含む多様な軍事力を保有しており軍需産業は不釣り合いに巨大でした。特に陸軍の装備は充実しており、内戦(2011年)まで、これは世界でも上位にランクされる規模でした。さらにスンニ派の絶えざる反攻を抑え込むために、治安軍隊や警察・秘密警察などは規模が膨張し、逮捕者の増大ともに監獄規模が拡大するなど、社会的な抑圧機構、つまり完全に非生産的な人員階層が拡大し、他方、シリアに失望した若い難民流失は、特に2011年内戦と共に飛躍的に増大したのでした。これでは社会はそもそも成り立たないのです。内戦以降は、ロシアやヒズボラ(イラン)の支援でかろうじて生き延びてきた息子アサド体制の崩壊は必然つまり時間の問題であったのです。

■「政権移譲」狙うHTSは、シリア民衆への裏切りだ

 ロシアとヒズボラ=イランの勢力が失速した後、影響力ある海外勢力は米国とトルコとなっています。これらの勢力の「明確な支援」ではなくとも「容認」をへて進撃し、アサド体制を転覆させたのが、HTSです。

 しかし、彼らはアサド体制を粉砕することなく「権力移譲」を平和的に受けることで手際よく合意しました。HTS「シリア解放機構」と連携組織は傘下の「救済政府(HS)」の首相だったバシルを、2025年3月までのシリア暫定首相に任命し、アサド体制の「引継ぎを完了させる」としました。息子アサドが率いていた与党バアス党も、「国家の統一維持を目指す移行プロセス」を支持すると(12月9日)。

 すなわちHTSは、すでに述べてきた軍事的抑圧的組織をアラフィー派の独占支配を是正しつつ再編し獲得しようとしています。もちろん「アサド体制」の残骸にどれほどの遺産があるかは疑わしいのですが、少なくともHTSの企図するものは明確です。これらの暴力支配機構を利用しつつ、対外的支援につなげ、「正統シリア政府」として、「クルド自治区」、その他原理主義勢力の抑圧に打って出るつもりでしょう。

 HTS「シリア解放機構」は、 かつてアル=ヌスラ戦線として知られたアルカイダ系の組織を起源としています。近年、彼らは国際的な支持を得るために「穏健化」「世俗化」を試みています。そのために、一部の国際的にも地域住民においても、HTSがシリアの民主的・非宗派的な政権に変わる可能性を期待した人々がいます。

 しかし、2023年から2024年にかけて、イドリブ地域でHTSに反対するデモが発生し、指導者ジュラニの支配に対する住民の不満が表面化しました。デモの背景には、HTSによる抑圧的な政策、政治犯の収監、経済的困窮などが挙げられます。デモ参加者は指導者ジュラニの辞任やHTSの解体を要求し、抑圧的統治形態に対する不満を表明しました。アサドの遺産である暴力的抑圧機構は、HTSのような「権力の移譲」ではなく粉砕されなければならないのです!人民抑圧のバアス党も解散させるべきです。

■「クルド人自治区」と人民蜂起勢力こそシリアの光だ

 だからこそ民衆蜂起に根差した政権こそが望まれているのです。それは二つの勢力があります。一つは、シリア北東部の自治構想を推進しているシリア民主軍(SDF)で、クルド人主体の民兵組織ですが、クルド人以外にもアラブ人やアッシリア人などが参加している多民族的な自治区です。「ロジャヴァ」または「北東シリア自治行政」と呼ばれ「民主的連邦制」を基盤とする自治体制を掲げるオジャランの思想に基づき、ジェンダー平等やエコロジー重視を特徴とし、特に女性も主体として含めた独自の武力や統治で自治区を形成するという、歴史的にまれな存在です。

 もう一つ、「民衆蜂起が再開される可能性があるのは、2020年に(民衆蜂起したシリア南部の)スウェーダ・・その地域だ」「楽観できる根拠はほとんどない。しかし、まだ希望の余地はある」(ギルバート・アシュカー)。

 いずれにしても彼らは、シリア内のクルド人を大敵とみなしているトルコの干渉や米国の姦計そして領土拡大の好機と見て進軍してきているイスラエルなど、軍事大国とのせめぎあいのさ中に置かれています。(阿部文明)案内へ戻る


  読書室 野口久美子著『インディアンとカジノ――アメリカの光と影』ちくま新書2019年11月刊 本体価格920円

〇そもそもインディアンとは何か。またUSAと彼らとの関係は。そしてその歴史とはどのようなものだったのか。さらにまたカジノと彼らの関係は。21世紀に急成長したカジノビジネスと彼らとの現在はどのようなものとなっているのか。私たちはほとんどその実態を知らない。そこにはまさにアメリカの光と影の歴史が全て明瞭に示されている〇

「インディアン」との呼称

 「インディアン」との呼称は、勿論コロンブスに由来する。スペインからインドをめざして大西洋を出帆した彼は、約二か月後にバハマ諸島に辿り着き、上陸した島々を死ぬまで「インド」と信じていた。だから先住民をスペイン語で「インディオ」=インド人と呼んだ。コロンブスの死後、探検者がバハマ諸島から中南米に達して「新大陸」をついに発見した。だが中南米発見後に出会った様々な先住民はその多様性を認識されることなく、一括して「インディオ」「レッド」と呼ばれ、その後「インディアン」の呼称が定着した。

 この「新大陸」を航海記に初めて記入したフィレンツェの探検家アメリゴ・ベスプッチのラテン語名にちなみ「アメリカ大陸」と呼称されて現在に至る。つまり先住民が自分たちの土地を何と呼んでいたかは、現在に至るまで誰も知らないままなのである。

 その後、一九六0年代になると「インディアン」は差別語だとの論議は、「ネイティブ・アメリカン」の呼称を再浮上させた。この呼称は今でも使われてはいるものの、そもそも呼称自体は、二0世紀初頭までは「アメリカ生まれのアメリカ人」を意味していた。それゆえ過激な「反移民・反外国」運動の担い手や反黒人・反カトリック・反ユダヤ主義を掲げるヘイト集団KKKが積極的に使用してきた歴史もあり、実に悩ましいものがある。

これに反発する彼らの一部は、「ネイティブ・ネイションズ」又は「ネイティブ・ピープーズ」と自称し、同様にカナダでは「ファースト・ネイションズ」と呼ばれている。

USAにおける各部族と「保留地」

 一五三二年、スペインのカルロス一世は、「インディオの虐殺は正当化できるか」の答えを当代一流の神学者フランシスコ・デ・ビトリアに求めた。三九年一月にビトリアは、①インディオもヨーロッパ人と同様に人道上の自然権を持つ。ゆえに正当な権利なくして彼らの財産を奪うことはできない②インディオがローマ教皇の支配を拒否したとしても戦争や財産没収を正当化できない③インディオの権利が害されない場合、スペインとの交易・通商を断ることはできないとした。又同年六月には③に関わって国王の特許状を持つ者に対してインディオが通商・布教・キリスト教へ改宗したインディオに対する再改宗の禁止等に違反した場合は戦争法の規定によって、武力行使ができると明言したのである。

 この点、インディオ虐殺を生涯告発し続けたラス=カサスとの違いは明白である。そしてビトリアとの差異を明確に記載していないことは本書の明らかな欠点といえるだろう。

 現在、USAにおける各部族は、一方では「連邦承認部族」の五七三、他方では「未連邦承認部族」は二三七もあり、「連邦承認部族」は自らの土地をUSAに譲渡する代わりにアメリカの二八州に点在する三二六の「保留地」に、しかも全国土のたった二・四%の土地に全米人口の0・九%にしか過ぎない約二九三万人が居住している。勿論保留地を出て生活する者もおり、彼らは「都市インディアン」と呼ばれているのである。

 「保留地」では各部族はUSA・州の管轄から除外され、ここを基盤に「自治国家」に認知されている。各部族の「保留地」はそれぞれ独自の部族憲法と部族議会を持つ。しかしながらかってはUSAの全土地を占有し、人口も五百とも一千万人とも言われた彼らの現在は、あまりにも過酷で悲惨な状況なのである。だが初めて彼らの人口がUSAの国勢調査が記録された時は何とたったの二四万人であった。事実はあまりにも雄弁である。

 コロンブスにとって先住民は人間ではなく自然の一部とみなされた。彼にはキリスト教世界と非キリスト教世界とは明確に分離されていたからである。武器を持たないインディオは虐殺の対象か、又は布教の対象でしかなかった。だからまず虐殺が先行し、その後に奴隷の必要からくる布教が続いた。この間にもコロンブスらがインディオに持ち込んだ各種の感染症で多数の死亡者がいる。だが当時でも虐殺行為等へは鋭い抗議の声が上がった。

アメリカの独立と各部族との関係

 一六0七年、新大陸で初のイギリス植民地が誕生、その一三年後には清教徒がプリマスへ上陸し、一七七五年には一三の植民地が作られた。当初各部族との土地を巡る交渉は共存関係だったが、入植者が増加すると軋轢は常態化し、時には武装闘争となった。かくしてしばらくは各部族との闘いによる「清掃と植民」の時代となる。植民地はイギリス・フランス・オランダ・スペイン等が入り交じり、英仏戦争の代理戦争まで勃発した。インディオの各部族もこの二つの陣営に分かれて闘うまでの関係になっていったのである。

 こうして英仏は自分の味方とするために先述したビトリアの見解を利用することにして各部族を独立した主権国家とみなし、同盟を結ぶようになった。大きく捉えれば、アメリカ独立戦争は、イギリス人入植者の土地略奪に辟易した各部族のフランス支持への転換と関連がある。一七五四年六月、イギリス植民地側が各部族を自分の側に引き戻すためにニューヨークのオールバニーで会議が開かれたが、イロコイ六部族連合は意見を変えることはなく、そのため植民地連合の設立が検討された。同時期に「フレンチ・アンド・インディアン戦争」が勃発した。フランスに味方した各部族は多かったが、結局イギリスが勝利してパリ条約でフランス植民地は駆逐され、各部族の土地もイギリスのものとなった。

 その後のアメリカの独立戦争もイギリスと一三植民地の闘いだけではない。実態はイギリスに味方した各部族と独立派に味方した各部族との闘いでもあった。つまり主戦場となった地域に居住する各部族の動向が勝敗を制した。イロコイ六部族連合はイギリス派と独立派とに分裂した。しかしアメリカ建国には各部族の姿は一切見えてこないのである。

 アメリカは独立した一三州と新たに誕生した連邦政府が主権を分担する連邦制をとる。だが大きなジレンマがあった。それは国土の中に何れの州にも属さない各部族の「領土」が存在することである。建国者たちは自らの「良心」にかけ各部族との共存を図ることになる。こうして約一世紀をかけて連邦政府は各部族と二三七の条約を締結したのである。

アメリカの「良心」の揺らぎ

 だがこれらの条約の締結自体が連邦から強いられたものであった。まずは英語での締結であったので、各部族での理解が充分であったかについては疑問がある。そして部族社会には絶対的権限を持つ統治者やリーダーはいなかった。又そもそも土地所有の概念を持たない各部族には、連邦との条約締結の核心の理解が理解しがたいものだったのである。

 事実、一九世紀から二0世紀にかけての連邦インディアン政策は、連邦と各部族との「切っても切れない関係」を一方的に変更するようになっていく。この間の移民の急増による入植地の必要から、各部族の強制移住・保留地政策変更・戦争による各部族の土地の略奪や自治の侵害が、アメリカの国家的な膨張によって行われていくことになったのである。

 一八0三年、アメリカは戦費不足に苦悩していたフランスからルイジアナを購入した。勿論各部族の居住地がそこには広がっていた。第三代大統領のジェファソンは白人と各部族との平和共存はあり得ないとして、ミシシッピ川以西の、より西部への各部族の強制移住を考えていた。実際にその強制移住を実施したのは、第七代大統領のジャクソンである。

 一八三0年五月、彼はミシシッピ川以西への白人の移民はないものとして、インディアン強制移住法を成立させた。本来は連邦により保証されていた各部族の自治を州権で否定する強権の発動であった。それゆえに一致団結して抵抗すべきだったが、各部族は部族自治に干渉する白人から離れて移住先での自治を守ればよいとする移住派と部族自治への干渉に対する反対派とに分裂し、激しく対立していたのである。まさに悲劇ではないか。

 結局、ジャクソンは移住反対派の各部族を武力で制圧して事を成した。この時、移住を強制された約一万六千人のチェロキー族は、移動に関わって四千人が死亡した。同時期にアメリカを訪問していた仏のトクビルは、このアメリカ人の非道を鋭く告発している。

 その後も白人の移民は増加し「西進運動」となり、ミシシッピ川以西にも進出しインディアンの虐殺や土地の収奪は正当化されていった。勿論、領土が拡大したと考えるのはアメリカ側の論理であり、各部族側の捉え方はまさに部族自治の侵害でしかなかった。

 インディアンと白人の新たな関係は、ゴールドラッシュのカリフォルニアで始まった。もはや西へと拡大すべき西部はなくなってしまったからである。こうして保留地という名のインディアン強制隔離による連邦政府による徹底的な監視政策が始まったのである。

 こうして保留地へと隔離されることを拒む各部族と連邦軍や州軍との大規模な「インディアン戦争」が勃発した。これがかって大衆を熱狂させたアメリカの「西部劇」の真実である。この結果として先に紹介したようにインディアン人口は二四万にまで激減してしまい、これ以降アメリカ人の記憶からは消えていく人種となってしまったのである。

 このような中でインディアン権利協会が設立され、各部族をアメリカ人化する同化政策が進められてゆく。この同化政策とは、保留地に居住する家長に対して一定の土地を割り当てることでインディアンの分類からから切り離し「アメリカ人」とする政策と各部族から彼らの子供を切り離し、寄宿生活をさせ「アメリカ人」とする同化教育である。

 このように当初のようなアメリカの「良心」は、まさに揺らいできたのである。

インディアン・カジノができた理由

 インディアン・カジノができた最大の理由は貧困であった。当初の保留地はそれなりに立派な土地だったが、白人の入植者が増えるに従ってその後は劣化し続けた。そして強制移住が実施される頃には、まさに劣悪で不毛の土地と形容するしかない所へと各部族は追い込められていったのである。各部族の貧困率はアメリカ全体の貧困率の約三倍である。

 こうして貧困からの脱出が各部族の至上命題となっていった。連邦からの保留地への補助金の削減に対して反対するレッドパワーが台頭してきた。黒人の公民権運動の高揚と相俟って先住民のレッドパワーが台頭するにつれアメリカ人の意識は変化していった。

 この運動の中で各部族は、徐々に保留地の連邦政府と州政府との特別の位置づけが経済的利益を生み出すことに気づいてゆく。ワシントン州にあるコルビル保留地には一一の部族があったが、彼らが口火を切った。彼らは保留地には州税の適用がないことから免税煙草を売り始めた。当然格安煙草は州外からの顧客をも獲得して大儲けする。州税務局は取り締まり等を、煙草卸業者は出荷を拒否するの事態となった。そして裁判となりワシントン州最高裁判所ではコルビル保留地での販売者は敗訴となった。コルビル保留地側は戦略を変え、問題を部族自治に対する州の権利侵害に切り替えることで連邦地裁で勝訴した。

 この勝利は各部族を刺激し保留地ビジネスのモデルとなる。こうして次は免税のビンゴ場等の経営に発展する。各部族はカジノ産業へ次々と参入していった。この動きは州の管轄下にあるラスベガス等の商業的カジノ産業を脅かすまでに拡大していったのである。

 ここで発生したカジノ裁判も何回か敗訴したものの、最終的に一九八七年連邦最高裁判所で勝訴した。判決はカバゾン判決と呼ばれた。こうしてインディアン・カジノの時代が切り開かれた。そして一九八八年には「インディアン・ゲーミング法」を施行し、各部族カジノ産業の目的が「部族の経済発展、自活、強力な部族議会の発展」を第一と定めた。

 この法律の目玉は、各部族カジノ産業の収益金の用途を五つに限定したことである。用途は①部族会議の運営やプログラムの資金②部族の成員のための一般的福祉活動③部族経済発展の促進④慈善団体への寄付⑤地方自治体への資金援助のみ、としたのである。

 法律が整備されていく中で、法制定当時は部族カジノは約百、総収益は二億ドルが、二0一八年には四0五、三三七億ドルになっていく。まさにカバゾン判決によるものである。

 部族カジノが部族の生活向上等に結びついていることに対して反対意見はあるものの、現実的には無碍に無視できない事情がある。確かにカジノの弊害は無視できないが、各部族社会はそれに代わるものをすぐには考え出せないことも事実であるからである。

 この資金により、各部族の歴史研究のための機関や博物館が次々と増設され、保留地を出て都会暮らしをしている「都市インディアン」が結集する拠点にもなっている。

 アメリカのインディアン史に関心がある読者には、ぜひ一読を薦めたい。 (直木)案内へ戻る


  何でも紹介 物価高【インフレ】 物価高騰を上回る賃上げを!だけでいいのか

〇政・労・資それぞれの立場からの「物価高騰を上回る賃上げ」主張を同列視はできない。

 労働者が賃上げ理由に、物価が高騰し実質賃金が下がって生活が苦しくなったのだから「賃上げを」、こうした要求は至極当然だ。

 利潤を求める財界・経営者は(生産性の向上や賃金制度の見直し等で)生産商品のうちに占める賃金分を抑えて利益を上げようとしているが、生産した商品が売れなければ利益を表現できないから「経済の成長・発展の為」には賃上げも必要といい、賃金が上昇すると、その分生産コストに転嫁し、それがサービスやモノの価格に反映され、物価をさらに上昇させている。

 今国会での石破首相の所信表明演説では「第一に、日本経済・地方経済の成長です。・・家計を温めるためにも物価上昇を上回る賃金上昇を実現していく必要があります。まず、最低賃金の引き上げに取り組むほか、中小企業をはじめとした事業者の皆様方が確かに儲(もう)かり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけるよう、円滑かつ迅速な価格転嫁を進めるとともに、省力化・デジタル化投資の促進や、経営基盤の強化・成長のための支援を充実します。」と述べ「事業者の儲け」が前提で、「家計を温めるためにも物価上昇を上回る賃金上昇を実現していく」と言っている。そして、支援援助のための給付金等のばらまき政策はするが、“物価を抑える”とは言っていないのだ。

 賃上げ気運を高めるこうした動きは歓迎すべきだが、賃上げ理由となっている“物価高”をそれぞれの立場で解釈し、コントロールしないのは問題ではないのか!。

〇成果を上げられなかったアベノミクスは2%の物価目標を目指していた。

 政府財界は「物価高」を容認し、2012年始まった第2次安倍内閣において行われたアベノミクスーー”3本の矢”「1)大胆な金融政策2)機動的な財政政策3)民間投資を喚起する成長戦略」を柱とする経済政策で、適切な物価高として2%の物価高を目指していたが、国債に頼った金融・財政政策によって借金財政は膨らみ、為替相場は円安に、円安の進行により輸入品の価格が上昇、国内の物価を押し上げる要因を作り出すなど、それ以上の物価高が現在起こっているのであり、物価高という付けを今国民は追わされている。

〇生活を圧迫する物価高

 消費者物価指数 (基準として2020年を100とする)「全国 2024年9月分」は、総合指数:108.9(前年同月比は2.5%の上昇)生鮮食品を除く総合指数:108.2(前年同月比は2.4%の上昇)生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数:は107.5(前年同月比は2.1%の上昇)とくに、食料(119.0)や光熱・水道(110.5)が主な要因となり、総合指数を押し上げている。

 総務省の「家計調査報告(2024年8月分)」によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり297487円で、前年同月比は実質1.9%の減少であり、2か月ぶりの実質減少となり、現在の物価高騰の影響は、とくに基本的な生活必需品において顕著で、穀類でもとくに米の価格上昇が家計を直撃している。生活必需品の値上がりにより、多くの世帯が消費を抑制せざるを得ない状況に陥っており、自動車購入や旅行などの大型支出や娯楽費が減少している状況だ。

〇物価高の後追い賃上げ

 2024春闘では記録的な賃上げ回答が出され、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(令和6年8月分結果速報)によると、2024年8月の現金給与総額(名目)は前年同月比3.0%増加したが実質賃金は3か月ぶりにマイナスとなり、賃上げが物価上昇に追いつかない状況で、2025春闘では24春闘並の高い要求が望まれている。名目的に賃金上昇しても物価高で賃上げ分が解消され、生活苦が一層増している現状を後回しにはできないが「物価高騰を上回る賃上げ」では後追いにすぎず本当の意味での生活改善にはならない。

〇物価高(インフレ)とは

 物価(商品の値段)とはもの(商品)の価格であり、貨幣で表されている。物価高騰とはその商品価格が上がることで、(例えれば)今まで千円でリンゴ10個買えていたものが価格高騰の影響で千百円支払うことになったら、千円ではリンゴ10個は買えなくなり、商品と交換する貨幣価値が下落したことになる。(商品と貨幣の関係で言えば貨幣量が増えれば商品価格が上がることにもなる。)

 商品価値は商品の生産にかかる総費用(生産費=生産の為の資本・材料・労働力など)とその使用価値によってきまるが、価格変動は(その商品の)需要が供給を上回れば価格は上がりその逆なら価格は下がる。

〇物価高は利潤追求の現代社会にある

 物価高騰にはいくつかの要因がある。それぞれの要因は、国内の経済状況だけでなく、国際的な出来事や長期的な経済トレンド(動向・傾向)とも関連している。

 物価の上昇要因には景気拡大、金融緩和、賃金上昇、需要増加、供給不足、人口増加、原材料費や光熱費の上昇、戦争や紛争などがある。(●米価の例●戦争・紛争の例を参照)

 これらの主要な要因は現代社会にあり、人間社会にこそその原因があるのだから、決して乗り越えられないものではない。人間がその英知と科学・技術の応用によってこれらをコントロールできる社会を目指して活動しよう!(光)

●米価の例
 
 朝日新聞の多事奏論で原真人氏は米の価格の高騰について(抜粋)

 「農水省によるとコメ不足の要因は、(1)高温・渇水の影響で精米時の歩留まりが低下(2)値上がりしたパンや麺類より相対的に安いコメ需要が増加(3)インバウンドによる需要増だ。南海トラフ地震臨時情報で買いだめがあったことも響いた。」とし、その原因については「世界中の国々が国内の食糧生産の増強に必死になっているのをよそに、日本は累計10兆円規模の税金をつぎ込んで主食用米の生産力をわざわざ落としてきた。」

 「食の多様化に伴って減るコメ需要に合わせ、供給量を絞って米価を維持する減反政策である。日本はそんな倒錯した農業政策を半世紀にわたって続けてきた。その結果、コメの生産量は減る一方で、食料自給率はいまや4割を切る。」

 「6年前、第2次安倍政権が減反廃止を宣言した。だが実態は変わらなかった。コメの生産数量目標の指示をやめたものの、コメ農家が飼料米や麦の生産に切り替えれば手厚い補助金を出す新制度は、供給を減らして米価を維持する減反政策を延長したも同然だったからだ。」

 「この夏、そんなコメ政策の矛盾がついに噴き出した。コメ不足が全国を襲ったのだ。8月にはスーパーやコンビニの店頭からコメが消えた。このコメ騒動は新米が出回る9月下旬まで続いた。」

 「今もコメの値上がりは続いている。東京都区部でのコシヒカリ5キログラムの11月の平均価格は過去最高の3985円。1年前より65%も上昇した。」

 「農水省は「供給不足は解消した」と言う。だがコメ需給の危うい均衡政策が続く限り、いつでも同じことは起きうる。」と政府の米政策について述べている。

●戦争・紛争による例

 近年の原材料費の高騰に関連するのがロシアのウクライナ侵攻であり、中東でのイスラエルによるガザ地区への侵攻です。

 ロシア(中東地域)は世界有数の原油と天然ガスの産出国で、経済制裁の影響で、エネルギー供給が不安定となり、原油や天然ガスの国際価格が急騰、その結果、ガソリン、電気、暖房費など、消費者が直接負担するエネルギーコストが上昇している。エネルギーコストが増大することで、企業の生産コストも上昇し、さまざまなモノやサービスの価格に転嫁されている。

 ロシアとウクライナは、小麦、大麦、トウモロコシなどの主要な穀物輸出国です。戦争により両国の穀物生産と輸出が大幅に減少し、世界的な穀物の価格が高騰した。この影響は、パンや麺類などの穀物を原料とする食品の価格上昇につながっています。さらに、穀物は家畜の飼料としても使用されるため、肉や乳製品の価格にも影響を与えます。

 これが世界のエネルギー市場と食糧市場に甚大な影響を与えたため、世界的な物価上昇の要因となっている。
 戦争は人命や建設物を破壊するだけでなく経済的な困窮をももたらしているのです。案内へ戻る


  読者からの投稿

 今国会で一番頑張っているのは、れいわ新撰組かなと思います。所得の低い人たちへの逆進性の強い消費税の廃止や、能登半島の復帰へもっと予算をつけろなど、共感できます。

 ただ、その財源に国債発行だけでいいのか疑問です。

 れいわが主張する、「日本は先進国で唯一、30年に渡る不況。そこにコロナと物価高まで上乗せされ、能登半島では震災と豪雨の二重災害」。

 れいわは、原発、軍事ビジネス、万博への批判を行なっています。

 それはいいのですが、拡大している防衛費を減らせという主張、あまり聞こえてきません。
 
防衛省が8月30日に決定した2025年度予算の概算要求は、史上初の8兆円超に膨らんでいます。政府は2023年度からの5年間の防衛費を総額43兆円程度にする方針で大幅増を続けていますが、値上がりで計画時の単価を大幅に超過した戦闘機や艦艇が目立ちます。計画通り調達すれば、43兆円に収まらず、国民負担がさらに増える恐れがあります。敵基地攻撃能力(反撃能力)に関連する新規の大型事業も次々と計上されています。

 防衛費を大幅に削減せよ、とか消費税が上がるたびに、大企業への法人税が減っています。大企業への法人税の強化、これももっと声を大きく主張してほしいです。(K)


  今年の抱負

 今年は、しばらく弾いていなかった三線を再開します。三線は、沖縄の楽器で音色がすごくいいです。

 今年初めて、沖縄県那覇市にある不屈館に行ってきました。

 不屈館とは 沖縄の祖国復帰と平和な社会の実現を目指して命がけで闘った、瀬長亀次郎(元衆議院議員)さんが残した膨大な資料を中心に、沖縄の民衆の戦いを後世に伝えようと設立された資料館です。館長は、カメジローさんの次女内村千尋さんです。

 カメジローさんのことを歌う、ネーネーズの「おしえてよ亀次郎」、これを三線で弾き語りしてみたいです。(河野)


  色鉛筆・・・巌さんの58年のがんばりを無駄にするな

映画『拳と祈りー袴田巌の生涯』(笠井千晶監督・2024年)は、2014年の釈放の日から無罪判決の日までを暖かいまなざしで描いた作品。冒頭、釈放当日のホテルベッド上の巌さんの足が映し出される。親指の爪が長く伸び、巻き爪となっていて痛々しい。ひで子さんは「獄中では放ったらかし。じゃなきゃあんな爪になるわけがない。釈放があと2、3年遅かったら死んでたと思う」と言う。事実釈放後、胆石と心臓血管拡張の手術を受けている。獄中なら痛みも苦しみも取り合ってもらえなかったろうと。

初めは能面のようだった巌さんの表情が日に日に変化し、笑顔や会話が増え、浜松市内を歩き、走り、祈り、買い物する姿を追う。赤ん坊を抱きほころぶ笑顔、若いボクサーとの試合談義では完全な健康状態に戻ったと思わせる。2015年東京後楽園ホールに招待された試合観戦の場面では、リング上で両手を高く上げ大きな拍手に応える姿はまるでボクサー時代に戻ったように堂々としていた。

一方、2018年に東京高裁・東京高検への弁護団の要請行動に同行した際には、高い建物の入り口の制服姿の4人の警備員を目にするや顔色を変えて引き返した。同行者の制止を「離せ!」と振り切る巌さんは、再収監や死刑という底知れない恐怖に襲われたのだと思う。ぜひ映画で巌さんの様々な姿をご覧下さい。

昨年9月「主文、被告人は無罪」と耳にしたひで子さんは「感激するやら嬉しいやらで1時間涙が止まらなかった」と語った。58年間待ち望んだ無罪という言葉を、巌さんは直接耳にする事は無かった。ひで子さんによれば、いまだ半信半疑の状態だという。無実の人を死刑囚として収監し、人生そして精神をも破壊した。もし処刑されていれぱ闇に葬られたまま。この惨い冤罪被害を生んだ犯罪行為は、誰が惹き起こしたものなのか。

昨年12月、静岡県議会で県警の津田本部長は、「事件当時の捜査員らへの聞き取りなどの事実確認を行っており結果を公表する」と表明した。当時逮捕して拷問・虐待の末自白を強要、証拠隠しや捏造、法廷では嘘の証言もしている。県警が身内の犯した過ちをどこまで明らかに出来るかは疑問だ。第三者機関によるきちんとした事実解明が不可欠だ。

昨年10月8日に検察トップの畝本検事総長は控訴断念に際し異例の談話で「判決は多くの問題を含み、到底承服できない」と発表。弁護団は巌さんを犯人視するものとして談話の撤回を要求している。11月に静岡地検トップの山田検事正は謝罪のため訪れた袴田さん宅で「犯人視するものではない」と釈明しつつ撤回には触れなかった。検察警察ともに、あらゆる卑劣な手段を使って無実の人間を死刑囚に仕立て苦しめてきたこと、それが白日の下にさらされてもなお、こうした愚かな発言をするのか。一体何を守るために?今は過ちに真摯に向き合い再発防止にこそ努めるべきだ。

無罪が確定してもなお巌さんの受けた深い傷は癒えない。そして老いは確実に進んでいる。最近は笑顔も口数も少なくなり、階段は昇降機で、散歩はドライブに変わった。「47年間巌は拘置所でがんばった。そのがんばりを無駄にしたくない」とひで子さんは再審法の改正を訴え続けている。昨年12月に法務省が再審制度見直しを検討すると報じられた。証拠開示の制度化、検察の不服申し立ての制限など一刻も早い改正が望まれる。

ある冤罪被害者は「無罪になったとしても、なにひとつもと通りにはならない。なくしたものはとてつもなく大きかった」と語っている。(澄)

★集会案内
1月25日(土) 13時半~ 清水テルサ6階 研修室
報 告 小川秀世弁護士(袴田事件弁護団)
ゲスト 前川彰司さん(福井中学生殺害事件再審請求人)

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  沖縄報告「12月7日の辺野古ゲート前県民大行動」

 沖縄の辺野古では、毎月第1土曜日に名護市キャンプ・シュワブゲート前で午前11時から「辺野古県民大行動」が開かれている。今回私は参加出来なかったが、現地の友人から下記のような報告が来たので紹介する。

 『12月7日、小雨のぱらつく天候にもかかわらず、各地から700人が集まった。稲嶺進さん(元名護市長)の主催者あいさつの後、県外参加者の発言に移った。
はじめに、土砂全協(辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会)の共同代表を務める阿部悦子さんがマイクを取り、奄美大島からの土砂搬出に反対する全国署名への協力を訴えた。

 阿部さんは「土砂採掘による環境汚染、赤土流出など奄美の住民生活が深刻な危機に直面している。5年前、10年前とはまったく姿を変えた。沖縄は兄弟島だ。辺野古へ奄美の土砂を送りたくない。特定外来種が持ち込まれる危険も大きい。奄美からの土砂搬出を止めよう。全国署名を成功させよう」と呼びかけた。

 続いて、韓国から金福童(キム・ポクトン)ハルモニの足跡をたずねる平和ツアーで沖縄を訪問した『金福童希望の種』の17人がそろって前に立ち、挨拶した。一行は、読谷村の恨之碑やチビチリガマ、渡嘉敷島のペ・ポンギさんの足跡、さらに嘉手納基地・普天間基地などをめぐり、辺野古ゲート前の集会に参加したとのことだ。代表者は『世界中の軍による性暴力の解決のためには平和が最も重要だ。沖縄の戦争被害、沖縄戦への朝鮮人強制動員、さらに日本軍慰安婦被害者の歴史の現場を見てきた。韓米日軍事同盟を打ち破るために力を合わせよう。』と述べた。

 玉城デニー知事のメッセージは参加メンバーが代読。「ハイサイ、グスーヨー、チュウウガナビラ。平和で豊かな沖縄へ向けて戦略的に取り組んでいきます。辺野古新基地建設の強行に反対し、対話による解決を求めます。私は現在の状況を変えることができると信じています。未来を自分たちで考え行動していきましょう」とアピールした。

 なお、それ以外にも「県女性団体連絡協議会」や「うるま市島ぐるみ会議」や「辺野古新基地建設をめぐる抗告訴訟団」等の挨拶があり、「沖縄選出の衆参議員5人」を代表して赤嶺政賢さんが「国会の力関係が大きく変わった。野党が団結すれば自民党政治を変えることが可能だ。彼らは改憲提案を出来なくなった。辺野古も、県民の思いを全国に伝え、日本の民主主義を切り開いていこう」と訴えた。

 最後に統一連の瀬長さんが「新聞報道などで辺野古の埋立が加速しているなどといわれるが、違う。加速していない。いつ完成するとも分からない。沖縄の海も山も県民のものだ。辺野古、安和、塩川、そして宮城島の現場に、週一、月一でもいいから足を運んでほしい」と呼びかけた。なお、次の辺野古県民大行動は2月1日第1土曜日に行うことが発表された。』

 皆さんもご存じのように、政府・防衛省は来年(2025年度)予算に過去最大の8兆5千5千億円余を概算要求し、全国の戦争準備を加速している。具体的には、「敵のミサイル基地を攻撃する反撃能力に9700億円」「ドローンを含む無人機に1000億円」「敵国に届く長射程ミサイルを大量に生産し備蓄する弾薬庫整備費に358億円」「反撃能力を運用する衛星整備費に3232億円」など敵基地攻撃を中心とする予算が目白押しだ。

 台湾有事を想定する軍備強化に全国各地から反対の声が上がっている。この軍事化は特に西日本で急激に進んでいる。「ノーモア沖縄戦の会」は沖縄市で「沖縄・九州・西日本から全国に広がる戦争準備集会」を開催し、各地で進む戦争準備の情報を共有し、「統一行動」を話し合う「沖縄・九州・西日本ネットワーク」の発足をきめて、活発に活動している。

 各地の反対運動に共通する問題点は「ミサイル部隊、弾薬庫、軍事施設は有事の攻撃目標になる」という危機感。「どのようなミサイルが配備されるのか」という疑問。「防衛省は説明会も開かず、知りたい情報を開示していない」という不満だと言う。
そこで、「各地がバラバラでは戦争準備を止められない」という危機感でつながり、「西日本、全国が連帯して戦争準備に反対し、情報開示を求める」ことなど日米政府への「統一行動」を目指していると言う。

 「西日本ネットワーク」は「知り、つながり、止める」をスローガンにしている。全国で同時進行する「軍事化情報」の発信と共有、「戦争を止める」統一運動への参加を呼びかけている。私たちもこのような統一運動に参加し、「戦争を止める」統一運動を実行していくことが求められている。(英)


  斉藤兵庫県知事、片山元副知事、あいかわらず責任逃れ!

 西播磨県民局長による内部告発問題、いわゆる「文書問題」は混迷のなか、年を越すことになった。これまでのところ、斎藤元彦知事と折田楓さんに対する県警と神戸地検への刑事告発は受理された。知事選候補だった稲村和美さんの後援会が提出した告訴状についても、県警が受理した。

 奥谷謙一百条委委員長による立花孝志に対する刑事告訴では12月22日、兵庫県警が立花から任意で事情聴取した。なお、立花に対しては私の知人が県警に刑事告発した。百条委委員の丸尾牧県議は、動画投稿サイト「ユーチューブ」に対し、15件の投稿内容が明白な虚偽や名誉毀損に当たるとして削除要請した。

 こうした経過から明らかなことは、「文書問題」がゆがめられ、内部告発者による陰謀(維新の増山誠県議はクーデターだと言いふらしている)とされ、斎藤知事はその被害者だと演出された。その結果、知事選そのものの正当性まで損なった。県民から県選管に対して、選挙の無効を求める事態にまでなっている。

 そして、「12・22兵庫県知事選挙に異議あり!」とする県民による真相究明集会が開催され、3会場に分散してなお参加者があふれる状態となり、そこで集められた斉藤・折田刑事告発への賛同署名が千を超えるまでになっている。立花によるデマ扇動による百条委攻撃が半ば野次馬的に高揚しているが、これを苦々しく思い、真相を訴えようという県民が少なくないことを示した。

 さらに年の瀬の25日、兵庫県議会最後の「文書問題」百条委が開催された。30席に百人越えの傍聴希望だったが、私は無事に傍聴券を得た。傍聴人は写真を撮ってはいけない、記者は録画もかまわない、何だかなあ・・という感じだった。午前は参考人として公益通報制度に詳しい結城大輔弁護士が登場し、公益通報者保護がどれほど重要かを指摘した。その視点から、告発文書の〝真実相当性〟にかかわらず通報者の詮索をしてはならない、との判断を示した。

 同日の「神戸新聞」夕刊は次のように報じている。「斎藤知事は告発文書について『うわさ話を集めて作成されたもので、真実相当性がなかった』として公益通報にあたらないと主張しているが、結城弁護士は『真実相当性は認められなくても公益通報に該当する』との見解を示した」。すでに百条委に登場した二人の弁護士も公益通報者保護法違反と指摘しており、もう決着はついたと言うべきだろう。

 にもかかわらず、午後に登場した片山安孝前副知事と斎藤知事はどこまでもこれまでと同じこと、職員などの名前をあげている、誹謗中傷である、公益通報にあたらない、と主張した。告発されている、権力の上位にある者が判断してはならない、そう指摘されているのに、同じことを繰り返す、繰り返すしかないのだ。

 斉藤知事は失職前もその後も、法に違反するようなことはしていないと言い続けた。そうしないと立候補する名分は立たないし、最初の判断(犯人探し、パソコンの押収)が間違っていたことを認めたらすべておしまい、現在の知事の席も失うことを自覚しているからだろう。

 百条委では西播磨県民局長の個人情報の漏洩について、県のトップはこれを重大問題だと受け止め、漏洩したとされる人物のパソコンを押収するとか、刑事告発するとかすべきなのになぜ放置しているのかと指摘されている。ここで出てくるのが弁護士に、第三者委員会でとかいう逃げ口上である。内部告発に対しては時間をおかずに弾圧し、情報漏洩は配下だし、都合がよかったから追及しない、これが斎藤の正体だ。 (折口晴夫)案内へ戻る


  コラムの窓・・・だれも何も言わなかったら・・・!

 斎藤元彦兵庫県知事は昨年3月27日、西播磨県民局長を総務部付に異動させ、4月1日以降は役職定年で班長級に降格させる人事を行いました。その理由として、「文書には事実無根の内容が多々含まれ、看過できない。業務時間中にうそ八百を流す行為は絶対に許されず、組織を立て直す意味でも綱紀粛正が必要だと判断した」と述べました。

 この対応を公益通報者保護法に違反するものとして厳しく指摘したのが、奥山俊宏上智大学教授でした。奥山教授は9月5日、参考人として兵庫県議会100条委員会に招かれ、知事が先頭に立って公益通報制度違反の通報者探しを行い、処分を行ったことは制度を知らない前時代的対応だと断じています。

 奥山教授は朝日新聞記者として多くの内部告発を取材してきており、「内部告発の力・公益通報者保護法は何を守るのか」ほか多数の著書があります。昨年末の12月13日には、日本弁護士連合会主催のシンポジウムで「いま公益通報制度に問われていることー近時の事例を基にしてー」という基調講演を行なっています。

 人格攻撃さえ横行し、制度の無理解・・・、内部告発が困難ならみな被害者と銘打たれたその内容がネットで公開されています。そのなかで、奥山教授が最も強調したのが「だれも何も言わなかったら・・・」という言葉です。そして、「想像してみてください」と多くの事例を紹介しています。

 幼いわが子を預けた保育園でひそかに保育士の一人によって子どもたちへの虐待が繰り返し行わていたとしたら・・・。

 老人福祉施設で入所者への虐待が行われ、精神病院で入院患者への虐待が行われているのに、それらで働く人たちがそれをよくないことだと悩みながらも、それを見て見ぬふりしているのだとしたら・・・。

 市役所や県庁で、自衛隊で、職場ハラスメントが横行しているのに、だれもそれを止められず、声をお上げることができないのだとしたら・・・。

 ある県の知事が、職員に対する理不尽な叱責や過度の要求で、多くの職員のやる気を失わせ、県庁の仕事の効率を下げているのに、誰もそれをとがめようとしなかったのだとしたら・・・。

 ある県のある部長が、その県の知事が視察のために訪問し、PRに一役買ったある事業者に対し、その事業者の商品を知事のためにタダで送ってほしいとお願いし、実際に送らせ、そのことが県庁内で噂になっているのに、だれもそれをとがめようとしなかったのだとしたら・・・。

 ある県の知事から内示されてその県の信用保証協会理事長の地位を得た県職員OBが、副知事の指示で、県内18の商工会議所に一つひとつすべて足を運んで、知事の政治資金パーティーのパーティー券を販売するためのチラシを配布する相手となる中小企業の名簿ーそれら中小企業のなかには、信用保証協会の保証によって金融機関の融資を受けることのできた事業者が含まれている可能性があったということなのですがーそうした中小企業の名簿を知事の政治団体のために集めているというのに、それが当たり前になってしまっているのだとしたら・・・。

 はて、何かの〝文書〟に書かれていたような・・・

 これほどまでに奥山教授は斎藤知事の内部通報潰いに怒っているのですが、それによって「私たちみんなが被害者」になるからだと言うのです。例えば「原子力発電所の原子炉の部品にひび割れが入っているのを発見したのに、それがなかったなのようにウソを規制行政機関に報告する電力会社があったとしたら・・・」

 奥山教授の危惧は、無知蒙昧な暴君知事によって内部告発者が自死に至らしめられ、その過ちが見逃されるなら、もう内部告発する正義は実現できなくなるだろうという危機感です。だからこそ、斎藤元彦という人物には1日でもはやく県知事のイスから降りていただかなければならないと思い悩む今日この頃です。 (晴)

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